説明

自動車用ワイパモータ制御回路

【課題】リレー部品の作動音に起因する違和感を緩和し、自動車内の静粛性を向上させることのできる自動車用ワイパモータ制御回路を提供する。
【解決手段】ワイパの間欠動作を行う時、ワイパ起動信号出力部16は、ワイパ起動リレー駆動部13を導通させてワイパ起動リレー11をON(bc接続)にする。これにより、ワイパモータ21が回転を開始し、同期動作するモータスイッチ22がON(bc接続)する。電流検出部15は、ウインドウワイパの往復動作が切り替わる反転位置を、ワイパモータ21の駆動電流に現れる特徴的な変化から検出する。ワイパ起動信号制御部17は、この検出された特徴的な変化に基づいて、ワイパ起動リレー駆動部13を非導通にさせることをワイパ起動信号出力部16に指示する。ワイパ起動信号出力部16は、指示に従ってワイパ起動リレー駆動部13を非導通にし、ワイパ起動リレー11をOFF(ac接続)させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のウインドウワイパを往復動作させるワイパモータを制御する自動車用ワイパモータ制御回路に関し、より特定的には、ウインドウワイパの間欠的な動作時におけるワイパ作動用リレーの切り替え制御の最適化を実現したワイパモータ制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車のウインドウガラスに付着した雨滴等を払拭するため、自動車にはワイパシステムが搭載されている。このワイパシステムは、基本的には、回転運動を発生させるワイパモータ、ワイパモータの回転を制御する制御装置、ウインドウガラスの表面を往復動作するウインドウワイパ(ワイパブレード)、及びワイパモータとウインドウワイパとを連結すると共にワイパモータの回転動作をウインドウワイパの往復動作に変換するリンク機構で構成される。この構成により、ワイパモータを適切に回転させ、ウインドウワイパによってウインドウガラスに付着した雨滴等を払拭させる。
【0003】
一般的に、ワイパモータの回転制御にはリレー部品が用いられ、ウインドウワイパを間欠動作させる時には以下のような制御が行われる。
運転者から受けるワイパ作動の指示に従って、まずリレー部品がオン状態となり、リレー部品を介してワイパモータに電源が供給される。電源が供給されたワイパモータは、回転動作を始める。このワイパモータには、ワイパモータの回転に連動及び同期してオン状態又はオフ状態となるスイッチ部が設けられており、ワイパモータが回転動作を始めた後にオン状態となって、このスイッチ部を介しても電源の供給が可能である状態となる。このスイッチ部がオン状態となった後、所定の時間が経過するとリレー部品がオフ状態となり、ワイパモータへの電源供給が、リレー部品を介した供給から、スイッチ部を経由した供給に切り替わる。ワイパモータへの電源がスイッチ部を経由した供給に切り替わった後もワイパモータは回転動作を継続し、所定量の回転動作が終了するとスイッチ部による電源供給が停止してワイパモータも停止する。
このように、リレー部品とスイッチ部とによる電源供給の連携制御によって、ウインドウワイパによるウインドウガラス上の往復運動が実行される。
【0004】
通常、このワイパモータの回転制御に用いられるリレー部品は、接点を機械的に切り替える電磁スイッチであり、オン状態及びオフ状態の切り替え時にわずかながら作動音が発生する。この作動音は、搭乗者から十分に離れた場所や騒音で掻き消される場所等にリレー部品が設置されていれば、気になることはない。ところが、近年の自動車における機能集約化によって、ワイパ操作スイッチの中にリレー部品が内蔵される場合が増加している。つまり、静かな車内において、それも運転者に近い位置で、リレー部品が作動することとなる。
【0005】
ここで、リレー部品がオン状態となる、すなわちワイパモータに電源の供給を開始する時には、リレー部品の作動音に対してウインドウワイパが動き始めるという動作状態の変化が伴うため、運転者にとってあまり違和感はないと考えられる。しかしながら、リレー部品がオフ状態となる、すなわちワイパモータへの電源供給がリレー部品からスイッチ部に切り替わる時には、ウインドウワイパによる払拭行為の最中であり、リレー部品の作動音に対してウインドウワイパの動作状態が何ら変化しない。このため、ウインドウワイパの動きが変化しない時に生じるリレー部品の作動音を異音と捉えて、運転者が違和感を抱くおそれがある。このような違和感は、静粛な車内での快適性を損ねる原因となり問題である。
【0006】
この問題を解決する手法として、例えば特許文献1で提案されている技術が存在する。この特許文献1に記載の技術では、ウインドウワイパが往路動作に要する時間と復路動作に要する時間とがほぼ等しいという観点から、ウインドウワイパが実際に行った往復動作時間を計測して、計測した往復動作時間の半分の時間を求める。そして、ウインドウワイパが作動してからこの求めた半分の時間が経過したタイミングで、リレー部品をオン状態からオフ状態に切り替えることを行っている。
【0007】
