説明

自動車用浄化器具の筒体の製造方法及び自動車用浄化器具

【課題】筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することを可能にする。
【解決手段】異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向になるようにして筒体を形成し、この筒体を触媒コンバータ10等の自動車用浄化器具に用いるものであり、触媒コンバータ10は、例えば縮径部111を有する筒体11と、筒体11内に収容して定置される浄化体である触媒担体12と、触媒担体12の外周に巻かれて周設され、筒体11内で触媒担体12を保持する保持材13と、筒体11の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられるメッシュリング14と、筒体11の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられる端部材15とを備える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば筒体の端部にコーン部材が取り付けられる触媒コンバータなど自動車用浄化器具の筒体の製造方法及び自動車用浄化器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状の筒体の端部にコーン部材を取り付ける触媒コンバータが知られている。この触媒コンバータでは、例えば触媒を担持した触媒担体の外周に緩衝部材(保持材)の機能を持つマットを巻き、マットを巻かれた触媒担体を筒体内に収容して定置し、筒体の軸方向の両端部に金属メッシュリング等をそれぞれ配置する。そして、筒体と入口側コーン部材を溶接すると共に、筒体の排気ガス出口側には出口側コーン部材を外嵌し、筒体と出口側コーン部材を溶接することにより、触媒コンバータが構成される(特許文献1参照)。
【0003】
上記触媒コンバータでは、触媒担体とマットで構成される構造体を筒体内に収容して定置する際に、この構造体の外径を筒体の内径より大きくし、マットの柔軟性により筒体内への挿入及び筒体内での弾性保持を行うことで定置してもよいが、この構造体を筒体内でより確実に定置させるために、構造体の筒体内への挿入後に筒体を縮径することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−57509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記触媒コンバータなど自動車用浄化器具の筒体を縮径加工する場合、縮径加工時の伸びによる誤差が大きくなり、浄化器具前後の設計の自由度や容易性を阻害する原因になっている。同様のことは、金属メッシュリング等を筒体の軸方向の端部に設けない自動車用浄化器具や、触媒担体等の両側に相当する位置で筒体を縮径してコーン部を形成する自動車用浄化器具の場合にも言え、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を抑えられる構成が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することを可能にする自動車用浄化器具の筒体の製造方法及び自動車用浄化器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動車用浄化器具の筒体の製造方法は、所定部が縮径される筒体と、前記筒体内に収容して定置される浄化体とを備える自動車用浄化器具の筒体の製造方法であって、前記筒体を、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして形成することを特徴とする。
前記構成では、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして筒体を形成することにより、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。
【0008】
本発明による自動車用浄化器具は、所定部が縮径される筒体と、前記筒体内に収容して定置される浄化体とを備え、前記筒体が、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして形成されていることを特徴とする。尚、前記本発明の自動車用浄化器具は、後述するメッシュリングを設ける構成或いはこれらを設けない構成、又は端部材を設ける構成或いはこれらを設けない構成、又は筒体の端部寄りの部分をテーパ状に縮径する構成或いはこの縮径をしない構成、又は、これらの適宜の組み合わせの構成等を包含するものである。
前記構成では、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして筒体を形成することにより、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。
【0009】
本発明による自動車用浄化器具は、前記筒体の端部若しくは側面の少なくとも一箇所以上に設けられ、前記筒体内で前記浄化体を保持する保持材を備えることを特徴とする。
前記構成では、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして筒体を形成することで板厚を増加することが可能になるから、筒体による保持材の面圧を高めることができ、保持材でより確実に浄化体を保持することができる。
【0010】
本発明による自動車用浄化器具は、前記筒体の端部に設けられる端部材と、前記浄化体の少なくとも一方の端部に設けられるメッシュリングとを備え、前記メッシュリングが前記端部材で圧縮されていることを特徴とする。
