説明

自動車灯火用色基準表示装置

【課題】自動車灯火器の発光色で、合格又は不合格の境界色を正確に表示できる自動車灯火用色基準表示装置を提供する。
【解決手段】面状に配置され、異なる色を発光する複数の発光素子13〜19を有する発光装置10と、発光装置10を収容する収容部24と、収容部24に収容された発光装置10から発せられた光を自身の外部に放出するための開口部22を有する筐体20と、発光装置10の発光素子13〜19の前面で、筐体20の開口部22近傍に設けられる拡散板セット30と、発行装置10の周囲に設けられる反射板セット40と、発光装置10の複数の発光素子13〜19を発光させるための電気信号を送信する発光制御部50と、を備える自動車灯火用色基準表示装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の色の光を正確に表示できる発光装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車検査場等での自動車用灯火器(以下、灯火器と言う)の検査において、灯火器の発行色(色度)は、自動車検査官が目視で主観的に判断している。また、自動車検査の研修会では、自動車検査官は、色紙などを利用した灯火器の色サンプルにより色度の基準を体感して学習するのが通例であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、色紙などを利用した色サンプルでは、実際の灯火器の照明と異なるので、結局、自動車検査官の主観で合否判定されるという問題があった。
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、自動車灯火器の合格又は不合格の境界色を正確に表示できる自動車灯火用色基準表示装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0006】
即ち、上記目的を達成する本発明は、面状に配置され、異なる色を発光する複数種類の発光素子を有する発光装置と、前記発光装置を収容する収容部、及び該収容部に連通する開口部を有する筐体と、前記発光装置の発光素子の前面に設けられる拡散板と、前記発光装置の前記複数種類の発光素子の発光量を制御する発光制御部と、を備えることを特徴とする自動車灯火用色基準表示装置である。
【0007】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記発光装置は、前記発光素子として、赤色を発光する赤色発光素子と、橙色を発光する橙色発光素子と、緑色を発光する緑色発光素子と、白色を発光する白色発光素子を含んで構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記発光素子の前面には、前記拡散板が複数枚積層されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、複数枚の前記拡散板は、前記筐体の開口部方向に所定の間隔を明けて、設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記複数枚の拡散板のうち、少なくとも1枚は、前記発光素子の発光方向に凸となるように湾曲していることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記発光装置から前記筐体の開口部方向に向かって広がるように傾けて設けられている反射板をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記赤色発光素子、前記橙色発光素子、前記緑色発光素子、前記白色発光素子は、所定の面積の中で均等に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記赤色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.65〜0.75、y=0.25〜0.35の範囲であり、前記橙色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.53〜0.63、y=0.36〜0.46の範囲であり、前記緑色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.11〜0.21、y=0.62〜0.72の範囲であり、前記白色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.25〜0.35、y=0.27〜0.37の範囲であることを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする。
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記発光装置に発光させる色を設定するための設定画面を表示する表示装置と、前記設定画面で設定された色に対応する制御データを前記発光装置に送信する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成する、自動車灯火用色基準表示装置は、前記設定画面は、少なくともCIE色度図及び灯火器の合否範囲を表示し、前記CIE色度図の中から任意の色を選択する選択手段を更に備え、前記制御部は、前記選択手段により選択された任意の色に対応する制御データを前記発光装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
自動車灯火器の合格又は不合格の境界色を正確に表示できる自動車灯火用色基準表示装置を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)本発明の第1実施形態に係る自動車灯火用色基準表示装置の平面から見た断面図であり、(b)同自動車灯火用色基準表示装置の右側面から見た断面図であり、(c)同自動車灯火用色基準表示装置の正面から見た断面図である。
【図2】同自動車灯火用色基準表示装置のシステム構成図である。
