説明

自動車車体からの発音方法

【課題】従来の石油燃料エンジンを用いた自動車はエンジン音が大きく、いわゆる走行音によって、歩行者に視覚とともに聴覚でも自動車の存在を認知されていたが、近年、環境、省資源問題から普及が拡大しているハイブリッド車、電気自動車は走行音が小さく、特に低速走行において歩行者の自動車認知度が低下し、事故が多発傾向にあり、安全性の向上が課題となってきている。
本発明は、ハイブリッド車、電気自動車の低速走行時に意図的に車体から発音させることで、自動車の存在を歩行者に知らせ、安全性の向上を図る発音技術に関するものである。
【解決手段】本発明は、ハイブリッド車、電気自動車の車体の一部に振動アクチュエータを取り付け、低速走行時に意図的に車体から発音させることで、自動車の存在を歩行者に知らせ、安全性の向上を図る発音技術に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動アクチュエータを用いて自動車の車体の一部から音を発生させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、石油資源枯渇問題からガソリン等の石油を使用する石油燃料エンジンから石油燃料エンジンと電動モーターと併用した駆動システムを用いたハイブリット車、または電動モーター単独の駆動システムを用いた電気自動車が市販されている。それらの自動車は燃料消費効率が高く、排気ガスの放出が少なく、環境、省資源の面、またこれらの自動車は走行による騒音も小さく、住環境に与える問題も軽減され普及の拡大が進んできている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術で述べたようにハイブリッド車、電気自動車は省資源、環境改善に大きな利点がある。しかし、走行騒音が軽減したことで、これまでの走行騒音が伴う石油燃料エンジン自動車には無かった、以下の新たな問題が発現している。
【0004】
ハイブリッド車、電気自動車は時速20キロメートル以下の低速走行時の走行音が小さく、歩行者と自動車が混在する場所、例えば高速道路等のサービスエリア、あるいは歩行者と自動車が接近する狭い道路、大型店舗の駐車場等において、歩行者が接近してくる自動車に気付かず、確認が遅れ事故になるケースが多発し、低速走行時における安全性の向上が課題とされてきている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ハイブリッド車、又は電気自動車の低速走行時に意図的に発音することで、自動車の存在を歩行者に知らせ、安全性を確保するための発音方法に関するものである。
【0006】
具体的にはハイブリット車、又は電気自動車の車体の一部、例えば図3に示したヘッドライトの筐体に磁歪素子等からなる振動アクチュエータを取り付け、アクチュエータに音声信号を加え、ヘッドライトから発音する方法である。
【0007】
また、自動車の走行状態を歩行者に認識させるために、自動車の走行速度と発音が連動する振動アクチュエータの駆動制御する方法である。
【発明の効果】
【0008】
走行中のハイブリッド車、又は電気自動車が発音することで歩行者が視覚と共に聴覚でも、走行中の自動車を認識することが可能となり、安全性の向上が図られる。
【0009】
クラクション等から、音を発生するには一般的にスピーカーが使用される。スピーカーの使用は簡便ではあるが、音を放射する面に開口部が必要とされることから、取り付け位置等が制約され車体の設計、デザイン等の自由度が小さくなる。これに対して本発明は取り付けられた部分の面が、いわゆる発音するための振動板となり音を発生することから開口部を設ける必要がなく、車体の設計、デザインの自由度が大きくなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】アクチュエータの車体への取り付け位置の例
【図2】アクチュエータ駆動システムブロック図
【図3】ヘッドライト筐体へのアクチュエータの取り付け例
【図4】テールランプ筐体へのアクチュエータの取り付け例
【図5】バンパーへのアクチュエータの取り付け例
【図6】バックミラー筐体へのアクチュエータの取り付け例
【図7】ヘッドライト発音の再生周波数特性
【図8】アクチュエータ駆動制御システムブロック図
【図9】駆動制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の効果を実証するために下記の自動車と振動アクチュエータを用い実施例1〜4を行った。
【0012】
磁歪素子アクチュエータ:R12−23(GMMテック社製)
圧電素子アクチュエータ:ASL170−C801NPOLF(NEC/トーキン社製)
自動車:プリウス(トヨタ社)
【0013】
図1に示した車体部分の内側で、車体表面に露出しない位置にアクチュエータを取り付け、アクチュエータの駆動を図2に示したシステムブロック図の振動アクチュエータ駆動装置で実施例1〜4を行った。
【0014】
実施例に示す車体部位、振動アクチュエータ、振動アクチュエータの取り付け方は実施例に限定されるものではなく、安全性の向上に最も効果的な車体部位、取り付け方が選択される。
【0015】
また、アクチュエータに加える音声信号は、安全性を確実に知らせる音で良く特定の信号音に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
磁歪アクチュエータを左右のヘッドライト筐体の裏側部分に、アクチュエータを取り付けるための突起を設け、その部分にアクチュエータを挿入し、更にアクチュエータ底辺部をネジで加圧する構造にし、アクチュエータを取り付け、発音の効果を確かめた。(図3)
