説明

自動車用計器

【課題】文字板等が単に光るだけでなく、装飾性に優れた自動車用計器を提供する。
【解決手段】計器1の中央部に設けた文字板4と、この文字板4に光を照射する第1の光源17と、前記文字板4の外周を囲む見返し部材14と、前記文字板4上で回動する指針11と、この指針11の回動を指針する内機9とを備える。前記見返し部材14には、前記文字板4の外周端から周方向に間隔を有した複数の透明導光部35を放射状に設け、この透明導光部35に光を入射する第2の光源19を設けて装飾性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピードメータやエンジン回転計等の自動車用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用計器においては、意匠性を向上させる工夫がなされている。図5は、特許文献1に記載された従来の自動車用計器100を示す。
【0003】
図5に示す自動車用計器100においては、配線板111上にケース112が取り付けられ、ケース112上に文字板120が取り付けられている。文字板120の周囲には、文字板を囲むリング部材130が設けられている。リング部材130の周囲には、リング部材130及び文字板120を囲むように立ち上がった見返し部材140が設けられている。文字板120及びリング部材130は透光性樹脂によって形成される一方、見返し部材140は黒色樹脂によって形成されている。又、見返し部材140の下部には、リング状の光ガイド145が設けられている。光ガイド145は見返し部材140の下側で光るものである。
【0004】
文字板120には、文字121が印刷等によって形成されており、リング部材130には、文字121に対応した目盛131が円周上に等間隔となるように形成されている。配線板111の裏側には、内機155が取り付けられており、内機155に指針150が連結されている。指針150は文字板120の中央部に配置されており、内機155の駆動によって文字板120上で回転して自動車の走行スピードを指示する。
【0005】
この自動車計器100においては、配線板111に光源が実装されている。符号160は、文字板120の下側に配置されて文字板120に光を照射する文字板用光源である。又、リング部材130の下側には、リング部材130に光を照射するリング部材用光源161が配置され、光ガイド145の下側には、光ガイドに光を照射する光ガイド用光源162が配置されている。これらの光源160,161,162は、複数のLEDによって形成されている。
【0006】
文字板120、リング部材130及び光ガイド145は、それぞれの光源160,161,162が発光することにより光が照射されるため、光った状態となり、文字板120の文字121,リング部材の目盛131及び見返し部材140の下側が光ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−85984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の自動車用計器100においては、文字板120及びリング部材130が光ることにより視認性を向上させることができるが、文字板120及びリング部材が単に光るだけのため、装飾性に乏しいものとなっている。
【0009】
そこで、本発明は、装飾性に優れた自動車用計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、計器の中央部に設けた文字板と、この文字板に光を照射する第1の光源と、前記文字板の外周を囲む見返し部材と、前記文字板上で回動する指針と、この指針の回動を指針する内機とを備えた自動車用計器であって、前記見返し部材には、前記文字板の外周端から周方向に間隔を有した複数の透明導光部を放射状に設け、この透明導光部に光を入射する第2の光源を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動車用計器であって、前記文字板は、前記計器の中央部から外周側に向けて広がる平板部と、この平板部の外周側で下方に傾斜する傾斜部とを備え、前記平板部の外周面に文字が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の自動車用計器であって、前記透明導光部は、前記平板部の文字に対応して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、第1の光源からの光によって文字板が光る。第2の光源からの光は、見返し部材に形成された透明導光部に達して透明導光部を光らせる。見返し部材は文字板の外周を囲んでいるため、透明導光部は、光っている文字板の周囲をさらに光らせるように作用する。これにより、文字板に視認の注意力が注がれるような装飾性を付与することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、文字が形成された平板部の外周側に下方に傾斜する傾斜部が形成されているため、文字が浮き上がったように視認できる。これにより、文字板に装飾性を向上させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1及び2の発明の効果に加えて、透明導光部が文字板の文字に対応して形成されているため、文字に注意力が注がれ、文字の視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の自動車用計器を示す正面図である。