【図3】(a)CIE色度図に対する、赤色LEDの発光色の再現域であり、(b)CIE色度図に対する、橙色LEDの発光色の再現域であり、(c)CIE色度図に対する、緑色LEDの発光色の再現域であり、(d)CIE色度図に対する、白色LEDの発光色の再現域である。
【図4】CIE色度図である。
【図5】自動車灯火用色基準表示装置が発光可能な色度範囲を示す図である。
【図6】各色LEDが表現可能な色度範囲を示す図である。
【図7】(a)(b)各色LEDの他の配置方法である。
【図8】自動車灯火用色基準表示装置のLED制御の流れを示すフロー図である。
【図9】液晶表示装置に表示される発光色設定画面の一例である。
【図10】発光色の設定方法を示すフロー図である。
【図11】(a)本発明の第2実施形態に係る自動車灯火用色基準表示装置の平面から見た断面図であり、(b)同自動車灯火用色基準表示装置の右側面から見た断面図であり、(c)同自動車灯火用色基準表示装置の正面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る自動車灯火用色基準表示装置の構造について、図1、2を用いて説明する。
【0019】
自動車灯火用色基準表示装置(以下、色基準表示装置1と言う)は、発光装置10と、筐体20と、拡散板セット30と、反射板セット40と、発光制御部50を有して構成されている。また、発光制御部50には、コンピュータ100が接続されている。コンピュータ100は、入力された設定値に基づいて発光制御部50に制御データなどを送信する。なお、コンピュータ100には、液晶表示装置120が接続されているので、操作者は、発光色の設定値を目で見ながら容易に入力できる。また、操作者は、液晶表示装置120に表示された色度図を視認しながら、発光色を設定することができる。
【0020】
発光装置10は、プリント基板11と、プリント基板11上に電気的に接続された複数のLED群(Light Emitting Diode(発光ダイオード)群)12から構成されている。詳細に、発光装置10のLED群12は、赤色LED13と、橙色LED15と、緑色LED17と、白色LED19をそれぞれ複数個(例えば、各10個ずつ)配置して構成されている。赤色LED13、橙色LED15、緑色LED17、白色LED19は、それぞれ、赤色、橙色、緑色、白色の光を発することができる。また、赤色LED13、橙色LED15、緑色LED17、白色LED19は、プリント基板11に面状に均等配置され、後述する発光制御部50により、この4色のLEDグループ毎に光の強さを多段階(例えば、100段階)に調整できるようになっている。
【0021】
図1(a)及び図3に示される様に、4色のLED13〜19の1つ1つが方形又は菱形の頂点となるように配置されている。なお、本実施形態では、4色のLED13〜19は菱形状に配置されている。この菱形状に配置された4色のLED13〜19の1セットが基本ユニットSとなり、基本ユニットSをプリント基板11上に面状態で複数配置することで、LED群12が形成される。
【0022】
具体的には、4色のLED13〜19からなる基本ユニットSは、図3に示されるように、赤色LED13と白色LED19が対角に位置するように配置され、橙色LED15と緑色LED17が対角に位置するように配置されている。つまり、異なる色のLEDが対角に位置するように配置され、4つのLEDを順番に結んだ場合に1つの菱形を形成するようになっている。このように、4色のLEDからなる基本ユニットSを、縦横に複数ユニット配置し、複数の基本ユニットSの色のグループごとに光の強さを制御することで、任意の境界色を表現することができる。なお、基本ユニットSのLEDの配置形状は、上記のように菱形に限定されるものではなく、上述したように方形等でも好ましい。また、5色又は6色のLED等を使用する場合には、基本ユニットを5角形又は6角形に配置しても好ましい。
【0023】
ここで、CIE(Commission International de l`Eclairage(国際照明委員会))色度図について説明する。CIE色度図とは、図4に示されるように、光のスペクトルをx、yの座標で表したものである。各波長の光を人間の目がどの程度感じるかという値をグラフにすると、等色関数と呼ばれる曲線になる。別の言葉で定義すると、CIEで定められた等エネルギースペクトルに対する人間の目の感度をスペクトル刺激値と言い、この感度曲線を等色関数と言う。
【0024】
等色関数は、x(λ)、y(λ)、z(λ)によって表すことができる。ここで、x(λ)は赤色の等色関数、y(λ)は緑色の等色関数、z(λ)は青色の等色関数を表している。この等色関数を用いて、三刺激値X、Y、Zは、次の式によって求められる。
【数1】

【0025】
ここで、S(λ)は色の表示に用いる標準の光の分光分布、R(λ)は分光立体角反射率を表している。
【0026】
さらに、上記の三刺激値X、Y、Zから、XYZ表色系では色度座標x、y、zは次の式によって求められる。
【数2】

【0027】
上記でx+y+z=1となるので、一般にzを省略して、x、yによる直交座標によって描かれた色度座標の曲線(色度曲線)をCIE色度図と言う。人間の目に見える、ほとんど全ての色はCIE色度図で表現することができるが、いくつか代表となる色の概略の位置を図4の中に示す。
【0028】
図3に戻って、同図(a)は、赤色LED13のみが発光できる赤色の再現域をCIE色度図に示している。赤色LED13が発光できる赤色の色度座標は、x=0.65〜0.75、y=0.25〜0.35の範囲(同図(a)の斜線で示す発光可能範囲T)である。なお、本実施形態では、赤色LED13が発光する赤色の代表の色度座標Rは、x=0.703、y=0.297とし、同図(a)の黒点で表す。
【0029】
また、図3(b)は、橙色LED15のみが発光できる橙色の再現域をCIE色度図に示している。橙色LED15が発光できる橙色の色度座標は、x=0.53〜0.63、y=0.36〜0.46の範囲(同図(b)の斜線で示す発光可能範囲U)である。なお、本実施形態では、橙色LED15が発光する橙色の代表の色度座標Yは、x=0.584、y=0.416とし、同図(b)の黒点で表す。
