説明

自動車用カーペットのバッキング材用組成物およびその製造方法

【課題】塗工量を減少させ、乾燥に時間がかからず、またフクレが生じない、接着力の大きい、かつ、通気性が優れているため吸音性のよいバッキング材を得ることのできるバッキング材用組成物、およびその製造方法、およびこれを用いる自動車用カーペット、その製造方法を提供する。
【解決手段】(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対し、(b)感熱ゲル化剤を0.1〜10重量部および/または(c)架橋剤を0.1〜10重量部、ならびに(d)フィラーを0〜500重量部含有する自動車用カーペットのバッキング材用組成物、その製造方法、およびその組成物をカーペット表面布帛の裏面に塗工し、裏打ち材と貼り合せた後100〜180℃で加熱するカーペットの製造方法、およびこれより得られる自動車用カーペット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用カーペットのバッキング材用組成物、その製造方法、そのバッキング材を用いたカーペット、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タフテッドカーペット表面となる一次基布の裏面には、塩ビゾルや熱可塑性樹脂などが塗工されていた。しかしながら、塩ビゾルには人体に有害とされる可塑剤が多量に配合されており、また燃焼時にハロゲンを含んだ有害ガスが発生するという問題がある。
また、熱可塑性樹脂や塩ビゾルは、通気性が悪く吸音性に乏しいので、これらを用いる場合、吸音性を向上させるため、すなわち、通気性を出すためには、厚手の不織布を貼り合せてカーペットを製造する方法が取られている。その場合のバッキング材は、ラテックスコンパウンドが用いられている。(なお、吸音性は、通気性と正の関係にあり、通気性がよいということは、吸音性がよいことを意味する。)
ラテックスコンパウンドは、基材に塗布した後、高温で乾燥処理する必要があるが、この加熱乾燥工程でフクレが発生したり、乾燥が不充分であると、接着に問題がある。
従来のラテックスコンパウンドは乾燥が遅く、加熱乾燥するために時間がかかり、このため硬化が充分に行われず、接着不良や、接着強度の低下がおこり、層間剥離が起きやすいという問題があった。また、多大なエネルギーを必要とすることも問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、塗工量を減少させ、乾燥に時間がかからず、またフクレが生じない、接着力の大きい、かつ、通気性が優れているため吸音性のよいバッキング材を得ることのできるバッキング材用組成物、およびその製造方法、およびこれを用いる自動車用カーペット、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対し、(b)感熱ゲル化剤を0.1〜10重量部および/または(c)架橋剤を0.1〜10重量部、ならびに(d)フィラーを0〜500重量部含有することを特徴とする自動車用カーペットのバッキング材用組成物に関するものである。
また、本発明は、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよび必要に応じ(d)フィラーを含有する混合物に、(b)感熱ゲル化剤および/または(c)架橋剤を配合することを特徴とする上記のバッキング材用組成物の製造方法に関するものである。
さらに、本発明は、カーペット表面布帛の裏面および/またはカーペット裏打ち材の表面に上記のバッキング材用組成物を塗工し、両者を貼り合せた後、100〜180℃で加熱することを特徴とする自動車用カーペットの製造方法に関するものである。
ここにおいて、バッキング材用組成物の塗工量は、50〜500g/m(乾燥重量)であることが好ましい。
また、この製造方法において、バッキング材用組成物を発泡機により発泡させて用いることが好ましい。
また、本発明は、上記の製造方法により得られる自動車用カーペットに関するものである。
ここにおいて、裏打ち材に貫通孔が全面に穿設された不織布を用いて上記の自動車用カーペットとすることもできる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、(b)感熱ゲル化剤および/または(c)架橋剤をバッキング材に添加し、必要により発泡することにより、カーペット製造に際し、塗工量を減少させ、乾燥時間を短縮し、また、得られるカーペットのバッキング材にフクレを起こさず、カーペットの層間接着強度を上げ、さらに通気性を、すなわち、吸音性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス
本発明に用いられる(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとは、スチレン、ブタジエンを主成分とし、これにカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体、さらに必要に応じてこれらと共重合可能な他のエチレン系不飽和単量体を共重合してなる共重合体ラテックスである。
【0007】
