説明

自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物

【課題】乾燥時間の短縮と固体脂に対する洗浄力も良好な低泡性の食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは10〜50)及び(B)一般式(I)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)及び一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)を含有する自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物、特には低泡性で固体脂に対する洗浄力が高く、乾燥時間を短縮することの出来る自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ポリカルボン酸又はその塩と、特定の4級アンモニウム化合物と、特定の界面活性剤と組み合わせた洗浄剤の例として、例えば、水溶性ポリマーと特定の4級アンモニウム化合物と界面活性剤を組み合わせた硬質体用液体洗浄剤組成物(例えば、特許文献1)や、少量の高分子ビルダーとビス−アルコキシ化第四アンモニウムカチオン系界面活性剤と界面活性剤とを組み合わせた手洗い洗濯洗剤(例えば、特許文献2)があるが、茶渋汚れに対する洗浄力とガラス製食器の仕上がり性を向上させ、更に牛脂等の強い汚れである固体脂に対する洗浄力、乾燥時間を短縮に優れた自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物の提供する目的を達成するものではない。
【0003】
一方、自動食器洗い乾燥機の普及により、自動食器洗い乾燥機用の洗浄剤組成物も知られている。
自動食器洗い乾燥機専用の洗浄剤組成物としては、例えば、性能・安定性を維持するために、水酸化アルキル金属塩等のアルカリ剤を含まず、金属イオン封鎖剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、有機電解質高分子重合体、アルキル脂肪族ジカルボン酸塩及び水等を含有し、0.05〜0.30質量%濃度に希釈した状態の25℃におけるpHを7.0〜9.5の範囲とする自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(特許文献3)が知られている。
また、高分子ポリカルボン酸又はその塩と分散剤とを同時に含有すると共に、特定の界面活性剤を含有して、これらの成分の相乗効果によって茶渋汚れに対する洗浄力の向上と共に、ガラス製食器の仕上がり性を向上させた自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物(特許文献4)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献3〜4には、本願発明の構成を部分的に記載するものもあるが、特定の化合物2種を特定割合で組み合わせることにより、低泡性で、牛脂等の強い汚れである固体脂に対する洗浄力を満足し、かつ自動食器洗い乾燥機の使用時において、乾燥時間の短縮可能な自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物についての記載や示唆は全くないものである。
【0005】
近年、環境問題への意識の高まりから、食器洗浄機による食器洗浄には、使用時の利便性と共に、エネルギー削減のために洗浄後の乾燥時間を短縮する技術が要求されてきている。
また、引用文献4に代表される従来の食洗機洗剤は、茶渋や液体油に対する洗浄力、グラスの曇り洗浄力は良好であるものの、牛脂等の強い汚れである固体脂に対する洗浄力については更なる向上が求められている。
従って、乾燥時間の短縮、固体脂に対する洗浄力の向上を可能にする低泡性の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物に対する高い需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−286699号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特表平11−510554号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2002−146400号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2007−23268号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、食器洗い乾燥機用洗浄剤を使用するユーザーの関心事である乾燥時間の短縮を実現させつつ、固体脂に対する洗浄力も良好な低泡性の食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、(A)下記一般式(I)で表される化合物(式中、m+nは10〜50である)及び下記一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは10〜50である)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、および(B)下記一般式(I)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)及び下記一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、を含有する自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物であって、前記(A)成分の含有量が0.4〜5.0質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.3〜5.0質量%であり、且つ、(A)/(B)の質量比が0.3〜5.0であることを特徴とする、自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
