自動車用ホイール
【課題】ハブボルト挿通孔回りの変形、特に挫屈してしまうことを防止することが出来る鋳造アルミニュームで製造された自動車用ホイールの提供。
【解決手段】アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイール(1)において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40)に形成されており、該インサート(40)は鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面に露出している部分(41)と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分(45)とを有しており、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)近傍から構造上強度が要求される領域に向って突出しているフランジ(46)が形成されており、該フランジ(46)は鋳造アルミニュームに埋設されている。
【解決手段】アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイール(1)において、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40)に形成されており、該インサート(40)は鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面に露出している部分(41)と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分(45)とを有しており、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)近傍から構造上強度が要求される領域に向って突出しているフランジ(46)が形成されており、該フランジ(46)は鋳造アルミニュームに埋設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニューム鋳造で製造される自動車用ホイールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ホイールは、従来は、鋼製ホイールが主であった。
車両の軽量化や、車両のばね下質量、即ち懸架装置に取り付く車軸及びホイールの質量の軽量化による乗り心地及び運動性能の向上のため、そして、デザイン上の自由度が高い等の理由によって、近年、自動車用ホイールは、鋼製ホイールからアルミニューム製ホイールへの転換が進んでいる。
【0003】
アルミニューム製ホイールには、鋳造アルミホイールと、鍛造アルミホイールがある。
図25において、鋳造アルミニューム製の大型車両用ホイール1のカットモデルを立体的に示す。
鋳造アルミホイールは、鍛造アルミホイールに対してはデザインの自由度が高い。また、鋳造アルミホイールは、鋼製ホイールに対して軽量であり、また、熱伝導率が優れていると言う利点を有している。
図25において、鋳造アルミホイールにおける熱伝導率が優れていると言う利点を活かして、符号15で示すフィン、或いは同図の符号17で示すリブを形成することにより、ホイール1に組込まれるタイヤや、ホイール1内に配置される図示しないブレーキやハブベアリングにおける空冷効果を向上することが出来る。
【0004】
ところで、アルミニュームは、鉄に比較してヤング率が低く、変形し易い。換言すれば、アルミニュームは、鉄や鋼に比較して、いわゆる「強度」が低い。
そのため、アルミニューム製ホイールは、鋼製ホイールに比較して、厚さ寸法を大きくし、或いは、断面形状を工夫して、変形を防止する必要がある。
【0005】
アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールは、鋼製のホイールに比較して軟らかく、変形し易い。特に、ディスク取付用ボルト孔周辺の領域(ホイールディスクのハブボルト取り付け部)は、ハブボルトの締め付け力と、ハブボルトに作用する外力とによって変形し易い(凹み易い)。
【0006】
図26は、大型車両の車軸側のハブへ一般的なアルミニューム製ホイールを取り付けた状態を示している。
図26において、ハブ100のフランジ102には、複数(例えば8箇所)のディスク取付用ボルト孔(ハブボルト取付孔)103が形成されている。
ハブボルト取付孔103には、フランジ102の(図26における)下方の面102a側からハブボルトBが挿入されている。
【0007】
ハブボルト取付孔103に挿入されたハブボルトBは、ホイール1のディスク部2に形成されたハブボルト挿通孔4を貫通している。そして、ディスク部2の車両外側(図26における上方)の面2aから、ホイールナットNが、ハブボルトBに螺合している。
【0008】
ホイールナットNは、ホイール1と接する側の端部外周が、球面Nrに形成されている。球面Nrは、図26の下方へ凸状に形成されている。
ホイール1のハブボルト挿通孔4には、ディスク2の表裏2面2a、2bの近傍箇所に、凹状の球面座4rが形成されている。凹状の球面座4rは、ホイールナットNの凸状の球面Nrと相補形状となっている。
ホイールナットNを締め込むことによって、ホイールナットNの球面座Nrとハブボルト挿通孔4の球面座4rとは、係合して密着する。
【0009】
ここで、ホイールナットNの締め込みは、例えば、圧縮空気によって駆動されるナットランナー等によって行われる。ナットランナーによる締め込みは、緩みを防止するために、締め付けトルクを過大にする傾向がある。
係る過大な締め付けトルクに加え、締め付け完了間際には、衝撃トルクが加わるので、鋳造アルミニュームの球面座4rが変形してしまうという問題が存在する。
【0010】
また、車両は、長年に亘り、タイヤ交換を繰り返す。そしてタイヤ交換時には、ホイールはハブから取り外され、再びハブに取り付けられる。その様なタイヤ交換を繰り返すことにより、鋳造アルミホイール1のハブボルト挿通孔4における球面座4rは変形してしまう。
かかる変形の発生は、重要保安部品であるホイールにおいて、看過できない問題である。
【0011】
そのような問題に対処するために、ハブボルト挿通孔周辺の領域(ディスクのハブ取り付け部)に対して、従来より、種々の強度対策が施されている。
その様な強度対策としては、例えば、鋳造アルミホイールのハブボルト挿通孔周辺の領域に対するバニシング加工、ショットピーニング加工等、素材表面の密度を高める処理がある。
【0012】
その他の技術として、成形した第1次成形部品の一部を、成形型のキャビティ内の溶湯が最も遅く凝固する個所近傍に押し付けて、第1次成形品と第2次成形品との密着性を向上する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、係る従来技術では、上述した従来技術の問題点を解決するものではない。
【特許文献1】特開2005−81377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、鋳造アルミニュームで製造された自動車用ホイールであって、ハブボルト挿通孔回り(ディスクのハブ取り付け部)の変形を防止することが出来る自動車用ホイールの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の自動車用ホイール(1、1A、1B)は、アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールにおいて、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、40A、40B)に形成されており、該インサート(40、40A、40B)は鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面(2a、2b)に露出している部分(41、47)と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分(45、46、46A、46B)とを有していることを特徴としている(請求項1)。
【0015】
本発明において、ディスク取付用のボルト孔(4)近傍から構造上強度が要求される領域(例えば、ディスク取付用のボルト孔4と飾り穴5とを結んだ仮想直線Lv近傍の領域)に向って突出しているフランジ(46、46A、46B)が形成されているのが好ましい(請求項2)。
ここで、フランジ(46、46A、46B)は鋳造アルミニュームに埋設されていても良いし(図3、図11、図16、図19)、或いは、該フランジ(46、46A、46B)によって鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い(図4、図12、図17、図20)。
【0016】
前記インサート(40、40A)は鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク2取付用のボルト孔(4)はホイール(1、1A)の円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサート(40、40A)は円周方向に連続した形状とする事が出来る(請求項3:図1、図6、図7、図9、図10、図13、図15)。
【0017】
ここで、インサート(40)の円周方向に連続した形状は、鋳造アルミニュームで鋳込まれている部分であり、ディスク取付用のボルト孔(4)間で鋳込まれている部分(45)の半径方向寸法(W45)は、ディスク取付用のボルト孔(4)近傍領域(41、46)に比較して小さく形成する事が出来る(図1、図6、図7、図9)。
または、インサート(40A)の円周方向に連続した形状は、ホイール表面(2a、2b)に露出している部分(47)であり、当該露出している部分(47)の半径方向寸法(W47)は、円周方向の全域に亘って均一に構成しても良い(図10、図15)。ただし、均一に構成されていなくても良い(図13)。
【0018】
また、前記インサート(40B)は鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔(4)はホイール(1B)の円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサート(40B)は円周方向に連続しておらず、前記ディスク取付用のボルト孔(4)を形成するべき部分にのみ配置しても良い(請求項4:図18)。
【0019】
さらに、前記インサートは鋳造アルミホイールに圧入されていても良い(図21〜図24)。
圧入方式は、鋳造アルミホイールに限らず、鍛造アルミホイールにも、アルミニューム製ホイール全般に適用出来る。
【0020】
或いは、前記インサートは、アルミニューム製ホイール(鋳造及び鍛造)に接着されていても良い(図21〜図24)。
【発明の効果】
【0021】
上述する構成を具備する本発明によれば、鉄系材料(例えば、鋼やダクタイル等)や硬質アルミニューム(シリコンアルミニューム等)等のホイール本体よりも高強度の材質で製造されたインサート(40、40A、40B)にディスク取付用のボルト孔(4)が設けられており、鋳造アルミニュームに比較して、ナットの締め付けトルクが強大である場合にも変形し難い。そのため、長年に亘り、タイヤ交換等を繰り返すことにより、ナットの座面が「いびつ」になることが防止できる。
【0022】