【図2】一実施形態の自動車用計器の断面図である。
【図3】一実施形態の自動車用計器の一部を切り欠いた斜視図である。
【図4】一実施形態の自動車用計器の全体の斜視図である。
【図5】従来の自動車用計器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態の自動車用計器1の正面図、図2は、その断面図、図3は、一部を切り欠いた斜視図、図4は、全体の斜視図である。
【0018】
この実施形態は、エンジン回転計に適用された自動車用計器1である。自動車用計器1においては、配線板2上にケース3が取り付けられており、ケース3には、文字板4及び見返し部材14が取り付けられている。配線板2は、硬質系基板によって形成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、配線板2の下面には、内機9が取り付けられている。内機9は、配線板2を貫通するように突出した回動軸12を有しており、この回動軸12に指針11が取り付けられている。内機9は、回動軸12を回動させる。そして、回動軸12の回転によって指針11が回動する。指針11は、後述する文字板4の中心部で回動し、この回動によってエンジンの回転数を指示する。
【0020】
ケース3は、遮光性を備えた樹脂により形成されており、配線板2上に固定されている。ケース3は、計器1の中央部(回動軸)を囲む立周壁21と、立周壁21から外方に向かって隣接した状態で形成された第1の収容凹部22、第2の収容凹部23、第3の収容凹部24、第4の収容凹部25とを備えている。これらの収容凹部22,23,24、25は、平面から見てリング状に形成されると共に上面が開口された断面U字形の凹部となっており、下面は配線板2に当接されて支持されている。なお、第1の収容凹部22及び第2の収容凹部23は、第3の収容凹部24及び第4の収容凹部25よりも高くなるように形成されている。
【0021】
文字板4は、円板状となっており、ケース3上に設けられている。文字板4は、立周壁21、第1の収容凹部22、第2の収容凹部23及び第3の収容凹部24を覆った状態でケース3上に固定されている。すなわち、文字板4は、立周壁21、第1の収容凹部22、第2の収容凹部23及び第3の収容凹部24を合わせた径を有した大きさとなっており、最も外側に位置している第4の収容凹部25に対しては文字板4は覆うことがない。
【0022】
文字板4は、計器1の中央部から外周側に向けて円形となって広がる平板部4aと、平板部4aの外周側に連設した傾斜部4bとを一体に有している。平板部4aは、立周壁21、第1の収容凹部22及び第2の収容凹部23を覆っている。傾斜部4bは、平板部4aの外周側から下方に傾斜しており、この傾斜状態で第3の収容凹部24を覆っている。
【0023】
文字板4は、アクリル樹脂等の透光性樹脂により形成されている。文字板4の平板部4aにおける外周側には、図1に示すように、「0」、「1」、「2」等の文字15が印刷、刻印等によって形成されている。文字15は、平板部4aの外周部分に等間隔に形成されており、指針11は、文字15の形成領域を回動する。この実施形態において、指針11は文字板4の平板部4aよりも長くなっており、その先端部分が平板部4aの外方側に延びている。
【0024】
ケース3における第1の収容凹部22、第2の収容凹部23及び第3の収容凹部24には、文字板4に光を照射する第1の光源17が配置されている。第1の光源17は、収容凹部22,23,24に収容されるように配線板2の上面に実装された複数のLEDによって形成されている。そして、第1の光源17を構成するLEDのそれぞれが発光することにより、文字板4に対して裏側から光を出射する。
【0025】
この場合、第1の収容凹部22及び第2の収容凹部23の内部に設けられた第1の光源17が文字板4の平板部4aを照射するため、平板部4aが光り、平板部4aの文字15に対する明るい視認が可能となる。一方、第3の収容凹部24の内部に設けられた第1の光源17は、文字板4の傾斜部4bを照射するため、傾斜部4bが光る。これと共に傾斜部4bが下方に傾斜しているため、傾斜部4bに達した光は、傾斜部4bを透過した後、文字板4の周囲に設けられている見返し部材14に達して見返し部材14を照射する。
【0026】
見返し部材14は、文字板4の周囲で文字板4を囲むようにケース3から立ち上がった平面円形の立体リング形状となっている。見返し部材14は、アクリル樹脂等の透光性樹脂により形成されており、その内側の表面には青色等の所定の着色が施されている。見返し部材14は、下部が肉厚で上方に向かうにつれて徐々に肉薄となる断面四角錐状に形成されている。見返し部材14は、肉厚の底面部分がケース3における第4の収容凹部25を覆っている。この見返し部材14の底面14aには、着色が施されることがなく、底面14aからは光が見返し部材14内に進入可能となっている。
【0027】
第4の収容凹部25の内部には、第2の光源19が配置されている。第2の光源19は、第4の収容凹部25に収容されるように配線板2の上面に実装された複数のLEDによって形成されている。そして、LEDのそれぞれが発光することにより見返し部材14に対して光を出射する。これにより、見返し部材14が照明され、底面14aから見返し部材14の内部に光が進入する。