上記ブタジエン成分としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。
また、スチレン成分としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでもスチレンが好ましい。
カルボキシル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0008】
また、上記の単量体と共重合可能な他のエチレン系不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体などが挙げられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでもメチルメタクリレートが好ましい。
【0009】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、α−ヒドロキシエチルアクリレート、α−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでもα−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0010】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでもアクリロニトリルが好ましい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。なかでもアクリルアミドが好ましい。
【0011】
上記の(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの単量体組成は、(イ)ブタジエン成分3〜97重量%、(ロ)スチレン成分10〜95重量%、(ハ)カルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体0.1〜20重量%および(ニ)これらと共重合可能な他のエチレン系不飽和単量体0〜86.9重量%(ただし、(イ)+(ロ)+(ハ)+(ニ)=100重量%)が好ましい。
(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの固形分濃度は30〜70重量%が好ましい。さらに好ましくは40〜60重量%である。30重量%未満ではバッキング材用組成物の固形分が低く乾燥に時間を要し生産性が落ち、一方、70重量%を超えると粒径が大きいために水溶性増粘剤を多く必要とし、これを使用したバッキング材用組成物は耐水強度を低下させるため好ましくない。
【0012】
(b)感熱ゲル化剤
本発明に用いられる(b)感熱ゲル化剤とは、所定の感熱温度において、その構造機能が変化し、これを含有してなるラテックスの性質に変化(増粘・ゲル化)を与えるものである。
(b)感熱ゲル化剤の具体例としては、ポリアルキレンオキサイド、アルキルフェノールホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物、ポリエーテルホルマール、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレンオキシド変性ポリシロキサン、官能基を有するポリシロキサン、水溶性ポリアミド、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、タンパク、炭酸塩、重炭酸塩、ポリリン酸塩、曇点を有するノニオン系界面活性剤などを挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。これらのうち、ポリビニルメチルエーテル、官能基を有するポリシロキサンが好ましい。官能基を有するポリシロキサンとしては、官能基としてポリアルキレンアルキド変性を有するものが挙げられる。
【0013】
このような(b)感熱ゲル化剤の配合量は、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体100重量部(ラテックスの固形分)に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.5〜9重量部、さらに好ましくは、1.0〜7重量部である。この割合が0.1重量部未満ではバッキング層と基材との間の密着性向上効果を早期に発現させることが困難となる。一方、10重量部を超えるとラテックス状態の安定性が損なわれ、感熱温度に到達しない段階でゲル化や凝固を招くことがある。
【0014】
本発明の組成物において、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスに(b)感熱ゲル化剤を用いる際には、上記の感熱ゲル化剤とともに、感熱助剤が含有されていてもよい。ここに、感熱助剤は、ラテックス組成物の感熱温度や増粘性に変化を与える化合物であり、この感熱助剤が含有されていることにより、バッキング材用組成物の感熱ゲル化性をさらに向上(増粘・ゲル化の促進)させることができる。感熱助剤の具体例としては、アンモニア、ホウ酸、亜鉛華、尿素、多価金属の塩、複塩、錯塩などを挙げることができる。感熱助剤の含有割合としては、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス成分100重量部(固形分)に対して0.02〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜8重量部である。