【0030】
図3(c)は、緑色LED17のみが発光できる緑色の再現域をCIE色度図に示している。緑色LED17が発光できる緑色の色度座標は、x=0.11〜0.21、y=0.62〜0.72の範囲(同図(c)の斜線で示す発光可能範囲V)である。なお、本実施形態では、緑色LED17が発光する緑色の代表の色度座標Gは、x=0.163、y=0.669とし、同図(c)の黒点で表す。
【0031】
図3(d)は、白色LED19のみが発光できる白色の再現域をCIE色度図に示している。白色LED19が発光できる白色の色度座標は、x=0.25〜0.35、y=0.27〜0.37の範囲(同図(d)の斜線で示す発光可能範囲W)である。なお、本実施形態では、白色LED19が発光する白色の代表の色度座標Wは、x=0.303、y=0.320とし、同図(d)の黒点で表すことができる。
【0032】
上記の4色のLED13〜19の色度座標(各色の代表値)を順番に結ぶと、図5に示されるように、4色のLED13〜19の色度図(発色可能範囲K)が求められる。つまり、色基準表示装置1は、4色のLED13〜19をどのように発光するかを決定するとともに、発光する光の強さを調整して発光色を混合することにより、図5に示される色度図の範囲内の任意の境界色を再現できるようになっている。なお、色基準表示装置1は、4色のLED13〜19で定められる発色可能範囲Kから外れた色を表現することができない。
【0033】
一般に、灯火器の検査は、前照灯(ヘッドライト)、尾灯(テールライト)、方向指示器(ウィンカー)などの灯火器(ライト)の発光色等の合否について行われる。前照灯、尾灯や方向指示器等の灯火器は、それぞれ白色、赤色、橙(黄)色が基本色となっている。したがって、自動車検査官の研修等で使用される色基準表示装置1は、これらの色の境界色を含み境界の外側の色(外れた色)まで発色できるものである必要がある。
【0034】
図5には、色基準表示装置1の発色可能範囲Kと共に、前照灯(ヘッドライト)により発光される白色の合格範囲を白色合格範囲M、尾灯(テールランプ)により発光される赤色の合格範囲を赤色合格範囲N、方向指示器(ウィンカー)により発光される橙色の合格範囲を橙色合格範囲Pとして示されている。
【0035】
図5、6に示されるように、前照灯の白色合格範囲Mは、白色から橙色に近い範囲にまで及んでいるのが分かる。つまり、前照灯の白色は、白色から橙色に近い色までが合格範囲となっており、前照灯の検査において白色と橙色の境界(限度)部分の判断が特に困難になる。例えば、発光色W1は、多少黄色味かかっているが、前照灯の白色合格範囲M内の色であるので合格となる。また、発光色W2は、橙色にかなり近い色となるが、前照灯の白色合格範囲M内の色であるのでこれも合格となる。一方、発光色W3は、橙色にかなり近く、前照灯の白色合格範囲Mから外れているので、不合格となる。発光色W4についても同様で、発光色W4は、白色(僅かに緑が含まれる)に近い色であるが、前照灯の白色合格範囲Mから外れており不合格となる。
【0036】
尾灯の赤色合格範囲Nは、図5に示されるように、赤色から橙色に近い色までが合格範囲となっている。例えば、発光色R1は、赤色と橙色の中間の色であるが、尾灯の赤色合格範囲N内の色であるので合格となる。また、発光色R2もR1と同様に、赤色と橙色の中間の色であるが、発光色R1よりも橙色に近く、尾灯の赤色合格範囲Nから外れており、不合格となる。
【0037】
方向指示器の橙色合格範囲Pは、図5に示されるように、橙色から赤色に近い色までが合格範囲となっている。例えば、発光色Y1は、橙色と赤色の中間の色であるが、橙色合格範囲P内の色であるので合格となる。発光色Y2もY1と同様に、橙色と赤色の中間の色であるが、発光色Y1よりも赤色に近く、橙色合格範囲Pから外れており、不合格となる。
【0038】
上述したように、各色LED13〜19により発光可能な発色可能範囲Kは、白色合格範囲M、赤色合格範囲N、橙色合格範囲Pを含むとともに、各範囲から外れている外側の色まで発光することができるようになっている。つまり、色基準表示装置1は、各色LED13〜19の明るさを個別に制御することにより、灯火器の検査において検査官の主観的な判断に頼らざるを得ない白色と橙色、赤色と橙色の境界色(合格範囲内の色と、僅かに不合格の色の間の色)を発色することができるようになっている。これによって、自動車検査官は、色基準表示装置1により表示された上記の境界色を視認することによって、灯下器の発光色の合否判断の研修を効率的に行うことができる。なお、白色合格範囲Mの中で、色基準表示装置1の発色可能範囲Kに含まれない白色発色不能範囲M1は、通常、検査官が不合格の白色であると、目視で直ぐに判断できる色の範囲であり、検査で特に判断が難しい境界色として表示する必要性が低い範囲である。また、赤色合格範囲Nの中で、色基準表示装置1の発色可能範囲Kに含まれない赤色発色不能範囲N1も同様に、検査官が不合格の赤色であると、目視で直ぐに判断ができる色の範囲であり、検査で特に判断が難しい境界色として表示する必要性が低い範囲である。
【0039】
本実施形態における色基準表示装置1は、上述した自動車灯火器の白色合格範囲M、赤色合格範囲N及び橙色合格範囲Pの境界色を正確に再現することを目的としている。そこで、本実施形態では、上記のように、赤色LED13は、x=0.65〜0.75、y=0.25〜0.35(代表値として、x=0.703、y=0.297)、橙色LED15は、x=0.53〜0.63、y=0.36〜0.46(代表値として、x=0.584、y=0.416)、緑色LED17は、x=0.11〜0.21、y=0.62〜0.72(代表値として、x=0.163、y=0.669)、白色LED19は、x=0.25〜0.35、y=0.27〜0.37(代表値として、x=0.303、y=0.320)としている。これによって、色基準表示装置1は、上記の色度図で表される赤色LED13、橙色LED15、緑色LED17、白色LED19の光の強さを調整し、4色を混合することにより、上記の各合格範囲の境界色を表示できるようにしている。
