説明

自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート及び自動車用成型部品

【課題】起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品に対する優れた接着力、自動車用成型部品の凹凸形状に対する優れた追従性、及びワイヤーハーネスが直線形状になろうとする反発力に対抗するための高い耐反発性を有し、それによりワイヤーハーネスを自動車用成型部品に安定に固着することが可能であり、かつ難燃性を有し、優れた製造適性を有する自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを提供する。
【解決手段】 自動車用ワイヤーハーネスを自動車用成型部品に固定するために用いる粘着シートであって、該粘着シートが、軟質金属箔と、発泡樹脂層と、粘着剤層とをこの順に積層した構造を備え、前記軟質金属箔の表面に溝が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型天井(ルーフライニング)、バンパー、ドアトリムといった給電が必要な機構が設置されている自動車用成型部品に、自動車用ワイヤーハーネス(組み電線)を固定するために用いられる粘着シートとその製造方法、該粘着シートを用いた自動車用ワイヤーハーネスの固定方法、及び該粘着シートを用いて自動車用ワイヤーハーネスを固定した自動車用成型部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の組み立てラインにおいては、所要工数を低減させるため、成型天井、バンパー、ドアトリムといった給電が必要な機構が設置されている自動車用成型部品の裏面側に、ルームランプ等への給電用の電線束(以下、ワイヤーハーネスと略記)を予め固着しモジュール化してから、これら自動車用成型部品が供給されている。
【0003】
これら成型天井、バンパー、ドアトリムといった給電が必要な機構が設置されている自動車用成型部品の裏面側へのワイヤーハーネスの固定には、作業の簡便性やワイヤーハーネスのレイアウトやワイヤーハーネスの固定位置等の設計変更が容易に行える等の理由から、塩化ビニルやポリオレフィン系プラスチックフィルム等の基材の片面に粘着層が設けられた粘着シートや、これら各種基材層に両面テープを貼付した粘着テープ等をワイヤーハーネスの周囲を回り込むように貼着して固定する方法が用いられている。
【0004】
また、成型天井、ドアトリム等は、従来、車外の騒音を遮断するために、硬い樹脂素材にプラスチックフィルムやシート等の材料を貼り合わせた構造となっていた。しかし、近年、より高レベルの車内静粛性が要求され、成型天井、ドアトリム等は、ウレタン樹脂等の柔軟素材に、通気性が高い不織布や紙系等の材料が貼り合わされた構造に変わってきている。
【0005】
このような表面が起毛した不織布や、表面が粗い紙系等の材料は、粘着シートの接触面が点接着となるため、成型天井、ドアトリム等のモジュール部品を立てかけて、組み立てラインまで輸送する際に、粘着シートに負荷がかかって粘着テープが剥がれてしまうという問題があった。特に、自動車用成型部品は凹凸形状を有しており、この凹凸に沿ってワイヤーハーネスを固着しようとすると、ワイヤーハーネスが直線形状になろうとする反発力が粘着シートに働き、粘着シートが短時間で剥がれてしまうという問題があった。
そこで、接着テープと超音波溶着や高周波溶着等の溶着ガンでの溶着を併用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−306741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、溶着ガンによる工程が増え作業性が悪くなるほか、作業には熟練を要する問題があった。
【0007】
また、成型天井、バンパー、ドアトリムといった自動車の内装部品に使用される材料は、搭乗者の安全面から、火災予防または延焼を防ぐことを目的に、難燃性や着火した場合の自己消化性(以下まとめて難燃性と略す)が要求され、成型天井等の裏面側にワイヤーハーネスを固定する粘着シートについてもこのような難燃性が付与されることが好ましい。粘着シートに難燃性を付与する方法としては、難燃性を有する基材の使用または粘着剤中への難燃剤の添加等があり、難燃性を有する基材としては、金属箔や難燃剤を添加した樹脂シート等が挙げられる。ところが、金属箔のみを基材として用いた場合は、粘着剤層を形成する粘着剤中に難燃剤を添加しなくても金属箔が粘着剤の延焼を防止する利点はあるが、金属箔は樹脂シートに比較して硬い基材であり、腰が強いため、被着体への追従性が悪く、粘着シートに負荷がかかった際に剥がれるという問題があった。また、難燃剤を添加した樹脂シートを基材として用いた場合は、粘着剤層も難燃性を有していないと燃えてしまう懸念があるため、併せて粘着剤中への難燃剤の添加が必要である。しかしながら、難燃剤を粘着剤中へ添加すると初期接着性が低下し、耐剥がれ性に劣る問題があった。
このように、表面が起毛した不織布や表面が粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品に対しては、十分な初期接着強度や耐剥がれ性に加え難燃性を両立させた粘着シートを用いることが求められるが、従来の粘着シートは、決してこれらを満足できるものではなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品に対する優れた接着力、自動車用成型部品の凹凸形状に対する優れた追従性、及びワイヤーハーネスが直線形状になろうとする反発力に対抗するための高い耐反発性を有し、それによりワイヤーハーネスを自動車用成型部品に安定に固着することが可能であり、かつ難燃性を有し、優れた製造適性を有する自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを提供すること、及びこのような自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを安定した品質で製造できる製造法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、上記自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを固定した自動車用成型部品を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、上記自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いた自動車用ワイヤーハーネスの自動車用成型部品への固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
