説明

自動車用温調システム

【課題】簡易な構成で暖房能力を向上させることが可能な自動車用温調システムの提供。
【解決手段】自動車用温調システム10は、主冷媒回路13と、電装品冷却用流路15と、を備える。主冷媒回路13は、圧縮機80と、四路切替弁81と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82と、車内を空調するための空調用熱交換器87と、空調用制御弁83と、を有する。電装品冷却用流路15は、電装品41を冷却する冷却器42と、冷媒を加熱することが可能なヒータ46と、冷却器41を流れる冷媒を吐出側冷媒配管13cに流すためのポンプ43と、を有する。また、電装品冷却用流路15は、主冷媒回路13において液冷媒の流れる第1冷媒配管13a及び第2冷媒配管13bと、吐出側冷媒配管13cと、を接続する。さらに、ヒータ46は、電装品冷却用流路15と吐出側冷媒配管13cとの接続点Aと、冷却器42と、の間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車用温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車や電気自動車において、空調用冷凍サイクルを利用してモータやインバータ或いはコンバータ等の電装品の冷却を行う自動車用温調システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平11−337193号公報)に開示されている発熱体冷却装置は、主に、圧縮機と、凝縮器と、凝縮器から流出した冷媒を気液二相に分離するレシーバと、レシーバから流出した液冷媒を減圧する膨張弁と、膨張弁に減圧された液冷媒を蒸発させる蒸発器と、を有する冷凍サイクルから構成される空調装置を備えている。また、この冷凍サイクルには、レシーバから流出した液冷媒を、膨張弁、蒸発器及び圧縮機を迂回させて凝縮器の冷媒流入側に導くバイパス通路が設けられている。そして、このバイパス通路には、モータやインバータ等の電装品を冷却するための冷却器が配設されている。この冷凍サイクルでは、凝縮器から流出して膨張弁に流入する前の液冷媒を冷却器に流して電装品を冷却し、冷却器から流出した冷媒を凝縮器の流入側に導くことで、電装品を冷却することによる圧縮機動力の増加を小さくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車内を暖房するにあたり、外気温度が著しく低い時や車内の暖房開始時等のように、通常の車内暖房時よりも高い暖房能力が必要となることがある。このような場合にも対応できるように、自動車用温調システムでは、暖房能力を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成で暖房能力を向上させることが可能な自動車用温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムは、主冷媒回路と、電装品冷却用流路と、を備える。主冷媒回路は、圧縮機と、四路切替弁と、外気用熱交換器と、内気用熱交換器と、膨張機構と、を有する。四路切替弁は、吐出側冷媒配管で圧縮機の吐出部と接続されている。また、四路切替弁は、冷媒の循環方向を切り替え可能である。外気用熱交換器は、外気と熱交換を行うものである。内気用熱交換器は、車内を空調するためのものである。膨張機構は、外気用熱交換器と内気用熱交換器との間に配置されている。電装品冷却用流路は、主冷媒回路において液冷媒の流れる液冷媒配管と、吐出側冷媒配管とを接続する。また、電装品冷却用流路は、冷却器と、加熱手段と、ポンプと、を有する。冷却器は、電装品を冷却するものである。加熱手段は、冷媒を加熱することが可能である。ポンプは、冷却器を流れる冷媒を吐出側冷媒配管に流すためのものである。さらに、加熱手段は、電装品冷却用流路と吐出側冷媒配管との接続点と、冷却器と、の間に配置されている。
【0007】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムでは、冷却器と吐出側冷媒配管との間に加熱手段が設けられている。このため、冷却器において熱交換を行った液冷媒を加熱手段で加熱して蒸発させた後に、吐出側冷媒配管に流すことができる。したがって、圧縮機から吐出されて吐出側冷媒配管を流れる冷媒が、内気用熱交換器に向かって流れるように四路切替弁が切り替えられる車内の暖房時には、電装品からの排熱を受熱した冷媒を、加熱手段によって加熱して、内気用熱交換器に流すことができる。この結果、加熱手段が設けられていない場合と比較して、暖房能力を向上させることができる。
【0008】
これによって、簡易な構成で暖房能力を向上させることができる。
【0009】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムは、第1観点の自動車用温調システムにおいて、実行部を有する制御装置を更に備える。実行部は、通常暖房モードと、通常暖房モードよりも暖房能力の高い高暖房モードと、を実行可能である。実行部は、通常暖房モードにおいて、吐出側冷媒配管を流れる冷媒が内気用熱交換器に流れるように四路切替弁を制御する。さらに、実行部は、通常暖房モードにおいて、冷却器から流出した冷媒が加熱されないように加熱手段を制御する。一方で、実行部は、高暖房モードにおいて、吐出側冷媒配管を流れる冷媒が内気用熱交換器に流れるように四路切替弁を制御する。また、実行部は、高暖房モードにおいて、冷却器から流出した冷媒が加熱されるように加熱手段を制御する。
【0010】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムでは、通常暖房モードでは、冷却器から流出した冷媒が加熱手段によって加熱されないが、高暖房モードでは、冷却器から流出した冷媒が加熱手段によって加熱される。このため、高暖房モードでは、加熱手段によって冷媒が加熱されない通常暖房モードが実行される場合と比較して、暖房能力を向上させることができる。したがって、通常暖房モードを実行しても暖房能力が不足している場合に、高暖房モードを実行することで、暖房能力の不足を補うことができる。