前記構成では、端部材とメッシュリングを設ける場合に、圧延方向が周方向である筒体により、筒体の軸方向の長さを短過ぎず長過ぎない適切な範囲に調製することが可能となり、筒体11の軸方向端部への端部材15の確実な取り付け、製造設備との接触による浄化体の割れや欠けの防止、端部材でのメッシュリングに対する圧縮、シール性の確実な確保を図ることができる。
【0011】
本発明による自動車用浄化器具は、前記筒体の端部寄りの部分がテーパ状に縮径される、若しくは前記筒体の端部に端部材が設けられることを特徴とする。
前記構成では、軸方向の端部寄りの部分がテーパ状に縮径される筒体について、又は筒体の端部に端部材が設けられる構成の筒体について、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。
【0012】
本発明による自動車は、本発明の自動車用浄化器具を備えることを特徴とする。本発明の自動車には、自動四輪車、自動二輪車など適宜の自動車が含まれる。
前記構成では、本発明の自動車用浄化器具の作用効果を有する自動車を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、筒体の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は第1実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図。
【図2】図1(b)のA領域の拡大断面図。
【図3】(a)〜(c)は筒体を構成する板材の製造工程を説明する斜視説明図。
【図4】(a)は筒体の斜視図、(b)は筒体に触媒担体及び保持材を内装した状態の断面図、(c)は筒体に触媒担体及び保持材を内装して縮径した状態の断面図。
【図5】(a)は第2実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図。
【図6】(a)は第3実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法〕
本発明の第1実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法について説明する。図1(a)は第1実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図、図2は図1(b)のA領域の拡大断面図である。
【0016】
第1実施形態の自動車用浄化器具は、自動車の排気系に設けられる触媒コンバータ10であり、触媒コンバータ10は、図1及び図2に示すように、所定部である軸方向の全体に亘って縮径された縮径部111を有する筒体11と、筒体11内に収容して定置される浄化体である触媒担体12と、触媒担体12の外周に巻かれて周設され、筒体11内で触媒担体12を保持する保持材13と、筒体11の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられるメッシュリング14と、筒体11の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられる端部材15とを備える。
【0017】
筒体11は図示例では円筒形であり、母材加工時の圧延で異方性を有するステンレス等を材料として丸めるように曲げ成形し、図示省略する軸方向に延びる溶接部で溶接して形成されている。尚、前記異方性は、圧延によって結晶がランダムに分布せずに偏ることによって生ずる。そして、筒体11は、異方性を有する母材の圧延方向(板目方向)が周方向になるように形成されている。また、筒体11或いはその全体に亘る縮径部111は、後述する触媒担体12及び保持材13の構造体を筒体11内に内装した状態で縮径して形成されているものであり、前記構造体の位置ずれを防止する機能を有する。
【0018】
触媒担体12は、例えば担持本体で触媒材料を担持した円柱形であり、触媒材料は、例えばアルミナ、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート、炭化珪素、窒化珪素、アルミナチタネート、コーディエライト等からなる群から選ばれる1種又は2種以上の材料からなる。
【0019】
保持材13は、例えば断熱性と熱膨張性を有するマットであり、触媒担体12の外周に巻きつけられる。触媒担体12及びこれに巻きつけられた保持材13の構造体は、その状態で筒体11内に挿入して内装される。尚、保持材13は熱膨張性を有しないマットでもよい。また、保持材13は、触媒担体12の外周に巻かれる構成に限定されず、前記筒体の端部若しくは周面である側面の少なくとも一箇所以上に設けられれば適宜である。
【0020】
メッシュリング14は、金属細線をメッシュ状にした金属メッシュリング等であり、排気ガスの入口側と出口側にそれぞれ設けられる。メッシュリング14は、図示例では断面視略L字形のリング状に形成されており、前記L字形の一方側の側部141を保持材13から若干突出する触媒担体12の端部と筒体11の端部との間に嵌め込まれて取り付けられる。更に、排気ガスの入口側のメッシュリング14は、後述する端部材15で圧縮される。尚、排気ガスの出口側のメッシュリング14のみ端部材15で圧縮する構成、又、排気ガスの入口側と出口側のメッシュリング14・14の両者とも端部材15・15で圧縮する構成、又、排気ガスの入口側と出口側のメッシュリング14・14の両者とも端部材15・15で圧縮しない構成とすることも可能である。また、メッシュリング14の形状は適宜であるが、筒体11の軸方向の端面とその近傍の周面である側面とに接触する形状とすると好適である。
【0021】