即ち、本発明の第一の発明は、自動車用ワイヤーハーネスを自動車用成型部品に固定するために用いる粘着シートであって、該粘着シートが、軟質金属箔と、発泡樹脂層と、粘着剤層とをこの順に積層した構造を備え、前記軟質金属箔の表面に溝が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートである。
【0012】
また、本発明の第二の発明は、第一の発明に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを固定したことを特徴とする自動車用成型部品である。
【0013】
さらに、本発明の第三の発明は、第一の発明に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの製造方法であって、その製造工程において、ロールによる粘着シートの巻き取りを行う前に、前記軟質金属箔の表面に、前記粘着シートの進行方向に対して垂直な方向に溝を設けることを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの製造方法である。
【0014】
さらに、本発明の第四の発明は、第一の発明に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを、該粘着シートに設けられた溝と平行になるように自動車用成型部品に固定することを特徴とする自動車用ワイヤーハーネスの固定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート(以下、粘着シートと略記)には、軟質金属箔と発泡樹脂層とが積層された二層構造の基材層が使用されている。このように基材層の一部に軟質金属箔を使用することにより、本発明の粘着シートはワイヤーハーネスの反発力に対して十分に対抗しうる高い耐反発性を有するばかりではなく、発泡樹脂層及び粘着剤層の燃焼、或いは延焼を防ぐことができる。また、発泡樹脂層は適度な弾性を有しているため、自動車用成型部品の起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料の表面に粘着剤層が接した際に、自動車用成型部品の凹部においては粘着剤層を押さえつけるためのバネとして働き、凸部においては凸部を吸収するためのクッションとして働く。このような機能により本発明の粘着シートは、起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品に対する優れた接着力、及び自動車用成型部品の凹凸形状に対する優れた追従性を有している。
【0016】
また、本発明の粘着シートは、その軟質金属箔の表面に溝が設けられていることで、優れた製造適性を示す。軟質金属箔と発泡樹脂層とが積層された二層構造の基材層は、例えば、製造時にロールを通すことで軟質金属箔が凸状態になると応力により割れてしまうことがある。このように軟質金属箔が割れてしまうと、製造トラブルの原因になるばかりでなく、出来上がった粘着シートは難燃性を失ってしまう。しかし、本発明の粘着シートのように、軟質金属箔の表面にロールの巻き取り方向(粘着シートの進行方向)に対して垂直な方向に溝が設けられていると、軟質金属箔の表面積が粘着シートのロール接触面の表面積よりも大きいことで、軟質金属箔が凸状態になっても応力を吸収できるため、安定した品質で粘着シートを製造することができる。
【0017】
さらに、本発明の粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを、該粘着シートに設けられた溝と平行になるように自動車用成型部品に固定することにより、自動車用ワイヤーハーネスに対する追従性をより高めることができるため、自動車用ワイヤーハーネスの自動車用成型部品への固定をより良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート]
本発明の粘着シートは、自動車用ワイヤーハーネスを自動車用成型部品に固定するために用いられる粘着シートであって、基材と、該基材の上に設けられた粘着剤層とから構成されている。
【0019】
この基材は、軟質金属箔からなる層と発泡樹脂層の2層構造を有している。2層構造を形成する方法としては、例えば、軟質金属箔と発泡樹脂層を接着剤やプライマー等を介して接着する方法、加熱して発泡樹脂層を溶融しながら軟質金属箔をラミネートする方法等が挙げられる。このような2層構造とすることにより、起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品にワイヤーハーネスを良好に接着することができ、形状保持性に優れ、粘着剤の接着性を補助することができ、かつ、難燃性を付与することができる。
【0020】
軟質金属箔の材質としては、具体的には、アルミニウム、鉛、マグネシウム、銅、銀等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好ましい。
