説明

自動車用暖房装置

【課題】従来の自動車用暖房装置は、エンジンの廃熱を利用するため暖房の速暖性に欠けるという課題があった。
【解決手段】電気ヒータ12と、電気ヒータ12を一体に配置する面状部材11aと、面状部材11aを収容する収容機構13、15とを備え、面状部材11aを床面14に設置したため、電気ヒータを用いていることによりエンジン始動直後でもすぐに暖まり速暖性が高く、さらに冷えやすい足元を暖めることで快適性の高い暖房装置を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車の車内暖房装置としては、車両床面にペルチェ素子を配置することで足元を暖房するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の自動車用暖房装置の構成図である。自動車の座席1の前部床面2にペルチェ素子3を配置し、ペルチェ素子3の高温側の面3aを室内側に、低温側の面面3bをエンジンルーム4に露出するように配置している。
【特許文献1】特開平8−11517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動車用暖房装置は、ペルチェ素子3の特性として、通電することにより室内側の面3aと車外側の面3bに温度差を発生させる構成であるため、外気温が低くなったときに、暖房効果が薄れてしまうという課題がある。
【0005】
また、この例のように、エンジンルーム4に配置したとしても、エンジン廃熱の小さいハイブリッド自動車などにおいては、十分な暖房効果を得ることが難しいという課題がある。さらに、ハイブリッド自動車はエンジン廃熱が小さいため、空調暖房も効きにくいという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動車用暖房装置は、電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置する面状部材と、前記面状部材を収容する収容機構とを備え、前記面状部材を床面に設置した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動車用暖房装置は、エンジンの暖気状態にかかわらず、バッテリーから電力による電気ヒータを使用して暖房を開始するため、速暖性の高く、また、非使用時に収容し、使用時に取り出して使用できるため効率よく暖房することができ、かつ冷えやすい足元から暖房することで快適性の高い暖房装置を提供することを目的とする。また外気温度やエンジンルームの温度の影響を受けにくく、投入電力により容易に所望の温度を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置する面状部材と、前記面状部材を収容する収容機構とを備え、前記面状部材を床面に設置することで、バッテリーから電力による電気ヒータを使用して暖房を開始するため、速暖性の高く、また、非使用時に収容し使用時に取り出して使用できるため効率よく暖房することができ、かつ冷えやすい足元から暖房することで快適性の高い暖房装置を提供することができる。また外気温度やエンジンルームの温度の影響を受けにくく、投入電力により容易に所望の温度を得ることが出来る。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明において、ハイブリッド自動車に設置する構成とした。ハイブリッド自動車のエアコンは、走行中であってもエンジンが停止している時間がある
ため、エンジンの廃熱を利用するエアコンの暖房は効きにくいが、電気ヒータを用いているためすぐに暖まり、速暖性が高い暖房装置を提供することできる。
【0010】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、電気ヒータを備えた面状部材が、収容された状態で、前記電気ヒータに通電しない構成としたので、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0011】
第4の発明は、特に第3の発明において、電気ヒータを備えた面状部材の、収容状態を検出する収容状態検出手段を有する構成としたので、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0012】
第5の発明は、特に第3の発明において、座席に、人の着座の有無を検出する在席検出手段を有する構成としたので、不在時に電気ヒータに通電しないので無駄な電力消費を抑えることが出来る効率の高い暖房装置を提供できる。
【0013】
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか1項記載の発明において、電気ヒータはPTC特性を持つ電気ヒータとしたので、ヒータ自身の温度上昇とともに電気抵抗地が上昇することで、温度が上がりすぎることもなく快適な温度を維持することが出来、快適な環境を提供する暖房装置を提供できる。
【0014】
第7の発明は、特に第1から第6のいずれか1項記載の発明において、自動車の後部座席の床面に配置したので、温風が回りにくい後部座席に座る人にも速暖性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0015】
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか1項記載の発明において、車内空調装置と連動する構成としたので、使用者が個別にオンオフ操作をする必要のない利便性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における自動車用暖房装置についてハイブリッド自動車に適用した例を図1から5を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における自動車用暖房装置の構成図。図2は自動車用暖房装置が配置された自動車の部分断面図である。
【0018】