(R1、R2は各々独立に、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかを示す。R3は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかを示す。EOはエチレンオキサイド基を示す。X-は、陰イオンを示す。m、nはEOの平均付加モル数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食器洗い乾燥機用洗浄剤を使用するユーザーの関心事である乾燥時間の短縮を実現すると共に、固体脂に対する洗浄力にも優れた低泡性の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物を得ることが出来る。更に、本発明の好ましい態様によれば、茶渋洗浄力及びくもり洗浄力にも優れた自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<(A)一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物(m+n=10〜50)及び(B)一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物(m+n=1〜3)>>
本発明に使用される(A)成分および(B)成分は、下記一般式(I)及び/又は下記一般式(II)で表される化合物が使用される。(A)成分は下記一般式(I)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは10〜50である)および一般式(II)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nが10〜50である)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、(B)成分は上記一般式(I)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは1〜3である)および(II)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは1〜3である)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0013】
【化2】

【0014】
上記式(I)中、R1及びR2は各々独立に、炭素数1〜20、好ましくは炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜20(好ましくは炭素数10〜18)の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかを示す。特に好ましくは、R1、R2のうち一方が炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、他方がメチル基又はトリル基の組み合わせである。
EOはエチレンオキサイド基を示す。
-は、陰イオンであり、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン原子イオンや、一般式R5-(但し、R5は、炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。)で表されるイオン等が挙げられる。
【0015】
上記式(II)中、R3は、炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数8〜20(好ましくは炭素数10〜18)の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかであり、特に好ましくは、炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。
EOはエチレンオキサイド基を示す。
【0016】
<<(A)一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物(m+n=10〜50)>>
(A)成分の化合物は、上記一般式(I)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは10〜50、好ましくは10〜40、より好ましくは15〜30である)および一般式(II)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nが10〜50、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20である)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が使用される。m及びnは、各々独立に0以上の数を示す。
m+nが上記範囲内であり、且つ(B)成分との質量比が0.3〜5.0、好ましくは0.7〜3.0((A)/(B))の範囲内であると、固体脂に対する洗浄力と乾燥性の効果を高めることが出来る。
【0017】
(A)成分の一般式(I)で示される化合物としては、例えば、一方社油脂工業(株)製の商品名「ビスノールUP−10」(R1:牛脂由来のアルキル基、R2:トリル基、m+n=30、X-:Cl-)や、ライオン・アクゾ(株)製の商品名「エソカードC/25」(R1:ヤシ由来のアルキル基、R2:メチル基、m+n=15、X-:Cl-)等が市販されている。
また、(A)成分の一般式(II)で示される化合物としては、例えば、ライオン・アクゾ(株)製の商品名「エソミンC/25」(R3:ヤシ由来のアルキル基、m+n=15)、ライオン・アクゾ(株)製の商品名「ETHOMEEN・SA2Y−103」(R3:硬化牛脂由来のアルキル基、m+n=50)、ライオン・アクゾ(株)製の商品名「エソミンSAJ−103」(R3:硬化牛脂由来のアルキル基、m+n=10)等が市販されている。
(A)成分の中で、一般式(II)で示される、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物が低泡性の点から特に好ましい。
(A)成分としては、一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(A)成分の合計含有量は、洗浄剤組成物全量に対して、0.4〜5.0質量%であり、好ましくは0.7〜3.5質量%である。