また、軟質金属箔の厚さは、2〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。軟質金属箔の厚さを2〜30μmとすることにより、粘着シート生産時や輸送時及び自動車用ワイヤーハーネス貼付作業時等に軟質金属箔の層を破壊することがなく、かつ、ワイヤーハーネスに追従させて粘着シートを貼り込み易くすることができる。また、軟質金属箔の厚みが上記の範囲であると、例えば、軟質金属箔と発泡樹脂層の2層構造からなる基材に粘着剤層を設け、粘着剤層上に離型紙を貼り合わせた粘着シートを製造した場合でも、軟質金属箔や離型紙が折れ難く、ロール化適性に優れている。
【0021】
本発明の粘着シートは、前記軟質金属箔の表面に溝が設けられている。この溝は、直線状、破線状、一点鎖線状、二点鎖線状及び波線状からなる群から選択される少なくとも1種以上で形成されたものが好ましい。このようなものとして具体的には、例えば、図1(a)〜(e)に示すものを挙げることができる。または、図1(f)に示すような千鳥状のものでも良く、図1(g)に示すような異なるパターンの溝を組み合わせたものでも良い。さらには、図1(h)に示すような、同一の又は異なるパターンの溝を格子状に組み合わせたものでも良い。すなわち、溝の長手方向の向きが揃っていれば、種々のパターンの溝をランダムに組み合わせて用いることができる。
【0022】
このような溝については、軟質金属箔の表面積が粘着シートのロール接触面の表面積よりも大きいことが必要である。粘着シートのロール接触面とは、粘着剤層上に設けられた剥離層が粘着シートの製造装置に設けられたロールと接触する面のことであり、剥離層が粘着剤層と接する面とは反対側の面のことである。なお、剥離層は種々の材質のものが使用可能であるが、ロールと接触する面が繊維質であったり、多孔質状の材料であったりする場合は、ロールと接触する剥離層の面は平滑な面であると仮定する。具体的には、軟質金属箔の表面積は、剥離層の表面積に対し、100.5〜150.0%の表面積であることが好ましく、101.0〜130.0%であることがより好ましい。軟質金属箔の表面積が粘着シートのロール接触面の表面積に対し、この範囲内にあることにより、例えば、製造時にロールを通すことで軟質金属箔が凸状態になった場合でも応力をこの溝により吸収できるため、軟質金属箔の割れを防止でき、製造トラブルを低減できると同時に、安定した品質で粘着シートを製造することができる。また、このような粘着シートで自動車用成型部品にワイヤーハーネスを固定することにより、形状保持性に優れ、高い耐反発性を有する。
【0023】
また、このような溝の幅は、0.1〜5.0mmであることが好ましく、溝の間隔は0.5〜5.0mmであることが好ましく、溝の深さは0.01〜1.0mmであることが好ましい。ただし、ここで言う間隔とは、隣り合う溝の淵の間の距離のことを指し、例えば、直線と波線等、異なる種類の溝を組み合わせて用いる場合には、これら隣り合う異なる溝の淵の間の最短距離のことを指す。
【0024】
剥離層としては、離形処理されたものであれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等から適宜選択しシリコーン化合物の離形層を形成したものを好適に使用する事ができる。
【0025】
発泡樹脂層としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック類や、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマー)等のゴム類、オレフィン系、ウレタン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマー類、及び、これらのブレンド物等を、化学発泡、機械発泡等の手段を用いて発泡し、シート状にしたものが挙げられる。なお、発泡樹脂層の凝集力を向上させるために、化学架橋、電子線架橋などの架橋を行うことが好ましい。これらの中でも、柔軟性と強度のバランス及びコスト面から、ポリエチレンフォームが好ましい。
【0026】
また、発泡樹脂層に難燃性を付与することにより、粘着シートとしての難燃性がより向上する。発泡樹脂層に難燃性を付与する方法としては、塩化ビニル等の難燃性を有する材料を発泡プラスチックまたは発泡ゴム層として用いる方法や、発泡樹脂層中に難燃剤や難燃助剤を添加する方法等が挙げられる。難燃剤や難燃助剤については、公知のものが使用できる。
【0027】
発泡樹脂層の厚さは、0.4〜4.0mmであることが好ましく、1.2〜3.0mmであることがより好ましい。発泡樹脂層の厚さを0.4〜4.0mmとすることにより、起毛した不織布や表面が粗い紙系等の材料を有する自動車用成型部品にワイヤーハーネスを良好に接着することができ、かつ、ワイヤーハーネスに追従させて粘着シートを貼り込み易くすることができる。また、発泡樹脂層の厚さがこの範囲であると、例えば、軟質金属箔と、発泡樹脂層の2層構造基材に粘着層を設け、粘着層上に離型紙を貼り合わせた粘着シートを製造した場合でも、軟質金属箔や離型紙が折れ難く、ロール化適性に優れている。
【0028】
発泡樹脂層の25%圧縮強度は、10〜150MPaであることが好ましく、20〜80MPaであることがより好ましい。発泡樹脂層の25%圧縮強度を10〜150MPaとすることにより、起毛した不織布や表面が粗い紙系等の材料を有する自動車用成型部品にワイヤーハーネスを良好に接着することができ、かつ、ワイヤーハーネスに追従させて粘着シートを貼り込み易くすることができる。また、粘着シートを誤った位置に貼付してしまった際に粘着シートを剥がして再度貼付する貼り直しを行う場合があるが、発泡樹脂層の25%圧縮強度が上記の範囲であると、発泡樹脂層が層間破壊又はちぎれたりすることがなく、また貼り直しも容易である。更に、発泡樹脂層が硬くなることもなく、起毛した不織布や表面が粗い紙系等の材料を有する自動車用成型部品への接着性を損なうことがない。
【0029】
この基材の上に設けられた粘着剤層には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の各種粘着剤が使用できるが、起毛した不織布や表面が粗い紙系等の材料を有する自動車用成型部品への十分な初期接着強度を付与するためには、合成ゴム系粘着剤がより好適である。