端部材15は、略円錐形のコーン部材であり、図示例では筒体11側に向かって漸次拡径する略截頭円錐形の錘状部151と、錘状部151の筒体11側の端部に外側に突出形成されているフランジ152と、フランジ152の外側縁から筒体11側に向かって形成されている筒状嵌合部153とから構成される。排気ガスの入口側と出口側の端部材15、15は、筒状嵌合部153を筒体11の端部にそれぞれ外嵌し、溶接して接合されている。そして、排気ガスの入口側の端部材15は、前記嵌め込まれたメッシュリング14をフランジ152で圧縮するようにして設けられている。尚、端部材15の形状は適宜であり、例えば略楕円形、或いは略円錐形や略楕円形で偏芯/偏角した形状等とすることも可能である。
【0022】
ここで、上記筒体11の製造方法及び筒体11を用いる触媒コンバータ10の製造方法の例について説明する。前提として、筒体11の材料となる例えばステンレスの板材を得る際には、図3(a)に示すように、圧延ロール22で圧延してステンレスの材料母材21を形成する。その後、図3(b)に示すように、ステンレスの材料母材21が巻回されているロール23から材料母材21をロール24で巻取って移動させつつ、スリッター25で材料母材21を所定幅に切断する。次いで、図3(c)に示すように、材料母材21が巻回されているロール24から材料母材21を巻き出し、レベルローラー26で内部残留応力や反り返り等のクセを取り、切断刃27で切断して矩形の板材28を得る。
【0023】
そして、図4(a)に示すように、板材28を丸めるようにして曲げ成形し、図示省略する軸方向に延びる溶接部で溶接して筒体11を得る。この際、圧延により異方性を有する材料の圧延方向が筒体11の周方向になるようにして曲げ成形を行い、筒体11を形成する。
【0024】
次いで、図4(b)、(c)に示すように、筒体11内に、触媒担体12及びこれに巻きつけられた保持材13から構成される構造体を挿入し、筒体11の所定位置である略中央位置等の適宜の位置に配置した後に、筒体11に対して縮径加工を施して縮径部111を形成する。前記縮径加工は、例えば割型による縮径、スピニング加工による縮径、或いは縮径後の形状を有する金型に押し込むことによる縮径(スウェージング)等で行うことが可能である。この縮径加工の際に、筒体11に軸方向への伸びが生ずるが、異方性を有する材料の圧延方向を筒体11の周方向としていることにより、筒体11の軸方向の伸び及びその誤差は非常に小さくなる。
【0025】
その後、筒体11の軸方向の両側端部において、メッシュリング14・14を触媒担体12の端部と筒体11の端部との間にそれぞれ嵌め込み、筒状嵌合部153を筒体11の端部にそれぞれ外嵌することにより端部材15・15を設け、端部材15・15を筒体11にそれぞれ溶接して触媒コンバータ10が得られる。前記筒状嵌合部153の外嵌時には、排気ガスの入口側に設けられるメッシュリング14は端部材15で圧縮され、このメッシュリング14は圧縮された状態で触媒コンバータ10に設置される。
【0026】
第1実施形態の自動車用浄化器具、或いは筒体11の製造方法は、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体11により、筒体11の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。また、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体11で板厚を増加することが可能となり、これにより保持材13の面圧を高められ、保持材13でより確実に触媒担体12を保持することができる。
【0027】
また、本発明の例示である端部材15とメッシュリング14を設ける例では、筒体11が短過ぎると、端部材15を取り付けることができなくなると共に、量産工程の製造設備に接触して触媒担体12に割れや欠けが発生する一方で、筒体11が長過ぎると、端部材15でのメッシュリングの圧縮時に、端部材15のフランジ152がメッシュリング14よりも先に筒体11の軸方向端面に当接してしまい、メッシュリング14を圧縮できなくなるという問題を生ずるが、圧延方向が周方向である筒体11により、筒体11の軸方向の長さを短過ぎず長過ぎない適切な範囲に調製することが可能となり、筒体11の軸方向端部への端部材15の確実な取り付け、筒体11内の触媒担体12の割れや欠けの防止、端部材15でのメッシュリング14に対する圧縮、シール性の確実な確保を図ることができる。
【0028】
〔第2実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法〕
次に、本発明の第2実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法について説明する。図5(a)は第2実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図である。
【0029】
第2実施形態の自動車用浄化器具は自動車の排気系に設けられる触媒コンバータ30であり、触媒コンバータ30は、図5に示すように、所定部である軸方向の両側端部寄りの部分にテーパ状に縮径された縮径部311を有する筒体31と、筒体31内に収容して定置される浄化体である触媒担体32と、触媒担体32の外周に巻かれて周設され、筒体31内で触媒担体32を保持する保持材33とを備える。
【0030】