(A)成分の含有量が0.4質量%未満であると、固体脂洗浄力が不十分となり、一方、5質量%を越えると、洗浄時に泡が立ち過ぎて機械が正常に作動しないことがある。
【0019】
<<(B)一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物(m+n=1〜3)>>
(B)成分の化合物は、上記一般式(I)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは1〜3、好ましくは2である)および一般式(II)(式中、エチレンオキサイドの平均付加モル数の合計値m+nは1〜3、好ましくは2である)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が使用される。m及びnは、各々独立に0以上の数を示す。
m+nが上記範囲内であり、且つ(A)成分との質量比が0.3〜5.0、好ましくは0.7〜3.0((A)/(B))の範囲内であると、固体脂に対する洗浄力と乾燥性の効果を高めることが出来る。
【0020】
(B)成分の一般式(I)で示される化合物としては、ライオン・アクゾ(株)製、商品名「エソカードC/12」(R1:ヤシ由来のアルキル基、R2:メチル基、m+n=2、X-:Cl-)等が市販されている。
また、(B)成分の一般式(II)で示される化合物としては、例えば、ライオン・アクゾ(株)製、商品名「エソミンC/12」(R3:ヤシ由来のアルキル基、m+n=2)、クラリアントジャパン(株)製、商品名「Genamin C020」(R3:ヤシ由来のアルキル基、m+n=2)等が市販されている。
(B)成分の中で、一般式(II)で示される、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物が低泡性の点から特に好ましい。
(B)成分としては、一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(B)成分の合計含有量は、洗浄剤組成物全量に対して、0.3〜5.0質量%であり、好ましくは0.5〜3.0質量%である。
(B)成分の含有量が0.3質量%未満であると、固体脂洗浄力が不十分となり、一方、5質量%を越えると、洗浄時に泡が立ち過ぎて機械が正常に作動しないことがある。
【0022】
本発明における(A)成分および(B)成分の質量比は(A)/(B)=0.3〜5.0であり、好ましくは0.7〜3.0である。上記範囲内であると、食器洗い乾燥機に使用した際、乾燥時間を大幅に短縮でき、かつ、従来困難であった固体脂の洗浄力を向上させることが出来る。
これらの効果は、(A)成分、(B)成分それぞれ単独では成しえることは出来ず、(A)/(B)が上記の範囲であることが必要である。
【0023】
如何なる理論にも拘束されるものではないが、(A)成分と(B)成分を特定の質量比で併用することによって固体脂の洗浄力が向上する理由は以下のように推測される。
(B)成分はエチレンオキシド平均付加モル数が小さいため、疎水性が比較的高く、汚れ成分である固体脂に吸着しやすい。一方、(A)成分はエチレンオキシド平均付加モル数が大きく、親水性が高い。従って、(B)成分を(A)成分と特定比率で併用することにより、(B)成分が固体脂に吸着して食器から脂を引き剥がし、これを(A)成分が包み込むことによって汚れを水中に効率的に分散できるようになる為、洗浄力が向上する。このような理由により、固体脂の洗浄力の向上といった効果が得られるものと推測される。
【0024】
如何なる理論にも拘束されるものではないが、(A)成分と(B)成分を特定の質量比で併用することによって乾燥性が向上する理由については、以下のように推測される。
(A)成分及び(B)成分は弱いカチオン性を示し、食器や食洗機庫内に静電的に吸着して、最終すすぎ後の食器か食洗機庫内の表面に僅かに残る。これにより、食器や食洗機庫内の表面が(A)/(B)成分の特定比率により適度に疎水化され、滑水性(表面から水を滑り落とす効果:撥水では無い)を向上させることが出来、結果として乾燥時間を短縮する。このような理由により、乾燥性の向上といった効果が得られるものと推測される。
【0025】
<<任意成分>>
<<(C)非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩>>
本発明の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩を含有することが好ましい。
非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩を含むことにより、本発明の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物は、茶渋汚れに対する洗浄力やガラス製食器の仕上がり性の点でも優れた効果を発揮することが出来る。なお、カルボキシビニルポリマーで代表される、架橋型ポリマーは増粘剤として有用であるが上記効果は十分には確認できない。
【0026】
本発明に用いる(C)非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩は、カルボキシル基を有するモノマーのホモポリマーであってもよく、2種以上のカルボキシル基を有するモノマーのコポリマーであってもよく、カルボキシル基を有するモノマーとカルボキシル基を有さないモノマーとのコポリマーであってもよい。ホモポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、ポリクロトン酸又はその塩、ポリイタコン酸又はその塩等があげられる。2種以上のカルボキシル基を有するモノマーのコポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸−クロトン酸共重合体又はその塩があげられる。カルボキシル基を有するモノマーと、カルボキシル基を有さないモノマーとのコポリマーとしては、エチレン−マレイン酸共重合体又はその塩、メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体又はその塩が挙げられる。
この中でも、2種以上のカルボキシル基を有するモノマーのコポリマーが好ましく、アクリル酸/マレイン酸共重合体がより好ましい。