また、本発明によれば、インサート(40、40A、40B)にフランジ(46、46A、46B)が形成され、該フランジ(46、46A、46B)は構造的に弱い領域に向って突出しているので、インサート(40、40A、40B)とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大して、インサート(40、40A、40B)と鋳造アルミニュームとを剥離させる応力(例えば剪断応力)を低下させる。そのため、インサート(40、40A、40B)と鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0023】
そして、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、デザインの自由度が高いというメリット(鍛造アルミニュームによる自動車用ホイールよりも優れている点)、軽量であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)、特に鋳造アルミホイールはフィンやリブが形成し易く、熱伝導率が良好であることも手伝って、ホイール全体の空冷効果が良好であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)等のメリットを損なうこと無く、そのようなメリットを十分に享受することが出来る。
【0024】
これに加えて本発明によれば、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)が基材である鋳造アルミニュームよりも強度の高い材質のインサート(40、40A、40B)で形成されているため、当該ボルト孔(4)周辺領域の強度が十分に得られる。その結果、鋳造アルミホイール(1、1A、1B)のディスク部(2)の厚さ方向寸法を、低減する事も可能になる。
さらに、インサート(40A)のホイール表面(2a、2b)に露出している部分(47)が、ディスク面(2)全域に亘り構成される形状の場合においては、ディスク面が背中合せで取り付いているダブルタイヤ装着ホイールのディスク面(2)同士の接触、或いはハブ(100)面との接触によって生じるディスク面(2)のフレッティングや傷等が発生し難くなり、外観品質を損なうことが無くなる事も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図6を参照して第1実施形態について説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る鋳造アルミホイール1の1/4の部分を正面から見た状態を示している。図1におけるA1−O−A2断面が、図2に示されている。図1におけるピッチサークルCpに沿った断面(B−B断面)が、図5で示されている。
【0027】
図1、図2において、鋳造アルミホイール(ホイール)1はテーパ部1T(図2)を有しており、ディスク部2と図示しないリムとは、テーパ部1Tにより接続されている。
ディスク部2とテーパ部1Tは、以下で詳述するインサート40の部分を除き、鋳造アルミニュームを素材としている。
なお、図2では、テーパ部1Tの任意の点Pを通過する断面Lcよりも、左側の領域が省略された状態で示されている。
【0028】
ディスク部2の中心部の領域には、ハブ嵌合孔3が形成されている。ハブ嵌合孔3には、図示しない車軸のハブの先端が嵌め込まれる。
ハブ嵌合孔3の周辺近傍の領域であって、ハブボルト挿通孔4を含む領域には、環状のインサート40が、アルミニュームに鋳込まれている。
【0029】
ここで、アルミニュームの鋳造時には、アルミニュームを加圧して鋳造するのが好ましい。アルミニュームを加圧して鋳造すれば、鋳造後のアルミニュームとインサート40との剥離を防止することが出来るからである。
【0030】
インサート40単体は、図6に示されている。図1及び図6において、ディスク部2(図1)におけるハブ嵌合孔3(図1)に近い領域において一点鎖線で示す円弧は、インサート40におけるピッチサークルCpである。ピッチサークルCp上には複数(図示では8箇所)のハブボルト挿通孔4が、同一のピッチで(等間隔で)形成されている。
【0031】
ハブボルト挿通孔4の断面は、従来技術と同様の構成である。
図2で示す様に、ハブボルト挿通孔4においては、ディスク部2の表面(ホイール1が凸状に突き出した面)2aと、表面2aの反対側に位置する裏面2bには、球面座4rが形成されている。そして、表面2a側の球面座4rと、裏面2b側の球面座4rとが、ストレート孔4sで貫通して、ハブボルト挿通孔4が構成されている。
【0032】
第1実施形態において、インサート40はダクタイル(球状黒鉛鋳鉄)で構成されている。
ただし、インサート40の材質としては、ダクタイルに限定されるものではなく、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼であってもよい。
換言すれば、インサート40は、鋳造アルミニュームと接合可能な金属材料で、鋳造アルミニュームよりも強度が高く、適正な硬度を有する材質を選択して、製造される。
【0033】
インサート40は、メッキまたは溶射法を活用して表面処理を施すことにより、鋳造時の高温による金属表面の酸化を防止することが好ましい。
アルミニューム鋳造時には、インサート40は事前に加熱することにより、熱膨張、収縮による剥離を防ぐことが好ましい。
【0034】
図2で示す様に、インサート40の円筒状部41(ディスク2の表面に露出している部分)の厚みは、ディスク2の厚みT2と同一である。ここで、円筒状部41は、ハブボルト挿通孔4を含んでいる。
【0035】
図1において、インサート40にはフランジ46が形成されている。フランジ46は、インサート40の円筒状部41において、ディスク2の周方向両側に形成されている。
図1では、フランジ46の半径方向外方の縁部46rは、複数の円弧から形成されている。
フランジ46は、ハブボルト挿通孔4の中心を通るディスク2の半径について、線対称となっている。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
【0036】
図1におけるA1−O−E−D断面が、図3で示されており、フランジ46の断面形状を示している。図3において、フランジ46は、断面形状が概略台形の断面形状を有しており、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設されている。
但し図4で示す様に、インサート40のフランジ46を、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46により、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0037】
インサート40における隣接する円筒状部41、41の間の領域には、ピッチサークルCpに沿って円弧状の帯部45が延在している。図1において、円弧状の帯部45の中心軸はピッチサークルCpと一致している。但し、円弧状の帯部45の中心軸とピッチサークルCpとは、必ずしも一致しなくても構わない。
ここで、帯部45の中心線は、帯部45の幅方向(ディスク2の半径方向)における中心線である。
【0038】
図1及び図6を参照すれば明らかな様に、挿通孔4の周縁部において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、帯部45の延長部分によって突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0039】
図5で示す様に、インサート40の帯部45の厚みT45は、ディスク2の厚みT2よりも薄い。
また、図6で示す様に、帯部45の幅方向寸法W45は、ハブボルト挿通孔4のストレート孔4sの内径に比較して、小さくすることが出来る。これにより、例えばインサート40が鉄製の場合には、インサートの軽量化が可能となる。
【0040】
前記フランジ46の厚さ方向(図6の紙面に直交する方向)の断面形状は、第1実施形態の変形例を示す図8(図7のA−A断面)と同様であり、先端部が細くなる台形形状であることが好ましい。係る台形形状における先端部の厚みは、帯部45の厚みT45(図5)と概略等しい。
【0041】
図1で示す様に、フランジ46は、その肩部46aが、仮想直線Lvに沿って、飾り孔5(図1では2点鎖線で示す)側へ突出するように形成されていることが好ましい。ここで、仮想直線Lvは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5とを結ぶ仮想直線である。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
ここで、仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。
【0042】
構造的に弱い領域にフランジ46を設けることにより、フランジ46が当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用するので、ディスク2全体の強度を向上することが出来る。
換言すれば、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強することが出来る、という観点から決定されているのである。
【0043】
そして、図1〜図6で示す第1実施形態によれば、インサート40にハブボルト挿通孔4が一体に形成されている。インサート40は、上述した様に、ダクタイル、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼等により構成されており、基材である鋳造アルミニュームに比較して、ナットの締め付けトルクが強大であっても変形し難い。
そのため、長年に亘って、タイヤ交換時のハブからの取り外しを繰り返しても、球面座4rが変形することは防止される。
【0044】
また、図1〜図6の第1実施形態によれば、インサート40にフランジ46が形成され、該フランジ46(肩部46a)は、飾り穴5に向う方向へ突出しているので、フランジ46(肩部46a)を設けていない場合に比較して、インサート40とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大する。当該境界面の面積が増大すれば、そこに作用する応力(例えば剪断応力)は低減する。ここで、応力(例えば剪断応力)は、インサート40と鋳造アルミニュームとを剥離させる様に作用する応力である。
【0045】
フランジ46により、インサート40とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面に作用する応力(例えば剪断応力)が低減すれば、インサート40と鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
上述した通り、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強するという観点から決定されている。そして、構造的に弱い領域は、インサート40とホイール基材との境界面における剥離が生じる可能性が高い部分でもある。従って、フランジ46の形状は、インサート40とホイール基材とが剥離し難い様にせしめる、という観点からも決定される。
【0046】
さらに、ハブボルト挿通孔4がインサート40に形成されるため、ハブボルト挿通孔4周辺領域の強度が十分に得られ、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
その結果、従来の鋳造アルミニュームのみで構成されたホイールに比較して、ホイール1の厚さ方向寸法を、低減する事も可能になる。
【0047】
このように、図1〜図6の第1実施形態によれば、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける前述の種々の問題点を解消することが出来る。