この制御により、特許文献1では、リレー部品がオフ状態となる時の作動音を、ウインドウワイパが往路動作を終えて反転位置で一旦停止するタイミングに合わせて発生させることで、リレー部品の作動音に対してウインドウワイパの動作状態の変化を伴わせて、運転者が受ける違和感を緩和させることを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−143305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載された制御では、ウインドウワイパが前回実際に行った往復動作時間に基づいて、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転する時間を求め、この求めた時間を今回行うウインドウワイパ動作におけるリレー部品のオン状態からオフ状態への切り替えタイミングとして用いている。
【0010】
このため、運転者によって間欠時間が調整されたり、雨滴感知機能によって降水量が変化したりする場合等の、ウインドウワイパの作動速度が変化した直後においては、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転する位置と、リレー部品をオン状態からオフ状態に切り替えるタイミングとがずれてしまい、自動車の運転者が受ける違和感を十分に緩和することができないという問題がある。
【0011】
それ故に、本発明の目的は、ウインドウワイパが前回実際に行った往復動作時間からウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転する時間を求めるのではなく、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転したタイミングを直接検出してリレー部品をオフ状態に切り替え、リレー部品の作動音をシールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦音で掻き消すことで、自動車内の静粛性を向上させることのできる自動車用ワイパモータ制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウインドウワイパを往復動作させるワイパモータを制御する自動車用ワイパモータ制御回路に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の自動車用ワイパモータ制御回路は、電源を印加してワイパモータを起動させるオン状態と、ワイパモータに電源を印加しないオフ状態とを、ワイパ起動信号に従って切り替えるワイパ起動リレーと、ワイパ起動リレーのオン状態によるワイパモータの起動からウインドウワイパが1回の往復動作を完了するまでの間に、ワイパ起動リレーがオフ状態に切り替われば、ワイパ起動リレーに代わってワイパモータに電源を継続して印加するワイパモータスイッチと、ワイパモータの駆動電流を測定し、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転するタイミングを検出する電流検出手段と、電流検出手段で検出されたタイミング、又は当該タイミングから所定時間前、あるいは所定時間後のタイミングで、ワイパ起動リレーがオフ状態に切り替わるように、ワイパ起動信号を制御するワイパ起動信号制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に切り替わる時に生じるワイパモータに流れる駆動電流の特徴的な変化を検出して、ウインドウワイパの反転タイミングを判断するので、ウインドウワイパの動作速度が変化した直後であっても、ウインドウワイパの反転タイミングと、ワイパ起動リレーをオン状態からオフ状態に切り替えるタイミングとがずれることがない。これにより、適切なタイミングで確実にワイパ起動リレーをオフ状態に切り替えることができるので、運転者が受ける違和感を緩和できると共に、車両の静粛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1の構成を示す図
【図2】回転動作時にワイパモータ21に流れる駆動電流の波形を概念的に示した図
【図3】自動車用ワイパモータ制御回路1の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャート
【図4】本発明の第2の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路2の構成を示す図
【図5】図4に示す自動車用ワイパモータ制御回路2の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャート
【図6】本発明の第3の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路3の構成を示す図
【図7】図6に示す自動車用ワイパモータ制御回路3の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1の構成を示す図である。図1において、第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1は、ワイパモータ制御ユニット10及びワイパモータユニット20で構成される。このワイパモータ制御ユニット10は、ワイパ起動リレー11と、ワイパ速度切り替えリレー12と、ワイパ起動リレー駆動部13と、ワイパ速度切り替えリレー駆動部14と、電流検出部15と、ワイパ起動信号出力部16と、ワイパ起動信号制御部17とを備える。また、ワイパモータユニット20は、ワイパモータ21と、モータスイッチ22とを備える。
【0016】
まず、第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1における上述した各構成の概要を説明する。