2種のカルボキシル基を有するモノマーのコポリマーの場合には、共重合比(モル比)は75/25〜50/50であることが好ましい。
【0027】
(C)非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩としては、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が1万〜10万であるものが好ましく、3万〜8万であるものがより好ましい。
【0028】
非架橋型高分子ポリカルボン酸の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。ナトリウム塩が好ましい。
特に好ましくは、重量平均分子量3万〜8万であり、且つ共重合比(モル比)が75/25〜50/50のアクリル酸/マレイン酸共重合体又はそのナトリウム塩である。
また、(C)成分の非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩は、1種以上を単独で又は併用することができる。
【0029】
(C)成分の非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して、4〜50質量%が好ましく、7〜50質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらにより好ましい。この範囲であると、乾燥時間がさらに短縮され、固体脂に対する洗浄力もさらに向上する。また、茶渋洗浄力とくもり洗浄力にも優れるため好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、上記各成分を常法により混合等することにより洗浄剤組成物として製造することができる。例えば、液状、ジェル状もしくはペースト状とすることが出来る。
【0031】
本発明の組成物は、更に、本発明の効果を損なわない範囲内で、自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物に通常使用されている上記以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分の具体例としては、エタノール、プロピレングリコールや精製水等の溶媒類や、無機金属塩、植物抽出物、防腐・除菌・抗菌・殺菌剤、消臭剤、安定剤、増粘剤、(C)成分以外の高分子、(A)成分および(B)成分以外のイオン性界面活性剤、さらにノニオン界面活性剤、香料、無機塩類、酵素、色素等が挙げられる。
【0032】
ノニオン界面活性剤の具体例としてはアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、特にアルキルグリコシドが好ましく、更には2−エチルヘキシルグルコシドが好ましく、その配合量は特に限定はされないが、洗浄剤組成物全量に対して0.1〜10%が好ましい。
除菌・抗菌・殺菌剤の具体例としては塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等の4級アンモニウム塩、ポリリジン等の塩基性ポリペプチド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2種の混合物、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、安息香酸および、またはその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられるが、特に4級アンモニウム塩が好ましくその配合量は特に限定はされないが、洗浄剤組成物全量に対して0.001〜1%が好ましい。
増粘剤の具体例としてはカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム等が挙げられるが、特にカルボキシビニルポリマーが好ましく、その配合量は特に限定はされないが、洗浄剤組成物全量に対して0.01〜5%が好ましい。
消臭成分の具体例としてはラベンダー、ローズマリー、クワ、セージ、カモミール、ジャスミン等から抽出した水溶性および油溶性エキスが挙げられるが特にラベンダー、ローズマリーの水溶性および油溶性エキスが好ましく、更には水溶性エキスが好ましく、その配合量は特に限定されないが、0.001〜1%が好ましい。
酵素の具体例としてはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられるが、特にアミラーゼ、プロテアーゼが好ましい。その配合量は特に限定されないが、洗浄剤組成物全量に対して0.1〜10質量%が好ましい。
【0033】
本発明の自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物では、pHは本発明の効果を損なわない範囲内で任意であるが、組成物の25℃における0.2重量%水溶液のpHを6.0〜8.0とするように調整すると、アルミ製食器の仕上がり性の向上も同時に実現させることができるため好ましい。
pH調整剤としては、液状組成物に通常用いられる有機酸、無機酸、有機アルカリ剤、無機アルカリ剤を用いることができる。有機酸の例としては、クエン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸等が挙げられる。有機アルカリ剤の例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【実施例】
【0034】
<<実施例1〜22及び比較例1〜10>>
下記表1〜3に示す配合組成で、スリーワンモーターと攪拌羽根を用いて各成分を配合して自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物を調製した。
なお、表1〜3中の各略号は以下のものを示す。また、特に断りのない限り、表中の%は、組成物全体に対する各成分の質量%を表す。
【0035】
<(A)成分の一般式(I)、(II)のm+nが10〜50の化合物>
A−1:一般式(I)で表される化合物(但し、R1:ヤシ油由来のアルキル基、R2:メチル基、m+n=15、X-=Cl-);ライオン・アクゾ(株)製、商品名「エソカードC/25」
A−2:一般式(I)で表される化合物(但し、R1:ヤシ油由来のアルキル基、R2:トリル基、m+n=30、X-=Cl-);一方社油脂工業(株)製、商品名「ビスノールUP−10」
