説明

自動車用ドアラッチ装置

【課題】シール部材を形成する材料の歩留まりを良くし、コスト低減を図る。
【解決手段】防水シール部材9は、コネクタ部7に外嵌しない状態では、中央部分に互いに対向する内面同士が接触し、かつ弾性変形により拡張してコネクタ部7が嵌入可能なスリット91を有するシート状をなし、また、コネクタ部7に外嵌した状態では、スリット91が拡張し、スリット91の内面がコネクタ部7の外周面に密接するように弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア内に固定される噛合機構を収容したボディに、電装部品を収容したハウジングを固定した自動車用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアラッチ装置においては、噛合機構を収容したボディと、ボディに固定されると共に、各種レバーから構成される制御機構、電動モータ及び位置検出センサ等の電装部品を収容したハウジングとを備える。そして、ドアのインナパネルに対向するハウジングの側面には、外部の電気配線に接続されたコネクタが接続されるコネクタ部が突設される。コネクタ部の内部には、位置検出センサの検出信号を出力したり、操作スイッチの操作信号を入力したりするための接続端子が設けられれる。また、コネクタ部には、コネクタ部を防水するための弾性ゴム等で形成される防水シール部材が外嵌される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−193726号公報
【特許文献2】特許第4136880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載された自動車用ドアラッチ装置における防水シール部材は、弾性ゴムシート材を、中央部にコネクタ部の外形と相似形の開口を有する環状、または額縁状に裁断することによって成型される。よって、防水シール部材の外形が大きくなると共に、開口を形成する中央部分が切り抜かれて廃棄されるため、極めて材料(弾性ゴムシート材)の歩留まりが悪く、材料費の上昇を招くこととなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、シール部材を形成する材料の歩留まりを良くし、コスト低減を可能にした自動車用ドアラッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明においては、ドア内に固定されると共に、車体側のストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、前記ボディに固定されると共に、電装部品を収容したハウジングとを備え、前記ドアのパネルに対向する前記ハウジングの側面に、前記電装部品に電気的に接続する接続端子の周囲を囲む筒状のコネクタ部を突設し、前記コネクタ部に弾性材により成型される防水シール部材を外嵌した自動車用ドアラッチ装置において、前記防水シール部材は、前記コネクタ部に外嵌しない状態では、中央部分に互いに対向する内面同士が接触し、かつ弾性変形により拡張して前記コネクタ部が嵌入可能なスリットを有するシート状をなし、また、前記コネクタ部に外嵌した状態では、前記スリットが拡張し、前記スリットの内面が前記コネクタ部の外周面に密接するように弾性変形する。
【0007】
さらに、本発明においては、前記スリットを、一文字状とする。さらに、前記防水シール部材を外形が長方形のシート状とし、前記スリットを前記長方形の長辺と平行に形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防水シール部材を中央部分にスリット有するシート状としたことにより、防水シール部材を成型する際の材料(弾性ゴムシート)の歩留まりが良くなり、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本発明に係わるドアラッチ装置及び取付前の防水シール部材の斜視図、図2は、ドアラッチ装置の正面図、図3は、図2におけるIII矢視図、図4は、図1におけるIV−IV線拡大断面図である。
【0010】
ドアラッチ装置1は、自動車のドア内に固定されると共に、噛合機構を収容したボディ2と、ボディ2に固定されると共に、噛合機構の作動を制御するための複数のレバーから構成される制御機構及び電装部品を収容したハウジング3とを備える。なお、ドアラッチ装置1は、ハウジング3の側面30がドアのインナパネルPの内側面に対向するように、ドア内に取り付けられる。
【0011】
噛合機構は、ドアを閉鎖状態に保持するためのもので、車体側に固着されたストライカ(図示略)に係合可能なラッチ21と、ストライカに係合したラッチ21の回動を阻止するラチェット(図示略)とを含む。
【0012】
制御機構は、ドアの車外側に設けられる開扉操作用のアウトサイドハンドルに連結されるアウトサイドレバー(図示略)と、同じく車内側に設けられる開扉操作用のインサイドハンドルに操作力伝達用のケーブル5を介して連結されるインサイドレバー4と、同じく車外側に設けられる施解錠操作用のキーシリンダに連結されるキーレバー(図示略)と、同じく車内側に設けられる施解錠操作用のロッキングノブに連結されるロックレバー6とを含む。
【0013】
電装部品は、適宜の操作スイッチの施錠、解錠操作に基づいて駆動し、ロックレバー6を作動させるための電動モータ(図示略)と、ロックレバー6の作動位置を検出するための位置検出センサ(図示略)とを含む。
【0014】
ハウジング3の側面30には、インナパネルPの内側面に対向し、かつ平行な平坦面31が形成される。平坦面31の中央部には、電装部品に電気的に接続され、位置検出センサの検出信号を出力したり、操作スイッチの操作信号を入力したりするための接続端子8が設けられる。平坦面31における接続端子8の周囲には、外形が長方形の角筒状のコネクタ部7が突設される。コネクタ部7は、インナパネルPに穿設された矩形の連通孔P1を通してドア外(車内側)に突出する。連結孔P1から突出したコネクタ部7には、ドアに配線されるワイヤハーネス(電線)に接続されたコネクタ(図示略)が接続される。