【0011】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムは、第2観点の自動車用温調システムにおいて、実行部は、外気用熱交換器を除霜するデフロストモードを実行可能である。また、実行部は、デフロストモードにおいて、吐出側冷媒配管を流れる冷媒が外気用熱交換器に流れるように四路切替弁を制御する。さらに、実行部は、デフロストモードにおいて、冷却器から流出した冷媒が加熱されるように加熱手段を制御する。この自動車用温調システムでは、デフロストモード実行時には、冷却器において電装品から受熱し、加熱手段によって加熱された冷媒が、外気用熱交換器に流れるため、外気用熱交換器を除霜するための熱源として、電装品の排熱及び加熱手段を利用することができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムは、第3観点の自動車用温調システムにおいて、実行部は、デフロストモードにおいて、ポンプが駆動され、かつ、圧縮機の駆動が停止されるように、ポンプ及び圧縮機の駆動を制御する。この自動車用温調システムでは、デフロストモード実行時には、ポンプが駆動されることによって、電装品からの排熱を受熱し、加熱手段によって加熱された冷媒を、四路切替弁を介して外気用熱交換器に流すことができる。したがって、デフロストモードが実行される場合には、圧縮機を駆動させることがないため、液バック等の圧縮機の信頼性を損なう運転をすることなく、外気用熱交換器の除霜を行うことができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムは、第3観点又は第4観点の自動車用温調システムにおいて、実行部は、デフロストモードにおいて、外気用熱交換器から内気用熱交換器に向かって冷媒が流れないように膨張機構を制御する。このため、デフロストモード実行時には、外気用熱交換器から内気用熱交換器に向かって冷媒が流れないため、内気用熱交換器が蒸発器として機能せず、この結果、車内の冷房が行われないことになる。したがって、外気用熱交換器を除霜しても、車内の温度低下を緩和することができる。
【0014】
本発明の第6観点に係る自動車用温調システムは、第1観点から第5観点のいずれかの自動車用温調システムにおいて、液冷媒配管は、第1冷媒配管と、第2冷媒配管と、を含む。第1冷媒配管は、外気用熱交換器と、膨張機構と、を接続する。第2冷媒配管は、膨張機構と、内気用熱交換器と、を接続する。電装品冷却用流路は、第1電装品冷却用流路と、第2電装品冷却用流路と、を含む。第1電装品冷却用流路は、第1冷媒配管から分岐している。第2電装品冷却用流路は、第2冷媒配管から分岐している。また、第1電装品冷却用流路は、冷却器側から第1冷媒配管側への冷媒の流れを阻止する第1逆止弁を有する。さらに、第2電装品冷却用流路は、冷却器側から第2冷媒配管側への冷媒の流れを阻止する第2逆止弁を有する。
【0015】
本発明の第6観点に係る自動車用温調システムでは、電装品冷却用流路が、第1逆止弁及び第2逆止弁を有しているため、冷却器において熱交換を行わせるための冷媒が、液冷媒配管に流れるおそれを低減することができる。したがって、車内の冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても、冷却器に高圧液冷媒を流すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムでは、簡易な構成で暖房能力を向上させることができる。
【0017】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムでは、高暖房モードを実行することで、暖房能力の不足を補うことができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムでは、外気用熱交換器を除霜するための熱源として、電装品の排熱及び加熱手段を利用することができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムでは、液バック等の圧縮機の信頼性を損なう運転をすることなく、外気用熱交換器の除霜を行うことができる。
【0020】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムでは、外気用熱交換器を除霜しても、車内の温度低下を緩和することができる。
【0021】
本発明の第6観点に係る自動車用温調システムでは、車内の冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても、冷却器に高圧液冷媒を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車用温調システムの概略図。
【図2】自動車用温調システムの備える制御装置の制御ブロック図。
【図3】変形例Aに係る冷媒回路図
【図4】変形例Bに係る冷媒回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る自動車用温調システム10について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0024】
(1)全体構成
自動車用温調システム10は、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリが走行用の電力源である車に用いられる温調システムであって、温調装置11と、制御装置60とを備えている。温調装置11は、単一の冷媒を用いて車内の空調、及び、バッテリ以外の電装品41の冷却を行うことが可能な1つの冷媒回路12を備えている。制御装置60は、温調装置11の備える各種機器を制御するための装置である。この自動車用温調システム10では、制御装置60が温調装置11の備える各種機器を制御することで、車内の空調(冷房及び暖房等)、及び、バッテリ以外の電装品41の冷却が行われる。
【0025】
(2)詳細構成
(2−1)温調装置の構成
温調装置11の備える冷媒回路12は、蒸気圧縮式の冷媒回路であって、図1に示すように、主に、圧縮機80、四路切替弁81、外気用熱交換器82、空調用熱交換器87及び冷却器42を含む。また、冷媒回路12は、主冷媒回路13と、電装品冷却用流路15と、を有する。主冷媒回路13には、空調ユニットに含まれる空調用熱交換器87が接続されている。電装品冷却用流路15は、主冷媒回路13から分岐しており、冷却ユニット40に含まれる冷却器42が接続されている。
【0026】
(2−1−1)主冷媒回路の構成
主冷媒回路13には、図1に示すように、圧縮機80と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82と、空調用制御弁83と、車内を空調するための空調用熱交換器87と、が順に接続されている。
【0027】