ワイパ起動信号出力部16は、運転者から指示されたウインドウワイパ動作に応じたワイパ起動信号を生成し、ワイパ起動リレー駆動部13及びワイパ速度切り替えリレー駆動部14に出力する。具体的には、ウインドウワイパの連続動作、間欠動作、及びミスト動作(ウインドウウォッシャー液の噴射に連動した動作)が指示されると、ハイレベルのワイパ起動信号が、ウインドウワイパの動作に関する指示がなければ、ローレベルのワイパ起動信号が、ワイパ起動信号出力部16からワイパ起動リレー駆動部13へ出力される。なお、ウインドウワイパの動作に関する指示がない場合には、ワイパ起動信号を出力しない(無信号)制御であってもよい。また、ウインドウワイパの連続動作に関しては、動作速度が高速(Hi)又は低速(Lo)の指示に応じたハイレベル又はローレベルのワイパ起動信号が、ワイパ起動信号出力部16からワイパ速度切り替えリレー駆動部14へ出力される。
【0017】
ワイパ起動リレー駆動部13は、例えばスイッチング用のトランジスタを構成に含み、ワイパ起動信号出力部16から与えられるワイパ起動信号に従ってトランジスタの導通及び非導通を制御することで、自らのオン状態及びオフ状態を切り替える。具体的には、ワイパ起動リレー駆動部13は、ワイパ起動信号がハイレベルであればトランジスタが導通してオン状態になり、ワイパ起動信号がローレベルであればトランジスタが非導通となりオフ状態となる。
同様に、ワイパ速度切り替えリレー駆動部14は、例えばスイッチング用のトランジスタを構成に含み、ワイパ起動信号出力部16から与えられるワイパ起動信号に従ってトランジスタの導通及び非導通を制御することで、自らのオン状態及びオフ状態を切り替える。具体的には、ワイパ速度切り替えリレー駆動部14は、ワイパ起動信号がハイレベルであればトランジスタが導通してオン状態となり、ワイパ起動信号がローレベルであればトランジスタが非導通となりオフ状態となる。
【0018】
ワイパ起動リレー11は、コイルと可動接点とで構成された電磁スイッチであり、コイルの一方端及び端子bがIG電源(イグニッション電源)に、コイルの他方端がワイパ起動リレー駆動部13に、端子aがモータスイッチ22に、端子cが電流検出部15に、それぞれ接続されている。このワイパ起動リレー11は、ワイパ起動リレー駆動部13がオフ状態(トランジスタが非導通)の場合は、コイルに電流が流れずに端子aと端子cとを接続し、ワイパ起動リレー駆動部13がオン状態(トランジスタが導通)の場合は、コイルに電流が流れて励磁し端子bと端子cとを接続する。
また、ワイパ速度切り替えリレー12も、コイルと可動接点とで構成された電磁スイッチであり、コイルの一方端がIG電源に、コイルの他方端がワイパ速度切り替えリレー駆動部14に、端子aがワイパモータ21の低速側に、端子bがワイパモータ21の高速側に、端子cが電流検出部15に、それぞれ接続されている。このワイパ速度切り替えリレー12は、ワイパ速度切り替えリレー駆動部14がオフ状態(トランジスタが非導通)の場合は、コイルに電流が流れずに端子aと端子cとを接続し、ワイパ速度切り替えリレー駆動部14がオン状態(トランジスタが導通)の場合は、コイルに電流が流れて励磁し端子bと端子cとを接続する。
【0019】
ワイパモータ21は、ワイパ起動リレー11及びワイパ速度切り替えリレー12を介して供給されるIG電源によって回転動作を発生させ、この発生させた回転動作を所定のリンク機構(図示せず)を介してウインドウワイパの往復動作に変換して伝える。
モータスイッチ22は、ワイパモータ21の回転に連動及び同期してオン状態又はオフ状態となる回転摺動式スイッチである。具体的には、ワイパモータ21が停止している時は、端子aと端子cとが接続されてグラウンド接地(GND接続)となるオフ状態となり、ワイパモータ21が回転を開始して停止するまでは、端子bと端子cとが接続されIG電源が印加されるオン状態となる。
【0020】
電流検出部15は、ワイパ起動リレー11とワイパ速度切り替えリレー12との間に接続される。この電流検出部15は、回転動作時にワイパモータ21に流れる駆動電流を観測し、ワイパモータ21の駆動電流に現れるある特徴的な変化を検出する。なお、この特徴的な変化については後述する。この特徴的な変化の検出結果は、ワイパ起動信号制御部17に通知される。
ワイパ起動信号制御部17は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出したことを電流検出部15から通知されると、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転したタイミングが検出されたと判断する。そして、ワイパ起動信号制御部17は、この判断に従って、ワイパ起動信号をローレベルに変化させるようにワイパ起動信号出力部16に指示を行う。ワイパ起動信号出力部16は、このワイパ起動信号制御部17からの指示に基づいて、ワイパ起動リレー11に出力するワイパ起動信号をローレベルに変化させる(又は、ワイパ起動信号の出力を停止する)。
【0021】
次に、第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1が行うワイパモータ制御を、図2及び図3をさらに参照して詳細に説明する。
図2は、回転動作時にワイパモータ21に流れる駆動電流の波形を概念的に示した図である。図3は、自動車用ワイパモータ制御回路1の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャートである。