【0028】
この実施形態において、第1〜第4の収容凹部22,23,24,25に内部には、拡散板34がそれぞれ配置されている。拡散板34は、これらの収容凹部22,23,24,25の上部に嵌め込まれることにより固定されている。このように拡散板34を設けることにより、第1の光源17及び第2の光源19からの光が拡散され、この拡散光が文字板4及び見返し部材14を照明する。
【0029】
見返し部材14には、複数の透明導光部35が形成されている。透明導光部35は、着色が施されることなく見返し部材14の表面を露出させることにより形成されるものであり、光が透過可能な透明となっている。
【0030】
透明導光部35は、文字板4における傾斜部4bの外周端から見返し部材14の高さ方向に沿って立ち上がるように形成されている。また、透明導光部35は、周方向に間隔を有した放射状となって見返し部材14に複数が形成されている。この実施形態において、透明導光部35は、下側が幅広で上方に向かうに従って幅狭となる細い三角形状に形成されている。
【0031】
透明導光部35が光透過可能となっていることにより、底面14aから見返し部材14の内部に進入した第2の光源19からの光は、透明導光部35を光らせる。このため、見返し部材14に対して、透明導光部35の三角形状の光り部分を形成することができる。
【0032】
図1に示すように、放射状に配置された透明導光部35のそれぞれは、文字板4の平板部4aに形成された文字15に対応している。すなわち、透明導光部35は、文字板4のそれぞれ文字15の外側に対応するように形成されている。指針11は、文字板4よりも外側に延びた先端部分が透明導光部35に達するまで延びており、これにより指針11は透明導光部35を指示するようになっている。
【0033】
このような実施形態の自動車用計器1においては、第1の光源17からの光によって文字板4が光り、第2の光源19からの光が見返し部材の透明導光部を光らせる。この透明導光部は、文字板の周囲で光るため、光っている文字板の周囲をさらに光らせるように作用する。このため文字板に視認の注意力が注がれるような装飾性を付与することができる。
【0034】
又、文字板4においては、文字15が形成された平板部の外周側に下方に傾斜する傾斜部が形成されているため、文字が浮き上がったように視認でき、文字板の装飾性を向上させることができる。
【0035】
さらに、透明導光部が文字板の文字に対応して形成されているため、文字に注意力が注がれて文字の視認性が向上する。
【0036】
以上の実施形態では、複数の収容凹部22,23,24,25に配置された光源17,19に対して点灯制御を行うことにより、文字板4、透明導光部35への照明の有無、照明の時差点灯等の点灯制御を行うことができる。これにより、さらに装飾性を向上させることができる。
【0037】
又、複数の透明導光部35に対しては、それぞれの透明導光部35に対して異なった色光での表示を行うことができる。例えば、特定の透明導光部35を他の透明導光部35と異なった色光(例えば、白色光に対して赤色光)で光られることにより、レッドゾーン領域を表示でき、スケールチェンジとしての表示が可能となり、装飾性を向上させることができる。
【0038】
なお、この実施形態では、複数の収容凹部22,23,24,25を区切った独立状態としたが、照明対象が共通な収容凹部に対しては区切ることなく共通の光源によって照射するようにしても良い。これにより、構造を簡素化でき、コスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用計器
3 ケース
4 文字板
9 内機
11 指針
12 回動軸
14 見返し部材
15 文字
17 第1の光源
19 第2の光源
21,22,23,24 収容凹部
35 透明導光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器の中央部に設けた文字板と、この文字板に光を照射する第1の光源と、前記文字板の外周を囲む見返し部材と、前記文字板上で回動する指針と、この指針の回動を指針する内機とを備えた自動車用計器であって、
前記見返し部材には、前記文字板の外周端から周方向に間隔を有した複数の透明導光部を放射状に設け、この透明導光部に光を入射する第2の光源を設けたことを特徴とする自動車用計器。
【請求項2】
請求項1記載の自動車用計器であって、
前記文字板は、前記計器の中央部から外周側に向けて広がる平板部と、この平板部の外周側で下方に傾斜する傾斜部とを備え、前記平板部の外周面に文字が形成されていることを特徴とする自動車用計器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動車用計器であって、
前記透明導光部は、前記平板部の文字に対応して設けられていることを特徴とする自動車用計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93179(P2012−93179A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239840(P2010−239840)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】