圧縮機80は、回転数が可変なインバータ式の圧縮機であって、吸入したガス冷媒を圧縮するためのものである。
【0028】
空調用制御弁83は、外気用熱交換器82と空調用熱交換器87との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、空調用熱交換器87における熱交換量を制御することができる。
【0029】
外気用熱交換器82は、外気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、外ファン84が外気用熱交換器82に接触する空気流れを生成することで、外気と外気用熱交換器82を流れる冷媒とを熱交換させることができる。
【0030】
空調用熱交換器87は、車内の空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、内ファン88が空調用熱交換器87に接触する空気流れを生成することで、車内の空気と空調用熱交換器87を流れる冷媒とを熱交換させることができる。なお、空調用熱交換器87は、内ファン88と共に空調ユニットを構成している。
【0031】
また、主冷媒回路13に接続されている四路切替弁81は、主冷媒回路13を流れる冷媒の流路を変更する切替機構を構成している。四路切替弁81は、圧縮機80の吐出側と外気用熱交換器82と接続し、かつ、空調用熱交換器87と圧縮機80の吸入側とを接続する第1状態(図1の実線参照)と、圧縮機80の吐出側と空調用熱交換器87とを接続し、かつ、外気用熱交換器82と圧縮機80の吸入側とを接続する第2状態(図1の破線参照)とに切り替わることで、主冷媒回路13における冷媒の循環方向が可逆に構成されている。
【0032】
なお、以下では、説明の便宜上、主冷媒回路13に含まれる冷媒配管のうち、外気用熱交換器82と空調用制御弁83とを接続する冷媒配管を第1冷媒配管13aといい、空調用熱交換器87と空調用制御弁83とを接続する冷媒配管を第2冷媒配管13bという。また、第1冷媒配管13aには、車内暖房時に蒸発器として機能する外気用熱交換器82の入口側の冷媒の温度を検出するためのデアイサ温度センサ90が設けられている。
【0033】
(2−1−2)冷却ユニットの構成
冷却ユニット40は、冷却器42と、ポンプ43と、を有している。また、冷却ユニット40は、電装品冷却用流路15によって主冷媒回路13に接続されている。
【0034】
電装品冷却用流路15は、図1に示すように、圧縮機80から吐出され凝縮器として機能する熱交換器(ここでは、冷房時には、外気用熱交換器82であり、暖房時には、空調用熱交換器87である)で凝縮した高圧液冷媒の流れる冷媒配管(第1冷媒配管13a及び第2冷媒配管13b)に接続されている。また、電装品冷却用流路15は、圧縮機80の吐出部と四路切替弁81とを接続する吐出側冷媒配管13cに接続されている。より詳しくは、電装品冷却用流路15は、第1冷媒配管13aを流れる冷媒を冷却器42に流すための第1流路15bと、第2冷媒配管13bを流れる冷媒を冷却器42に流すための第2流路15aと、を含む。第1流路15bは、一端が第1冷媒配管13aに接続されており、他端が第2流路15aに接続されている。第2流路15aは、一端が第2冷媒配管13bに接続されており、他端が吐出側冷媒配管13cに接続されている。
【0035】
冷却器42は、電装品41(モータやインバータ或いはコンバータ等)を冷却するための熱交換器であって、内部に冷媒が流れる冷媒通路を有している。冷却器42では、冷媒通路を流れる高圧液冷媒と電装品41との間で熱交換が行われることで、電装品41の冷却を行う。なお、冷却器42の具体的構成は、冷却する電装品41の形状等に応じた形態に設計される。また、本実施形態における電装品41には、バッテリは含まれないものとする。
【0036】
ポンプ43は、出力が可変なインバータ式のポンプであって、吸い込んだ冷媒を昇圧して吐出するように構成されている。なお、本実施形態では、ポンプ43は、吸い込んだ冷媒を昇圧して吐出するように構成されたポンプ(冷媒ポンプ)であるが、冷却器42に流れる冷媒の流量を調整可能であって、冷媒を搬送できるものであれば、ポンプ43の構成はこれに限定されない。
【0037】
また、ポンプ43は、図1に示すように、第2流路15aに設けられており、ポンプ43の出力を変更することで冷却器42における熱交換量、すなわち、電装品41の冷却能力を制御することができる。
【0038】
さらに、電装品冷却用流路15には、ヒータ46が設けられている。ヒータ46は、冷媒を加熱すること可能な加熱手段であって、第2流路15aにおいて、電装品冷却用流路15と吐出側冷媒配管13cとの接続点Aと、冷却器42との間に配置されている。このため、ヒータ46は、冷却器42において電装品41と熱交換を行い、冷却器42から流出した冷媒を加熱することができる。
【0039】
また、第1流路15b及び第2流路15aには、主冷媒回路13側から冷却器42側に向かう冷媒の流れのみを許容する第1逆止弁45及び第2逆止弁44が、それぞれ設けられている。第1逆止弁45及び第2逆止弁44が設けられていることで、冷却器42において熱交換を行うための高圧液冷媒が、第1冷媒配管13a及び第2冷媒配管13bに逆流することを阻止することができる。ここで、第2逆止弁44は、図1に示すように、第2流路15aにおいて、第2流路15aの第2冷媒配管13bとの接続点とポンプ43との間に配置されている。
【0040】
なお、本実施形態では、第1流路15bの入口側端部が第1冷媒配管13aに接続されており、第2流路15aの入口側端部が第2冷媒配管13bに接続されているが、冷却器42に高圧液冷媒が流入すればよいため、第1流路15b及び第2流路15aの冷媒入口側が、外気用熱交換器82及び空調用熱交換器87の中間あたりに接続されていてもよい。
【0041】
また、電装品冷却用流路15には、内部を流れる冷媒の温度を検出するための第1温度センサ91及び第2温度センサ92が設けられている。第1温度センサ91は、ポンプ43の吐出側に設けられている。より詳しくは、第1温度センサ91は、ポンプ43と冷却器42とを接続する配管15aa近傍に設けられている。一方、第2温度センサ92は、電装品冷却用流路15と吐出側冷媒配管13cとの接続点Aと、ヒータ46との間に、具体的には、吐出側冷媒配管13cとヒータ46とを接続する配管15ab近傍に設けられている。
【0042】
さらに、本実施形態では、発熱体である電装品41は、電装品41からの外部への放熱が抑制されるように、例えばケーシングに収納されるなどして、外気と断熱されている。しかしながら、電装品41周りの構成は、これに限定されず、電装品41が外気と断熱されていなくてもよい。
