説明

自動車用交流発電機

【課題】安定したセット荷重が得られるだけでなく、取り扱いに注意を要しないワッシャを有する自動車用交流発電機を提供すること。
【解決手段】本発明の自動車用交流発電機10は、ベアリングを保持したハウジング内に固定子2を設置するとともに、固定子2の内側に、ベアリングに回転自在に支持されたシャフト30を有する回転子3を配してなる自動車用交流発電機10において、フロントベアリング71またはリアベアリング81と同心の円環形状部11と、円環形状部11に周方向に沿って形成された互いに独立した少なくとも3つのバネ部12と、を有し、バネ部12と円環形状部11の少なくとも一方がベアリング81の少なくとも一方の外輪84に当接し、ベアリング外輪84とハウジング83の間に分圧を付与するワッシャ1を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラックなどの自動車エンジンに搭載される自動車用交流発電機(オルタネータ)に関し、とくに自動車用交流発電機の回転軸の軸受け装置の耐振動性の向上およびベアリングのクリープの抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンに装着され該エンジンに駆動される交流発電機は、一対の碗状を呈するフロント(ドライブエンド)フレームとリア(リアエンド)フレームとを、各々の開口部を向かい合せて、固定子を挟持して接合した構造のハウジングを有する。フロントフレームおよびリアフレームのそれぞれの中央部には、内部に向かって軸方向に互いに突出する円筒状のフロントベアリングボックス(以下、フロントボックス)およびリアベアリングボックス(以下、リアボックス)が設けられている。このフロントボックスおよびリアボックスのそれぞれには、フロントベアリングおよびリアベアリングが取り付けられている。このフロントベアリングおよびリアベアリングには、固定子の内側に配された回転子の回転軸(シャフト)が回転自在に支持されている。この回転軸は、フロントフレームから外に突き出している先端部に取り付けたプーリを介してエンジンにより駆動される。
【0003】
フロントベアリングの外輪はフロントボックスに固定されているが、リアベアリングの外輪は軸方向の変位が可能な状態でリアボックスに保持されている。リアボックスは、筒状のリアベアリングホルダを備えている。リアベアリングホルダは、リアフレームのリア側の側壁部に固定されており、リアフレームの側壁部とともに、ベアリング収容部を形成している。この結果、ベアリング収容部内には、リアベアリングが軸方向にわずかに移動可能に保持される。さらに、ベアリング収容部内には、リアベアリングの外輪を軸方向の一方へ向けて付勢する手段が設けられている。この付勢(予圧付与)手段により、リアベアリングの外輪には軸方向に向けて所定の予圧が付与されている。
【0004】
この予圧付与手段として、ワッシャを用いることが知られている。ワッシャは、リアベアリングとリアフレームの側壁部の内側面(側壁面)との間の隙間に配置されている。この内側面(側壁面)は、リアボックスの側壁の内側面でもある。ワッシャは、リアベアリングの外輪と内側面(側壁面)とに接触するように配置され、挟持されている。
【0005】
このワッシャとしては、板状のバネ材を円環状に打ち抜いた後、周方向に沿って波形をなすように成形することで得られる、開口部がない1重波ワッシャ,細板状(短冊状)のバネ材を一周だけ環状に曲げた後に、周方向に沿って波形をなすように成形することで得られる1重波ワッシャがある。
【0006】
そして、ベアリングの対クリープ性を向上させるとともに与圧を許容範囲内に納めることを容易に行えるワッシャとして、特許文献1に、一体型の多重波ワッシャが開示されている。この多重波ワッシャも、細板状のバネ材を環状に曲成して形成される。
【0007】
しかしながら、一重波ワッシャ,多重波ワッシャにおいては、1本のバネ材を環状に成形して作製しているが、円環状に成形されたバネ材の両端部の間には、隙間が形成される。この隙間は、セット荷重を加えた時に、端部と環状に曲成された本体部とが接触しないように2〜3mmの隙間が必要となっている。
【0008】
そして、この隙間は、成形後の熱処理や表面処理を行っているときに、複数のワッシャ同士の絡み合いを引き起こしやすくなっていた。特に、多重ワッシャが絡み合うと、ほぐすための工程が複雑になり、場合によっては機械ではなく人手が必要となり、工数が非常にかかるおそれがあった。
【0009】