【0017】
聴感試験で10m以上の距離でも歩行者は自動車の位置を認識し、安全性の向上が図られることを確認した。
【0018】
聴感距離が10m以上であることは、ヘッドライト前面の形状が平面的であることから発音される音波が平面波に近く、音の距離減衰が少ないことに由来するものと考えられる。
【0019】
本発明は取り付け部位、筺体および振動アクチュエータの最適化設計を図ることで警報音に可能な音量を発生できる技術であることが確認された。
【0020】
【実施例2】
【0021】
積層圧電アクチュエータを左右のテールランプ筐体の裏側部分に取り付け発音の効果を確かめた。取り付け方は実施例1と同様である。(図4)
【0022】
実施例1と同様に積層圧電アクチュエータでも安全性の向上が図れる発音がなされ、どのような種類の振動アクチュエータを用いても本発明方法が可能であることが確認された。
【0023】
【実施例3】
【0024】
車体前後のバンパーの裏側、左右に磁歪アクチュエータを取り付け、発音の効果を確かめた。取り付け方は実施例1と同様におこなった。(図5)
【0025】
実施例1と同様に十分に安全性の向上が図れる効果が確認された。
【0026】
また、バンパーは実施例1、2のライト、ランプ筐体よりも軟質材料から作られているために、発生する音は少し低周波数側にシフトしていた。
【0027】
このように振動させる部位の材質を変更することで音質を変化できることが解り、人間の聴覚に最も適する音質の選択もでき、安全性の向上に繋がるものと判断できる。
【実施例4】
【0028】
左右のバックミラーの内部に磁歪アクチュエータを取り付け、発音の効果を確かめた。取り付け方は実施例1と同様におこなった。(図6)
【0029】
実施例1〜3と比較すると、バックミラーは小型であることから少し、発音される音圧は小さく感じられたが、安全性の確保には十分な音量であることが確認された。
【0030】
また、アクチュエータは小型であることからバックミラー等の小型部品の内部への取り付けも可能で、取り付ける部分とアクチュエータの最適化設計をおこなえば、更に小型化される可能性があり、発音方法の自由度が増加するものと判断できる。
【0031】
【実施例5】
【0032】
実施例1のヘッドライトを取り外し、無響室で発音される再生周波数特性を測定した。
【0033】
測定条件:入力8Ω、1W、1m
【0034】
再生音周波数は350Hz〜12Kz有し、安全性の向上を図るに必要とする周波数を選択できる特性であることが確認された。(図7)
【0035】
ヘッドライトとの形状、アクチュエータの最適化設計をすることで、更に再生音周波数特性の改善が望める。
【0036】
【実施例6】
【0037】
実施例1〜4では図2に示したアクチュエータ駆動システムで本発明の効果を確認したが、本発明をハイブリッド車、又は電気自動車への実用化に必要なアクチュエータ駆動システムの検討を行った。
【0038】
発音を法規制等に従う速度、例えば時速20キロメートル以下の走行で自動的に作動、また運転者により一時的に停止する機能を想定した検討をおこない、アクチュエータ駆動システム(図8)とCPUフローチャート(図9)の組み合わせた駆動装置が有効であることが解った。
【0039】
【産業上の利用可能性】
【0040】
今後の自動車産業において、普及の拡大が予測されるハイブリッド車、電気自動車の安全性向上のため利用される可能性が大きい。
【0041】
【符号の説明】
【0042】
1:振動アクチュエータ
2:ヘッドライトへの振動アクチュエータの装着位置
3:テールランプへの振動アクチュエータの装着位置
4:バンパーへの振動アクチュエータの装着位置
5:バックミラーへの振動アクチュエータの装着位置
6:ヘッドライト筺体
7:振動アクチュエータへの加圧ネジ
8:振動アクチュエータの取り付け突起
9:テールランプ筺体
10:積層圧電アクチュエータ
11:ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の一部に振動アクチュエータを取り付けたことを特徴とする発音方法。
【請求項2】
請求項1の自動車は石油燃料エンジンと電動駆動を併用したハイブリッド車および電気自動車であること。
【請求項3】
請求項1の車体の一部はヘッドライトおよびテールランプ筐体であること。
【請求項4】
請求項1の車体の一部はフロントバンパーおよびリアバンパーであること。
【請求項5】
請求項1の車体の一部は左右のバックミラーであること。
【請求項6】
請求項1の振動アクチュエータは磁歪素子からなるアクチュエータであること。
【請求項7】
請求項1の振動アクチュエータは圧電素子からなるアクチュエータであること。
【請求項8】
請求項1の振動アクチュエータはコイル、マグネットから構成される電気電動アクチュエータであること。
【請求項9】
請求項1の振動アクチュエータを駆動するための入力装置は自動車の走行速度に連動した制御可能な装置であること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201520(P2011−201520A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89818(P2010−89818)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(506150146)ビフレステック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】