【0043】
(2−2)制御装置の構成
制御装置60は、図2に示すように、温調装置11の有する各種機器と接続されており、車内の空調及び電装品41の冷却等を行うために各種機器の動作制御を行う。より詳しくは、制御装置60は、圧縮機80の回転数、及び、空調用制御弁83の弁開度や内ファン88の回転数を調整する制御を行うことで空調用熱交換器87における熱交換量を制御したり、ポンプ43の出力を調整する制御を行うことで冷却器42における熱交換量を制御したりする。
【0044】
また、制御装置60は、各種機器を制御することで記憶部62に記憶されている各種モードを実行する実行部61を有している。各種モードには、冷房モード、通常暖房モード、高暖房モード、及び、デフロストモードが含まれる。なお、冷房モードは、車内冷房時に実行されるモードであり、通常暖房モード及び高暖房モードは、車内暖房時に実行されるモードである。
【0045】
冷房モードは、ユーザからの車内冷房実行指令がある場合に実行されるモードである。冷房モードでは、車内の冷房、及び、電装品41の冷却が行われるように各種機器が制御される。
【0046】
通常暖房モードは、ユーザからの車内暖房実行指令がある場合に実行されるモードである。通常暖房モードでは、車内の暖房、及び、電装品41の冷却が行われるように各種機器が制御される。なお、通常暖房モードでは、ポンプ43の出力が、第1温度センサ91によって検出される第1温度値と、第2温度センサ92によって検出される第2温度値との差(過熱度)が所定値以上となるように制御される。
【0047】
高暖房モードは、ユーザからの車内暖房実行指令がある場合に実行されるモードであって、通常暖房モードよりも暖房能力の高いモードである。高暖房モードでは、車内の暖房、及び、電装品41の冷却が行われるように各種機器が制御される。なお、高暖房モードは、通常暖房モードでは暖房能力が不足していると判断された場合に、具体的には、通常暖房モード実行時に、圧縮機80が最大回転数で駆動しても車内の暖房能力が不足している場合に自動的に実行される。
【0048】
デフロストモードは、デアイサ温度センサ90によって検出される温度値が、所定値以下、或いは、外気温度が低い場合は、外気温度との差が所定値以下となった場合に自動的に実行されるモードである。デフロストモードでは、外気用熱交換器82の除霜、及び、電装品41の冷却が行われ、車内の空調(冷房及び暖房等)が行われないように各種機器が制御される。なお、本実施形態では、デフロストモードは、デアイサ温度センサ90によって検出される温度値が所定値(例えば、10℃)以上となった時に終了するものとする。
【0049】
(3)各モード実行時における各種機器の制御動作
次に、実行部61による冷房モード、通常暖房モード、高暖房モード及びデフロストモード実行時における各種機器の制御動作について説明する。
【0050】
(3−1)冷房モード
冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられる。また、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力に応じて調整される。さらに、ポンプ43の出力は、第1温度センサ91及び第2温度センサ92の検出結果に基づいて制御される。なお、冷房モードでは、ヒータ46が駆動しないように制御されている。
【0051】
圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外ファン84により送風される外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、第1冷媒配管13aを流れて空調用制御弁83に至り、或いは、第1冷媒配管13aの途中で第1流路15bに流れる。
【0052】
空調用制御弁83に至った高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、空調用熱交換器87に流入する。空調用熱交換器87では、流入した液冷媒が内ファン88により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0053】
一方で、第1冷媒配管13aの途中で第1流路15bに流れた高圧液冷媒は、ポンプ43によって昇圧された後に、冷却器42に流れる。そして、冷却器42に流入した高圧液冷媒は、電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。また、冷却器42から流出した冷媒は、吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒に合流する。
【0054】
このように冷媒回路12内を冷媒が流れて、空調用熱交換器87が蒸発器として機能することで、車内の冷房が行われる。また、冷却器42に高圧液冷媒が流れることで、電装品41を冷却することができる。さらに、ポンプ43で昇圧され、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入して蒸発した冷媒は、圧縮機80の吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒と合流する。このように、ポンプ43から吐出された冷媒は、冷却器42、及び、ヒータ46を流れ、圧縮機80での圧縮を伴わないで、四路切替弁81、外気用熱交換器82を介して、ポンプ43に吸入されるため、圧縮機80の動力増加がなく、高効率に運転できる。
【0055】
(3−2)通常暖房モード
通常暖房モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられる。また、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の暖房能力に応じて調整される。さらに、ポンプ43の出力は、第1温度センサ91及び第2温度センサ92の検出結果に基づいて制御される。なお、通常暖房モードでは、ヒータ46が駆動しないように制御されている。
【0056】
圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、空調用熱交換器87で内ファン88により送風される車内空気と熱交換を行い、高圧ガス冷媒が凝縮するとともに空気を加熱し、車内の暖房を行う。また、空調用熱交換器87から流出した高圧液冷媒は、第2冷媒配管13bを流れて空調用制御弁83に至り、或いは、第2冷媒配管13bの途中で電装品冷却用流路15の第2流路15aに流れる。
