説明

自動車用ドアトリムの取付構造

【課題】ドアトリムの剛性を確保すると共に、側突時におけるドアトリムの底付きタイミングを遅らせることが可能な自動車用ドアトリムの取付構造を提供する。
【解決手段】取付ボス41及びリブ44を介して内側トリム部材20が外側トリム部材18に取り付けられることで、ドアトリム16の通常使用時の剛性が確保される。一方、取付ボス41の周囲に設けられたリブ44において、取付ボス41の少なくとも前方側にはリブが設けられていない。このため、取付ボス周りの剛性が低減される。したがって、車両の側面衝突時(側突時)、二次衝突により乗員の上体の側部が内側トリム部材20に当たり、内側トリム部材20が外側トリム部材18に底付く方向に変形する際、取付ボス周りの潰れ残りが減少する。これにより、内側トリム部材20において、十分に変形することが可能となり、いわゆる底付きが抑制され、乗員が受ける反力が低減されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアトリムの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部品からなるドアトリムにおいて、例えば、特許文献1では、アームレストにボス部(取付ボス)が設けられており、当該ボス部にねじを螺合させることによって、アームレストがドアトリム基材に取り付けられるようになっている。この先行技術では、ボス部の周囲に、車両前後方向及び車両上下方向に沿って十字状に形成されたリブがドアトリムと一体に成形されている。なお、この他にも特許文献2、3に、取付用のボス部の周囲に補強リブが設けられた自動車用ドアトリムの取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−145245号公報
【特許文献2】特開2009−012325号公報
【特許文献3】特開2009−166782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の側面衝突時(以下、「側突時」という)、樹脂カシメ部(ボス部の周囲に4本の補強リブが一体成形された部位)の潰れ残りが多い場合、ドアトリムにおいていわゆる底付きのタイミングが早くなってしまう。側突性能としては、底付きのタイミングが遅いほど性能が上がるため、底付きタイミングを遅らせる点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ドアトリムの剛性を確保すると共に、側突時におけるドアトリムの底付きタイミングを遅らせることが可能な自動車用ドアトリムの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の自動車用ドアトリムの取付構造は、サイドドアのドア内板を構成するドアインナパネルの車室内側に取付けられると共に開口部を有する外側トリム部材と、車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成し、前記外側トリム部材に取り付けられて当該外側トリム部材の開口部を覆う内側トリム部材と、前記内側トリム部材における後部側に設けられ、前記外側トリム部材に形成された挿入孔へ挿入され前記外側トリム部材に対して抜け止めされた状態で固定される取付ボスと、前記取付ボスの外周面から張り出し、前記取付ボスの少なくとも前方側を除きかつ少なくとも当該取付ボスの上下方向に沿って縦リブが設けられたリブ群と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の自動車用ドアトリムの取付構造では、サイドドアのドア内板を構成するドアインナパネルの車室内側に外側トリム部材が取り付けられている。この外側トリム部材には内側トリム部材が取り付けられるようになっており、外側トリム部材に形成された開口部が内側トリム部材によって覆われる。
【0008】
ここで、内側トリム部材は車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成している。また、内側トリム部材における後部側には、外側トリム部材に形成された挿入孔へ挿入される取付ボスが設けられており、当該取付ボスは外側トリム部材に対して抜け止めされた状態で固定される。また、取付ボスの外周面からはリブ群が張り出している。このリブ群によって取付ボスは補強されている。
【0009】
これにより、取付ボスを介して内側トリム部材を外側トリム部材にしっかりと取り付けることができる。つまり、内側トリム部材は外側トリム部材との間で取付ボス及びリブ群によって支持されることとなり、内側トリム部材は撓み難くなる。したがって、ドアトリムの通常使用時の剛性が確保される。