【0040】
例えば、4色のLED基本ユニットSの中で、白色LED19がない場合、色基準表示装置1の発色可能範囲Kは、図6(a)に示されるようになる。つまり、色基準表示装置1は、白色合格範囲Mの境界色がほとんど表現できないことが分かる。また、緑色LED17がない場合、色基準表示装置1の発色可能範囲Kは、図6(b)に示されるようになる。つまり、色基準表示装置1は、白色合格範囲Mと橙色合格範囲Pの境界色の一部が表現できなくなる。また、他の色がない場合も同様で、例えば、赤色LED13がない場合、色基準表示装置1の発色可能範囲Kは、図6(c)に示されるようになる。つまり、色基準表示装置1は、赤色合格範囲Nは全く表示できず、橙色合格範囲Pの境界色の一部が表現できなくなる。橙色LED15がない場合、色基準表示装置1の発色可能範囲Kは、図6(d)に示されるようになる。つまり、色基準表示装置1は、橙色合格範囲Pの境界色の一部が表現できなくなる。したがって、上記のように、赤色LED13、橙色LED15、緑色LED17、白色LED19のいずれか1色がない場合、白色合格範囲M、赤色合格範囲M、橙色合格範囲Nの中で表現できない境界色がでてきてしまう。
【0041】
なお、上記の色に加えて、例えば、青色LED等を加えて5色のLEDを制御するようにしても好ましい。しかし、青色は、自動車灯火器の合否が分かりやすく、自動車検査官の主観的な判断のバラツキが少ないため、上記の赤色と橙色、白色と橙色の境界色に比べ、境界色として表現しなければならない必要性が比較的低い。つまり、自動車灯火器において、特に主観的な判断が難しい、赤色と橙色、白色と橙色の境界色を表現するには、本実施形態で示されるように、赤色LED13、橙色LED15、緑色LED17、白色LED19の4色のLEDをそれぞれ制御して、4色を混合することにより生成するのが好適である。
【0042】
図1に戻って、筐体20は、6面体の中の前面の少なくとも一部に開口部22を有する箱状部材である。さらに、筐体20は、内部に収容部24を備えている。収容部24には、発光装置10と、反射板セット40が収容されている。また、筐体20の開口部22には、拡散板セット30が設けられている。なお、筐体20は、発光装置10から発せられる光が、開口部22以外から漏れないように、例えば、筐体20全体が遮光性の素材で形成されていることが好ましい。
【0043】
拡散板セット30は、筐体20の開口部22を覆うように設けられた透明又は半透明の複数枚の板状部材である。詳細に、拡散板セット30は、開口部22側から、第1拡散板32と、第2拡散板34と、第3拡散板36の3枚の拡散板を有して構成されている。また、3枚の拡散板32〜36は、開口部22方向に対して積層状態に設けられている。本実施形態において、第1拡散板32と、第2拡散板34は、平板形状になっているが、第3拡散板36は、開口外側に向かって凸となるように湾曲形状になっている。
【0044】
3枚の拡散板32〜36は、樹脂シート(例えば、ポリカーボネート製のシート)の表面に凹凸を形成したり、樹脂シートの内部に球状のビーズを含有させたりして、光を乱反射させるものである。
【0045】
上記の構成によって、発光装置10から発せられたLED光は、第1拡散板32〜第3拡散板36を通過する過程で、段階的に広範囲に拡散されるようになっている。また、第3拡散板36は、外側に凸となる湾曲形状になっているため、発光装置10から発せられたLED光は、第3拡散板36を通過する過程で、内側から外側に広がりながら拡散するようになっている。したがって、拡散板セット30の第3拡散板36は、第1拡散板32の中央下側に設けられる発光装置10から発せられたLED光を、中央部から外側に広がるように拡散させ、表面の全体を均一に発光させる効果を有している。
【0046】
また、第1拡散板32と、第2拡散板34の間に、LED光を広範囲に広げるための拡散空間33が設けられ、また、第2拡散板34と第2拡散板36の間にも同様の拡散空間35が設けられている。
【0047】
拡散空間33は、第1拡散板32と第2拡散板34の間に所定の距離を明けて設けられた空間である。つまり、第1拡散板32を通過する過程で拡散したLED光は、第2拡散板34に直ぐに導入されることなく、拡散空間33を通過することにより、より広範囲に広がった状態で第2拡散板34に導入される。これによって、単に第1拡散板32と第2拡散板34を重ねて設けた場合よりも、LED光をより広範囲に、且つ均等に分散させることができる。
【0048】
また、第2拡散板34と第3拡散板36との間にも、拡散空間33と同様の拡散空間35が設けられている。上記同様、第2拡散板34を通過する過程で拡散したLED光は、第3拡散板36に直ぐに導入されることなく、拡散空間35を通過することにより、より広範囲に広がった状態で第3拡散板36に導入される。これにより、拡散板30の拡散効果をさらに向上することができる。
【0049】
次に、反射板セット40は、筐体20の収容部24に設けられる複数枚の板状部材である。反射板セット40は、発光装置10の周囲に設けられた4枚の反射板40A〜Dから構成されている。各反射板40A〜Dは、発光装置10近傍から開口部22方向に向かって広がるように設けられている。これによって、発光装置10の各色LED13〜19から発せられたLED光のうち、各反射板40A〜Dに入光したLED光は、所定の出力角により3枚の拡散板32〜36方向に反射するようになっている。なお、各反射板40A〜Dの入射角と反射角は、適宜決定できるものとする。
【0050】
また、反射板40A〜Dは、LED光を受ける面が鏡面加工され、発光装置10から発せられたLED光を効率良く、拡散板32〜36方向に反射できるようになっていることが好ましい。
【0051】
発光制御部50は、図2に示されるように、CPU52と、ROM54と、RAM56と、出力部58と、通信ポート59とを備えて構成されている。