そして、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、アルミニューム鍛造に対してデザインの自由度が高いというメリットや、鋼製ホイールよりも軽量であるメリット、鉄製ホイールよりも熱伝導率が良好であり、フィン(或いは、リブ)形状による空冷効果が良好であると言うメリットを損なうこと無く、これらのメリットを十分に享受することが出来る。
【0048】
次に、図7、図8を参照して、第1実施形態の第1変形例を説明する。
図7、図8の第1実施形態の第1変形例では、図1〜図6の第1実施形態におけるインサート40のフランジ46に、フランジ46の厚さ方向(図7の紙面に垂直な方向:図8の左右方向)に延在する貫通孔を設けている。
【0049】
図7、図8において、フランジ46の肩部46aには、貫通孔48が形成されている。貫通孔48はフランジ46の厚さ方向(図7の紙面に垂直な方向:図8の左右方向)へ延在している。1箇所のフランジに形成する貫通孔48の本数及び形状は、特に限定するものではない。
【0050】
アルミニュームの鋳造時には、鋳造型枠内に予めセットされたインサート40の当該貫通孔48にも溶けたアルミニュームの湯が侵入し、インサート40を基材である鋳造アルミニュームに確実に融合・固着する。また、貫通孔48の内周面の面積の分だけ、ホイール1におけるインサート40と鋳造アルミニュームとの境界面の面積を増大させて、インサート40に作用する応力(例えば、剪断応力)を低減することが出来る。
また、貫通孔48は軽量化のための孔(ライトニングホール)にもなり、インサート40の軽量化にも寄与する。
図7、図8で示す第1実施形態の第1変形例の上記した以外の構成及び作用効果については、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0051】
次に、図9を参照して第1実施形態の第2変形例を説明する。
上述したように、ホイール1に外力が作用した場合の鋳造アルミニュームとインサート40の境界面に生じる応力(例えば剪断応力)を低減するために、且つ、鋳造アルミニュームに確実に接合するために、インサート40と基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積は、出来る限り大きくしたい。
図9の第1実施形態の第2変形例は、そのような要請に応えるものである。
【0052】
図9において、インサート40の外形(輪郭)は図1〜図6の第1実施形態と同様であるが、円筒状部41のホイール1の鋳造アルミニュームに接しない部分を除くインサート40の表面に、凹凸49が形成されている。
【0053】
円筒状部41のホイール1の鋳造アルミニュームに接しない部分を除くインサート40の表面に凹凸49を形成させたことによって、ホイール1の基材である鋳造アルミニュームとインサート40の境界面の面積は大きく増加する。そして、境界面の面積が増加することによって、鋳造アルミニュームとインサート40の境界面に生じる応力(例えば剪断応力)を緩和させることが出来る。
【0054】
図9において、インサート40表面に形成された凹凸49は、矩形の凹凸が連続して形成されているが、波型の凹凸を連続して構成することが可能である。また、図示された凹凸に比較して、非常に微細な凹凸によって、インサート40表面の凹凸を構成しても良い。
図9で示す第2変形例における構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0055】
次に、図10、図11を参照して、第2実施形態について説明する。
図1〜図9の第1実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)は、インサート40の材料として、例えばダクタイルを用いている。
それに対して、図10、図11の第2実施形態では、インサート40Aを、例えば鋳造アルミニュームよりも強度が高く、比重が同等か或いは軽いシリコンアルミニュームで製造している。ここで、シリコンアルミニュームは、ダクタイル等(第1実施形態におけるインサート40の素材)に比較して、強度は劣っている。
【0056】
図10、図11において、ホイール1Aはインサート40Aを有し、インサート40Aは環状部47を有している。環状部47はハブボルト挿通孔4を含み、ハブ嵌合孔3の半径方向外側の領域に配置されている。
図10で示すように、環状部47の半径方向外方へ突出するフランジ46Aが形成されている。環状部47において、半径方向の幅W47は、フランジ46Aが形成されている箇所を除き、概略均一である。
また、図11で示すように、インサート40A(の環状部47)の厚みはディスク2の厚みT2に等しい。
【0057】
図11で示す様に、フランジ46は概略台形に構成され、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図12で示す様に、インサート40Aのフランジ46Aを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Aにより、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0058】
ホイール1Aを鋳造する際に、エア抜きを良好に行うための、インサート40Aを、図13、図14で示す様な形状とすることが可能である。
図13のインサート40Aにおいては、ハブボルト挿通孔4の中間の領域40ARは、ハッチングを付して表現されている。領域40ARの断面が図14に示されている。
図14において、領域40ARの厚さ寸法Tarは、ハッチングが付されていない領域(図13参照)における厚さ寸法Tnに比較して、小さくなっている。そして、インサート40Aの厚さ寸法が小さい領域40ARには、鋳造アルミニュームが充填されている。
【0059】
インサート40Aを、図13、図14で示す様な形状とすることにより、アルミニューム鋳造を行う際に、インサート40Aの領域40ARを介して良好にエア抜きを行うことが出来るのである。
すなわち、鋳型内に存在したエアは、領域40ARにおける厚さ方向寸法の小さい部分から良好に抜ける。そのため、アルミニューム鋳造時に、アルミニュームの湯流れがスムーズになり、インサート40Aとホイール基材が剥離し難くなる。
【0060】
再び図10において、仮想線であるピッチサークルCpが示されている。ピッチサークルCp上には、ハブボルト挿通孔4が複数箇所(図示の例では8箇所)に等ピッチで形成されている。
図11で示すハブボルト挿通孔4の詳細は、第1実施形態と同様である。
【0061】
インサート40Aの環状部47の外周部401において、ハブボルト挿通孔4の存在する領域の半径方向外方には、フランジ46が形成されている。
フランジ46の半径方向外方の縁部は複数の円弧で形成されている。
フランジ46は、ホイール1Aの半径であって、ハブボルト挿通孔4の中心を通る半径について、線対称に形成されていることが望ましい。
【0062】
インサート40Aのフランジ46の両肩部46aは、第1実施形態と同様に、仮想直線Lvに沿って、飾り孔5(図10では2点鎖線で示す)側へ突出するように形成されている。ここで、仮想直線Lvは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5とを結んでいる。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。構造的に弱い領域にフランジの肩部46aを設けることにより、フランジの肩部46aが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用するので、ディスク2全体の強度を向上することが出来る。
換言すれば、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強することが出来る、という観点から決定されているのである。
【0063】
また、フランジ46を設けることにより、(フランジ46を設けていない場合に比較して)インサート40Aとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Aと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
すなわち、フランジ46の形状は、インサート40Aとホイール基材とが剥離し難い様にせしめる、という観点からも決定される。
【0064】
図示はしないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Aのフランジ46に貫通孔を設けても良い。
また、図示はしないが、インサート40Aの外周面(フランジ46の表面を含む)に凹凸を形成して、インサート40Aと鋳造アルミニュームとの境界面を増加させることも出来る。
【0065】
図10を参照すれば明らかな様に、インサート40Aの半径方向外方において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0066】
図10、図11の第2実施形態のホイール1Aは、インサート40Aの材質を軽量の材料であるシリコンアルミニュームとすることにより、インサートの材質を例えばダクタイルにした場合に比較して、全体の質量を軽減することが出来る。
換言すれば、第2実施形態では、インサート40Aを軽量化するため、或いは、小型化するために、腐心する必要がない。
図10、図11の第2実施形態においても、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分で、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
図10、図11の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0067】
次に、図15、図16を参照して第2実施形態の変形例に関して説明する。
図15、図16の第2実施形態の変形例では、図10、図11の第2実施形態におけるフランジ46の中央部分を省略して、2つの半円形状のフランジ46A、46Aに分離している。
【0068】
半円形の各フランジ46Aは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5(図15では2点鎖線で示す)とを結ぶ仮想直線Lv上か、或いは、仮想直線Lv近傍の領域に位置している。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。構造的に弱い領域にフランジ46Aを設けることにより、フランジ46Aが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用し、ディスク全体の強度を向上することが出来る。
【0069】
また、フランジ46Aを設けることにより、(フランジ46Aを設けていない場合に比較して)インサート40Aとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Aと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0070】
図示されていないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Aのフランジ46Aに貫通孔を設けても良い。
また、図示されていないが、インサート40Aの外周面(フランジ46Aの表面を含む)に凹凸を形成して、インサート40Aと鋳造アルミニュームとの境界面を増加させることも出来る。
【0071】
