説明

自動車排ガス浄化用の触媒体

【課題】1000℃付近の高温環境下で、触媒活性成分1が助触媒粒子2から離れてアルミナ粒子4の表面上に移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングするのを抑制する。
【解決手段】触媒活性成分1を助触媒粒子2の表面に固定した触媒粒子3が、触媒担体としてのアルミナ粒子4を介して、多孔質無機基材に担持された自動車排ガス浄化用の触媒体において、アルミナ粒子4の表層にZn元素を含有させる。これにより、触媒活性成分1が助触媒成分2から離れてアルミナ粒子4の表面上へ移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングすることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排ガス浄化用の触媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排ガス等に含まれるHC、CO、NOx等の有害成分を浄化するための触媒体として、貴金属等の触媒活性成分をセリア等の助触媒粒子表面に固定したナノ触媒粒子が、触媒担体としてのアルミナ粒子を介して多孔質無機基材に担持された構成のものがある(例えば、特許文献1、2参照)。ここでいうナノ触媒粒子とは、粒径がナノメートルオーダー、特に、1nm以上100nm以下の微粒径のものである。
【0003】
この触媒体では、多孔質無機基材よりも比表面積が大きなアルミナ粒子にナノ触媒粒子を担持させることで、多孔質無機基材にナノ触媒粒子を高分散に担持でき、触媒活性成分の必要担持量を確保できるという利点を有している。
【0004】
また、特許文献2には、上記した構成の触媒体に用いられるアルミナ粒子の製造方法が開示されている。このアルミナ粒子の製造方法は、アルミナ粒子にLa等の金属成分を添加することで、1000℃付近での耐熱性に優れるアルミナ粒子を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−80077号公報
【特許文献2】特開2009−242226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に開示のアルミナ粒子の製造方法によれば、1000℃付近での耐熱性に優れるアルミナ粒子を製造できるが、下記の通り、別の新たな課題が発生することがわかった。
【0007】
図3に触媒体の模式図を示す。この触媒体は、図3の左側(初期)に示すように、触媒活性成分1を助触媒粒子2の表面に固定したナノ触媒粒子3が、触媒担体としてのアルミナ粒子4を介して、図示しない多孔質無機基材に担持された構造を有するものである。
【0008】
そして、上記した構成の触媒体のアルミナ粒子4にLaが添加されている場合、自動車のエンジン排ガスによる1000℃付近の高温環境下に晒されると、図3中の右側に示すように、触媒活性成分1が助触媒粒子2から離れてアルミナ粒子4の表面上に移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングするという現象によって、触媒活性成分1の粒径が増大して比表面積が低下し、触媒活性が低下してしまう。
【0009】
この現象については、図4に示す実験結果より、本発明者によって確認されている。図4に加熱前(初期)の触媒体のTEM写真と、950℃、50時間加熱処理後の触媒体のTEM写真とを示す。
【0010】
図4中の初期の触媒体は、触媒活性成分1が1nm以下のPtであり、助触媒粒子2が5nm程度のセリア・ジルコニアの固溶体であるナノ触媒粒子3が、20nm程度のLa添加アルミナ粒子4に担持されたものである。図4中の初期の触媒体では、EDXによる組成分析によって、Ce、ZrおよびPtを検出した触媒粒子3と、Alを検出したアルミナ粒子4とが存在することが確認されている。
【0011】