【0052】
CPU52は、通信ポート59を介してコンピュータ100から受信した制御データに基づいて、ROM54やRAM56から所定のLEDデータを呼び出し、そのLEDデータを出力部58に出力する指令を出す。
【0053】
ROM54は、各色LED13〜19に所定の色を発光させるためのLEDデータが記憶されている。ROM54は、CPU52の指令に基づいて、LEDデータを出力部58に送信する。LEDデータとは、複数種類の色のLED(色ごとにグループ化されたLED)の中のどの色のLEDを発光させるか否かを示す情報と、発光させるLEDの輝度(光の強さ)情報を含むものである。各色LED13〜19の輝度は、LEDデータにより、100段階で調整できるようになっている。
【0054】
RAM56は、データを一時的に記憶する記憶領域としての機能の他に、CPU52がROM54から呼び出したLEDデータを展開する作業領域として機能する。
【0055】
出力部58は、CPU52の指令に基づいて、ROM54から送信されたLEDデータを、各色LED13〜19を駆動するための電気信号に変換するとともに、電気信号を各色LED13〜19に出力する。
【0056】
また、通信ポート59は、コンピュータ100の通信ポートと電気的に接続され、コンピュータ100との間で制御データ等の通信を行う。なお、通信ポート59は、CPU52やROM54、RAM56と電気的に接続されている。したがって、CPU52は、通信ポート59を介してコンピュータ100から受信した制御データに基づいてROM54からLEDデータを呼び出す。そして、CPU52は、呼び出したLEDデータを出力部58で電気信号に変換し、その電気信号を各色LED13〜19に送信する。
【0057】
上記の構成によって、例えば、操作者により外部から白色LED19を強く発光する指令が入力された場合、CPU52は、ROM54から白色LED19に出力する電気信号に対応するLEDデータを読み込む。そして、CPU52は、ROM54から読み込んだLEDデータをRAM56で展開し、展開したLEDデータを出力部58に送信する。出力部58は、送信されたLEDデータに基づいて白色LED19に送信する電気信号を生成する。そして、出力部58は、生成した電気信号を白色LED19に送信する。そして、白色LED19は、入力された電気信号に基づいて、所定の強さの明るさで発光する。他のLEDについても同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
また、CPU52は、4種類のLED13〜19をそれぞれ発光させるための設定値をROM54に記憶しており、操作者により、所定の設定値が選択された場合、選択された設定値に基づいて、ROM54からLEDデータを呼び出すことができる。そして、CPU52は、設定値に基づくLEDデータをRAM56で展開し、出力部58に送信する。出力部58では、展開されたLEDデータに基づいて各色LED13〜19に送信する電気信号を生成するとともに、各色LED13〜19に送信する。これによって、色基準表示装置1は、複数のLED13〜19を発光させて、予め設定した色を正確に生成することができる。
【0059】
上記のように、本実施形態に係る色基準表示装置1は、面状に配置された複数種類の色の光を発光する発光装置10と、発光装置10を収容する筐体20と、発光装置10の光を拡散して外部に放出する拡散板セット30と、発光装置10の光を拡散板セット30方向に反射する反射板セット40を備えている。また、発光装置10は、赤色の光を発光できる赤色LED13と、橙色の光を発光できる橙色LED15と、緑色の光を発光できる緑色LED17と、白色の光を発光できる白色LED19から構成されている。これによって、色基準表示装置1は、各色LED13〜19を発光又は消光することによって、自動車灯火器の合格又は不合格を示す境界の色を表示することがきる。
【0060】
また、本実施形態に係る色基準表示装置1は、各色LED13〜19を個別に制御する発光制御部50を備えている。これにより、色基準表示装置1は、複数種類の各色LED13〜19の発光、消光や光の強さを個別に制御して、自動車灯火器の合格又は不合格を示す境界の色を正確に再現することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る色基準表示装置1は、前述したように、発光装置10の前面に設けられた拡散板セット30の中の少なくとも1枚の拡散板(本実施形態では、第3拡散板36)が外側に凸となるように湾曲している。これによって、拡散板セット30は、発光装置10から発せられたLED光を外側により広範囲に拡散することにより、表面を均等に発光することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る色基準表示装置1は、拡散板セット30は、複数の拡散板(例えば、第1〜3拡散板32〜36)が発光装置10の前面方向に積層されている。これによって、発光装置10から発せられたLED光は、複数の拡散板でより広範囲に拡散されるとともに、細かく且つ均一に拡散される。
【0063】
また、本実施形態に係る色基準表示装置1は、赤色LED13が発する光の色度座標は、x=0.65〜0.75、y=0.25〜0.35の範囲であり、前記橙色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.53〜0.63、y=0.36〜0.46の範囲であり、前記緑色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.11〜0.21、y=0.62〜0.72の範囲であり、前記白色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.25〜0.35、y=0.27〜0.37の範囲としている。これにより、自動車灯火器で、特に主観的な判断が難しい、赤色と橙色の境界色、白色と橙色の境界色を表示することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、3枚の拡散板32〜36を積層状態に設ける構造としたがこれに限定されるものではなく、拡散板を4枚又は5枚を積層することにより、LED光をより均一に細かく拡散させる構造としても好ましい。また、拡散効果の高い拡散板(例えば、表面の凹凸が細かく形成された樹脂シート)を1枚設けるようにしても好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、第3拡散板36を外側に凸となる湾曲形状としているが、第1拡散板32又は第2拡散板34を外側に凸となる湾曲形状としても良く、又は第1拡散板32〜第3拡散板36の中のいずれか2枚又は全ての拡散板を外側に凸となる湾曲形状としても好ましい。