図1において、本発明の暖房装置10は、樹脂などの素材で出来た、楕円柱状のフットレスト11と、フットレスト11の片側の表面11a(面状部材)に着設されたPTC特性を持つ面状のヒータ12と、回転軸13と車両床面14から伸びる1対のアーム15からなり、回転軸13は、楕円柱状のフットレスト11を偏心して回転可能に貫通しており、回転軸13の両端はそれぞれアーム15に固定されている。そして、ヒータ12は、ハイブリッド自動車のバッテリーから電力を得て発熱する。
【0019】
フットレスト11は、回転可能に取り付けられているため、使用時は図1aのように、ヒータ12が設置された面を表に向けて使用し、未使用時は図1bのようにフットレスト11を跳ね上げるように回転させて収容する。
【0020】
そして、図2に示すように、例えば4人載の自動車の場合、前部座席16と後部座席17のそれぞれの前部に、4人分(図2では片側2人分を表示)の暖房装置10を配置する

【0021】
また、前部座席16、後部座席17には、例えば座面中央に圧電センサなどの在席検知手段18が配置されている。
【0022】
以下に動作作用を説明する、本発明の暖房装置10を使用する場合は、図2に示すように、フットレスト111を回転させることで引き出して使用する。また、使用しない場合はフットレスト112のように、跳ね上げておく。
【0023】
そして暖房装置10は、図3に示す自動車のエアコン(車内空調装置)動作ダイヤル19と温度調節ダイヤル20に連動して動作する。例えば、エアコン動作ダイヤル19がauto状態でかつ温度調節ダイヤル20が暖房領域Aであるときに、エアコンが動作するのと同時に暖房装置10にも通電される。そのため、4つの暖房装置10を一括して電源投入し、温度調節をすることができるため、利便性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0024】
また、ハイブリッド自動車のエアコンは、走行中であってもエンジンが停止している時間があるため、エンジンの廃熱を利用するエアコンの暖房は効きにくいが、電気ヒータを用いている暖房装置10はすぐに暖まり、速暖性が高い。また、PTC特性を持つヒータ12を用いているため、ヒータ自身の温度上昇とともに電気抵抗地が上昇することで、温度が上がりすぎることもなく快適な温度を維持することが出来、快適な環境を提供することが出来る。また外気温度やエンジンルームの温度の影響を受けにくく、投入電力により容易に所望の温度を得ることが出来る。
【0025】
このときの温度調節範囲は、エアコンの温度調節ダイヤル20温度と同じでなくてもよく、例えば、体温を中心に30度から40度の範囲で温度調節してもよく、また電気毛布などと同じ程度でもよい。
【0026】
また図4(a)、(b)暖房装置10の要部断面図に示すように、フットレスト11内部の回転軸13近傍にマイクロスイッチ21が配置されており、暖房装置10の収容状態を検出する。暖房装置10を使用するためにフットレスト11を回転させ引き出したときには、図4(a)のように回転軸13の突起部によりフットレスト11内部のスイッチ21が押されることにより通電可能状態になり、エアコンの動作と連動して暖房を行う。また、暖房装置10を使用せずフットレスト11が跳ね上げられた状態では、図4(b)のように回転軸13の突起部はスイッチ21から離れ通電しないため、エアコンが動作してもヒータ21は発熱しない。これにより、使用者が個別にオンオフ操作をする必要のない利便性の高く、かつ、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0027】
さらに、前部座席16、および後部座席17に設けられた圧電センサ18により人体着座時の圧力変動がある場合のみ通電可能としている。そのため、未使用および不在時に通電しないので無駄な電力消費を抑えることが出来る効率の高い暖房装置を提供できる。
また、後部座席17に暖房装置10を設けたことで、温風が回りにくい後部座席17に座る人にも速暖性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0028】
尚、暖房装置10の収容は、モーターにより電動化してもよい。
【0029】
尚、ヒータ12が着設されたフットレスト11は、布などの素材で覆うことで、足元の触感が向上し、さらに金属や樹脂などと異なり、接触直後の冷感を低減させ快適性を向上させることが出来る。
【0030】
尚、ヒータ12は線状ヒータをフットレスト11に蛇行配置する構成でもかまわない。
【0031】
また尚、暖房装置9をエアコンと連動せずに、図5のように、エアコンのダイヤルとは別の温度コントローラ22でエアコンとは別にオンオフ、および温度調節ができるようにしてもかまわない。寒さを不快に感じにくい人と、寒さを不快に感じやすい人が同乗したとしても個別に暖房効果が得られるため、快適性の高い暖房装置を提供することが出来る。
【0032】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における自動車用暖房装置について図6から8を用いて説明する。図6は本発明の第2の実施の形態における自動車用暖房装置の構成図。図7は自動車用暖房装置が配置された自動車の部分断面図である。図8は、自動車用暖房装置の腰部断面図である。
【0033】
第1の実施の形態との違いは、電気ヒータを一体に配置する面状部材とその収容機構を巻取り式にしたことである。実施の形態1と同一符号の物は同様の動作、作用、効果を示し説明を省略する。
【0034】
図6において、本発明の暖房装置30は、シート状の樹脂よりなる足元マット31(面状部材)であり、PTC特性を持つ面状のヒータ32が、足元マット31の内部に挟み込まれるように配置されている。足元マット31の一端には収容装置33が配置されており、足元マット31を使用しないときには収容装置33の内部に巻取り収容される。足元マット30の他方の一端には引き出すための取手34が2個配置されている。
【0035】