筒体31は、図示例では円筒形であり、母材加工時の圧延で異方性を有するステンレス等を材料として丸めるように曲げ成形し、図示省略する軸方向に延びる溶接部で溶接して形成されている。そして、筒体31は、異方性を有する母材の圧延方向(板目方向)が周方向になるように形成されている。また、筒体31は、触媒担体32及び保持材33の構造体に対して両側にある程度の長さの突出部分を有する長さであり、軸方向の両側端部寄りの部分にそれぞれ形成された縮径部311・311は、触媒担体32及び保持材33の構造体を筒体11内に内装した状態で縮径して形成されている。縮径部311・311は、筒体31の端部から前記構造体に向かって漸次拡径するようにテーパ状に形成され、前記構造体の位置ずれを防止する機能を有する。
【0031】
触媒担体32、保持材33及びこれら双方でなる構造体の構成は、第1実施形態の触媒担体12、保持材13及びこれら双方である構造体の構成と同一である。
【0032】
ここで、上記筒体31の製造方法及び筒体31を用いる触媒コンバータ30の製造方法の例について説明する。第2実施形態の筒体31は、第1実施形態と同一の板材28で形成され、第1実施形態と同様に、板材28を丸めるようにして曲げ成形し、軸方向に延びる溶接部で溶接して得られる。この際、圧延により異方性を有する材料の圧延方向が筒体31の周方向になるようにして曲げ成形を行い、筒体31を形成する。
【0033】
次いで、筒体31内に、触媒担体32及びこれに巻きつけられた保持材33から構成される構造体を挿入し、筒体31の所定位置である略中央位置等の適宜の位置に配置した後に、前記構造体の両外側に相当する筒体31の軸方向の両側端部寄りの部分をテーパ状に縮径し、縮径部311・311を形成して触媒コンバータ30が得られる。前記縮径加工は、例えば割型による縮径、スピニング加工による縮径、或いは縮径後の形状を有する金型に押し込むことによる縮径(スウェージング)等で行うことが可能である。この縮径加工の際に、筒体31に軸方向への伸びが生ずるが、異方性を有する材料の圧延方向を筒体31の周方向としていることにより、筒体31の軸方向の伸び及びその誤差は非常に小さくなる。
【0034】
第2実施形態の自動車用浄化器具、或いは筒体31の製造方法は、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体31により、筒体31の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。また、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体31で板厚を増加することが可能となり、これにより保持材33の面圧を高められ、保持材33でより確実に触媒担体32を保持することができる。
【0035】
〔第3実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法〕
次に、本発明の第3実施形態の自動車用浄化器具及びその筒体の製造方法について説明する。図6(a)は第3実施形態の自動車用浄化器具の正面図、(b)はその縦断面図である。
【0036】
第3実施形態の自動車用浄化器具は、自動車の排気系に設けられる触媒コンバータ40であり、触媒コンバータ40は、図6に示すように、所定部である軸方向の全体に亘って縮径された縮径部411を有する筒体41と、筒体41内に収容して定置される浄化体である触媒担体42と、触媒担体42の外周に巻かれて周設され、筒体41内で触媒担体42を保持する保持材43と、筒体41の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられる端部材45とを備える。
【0037】
筒体41は図示例では円筒形であり、母材加工時の圧延で異方性を有するステンレス等を材料として丸めるように曲げ成形し、図示省略する軸方向に延びる溶接部で溶接して形成されている。そして、筒体41は、異方性を有する母材の圧延方向(板目方向)が周方向になるように形成されている。また、筒体41或いはその全体に亘る縮径部411は、後述する触媒担体42及び保持材43の構造体を筒体41内に内装した状態で縮径して形成されているものであり、前記構造体の位置ずれを防止する機能を有する。
【0038】
触媒担体42は、例えば担持本体で触媒材料を担持した円柱形であり、触媒材料は、上述した第1実施形態の触媒担体12と同様な材料からなる。
【0039】
保持材43は、第1実施形態の保持材13と同様な特性を有するマットであり、触媒担体42の外周に巻きつけられる。触媒担体42及びこれに巻きつけられた保持材43の構造体は、その状態で筒体41内に挿入して内装される。
【0040】
端部材45は、略円錐形のコーン部材であり、例えば筒体41側に向かって漸次拡径する略截頭円錐形の錘状部451と、錘状部451の筒体41側の端部に外側に突出形成されているフランジ452と、フランジ452の外側縁から筒体41側に向かって形成されている筒状嵌合部453とから構成される。排気ガスの入口側と出口側の端部材45、45は、筒状嵌合部453を筒体41の端部にそれぞれ外嵌し、溶接して接合されている。尚、端部材45の形状は適宜であり、例えば略楕円形、或いは略円錐形や略楕円形で偏芯/偏角した形状等とすることも可能である。
【0041】
ここで、上記筒体41の製造方法及び筒体41を用いる触媒コンバータ40の製造方法の例について説明する。第3実施形態の筒体41は、第1実施形態と同一の板材28で形成され、第1実施形態と同様に、板材28を丸めるようにして曲げ成形し、軸方向に延びる溶接部で溶接して得られる。この際、圧延により異方性を有する材料の圧延方向が筒体41の周方向になるようにして曲げ成形を行い、筒体41を形成する。
【0042】