【0010】
ところで、このリブ群は、取付ボスの少なくとも前方側を除きかつ少なくとも当該取付ボスの上下方向に沿って縦リブが設けられている。一方、内側トリム部材は車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成しているため、乗員が内側トリム部材を触るとき、内側トリム部材が平面形状を成している場合と比較して、車両前後方向に沿った受圧面積が小さくなる。つまり、乗員は車両上下方向に沿った少ない受圧面積で内側トリム部材に触れることとなる。したがって、乗員が内側トリム部材を触る際の荷重入力を車両上下方向に沿った線に集中させることができる。このため、取付ボスの外周面から上下方向に沿って縦リブが張り出すことによって、内側トリム部材は必要な剛性を確保することができる。
【0011】
また、リブ群において、取付ボスの少なくとも前方側にはリブが設けられていない。車両の側突時、二次衝突により乗員の上体の側部が内側トリム部材に当たり、当該内側トリム部材に衝突荷重が入力されると、内側トリム部材が外側トリム部材に底付く方向に変形する。このため、内側トリム部材が外側トリム部材に底付く方向に変形する際、当該内側トリム部材における後部側では、内側トリム部材の前部側へ倒れ込むようにして変形する。したがって、取付ボスの前方側の強度が高すぎると、取付ボス及び取付ボスの周囲(以下、「取付ボス周り」という)では潰れ残りが生じ、内側トリム部材の変形が阻害され、底付きのタイミングが早くなってしまう。
【0012】
本発明では、取付ボスにおいて、少なくともその前方側にリブが設けられていないため、取付ボスの前方側にリブが設けられた場合と比較して、当該取付ボスを含む取付ボス周りの剛性が低減される。これにより、取付ボス周りの潰れ残りが減少し、内側トリム部材において、十分に変形することが可能となる。これにより、いわゆる底付きが抑制され、乗員が受ける反力が低減されることとなる。また、潰れ残りが減少することで、内側トリム部材によって衝撃エネルギーが吸収されるストロークを長くすることができる。
【0013】
なお、ここでの「車両前後方向」には、水平方向に沿った方向だけでなく、当該水平方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。また、「車両上下方向」には、鉛直方向に沿った方向だけでなく、当該鉛直方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。
【0014】
請求項2に記載の自動車用ドアトリムの取付構造は、請求項1において、前記縦リブが、前記内側トリム部材の外縁部に設けられた縦壁との間で設けられた稜線に沿って形成されている。
【0015】
二次衝突により内側トリム部材に衝突荷重が入力されると、内側トリム部材の外縁部に設けられた縦壁との間で設けられた稜線に荷重が集中しやすい。このため、請求項2の構成では、取付ボスの外周面から上下方向に沿って張り出す縦リブが当該稜線に沿って形成されることで、内側トリム部材の通常使用時の剛性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1記載の発明に係る自動車用ドアトリムの取付構造は、ドアトリムの剛性を確保すると共に、側突時におけるドアトリムの底付きタイミングを遅らせることができる、という優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の発明に係る自動車用ドアトリムの取付構造は、内側トリム部材の通常使用時の剛性を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る自動車用ドアトリムの取付構造が適用されたサイドドアを示す分解斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る自動車用ドアトリムの取付構造が適用されたドアトリムの正面図である。
【図3】(A)は図2の3(A)−3(A)線に沿って切断した状態を示す拡大断面図であり、(B)は図2の3(B)−3(B)線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【図5】(A)には、図3(A)で示す取付ボスの拡大平面図が示されており、(B)には、図4で示す取付ボスの拡大平面図が示されている。
【図6】(A)には、図4において要部が拡大された断面図が示されており、(B)は、内側トリム部材が外側トリム部材に底付く方向に変形した状態が示されている。