【0015】
(c)架橋剤
本発明においては、(b)感熱ゲル化剤単独または(c)架橋剤単独、または両者を混合添加することが可能である。この両者を併用すると、塗工量を少なくして乾燥速度を短縮でき、接着強度も上げることができる。このような(c)架橋剤としては、たとえば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネートなどの(c)架橋剤を挙げることができる。中でも、ブロックイソシアネートが好ましい。
【0016】
ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートに活性水素を有するブロック剤を付加させることによって得られ、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生し、上記カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体中の官能基と反応し硬化するものである。このようなブロックイソシアネートは、特に限定されず、代表的なポリイソシアネート類としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロサキサンジイソシアネートなどの脂肪族環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどの脂環族イソシアネート、これらのヌレート体などの多量体及び混合物を用いることができる。
また、上記ブロック剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、フルフリルアルコール、アルキル基置換フルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどの脂肪族、芳香族または複素環式アルコール、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオトキシムなどのオキシム類、その他にカプロラクタムなどを挙げることができる。
これらの中で好ましいものはトリメチレンジイソシアネートにイソプロパノールをブロック剤として用いたものである。またさらに、ブロック剤を解離させるための触媒を用いることができる。
【0017】
ブロックイソシアネートの解離温度、すなわち、ブロックが外れる温度は、50〜200℃のものが好ましいが、さらに好ましいものは100〜180℃のものである。この温度が50℃未満ではバッキング材の粘度上昇があり塗工できない。一方、200℃を超えるとカーペットの乾燥温度ではブロックが解離せず接着強度がでない。
このような(c)架橋剤の配合量はカルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.5〜9重量部、さらに好ましくは、1.0〜7重量部である。0.1重量部未満では添加量が少なく接着強度が発現せず、一方、10重量部を超えると過剰添加で価格が上昇する。
また、(b)感熱ゲル化剤と(c)架橋剤を併用する場合、(b)感熱ゲル化剤と(c)架橋剤との割合は、重量比で1/3〜3/1が好ましい。特に好ましくは、1/2〜2/1である。
【0018】
(d)フィラー
本発明において、(d)フィラーは、増量剤として、また固形分濃度の増加や重量感を付与する目的で必要に応じて用いられる。このようなフィラーとしては、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、グラファイト、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、ゴム粉末、ガラスフレーク、ベントナイト、水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。
中でも、炭酸カルシウムが好ましい。
このような(d)フィラーの配合量は、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体100重量部(固形分換算)に対して、0〜500重量部であり、好ましくは、10〜450重量部、さらに好ましくは、20〜400重量部である。500重量部を超えると、バッキング材に弾性がなくなり、接着強度が弱くなる。
【0019】
その他の添加剤
また、本発明の組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、フェノール系、有機ホスファイト系、チオエーテル系などの酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;、ビスアミド系、ワックス系、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、有機金属塩系などの分散剤;、アミド系、有機金属塩系、エステル系などの滑剤;、含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リンなどの難燃剤;有機顔料;無機顔料;、金属イオン系などの無機、有機抗菌剤、安定剤、老化防止剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