また、開口のない一重波ワッシャは、開口がないが故に、バネ特性の変化が急になり、安定したセット荷重(フラット特性)が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−218235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、安定したセット荷重が得られるだけでなく、取り扱いに注意を要しないワッシャを有する自動車用交流発電機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者等は、ワッシャの構造について検討を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の本発明の自動車用交流発電機は、フロントベアリングおよびリアベアリングを保持したハウジング内に固定子を設置するとともに、固定子の内側に、フロントベアリングおよびリアベアリングに回転自在に支持されたシャフトを有する回転子を配してなる自動車用交流発電機において、フロントベアリングまたはリアベアリングと同心の円環形状部と、円環形状部に周方向に沿って形成された互いに独立した少なくとも3つのバネ部と、を有し、バネ部と円環形状部の少なくとも一方がフロントベアリングとリアベアリングの少なくとも一方の外輪に当接し、ベアリング外輪とハウジングの間に分圧を付与するワッシャを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の交流発電機は、円環形状部と複数のバネ部とを有するワッシャで、ベアリング外輪とハウジングの間に分圧を付与する。
【0015】
本発明では、ワッシャが、ベアリングと同心の円環形状部を有している。円環形状部が円環形状(開いていない円環形状)をなすことで、ワッシャ同士が複雑に絡み合うことを抑えることができる。仮にワッシャが絡みあっても、簡単にほぐすことが可能となる。
【0016】
また、本発明では、ワッシャが、周方向に沿って形成された複数のバネ部を、互いに独立した状態で有している。ここで、バネ部の互いに独立したとは、それぞれのバネ部の特性を任意に設定できる状態(隣接するバネ部の特性に依存しない状態)を示す。複数のバネ部を有することで、それぞれのバネ部のバネ定数を任意に設定できる。つまり、それぞれのバネ部のバネ定数を低く設定できるとともに、広い範囲でフラットなバネ荷重特性を得られる効果を発揮する。
【0017】
請求項2に記載の本発明の自動車用交流発電機は、ワッシャのバネ部は、円環形状部から径方向に延在するとともに軸方向に曲成される曲成部と、曲成部の最外径部に設けられベアリングの外輪,ハウジングと当接する平面部と、を有し、周方向で隣接するバネ部は、軸方向で異なる方向に曲成部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の本発明の自動車用交流発電機においてワッシャは、バネ部が、円環形状部の両面側に突出するように曲成している。この構成によると、発電機に組付ける際に方向性が無くなる。すなわち、ワッシャの組付けの工数を低減できる。なお、バネ部は、偶数個であることが好ましい。
【0019】
また、ベアリング外輪やハウジングと当接する平面部が多く存在しており、バネ部のバネ定数が低くても高い耐クリープ性を得られる効果を発揮する。
【0020】
請求項3に記載の本発明の自動車用交流発電機は、ワッシャのバネ部は、円環形状部から径方向に延在するとともに軸方向に曲成される曲成部と、曲成部の最外径部に設けられベアリングの外輪,ハウジングと当接する平面部と、を有し、バネ部は、軸方向で同じ方向に曲成部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の本発明の自動車用交流発電機によると、バネ部が円環形状部から同一方向に向かって曲成されている。この構成では、円環形状部の全体でベアリングの外輪またはハウジングと当接することとなる。すなわち、円環形状部と相手材との当接面積が大きくなることで、相手材の摩耗を抑えることができる効果を発揮する。
【0022】
なお、円環形状部が相手材(特にハウジング)と当接するときに、円環形状部の相手材との当接部に、凹凸を形成してもよい。この場合、当接面積を調節することで、ワッシャの付勢力を調節することができる。
【0023】
請求項4に記載の本発明の自動車用交流発電機は、ワッシャのバネ部は、円環形状部から径方向に延在する径方向延在部と、径方向延在部の最外径部に設けられ周方向に伸びるとともにベアリングの外輪、ハウジングと当接するように軸方向に曲成される周方向曲成部と、を有し、周方向で隣接する周方向曲成部は、軸方向で異なる方向に周方向曲成部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の本発明の自動車用交流発電機のバネ部は、周方向に沿ってのびる周方向曲成部を有している。この構成によると、バネ部において相手材を付勢する曲成部の長さを長くする(相手材との接触面積を大きくする)ことができる。これにより、バネ部が円環形状部と接続する接続部に係る応力を低減できる効果を発揮する。
【0025】