【図7】図6(A)、(B)にそれぞれ対応する比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を示し、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印OUTは車両幅方向外側をそれぞれ示す。
【0020】
(自動車用ドアトリムの取付構造の構成)
図1には、本実施形態に係る自動車用ドアトリムの取付構造が適用された乗用自動車等の車両のサイドドア12を構成するドアパネル14及びドアトリム16(外側トリム部材18及び内側トリム部材20)において車室22内側から見た状態の分解側面図が示されている。また、図2は、ドアトリム16において、外側トリム部材18に内側トリム部材20が取り付けられた状態の正面図が示されている。
【0021】
図1に示されるように、車両の車両側部にはドアパネル14が設けられている。このドアパネル14は図示しないドアアウタパネルとドアインナパネル24とを備えており、ドアインナパネル24は車両側部の内板を構成している。ドアインナパネル24の車両幅方向内側(車室22内側)には、当該ドアインナパネル24に対向してドアトリム16が取り付けられている。
【0022】
ここで、ドアトリム16は、ドアインナパネル24の車室22内側に取付けられる外側トリム部材18と、当該外側トリム部材18に取付けられる内側トリム部材20と、を含んで構成されている。図3(A)には図2の3(A)−3(A)線に沿って切断した状態の拡大断面図が示され、図3(B)には図2の3(B)−3(B)線に沿って切断した状態の拡大断面図が示されている。なお、図3(A)、(B)には、後述する内側トリム部材20の周壁20A側のみが図示されている。また、図4には図2の4−4線に沿って切断した状態の断面図が示されており、図6(A)には、図4において、内側トリム部材20の周壁20A側のみが拡大して図示されている。
【0023】
図3(A)、(B)に示されるように、外側トリム部材18の外縁側には、車室22内側へ向かって円弧状に膨らむ周壁18Aが設けられている。また、外側トリム部材18の外縁部には、周壁18Aの端部からドアインナパネル24と対向するようにして外側トリム部材18の外側へ向かって屈曲すると共に、当該ドアインナパネル24へ向かって湾曲する縁部18Bが設けられている。外側トリム部材18は車室22内側へ突出しており、外側トリム部材18がドアインナパネル24に取り付けられた状態で、外側トリム部材18の周壁18Aとドアインナパネル24の表面24Aとの間には隙間26が設けられている。
【0024】
また、図1に示されるように、外側トリム部材18の上部側には略矩形状の開口部28が形成されており、開口部28の下方側にはペットボトルなどを収納可能な収納部30が設けられている。開口部28の周辺部には、枠状の取付座面32が形成されている。
【0025】
この取付座面32における前部(車両前後方向の前側)に位置する前枠32Aには、円形状の挿入孔34が複数設けられている。また、取付座面32の上部に位置する上枠32B、後部(車両前後方向の後側)に位置する後枠32C及び下部に位置する下枠32Dには、上述の挿入孔34以外に矩形状の係止孔36が所々に設けられている。
【0026】
そして、ここでは係止孔36の車両前方側及び車両後方側或いは係止孔36の車両上方側及び車両下方側に挿入孔34が設けられている。係止孔36は、例えば、図示はしないが、ここでは、シートに着座した乗員の胸部位置や腰部位置に相当する高さに設けられている。
【0027】
一方、内側トリム部材20は外側トリム部材18に形成された開口部28の周辺部に取付可能とされており、図2に示されるように、内側トリム部材20が外側トリム部材18に取り付けられた状態で、当該内側トリム部材20によって開口部28(図1参照)は塞がれる。
【0028】
内側トリム部材20の車両上下方向の中央側には、略車両前後方向に沿ってドアアームレスト21が設けられており、当該ドアアームレスト21の上面には、サイドドア12に設けられたサイドガラス(図示省略)を昇降させるためのパワーウィンドスイッチ(図示省略)などが設けられている。
【0029】
ここで、図4に示されるように、内側トリム部材20は車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成している。また、内側トリム部材20の外縁部には縦壁20Aが設けられており、外側トリム部材18との間に隙間38を設け、内側トリム部材20が外側トリム部材18と干渉しないように形成されている。
【0030】
ところで、図1に示されるように、内側トリム部材20の外縁側には、外側トリム部材18の取付座面32に設けられた挿入孔34に対応して取付ボス40、41が設けられ、当該取付座面32に設けられた係止孔36に対応して係止片42が設けられている。ここでは係止片42の車両前方側及び車両後方側或いは係止孔36の車両上方側及び車両下方側に後述する取付ボス40、41が設けられている。なお、取付ボス40、41及び係止片42は、本件の要旨となる内側トリム部材20の車両後方側のみ図示している。