その中でも、粘着剤層が、スチレン−イソプレンブロックコポリマーと、粘着付与樹脂とを含有し、スチレン−イソプレンブロックコポリマーのシブロック量が、30〜80質量%であって、粘着付与樹脂が、C系石油樹脂、C系/C系石油樹脂、及び脂環族系石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する粘着剤層であることが好ましい。
【0030】
粘着剤層に含有するスチレン−イソプレンブロックコポリマーは、そのジブロック量を30〜80質量%とすることにより、自動車用成型部品に対する接着性に優れ、かつ、保持性にも優れた粘着シートが得られる。また、スチレン−イソプレンブロックコポリマーの分子量は、1万〜80万の範囲であることが好ましく、3万〜50万の範囲であることがより好ましい。分子量の範囲を1万〜80万の範囲とすることにより、粘着剤の凝集力を向上することができ、かつ、粘着シートを自動車用成型部品に良好に接着することができる。
【0031】
また、粘着付与樹脂は、C系石油樹脂、C系/C系石油樹脂、及び脂環族系石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することが好ましい。これらの粘着付与樹脂は、スチレン−イソプレンブロックコポリマーのイソプレン層に相溶し、接着性を向上させるので、粘着シートを自動車用成型部品に良好に接着することができる。C系石油樹脂は脂肪族系石油樹脂であるが、このようなものとして、例えば、エスコレッツ1202、1304、1401(トーネックス製)、ウイングタック95(グッドイヤー製)、クイントンK100、R100、F100(日本ゼオン製)、ピコタック95、ピコペール100(理化ハーキュレス製)等が挙げられる。また、C系/C系石油樹脂は、C系と芳香族系であるC系石油樹脂を共重合して得られるが、このようなものとして、例えば、エスコレッツ2101(トーネックス製)、クイントンS195(日本ゼオン製)、ハーコタック1149(理化ハーキュレス製)等が挙げられる。また、脂環族系石油樹脂は、C(芳香族)系石油樹脂に水素添加して得られるが、このようなものとして、例えば、エスコレッツ5300(トーネックス製)、アルコンP−100(荒川化学製)、リガライトR101(理化ハーキュレス製)等が挙げられる。
【0032】
系石油樹脂、C系/C系石油樹脂、及び脂環族系石油樹脂以外の粘着付与樹脂として、公知の粘着付与樹脂を使用することができる。このような公知の粘着付与樹脂としては、例えば、C系石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、スチレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。その中でも、重合ロジンエステル樹脂又はテルペン系樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
粘着付与樹脂の含有量は、スチレン−イソプレンブロックコポリマー100質量部に対して、60〜200質量部であることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量を60〜200質量部とすることにより、自動車用成型部品への接着性と耐湿劣化後の接着性を向上することができ、かつ、十分な耐熱保持力を得ることができる。
【0034】
また、粘着付与樹脂として、室温で液状の粘着付与樹脂を使用することもできる。このような室温で液状の粘着付与樹脂は、公知の上記粘着付与樹脂の中から選択することが好ましい。この液状の粘着付与樹脂の含有量は、粘着付与樹脂の総量に対して、10〜30質量%であることが好ましい。液状の粘着付与樹脂の含有量を10〜30質量%とすることにより、自動車用成型部品への濡れ性を向上させ良好に接着することができ、かつ、十分な耐熱保持力を得ることができる。
【0035】
また、粘着付与樹脂として、軟化剤を含有するものが好ましい。このような軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。この軟化剤の含有量は、粘着付与樹脂の総量に対して、10〜30質量%であることが好ましい。軟化剤の含有量を10〜30質量%とすることにより、自動車用成型部品への濡れ性を向上させ良好に接着することができ、かつ、十分な耐熱保持力を得ることができる。
【0036】
本発明の粘着シートにおいては、他のポリマー成分や、架橋剤を使用することができる。また、粘着剤に一般に用いられる各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、増粘剤等を、接着性を低下しない範囲で使用することができる。
【0037】
このようにして調製した粘着剤を、通常、トルエン、ヘキサン等の有機溶剤を用いて希釈し、溶液状で使用する。この粘着剤を有機溶剤に溶解させて調製した粘着剤層用塗工溶液を、基材に塗布し、粘着剤層を形成する。
【0038】
この粘着剤層を形成する方法としては、粘着剤層用塗工溶液をロールコーターやダイコーター等で基材に直接塗布乾燥して剥離処理面と貼り合わせる方法でもよいし、剥離紙の離型処理面上に塗布乾燥して一旦粘着剤層を形成した後、これを基材面と貼り合わせて基材側に転写する方法でもよい。
【0039】
粘着剤層は、2層構造基材の発泡樹脂層の上に設ける。発泡樹脂層の上に粘着剤層を設けることにより、起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品にワイヤーハーネスを良好に接着することができる。軟質金属箔層の上に粘着剤層を設けた場合は、軟質金属箔層が硬いため起毛した不織布や面の粗い紙系等の材料を表面に有する自動車用成型部品への接着が点接着になり、粘着シートが剥がれる懸念がある。
【0040】
本発明における粘着剤層の厚さは、40〜200μmであることが好ましく、生産性の点から50〜100μmであることがより好ましい。粘着剤層の厚さを40〜200μmとすることにより、接着性を高くすることができ、かつ、短時間で塗工処理することができる。