以下に動作作用を説明する、本発明の暖房装置30を使用する場合は、そして、図7に示すように、例えば4人載の自動車の場合、前部座席16と後部座席17のそれぞれの前部に、4人分(図2では片側2人分を表示)の暖房装置30を配置し、そこから足元マット31を引き出して使用する。図7では、前部座席16の暖房装置301は使用しておらず、足元マットは収容状態にある。一方後部座席17の暖房装置302は使用状態にあるため足元マット31が引き出され、電気ヒータに通電することで使用者の足元を素早く暖めることが出来る。
【0036】
また図8(a)、(b)暖房装置30の要部断面図に示すように、収容装置33にマイクロスイッチ35が配置されており、暖房装置30を使用するために足元マット31が引き出されたときには図8(a)のようにスイッチ35が入り通電可能状態になり、エアコンの動作と連動して暖房を行う。また、暖房装置30を使用せず収容装置33に収容された状態では、図8(b)のように取手34と収容装置33が勘合することでスイッチ35が切られ通電しないため、エアコンが動作してもヒータは発熱しない。これにより、使用者が個別にオンオフ操作をする必要のない利便性の高く、かつ、暖房を必要としていない箇所を不必要に暖房しない効率の高い暖房装置を提供することが出来る。さらに、座席14に設けられた圧電センサ15により人体着座時の圧力変動がある場合のみ通電可能としている。そのため、未使用および不在時に通電しないので無駄な電力消費を抑えることが出来る効率の高い暖房装置を提供できる。また、収容装置33に内蔵されたバネにより、足元マット31には常に巻取り方向Bに力がかかっており、使用者は容易に足元マット31を収容装置33に収容することが出来る。また、使用時に足元マット31が収容装置33に巻き戻ってしまうことがないように、収容装置33にはストッパ機構を有している。足元マット31を収容する際には、引き出された足元マット31をさらに引き出すことでストッパ機構が解除され容易に収容することが出来る。
【0037】
尚、在席検知手段18は圧電センサ以外にもマイクロスイッチでもかまわないし、赤外線センサを用いて、人体の熱を検知してもかまわない。また設置場所も、座席の座面ではなく背面に設置してもかまわない。その場合、心臓近傍に設置すれば、心拍振動を検出して在席の有無を検出することも可能である。
【0038】
尚、暖房装置の収容方法としては、実施の形態1、2に限られることはなく、例えば、座席の下から電気ヒータを配置した足元マットを引き出して暖房し、暖房しないときには座席の下に収容する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる自動車用暖房装置は、システムのエネルギー効率が高く、エンジンの廃熱の小さいハイブリッド自動車のエアコン暖房の効き始めの遅さを補い、快適な暖房空間を提供できるため、エンジンの廃熱がなくエアコン暖房の効きにくい電気自動車用の暖房装置としてもかまわない。またさらに、効率を高めることでエンジン廃熱を抑制したディーゼルエンジンや、高効率のガソリンエンジン自動車の暖房装置としても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置を搭載した自動車の部分断面図
【図3】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の温度調節部の構成図
【図4】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の収容装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態1における別の例の自動車用暖房装置の温度調節部の構成図
【図6】本発明の実施の形態2における自動車用暖房装置の構成図
【図7】本発明の実施の形態2における自動車用暖房装置を搭載した自動車の部分断面図
【図8】本発明の実施の形態3における自動車用暖房装置の収容装置の構成図
【図9】従来の自動車用暖房装置の構成図
【符号の説明】
【0041】
10 暖房装置
11a フットレスト表面(面状部材)
12 ヒータ(PTC特性を持つ電気ヒータ)
13 回転軸(収容機構)
14 床面
15 アーム(収容機構)
17 後部座席
18 圧電センサ(在席検出手段)
21 マイクロスイッチ(収容状態検出手段)
30 暖房装置
31 足元マット(面状部材)
32 ヒータ(PTC特性を持つ電気ヒータ)
33 収容装置(収容機構)
35 スイッチ(収容状態検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒータと、前記電気ヒータを一体に配置する面状部材と、前記面状部材を収容する収容機構とを備え、前記面状部材を床面に設置した自動車用暖房装置。
【請求項2】
ハイブリッド自動車に設置する、請求項1記載の自動車用暖房装置。
【請求項3】
電気ヒータを備えた面状部材が、収容された状態で、前記電気ヒータに通電しない構成とした請求項1または2記載の自動車用暖房装置。
【請求項4】
電気ヒータを備えた面状部材の、収容状態を検出する収容状態検出手段を有する構成とした請求項3記載の自動車用暖房装置。
【請求項5】
座席に、人の着座の有無を検出する在席検出手段を有する構成とした請求項3記載の自動車用暖房装置。
【請求項6】
電気ヒータはPTC特性を持つ電気ヒータである請求項1から5のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項7】
自動車の後部座席の床面に配置した請求項1から6のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項8】
車内空調装置と連動する請求項1から7のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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