図16で示す様に、フランジ46Aは断面形状が概略台形に構成され、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図17で示す様に、インサート40Aのフランジ46Aを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Aにより、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0072】
図15を参照すれば明らかな様に、インサート40Aの半径方向外方において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0073】
図15、図16の変形例における上記以外の構成及び作用効果は、図10、図11の第2実施形態と同様である。
【0074】
次に、図18、図19を参照して第3実施形態を説明する。
図1〜図16の各実施形態では、単一の環状に構成されたインサート(40、40A)を備え、環状のインサート(40、40A)に複数箇所(例えば8箇所)のハブボルト挿通孔4が形成されている。
それに対して、図18、図19の第3実施形態では、複数箇所(例えば8箇所)のハブボルト挿通孔4毎に、インサート40Bを独立分離させて設けている。
【0075】
図18、図19において、第3実施形態に係るホイール1Bにおいては、筒状のインサート40Bが等間隔に(図18において、1点鎖線で示すピッチサークルCpを等分する様に)、複数箇所(例えば8箇所)設けられている。図18、図19から明らかな様に、インサート40Bは、ハブボルト挿通孔4の位置に配置されている。
複数個のインサート40Bは、ホイール1Bの基材である鋳造アルミニュームに鋳込まれている。そして、インサート40Bの材質は、例えば、ダクタイル、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼である。
【0076】
インサート40Bの筒状の外周縁部(半径方向外方縁部)には、フランジ46Bが形成されている。フランジ46Bは、全周に亘って同じ突出量とすることも可能であるが、構造的に弱い領域に向う部分が、他の方向に向う部分に比較して、半径方向外方への突出量が大きいことが好ましい。
フランジ46Bは、一部が欠損していも良い。すなわち、半径方向外方に突出した部分を設けないことも可能である。
【0077】
構造的に弱い領域にフランジ46Bを突出させることにより、フランジ46Bが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用し、ディスク全体の強度を向上することが出来る。
また、フランジ46Bを設けることにより、(フランジ46Bを設けていない場合に比較して)インサート40Bとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Bと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0078】
図19で示す様に、フランジ46Bは断面形状が概略台形に構成され、ホイール1Bの鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図20で示す様に、インサート40Bのフランジ46Bを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Bにより、ホイール1Bの鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0079】
図示はしないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Bのフランジ46Bに貫通孔を設けることも可能である。
また、図示はしないが、インサート40Bの外周面(フランジ46Bを含む)の表面に凹凸を形成して、鋳造アルミニュームとの境界面を増加させても良い。
【0080】
第3実施形態においても、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分となり、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
図18〜図20で示す第3実施形態における上記以外の構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0081】
次に、図21〜図24を参照して、本発明の第4実施形態(図21、図22)と、その変形例(図23、図24)について説明する。
図1〜図20の実施形態では、基材である鋳造アルミニュームに異種金属(鉄系金属及びシリコンアルミニューム等)を鋳込んで、組織的に融合させている。
【0082】
それに対して、図21、図22の第4実施形態及び図23、図24の第4実施形態の変形例では、鋳造アルミニュームのホイール(図21〜図24では、明示せず)のハブボルト挿通孔4の位置に、ハブボルト挿通孔4よりも大きな嵌合孔22を加工して形成し、その嵌合孔22にインサート40Dを圧入されている。そして、インサート40Dにはハブボルト挿通孔4が形成されており、インサート40Dの材質は、基材である鋳造アルミニュームよりも強度及び硬度が高い材質である。
第4実施形態は、鍛造アルミホイールにも適用出来る。
【0083】
図21において、第4実施形態に係るアルミニューム製ホイール(図21〜図24では、明示せず)のディスク2には、ハブボルト挿通孔4を形成するべき位置に、インサート嵌合孔22が形成されている。インサート嵌合孔22において、表裏両面2a、2b近傍の位置に、拡径部24が設けられている。
【0084】
インサート嵌合孔22には、図22に示すように、2ピースに分離するインサート40D、40Dが嵌合される。
インサート40Dの材質は、ディスク2の基材である鋳造アルミニュームよりも、強度及び硬度が高い金属材料(例えば、機械構造用炭素鋼)である。
【0085】
インサート40Dは、円筒状の本体42Dと、本体42Dの一端部に形成された円形のフランジ44Dとを有している。
インサート40Dの内周面において、フランジ44D側の端部には、球面座4rが形成されている。
インサート40Dの内周面において、球面座4r以外の領域は、球面座4rが形成された側の開口部内径よりも、内径が小さいストレート穴4sが形成されている。換言すれば、ハブボルト挿通孔4は球面座4rとストレート孔4sとで構成されている。
【0086】
インサート40Dの本体42Dの外径は、ディスク2に形成されたインサート嵌合孔22の内径よりも僅かに大きく形成されている。インサート40Dのフランジ44Dの厚みTf(図22)は、ディスク2側の拡径部24の深さD(図21)と同一か、僅かに小さく形成されている。
2つのインサート40D、40Dは、図22で示すようにフランジ44Dの反対側の端部同士を当接した状態において、2つのインサート40D、40Dの合計の長さL(図22)は、ディスク2の厚みT2(図21)と同等か、僅かに小さくなる様に形成されている。
【0087】
インサート40Dをインサート嵌合孔22に嵌合させる際に、インサート40Dのフランジ44Dの外周面44Dh及びフランジ部44Dの内側平面部44Dv及び本体42Dの外周面42Dwに、例えばアクリル系の接着剤を全面または一部位に塗布することが好ましい。
【0088】
接着剤を塗布すれば、インサート40D、40Dをインサート嵌合孔22の所定位置に所定の圧力で嵌合すると、当該接着剤により、インサート40D、40Dはインサート嵌合孔22へ強固に接着されるからである。
【0089】
上述したように、図21〜図24の第4実施形態では、インサート40Dの材質を、ディスク2の基材である鋳造アルミニュームよりも強度及び硬度の高い金属材料(例えば、機械構造用炭素鋼)としている。従って、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分で、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
【0090】
次に、図23、図24を参照して、第4実施形態の変形例について説明する。
図21、図22の第4実施形態では、ディスク2に形成されたインサート嵌合孔22はストレートな貫通孔であるが、図23、図24の変形例では、インサート40E側の本体43Eの外周面にテーパを付け、対応するインサート嵌合孔23に同じテーパを付けている。
【0091】
図21〜図24において、インサート40D、40Eの材料として、機械構造用炭素鋼を例示しているが、一般構造用炭素鋼、鋳鉄、鋳鋼、硬質アルミニューム、その他の高張力材料を用いることも可能である。
【0092】
図24において、インサート40Eの本体はテーパ軸43Eであり、図23において、インサート嵌合孔23はテーパ孔である。テーパが付いたインサート嵌合孔23と、テーパ軸43Eとの径は、インサート嵌合孔23へテーパ軸43Eを圧入することが可能な様に設定されている。
また、アルミニューム強度を考慮して、例えば摩擦接合の方法も好ましい。
図23、図24の変形例における上記以外の構成及び作用効果は、図21、図22の第4実施形態と同様である。
【0093】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態の部分正面図。
【図2】図1におけるA1−O−A2断面図。
【図3】図1におけるA1−O−E−D断面図。
【図4】フランジのその他の断面形状を示す断面図。
【図5】図1におけるB−B断面図。
【図6】第1実施形態の構成であるインサートの平面図。
【図7】第1実施形態の第1変形例の部分正面図。
【図8】図7におけるA−A断面図。
【図9】第1実施形態の第2変形例の部分正面図。
【図10】本発明の第2実施形態の部分正面図。
【図11】図10におけるA−A断面図。
【図12】第2実施形態のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図13】第2実施形態のインサートにおける他の形状を示す部分正面図。
【図14】図13におけるB−B断面図。
【図15】第2実施形態の変形例の部分正面図。
【図16】図15におけるA1−O−E−D断面図。
【図17】図15のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図18】本発明の第3実施形態の部分正面図。
【図19】図18におけるA1−O−E−D断面図。
【図20】第3実施形態のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図21】本発明の第4実施形態のディスクの部分断面図。
【図22】第4実施形態のインサートの断面図。
【図23】第4実施形態の変形例のディスクの部分断面図。
【図24】第4実施形態の変形例のインサートの断面図。
【図25】従来技術の鋳造アルミホイールのカット断面の斜視図。
【図26】ハブにホイールを取り付ける場合の締結要部の断面図。
【符号の説明】
【0095】
1・・・ホイール
2・・・ディスク
3・・・ハブ嵌合孔
4・・・ハブボルト挿通孔
4r・・・球面座
22、23・・・インサート嵌合孔
40、40A、40B、40C、40D、40E・・・インサート
41・・・円筒状部
45・・・帯部
46、46A、46B・・・フランジ
47・・・環状部
48・・・貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニューム鋳造で製造される自動車用ホイールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ホイールは、従来は、鋼製ホイールが主であった。