【0041】
粘着剤層の厚さが40〜100μmである場合には、単層構造の粘着剤層であってもよいが、厚さが100μmを越える場合には、不織布等の繊維状の支持体を粘着剤層の中間部に備えた粘着剤層とすることが好ましい。粘着剤層の厚さが100μmを超える単層の粘着剤層を基材上に設けるとすると、例えば、粘着剤層用塗工溶液を仮支持体上に塗工して、有機溶剤を乾燥させ、乾燥後の粘着剤層を仮支持体から基材上に転写する方法があるが、膜厚が厚いため粘着剤層中に有機溶剤が残留しやすく、気泡等も発生しやすいという問題があるからである。
不織布等の繊維状の支持体を粘着剤層の中間部に設けて、厚さが100μmを越える粘着剤層を製造する方法としては、例えば、粘着剤を不織布の内部まで含浸させるために、粘着剤層用塗工溶液を不織布に直接塗布し、有機溶剤を乾燥させ、内部まで粘着剤が含浸した不織布の層を含め約100μmの膜厚の粘着剤層を形成する。その後、別の仮支持体上に形成した約100μmの粘着剤層を、該仮支持体上から該不織布の片側に設けた粘着剤層と反対側の面に転写し、合計200μmの膜厚の粘着剤層を形成する。さらに、この200μmの膜厚の粘着剤層を基材上に転写することにより、粘着シートを作製する方法がある。
【0042】
あるいは、剥離紙上に塗工した粘着剤層用塗工溶液を乾燥後、不織布に貼合する工程を2回行い、不織布の両面に粘着剤層を設け、その後、片側の剥離紙を基材と貼合する方法を用いてもよい。
【0043】
不織布等の繊維状の支持体を粘着剤層の中間部に備えた厚さが200μmの粘着剤層の場合、上記単層の厚い粘着剤層(200μm)を乾燥する場合に比較して、2層構造の薄い膜厚の粘着剤層(100μm)を乾燥することになるので、粘着剤層中に有機溶剤が残留することがなく、また、気泡等の発生が少ないため、均一な粘着剤層を形成することができる。
このような不織布等の繊維状の支持体としては、綿、麻、レーヨン等を用いることができる。この支持体の厚さは20〜80μmであることが好ましい。なお、不織布等の繊維状の支持体は弾性が小さいため、自動車用成型部品への追従性や密着性、及び、粘着シートの耐反発性を損なうことはない。
【0044】
本発明においては剥離紙として、公知公用のものを使用することができる。例えば、上質紙、クラフト紙及びグラシン紙のいずれかの上にポリエチレンをラミネートし、その上に離型処理を施したものや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂フィルム上に離型処理を施したもの等が挙げられる。これらの中でも、生産性、貼り作業性の点から、上質紙、クラフト紙及びグラシン紙のいずれかのにポリエチレンをラミネートし、その上に離型処理を施したものが好ましい。
【0045】
なお、本発明の粘着シートの形態は特に限定されるものではなく、枚葉、ロール状の製品形態であっても良く、またテープ状であっても良い。
【0046】
[自動車用成型部品]
本発明の自動車用成型部品は、上記自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを固定してなるものである。このような自動車用成型部品としては、成型天井(ルーフライニング)、バンパー、ドアトリム、インストルメントパネル、テールゲートライニングといった給電が必要な機構が設置されている成型部品が挙げられる。
【0047】
図2に、成型天井2の裏側面に、本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート1を用いて、ワイヤーハーネス3を固定した概略図を示す。(a)は成型天井2の全体概略図、(b)は成型天井2の裏側に、粘着シート1を用いて、ワイヤーハーネス3を固定した拡大概略図、(c)は粘着シート1の拡大概略図である。なお、符号4は、粘着シート1の軟質金属箔の表面に設けられた直線状の溝である。
【0048】
ワイヤーハーネス3を成型天井2の裏側面の形状に沿って這わせて、ワイヤーハーネス3の上から、本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート1を適当な間隔で貼付して固着する。粘着シート1をワイヤーハーネス3の上から空気があまり残らないようにワイヤーハーネス3の形状に沿って貼付することが好ましい。この成型天井2の裏面側は、一般的に、表面が起毛した不織布やオレフィン目止め樹脂、表面が粗い紙系等の材料からなる、接着しにくい材料である。本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート1は、基材に上記のような特定の材料を用いているため、このような被着体にも良好に接着することができる。また、ワイヤーハーネス3は複数本の電線が束ねられた状態で固定することがあるため、この場合、成型天井2の裏側面から剥がれて直線状になろうとする反発力が粘着シート1により強く働く。また、成型天井2へワイヤーハーネス3を粘着シート1を用いて固定した後に、モジュールとして組み立てたものを輸送する場合、輸送時の振動、衝撃などが粘着シート1に加わる。さらに、このモジュールを立てかけて輸送する場合、ワイヤーハーネス端部が垂れ下がり、粘着シート1にワイヤーハーネス3の自重が負荷として加わる。本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート1は、基材に上記のような特定の材料を用いていることにより、この反発力、輸送時の振動、衝撃、輸送時のワイヤーハーネス3の自重等に耐えて、成型天井2の凹凸形状に追従してワイヤーハーネス3を安定に保持して固着することができる。
【0049】
また、粘着シート1を用いて、ワイヤーハーネス3を、該粘着シート1に設けられた溝と平行になるように成型天井2に固定することにより、ワイヤーハーネス3に対する粘着シート1の追従性をより高めることができるため、ワイヤーハーネス3の成型天井2への固定をより良好に行うことができる。
【0050】