次いで、筒体41内に、触媒担体42及びこれに巻きつけられた保持材43から構成される構造体を挿入し、筒体41の所定位置である略中央位置等の適宜の位置に配置した後に、筒体41に対して縮径加工を施して縮径部411を形成する。前記縮径加工は、例えば割型による縮径、スピニング加工による縮径、或いは縮径後の形状を有する金型に押し込むことによる縮径(スウェージング)等で行うことが可能である。この縮径加工の際に、筒体41に軸方向への伸びが生ずるが、異方性を有する材料の圧延方向を筒体41の周方向としていることにより、筒体41の軸方向の伸び及びその誤差は非常に小さくなる。
【0043】
その後、筒体41の軸方向の両側端部において、筒状嵌合部453を筒体41の端部にそれぞれ外嵌することにより端部材45・45を設け、端部材45・45を筒体41にそれぞれ溶接して触媒コンバータ40が得られる。
【0044】
第3実施形態の自動車用浄化器具、或いは筒体41の製造方法は、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体41により、筒体41の縮径加工時の伸びによる誤差を小さくし、自動車用浄化器具前後の設計の自由度や容易性を確保することができる。また、異方性を有する材料母材21の圧延方向が周方向である筒体41で板厚を増加することが可能となり、これにより保持材43の面圧を高められ、保持材43でより確実に触媒担体42を保持することができる。また、筒体41の軸方向の長さを短過ぎず長過ぎない適切な範囲に調製することが可能であり、筒体41の軸方向端部に端部材45を確実に取り付けることができ、筒体41内の触媒担体42の割れや欠けを防止できる。また、筒体41の軸方向の両側端部にそれぞれメッシュリングを設けないことにより、触媒コンバータ40の軽量化を図ることができると共に、触媒コンバータ40の部品コストを低減できる。
【0045】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0046】
例えば上記実施形態における自動車用浄化器具は、浄化体を触媒担体とする触媒コンバータとしたが、本発明の自動車用浄化器具には適宜のものが含まれ、例えば浄化体をフィルターとする黒煙除去器具(DPF;Diesel Particulate Filter)等としてもよい。また、上記実施形態における筒体は、円筒形或いは端部寄りを縮径した円筒形としたが、本発明における筒体はこれ以外にも、例えば円筒形以外の四角筒、六角筒など断面視多角形の筒体、断面視楕円形である筒体など適宜である。また、浄化体或いは触媒担体の形状も円柱形以外にも適宜であり、例えば四角柱、六角柱など断面視多角形、或いは断面視楕円形等とすることが可能である。
【0047】
また、上記各実施形態など本発明の自動車用浄化器具を製造する際には、筒体11等の中に浄化体である触媒担体12等を挿入した後に縮径する工程のほか、例えば筒体11等を縮径してから浄化体である触媒担体12を挿入する工程など適宜である。また、縮径の方式は、割型で縮径する構成、1つの型で縮径する構成、スピニング加工で縮径する構成、ハイドロフォーミング成形で縮径する構成、プレス加工で縮径する構成など適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば自動車の排気系に設けられる自動車用浄化器具として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10、30、40…触媒コンバータ 11、31、41…筒体 111、311、411…縮径部 12、32、42…触媒担体 13、33、43…保持材 14…メッシュリング 141…側部 15、45…端部材 151、451…錘状部 152、452…フランジ 153、453…筒状嵌合部 21…材料母材 22…圧延ロール 23、24…ロール 25…スリッター 26…レベルローラー 27…切断刃 28…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部が縮径される筒体と、前記筒体内に収容して定置される浄化体とを備える自動車用浄化器具の筒体の製造方法であって、
前記筒体を、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして形成することを特徴とする自動車用浄化器具の筒体の製造方法。
【請求項2】
所定部が縮径される筒体と、
前記筒体内に収容して定置される浄化体とを備え、
前記筒体が、異方性を有する母材の圧延方向が周方向になるようにして形成されていることを特徴とする自動車用浄化器具。
【請求項3】
前記筒体の端部若しくは側面の少なくとも一箇所以上に設けられ、前記筒体内で前記浄化体を保持する保持材を備えることを特徴とする請求項2記載の自動車用浄化器具。
【請求項4】
前記筒体の端部に設けられる端部材と、前記浄化体の少なくとも一方の端部に設けられるメッシュリングとを備え、前記メッシュリングが前記端部材で圧縮されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車用浄化器具。
【請求項5】
前記筒体の端部寄りの部分がテーパ状に縮径される、若しくは前記筒体の端部に端部材が設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車用浄化器具。
【請求項6】
請求項2〜5の何れかに記載の自動車用浄化器具を備えることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185114(P2011−185114A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49040(P2010−49040)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】