【0022】
最初に図2を参照して、ウインドウワイパが、初期位置から反転位置に達し(往路)、その後反転位置から再び初期位置に戻ってくる(復路)までの動作と、ワイパモータ21に流れる駆動電流との関係について説明する。
【0023】
ウインドウワイパが初期位置から往路動作を始めると、ゼロであった駆動電流が定常値まで一気に上昇する(期間A)。そして、往路動作中は、シールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦がほぼ一定であるため、定常値の駆動電流が流れ続ける(期間B)。その後、ウインドウワイパが反転位置に達すると、ワイパブレードが瞬間停止するためワイパモータ21の負荷が一時的に軽くなり、駆動電流が定常値より一時的に少なくなる(期間C)。次に、反転位置から復路動作が始まると、ウインドウワイパは停止状態から動き出さなければならないためシールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦が瞬間大きくなり、駆動電流が定常値より一時的に多くなる(期間D)。その後、復路動作中は、シールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦がほぼ一定であるため、定常値の駆動電流が流れ続ける(期間E)。そして、ウインドウワイパが初期位置まで戻ってくると、定常値が流れていた駆動電流がゼロまで下降する(期間F)。
【0024】
上述したように、ワイパモータ21に流れる駆動電流は、ウインドウワイパの動作が往路動作から復路動作に切り替わる反転位置の前後において、図2の期間C及び期間Dで示される特徴的な変化を示す。
本発明は、このワイパモータ21に流れる駆動電流の特徴的な変化に着目して、駆動電流が定常値より下降した後に上昇に転じる変化を検出することで、ウインドウワイパの動作が往路動作から復路動作に切り替わる反転タイミングを判断し、ワイパ起動リレー11のオフ状態制御に利用することを行う。
【0025】
以下、本発明の自動車用ワイパモータ制御回路1が、ウインドウワイパの動作が往路動作から復路動作に切り替わる反転タイミングを求めてワイパ起動リレー11をオフ状態に制御する手順を、図3を参照して説明する。
【0026】
運転者から与えられるウインドウワイパを間欠動作させる指示に応じて、ワイパ起動信号出力部16は、ハイレベルのワイパ起動信号を出力する(状態[1])。このハイレベルのワイパ起動信号によって、ワイパ起動リレー駆動部13がオン状態になってワイパ起動リレー11がオン状態となる(状態[2])。オン状態となったワイパ起動リレー11は、端子cを端子bに接続して、電流検出部15及びワイパ速度切り替えリレー12を介して、端子bに印加されているIG電源をワイパモータ21に供給する。なお、ワイパ速度切り替えリレー12がオン状態かオフ状態かは、本発明に直接影響しないため本明細書での説明は省略する。ワイパ速度切り替えリレー12がいずれの状態であっても、IG電源はワイパモータ21(の高速用端子及び低速用端子のいずれか)に供給される。
【0027】
ワイパモータ21は、IG電源が供給されるまでは回転停止の状態にあり(状態[3])、電流検出部15で検出される駆動電流もゼロである(状態[4])。この場合、モータスイッチ22は、ワイパモータ21の回転に同期してオフ状態(GND接続)である(状態[5])。そして、ワイパ起動リレー11からIG電源が供給されると、ワイパモータ21は回転動作を開始し(状態[6])、電流検出部15では定常値の駆動電流が検出される(状態[7])。その後、ワイパモータ21が所定の角度を回転すると、モータスイッチ22はオン状態に切り替わる(状態[8])。このオン状態への切り替わりによって、モータスイッチ22の端子cが端子bに接続され、端子bに印加されているIG電源がワイパ起動リレー11の端子aに接続されることとなる。
【0028】
ウインドウワイパが往路動作を続けた後に反転位置に達すると(状態[9])、電流検出部15で検出されるワイパモータ21の駆動電流が、上述した特徴的な変化を示す(状態[10])。ワイパ起動信号制御部17は、この電流検出部15が検出した特徴的な変化に基づいてウインドウワイパの反転を検出し、ワイパ起動信号をローレベルに変化させるための制御信号をワイパ起動信号出力部16へ出力する(状態[11])。ワイパ起動信号出力部16は、この制御信号に従ってワイパ起動信号をローレベルに変化させる(状態[12])。このワイパ起動信号の変化に応じて、ワイパ起動リレー11がオフ状態に切り替わる(状態[13])。このオフ状態への切り替わりによって、ワイパ起動リレー11の端子cが端子aに接続される。
【0029】
その後、ワイパモータ21は、モータスイッチ22経由でワイパ起動リレー11からIG電源の供給受けて回転動作を継続し、ウインドウワイパが復路動作を終えて初期位置に戻るまで定常値の駆動電流で回転を行う。そして、ウインドウワイパが初期位置に戻ると、同期して動作しているモータスイッチ22がオフ状態となってIG電源の供給がなくなり(状態[14])、ワイパモータ21の回転が停止する(状態[15])。
以降、上述した状態[1]〜状態[15]を、予め設定された間欠時間の間隔で繰り返すことで、ウインドウワイパの間欠動作が実現される。