従って、本発明の自動車成型用部品は、本発明の粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを固定したことにより、組み立て工程前にワイヤーハーネスが剥がれてしまうことはない。
【0051】
また、成型天井2及びワイヤーハーネス3は、一般的に、搭乗者の安全対策として、火災防止または着火時の延焼防止を目的に難燃材料を用いて作製されている。そこで、本発明のワイヤーハーネス固定用粘着シート1を用いてワイヤーハーネス3を固定することにより、本発明の自動車成型用部品は全て難燃性となり、火災を予防することができ、または着火した場合でも延焼を防止することができる。
【0052】
[自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの製造方法]
本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートは、その製造工程において、粘着剤層用塗工溶液を塗布し基材に貼り合わせる前に、軟質金属箔の表面に、粘着シートの進行方向に対して垂直な方向に溝を設けて製造する。
軟質金属箔の表面に溝を設ける方法としては、例えば、この溝の形状に合う凸部をロール表面に設け、軟質金属箔の層及び発泡樹脂層からなる2層構造の基材を、軟質金属箔の表面が凸部を設けたロール表面によって加圧されるように、このロールに送り込んでラミネートすれば良い。発泡樹脂層が適度な衝撃吸収性を有しているため、この方法により簡便に、軟質金属箔の表面に溝を設けることができる。また、ロール表面の凸部は、その長手方向が前記基材の進行方向に対して垂直となるように設けることが好ましい。
さらに、前記方法により軟質金属箔の表面に溝を設ける工程は、粘着剤層用塗工溶液を塗布し基材に貼り合わせる前に行う必要がある。
【0053】
このように製造することで、軟質金属箔と発泡樹脂層とが積層された二層構造の基材層に粘着剤層用塗工溶液を塗布した粘着シートを、ロールを通して巻き取っても、通紙及び巻き取り時に軟質金属箔に生じる応力を、この溝により吸収できるため、軟質金属箔の割れを防止でき、製造トラブルを低減できると同時に、安定した品質で粘着シートを製造することができる。
【0054】
[自動車用ワイヤーハーネスの固定方法]
自動車用ワイヤーハーネスは、本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、該粘着シートに設けられた溝と平行になるように自動車用成型部品に固定する。
このように固定することで、粘着シートのワイヤーハーネスに対する追従性をより高めることができるため、ワイヤーハーネスの自動車用成型部品への固定をより良好に行うことができる。
【実施例】
【0055】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。また、以下に示す軟質アルミニウム箔の表面に設けられた溝のパターン(a)〜(h)は、図1に示す溝のパターン(a)〜(h)と同一である。
【0056】
[実施例1]
(基材の作製)
厚さ12μmの軟質アルミニウム箔と厚さ2.0mmの難燃タイプポリエチレンフォーム(積水化学工業製 ソフトロンFR3002)を接着剤によって貼り合わせた後、表面に溝の形状に合う凸部を設けたロールを用いて、貼り合わせた基材をラミネートすることにより、軟質アルミニウム箔の表面にパターン(a)(直線状)の溝が設けられた基材を得た。
【0057】
(粘着剤層用塗工溶液の調製)
スチレン−イソプレンブロックコポリマー(重量平均分子量17万、スチレン量16質量%、ジブロック量52質量%)100質量部、C系石油樹脂(数平均分子量110、軟化点96℃)40質量部、重合ロジンエステル樹脂(数平均分子量1200、軟化点125℃)40質量部、低分子量ポリブテン20質量部、及びヒンダードフェノール2質量部を配合し、トルエンに溶解させて粘着剤層用塗工溶液(粘着剤Aの溶液)を調製した。
【0058】
(固定用粘着シートの作製)
前記粘着剤層用塗工溶液を、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが60μmとなるように離型紙上に塗布し、80℃にて3分間乾燥した。これを基材の発泡樹脂層面に貼り合わせ、0.2MPaに加圧してラミネートを行い、粘着シートを作製した。
【0059】
[実施例2]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(b)(破線状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0060】
[実施例3]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(c)(一点鎖線状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0061】
[実施例4]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(d)(波線状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0062】
[実施例5]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(e)(波線状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0063】
[実施例6]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(f)(千鳥状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0064】
[実施例7]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(g)(複合線)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0065】
[実施例8]