【0066】
また、本実施形態では、第1拡散板32と第2拡散板34の間、及び第2拡散板34と第3拡散板36の間に拡散空間33、35を設ける構造としたが、これに限定されるものではない。例えば、各拡散板32〜36の内部に拡散空間を設けても良く、拡散空間として、複数の気泡を形成するようにしても好ましい。これにより、拡散効果は損なわずに、拡散板セット30の全体を薄くすることができる。
【0067】
なお、本実施形態に係る色基準表示装置1は、自動車の灯火器の色(特に、赤色と橙色、白色と橙色)の境界(限度)を正確に再現することを目的としているため、上記の色度座標で表現されるLED13〜19を用いたが、勿論これに限定されるものではない。つまり、LEDの色や色数や色度座標は上記に限定されるものではなく、例えば、白色LED19の代わりに、青色LEDを追加しても好ましく、白色LED19と青色LEDを両方とも備えるようにしても好ましい。
【0068】
また、自動車の灯火器で使用される境界色を再現できるものであれば、LEDの配置は、上記の菱形配置に限定されるものではない。
【0069】
例えば、LED13〜19の配置は、図7(a)に示されるように、縦方向及び横方向に、異なる色のLED13〜19を1つずつ均等な幅で順番に並べても好ましい。また、図7(b)に示されるように、縦方向及び横方向に、異なる色のLED13〜19を1つずつ千鳥状に交互に並べても好ましい。なお、図7(a)(b)において点線で示されるように、上記の各色LED13〜19の配置は、ある一定の基本単位領域Qにおいて、各色のLED13〜19の数が等しくなるように配置されていることが好ましい。図7(a)では、基本単位領域Qに各色LEDがそれぞれ4個配置され、同図(b)では、基本他院領域Qに各色LED13〜19がそれぞれ3個配置される構造になっている。つまり、各色LED13〜19が同じ数(均等)だけ配置された基本単位領域Qが複数集合し、LED13〜19ごとに光の強弱をつけて発光させることによって、図5に示される色度図中の任意の色の光を発することが可能となる。
【0070】
<制御方法>
【0071】
次に、自動車灯火用色基準表示装置の制御方法について説明する。発光制御部50をコンピュータ100に接続することにより、コンピュータ100で、以下に説明する制御が行われる。なお、コンピュータ100で以下の制御を行うために、コンピュータ100には、予め制御プログラムをインストールし、実行しておく必要がある。
【0072】
初めに、ステップS110では、コンピュータ100は、発光制御部50との通信設定を行う。具体的には、コンピュータ100の通信ポートと発光制御部50の通信ポート59の初期設定や通信速度の設定を行う。
【0073】
ステップS120では、コンピュータ100は、コンピュータ100の記憶領域に予め記憶されている制御データの呼び出しがあるか否かの判定を行う。制御データの呼び出しがある場合は、ステップS140に進み、呼び出しがない場合は、ステップS130に進む。
【0074】
ステップS130では、制御データの設定を行う。具体的には、コンピュータ100は、赤色LED13の色グループ、橙色LED15の色グループ、緑色LED17の色グループ、白色LED19の色グループの毎に、PWM(Pulse Width Modulation)値、電流値、点灯時間等の値を設定する。なお、PWM値は、具体的にはLEDに出力するパルス電流のduty比を設定することになる。
【0075】
なお、制御データの呼び出し指示があった場合は、ステップS140に示されるように、コンピュータ100は、自身の記憶領域(例えば、ROM等)から指示のあった制御データを呼び出す。
【0076】
ステップS150では、制御データの決定を行う。ステップS130により制御データが設定された場合、又はステップS140により制御データが呼び出された場合、コンピュータ100は、その制御データを実行するための決定処理を行う。
【0077】
ステップS160では、コンピュータ100は、決定した制御データを通信ポートを介して発光制御部50に送信する。
【0078】
その後、発光制御部50では、受信した制御データに基づいて、色ごとのLEDグループを点灯するための電気信号を生成する。そして、発光制御部50は、電気信号を色ごとのLEDグループに送信することによって、色ごとのLEDグループが発光するようになっている。
【0079】