【0057】
空調用制御弁83に至った高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、外気用熱交換器82に流入する。外気用熱交換器82では、流入した液冷媒が、外ファン84により送風される外気と熱交換を行うことで蒸発する。そして、蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0058】
一方で、第2冷媒配管13bの途中で第2流路15aに流れた高圧液冷媒は、ポンプ43によって昇圧された後に、冷却器42に流れる。そして、冷却器42に流入した高圧液冷媒は、電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。また、冷却器42から流出した冷媒は、吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒に合流する。
【0059】
このように冷媒回路12内を冷媒が流れて、空調用熱交換器87が凝縮器として機能することで、車内の暖房が行われる。また、冷却器42に高圧液冷媒が流れることで、電装品41を冷却することができる。さらに、ポンプ43で昇圧され、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入して蒸発した冷媒は、圧縮機80の吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒と合流する。このように、圧縮機80による圧縮を伴わないポンプ43の動力のみで、冷却器42から流出した冷媒を吐出側冷媒配管13cに流すことができるため、圧縮機80の動力増加を伴わずに、電装品41の排熱を車内暖房に利用することができる。
【0060】
(3−3)高暖房モード
上述のように、高暖房モードは、通常暖房モードにおいて圧縮機80の回転数が最大回転数となっても車内の暖房能力が不足する場合に実行されるモードである。
【0061】
高暖房モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられる。また、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の暖房能力に応じて調整される。
【0062】
一方で、高暖房モードでは、通常暖房モードで不足している暖房能力を補うために、ポンプ43の回転数が上がるように調整される。また、ヒータ46は、第1温度センサ91及び第2温度センサ92の検出結果に基づいて、過熱度が所定値となるように制御される。なお、ポンプ43の回転数が最大回転数となっても車内の暖房能力が不足する場合には、ヒータ46は、過熱度が通常暖房モード実行時よりも高い値となるように制御される。
【0063】
圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、空調用熱交換器87で内ファン88により送風される車内空気と熱交換を行い、高圧ガス冷媒が凝縮するとともに空気を加熱し、車内の暖房を行う。また、空調用熱交換器87から流出した高圧液冷媒は、第2冷媒配管13bを流れて空調用制御弁83に至り、或いは、第2冷媒配管13bの途中で電装品冷却用流路15の第2流路15aに流れる。
【0064】
空調用制御弁83に至った高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、外気用熱交換器82に流入する。外気用熱交換器82では、流入した液冷媒が、外ファン84により送風される外気と熱交換を行うことで蒸発する。そして、蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0065】
一方で、第2冷媒配管13bの途中で第2流路15aに流れた高圧液冷媒は、ポンプ43によって昇圧された後に、冷却器42に流れる。そして、冷却器42に流入した高圧液冷媒は、電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。また、冷却器42から流出した冷媒は、ヒータ46によって加熱された後に、吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒に合流する。
【0066】
このように冷媒回路12内を冷媒が流れて、空調用熱交換器87が凝縮器として機能することで、車内の暖房が行われる。また、冷却器42に高圧液冷媒が流れることで、電装品41を冷却することができる。さらに、ポンプ43で昇圧され、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入し、かつ、ヒータ46によって加熱されて蒸発した冷媒が吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒と合流するため、圧縮機80の回転数が最大回転数となっても、暖房能力の不足分を補うことができる。
【0067】
(3−4)デフロストモード
デフロストモードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられる。また、空調用制御弁83の弁開度は、全閉となるように調整される。さらに、圧縮機80は駆動されないように制御される。一方で、ポンプ43の出力は、ポンプ43の吐出側の圧力が所定値(例えば、20℃の飽和圧力)となるように制御される。また、ヒータ46は、第2温度センサ92の検出結果が所定値となるように制御される。
【0068】
ポンプ43から吐出した液冷媒は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却して蒸発する。そして、冷却器42から流出した冷媒は、ヒータ46によって加熱され蒸発した後に、四路切替弁81を介して外気用熱交換器82に流入する。そして、外気用熱交換器82に流入した冷媒は、外気用熱交換器82において凝縮して液冷媒となった後に、第1冷媒配管13aの途中で第1流路15bに流れてポンプ43に吸入される。
【0069】