車両の軽量化や、車両のばね下質量、即ち懸架装置に取り付く車軸及びホイールの質量の軽量化による乗り心地及び運動性能の向上のため、そして、デザイン上の自由度が高い等の理由によって、近年、自動車用ホイールは、鋼製ホイールからアルミニューム製ホイールへの転換が進んでいる。
【0003】
アルミニューム製ホイールには、鋳造アルミホイールと、鍛造アルミホイールがある。
図25において、鋳造アルミニューム製の大型車両用ホイール1のカットモデルを立体的に示す。
鋳造アルミホイールは、鍛造アルミホイールに対してはデザインの自由度が高い。また、鋳造アルミホイールは、鋼製ホイールに対して軽量であり、また、熱伝導率が優れていると言う利点を有している。
図25において、鋳造アルミホイールにおける熱伝導率が優れていると言う利点を活かして、符号15で示すフィン、或いは同図の符号17で示すリブを形成することにより、ホイール1に組込まれるタイヤや、ホイール1内に配置される図示しないブレーキやハブベアリングにおける空冷効果を向上することが出来る。
【0004】
ところで、アルミニュームは、鉄に比較してヤング率が低く、変形し易い。換言すれば、アルミニュームは、鉄や鋼に比較して、いわゆる「強度」が低い。
そのため、アルミニューム製ホイールは、鋼製ホイールに比較して、厚さ寸法を大きくし、或いは、断面形状を工夫して、変形を防止する必要がある。
【0005】
アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールは、鋼製のホイールに比較して軟らかく、変形し易い。特に、ディスク取付用ボルト孔周辺の領域(ホイールディスクのハブボルト取り付け部)は、ハブボルトの締め付け力と、ハブボルトに作用する外力とによって変形し易い(凹み易い)。
【0006】
図26は、大型車両の車軸側のハブへ一般的なアルミニューム製ホイールを取り付けた状態を示している。
図26において、ハブ100のフランジ102には、複数(例えば8箇所)のディスク取付用ボルト孔(ハブボルト取付孔)103が形成されている。
ハブボルト取付孔103には、フランジ102の(図26における)下方の面102a側からハブボルトBが挿入されている。
【0007】
ハブボルト取付孔103に挿入されたハブボルトBは、ホイール1のディスク部2に形成されたハブボルト挿通孔4を貫通している。そして、ディスク部2の車両外側(図26における上方)の面2aから、ホイールナットNが、ハブボルトBに螺合している。
【0008】
ホイールナットNは、ホイール1と接する側の端部外周が、球面Nrに形成されている。球面Nrは、図26の下方へ凸状に形成されている。
ホイール1のハブボルト挿通孔4には、ディスク2の表裏2面2a、2bの近傍箇所に、凹状の球面座4rが形成されている。凹状の球面座4rは、ホイールナットNの凸状の球面Nrと相補形状となっている。
ホイールナットNを締め込むことによって、ホイールナットNの球面座Nrとハブボルト挿通孔4の球面座4rとは、係合して密着する。
【0009】
ここで、ホイールナットNの締め込みは、例えば、圧縮空気によって駆動されるナットランナー等によって行われる。ナットランナーによる締め込みは、緩みを防止するために、締め付けトルクを過大にする傾向がある。
係る過大な締め付けトルクに加え、締め付け完了間際には、衝撃トルクが加わるので、鋳造アルミニュームの球面座4rが変形してしまうという問題が存在する。
【0010】
また、車両は、長年に亘り、タイヤ交換を繰り返す。そしてタイヤ交換時には、ホイールはハブから取り外され、再びハブに取り付けられる。その様なタイヤ交換を繰り返すことにより、鋳造アルミホイール1のハブボルト挿通孔4における球面座4rは変形してしまう。
かかる変形の発生は、重要保安部品であるホイールにおいて、看過できない問題である。
【0011】
そのような問題に対処するために、ハブボルト挿通孔周辺の領域(ディスクのハブ取り付け部)に対して、従来より、種々の強度対策が施されている。
その様な強度対策としては、例えば、鋳造アルミホイールのハブボルト挿通孔周辺の領域に対するバニシング加工、ショットピーニング加工等、素材表面の密度を高める処理がある。
【0012】
その他の技術として、成形した第1次成形部品の一部を、成形型のキャビティ内の溶湯が最も遅く凝固する個所近傍に押し付けて、第1次成形品と第2次成形品との密着性を向上する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、係る従来技術では、上述した従来技術の問題点を解決するものではない。
【特許文献1】特開2005−81377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、鋳造アルミニュームで製造された自動車用ホイールであって、ハブボルト挿通孔回り(ディスクのハブ取り付け部)の変形を防止することが出来る自動車用ホイールの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の自動車用ホイール(1、1A、1B)は、アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールにおいて、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)がインサート(40、40A、40B)に形成されており、該インサート(40、40A、40B)は鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面(2a、2b)に露出している部分(41、47)と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分(45、46、46A、46B)とを有していることを特徴としている(請求項1)。
【0015】
本発明において、ディスク取付用のボルト孔(4)近傍から構造上強度が要求される領域(例えば、ディスク取付用のボルト孔4と飾り穴5とを結んだ仮想直線Lv近傍の領域)に向って突出しているフランジ(46、46A、46B)が形成されているのが好ましい(請求項2)。
ここで、フランジ(46、46A、46B)は鋳造アルミニュームに埋設されていても良いし(図3、図11、図16、図19)、或いは、該フランジ(46、46A、46B)によって鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い(図4、図12、図17、図20)。
【0016】
前記インサート(40、40A)は鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク2取付用のボルト孔(4)はホイール(1、1A)の円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサート(40、40A)は円周方向に連続した形状とする事が出来る(請求項3:図1、図6、図7、図9、図10、図13、図15)。
【0017】
ここで、インサート(40)の円周方向に連続した形状は、鋳造アルミニュームで鋳込まれている部分であり、ディスク取付用のボルト孔(4)間で鋳込まれている部分(45)の半径方向寸法(W45)は、ディスク取付用のボルト孔(4)近傍領域(41、46)に比較して小さく形成する事が出来る(図1、図6、図7、図9)。
または、インサート(40A)の円周方向に連続した形状は、ホイール表面(2a、2b)に露出している部分(47)であり、当該露出している部分(47)の半径方向寸法(W47)は、円周方向の全域に亘って均一に構成しても良い(図10、図15)。ただし、均一に構成されていなくても良い(図13)。
【0018】
また、前記インサート(40B)は鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔(4)はホイール(1B)の円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサート(40B)は円周方向に連続しておらず、前記ディスク取付用のボルト孔(4)を形成するべき部分にのみ配置しても良い(請求項4:図18)。
【0019】
さらに、前記インサートは鋳造アルミホイールに圧入されていても良い(図21〜図24)。
圧入方式は、鋳造アルミホイールに限らず、鍛造アルミホイールにも、アルミニューム製ホイール全般に適用出来る。
【0020】
或いは、前記インサートは、アルミニューム製ホイール(鋳造及び鍛造)に接着されていても良い(図21〜図24)。
【発明の効果】
【0021】
上述する構成を具備する本発明によれば、鉄系材料(例えば、鋼やダクタイル等)や硬質アルミニューム(シリコンアルミニューム等)等のホイール本体よりも高強度の材質で製造されたインサート(40、40A、40B)にディスク取付用のボルト孔(4)が設けられており、鋳造アルミニュームに比較して、ナットの締め付けトルクが強大である場合にも変形し難い。そのため、長年に亘り、タイヤ交換等を繰り返すことにより、ナットの座面が「いびつ」になることが防止できる。
【0022】
また、本発明によれば、インサート(40、40A、40B)にフランジ(46、46A、46B)が形成され、該フランジ(46、46A、46B)は構造的に弱い領域に向って突出しているので、インサート(40、40A、40B)とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大して、インサート(40、40A、40B)と鋳造アルミニュームとを剥離させる応力(例えば剪断応力)を低下させる。そのため、インサート(40、40A、40B)と鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0023】
そして、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、デザインの自由度が高いというメリット(鍛造アルミニュームによる自動車用ホイールよりも優れている点)、軽量であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)、特に鋳造アルミホイールはフィンやリブが形成し易く、熱伝導率が良好であることも手伝って、ホイール全体の空冷効果が良好であるメリット(鉄製ホイールよりも優れている点)等のメリットを損なうこと無く、そのようなメリットを十分に享受することが出来る。
【0024】
これに加えて本発明によれば、ディスク(2)取付用のボルト孔(4)が基材である鋳造アルミニュームよりも強度の高い材質のインサート(40、40A、40B)で形成されているため、当該ボルト孔(4)周辺領域の強度が十分に得られる。その結果、鋳造アルミホイール(1、1A、1B)のディスク部(2)の厚さ方向寸法を、低減する事も可能になる。
さらに、インサート(40A)のホイール表面(2a、2b)に露出している部分(47)が、ディスク面(2)全域に亘り構成される形状の場合においては、ディスク面が背中合せで取り付いているダブルタイヤ装着ホイールのディスク面(2)同士の接触、或いはハブ(100)面との接触によって生じるディスク面(2)のフレッティングや傷等が発生し難くなり、外観品質を損なうことが無くなる事も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図6を参照して第1実施形態について説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る鋳造アルミホイール1の1/4の部分を正面から見た状態を示している。図1におけるA1−O−A2断面が、図2に示されている。図1におけるピッチサークルCpに沿った断面(B−B断面)が、図5で示されている。