A−3:一般式(II)で表される化合物(但し、R3:ヤシ由来のアルキル基、m+n=15);ライオン・アクゾ(株)製、商品名「エソミンC/25」
【0036】
<(B)成分の一般式(I)、(II)のm+nが1〜3の化合物>
B−1:一般式(I)で表される化合物(但し、R1:ヤシ由来のアルキル基、R2:メチル基、m+n=2、X-=Cl-);ライオン・アクゾ(株)製、商品名「エソカードC/12」
B−2:一般式(II)で表される化合物(但し、R3:ヤシ由来のアルキル基、m+n=2);ライオン・アクゾ(株)製の商品名「エソミンC/12」
B−3(比較品):CnH2n+1O(EO)3(PO)3H(n=12/13混合物(質量比65/35))、Shell製、商品名Neodolアルコールの平均EO:3、平均PO:3モル付加物。なお、EOはエチレンオキサイド基を表し、POはプロピレンオキサイド基を表す。
【0037】
(B−3の合成方法)
溶液aとして、硝酸マグネシウム6水和物68.03gに、硝酸アルミニウム9水和物47.69g、硝酸マンガン6水和物24.43gを450gの脱イオン水で溶解した。溶液bとして、炭酸ナトリウム13.47gを450gの脱イオン水で溶解した。
溶液aと溶液bとを、予め1800gの脱イオン水を仕込んだ触媒調製槽に、NaOH水溶液でpH=9,温度を45℃に保ちながら45分で滴下した。1時間熟成した後、母液をろ別し、沈殿を6リットルの脱イオン水で洗浄し、噴霧乾燥することにより30gの複合金属水酸化物を得た。
これを窒素雰囲気下800℃で焼成することで、酸化マグネシウムを主成分とする複合金属酸化物触媒19gを得た。
次に、オートクレーブ中に原料アルコールとしてNeodol 23(C12,13・分岐率20%:シェル社製)を120g及び上述の触媒0.3gを仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温した。続いて、温度を180℃、圧力を0.5MPa以下に維持しつつ、エチレンオキサイド82gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルの平均エチレンオキサイド付加モル数は3であった。
更に、オートクレーブの温度180℃、圧力を0.5MPa以下に維持しつつ、プロピレンオキサイド108gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルの平均プロピレンオキサイド付加モル数は3であった。反応液を80℃まで冷却した後、水11g、ろ過助剤としてハイフロスーパーセル(セライト社製)を3g添加、撹拌・混合した後、セルロースフィルター(定量濾紙5C:アドバンテック社製)を通して触媒を濾別した。このようにしてノニオン界面活性剤1を得た。
【0038】
<(C)成分の非架橋型高分子ポリカルボン酸>
C−1: アクリル酸/マレイン酸共重合物ソーダ塩、日本触媒(株)製、商品名アクアリックTL−400(質量平均分子量Mw=5万)
C−2: アクリル酸/マレイン酸共重合物ソーダ塩、BASF製、商品名ソカランCP7(質量平均分子量Mw=5万)
C−3(Aの比較品): ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、商品名「クラレポバールPVA−103」
【0039】
<共通成分(配合量は有り姿での質量%)>
Z: アミラーゼ(ノボザイムスジャパン(株)製の商品名「ターマミルウルトラ300L」)1%、プロテアーゼ(ノボザイムスジャパン(株)製の商品名「サビナーゼウルトラ16XL」)1%。
<pH調整剤>
全ての実施例及び比較例において、(A)、(B)、(C)成分、および共通成分を表1〜3に示す配合割合で混合した後、イオン交換水を加えpHを調整して、100質量%とした。なお、pH調整は水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7にとなるよう、適量添加し、組成物のpHを調整した。
【0040】
得られた各組成物について、下記評価方法に基づき、乾燥性、固体脂の洗浄力、泡立ち、茶渋洗浄力、及びガラスのくもり洗浄力を評価した。
その結果を表1〜3に示す。
【0041】
〔乾燥性評価法〕
白色陶器皿(直径20mm)3枚を自動食器洗い乾燥機「パナソニック社製、機種NP−TS1」に装填し、調製した組成物6gを使用して低温コース洗浄(ヒーター乾燥無し)を行った。この後、送風モード(60分間)とし、10分毎に白色陶器皿の乾燥状態を目視にて判定し、下記の評価基準に従い、評価した。
商品価値上、◎〜○の評価を合格とした。
評価基準:
◎:30分未満で乾燥した。
○:30分以上〜40分未満で乾燥した。
△:40分以上〜50分未満で乾燥した。
×:50分以上で乾燥した。
【0042】
〔固体脂の洗浄力の評価法〕
牛脂(和光純薬工業(株)製)2gを塗布したポリプロピレン製弁当箱(内寸:たて113mm、よこ174mm、深さ35mm、上面が開放されている)を、自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した組成物6gを使用して標準コース洗浄を行い、ポリプロピレン製弁当箱への脂の残留具合を以下の評価基準に基づいて官能評価した。
評価基準(商品価値上、◎〜○の評価を合格とした)
◎:油滴が残留しておらず、ぬるつきも感じられない。
○:油滴の残留は認められないが、ごくわずかにぬるつきが感じられる。
△:わずかに油滴の残留が認められる。
×:油滴の残留が著しく認められる。
【0043】
〔泡立ち評価法〕
自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に、調製した組成物6gを添加し、標準コースにて洗浄を開始した。洗浄開始から1分後に乾燥機の蓋を開け、泡立ちを以下の評価基準に基づいて官能評価した。
評価基準(商品価値上、◎〜○の評価を合格とした)
◎:少し泡立っている。
○:やや泡立っている。
△:かなり泡立っている。
×:非常に泡立っている。
【0044】
〔茶渋洗浄力の評価法〕
紅茶を飲み干してから25℃、50%RH条件下に5日間放置した紅茶汚垢の付いたコーヒーカップ(内径70mm、高さ70mm)3個を自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した組成物6gを使用して標準コース洗浄を行い、仕上がり具合を以下の評価基準に基づいて官能評価した。