基材の軟質アルミニウム箔にパターン(h)(格子状)の溝を設けたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0066】
[比較例1]
基材の軟質アルミニウム箔に溝を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0067】
上記で作製した粘着シートを用いて、以下の評価方法にて試験を行った。結果を表1に示す。
(評価試験方法)
(1)粘着シートのロール化適性
上記で作製した粘着シートを外径約4インチの紙管に巻き取った際の巻き取り状態を目視にて評価した。すなわち、巻き取り品の軟質金属箔層や剥離紙に破れや折れ等の不具合がなく、基材表面と剥離紙裏面との間に隙間がなく巻き取られている場合は「○」と表示した。また、多少軟質金属箔や剥離紙に折れがあるものの、基材表面と剥離紙裏面にほとんど隙間がなく巻き取られている場合は「△」と表示し、巻き取り品の軟質金属箔層や剥離紙に破れや折れ等の不具合が発生、又は、基材表面と剥離紙裏面との間に大きな隙間ができ、良好に巻き取られていない場合は「×」と表示した
【0068】
(2)耐反発性−1
上記で作製した粘着シートを100mm×50mmの大きさに切断した。23℃50%相対湿度(Relative humidity、以下、RHと略記)雰囲気下で、長さ70mm、直径8mmφの電線結束用コルゲートチューブ(デンカエレクトロン製)を、粘着シートの軟質アルミニウム箔に設けた溝と平行になるように、粘着シートの中央となる位置に配置し、図3に示すように、粘着シートでコルゲートチューブをルーフライニングに貼付した。図3は、ルーフライニング2上に、コルゲートチューブ5を粘着シート1で固定した概略図である。ルーフライニング2には、ルーフライニングA(TSテック社製、固定用粘着シート貼付面:ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布)と、ルーフライニングB(エムテック社製、粘着シート貼付面:紙材)とを使用した。
粘着シート1がルーフライニング2に接触している面を2kgローラーで1往復加圧した。加圧直後、粘着シート1を下向きになるように設置し、図4に示すように、コルゲートチューブ5の片端に200gの荷重6をぶらさげて、72時間後の粘着シートの剥がれ状態(耐反発性−1)を評価した。評価基準は以下の通りである。「◎」:剥がれ無し、「○」:剥がれ1/2以下、「△」:剥がれ1/2を超える、「×」:剥がれ。
図4は、本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの耐反発性−1試験時の概略図である。
【0069】
(3)耐反発性−2
上記で作製した粘着シートを100mm×50mmの大きさに切断した。23℃50%RH雰囲気下で、長さ70mm、直径8mmφの電線結束用コルゲートチューブ(デンカエレクトロン製)を、下記の2つの貼付方法にて粘着シートの中央となる位置に配置し、図3に示すように、粘着シートでコルゲートチューブをルーフライニングに貼付した。すなわち、コルゲートチューブを、粘着シートの軟質アルミニウム箔に設けた溝と平行になるように貼付した場合を、貼付法1)とし、コルゲートチューブを、溝と垂直になるように貼付した場合を、貼付法2)とし、この2つの貼付方法にて評価を行った。図3は、ルーフライニング2上に、コルゲートチューブ5を粘着シート1で固定した概略図である。ルーフライニング2には、ルーフライニングA(TSテック社製、固定用粘着シート貼付面:ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布)と、ルーフライニングB(エムテック社製、粘着シート貼付面:紙材)とを使用した。
粘着シート1がルーフライニング2に接触している面を2kgローラーで1往復加圧した。加圧直後、粘着シート1を横向きになるように設置し、図5に示すように、コルゲートチューブ5の上端に200gの荷重6をぶらさげて、72時間後の粘着シートの剥がれ状態(耐反発性−2)を評価した。評価基準は以下の通りである。「◎」:剥がれ無し、「○」:剥がれ1/2以下、「△」:剥がれ1/2を超える、「×」:剥がれ。
図5は、本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの耐反発性−2試験時の概略図である。
【0070】
(4)接着強度
上記で作製した粘着シートを幅25mm×長さ100mmに切断し、23℃50%RH雰囲気下でステンレス板(360番耐水研磨紙でヘアライン研磨処理)、及びポリプロピレン板(日本テストパネル社製)に2kgローラーで1往復加圧貼付し、1時間経過後に引っ張り試験機(オリエンテック製 RTA100)にて引張り速度300mm/分で、180°方向に剥がし、接着強度(N/25mm)を測定した。
【0071】
(5)保持力
上記で作製した粘着シートを幅25mm×長さ100mmに切断し、23℃50%RH雰囲気下でステンレス板(360番耐水研磨紙でヘアライン研磨処理)に、貼付面積が25mm×25mmとなるように2kgローラーで1往復加圧で貼付した。1時間経過後、40℃雰囲気下で0.5kgの荷重を掛け、落下するまでに要した時間を測定した。24時間以上落下しなかった場合は、表1において「>24」と表示した。
【0072】
(6)難燃性(FMVSS No.302に準じた試験)
上記で作製した粘着シートを幅70mm×長さ200mmに切断し、燃焼試験用治具に粘着剤層面を下向きにして水平に取り付けた。ガスバーナーの炎の高さを40mmに設定し、粘着シートの先端に15秒間着火した際の難燃性を評価した。なお、粘着シート端部から38mmの位置に標線を引き、標線に達する前に消火した場合、標線を通過後60秒以内に消火した場合、標線を通過後、端部から50mm以内の位置で消火した場合には、いずれも自己消化性と表示した。また、炎を15秒間当てても着火しないものを難燃性と表示し、それ以外については燃焼と表示した。
【0073】
【表1】

【0074】