【0030】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1によれば、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に切り替わる時に生じるワイパモータ21に流れる駆動電流の特徴的な変化を検出して、ウインドウワイパの反転タイミングを判断する。従って、ウインドウワイパの動作速度が変化した直後であっても、ウインドウワイパの反転タイミングと、ワイパ起動リレー11をオン状態からオフ状態に切り替えるタイミングとがずれることがない。これにより、ワイパ起動リレー11をオフ状態に切り替える時に生じる作動音を、ウインドウワイパが反転位置から復路動作を開始しようとしているタイミングで確実に発生させることができるので、ワイパ起動リレー11の作動音をシールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦音で掻き消されることになり、運転者に対する違和感を緩和できると共に、車両の静粛性を向上させることができる。
【0031】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路2の構成を示す図である。図4において、第2の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路2は、上述した第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1に制御調整部18をさらに備えた構成である。自動車用ワイパモータ制御回路2における制御調整部18以外の構成は、自動車用ワイパモータ制御回路1の構成と同様であるため、同一の参照符号を付して説明を一部省略する。
【0032】
上記第1の実施形態で述べたように、電流検出部15で検出される特徴的な変化は、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に切り替わる反転タイミングを示すものであるが、実際にはシールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦音が反転タイミングよりも遅れて発生する場合もある。このような場合には、ワイパ起動リレー11の作動音を掻き消すタイミングをこの反転タイミングから遅らせたい。そこで、自動車用ワイパモータ制御回路2では、制御調整部18を用いて以下の制御を行う。
【0033】
電流検出部15は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出し、その検出結果を制御調整部18に通知する。制御調整部18は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出したことを電流検出部15から通知されると、この通知の時点から所定時間の経過を待って、同じ通知をワイパ起動信号制御部17に出力する。この所定時間は、予め制御調整部18内に設定されており、制御調整部18は、例えばカウンタを使用して所定時間をカウントすることで、所定時間の経過を判断する。そして、ワイパ起動信号制御部17は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出したことを示す通知を制御調整部18から受けると、ワイパ起動信号をローレベルに変化させるための制御信号をワイパ起動信号出力部16に出力する。
【0034】
この制御調整部18による所定時間の遅延制御によって、図5に示すように、ワイパ起動リレー11がオフ状態に切り替わるタイミングを遅らせることができる。図5は、自動車用ワイパモータ制御回路2の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャートである。
【0035】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路2によれば、ワイパ起動リレー11をオン状態からオフ状態に切り替えるタイミングを任意の時間だけ遅らせることができる。これにより、第1の実施形態の構成では掻き消すことができなかったワイパ起動リレー11の作動音も、第2の実施形態の構成によって掻き消すことが可能となり、運転者に対する違和感を緩和できると共に、車両の静粛性を向上させることができる。
【0036】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路3の構成を示す図である。図6において、第3の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路3は、上述した第1の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路1に制御調整部19をさらに備えた構成である。自動車用ワイパモータ制御回路3における制御調整部19以外の構成は、自動車用ワイパモータ制御回路1の構成と同様であるため、同一の参照符号を付して説明を一部省略する。
【0037】
上記第1の実施形態で述べたように、電流検出部15で検出される特徴的な変化は、ウインドウワイパが往路動作から復路動作に切り替わる反転タイミングを示すものであるが、実際にはシールドガラスとワイパブレードゴムとの摩擦音が反転タイミングよりも早まって発生する場合もある。このような場合には、ワイパ起動リレー11の作動音を掻き消すタイミングをこの反転タイミングから進めたい。そこで、自動車用ワイパモータ制御回路3では、制御調整部19を用いて以下の制御を行う。