評価基準(商品価値上、◎〜○の評価を合格とした)
◎:汚れは全く残留しておらず、ざらつき等の違和感も感じられない。
○:汚れの残留は目視では認められないが、触るとわずかにざらつきを感じる。
△:汚れの残留が目視で若干認められる。
×:汚れが落ちていない。
【0045】
〔ガラスのくもり洗浄力の評価法〕
ガラスコップ(上径63mm、下径53mm、高さ100mm)を自動食器洗い乾燥機に充填し、炭酸ナトリウム1.2gを機内に入れ、洗浄〜すすぎの全行程を30度(ドイツ硬度)硬水で行うことによりコップ白化させた。そのコップを自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した組成物6gを使用して標準コース洗浄を行い、仕上がり具合を以下の評価基準に基づいて官能評価した。
評価基準(商品価値上、◎〜○の評価を合格とした)
◎:白化物は全く残留しておらず、ざらつき等の違和感も感じられない。
○:部分的にわずかに白化物の残留が認められる。
△:白化物の残留が目視で若干認められ、全体的に透明感が失われている。
×:白化物が落ちていない。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
上記表1〜3の結果から、本発明の実施例1〜22は、比較例1〜9と比較して、低泡性を確保しつつも乾燥時間が短縮され、固体脂の洗浄力にも優れることが明らかとなった。また、本発明の実施例1〜20は、茶渋洗浄力及びくもり洗浄力の点でも良好な結果が得られることが判った。
比較例1は、(A)成分が含まれていないため、乾燥性及び固体脂の洗浄力に劣り、更には茶渋洗浄力の点でも十分な結果は得られなかった。
比較例2及び3は、(B)成分が含まれていないか(比較例2)、或いは本発明で用いられる(B)成分とは異なるものを用いた(比較例3)ため、乾燥性及び固体脂の洗浄力に劣る結果となった。
比較例4〜7は、(A)成分と(B)成分との含有比が本発明の範囲外であり、比較例4、6についてはそれぞれ(A)成分、(B)成分の量も本発明の範囲外であるため、乾燥性及び固体脂の洗浄力に劣る結果となった。
比較例8は、(A)成分と(B)成分の量が本発明における上限値よりも大きいため、泡立ちを抑えることが出来なかった。
比較例9は、(A)成分と(B)成分の量が本発明における下限値よりも小さいため、固体脂の洗浄力に劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される化合物(式中、m+nは10〜50である)及び下記一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは10〜50である)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、および
(B)下記一般式(I)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)及び下記一般式(II)で表される化合物(式中、m+nは1〜3である)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、
を含有し、
前記(A)成分の含有量が0.4〜5質量%であり、
前記(B)成分の含有量が0.3〜5質量%であり、且つ、
(A)/(B)の質量比が0.3〜5であることを特徴とする、自動食器洗い乾燥機用液体洗浄剤組成物。
【化1】

(R1、R2は各々独立に、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかを示す。R3は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するヒドロキシアルキル基、トリル基、フェニル基、ベンジル基のうちいずれかを示す。EOはエチレンオキサイド基を示す。X-は、陰イオンを示す。m、nはEOの平均付加モル数である。)
【請求項2】
(A)/(B)の質量比が0.7〜3.0である、請求項1記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が0.5〜3質量%である、請求項1又は2に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の含有量が0.7〜3.5質量%である、請求項1〜3のいずれか一項記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(A)成分及び(B)成分が、上記一般式(II)で示される化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(B)成分中、R3が炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記(A)成分中、R3が炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記(B)成分が、ポリオキシエチレン(2)アルキルアミンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項9】
前記(A)成分が、ポリオキシエチレン(15)アルキルアミンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項10】
さらに、(C)非架橋型高分子ポリカルボン酸又はその塩を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。
【請求項11】
(C)成分が、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩である、請求項10に記載の自動食器洗い乾燥機用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−136569(P2012−136569A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288095(P2010−288095)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】