【0020】
なお、本発明のバッキング材用組成物は、固形分濃度が、通常、40〜80重量%、好ましくは50〜75重量%、粘度が、通常、10,000〜30,000mPa・s、好ましくは15,000〜25,000mPa・sに調整される。
【0021】
組成物の製造方法
本発明の組成物を製造するには、まず、予め、(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよび必要に応じて(d)フィラー、さらに他の添加剤を含有する1群の混合物を調製し、これに、(b)感熱ゲル化剤および/または(c)架橋剤を含有する2群の混合物を配合すればよい。
1群の混合物の粘度は10,000〜40,000mPa・sとすることが好ましい。粘度が10,000未満では粘度が低すぎてカーペットと裏打ち材の双方にバッキング材用組成物が浸透して、界面にバッキング材用組成物が残らず接着強度が低下する。一方、40,000mPa・sを超えるとバッキング材用組成物の流動性がなくなり塗工に支障がでて、好ましくない。
1群の混合物の混合、2群の単独または混合物の混合、1群の混合物と2群の単独または混合物の混合は、ラインブレンダー、ニーダー、ブレンダーなどの混合機により行うことができる。
また、この際の混合温度は、通常、5〜40℃である。
【0022】
1群の混合物と2群の混合物の混合は、通常、組成物使用時に行われる。しかしながら、用いられる(b)感熱ゲル化剤および(c)架橋剤の種類、量によっては、ポットライフの長いものもあり、この場合、ポットライフに応じて設定すればよい。通常、ポットライフは12〜48時間である。
【0023】
カーペットの製造方法
本発明のカーペットの製造方法について以下に説明する。
本発明の製造方法は、例えば、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、チューブマット、フックドラッグ、ニットカーペットなどのあらゆる種類のカーペットの製造に適用できる。特に、厚手不織布貼りタフテッドカーペットの製造に好適である。
まず、例えば、タフテッドカーペットの製造の場合は、表面布帛である一次基布の裏面にプレコートを行う。プレコートは行わなくともよいが、タフテッドカーペットのようにパイルを植設した一次基布を用いる場合には、パイルが抜けるのを防止するため、仮止めとして行うことが好ましい。プレコートを行う場合は、通気性に影響が小さい固形分濃度が低いラテックスコンパウンドを塗工した後、100〜180℃で4〜10分加熱乾燥を行えばよい。
【0024】
次いでプレコートされた一次基布の裏面に、上記のように製造された本発明の組成物を塗布し、不織布などからなる裏打ち用の二次基布(裏打ち材)と貼り合せる。裏打ち用の二次基布は、不織布に限定されるものではなく、織物、編物などでもよい。また、組成物の塗布は、カーペット表面布帛の裏面だけでなく、これとカーペット裏打ち材の裏面両方に行ってもよいし、カーペット裏打ち材の裏面にだけ行ってもよい。
ここで、組成物を発泡機により発泡させてから塗工することが好ましい。発泡させることにより、バッキング材に気孔が形成されるので通気性を向上させる、すなわち、吸音性を向上させることができ、また塗工量を少なく調整することができる。発泡比重は0.3〜0.8が好ましい。0.3未満では、塗布量を少なくできるが充分な接着強度が得られず、一方、0.8を超えると塗工量が多くなり通気性、すなわち、吸音性が落ち、また、乾燥に時間を要し生産性が悪くなる。
【0025】
バッキング材用組成物の塗布量は、通常、50〜500g/m(乾燥重量)である。この量が50g/m未満では接着強度が弱く、一方、500g/mを超えると通気性が小さくなり、吸音性が低下し、また乾燥に時間を要し生産性が低下する。
貼り合せた後100〜180℃で加熱を行う。加熱温度が100℃未満では乾燥に時間を要し生産性が低下し、また、(b)感熱ゲル化剤や(c)架橋剤の性能を充分に引き出すことができず接着不良となる。一方、180℃を超えるとカーペットや裏打ち材が劣化する。
加熱時間は加熱温度にもよるが4〜10分が好ましい。
【0026】
また、必要により、裏打ち材として貫通孔が全面に穿設された不織布を用いて上記のようにカーペットを製造することもできる。本発明のカーペットは貫通孔がなくとも通気性の優れたものであるが、このような裏打ち材を用いることによりさらに通気性をよくすることができ、厚手不織布を用い、吸音性が必要な用途に用いる場合に非常に有効である。
貫通孔は、例えば、パイル打ち抜きなどにおいて、2〜10mm、好ましくは3〜8mmのものを開ければよい。
【0027】
本発明の製造方法により得られたカーペットは、層間接着力が優れ、通気性、すなわち吸音性もよい。特に、厚手不織布貼りのカーペットにおいても、優れた層間接着力と通気性を有する。