【0038】
ワイパ起動信号出力部16は、ワイパ起動リレー駆動部13に出力するワイパ起動信号を、制御調整部19にも出力する。電流検出部15は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出し、その検出結果を制御調整部19に通知する。制御調整部19は、ワイパ起動信号出力部16から出力されるワイパ起動信号と電流検出部15の検出結果とに基づいて、ワイパ起動信号がハイレベルに変化してから、すなわちワイパ起動リレー11がオン状態に切り替わってから電流検出部15がワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出するまでの作動時間を、計測して記憶する。そして、制御調整部19は、次にワイパ起動リレー11がオン状態に切り替わった場合、この記憶した作動時間から所定時間を減算した時間が経過した時に、電流検出部15においてワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出したこと伝えるダミー通知を、ワイパ起動信号制御部17に出力する。この所定時間は、予め制御調整部19内に設定されており、制御調整部19は、例えばカウンタを使用して記憶した作動時間から所定時間を減算した時間をカウントすることで、作動時間から所定時間が遡った時間の経過を判断する。そして、ワイパ起動信号制御部17は、ワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出したことを示すダミー通知を制御調整部19から受けると、ワイパ起動信号をローレベルに変化させるための制御信号をワイパ起動信号出力部16に出力する。
【0039】
この制御調整部19による所定時間の遡及制御によって、図7に示すように、ワイパ起動リレー11がオフ状態に切り替わるタイミングを進めることができる。図7は、自動車用ワイパモータ制御回路3の各構成における状態及び信号の関係を示したタイミングチャートである。
【0040】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る自動車用ワイパモータ制御回路3によれば、ワイパ起動リレー11をオン状態からオフ状態に切り替えるタイミングを任意の時間だけ進めさせることができる。これにより、第1の実施形態の構成では掻き消すことができなかったワイパ起動リレー11の作動音も、第3の実施形態の構成によって掻き消すことが可能となり、運転者に対する違和感を緩和できると共に、車両の静粛性を向上させることができる。
【0041】
なお、上記第3の実施形態では、制御調整部19が記憶する、ワイパ起動信号がハイレベルに変化してから、すなわちワイパ起動リレー11がオン状態に切り替わってから電流検出部15がワイパモータ21の駆動電流の特徴的な変化を検出するまでの作動時間は、直前の1回分だけである場合を説明した。しかしながら、制御調整部19において、過去の複数回分の作動時間を記憶しておき、この複数の作動時間の平均値を所定時間を減算する対象となる作業時間として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ウインドウワイパの間欠的な動作が可能なワイパモータ制御回路を搭載した自動車等に利用可能であり、特にワイパ起動リレーの作動音に起因する違和感を緩和し、自動車内の静粛性を向上させたい場合等に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1、2、3 自動車用ワイパモータ制御回路
10 ワイパモータ制御ユニット
11 ワイパ起動リレー
12 ワイパ速度切り替えリレー
13 ワイパ起動リレー駆動部
14 ワイパ速度切り替えリレー駆動部
15 電流検出部
16 ワイパ起動信号出力部
17 ワイパ起動信号制御部
18、19 制御調整部
20 ワイパモータユニット
21 ワイパモータ
22 モータスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドウワイパを往復動作させるワイパモータを制御する自動車用ワイパモータ制御回路であって、
電源を印加して前記ワイパモータを起動させるオン状態と、前記ワイパモータに電源を印加しないオフ状態とを、ワイパ起動信号に従って切り替えるワイパ起動リレーと、
前記ワイパ起動リレーのオン状態による前記ワイパモータの起動から前記ウインドウワイパが1回の往復動作を完了するまでの間に、前記ワイパ起動リレーがオフ状態に切り替われば、前記ワイパ起動リレーに代わって前記ワイパモータに電源を継続して印加するワイパモータスイッチと、
前記ワイパモータの駆動電流を測定し、前記ウインドウワイパが往路動作から復路動作に反転するタイミングを検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出された前記タイミング、又は当該タイミングから所定時間前、あるいは所定時間後のタイミングで、前記ワイパ起動リレーがオフ状態に切り替わるように、前記ワイパ起動信号を制御するワイパ起動信号制御手段とを備える、自動車用ワイパモータ制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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