このように冷却器42で電装品41からの排熱を吸入し、ヒータ46に加熱されて蒸発した冷媒が外気用熱交換器82に流れることで、外気用熱交換器82の除霜を行うことができる。また、空調用制御弁83の弁開度が全閉となるように調整されていることで、空調用熱交換器87に向かって冷媒が流れないため、空調用熱交換器87が蒸発器として機能して車内が冷房されないことになる。このため、外気用熱交換器82の除霜を行うために車内が冷房される場合と比較して、車内の温度低下を緩和することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、デフロストモードでは、空調用制御弁83の弁開度が全閉となるように調整されており、車内の空調は行われないが、これに限定されず、車内の除湿が必要である場合には、上記のポンプ43、ヒータ46及び四路切替弁81の制御に加えて、圧縮機80の回転数を必要除湿量に応じて制御すると共に、空調用制御弁83の弁開度を圧縮機80の吸入過熱度が所定値となるように調整する制御を行ってもよい。これにより、外気用熱交換器82の除霜に加えて、車内を除湿することができる。
【0071】
(4)特徴
(4−1)
従来より、空調用冷媒回路内を流れる冷媒を利用して電装品の冷却を行う自動車用温調システムが提案されている。このような自動車用温調システムにおいて、暖房能力を向上させるために、電装品からの排熱を利用することが考えられる。一方で、車内を暖房するにあたり、外気温度が著しく低い時や車内の暖房開始時等のように、通常の車内暖房時よりも高い暖房能力が必要となることがある。
【0072】
そこで、本実施形態では、ヒータ46が、電装品冷却用流路15において、電装品冷却用流路15と吐出側冷媒配管13cとの接続点Aと、冷却器42との間に配置されている。このため、冷却器42において電装品41から受熱した冷媒をヒータ46で加熱して蒸発させた後に、吐出側冷媒配管13cに流すことができる。したがって、車内暖房時には、電装品41からの排熱を吸熱した冷媒を、ヒータ46で加熱した後に、四路切替弁81を介して空調用熱交換器87に流すことができる。この結果、ヒータが設けられていない場合と比較して、暖房能力を向上させることができる。
【0073】
これによって、簡易な構成で暖房能力を向上させることができている。
【0074】
また、本実施形態では、ヒータ46が冷媒回路12を流れる冷媒を直接で加熱する構成であるため、例えば、空調用熱交換器にヒータを設けて暖房能力を向上させる場合と比較して、簡易な構成で効率的に暖房能力を向上させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、電装品冷却用流路15を流れる冷媒が吐出側冷媒配管13cを流れる冷媒と合流するように電装品冷却用流路15と吐出側冷媒配管13cとが接続されているため、例えば、電装品冷却用流路が圧縮機の吸入側冷媒配管に接続されている場合と比較して、圧縮機80の動力の増加を抑制することができる。
【0076】
(4−2)
本実施形態では、通常暖房モードでは、ヒータ46が駆動されないが、高暖房モードでは、ヒータ46が駆動されて冷却器42から流出した冷媒が加熱される。このため、高暖房モードが実行される場合には、ヒータ46によって冷媒が加熱されない通常暖房モードが実行される場合と比較して、暖房能力を向上させることができる。したがって、通常暖房モードを実行しても暖房能力が不足している場合に、高暖房モードを実行することで、通常暖房モードにおける暖房能力の不足分を補うことができる。この結果、高暖房モードを実行することで、外気温度が著しく低い時や暖房開始時等の即暖性を向上させることができている。
【0077】
(4−3)
本実施形態では、デフロストモード実行時には、電装品41からの排熱を吸熱し、ヒータ46に加熱されて蒸発した冷媒を、外気用熱交換器82に流すことができる。このため、外気用熱交換器82の除霜を行うための熱源として、電装品41の排熱及びヒータ46を利用することができている。
【0078】
(4−4)
本実施形態では、デフロストモード実行時には、ポンプ43が駆動されることで、電装品41からの排熱を吸熱しヒータ46に加熱されて蒸発した冷媒を、外気用熱交換器82に流すことができる。このため、圧縮機80が駆動しなくても、外気用熱交換器82の除霜を行うことができる。これにより、液バック等の圧縮機80の信頼性を損なう運転を回避することができている。
【0079】
(4−5)
外気用熱交換器の除霜を行う方法としては、車内冷房時と同様に圧縮機から吐出された冷媒が外気用熱交換器に向かって流れるように四路切替弁を切り替えて運転する方法や、ホットガスバイパスを設ける方法が提案されている。しかしながら、圧縮機から吐出された冷媒が外気用熱交換器に向かって流れるように四路切替弁を切り替えて外気用熱交換器の除霜を行う場合には、車内の温熱も利用されるため、コールドドラフトが発生したり車内温度が低下したりするという問題がある。また、ホットガスバイパスを設けて外気用熱交換器の除霜を行う場合には、圧縮機の入熱分のみで除霜を行う必要があるため、除霜が終了するまでに相当の時間が必要となる。
【0080】
そこで、本実施形態では、デフロストモード実行時には、外気用熱交換器82から空調用熱交換器87に向かって冷媒が流れないように、空調用制御弁83の弁開度が全閉に調整されている。このため、空調用熱交換器87が蒸発器として機能して車内の冷媒が行われるということがなく、コールドドラフトが発生したり車内温度が低下したりすることがない。この結果、空調対象者に不快感を与えにくくすることができ、車内の温度低下を緩和することができる。
【0081】
また、本実施形態では、ヒータ46の出力に応じて冷媒温度を上昇させることができるため、ヒータ46の出力を上げることで、外気用熱交換器82の除霜を短時間で行うことができる。
【0082】
(4−6)
本実施形態では、第1流路15b及び第2流路15aには、主冷媒回路13側から冷却器42側に向かう冷媒の流れのみを許容する第1逆止弁45及び第2逆止弁44が、それぞれ設けられている。このため、冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても冷却器42に対する冷媒の流入方向が同じになるように4つの逆止弁を有するブリッジ回路が設けられる場合と比較して、簡易な構成で、冷却器42において熱交換を行うための高圧液冷媒が、主冷媒回路13に逆流しないようにすることができる。
【0083】
これによって、簡易な構成で、車内暖房時及び車内冷房時のいずれの場合であっても、冷却器42に高圧液冷媒を流すことができている。
【0084】
また、本実施形態では、電装品41が高圧液冷媒で冷却されているため、電装品41が結露するおそれを低減することができている。
【0085】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態では、空調用熱交換器87は、車内に1つだけ設けられており、車内暖房時には凝縮器として機能している。
