説明

自動車用成形天井

【課題】 本発明は、車室内の天井の外観を損なうことなく、ルーフパネルの強度を向上させることが可能な自動車用成形天井を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、ビード部3を有するルーフパネル2の車室内R側にルーフライニング4が取付けられる自動車用成形天井において、ルーフライニング4は、肉厚B,Cが変形可能に構成されていると共に、ルーフパネル2との合わせ面4aがビード部3になだらかに沿うような形状で、かつ意匠面となる車室内側面4bが平坦面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフパネルの車室内側にルーフライニングが取付けられる自動車用成形天井に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のルーフパネルにおいては、強度向上を目的として、車両前後方向へ延びる複数本のビード部が車幅方向に間隔を置いて設けられている。また、ルーフパネルの車室内側には、車室内の外観向上を目的として、ルーフパネルのほぼ全面を覆うルーフライニングが取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなルーフライニングは、外周縁部を除く中間部分を接着材でルーフパネルの車室内側面に接着することにより、ルーフパネルに固定されて取付けられている。
【特許文献1】実開昭56−42475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の自動車用成形天井では、図12に示す如く、ルーフパネル51のビード部52が車室内側に突出する形態で設けられ、ルーフライニング53の板厚(肉厚)Dが一定で接着材54によって固定される場合、ビード部52の設置箇所とそれ以外の箇所とでルーフライニング53の室内側断面線53aが凸凹に設定されることになるので、車室内の天井の外観が損なわれるという不具合を有していた。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車室内の天井の外観を損なうことなく、ルーフパネルの強度を向上させることが可能な自動車用成形天井を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、請求項1の本発明では、ビード部を有するルーフパネルの車室内側にルーフライニングが取付けられる自動車用成形天井において、前記ルーフライニングは、肉厚が変形可能に構成されていると共に、前記ルーフパネルとの合わせ面が前記ビード部になだらかに沿うような形状で、かつ意匠面となる車室内側面が平坦面状に形成されている。
【0007】
請求項2の本発明では、請求項1の発明において、前記ルーフライニングの車室内側面が、車幅方向に沿って凹凸の存在しない滑らかな曲線となる平坦面状に形成されている。
【0008】
請求項3の本発明では、請求項1または2の発明において、前記ルーフライニングは、基材を成形加工時の加熱にて発泡させることにより、肉厚が変形可能となるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ビード部を有するルーフパネルの車室内側にルーフライニングが取付けられる自動車用成形天井において、前記ルーフライニングは、肉厚が変形可能に構成されていると共に、前記ルーフパネルとの合わせ面が前記ビード部になだらかに沿うような形状で、かつ意匠面となる車室内側面が平坦面状に形成されているので、ルーフパネルとルーフライニングとの接着条件が一定となり、ルーフパネルへのルーフライニングの固定がより安定して行うことができる。しかも、ルーフパネルへのルーフライニングの固定がしっかり行われることによって、ルーフパネルの剛性が向上し、ワックス掛け時等に生じるルーフパネルのベカツキや雨天時の雨音対策として有効である。それに加えて、車室内側のルーフライニングには、凸凹が存在しないので、すっきりとした見映えの良い外観の天井が得られる。
【0010】
請求項2の発明では、前記ルーフライニングの車室内側面が、車幅方向に沿って凹凸の存在しない滑らかな曲線となる平坦面状に形成されているので、特に車幅方向で天井の外観向上を図ることができる。
【0011】
請求項3の発明では、前記ルーフライニングは、基材を成形加工時の加熱にて発泡させることにより、肉厚が変形可能となるように構成されているので、重量増大およびコスト高を招くことなく、製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る自動車用成形天井を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井が適用された自動車の全体を斜め後方から見て示す斜視図、図2は図1における自動車のルーフパネルを示す斜視図、図3は図2におけるA−A線断面図、図4はルーフライニングの標準構造断面図、図5はインサイドミラーと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図、図6はサンバイザホルダと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図、図7はサンバイザと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図、図8はフロントアシスタントグリップと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図、図9はリヤアシスタントグリップと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図、図10はルーフライニングの後部側を示す断面図、図11は車両前後方向のルーフライニングを示す断面図である。
【0014】
本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井が適用された自動車1のルーフパネル2には、図1〜図3に示す如く、面剛性向上および強度向上を目的として、複数本(本実施形態では3本)のビード部3が設けられている。これらビード部3は、基本面2aから車室内R側へ向かって所定の深さにわたり突出する凹形状に形成されており、ルーフパネル2の前後端部付近まで車両前後方向へ沿って延びていると共に、車幅方向に間隔を置いて配設されている。
【0015】
このようなビード部3を有するルーフパネル2の車室内R側には、車室内Rの外観向上を主目的として、当該ルーフパネル2のほぼ全面を覆うルーフライニング4が取付けられている。このルーフライニング4は、肉厚(板厚)が変形可能に構成されていると共に、ルーフパネル2との合わせ面4aがビード部3になだらかに沿うような形状で、かつ意匠面となる車室内側面4bが平坦面状に形成されている。