これに対して、この触媒体を950℃、50時間で加熱処理した後では、図4中の右側に示すように、EDXによる組成分析の結果、Ptのみが検出され、CeおよびZrが検出されない長径が20nmを超える塊が存在していた。このことから、加熱処理によって、触媒活性成分1が助触媒粒子2から離れて触媒活性成分1同士がシンタリングして、触媒活性成分1の粒径が増大したことがわかる。なお、この現象は、アルミナ粒子に存在するLaが原因であると考えられる。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、1000℃付近の高温環境下で、触媒活性成分1が助触媒粒子2から離れてアルミナ粒子4の表面上に移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングするのを抑制できる触媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、触媒活性成分(1)を助触媒粒子(2)の表面に固定した触媒粒子(3)が、触媒担体としてのアルミナ粒子(4)を介して、多孔質無機基材に担持された自動車排ガス浄化用の触媒体において、
アルミナ粒子(4)は、その表層にZn元素を含有することを特徴としている。
【0014】
このように、アルミナ粒子の表層にZnを含有させることで、自動車のエンジン排ガスの高温環境下で、触媒活性成分が助触媒成分から離れてアルミナ粒子上へ移動して、触媒活性成分同士がシンタリングすることを抑制できる。
【0015】
この結果、アルミナ粒子の表層にZnを含まない場合と比較して、触媒活性成分の比表面積の低下を抑制できるので、触媒体の低温活性を向上できる。
【0016】
請求項1に記載の発明における表層にZn元素を含有するアルミナ粒子(4)は、請求項2に記載のように、γ−アルミナもしくはベーマイト型アルミナ水和物で構成された原料粒子とZn元素とが共に含まれる液体を用意し、原料粒子に対して液体の存在下で加圧しながら加熱処理を施すことで得られるものである。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、液体中に含まれる原料粒子およびZn元素の合計に対するZn元素のモル分率を0.1モル%以上5モル%以下としたことを特徴している。
【0018】
Zn元素の含有量としては、このような範囲とすることが好ましく、後述の実験結果より、Zn元素のモル分率を2モル%とすることが特に好ましい。
【0019】
また、請求項1〜3に記載の触媒体は、請求項4に記載のように、エキゾーストマニホールドからの距離が0以上50mm以下の位置に搭載されるエンジン近接触媒として用いられることが好ましい。これは、エンジン近接触媒は1000℃付近の高温環境下になるため、上記した課題が顕著に発生するからである。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における触媒体の一部を示す模式図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明の実施例1、比較例1における触媒体の耐久試験後のアルミナ粒子および触媒粒子のTEM写真である。
【図3】本発明が解決しようとする課題を説明するための触媒体の模式図である。
【図4】本発明が解決しようとする課題を説明するための加熱前後の触媒体のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における自動車排ガス浄化用の触媒体の一部を示す模式図である。この触媒体は、エキゾーストマニホールドからの距離が0以上50mm以下の位置に搭載されるエンジン近接触媒として用いられるものである。
【0023】
図1に示すように、この触媒体は、触媒活性成分1を助触媒粒子2の表面に固定した触媒粒子3が、触媒担体としてのアルミナ粒子4を介して、図示しない多孔質無機基材に担持された構造を有するものである。
【0024】
ここで、触媒活性成分1は触媒活性の機能を有する成分であり、触媒活性成分1としてはPt、Pd、Rh等の貴金属や、Cu等の他の触媒活性を有する金属が挙げられる。
【0025】
助触媒粒子2は酸素を吸収・放出する機能(酸素吸放出能)を持つ粒子であり、この助触媒粒子2としては例えばセリア、ジルコニアまたはこれらの固溶体で構成された粒子が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、この助触媒粒子2としてLa元素が添加されたLa添加助触媒粒子を用いている。これは、La元素のくさび効果により、触媒活性成分1を留めることを図ったものである。すなわち、上記課題の欄で説明したように、アルミナ中にLa元素が存在すると、La元素が原因で触媒活性成分1がアルミナ粒子4の表面上に移動していたことから、La元素は、触媒活性成分1に対して何らかの結合力を有していると考えられる。そこで、助触媒粒子2にLa元素を添加することで、触媒活性成分1を助触媒粒子2に留めることができると考えられる。なお、助触媒粒子2はLa元素が添加されていなくても良い。