【0086】
これに代えて、車内暖房時に車内の除湿が可能なように、空調用熱交換器が複数の熱交換器を有していてもよい。
【0087】
例えば、図3に示すように、空調用熱交換器187が、第1熱交換器185と、膨張機構である制御弁187aを介して第1熱交換器185と接続される第2熱交換器186と、を有している場合について説明する。なお、本変形例の自動車用温調システムでは、冷媒回路112の構成として、図3に示すように、主冷媒回路113に接続されている空調用熱交換器187が第1熱交換器185と第2熱交換器186とから構成されており、電装品冷却用流路115の第2流路115aの一端が、第1熱交換器185と制御弁187aとを接続する冷媒配管113dに接続されていること以外は、上記実施形態と同様の構成である。また、制御弁187aは、第1熱交換器185と第2熱交換器186との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、その弁開度が調整されることで、第2熱交換器186を凝縮器或いは蒸発器として機能させることができる。なお、制御弁187aの弁開度は、車内冷房時には、全開となるように調整され、車内暖房時には、車内の除湿量に応じて調整される。また、図3では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態の機器と同様の符号を付している。
【0088】
空調用熱交換器187が、第1熱交換器185と、制御弁187aを介して第1熱交換器185と接続される第2熱交換器186とを有していることで、第1熱交換器185の機能とは関係なく、第2熱交換器186を凝縮器又は蒸発器として機能させることができる。このため、暖房時に制御弁187aの弁開度が調整される制御が行われて、第1熱交換器185を凝縮器として機能させ、第2熱交換器186を蒸発器として機能させることで、車内の暖房除湿を実行することができる。このため、車窓が曇るおそれを低減することができる。
【0089】
また、暖房時に制御弁187aの弁開度が調整されることで、暖房能力を向上させたり、除湿能力を向上させたりすることができる。
【0090】
このように、この自動車用温調システムでは、制御弁187aの弁開度を調整する制御が行われることで、車内の温度だけでなく車内の湿度も調整することができる。すなわち、この自動車用温調システムでは、単一の冷媒を用いて、車内の温湿度、及び、電装品41の冷却温度を異なる温度(温湿度)域に設定することができる。
【0091】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、冷媒回路12において、電装品41の冷却のみが行われている。
【0092】
これに加えて、冷媒回路において、走行等の電力源であるバッテリの冷却が行われてもよい。例えば、図4に示すように、冷媒回路212がバッテリ231を温調するためのバッテリ用熱交換器232を有していてもよい。なお、本変形例の自動車用温調システムでは、冷媒回路212の構成として、図4に示すように、主冷媒回路213に接続されている空調用熱交換器287が第1熱交換器285と第2熱交換器286とから構成されており、電装品冷却用流路215の第2流路215aの一端が、第1熱交換器285と制御弁287aとを接続する冷媒配管213dに接続されており、冷媒回路212がバッテリ用熱交換器232を含むバッテリ温調ユニット230を有していること以外は、上記実施形態と同様の構成である。また、制御弁287aは、第1熱交換器285と第2熱交換器286との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、その弁開度が調整されることで、第2熱交換器286を凝縮器或いは蒸発器として機能させることができる。なお、図4では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態の機器と同様の符号を付している。
【0093】
バッテリ温調ユニット230は、バッテリ用熱交換器232と、第1膨張弁233と、第2膨張弁234と、を有する。また、バッテリ温調ユニット230は、バッテリ温調用流路214によって主冷媒回路213に接続されている。
【0094】
バッテリ温調用流路214は、一端が高圧液冷媒の流れる冷媒配管(一般に、凝縮器として機能する熱交換器の出口側)に接続されており、他端が低圧液冷媒の流れる冷媒配管(一般に蒸発器として機能する熱交換器の入口側)に接続された配管である。なお、本実施形態では、バッテリ温調用流路214は、図4に示すように、空調用制御弁83、第2熱交換器286及び制御弁287aを迂回するように、一端が、外気用熱交換器82と空調用制御弁83とを接続する第1冷媒配管213aに接続されており、他端が第2流路215aを介して冷媒配管213dに接続されている。
【0095】
バッテリ用熱交換器232は、バッテリ231を温調するための冷媒ジャケットであって、内部に冷媒が流れる冷媒通路を有している。バッテリ用熱交換器232において、冷媒通路を流れる冷媒とバッテリ231との間で熱交換が行われることで、バッテリ231が温調されることになる。なお、バッテリ用熱交換器232の具体的構成は、温調するバッテリ231の形状等に応じた形態に設計される。
【0096】
第1膨張弁233及び第2膨張弁234は、バッテリ温調用流路214を流れる冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、主に、バッテリ用熱交換器232における熱交換量を制御する。具体的には、第1膨張弁233及び第2膨張弁234は、図1に示すように、バッテリ用熱交換器232を挟むように配置されている。より詳しくは、第1膨張弁233及び第2膨張弁234は、モータ等により弁開度(すなわち、絞り量)が連続的に制御可能な制御弁であって、バッテリ温調用流路214を流れる高圧液冷媒を任意の中間圧力まで減圧したり、中間圧冷媒(気液二相冷媒)をさらに低圧圧力まで減圧したりする。第1膨張弁233又は第2膨張弁234の弁開度が調整されることで、高圧液冷媒を任意の中間圧力に減圧してバッテリ231の冷却温度を所定の温度範囲(主冷媒回路213を流れる冷媒の凝縮温度から蒸発温度までの間の温度範囲)で自由に調整することができるため、バッテリ231の冷却温度を所望の温度に設定することができる。この結果、バッテリ231の温度を所定温度範囲内で維持することができる。なお、所定温度範囲は、バッテリ231に結露が発生しない温度であってバッテリ231の使用可能な温度範囲であればよく、バッテリ231の放充電に適した温度範囲内であることが好ましい。