【0027】
図1、図2において、鋳造アルミホイール(ホイール)1はテーパ部1T(図2)を有しており、ディスク部2と図示しないリムとは、テーパ部1Tにより接続されている。
ディスク部2とテーパ部1Tは、以下で詳述するインサート40の部分を除き、鋳造アルミニュームを素材としている。
なお、図2では、テーパ部1Tの任意の点Pを通過する断面Lcよりも、左側の領域が省略された状態で示されている。
【0028】
ディスク部2の中心部の領域には、ハブ嵌合孔3が形成されている。ハブ嵌合孔3には、図示しない車軸のハブの先端が嵌め込まれる。
ハブ嵌合孔3の周辺近傍の領域であって、ハブボルト挿通孔4を含む領域には、環状のインサート40が、アルミニュームに鋳込まれている。
【0029】
ここで、アルミニュームの鋳造時には、アルミニュームを加圧して鋳造するのが好ましい。アルミニュームを加圧して鋳造すれば、鋳造後のアルミニュームとインサート40との剥離を防止することが出来るからである。
【0030】
インサート40単体は、図6に示されている。図1及び図6において、ディスク部2(図1)におけるハブ嵌合孔3(図1)に近い領域において一点鎖線で示す円弧は、インサート40におけるピッチサークルCpである。ピッチサークルCp上には複数(図示では8箇所)のハブボルト挿通孔4が、同一のピッチで(等間隔で)形成されている。
【0031】
ハブボルト挿通孔4の断面は、従来技術と同様の構成である。
図2で示す様に、ハブボルト挿通孔4においては、ディスク部2の表面(ホイール1が凸状に突き出した面)2aと、表面2aの反対側に位置する裏面2bには、球面座4rが形成されている。そして、表面2a側の球面座4rと、裏面2b側の球面座4rとが、ストレート孔4sで貫通して、ハブボルト挿通孔4が構成されている。
【0032】
第1実施形態において、インサート40はダクタイル(球状黒鉛鋳鉄)で構成されている。
ただし、インサート40の材質としては、ダクタイルに限定されるものではなく、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼であってもよい。
換言すれば、インサート40は、鋳造アルミニュームと接合可能な金属材料で、鋳造アルミニュームよりも強度が高く、適正な硬度を有する材質を選択して、製造される。
【0033】
インサート40は、メッキまたは溶射法を活用して表面処理を施すことにより、鋳造時の高温による金属表面の酸化を防止することが好ましい。
アルミニューム鋳造時には、インサート40は事前に加熱することにより、熱膨張、収縮による剥離を防ぐことが好ましい。
【0034】
図2で示す様に、インサート40の円筒状部41(ディスク2の表面に露出している部分)の厚みは、ディスク2の厚みT2と同一である。ここで、円筒状部41は、ハブボルト挿通孔4を含んでいる。
【0035】
図1において、インサート40にはフランジ46が形成されている。フランジ46は、インサート40の円筒状部41において、ディスク2の周方向両側に形成されている。
図1では、フランジ46の半径方向外方の縁部46rは、複数の円弧から形成されている。
フランジ46は、ハブボルト挿通孔4の中心を通るディスク2の半径について、線対称となっている。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
【0036】
図1におけるA1−O−E−D断面が、図3で示されており、フランジ46の断面形状を示している。図3において、フランジ46は、断面形状が概略台形の断面形状を有しており、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設されている。
但し図4で示す様に、インサート40のフランジ46を、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46により、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0037】
インサート40における隣接する円筒状部41、41の間の領域には、ピッチサークルCpに沿って円弧状の帯部45が延在している。図1において、円弧状の帯部45の中心軸はピッチサークルCpと一致している。但し、円弧状の帯部45の中心軸とピッチサークルCpとは、必ずしも一致しなくても構わない。
ここで、帯部45の中心線は、帯部45の幅方向(ディスク2の半径方向)における中心線である。
【0038】
図1及び図6を参照すれば明らかな様に、挿通孔4の周縁部において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、帯部45の延長部分によって突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0039】
図5で示す様に、インサート40の帯部45の厚みT45は、ディスク2の厚みT2よりも薄い。
また、図6で示す様に、帯部45の幅方向寸法W45は、ハブボルト挿通孔4のストレート孔4sの内径に比較して、小さくすることが出来る。これにより、例えばインサート40が鉄製の場合には、インサートの軽量化が可能となる。
【0040】
前記フランジ46の厚さ方向(図6の紙面に直交する方向)の断面形状は、第1実施形態の変形例を示す図8(図7のA−A断面)と同様であり、先端部が細くなる台形形状であることが好ましい。係る台形形状における先端部の厚みは、帯部45の厚みT45(図5)と概略等しい。
【0041】
図1で示す様に、フランジ46は、その肩部46aが、仮想直線Lvに沿って、飾り孔5(図1では2点鎖線で示す)側へ突出するように形成されていることが好ましい。ここで、仮想直線Lvは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5とを結ぶ仮想直線である。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
ここで、仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。
【0042】
構造的に弱い領域にフランジ46を設けることにより、フランジ46が当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用するので、ディスク2全体の強度を向上することが出来る。
換言すれば、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強することが出来る、という観点から決定されているのである。
【0043】
そして、図1〜図6で示す第1実施形態によれば、インサート40にハブボルト挿通孔4が一体に形成されている。インサート40は、上述した様に、ダクタイル、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼等により構成されており、基材である鋳造アルミニュームに比較して、ナットの締め付けトルクが強大であっても変形し難い。
そのため、長年に亘って、タイヤ交換時のハブからの取り外しを繰り返しても、球面座4rが変形することは防止される。
【0044】
また、図1〜図6の第1実施形態によれば、インサート40にフランジ46が形成され、該フランジ46(肩部46a)は、飾り穴5に向う方向へ突出しているので、フランジ46(肩部46a)を設けていない場合に比較して、インサート40とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大する。当該境界面の面積が増大すれば、そこに作用する応力(例えば剪断応力)は低減する。ここで、応力(例えば剪断応力)は、インサート40と鋳造アルミニュームとを剥離させる様に作用する応力である。
【0045】
フランジ46により、インサート40とホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面に作用する応力(例えば剪断応力)が低減すれば、インサート40と鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
上述した通り、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強するという観点から決定されている。そして、構造的に弱い領域は、インサート40とホイール基材との境界面における剥離が生じる可能性が高い部分でもある。従って、フランジ46の形状は、インサート40とホイール基材とが剥離し難い様にせしめる、という観点からも決定される。
【0046】
さらに、ハブボルト挿通孔4がインサート40に形成されるため、ハブボルト挿通孔4周辺領域の強度が十分に得られ、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
その結果、従来の鋳造アルミニュームのみで構成されたホイールに比較して、ホイール1の厚さ方向寸法を、低減する事も可能になる。
【0047】
このように、図1〜図6の第1実施形態によれば、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける前述の種々の問題点を解消することが出来る。
そして、アルミニューム鋳造により形成された自動車用ホイールにおける各種メリット、すなわち、アルミニューム鍛造に対してデザインの自由度が高いというメリットや、鋼製ホイールよりも軽量であるメリット、鉄製ホイールよりも熱伝導率が良好であり、フィン(或いは、リブ)形状による空冷効果が良好であると言うメリットを損なうこと無く、これらのメリットを十分に享受することが出来る。
【0048】
次に、図7、図8を参照して、第1実施形態の第1変形例を説明する。
図7、図8の第1実施形態の第1変形例では、図1〜図6の第1実施形態におけるインサート40のフランジ46に、フランジ46の厚さ方向(図7の紙面に垂直な方向:図8の左右方向)に延在する貫通孔を設けている。
【0049】
図7、図8において、フランジ46の肩部46aには、貫通孔48が形成されている。貫通孔48はフランジ46の厚さ方向(図7の紙面に垂直な方向:図8の左右方向)へ延在している。1箇所のフランジに形成する貫通孔48の本数及び形状は、特に限定するものではない。
【0050】
アルミニュームの鋳造時には、鋳造型枠内に予めセットされたインサート40の当該貫通孔48にも溶けたアルミニュームの湯が侵入し、インサート40を基材である鋳造アルミニュームに確実に融合・固着する。また、貫通孔48の内周面の面積の分だけ、ホイール1におけるインサート40と鋳造アルミニュームとの境界面の面積を増大させて、インサート40に作用する応力(例えば、剪断応力)を低減することが出来る。
また、貫通孔48は軽量化のための孔(ライトニングホール)にもなり、インサート40の軽量化にも寄与する。
図7、図8で示す第1実施形態の第1変形例の上記した以外の構成及び作用効果については、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0051】
次に、図9を参照して第1実施形態の第2変形例を説明する。
上述したように、ホイール1に外力が作用した場合の鋳造アルミニュームとインサート40の境界面に生じる応力(例えば剪断応力)を低減するために、且つ、鋳造アルミニュームに確実に接合するために、インサート40と基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積は、出来る限り大きくしたい。
図9の第1実施形態の第2変形例は、そのような要請に応えるものである。
【0052】