すなわち、ルーフライニング4は、車室内側面4bの断面線がルーフパネル2の基本面2aと一定距離に保持されたなだらかな曲線に形成され、かつルーフパネル2との合わせ面4aの断面線がルーフパネル2の基本面2aおよびビード部3と一定距離を置いてなだらかに沿うように設けられており、ビード部3の設置箇所では肉厚が薄いBとなり、その他の設置箇所では肉厚が厚いCとなっている。しかも、ルーフパネル2の基本面2aおよびビード部3と、ルーフライニング4の合わせ面4aとの間の隙間S1,S2は、ほぼ同じ大きさとなるように設定されている。
【0016】
このため、ルーフライニング4は、図4の標準断面に示す如く、基材5の上下にカーボン不織布6および樹脂製不織布7をそれぞれ配設した層構造を有し、基材5を成形加工時の加熱にて発泡させることにより、肉厚が変形可能となるように構成されており、ルーフパネル2との合わせ面4aがルーフパネル2側の形状に沿うような曲線となり、車室内側面4bがなめらかな曲線に形成されている。特に、ルーフライニング4の車室内側面4bは、車幅方向に沿って凹凸の存在しない滑らかな曲線となる平坦面状に形成されている。また、ルーフライニング4の基本肉厚は、従来のものが5mmに対して6mmに設定され、従来よりも厚く形成されており、これによってルーフライニング4自体の剛性が高められている。
【0017】
本発明の実施の形態のルーフライニング4は、意匠面となる車室内側面4bを下向きにした状態で、接着材8、クリップ9、スクリュ10などを用いてルーフパネル2に取付けられている。すなわち、車両前後方向および車幅方向の中央部に位置するルーフライニング4は、図3に示す如く、多数の箇所に間隔を開けて付着させた接着材8によって、ルーフパネル2の中央部の下面(車室内R側の面)に固定されている。また、ルーフライニング4の車両前部側は、図5〜図7に示す如く、クリップ9、サンバイザホルダ11、スクリュ10などによってインサイドミラー12およびサンバイザ13と共締めされて、ルーフパネル2を構成するフロントインナパネル14の下面に固定されている。
【0018】
さらに、ルーフライニング4の左右両側部は、図8および図9に示す如く、クリップ9およびスクリュ10によってフロントアシスタントグリップ15およびリヤアシスタントグリップ16と共締めされて、サイドボディ17を構成するルーフサイドインナパネル18の内側に固定されている。そして、ルーフライニング4の車両後部側は、図10に示す如く、クリップ9によって、ルーフパネル2を構成するリヤインナパネル19の下面に固定されている。
なお、ルーフパネル2の下面には、図11に示す如く、車幅方向に沿って延びる複数本のルーフリンフォースメント20が車両前後方向に間隔を置いて配設されており、ルーフリンフォースメント20の設置箇所では、ルーフライニング4が車室内R側にやや湾曲したなだらかな曲面に形成されている。
【0019】
このように、本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井においては、剛性を有しかつ軽量で肉厚が変形可能なルーフライニング4により、ルーフパネル2のほぼ全面が覆われているため、ルーフパネル2にビード部3が設けられていても、ルーフライニング4をルーフパネル2の基本面2aおよびビード部3の形状に沿って一定の隙間S1,S2で追従して配置することができ、車室内側面4bが凸凹を生じることなく、なだらかな平坦面を確保でき、車室内R側の外観向上を図ることができると共に、ルーフパネル2とルーフライニング4との接着強度を高め、ルーフライニング4をルーフパネル2にしっかりと固定することができる。
【0020】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、既述の実施形態では、凹形状のビード部3が設けられたルーフパネル2にルーフライニング4を取付けているが、凸形状のビード部が設けられたルーフパネル2にルーフライニング4を取付けても、同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井が適用された自動車の全体を斜め後方から見て示す斜視図である。
【図2】図1における自動車のルーフパネルを示す斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、ルーフライニングの標準構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、インサイドミラーと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、サンバイザホルダと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、サンバイザと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、フロントアシスタントグリップと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、リヤアシスタントグリップと共締めされた状態のルーフライニングを示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、ルーフライニングの後部側を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る自動車用成形天井において、車両前後方向のルーフライニングを示す断面図である。
【図12】従来の自動車用成形天井が適用された自動車のルーフパネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 自動車
2 ルーフパネル
3 ビード部
4 ルーフライニング
4a 合わせ面
4b 車室内側面
5 基材
6,7 不織布
8 接着材
B,C 肉厚
R 車室内
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部を有するルーフパネルの車室内側にルーフライニングが取付けられる自動車用成形天井において、前記ルーフライニングは、肉厚が変形可能に構成されていると共に、前記ルーフパネルとの合わせ面が前記ビード部になだらかに沿うような形状で、かつ意匠面となる車室内側面が平坦面状に形成されていることを特徴とする自動車用成形天井。
【請求項2】
前記ルーフライニングの車室内側面は、車幅方向に沿って凹凸の存在しない滑らかな曲線となる平坦面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用成形天井。
【請求項3】
前記ルーフライニングは、基材を成形加工時の加熱にて発泡させることにより、肉厚が変形可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用成形天井。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−35997(P2006−35997A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218027(P2004−218027)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】