請求項5に記載の本発明の自動車用交流発電機は、ワッシャのバネ部は、円環形状部から径方向に延在する径方向延在部と、径方向延在部の最外径部に設けられ周方向に伸びるとともにベアリングの外輪,ハウジングと当接するように軸方向に曲成される周方向曲成部と、を有し、周方向で隣接する周方向曲成部は、軸方向で同じ方向に周方向曲成部が折り曲げられていることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の本発明の自動車用交流発電機によると、バネ部の曲成部が円環形状部から同一方向に向かって曲成されている。この構成では、円環形状部の全体でベアリングの外輪またはハウジングと当接することとなる。すなわち、円環形状部と相手材との当接面積が大きくなることで、相手材の摩耗を抑えることができる効果を発揮する。
【0027】
なお、円環形状部が相手材(特にハウジング)と当接するときに、円環形状部の相手材との当接部に、凹凸を形成してもよい。この場合、当接面積を調節することで、ワッシャの付勢力を調節することができる。
【0028】
請求項6に記載の本発明の自動車用交流発電機は、円環形状部がハウジングと当接し、周方向曲成部がベアリングの外輪と当接することを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の本発明の自動車用交流発電機のワッシャは、円環形状部がハウジングと当接し、周方向曲成部がベアリングの外輪と当接することで、円環形状部の全体でハウジングと当接することとなる。すなわち、円環形状部とハウジングとの当接面積が大きくなることで、ハウジングの摩耗を抑えることができる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の自動車用交流発電機の構成を示した図である。
【図2】実施例1の自動車用交流発電機の構成を示した部分拡大図である。
【図3】実施例1の自動車用交流発電機のワッシャを示した図である。
【図4】実施例2の自動車用交流発電機のワッシャを示した図である。
【図5】実施例3の自動車用交流発電機のワッシャを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の自動車用交流発電機を、実施例を用いて具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
本実施例の自動車用の交流発電機(オルタネータ)10を図1に示した。本実施例の交流発電機10は、自動車エンジンによりベルトを介して駆動され、車載の蓄電池を充電するとともに、自動車に搭載された各種の電気機器に給電する。
【0033】
交流発電機10は、固定子2、回転子3、およびアルミニウム合金製でいずれも碗状を呈する一対のドライブエンドフレーム(以下、フロントフレーム)4とリアエンドフレーム(以下、リアフレーム)5とを備えている。リアフレーム5の後側の側壁部の外側には、三相交流を直流に変換する整流装置61、ブラシ装置62および電圧調整機63が設置され、これらはリアフレーム5に締結されたリアエンドカバー64で覆われている。
【0034】
固定子2は、固定子鉄心22と、三相固定子巻線23と、固定子鉄心22と固定子巻線23との間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。固定子鉄心22は、フロントフレーム4の周壁部の開口端部と、リアフレーム5の周壁部の開口端部との間に挟持されて固定されている。固定子2の内側には、所定の隙間を介して回転子3が配置されている。フロントフレーム4およびリアフレーム5は、側壁の中心にシャフト穴40およびシャフト穴50を有し、各々の開口部が、固定子鉄心22を挟み込むようにしてボルトによって接合されている。フロントフレーム4およびリアフレーム5には、冷却風を吐出または吸入するための多数の通風窓が設けられている。
【0035】
フロントフレーム4の側壁部の中央部には、内部に向かって軸方向に突出する円筒状のフロントベアリングボックス(フロントボックス)7が形成されている。リアフレーム5の側面の中央部には、内部に向かって軸方向に突出する円筒状のリアベアリングボックス(リアボックス)8が形成されている。フロントボックス7およびリアボックス8には、それぞれフロントベアリング71およびリアベアリング81が取り付けられている。フロントボックス7は、フロントフレーム4の中心に設けられ内部が前記シャフト穴40となっている筒部42と、筒部42の後端(内側端)面に締結した係止リング43によって形成されている。
【0036】
リアボックス8は、後端に設けた鍔部(フランジ)82がリアフレーム5に固定された保持筒(リアベアリングホルダ)80と、前記シャフト穴50の周囲のリアフレーム5の側壁部の内側を座繰り成形して得られたリアフレーム5の側壁面83とによって形成されている。本実施例では、保持筒80は、筒体と、この筒体の後端に設けられた鍔部82とからなる。このため、リアボックス8の側壁は、リアフレーム5のアルミニウム合金製の側壁部により形成されている。