【0031】
図1に示されるように、ドアインナパネル24の外縁側には円形状の装着孔52が形成されている。一方、外側トリム部材18には台座54が突設されている。この台座54には例えば略円錐状のクリップ56が取付可能とされている。このクリップ56は弾性変形可能とされており、当該クリップ56が装着孔52に対して圧入により装着孔52の周辺部に装着される。このクリップ56が、ドアインナパネル24の装着孔52の周辺部に装着された状態で、ドアトリム16はドアインナパネル24に取り付られることとなる。そして、これらクリップ56及び台座54の近傍(車両前方側)には、係止孔36及び係止片42が設けられている。
【0032】
図3(B)に示されるように、係止片42は、内側トリム部材20の裏面側から車両幅方向外側かつ車両後方側へ向かって延出する帯状を成しており、車両幅方向に沿った直線に対して傾斜して形成されている。また、係止片42の先端部には車両幅方向内側かつ車両後方側へ向かって側面視で略V字状に折り返された係止爪50が形成されている。係止片42は外側トリム部材18に形成された係止孔36へ挿入可能とされており、係止片42は弾性変形された状態で、係止爪50が係止孔36の周辺部に係止されている。
【0033】
一方、図5(A)、(B)に示されるように、取付ボス40、41は円筒状を成しており、図1に示される外側トリム部材18に形成された挿入孔34へ挿入可能な大きさに設定されている。
【0034】
図5(A)に示されるように、取付ボス40の周囲には、取付ボス40の外周面から略車両上下方向及び略車両前後方向に沿って十字状に張り出すリブ43が設けられている。このリブ43は、取付ボス40の上方側に設けられた縦リブ43Aと、取付ボス40の下方側に設けられた縦リブ43Bと、取付ボス40の後方側に設けられた横リブ43Cと、取付ボス40の前方側に設けられた横リブ43Dと、で構成されている。
【0035】
ここで、図1に示されるように、取付ボス41は、シートに着座した乗員の胸部位置に相当する高さに設けられた係止片42の下方側に設けられている。そして、図5(B)に示されるように、取付ボス41の周囲には、取付ボス41の外周面から略車両上下方向及び略車両前後方向に沿って、取付ボス41の前方側を除いてT字状に張り出すリブ群としてのリブ44が設けられている。このリブ44は、取付ボス41の上方側に設けられた縦リブ44Aと、取付ボス4の下方側に設けられた縦リブ44Bと、取付ボス41の後方側に設けられた横リブ44Cと、で構成されている。
【0036】
なお、図5(A)、(B)に示すリブ43、44が、内側トリム部材20の縦壁20Aに近接している場合(例えば図6(A)に示す横リブ44C)、当該リブ43、44は縦壁20Aと一体に形成される。また、リブ43、44は内側トリム部材20の表壁20Bと縦壁20Aとの間で形成される稜線P(図2参照)に沿って設けられることが望ましく、当該稜線Pによってはリブ43、44が車両上下方向又は車両前後方向に沿った直線に対して傾斜する場合もある。
【0037】
また、リブ43、44は取付ボス40、41よりも低くなるようにそれぞれ設定されており、取付ボス40、41の先端部が挿入孔34を貫通可能とされている。そして、取付ボス40、41の先端部が挿入孔34(図3(A)及び図6(A)参照)へ挿入された状態で、取付ボス40、41の先端部は取付座面32の裏面側(車両外側)から露出し、リブ43、44の先端面が取付座面32の表面側(車両内側)に当接した状態で取付ボス40、41(内側トリム部材20)はその移動が規制される。なお、このとき、内側トリム部材20の縦壁20Aは外側トリム部材18の周壁18Aに当接する。
【0038】
このように、取付ボス40、41の移動が規制された状態で、図3(A)及び図6(A)に示されるように、取付ボス40、41の先端部は、それぞれ熱カシメされ(溶融部46によって抜け止めされ)固定される。これにより、当該取付ボス40、41を介して内側トリム部材20が外側トリム部材18に取り付けられる。
【0039】
このようにして、取付ボス40、41と共に当該係止片42(図3(B)参照)を介して、内側トリム部材20が外側トリム部材18に取り付けられた状態で、外側トリム部材18(ドアトリム16)はドアインナパネル24に取り付けられるようになっている。
【0040】
(自動車用ドアトリムの取付構造の作用・効果)