図9において、インサート40の外形(輪郭)は図1〜図6の第1実施形態と同様であるが、円筒状部41のホイール1の鋳造アルミニュームに接しない部分を除くインサート40の表面に、凹凸49が形成されている。
【0053】
円筒状部41のホイール1の鋳造アルミニュームに接しない部分を除くインサート40の表面に凹凸49を形成させたことによって、ホイール1の基材である鋳造アルミニュームとインサート40の境界面の面積は大きく増加する。そして、境界面の面積が増加することによって、鋳造アルミニュームとインサート40の境界面に生じる応力(例えば剪断応力)を緩和させることが出来る。
【0054】
図9において、インサート40表面に形成された凹凸49は、矩形の凹凸が連続して形成されているが、波型の凹凸を連続して構成することが可能である。また、図示された凹凸に比較して、非常に微細な凹凸によって、インサート40表面の凹凸を構成しても良い。
図9で示す第2変形例における構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0055】
次に、図10、図11を参照して、第2実施形態について説明する。
図1〜図9の第1実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)は、インサート40の材料として、例えばダクタイルを用いている。
それに対して、図10、図11の第2実施形態では、インサート40Aを、例えば鋳造アルミニュームよりも強度が高く、比重が同等か或いは軽いシリコンアルミニュームで製造している。ここで、シリコンアルミニュームは、ダクタイル等(第1実施形態におけるインサート40の素材)に比較して、強度は劣っている。
【0056】
図10、図11において、ホイール1Aはインサート40Aを有し、インサート40Aは環状部47を有している。環状部47はハブボルト挿通孔4を含み、ハブ嵌合孔3の半径方向外側の領域に配置されている。
図10で示すように、環状部47の半径方向外方へ突出するフランジ46Aが形成されている。環状部47において、半径方向の幅W47は、フランジ46Aが形成されている箇所を除き、概略均一である。
また、図11で示すように、インサート40A(の環状部47)の厚みはディスク2の厚みT2に等しい。
【0057】
図11で示す様に、フランジ46は概略台形に構成され、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図12で示す様に、インサート40Aのフランジ46Aを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Aにより、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0058】
ホイール1Aを鋳造する際に、エア抜きを良好に行うための、インサート40Aを、図13、図14で示す様な形状とすることが可能である。
図13のインサート40Aにおいては、ハブボルト挿通孔4の中間の領域40ARは、ハッチングを付して表現されている。領域40ARの断面が図14に示されている。
図14において、領域40ARの厚さ寸法Tarは、ハッチングが付されていない領域(図13参照)における厚さ寸法Tnに比較して、小さくなっている。そして、インサート40Aの厚さ寸法が小さい領域40ARには、鋳造アルミニュームが充填されている。
【0059】
インサート40Aを、図13、図14で示す様な形状とすることにより、アルミニューム鋳造を行う際に、インサート40Aの領域40ARを介して良好にエア抜きを行うことが出来るのである。
すなわち、鋳型内に存在したエアは、領域40ARにおける厚さ方向寸法の小さい部分から良好に抜ける。そのため、アルミニューム鋳造時に、アルミニュームの湯流れがスムーズになり、インサート40Aとホイール基材が剥離し難くなる。
【0060】
再び図10において、仮想線であるピッチサークルCpが示されている。ピッチサークルCp上には、ハブボルト挿通孔4が複数箇所(図示の例では8箇所)に等ピッチで形成されている。
図11で示すハブボルト挿通孔4の詳細は、第1実施形態と同様である。
【0061】
インサート40Aの環状部47の外周部401において、ハブボルト挿通孔4の存在する領域の半径方向外方には、フランジ46が形成されている。
フランジ46の半径方向外方の縁部は複数の円弧で形成されている。
フランジ46は、ホイール1Aの半径であって、ハブボルト挿通孔4の中心を通る半径について、線対称に形成されていることが望ましい。
【0062】
インサート40Aのフランジ46の両肩部46aは、第1実施形態と同様に、仮想直線Lvに沿って、飾り孔5(図10では2点鎖線で示す)側へ突出するように形成されている。ここで、仮想直線Lvは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5とを結んでいる。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。構造的に弱い領域にフランジの肩部46aを設けることにより、フランジの肩部46aが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用するので、ディスク2全体の強度を向上することが出来る。
換言すれば、フランジ46の形状は、構造的に弱い領域を補強することが出来る、という観点から決定されているのである。
【0063】
また、フランジ46を設けることにより、(フランジ46を設けていない場合に比較して)インサート40Aとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Aと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
すなわち、フランジ46の形状は、インサート40Aとホイール基材とが剥離し難い様にせしめる、という観点からも決定される。
【0064】
図示はしないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Aのフランジ46に貫通孔を設けても良い。
また、図示はしないが、インサート40Aの外周面(フランジ46の表面を含む)に凹凸を形成して、インサート40Aと鋳造アルミニュームとの境界面を増加させることも出来る。
【0065】
図10を参照すれば明らかな様に、インサート40Aの半径方向外方において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0066】
図10、図11の第2実施形態のホイール1Aは、インサート40Aの材質を軽量の材料であるシリコンアルミニュームとすることにより、インサートの材質を例えばダクタイルにした場合に比較して、全体の質量を軽減することが出来る。
換言すれば、第2実施形態では、インサート40Aを軽量化するため、或いは、小型化するために、腐心する必要がない。
図10、図11の第2実施形態においても、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分で、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
図10、図11の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0067】
次に、図15、図16を参照して第2実施形態の変形例に関して説明する。
図15、図16の第2実施形態の変形例では、図10、図11の第2実施形態におけるフランジ46の中央部分を省略して、2つの半円形状のフランジ46A、46Aに分離している。
【0068】
半円形の各フランジ46Aは、ハブボルト挿通孔4の中心と飾り穴5(図15では2点鎖線で示す)とを結ぶ仮想直線Lv上か、或いは、仮想直線Lv近傍の領域に位置している。ただし、ハブボルト挿通孔4の数と飾り穴の数が異なる場合は、その限りではない。
仮想直線Lv或いはその近傍の領域は、構造的に弱い領域である。構造的に弱い領域にフランジ46Aを設けることにより、フランジ46Aが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用し、ディスク全体の強度を向上することが出来る。
【0069】
また、フランジ46Aを設けることにより、(フランジ46Aを設けていない場合に比較して)インサート40Aとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Aと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0070】
図示されていないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Aのフランジ46Aに貫通孔を設けても良い。
また、図示されていないが、インサート40Aの外周面(フランジ46Aの表面を含む)に凹凸を形成して、インサート40Aと鋳造アルミニュームとの境界面を増加させることも出来る。
【0071】
図16で示す様に、フランジ46Aは断面形状が概略台形に構成され、ディスク2の鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図17で示す様に、インサート40Aのフランジ46Aを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Aにより、ディスク2の鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0072】
図15を参照すれば明らかな様に、インサート40Aの半径方向外方において、フランジ46が形成された以外の箇所にも、突出部が設けられている。但し、その様な突出部を設けないことも可能である。
【0073】
図15、図16の変形例における上記以外の構成及び作用効果は、図10、図11の第2実施形態と同様である。
【0074】
次に、図18、図19を参照して第3実施形態を説明する。
図1〜図16の各実施形態では、単一の環状に構成されたインサート(40、40A)を備え、環状のインサート(40、40A)に複数箇所(例えば8箇所)のハブボルト挿通孔4が形成されている。
それに対して、図18、図19の第3実施形態では、複数箇所(例えば8箇所)のハブボルト挿通孔4毎に、インサート40Bを独立分離させて設けている。
【0075】
図18、図19において、第3実施形態に係るホイール1Bにおいては、筒状のインサート40Bが等間隔に(図18において、1点鎖線で示すピッチサークルCpを等分する様に)、複数箇所(例えば8箇所)設けられている。図18、図19から明らかな様に、インサート40Bは、ハブボルト挿通孔4の位置に配置されている。
複数個のインサート40Bは、ホイール1Bの基材である鋳造アルミニュームに鋳込まれている。そして、インサート40Bの材質は、例えば、ダクタイル、オーステナイト鋳鉄、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼、アルミニューム合金鋳物(例えばシリコンアルミニューム)、機械構造用炭素鋼、ステンレス鋼である。
【0076】
インサート40Bの筒状の外周縁部(半径方向外方縁部)には、フランジ46Bが形成されている。フランジ46Bは、全周に亘って同じ突出量とすることも可能であるが、構造的に弱い領域に向う部分が、他の方向に向う部分に比較して、半径方向外方への突出量が大きいことが好ましい。
フランジ46Bは、一部が欠損していも良い。すなわち、半径方向外方に突出した部分を設けないことも可能である。
【0077】