以上の結果によれば、比較例1の粘着シートは、実施例1〜8の粘着シートと比較して、粘着シートをロール化する際にアルミ箔層に破れが発生し、難燃性が不十分であるほか、耐反発性に劣り、自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートに求められる必要性能を、必ずしもすべて満たすものではないことがわかった。
一方、本発明の実施例1〜8の粘着シートは、ロール化適性、耐反発性、接着強度、保持力及び難燃性のすべてにおいて、自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートに求められる必要性能を満たすものであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、自動車組立工程における所要工数の低減に有力な手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの軟質金属箔表面に設けられた溝の例を示す図である。
【図2】本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、成型天井の裏面側にワイヤーハーネスを固定した概略図であり、(a)は成型天井の全体概略図、(b)は成型天井の拡大概略図、(c)は自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート表面の拡大概略図である。
【図3】本発明の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、ルーフライニング上にコルゲートチューブを固定した概略図である。
【図4】本発明の実施例における自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの耐反発性の試験方法の概略図である。
【図5】本発明の実施例における自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの耐反発性の試験方法の概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート、2・・・ルーフライニング、3・・・ワイヤーハーネス、4・・・溝、5・・・コルゲートチューブ、6・・・荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ワイヤーハーネスを自動車用成型部品に固定するために用いる粘着シートであって、
該粘着シートが、軟質金属箔と、発泡樹脂層と、粘着剤層とをこの順に積層した構造を備え、前記軟質金属箔の表面に溝が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項2】
前記溝が、直線状、破線状、一点鎖線状、二点鎖線状及び波線状からなる群から選択される少なくとも1種以上で形成されたものである請求項1に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層上に剥離層が設けられ、前記溝が設けられた前記軟質金属箔の表面積が、該剥離層の表面積に対し、100.5〜150.0%である請求項1又は2に記載の自動車ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項4】
前記軟質金属箔の厚みが2〜30μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項5】
前記発泡樹脂層の厚みが0.4〜4.0mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項6】
前記軟質金属箔が、軟質アルミニウム箔である請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項7】
前記発泡樹脂層の25%圧縮強度が10〜150MPaである請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項8】
前記発泡樹脂層がポリエチレンフォームである請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項9】
発泡樹脂層が難燃剤を含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層が、スチレン−イソプレンブロックコポリマーと粘着付与樹脂とを含有し、
前記スチレン−イソプレンブロックコポリマーのシブロック量が30〜80質量%であって、
前記粘着付与樹脂が、C系石油樹脂、C系/C系石油樹脂、及び脂環族系石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有し、
前記粘着付与樹脂の含有量が、前記スチレン−イソプレンブロックコポリマー100質量部に対して、60〜200質量部である請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを固定したことを特徴とする自動車用成型部品。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの製造方法であって、
その製造工程において、ロールによる粘着シートの巻き取りを行う前に、前記軟質金属箔の表面に、前記粘着シートの進行方向に対して垂直な方向に溝を設けることを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車用ワイヤーハーネス固定用粘着シートを用いて、自動車用ワイヤーハーネスを、該粘着シートに設けられた溝と平行になるように自動車用成型部品に固定することを特徴とする自動車用ワイヤーハーネスの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−97283(P2007−97283A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281622(P2005−281622)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】