【0015】
コネクタ部7の外周面には、弾性変形可能な防水シール部材9が外嵌される。防水シール部材9は、図4に示すように、コネクタ部7の外周面に外嵌された状態で、インナパネルPにおける連通孔P1の周辺の内側面とハウジング3における平坦面31との間に、挟み込まれることによって、コネクタ部7をシールする。
【0016】
防水シール部材9は、EPDM(エチレンープロピレンゴム)のゴムシート材を、予め定めた大きさの長方形に裁断すると共に、中央部分に長辺9aと平行で、かつ弾性変形により拡張可能な一文字状のスリット91を設けることによって成型される。なお、スリット91は、コネクタ部7の長辺(コネクタ部7が円筒の場合は直径)よりも長く形成される。これによって、防水シール部材9は、図1に実線で示すように、コネクタ部7に外嵌しない状態では、中央部分に互いに対向する内面同士が接触し、かつ弾性変形の拡張によりコネクタ部7が嵌入可能なスリット91を有するシート状をなし、また、図1の2点鎖線及び図3に示すように、コネクタ部7に外嵌した状態では、スリット91が拡張し、スリット91の内面がコネクタ部7の外周面に密接するように弾性変形することで、防水シール部材9の固定を容易に行うことが可能となる。
【0017】
なお、防水シール部材9をコネクタ部7に外嵌する場合は、コネクタ部7の長辺7aとスリット91とを平行にした状態で、コネクタ部7をスリット91に嵌入する。これにより、防水シール部材9をコネクタ部7に外嵌した形態は、特に図3に示すように、スリット91の両端部91a、91aが、コネクタ部7の両短辺7b、7bの中央に位置する。この場合は、コネクタ部7の短辺7bとスリット91の端部91aとの間に僅かの隙間が形成されるが、防水シール部材9は、ハウジング3の平坦面31とインナパネルPとの間に密接するため、防水効果に悪影響を与えることはない。
【0018】
上述により、防水シート部材9を中央部に一文字状のスリット91を有するシート状としたことにより、防水シール部材9の外形を小さくすることができると共に、中央部に開口を有しないため、材料の歩留まりが格段に向上し、コスト低減を図ることができる。また、スリット91を一文字状としたことにより、スリット91を簡単に成型することができる。
【0019】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)コネクタ部7を円筒状または正方形の角筒状とする。
(ii)防水シール部材9を、中央部分にスリット91を有する円形シート状または正方形シート状とする。
(iii)図5に示すように、スリット91の両端部91a、91aが、コネクタ部7の対角の角部7c、7cに係合するように、防水シール9をコネクタ部7に外嵌する。この場合は、防水シール部材9におけるスリット91の内面とコネクタ部7の外周面との間の隙間を少なくすることができる。
(iv)図6に示すように、スリット92を、長方形の防水シール部材9に対角線に沿って設け、上記(iii)と同じように、スリット92の両端部92a、92aが、コネクタ部7の対角の角部に係合するように、防水シール9をコネクタ部7に外嵌する。この場合においても、防水シール部材9におけるスリット92の内面とコネクタ部7の外周面との間の隙間を少なくすることができる。
(v)防水シール部材9における平坦面31と対向する面に接着剤を塗布する。これにより、防水シール部材9をドアラッチ装置に確実に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わるドアラッチ装置及び取付前の防水シール部材の斜視図である。
【図2】ドアラッチ装置の正面図である。
【図3】図2におけるIII矢視図である。
【図4】図1におけるIV−IV線拡大断面図である。
【図5】取り付け状態における防水シール部材の変形例の要部の正面図である。
【図6】非取り付け状態における防水シール部材の変形例の正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ドアラッチ装置
2 ボディ
3 ハウジング
4 インサイドレバー
5 ケーブル
6 ロックレバー
7 コネクタ部
7a 長辺
7b 短辺
7c 角部
8 接続端子
9 防水シール部材
9a 長辺
21ラッチ
30 側面
31 平坦面
91、92 スリット
91a 端部
P インナパネル
P1 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア内に固定されると共に、車体側のストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、前記ボディに固定されると共に、電装部品を収容したハウジングとを備え、前記ドアのパネルに対向する前記ハウジングの側面に、前記電装部品に電気的に接続する接続端子の周囲を囲む筒状のコネクタ部を突設し、前記コネクタ部に弾性材により成型される防水シール部材を外嵌した自動車用ドアラッチ装置において、
前記防水シール部材は、前記コネクタ部に外嵌しない状態では、中央部分に互いに対向する内面同士が接触し、かつ弾性変形により拡張して前記コネクタ部が嵌入可能なスリットを有するシート状をなし、また、前記コネクタ部に外嵌した状態では、前記スリットが拡張し、前記スリットの内面が前記コネクタ部の外周面に密接するように弾性変形し得ることを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記スリットを、一文字状としたことを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記防水シール部材を外形が長方形のシート状とし、前記スリットを前記長方形の長辺と平行に形成したことを特徴とする請求項2記載の自動車用ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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