また、図9、図10に示されるように、コンピュータ100の液晶表示装置120に表示される色度図を使って、色度図における(x、y)値と、光の強さ(L)を直接入力できるようにしても好ましい。初めに、コンピュータ100は、発光制御部50との通信設定を行う。具体的には、コンピュータ100の通信ポートの設定や通信速度の設定を行う(ステップS210)。次に、コンピュータ100は、設定値入力部122、色度図部124、設定値確定(表示)ボタン126、出力値表示部128を液晶表示部120に表示する(ステップS220)。また、色度図124には、灯火器の発光色の合格範囲である、白色合格範囲M、赤色合格範囲N、橙色合格範囲Pが表示されている。そして、コンピュータ100は、操作者により、液晶表示装置120の設定値入力部122に色度図のx、y座標値(x)、(y)と光の強さ(L)が入力されるのを待つ(ステップS230)。そして、コンピュータ100は、設定値確定ボタン126が押されたことに基づいて、入力された設定値に対応する色を色度図部124に表示されている色度図の中に表示(プロット)する(ステップS240)。同時にコンピュータ100は、入力されたx、y、Lの値に基づいて、赤色(R)LED13、橙色(Y)LED15、緑色(G)LED17、白色(W)LED19の各色グループごとのduty比(具体的には、前述したPWM値)の算出を行う(ステップS250)。ステップS250で算出した結果、duty比が表示可能範囲を超えている場合(エラーの場合)は、ステップS220に戻って、再度x、y、Lの設定が行われるのを待つ。そして、ステップS250で算出した結果、エラーでない場合、コンピュータ100は、決定した制御データを通信ポートを介して発光制御部50に送信する(ステップS260)。
【0080】
上述したように、操作者は、表示されている色度図を見ながら発光色の設定を行えるので、任意の色を直観的に設定することができる。
【0081】
なお、発光色の設定は、設定値入力部122に数値で入力する方法に限られるものではなく、例えば、色度図部124にカーソル129を合わせて発光色を決定できるようにしても好ましい。上記と同様、色度図124には、灯火器の発光色の合格範囲である、白色合格範囲M、赤色合格範囲N、橙色合格範囲Pが表示されている。操作者は、各合格範囲M、N、Pを見ながら、色基準表示装置1のLED13〜19で表示する発光色を決定することができる。例えば、前照灯の合否判断の境界を確認するために、白色合格範囲M内の境界近傍にカーソル129を合わせて発光色(設定値1)を決定したり、白色合格範囲Mから僅かに外れた境界近傍にカーソル129を合わせて発光色(設定値2)を決定することができる。上記と同様に、コンピュータ100は、カーソル操作で設定された設定値1や2に対応するx、y、L値に基づいて、赤色(R)LED13、橙色(Y)LED15、緑色(G)LED17、白色(W)LED19の各色グループごとのduty比(具体的には、前述したPWM値)の算出を行う。そして、コンピュータ100は、算出されたduty比に基づいて決定した制御データを通信ポートを介して発光制御部50に送信する。
【0082】
なお、上記の液晶表示装置120、コンピュータ100は、本発明の表示装置、制御部を構成する。また、上記の設定値入力部122、色度図部124、設定値確定(表示)ボタン126、出力値表示部128は、本発明の設定画面を構成する。また、上記のカーソル129により色度図部124の中から任意の色を選択する手段は、本発明の選択手段を構成する。また、上記の白色合格範囲M、赤色合格範囲N、橙色合格範囲Pは、本発明の合否範囲を構成する。
【0083】
前述した設定値入力部122に数値を直接入力する方法では、設定値1や2のような境界色を入力するのに時間がかかったが、このようにすることにより、色度図124を目視で見ながら、合否判断が難しい境界色を容易に設定することができる。
【0084】
次に、本発明の第2実施形態に係る自動車灯火用色基準表示装置100について説明する。自動車灯火用色基準表示装置100は、図11(a)〜(c)に示されるように、反射板140及び拡散板セット160が円形に形成され、拡散板セット160の上面160A全体をムラなく発色させることができるところに特徴がある。なお、発光装置10、筺体20やその他の装置、LED13〜19の配列、発光制御方法などは、第1実施形態に係る対応する各装置等とほぼ同じであるので、一部を除き、図示および詳細な説明は省略する。
【0085】
第2実施形態に係る発光装置10のLED13〜19は、第1実施形態と同じ配列順序で環状配置されている。このようにLED13〜19は、環状(円形)に配置されることで、円形に形成された反射板140に向けて環状に光を発光することができる。
【0086】
また、発光装置10の上方に配置されている反射板140は、内壁側が反射面となるように形成された筒状部材である。反射板140は、筒状の一端側が発光装置10近傍に位置し、他端側は筺体20の開口部22近傍に位置するように設けられている。これにより、反射板140は、発光装置10の近傍に配置された一端側から、各LED13〜19が発光した光を筒内部に導入し、導入した光を内壁で反射させながら開口部22側に配置された他端側から出力することができる。さらに反射板140は、発光装置10側から開口部22側に向かって広がるように形成されているので、各LED13〜19から発光した光をより広範囲に出力することができる。
【0087】
また、反射板140の開口部22側の端部には、円盤状の拡散板セット160が接続されている。拡散板セット160は、透明又は半透明の樹脂で円盤状に成形され、円形に形成された筺体20の開口部22を塞ぐように設けられている。
【0088】
拡散板セット160は、発光装置10側から第1拡散板162、第2拡散板164、第3拡散板166の順番で積層状態で設けられている。
【0089】
第1拡散板162及び第2拡散板164は両面が平らな円盤状となっている。また、開口部22に対して最も外側に配置される第3拡散板166は、開口外側に向かって凸となるように湾曲形状になっている。なお、本実施形態では、第3拡散板166が開口外側に凸となる湾曲形状としたが、第1拡散板162または第2拡散板164が開口外側に凸となるように湾曲形状にしても好ましい。また、上記のように各拡散板の上面を開口外側に凸形状に湾曲させるのではなく、上面と反対側となる底面を開口外側に凹形状となるように湾曲させても好ましい。拡散板セット160の、その他の構成や機能については第1実施形態と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