【0027】
複数の触媒粒子3としては、同じ触媒活性成分1を有する触媒粒子3を用いたり、異なる触媒活性成分1を有する触媒粒子3を混合して用いたりすることができる。
【0028】
また、触媒粒子3は、粒径がナノメートルオーダー(特に、1〜100nm)のナノ粒子である。本実施形態の好ましい寸法例としては、触媒活性成分1は1nm以下、助触媒粒子2は2〜50nmである。助触媒粒子2が5nm以下であることがより好ましい。
【0029】
このような触媒粒子3を構成する助触媒粒子2は、供沈法、ゾルゲル法等の周知の製造方法において、Laを添加することによって製造される。また、助触媒粒子2に触媒活性成分1を固定する方法としては、同時蒸発法、供沈法、ゾルゲル法等の周知の方法が採用可能である。
アルミナ粒子4は、粒径が触媒粒子3の粒径以上のものであり、好ましくは、2〜50nmのものである。アルミナ粒子4は、多孔質無機基材の表面上に不規則に配置されているとともに、図1に示すように、立体的に集合して迷路状の粒子間隙を形成している。
【0030】
そして、本実施形態のアルミナ粒子4は、その表層にZn(亜鉛)元素を含有する亜鉛添加アルミナ粒子である。このZn元素の存在形態についての詳細は不明であるが、後述する実施例1のアルミナ粒子について測定したX線回折(XRD)パターンより、酸化亜鉛の結晶が確認されている。
【0031】
表層にZn元素を含有するアルミナ粒子4は、原料となるアルミナ粒子(原料粒子)とZn元素とが共に含まれる液体を用意し、この原料粒子に対して液体の存在下で加圧しながら加熱処理を施すことで得られるものである。
【0032】
ここで、原料粒子として、γ−アルミナもしくはベーマイト型アルミナ水和物で構成された粒子を用いる。ベーマイト型アルミナ水和物は、水酸化酸化アルミニウム(AlOOH)であり、熱処理等が施されることにより、アルミナとなるアルミナ前駆体である。原料粒子として、γ−アルミナもしくはベーマイト型アルミナ水和物で構成された粒子を用いるのは、この粒子のみを液体の存在下で加圧しながら加熱処理を施しても粒径が大きく変化しないことを、本願発明者らが確認しているからである。
【0033】
原料粒子とZn元素が含まれる液体は、例えば、液体中に原料粒子を溶解させて原料粒子の分散液を作製した後、この分散液に、Zn元素を含む金属塩を溶解させることで作製される。このとき、液体としては、水、エタノール、イソプロパノールのいずれか1つもしくはこれらの混合液を用いることができる。
【0034】
また、このときのZn元素の含有量としては、液体中に含まれる粒子およびZn元素の合計に対するZn元素のモル分率を0.1モル%以上5モル%以下とすることが好ましく、後述の実施例の結果より、Zn元素のモル分率を2モル%とすることが特に好ましい(実施例2参照)。なお、ここで言うモル分率は、(金属塩のモル数)/(アルミナ粒子のモル数+金属塩のモル数)×100(%)より算出される。
【0035】
加熱処理の方法としては、オートクレーブを用いての加熱方法を採用できる。これは、内部を高圧力にすることが可能な容器であるオートクレーブの内部に、原料粒子とZn元素が含まれる液体を入れて、オートクレーブを密閉して、オートクレーブの内部の液体を加熱する方法である。
【0036】
加熱処理時の加熱温度は、アルミナ粒子の表層にZn元素を存在させることが可能な温度以上であって、粒子同士の凝集を抑制できる温度以下とする。なお、オートクレーブの内部は加熱温度に応じた蒸気圧となる。例えば、液体として水を用いた場合では、加熱温度を120℃以上180℃以下とし、加熱時間を24時間とすることが好ましい。これは、120℃以上としたとき、アルミナ粒子の表層にZn元素を存在させることができ、180℃以下であれば粒子同士の凝集を抑制できるからである。
【0037】
多孔質無機基材は、表面に細孔としての多数の孔を有する無機物からなるものであり、多孔質無機基材としては例えばコージェライトが挙げられる。
【0038】
上記した構成の触媒体は、例えば、次のようにして製造される。
【0039】
亜鉛添加アルミナ粒子の分散溶液と、触媒粒子の分散溶液とをそれぞれ作製するとともに、所望の濃度に調整する。亜鉛添加アルミナ粒子の分散溶液は、上記したオートクレーブを用いた加熱処理後の液体である。
【0040】