本発明のカーペットは、自動車用のカーペットとして有用である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明は本実施例および以下の実施例に限定解釈されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した。
<接着性>
JIS L1023:1992に準ずる。
規格 20N/5cm以上
<フクレの有無>
縦20cm、横10cmのタフトカーペットにバッキング材を2kg/m塗工し、予め180℃に加熱したギヤー老化試験機中に入れ、10分間放置し、取り出したカーペットの裏面状態を観察し、フクレの有無を確認する。
規格 フクレなし
<通気性>
JIS L1096:1999に準ずる。
規格 20cm/cm/s以上
なお、通気性が20cm/cm/s以上のものは、吸音性に優れているものである。
【0029】
実施例1
パイルが植設された一次基布の裏面にCL1202L(*1)をプレコートし、150℃、10分、加熱した。
(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとして、JSR0545(*2)を100重量部(固形分換算)に、(b)感熱ゲル化剤としてポリエーテル系ポリシロキサン(GE東芝シリコーン社製) 0.1重量部を、使用直前に配合し本発明の組成物を調製した。この組成物を万能混合撹拌機によって機械発泡した。得られた発泡比重0.6のバッキング材用組成物を1mmゲージのドクターロールで塗工し、上記の一次基布に塗布した。これに、裏打ち材としてポリエステルからなる厚手不織布(500g/m)を貼り合せ、150℃で15分、完全に乾燥するまで加熱乾燥し、カーペットを製造した。評価結果を表1に示す。
*1 イーテック社製 SBRラテックスコンパウンド、固形分30重量%、10,000mPa・s
*2 JSR社製、SBRラテックス、固形分50重量%、200mPa・s
【0030】
実施例2〜8
(c)架橋剤としてTDI系ブロックイソシアネート(明成化学社製)を用い、(d)フィラーとして、炭酸カルシウム(清水工業社製)を用い、表1に示す配合処方に基づいて、(a)、(d)を配合した1群混合物に、(b)および/または(c)を混合した2群混合物を、使用直前に配合し、表1に示す所定時間乾燥した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
表1より、SBRラテックスの乾燥重量100重量部に対して、(b)感熱ゲル化剤0.1〜10重量部、または(c)架橋剤0.1〜10重量部、または、双方のブレンド5/5、10/10(それぞれ重量比)、(d)フィラー0〜500重量部を添加したものは、すべて規格内に入ることがわかる。
【0031】
【表1】

【0032】
比較例1〜5
表2に示す配合処方に基づいて、バッキング用組成物を調製した。これを実施例1と同様の一次基布に塗布し、実施例1と同様の厚手不織布を貼り合せ、150℃にて表2に示す所定時間乾燥して、カーペットを製造した。評価結果を表2に示す。






【0033】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のバッキング材用組成物はカーペット表面布帛と裏打ち材の接着性に優れており、また、通気性、すなわち吸音性もよく、特に、厚手不織布貼りカーペットのバッキング材として好適である。また、得られるカーペットは自動車用カーペットとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対し、(b)感熱ゲル化剤を0.1〜10重量部および/または(c)架橋剤を0.1〜10重量部、ならびに(d)フィラーを0〜500重量部含有することを特徴とする自動車用カーペットのバッキング材用組成物。
【請求項2】
(a)カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよび必要に応じ(d)フィラーを含有する混合物に、(b)感熱ゲル化剤および/または(c)架橋剤を配合することを特徴とする請求項1記載の自動車用カーペットのバッキング材用組成物の製造方法。
【請求項3】
カーペット表面布帛の裏面および/またはカーペット裏打ち材の裏面に、請求項1記載のバッキング材用組成物を塗工し、両者を貼り合せた後、100〜180℃で加熱することを特徴とする自動車用カーペットの製造方法。
【請求項4】
バッキング材用組成物の塗工量が、50〜500g/m(乾燥重量)である請求項3記載の自動車用カーペットの製造方法。
【請求項5】
バッキング材用組成物を発泡機により発泡させて用いる請求項3または4記載の自動車用カーペットの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法により得られる自動車用カーペット。
【請求項7】
裏打ち材が、貫通孔が全面に穿設された不織布である請求項6記載の自動車用カーペット。

【公開番号】特開2006−16729(P2006−16729A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196208(P2004−196208)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】