図1に示されるように、ドアトリム16は外側トリム部材18と内側トリム部材20とを含んで構成されており、外側トリム部材18に内側トリム部材20が取り付けられるようになっている。そして、本実施形態では、外側トリム部材18に形成された開口部28の周辺部に設けられた取付座面32の上枠32B、後枠32C及び下枠32Dにおいて、挿入孔34以外に係止孔36が設けられている。
【0041】
そして、図3(B)に示されるように、この係止孔36には内側トリム部材20に形成された係止片42が挿入され、当該係止片42は弾性変形した状態で係止爪50が係止孔36の周辺部に係止されるようになっている。これにより、係止片42を介して内側トリム部材20を外側トリム部材18側へ向かって(車両幅方向外方へ向かって)押圧する押圧力が作用し、内側トリム部材20には当該押圧力に抗する反力が生じ、内側トリム部材20はこの部分において必要な剛性を確保することができる。
【0042】
そして、自動車の側突時、乗員のドアトリム16への二次衝突により、内側トリム部材20が外側トリム部材18側へ変形すると、係止片42の係止爪50は係止孔36の周辺部との係止状態が解除され、側突における乗員の二次衝突による衝突反力を減少させ、乗員の二次衝突に関する側突性能を確保することができる。
【0043】
一方、図3(A)及び図6(A)に示されるように、挿入孔34には内側トリム部材20に形成された取付ボス40、41がそれぞれ挿入され、当該取付ボス40、41の先端部が熱カシメされた状態(抜け止めされた状態)で、内側トリム部材20が外側トリム部材18にそれぞれ固定されるようになっている。この状態で、内側トリム部材20と外側トリム部材18との間に設けられた隙間38が取付ボス40及びリブ43、取付ボス41及びリブ44によってそれぞれ埋められる。
【0044】
このため、取付ボス40及びリブ43、取付ボス41及びリブ44を介して内側トリム部材20が外側トリム部材18にしっかりと取り付けられる。つまり、内側トリム部材20と外側トリム部材18との間で取付ボス40及びリブ43、取付ボス41及びリブ44によって支持されることとなり、内側トリム部材20は撓み難くなる。したがって、ドアトリム16の通常使用時の剛性が確保される。
【0045】
ここで、図5(B)に示されるように、取付ボス41の周囲には、取付ボス41の外周面から張り出すリブ44が設けられており、当該リブ44は、取付ボス41の前方側を除き、取付ボス41の上方側に設けられた縦リブ44Aと、取付ボス4の下方側に設けられた縦リブ44Bと、取付ボス41の後方側に設けられた横リブ44Cと、で構成されている。一方、図4に示されるように、内側トリム部材20は車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成しているため、乗員が内側トリム部材20を触るとき、内側トリム部材20が平面形状を成している場合と比較して、車両前後方向に沿った受圧面積が小さくなる。
【0046】
つまり、乗員は車両上下方向に沿った少ない受圧面積で内側トリム部材20に触れることとなる。したがって、乗員が内側トリム部材20を触る際の荷重入力を車両上下方向に沿った線に集中させることができる。このため、取付ボス41の外周面から上下方向に沿って縦リブ44A、44Bが張り出すことによって、内側トリム部材20において、剛性感を得ることができる。
【0047】
また、前述のように、取付ボス41の周囲に設けられたリブ44において、取付ボス41の少なくとも前方側にはリブが設けられていない。図6(B)に示されるように、車両の側突時、二次衝突により乗員Fの上体の側部が内側トリム部材20に当たり、当該内側トリム部材20に衝突荷重が入力されると、内側トリム部材20が外側トリム部材18に底付く方向に変形する。内側トリム部材20は外側トリム部材18に形成された開口部28を塞ぐため、外側トリム部材18の内側に配置される。
【0048】
このため、内側トリム部材20が外側トリム部材18に底付く方向に変形する際、例えば、図7(A)、(B)には、本実施形態の比較例が示されている。図7(A)では、内側トリム部材100における後部側において取付ボス102の周囲に十字状のリブ104が設けられている。当該取付ボス102を含み当該取付ボス102の周囲の強度が高すぎる場合、図7(B)に示されるように、リブ104において潰れ残りが生じ、内側トリム部材20の変形が阻害されてしまう。このため、底付きのタイミングが早くなってしまう。
【0049】