【0037】
回転子3は、前部および後部がフロントベアリング71およびリアベアリング81に支持された回転軸30を有する。フロントフレーム4から先端側に突出した回転軸30の先端部にはプーリ20が設置され、プーリ20は、エンジンにベルト(いずれも図示せず)で連結されている。
【0038】
回転子3は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した磁界巻線31を、それぞれ6個の爪部を有するポールコア32によって、回転軸30を通して両側から挟み込んだ構造を有している。ポールコア32の両端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すための冷却ファン33、33が溶接などによって取り付けられている。また、回転軸30のリア側端部近傍には、磁界巻線31の両端に電気的に接続された2つのスリップリング34、35が形成されており、これらのスリップリング34、35を介してブラシ装置62から磁界巻線31に対して給電が行われる。
【0039】
交流発電機10は、ハウジングから突き出した回転軸30の前端部に取り付けたプーリを介してエンジンにより駆動される。この交流発電機10は、ベルトを介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の磁界巻線31に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア32のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線23に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置61の出力端子からは所定の直流電力が取り出される。整流装置61は、固定子巻線23によって発生する三相交流を整流して直流に変換する。
【0040】
回転子3の回転軸30は、フロントベアリング71およびリアベアリング81に支持されているが、軸方向のガタつきを防止するため、所定の予圧を付与する必要がある。このため、図2に部分拡大図で示す如く、リアベアリング81とリアフレーム5の側壁面83との間の隙間53にリアベアリング81の外輪84と側壁面83に接触して、一体型のワッシャ1を挟着している。
【0041】
ワッシャ1は、図3に示す如く、板状のバネ材を、略円環形状に打ち抜いた後に、曲成して形成されている。なお、図3(a)は正面図(軸方向で見た図)であり、図3(b)は、図3(a)の矢印の方向で見た側面図である。本実施例では、ワッシャ1は、円環形状の円環形状部11と、円環形状部11から径方向外方に伸びるとともにバネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)に折り曲げられたバネ部12と、を有する。また、バネ部12は、本実施例では図に示したように、周方向に沿って8つのバネ部12がもうけられている。
【0042】
円環形状部11は、円環形状の軸心の開口に、回転子3の回転軸30が貫通して組み付けられる。また、円環形状部11は、曲成されていない平板状を有している。
【0043】
バネ部12は、円環形状の円環形状部11の外周から径方向外方に伸びた状態で曲成されている。バネ部12は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸びる曲成部120と、曲成部120の最外径部に設けられた平面部121と、を有する。
【0044】
曲成部120は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸び、バネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)に折り曲げられている。ここで、曲成部120の折り曲げは、周方向に並んだ複数のバネ部12の折り曲げ方向が、交互となるように折り曲げられている。曲成部120は、径方向で内径側から外径側に進むにつれて、周方向の幅が広くなるように形成されている。
【0045】
平面部121は、曲成部120の最外径部に設けられ、周方向に沿って伸びた平面をなしている。この平面部121は、円環形状部11の平面と平行をなすように形成されている。周方向に沿って並んだバネ部12の複数の平面部121は、図3に示す如く、リアベアリング81の外輪84と側壁面83のそれぞれと、交互に当接する。
【0046】
ワッシャ1は、周方向に沿って配置された複数(4つ)の平面部121により外輪84及び側壁面83と当接する。そして、この構成により、アルミニウム合金製である側壁面83に接触して、側壁面83が摩耗し、予圧が低下する不具合を有効に防止できる。