なお、第1拡散板162と第2拡散板164との間には、第1拡散板162を通過した光を広範囲に拡散させる拡散空間163が形成され、第2拡散板164と第3拡散板166との間にも、第2拡散板164を通過した光を広範囲に拡散させる拡散空間165が設けられている。なお、拡散空間163および165の機能や効果については、第1実施形態で説明した拡散空間33、35と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0091】
上記のように、自動車灯火用色基準表示装置100は、LED13〜19が環状に配置されるとともに、反射板140や拡散板セット160が円筒状および円盤状に形成されているので、LED13〜19から発した光が反射板140の周縁まで万遍無く行き届き、拡散板セット160の上面160Aをムラなく光らせることができる。
【0092】
なお、拡散板や反射板の形状は上記の実施形態に限定されるものではなく、楕円形や6角形や8角形等の多角形になるように配置しても好ましい。また、拡散板セット160の形状は、第1実施形態の拡散板セット30と同様に矩形としても好ましい。
【0093】
尚、本発明の自動車灯火用色基準表示装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の自動車灯火用色基準表示装置は、任意の色を数値により定量的に表示する表示装置の分野に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 自動車灯火用色基準表示装置
10 発光装置
13 赤色LED
15 橙色LED
17 緑色LED
19 白色LED
20 筐体
30 拡散板セット
32 第1拡散板
34 第2拡散板
36 第3拡散板
40 反射板セット
40A〜D 反射板
50 発光制御部
100 コンピュータ
120 液晶表示装置
K 発色可能範囲
M 白色合格範囲
N 赤色合格範囲
P 橙色合格範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状に配置され、異なる色を発光する複数種類の発光素子を有する発光装置と、
前記発光装置を収容する収容部、及び該収容部に連通する開口部を有する筐体と、
前記発光装置の発光素子の前面に設けられる拡散板と、
前記発光装置の前記複数種類の発光素子の発光量を制御する発光制御部と、
を備えることを特徴とする自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項2】
前記発光装置は、前記発光素子として、赤色を発光する赤色発光素子と、橙色を発光する橙色発光素子と、緑色を発光する緑色発光素子と、白色を発光する白色発光素子を含んで構成されていることを特徴とする、
請求項1に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項3】
前記発光素子の前面には、前記拡散板が複数枚積層されていることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項4】
複数枚の前記拡散板は、前記筐体の開口部方向に所定の間隔を明けて、設けられていることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項5】
前記複数枚の拡散板のうち、少なくとも1枚は、前記発光素子の発光方向に凸となるように湾曲していることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項6】
前記発光装置から前記筐体の開口部方向に向かって広がるように傾けて設けられている反射板をさらに備えていることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項7】
前記赤色発光素子、前記橙色発光素子、前記緑色発光素子、前記白色発光素子は、所定の面積の中で均等に配置されていることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項8】
前記赤色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.65〜0.75、y=0.25〜0.35の範囲であり、前記橙色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.53〜0.63、y=0.36〜0.46の範囲であり、前記緑色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.11〜0.21、y=0.62〜0.72の範囲であり、前記白色発光素子が発する光の色度座標は、x=0.25〜0.35、y=0.27〜0.37の範囲であることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項9】
前記発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項10】
前記発光装置に発光させる色を設定するための設定画面を表示する表示装置と、
前記設定画面で設定された色に対応する制御データを前記発光装置に送信する制御部と、
を備えることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の自動車灯火用色基準表示装置。
【請求項11】
前記設定画面は、少なくともCIE色度図及び灯火器の合否範囲を表示し、
前記CIE色度図の中から任意の色を選択する選択手段を更に備え、
前記制御部は、前記選択手段により選択された任意の色に対応する制御データを前記発光装置に送信することを特徴とする、
請求項10に記載の自動車灯火用色基準表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−95113(P2011−95113A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249609(P2009−249609)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(301028761)独立行政法人交通安全環境研究所 (55)
【Fターム(参考)】