構造的に弱い領域にフランジ46Bを突出させることにより、フランジ46Bが当該構造的に弱い領域を補強する補強材として作用し、ディスク全体の強度を向上することが出来る。
また、フランジ46Bを設けることにより、(フランジ46Bを設けていない場合に比較して)インサート40Bとホイール基材である鋳造アルミニュームとの境界面の面積が増大し、そこに作用する応力(例えば剪断応力)が低減する。そして、インサート40Bと鋳造アルミニュームとが剥離し難くなる。
【0078】
図19で示す様に、フランジ46Bは断面形状が概略台形に構成され、ホイール1Bの鋳造アルミニュームに埋設される様に構成されている。
これに対して、図20で示す様に、インサート40Bのフランジ46Bを、いわゆる「二又」状に構成し、「二又」状のフランジ46Bにより、ホイール1Bの鋳造アルミニュームを挟み込む様に構成しても良い。
【0079】
図示はしないが、図7、図8で示す第1実施形態の第1の変形例と同様に、インサート40Bのフランジ46Bに貫通孔を設けることも可能である。
また、図示はしないが、インサート40Bの外周面(フランジ46Bを含む)の表面に凹凸を形成して、鋳造アルミニュームとの境界面を増加させても良い。
【0080】
第3実施形態においても、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分となり、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
図18〜図20で示す第3実施形態における上記以外の構成及び作用効果は、図1〜図6の第1実施形態と同様である。
【0081】
次に、図21〜図24を参照して、本発明の第4実施形態(図21、図22)と、その変形例(図23、図24)について説明する。
図1〜図20の実施形態では、基材である鋳造アルミニュームに異種金属(鉄系金属及びシリコンアルミニューム等)を鋳込んで、組織的に融合させている。
【0082】
それに対して、図21、図22の第4実施形態及び図23、図24の第4実施形態の変形例では、鋳造アルミニュームのホイール(図21〜図24では、明示せず)のハブボルト挿通孔4の位置に、ハブボルト挿通孔4よりも大きな嵌合孔22を加工して形成し、その嵌合孔22にインサート40Dを圧入されている。そして、インサート40Dにはハブボルト挿通孔4が形成されており、インサート40Dの材質は、基材である鋳造アルミニュームよりも強度及び硬度が高い材質である。
第4実施形態は、鍛造アルミホイールにも適用出来る。
【0083】
図21において、第4実施形態に係るアルミニューム製ホイール(図21〜図24では、明示せず)のディスク2には、ハブボルト挿通孔4を形成するべき位置に、インサート嵌合孔22が形成されている。インサート嵌合孔22において、表裏両面2a、2b近傍の位置に、拡径部24が設けられている。
【0084】
インサート嵌合孔22には、図22に示すように、2ピースに分離するインサート40D、40Dが嵌合される。
インサート40Dの材質は、ディスク2の基材である鋳造アルミニュームよりも、強度及び硬度が高い金属材料(例えば、機械構造用炭素鋼)である。
【0085】
インサート40Dは、円筒状の本体42Dと、本体42Dの一端部に形成された円形のフランジ44Dとを有している。
インサート40Dの内周面において、フランジ44D側の端部には、球面座4rが形成されている。
インサート40Dの内周面において、球面座4r以外の領域は、球面座4rが形成された側の開口部内径よりも、内径が小さいストレート穴4sが形成されている。換言すれば、ハブボルト挿通孔4は球面座4rとストレート孔4sとで構成されている。
【0086】
インサート40Dの本体42Dの外径は、ディスク2に形成されたインサート嵌合孔22の内径よりも僅かに大きく形成されている。インサート40Dのフランジ44Dの厚みTf(図22)は、ディスク2側の拡径部24の深さD(図21)と同一か、僅かに小さく形成されている。
2つのインサート40D、40Dは、図22で示すようにフランジ44Dの反対側の端部同士を当接した状態において、2つのインサート40D、40Dの合計の長さL(図22)は、ディスク2の厚みT2(図21)と同等か、僅かに小さくなる様に形成されている。
【0087】
インサート40Dをインサート嵌合孔22に嵌合させる際に、インサート40Dのフランジ44Dの外周面44Dh及びフランジ部44Dの内側平面部44Dv及び本体42Dの外周面42Dwに、例えばアクリル系の接着剤を全面または一部位に塗布することが好ましい。
【0088】
接着剤を塗布すれば、インサート40D、40Dをインサート嵌合孔22の所定位置に所定の圧力で嵌合すると、当該接着剤により、インサート40D、40Dはインサート嵌合孔22へ強固に接着されるからである。
【0089】
上述したように、図21〜図24の第4実施形態では、インサート40Dの材質を、ディスク2の基材である鋳造アルミニュームよりも強度及び硬度の高い金属材料(例えば、機械構造用炭素鋼)としている。従って、ハブボルト挿通孔4周辺の強度が十分で、タイヤ交換等による繰り返しのハブ着脱があっても当該挿通孔4は変形や挫屈が回避できる。
【0090】
次に、図23、図24を参照して、第4実施形態の変形例について説明する。
図21、図22の第4実施形態では、ディスク2に形成されたインサート嵌合孔22はストレートな貫通孔であるが、図23、図24の変形例では、インサート40E側の本体43Eの外周面にテーパを付け、対応するインサート嵌合孔23に同じテーパを付けている。
【0091】
図21〜図24において、インサート40D、40Eの材料として、機械構造用炭素鋼を例示しているが、一般構造用炭素鋼、鋳鉄、鋳鋼、硬質アルミニューム、その他の高張力材料を用いることも可能である。
【0092】
図24において、インサート40Eの本体はテーパ軸43Eであり、図23において、インサート嵌合孔23はテーパ孔である。テーパが付いたインサート嵌合孔23と、テーパ軸43Eとの径は、インサート嵌合孔23へテーパ軸43Eを圧入することが可能な様に設定されている。
また、アルミニューム強度を考慮して、例えば摩擦接合の方法も好ましい。
図23、図24の変形例における上記以外の構成及び作用効果は、図21、図22の第4実施形態と同様である。
【0093】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態の部分正面図。
【図2】図1におけるA1−O−A2断面図。
【図3】図1におけるA1−O−E−D断面図。
【図4】フランジのその他の断面形状を示す断面図。
【図5】図1におけるB−B断面図。
【図6】第1実施形態の構成であるインサートの平面図。
【図7】第1実施形態の第1変形例の部分正面図。
【図8】図7におけるA−A断面図。
【図9】第1実施形態の第2変形例の部分正面図。
【図10】本発明の第2実施形態の部分正面図。
【図11】図10におけるA−A断面図。
【図12】第2実施形態のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図13】第2実施形態のインサートにおける他の形状を示す部分正面図。
【図14】図13におけるB−B断面図。
【図15】第2実施形態の変形例の部分正面図。
【図16】図15におけるA1−O−E−D断面図。
【図17】図15のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図18】本発明の第3実施形態の部分正面図。
【図19】図18におけるA1−O−E−D断面図。
【図20】第3実施形態のフランジにおける他の断面形状を示す断面図。
【図21】本発明の第4実施形態のディスクの部分断面図。
【図22】第4実施形態のインサートの断面図。
【図23】第4実施形態の変形例のディスクの部分断面図。
【図24】第4実施形態の変形例のインサートの断面図。
【図25】従来技術の鋳造アルミホイールのカット断面の斜視図。
【図26】ハブにホイールを取り付ける場合の締結要部の断面図。
【符号の説明】
【0095】
1・・・ホイール
2・・・ディスク
3・・・ハブ嵌合孔
4・・・ハブボルト挿通孔
4r・・・球面座
22、23・・・インサート嵌合孔
40、40A、40B、40C、40D、40E・・・インサート
41・・・円筒状部
45・・・帯部
46、46A、46B・・・フランジ
47・・・環状部
48・・・貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールにおいて、ディスク取付用のボルト孔がインサートに形成されており、該インサートは鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面に露出している部分と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分とを有していることを特徴とする自動車用ホイール。
【請求項2】
ディスク取付用のボルト孔近傍から構造上強度が要求される領域に向って突出しているフランジが形成されている請求項1の自動車用ホイール。
【請求項3】
前記インサートは鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔はホイールの円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサートは円周方向に連続した形状である請求項1、2の何れかの自動車用ホイール。
【請求項4】
前記インサートは鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔はホイールの円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサートは円周方向に連続しておらず、前記ディスク取付用のボルト孔を形成するべき部分にのみ配置されている請求項1、2の何れかの自動車用ホイール。
【請求項1】
アルミニューム鋳造で製造された自動車用ホイールにおいて、ディスク取付用のボルト孔がインサートに形成されており、該インサートは鋳造アルミニュームとは別の素材で構成されており、ホイール表面に露出している部分と、鋳造アルミニュームに埋設されている部分とを有していることを特徴とする自動車用ホイール。
【請求項2】
ディスク取付用のボルト孔近傍から構造上強度が要求される領域に向って突出しているフランジが形成されている請求項1の自動車用ホイール。
【請求項3】
前記インサートは鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔はホイールの円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサートは円周方向に連続した形状である請求項1、2の何れかの自動車用ホイール。
【請求項4】
前記インサートは鋳造アルミニュームに鋳込まれており、ディスク取付用のボルト孔はホイールの円周方向へ等間隔に複数個設けられており、インサートは円周方向に連続しておらず、前記ディスク取付用のボルト孔を形成するべき部分にのみ配置されている請求項1、2の何れかの自動車用ホイール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2008−110381(P2008−110381A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295265(P2006−295265)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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