【0097】
なお、本実施形態では、発熱体であるバッテリ231は、バッテリ231からの外部への放熱が抑制されるように、例えばケーシングに収納されるなどして、外気と断熱されている。しかしながら、バッテリ231周辺の構成は、これに限定されず、バッテリ231が外気と断熱されていなくてもよい。ただし、バッテリ231の排熱を暖房時に熱源として利用する場合には、バッテリ231は外気と断熱されていることが好ましい。
【0098】
この冷媒回路212では、冷却器42だけでなくバッテリ用熱交換器232が設けられていることで、電装品41の冷却に加えてバッテリ231の温調を行うことができる。また、第1膨張弁233或いは第2膨張弁234の弁開度が調整されることで、バッテリ231の温度を任意の温度範囲内に維持することができる。したがって、バッテリ231の使用可能な温度範囲にバッテリ231を温調することができる。
【0099】
さらに、冷媒回路212を備える自動車用温調システムにおいて、バッテリ231の即暖が必要な場合には、実行部によって即暖モードが実行されてもよい。
【0100】
即暖モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられて、通常暖房時と同様の制御が行われるが、一方で、空調用熱交換器287が凝縮器として機能しないように、内ファン88は駆動されない。また、第1膨張弁233の弁開度は、バッテリ231の温度が所定温度範囲内に入るように調整される。このように即暖モードが実行されることで、バッテリ231を急速に暖めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、簡易な構成で暖房能力を向上させることができるため、空調用冷媒回路を利用して電装品の冷却を行う自動車用温調システムへの適用が有効である。
【符号の説明】
【0102】
10 自動車用温調システム
13 主冷媒回路
13a 第1冷媒配管(液冷媒配管)
13b 第2冷媒配管(液冷媒配管)
13c 吐出側冷媒配管
15 電装品冷却用流路
15a 第2流路(第2電装品冷却用流路)
15b 第1流路(第1電装品冷却用流路)
41 電装品
42 冷却器
43 ポンプ
44 第2逆止弁
45 第1逆止弁
46 ヒータ(加熱手段)
60 制御装置
61 実行部
80 圧縮機
81 四路切替弁
82 外気用熱交換器
83 空調用制御弁(膨張機構)
87 空調用熱交換器(内気用熱交換器)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開平11−337193号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(80)と、吐出側冷媒配管(13c)で前記圧縮機の吐出部と接続されており冷媒の循環方向を切り替え可能な四路切替弁(81)と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器(82)と、車内を空調するための内気用熱交換器(87)と、前記外気用熱交換器と前記内気用熱交換器との間に配置される膨張機構(83)と、を有する主冷媒回路(13)と、
前記主冷媒回路において液冷媒の流れる液冷媒配管(13a,13b)と前記吐出側冷媒配管とを接続しており、電装品(41)を冷却する冷却器(42)と、冷媒を加熱することが可能な加熱手段(46)と、前記冷却器を流れる冷媒を前記吐出側冷媒配管に流すためのポンプ(43)と、を有する電装品冷却用流路(15)と、
を備え、
前記加熱手段は、前記電装品冷却用流路と前記吐出側冷媒配管との接続点(A)と前記冷却器との間に配置されている、
自動車用温調システム(10)。
【請求項2】
通常暖房モードと、前記通常暖房モードよりも暖房能力の高い高暖房モードとを実行可能な実行部(61)を有する制御装置(60)を更に備え、
前記実行部は、
前記通常暖房モードにおいて、前記吐出側冷媒配管を流れる冷媒が前記内気用熱交換器に流れるように前記四路切替弁を制御し、かつ、前記冷却器から流出した冷媒が加熱されないように前記加熱手段を制御し、
前記高暖房モードにおいて、前記吐出側冷媒配管を流れる冷媒が前記内気用熱交換器に流れるように前記四路切替弁を制御し、かつ、前記冷却器から流出した冷媒が加熱されるように前記加熱手段を制御する、
請求項1に記載の自動車用温調システム。
【請求項3】
前記実行部は、
前記外気用熱交換器を除霜するデフロストモードを実行可能であり、
前記デフロストモードにおいて、前記吐出側冷媒配管を流れる冷媒が前記外気用熱交換器に流れるように前記四路切替弁を制御し、かつ、前記冷却器から流出した冷媒が加熱されるように前記加熱手段を制御する、
請求項2に記載の自動車用温調システム。
【請求項4】
前記実行部は、前記デフロストモードにおいて、前記ポンプが駆動され、かつ、前記圧縮機の駆動が停止されるように前記ポンプ及び前記圧縮機を制御する、
請求項3に記載の自動車用温調システム。
【請求項5】
前記実行部は、前記デフロストモードにおいて、前記外気用熱交換器から前記内気用熱交換器に向かって冷媒が流れないように前記膨張機構を制御する、
請求項3又は4に記載の自動車用温調システム。
【請求項6】
前記液冷媒配管は、前記外気用熱交換器と前記膨張機構とを接続する第1冷媒配管(13a)と、前記膨張機構と前記内気用熱交換器とを接続する第2冷媒配管(13b)と、を含み、
前記電装品冷却用流路は、前記第1冷媒配管から分岐している第1電装品冷却用流路(15b)と、前記第2冷媒配管から分岐している第2電装品冷却用流路(15a)と、を含み、
前記第1電装品冷却用流路は、前記冷却器側から前記第1冷媒配管側への冷媒の流れを阻止する第1逆止弁(45)を有し、
前記第2電装品冷却用流路は、前記冷却器側から前記第2冷媒配管側への冷媒の流れを阻止する第2逆止弁(44)を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の自動車用温調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−75629(P2013−75629A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217492(P2011−217492)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】