そして、両者を混合させたスラリー液を多孔質無機基材の表面に塗布した後、乾燥、焼成を行う。これにより、触媒活性成分1を助触媒粒子2の表面に固定した触媒粒子3およびアルミナ粒子4で構成されたコート層が多孔質無機基材の表面に形成されることで、本実施形態の触媒体が製造される。
【0041】
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。
【0042】
本実施形態の触媒体のように、エキゾーストマニホールドからの距離が0以上50mm以下の位置に搭載されるエンジン近接触媒として用いられる場合、触媒体の温度が1000℃付近の高温環境下になるため、触媒活性成分1が助触媒成分2から離れてアルミナ粒子4の表面上へ移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングするという問題が顕著に発生する。
【0043】
これに対して、本実施形態の触媒体によれば、アルミナ粒子4の表層にZnを含有させているので、触媒活性成分1が助触媒成分2から離れてアルミナ粒子4の表面上へ移動して、触媒活性成分1同士がシンタリングすることを抑制できる。この結果、アルミナ粒子4の表層にZnを含まない場合と比較して、触媒活性成分1の比表面積の低下を抑制できるので、後述の実施例からわかるように、触媒体の低温活性を向上できる。
【0044】
なお、本実施形態の触媒体は、エキゾーストマニホールドからの距離が0以上50mm以下の位置に搭載されるエンジン近接触媒として用いられるものであったが、触媒体の搭載位置は他の位置であっても良い。
【実施例】
【0045】
本発明の実施例および比較例を示す。
【0046】
下記の通り、実施例1〜4では、亜鉛添加アルミナ分散溶液を作製し、作製した亜鉛添加アルミナ分散溶液を用いて触媒体を作製した。比較例1では、亜鉛未添加アルミナ分散溶液を作製し、作製した亜鉛未添加アルミナ分散溶液を用いて触媒体を作製した。
(実施例1)
[亜鉛添加アルミナ分散溶液の作製]
ビーカを用いて、日産化学工業株式会社製アルミナゾル520:30gを水:120mlに溶解させて、アルミナ粒子の分散液を作製した。このアルミナゾル中のアルミナ粒子はベーマイトで構成されており、粒径は20nmである。
【0047】
続いて、この溶液を攪拌子で攪拌しながら、硝酸塩として硝酸亜鉛:0.45gを溶解させた水:10mlを溶液中へ投入した。このとき、硝酸亜鉛の添加量は、モル分率が2mol%となる添加量である。
【0048】
続いて、内部を高圧力にすることが可能な容器であるオートクレーブの内部に、上記液体を入れて、オートクレーブを密閉し、120℃、24時間にてオートクレーブを加熱する。こうして亜鉛添加アルミナ粒子の分散溶液が得られた。
【0049】
[触媒体の作製]
上記分散溶液の固形比を5wt%となるよう純水にて希釈する。次にCe:Zr:Laのモル比が0.475:0.475:0.05であるLaが添加された粒子径5nmのセリア・ジルコニア固溶体の分散溶液を作製し、固形比5wt%に調整する。このセリア・ジルコニア固溶体分散液50gに、塩化白金酸溶液をセリア・ジルコニア固溶体に対して白金重量が1wt%となる量を添加し、セリア・ジルコニア白金水溶液を作製する。
【0050】
次に上記セリア・ジルコニア固溶体分散液50gに、塩化ロジウムをセリア・ジルコニア固溶体に対して重量比で1wt%となる量を添加し、セリア・ジルコニア・ロジウム水溶液を作製する。
【0051】
次に上記亜鉛添加アルミナ分散液120gと、上記セリア・ジルコニア白金水溶液70g及び上記セリア・ジルコニア・ロジウム水溶液それぞれ30gを混合し、ホモジナイザーにて1h攪拌した後、エバポレータにて水分を蒸発させ固形比が20wt%になるよう調整する。このスラリー液をコージェライト質モノリスミニピース(600cpsi、直径30mm長さ50mm)に付着させて、500℃で1時間焼成し、コート層重量132g/L、白金担持量0.42g/L、ロジウム担持量0.18g/Lの触媒活性成分担持コージェライト質モノリスミニピースを得た。
(実施例2)
硝酸亜鉛の添加量を0.1mol%に変更した点以外は、実施例1と同じである。
(実施例3)
硝酸亜鉛の添加量を0.5mol%に変更に変更した点以外は、実施例1と同じである。
(実施例4)
硝酸亜鉛の添加量を5mol%に変更に変更した点以外は、実施例1と同じである。
(比較例1)
硝酸亜鉛の添加量を0mol%(硝酸亜鉛を未添加)に変更した点以外は、実施例1と同じである。
【0052】