これに対して、本実施形態では、図6(A)に示されるように、取付ボス41において、少なくともその前方側にリブが設けられていない。このため、取付ボス41の前方側にリブが設けられた場合と比較して、当該取付ボス41を含み取付ボス41の周囲(以下、「取付ボス周り」という)の剛性が低減される。これにより、図6(B)に示されるように、取付ボス周りの潰れ残りが減少し、内側トリム部材20において、十分に変形することが可能となる。したがって、いわゆる底付きが抑制され、乗員が受ける反力が低減されることとなる。また、潰れ残りが減少することで、内側トリム部材20によって衝撃エネルギーが吸収されるストロークを長くすることができる。
【0050】
以上のことから、本実施形態では、ドアトリム16の剛性を確保すると共に、側突時におけるドアトリム16の底付きタイミングを遅らせることができる。このように、内側トリム部材20の変形が阻害されることなく、内側トリム部材20が十分に変形することが可能となることで、側突における乗員の二次衝突による衝突反力を減少させるという係止片42の効果を十分に発揮させることができる。
【0051】
一方、図2に示されるように、リブ43、44は内側トリム部材20の表壁20Bと縦壁20Aとの間で形成される稜線Pに沿って設けられている。二次衝突により内側トリム部材20に衝突荷重が入力されると、当該稜線Pに荷重が集中しやすい。このため、取付ボス40、41の外周面から張り出すリブ43、44が当該稜線Pに沿って形成されることで、内側トリム部材20の通常使用時の剛性がさらに向上する。また、リブ43、44が形成されることによりヒケが生じる可能性もあるが、当該リブ43、44を稜線Pに沿って形成することで、ヒケを目立たなくすることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、回動式のサイドドア12を図示して説明したが、スライド式のサイドドアに本発明を適用させても良い。
【0053】
(本実施形態の補足)
本実施形態では、図3(A)及び図6(A)に示されるように、取付ボス40、41の先端部をそれぞれ熱カシメして、内側トリム部材20が外側トリム部材18に固定されるようにしたが、内側トリム部材20を外側トリム部材18に取り付けることができれば良いため、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、取付ボスの先端部からビスを螺合させ、当該ビスの頭部によって取付ボスが抜け止めされ、これによって、内側トリム部材20が外側トリム部材18に固定されるようにしても良い。また、取付ボス40と取付ボス41とで固定方法が異なっていても良い。
【0054】
また、本実施形態では、図5(B)に示されるように、取付ボス41の周囲に設けられたリブ44において、取付ボス41の前方側のみを除いたが、取付ボス41の前方側リブ及び取付ボス41の後方側の横リブ44Cを除いても良い。また、リブ43の形状を十字状とし、リブ44の形状をT字状としたが、リブ43、44の形状はこれに限るものではない。例えば、リブ43において、5本のリブによって構成されても良く、また、取付ボス41、43が設けられる場所によって、リブの形状をそれぞれ変えても良い。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
12 サイドドア
16 ドアトリム
18 外側トリム部材(ドアトリム)
20 内側トリム部材(ドアトリム)
24 ドアインナパネル
28 開口部
34 挿入孔
41 取付ボス
44 リブ(リブ群)
44A 縦リブ
44B 縦リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドアのドア内板を構成するドアインナパネルの車室内側に取付けられると共に開口部を有する外側トリム部材と、
車両幅方向外側へ突出し車両前後方向に沿って形成された湾曲形状を成し、前記外側トリム部材に取り付けられて当該外側トリム部材の開口部を覆う内側トリム部材と、
前記内側トリム部材における後部側に設けられ、前記外側トリム部材に形成された挿入孔へ挿入され前記外側トリム部材に対して抜け止めされた状態で固定される取付ボスと、
前記取付ボスの外周面から張り出し、前記取付ボスの少なくとも前方側を除きかつ少なくとも当該取付ボスの上下方向に沿って縦リブが設けられたリブ群と、
を有する自動車用ドアトリムの取付構造。
【請求項2】
前記縦リブが、前記内側トリム部材の外縁部に設けられた縦壁との間で設けられた稜線に沿って形成されている請求項1に記載の自動車用ドアトリムの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−107421(P2013−107421A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251780(P2011−251780)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】