【0047】
また、本実施例のワッシャ1は、交流発電機10が大型化し回転子3の重量が増大しても、リアベアリング81の耐クリープ性と予圧の許容範囲との双方を満足することができ、長期間の使用に対して焼きつきなどのトラブルの発生を防止できる。
【0048】
さらに、本実施例のワッシャ1は、円環形状部11の外周にバネ部12が形成された構成となっており、ワッシャ1同士の絡み合いが複雑にならなくなっている。仮に二つのワッシャ1が重なり合っても、バネ部12が別のワッシャ1の円環形状部11の軸心部に入り込んだり、隣り合った二つのバネ部12を分ける切れ込み状の空間に入ることのみであり、それ以上の絡まり合いが起こらなくなっている。つまり、簡単に絡まりをほぐすことが可能となっている。
【0049】
また、本実施例のワッシャ1は、板状のバネ材を打ち抜いて形成することができ、短冊状のバネ材を曲成して形成される従来の波状のワッシャに比べて、簡単に製造することができる。
【0050】
さらに、本実施例のワッシャ1は、複数のバネ部12が円環形状部11に接続された構成であり、それぞれのバネ部12においてバネ特性が決定できる。これにより、バネ部12のバネ特性をそれぞれ独立した状態で任意に設定できる。
【0051】
ここで、本実施例のワッシャ1では、バネ部12の曲成部120の幅(円環形状部11と接続する接続部の周方向の幅)を調節することで、バネ部12のバネ特性を調節することができる。
【0052】
(実施例2)
本実施例は、図4に示したワッシャ1を用いたこと以外は、実施例1と同じ自動車用の交流発電機である。なお、図4は、図3と同様に記載した。
【0053】
本実施例のワッシャ1は、円環形状の円環形状部11と、円環形状部11から径方向外方に伸びるとともにバネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)に折り曲げられたバネ部12と、を有する。また、バネ部12は、本実施例では図に示したように、周方向に沿って3つのバネ部12がもうけられている。
【0054】
円環形状部11は、円環形状の軸心の開口に、回転子3の回転軸30が貫通して組み付けられる。また、円環形状部11は、曲成されていない平板状を有している。
【0055】
バネ部12は、円環形状の円環形状部11の外周から径方向外方に伸びた状態で曲成されている。バネ部12は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸びる径方向延在部122と、径方向延在部122の最外径部に設けられた周方向曲成部123と、を有する。
【0056】
径方向延在部122は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸びている。この径方向延在部122は、円環形状部11と同一平面状にのびる平板状を有している。
【0057】
周方向曲成部123は、径方向延在部122の最外径部に設けられ、周方向に沿って伸びている。そして、この周方向曲成部123は、一つの径方向延在部122の最外径部に、周方向の両方向にそってのびるように二つが形成されている。一つの径方向延在部122からのびる二つの周方向曲成部123,123は、バネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)であり、互いに異なる方向に折り曲げられている。
【0058】
さらに、周方向曲成部123の先端部は、円環形状部11と平行をなす平面状に形成されている。
【0059】
本実施例のワッシャ1は、実施例1のワッシャと同様に機能する。すなわち、本実施例のワッシャ1を有する自動車用交流発電機は、実施例1の自動車用交流発電機と同様な効果を発揮する。
【0060】
(実施例3)
本実施例は、図5に示したワッシャ1を用いたこと以外は、実施例1,2と同じ自動車用の交流発電機である。なお、図5は、図3と同様に記載した。
【0061】
本実施例のワッシャ1は、円環形状の円環形状部11と、円環形状部11から径方向外方に伸びるとともにバネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)に折り曲げられたバネ部12と、を有する。また、バネ部12は、本実施例では図に示したように、周方向に沿って3つのバネ部12がもうけられている。
【0062】
円環形状部11は、円環形状の軸心の開口に、回転子3の回転軸30が貫通して組み付けられる。また、円環形状部11は、曲成されていない平板状を有している。
【0063】
バネ部12は、円環形状の円環形状部11の外周から径方向外方に伸びた状態で曲成されている。バネ部12は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸びる径方向延在部124と、径方向延在部124の最外径部に設けられた周方向曲成部125と、を有する。