実施例1〜4および比較例の触媒体について、耐久試験と、耐久試験後の触媒体の低温活性評価試験とを行った。低温活性評価試験は、ミニピースによる排ガス模擬ガス試験である。各試験条件は以下の通りである。
【0053】
[耐久試験]
エンジン排気量:2400cc
運転モード :リッチ(A/F=13.5)⇔リーン(A/F=15.5)サイクル
燃料 :無鉛レギュラー
触媒中心温度 :最高950℃
耐久時間 :20時間
[低温活性評価試験]
ガス組成:
CO 0.5±0.1%
0.5±0.1%
THC 1300ppm
NO 2500ppm
CO 約15%
測定温度範囲 :50℃〜450℃
昇温速度 :10℃/分
表1に、低温活性評価試験の結果を示す。表1は、耐久試験後の各触媒体の低温活性として、CO、THC、NOの浄化率が50%になったときの温度(T50/℃)を示している。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、実施例1〜4は、どれも比較例1と比較して、より低温で触媒活性を示しており、低温活性が向上したことが確認できた。
【0056】
また、実施例1〜4の中では実施例1が最も低温活性が向上したことから、Znのモル分率を2mol%とすることが最も好ましいことがわかる。
【0057】
ここで、表2に、実施例1と比較例1についての耐久試験後における触媒活性成分の平均粒径の測定結果を示す。この平均粒径は、CO吸着法によって測定したものであり、貴金属にCOが吸着する性質を利用し、CO吸着量から粒径を算出した結果である。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示す結果より、Zn添加の実施例1によれば、Zn未添加の比較例1と比較して、耐久試験後における触媒活性成分(Pt)の平均粒径の増大を抑制できたことがわかる。
【0060】
また、図2(a)、(b)に実施例1、比較例1についての耐久試験後における触媒体のアルミナ粒子4および触媒粒子3のTEM写真を示す。なお、図2(a)中の実線で円状に囲まれた領域は組成分析の範囲を示している。
【0061】
図2(b)に示すZn未添加の比較例1では、破線で囲まれた領域がPtのみを検出した領域であり、この領域の長径は20nmを超えていた。これに対して、図2(a)に示すZn添加の実施例1では、破線で囲まれた領域がPtのみを検出した領域であり、この領域の長径は20nmよりも小さかった。このように、TEM写真からも、Zn添加の実施例1によれば、Zn未添加の比較例1と比較して、耐久試験後における触媒活性成分(Pt)の平均粒径の増大を抑制できたことがわかる。
【符号の説明】
【0062】
1 触媒活性成分
2 助触媒粒子
3 触媒粒子
4 アルミナ粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性成分(1)を助触媒粒子(2)の表面に固定した触媒粒子(3)が、触媒担体としてのアルミナ粒子(4)を介して、多孔質無機基材に担持された自動車排ガス浄化用の触媒体において、
前記アルミナ粒子(4)は、その表層にZn元素を含有することを特徴とする自動車排ガス浄化用の触媒体。
【請求項2】
表層にZn元素を含有する前記アルミナ粒子(4)は、γ−アルミナもしくはベーマイト型アルミナ水和物で構成された原料粒子とZn元素とが共に含まれる液体を用意し、前記原料粒子に対して前記液体の存在下で加圧しながら加熱処理を施すことで得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車排ガス浄化用の触媒体。
【請求項3】
前記液体中に含まれる前記原料粒子および前記Zn元素の合計に対する前記Zn元素のモル分率を0.1モル%以上5モル%以下としたことを特徴とする請求項2に記載の自動車排ガス浄化用の触媒体。
【請求項4】
前記触媒体は、エキゾーストマニホールドからの距離が0以上50mm以下の位置に搭載されるエンジン近接触媒として用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の自動車排ガス浄化用の触媒体。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−66165(P2012−66165A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211015(P2010−211015)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】