【0064】
径方向延在部124は、円環形状部11の外周から径方向外方に伸びている。この径方向延在部124は、円環形状部11と同一平面状にのびる平板状を有している。
【0065】
周方向曲成部125は、径方向延在部124の最外径部に設けられ、周方向に沿って伸びている。そして、この周方向曲成部125は、一つの径方向延在部124の最外径部に、周方向の両方向にそってのびるように二つが形成されている。一つの径方向延在部124からのびる二つの周方向曲成部125,125は、バネ材の厚さ方向(組み付け時の軸方向)であり、それぞれ同じ方向に折り曲げられている。なお、本実施例のワッシャ1では、全ての周方向曲成部125が同じ方向に折り曲げられている。
【0066】
さらに、周方向曲成部125の先端部は、円環形状部11と平行をなす平面状に形成されている。
【0067】
本実施例のワッシャ1は、実施例1,2のワッシャと同様に機能する。すなわち、本実施例のワッシャ1を有する自動車用交流発電機は、実施例1の自動車用交流発電機と同様な効果を発揮する。
【0068】
更に、本実施例では、ワッシャ1の円環形状部11が全面にわたってアルミニウム合金製である側壁面83に接触している。この構成により、側壁面83の摩耗がより抑えられ、予圧が低下する不具合をより有効に防止できる。
【符号の説明】
【0069】
1:ワッシャ
11:円環形状部 12:バネ部
120:曲成部 121:平面部
122,124:径方向延在部 123,125:周方向曲成部
10:交流発電機
2:固定子 20:プーリ
3:回転子 30:回転軸(シャフト)
4:フロントフレーム(ドライブエンドフレーム)
5:リアフレーム(リアエンドフレーム)
7:フロントボックス(フロントベアリングボックス)
71:フロントベアリング
8:リアボックス(リアベアリングボックス)
80:保持筒(リアベアリングホルダ)
81:リアベアリング 82:鍔部(フランジ)
83:リアフレームの側壁面 84:リアベアリングの外輪
9:ワッシャボックス 91:鍔部
92:筒部 93:側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントベアリングおよびリアベアリングを保持したハウジング内に固定子を設置するとともに、該固定子の内側に、該フロントベアリングおよび該リアベアリングに回転自在に支持されたシャフトを有する回転子を配してなる自動車用交流発電機において、
該フロントベアリングまたは該リアベアリングと同心の円環形状部と、該円環形状部に周方向に沿って形成された互いに独立した少なくとも3つのバネ部と、を有し、
該バネ部と該円環形状部の少なくとも一方が該フロントベアリングと該リアベアリングの少なくとも一方の外輪に当接し、該ベアリング外輪と該ハウジングの間に分圧を付与するワッシャを有することを特徴とする自動車用交流発電機。
【請求項2】
前記ワッシャの前記バネ部は、前記円環形状部から径方向に延在するとともに軸方向に曲成される曲成部と、該曲成部の最外径部に設けられ前記ベアリングの前記外輪,前記ハウジングと当接する平面部と、を有し、
周方向で隣接する該バネ部は、軸方向で異なる方向に該曲成部が折り曲げられている請求項1記載の自動車用交流発電機。
【請求項3】
前記ワッシャの前記バネ部は、前記円環形状部から径方向に延在するとともに軸方向に曲成される曲成部と、該曲成部の最外径部に設けられ前記ベアリングの前記外輪,前記ハウジングと当接する平面部と、を有し、
該バネ部は、軸方向で同じ方向に該曲成部が折り曲げられている請求項1記載の自動車用交流発電機。
【請求項4】
前記ワッシャの前記バネ部は、前記円環形状部から径方向に延在する径方向延在部と、該径方向延在部の最外径部に設けられ周方向に伸びるとともに前記ベアリングの前記外輪,前記ハウジングと当接するように軸方向に曲成される周方向曲成部と、を有し、
周方向で隣接する該周方向曲成部は、軸方向で異なる方向に該周方向曲成部が折り曲げられている請求項1記載の自動車用交流発電機。
【請求項5】
前記ワッシャの前記バネ部は、前記円環形状部から径方向に延在する径方向延在部と、該径方向延在部の最外径部に設けられ周方向に伸びるとともに前記ベアリングの前記外輪,前記ハウジングと当接するように軸方向に曲成される周方向曲成部と、を有し、
周方向で隣接する該周方向曲成部は、軸方向で同じ方向に該周方向曲成部が折り曲げられている請求項1記載の自動車用交流発電機。
【請求項6】
前記円環形状部が前記ハウジングと当接し、前記周方向曲成部が前記ベアリングの前記外輪と当接する請求項5記載の自動車用交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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