説明

自動IIP2較正アーキテクチャ

ワイヤレストランシーバのための統合自動IIP2較正アーキテクチャが開示されている。このアーキテクチャにより、ワイヤレストランシーバが最低限の追加の回路を具えて二次のトーンを有するテスト無線信号(RF)を発生し得る。特に、固有のトランシーバとテスト適合回路とを組み合わせたものを用いてテストRF信号が発生する。固有のトランシーバ回路は、通常動作の際に固有のトランシーバ機能を実行するためにトランシーバのチップ上で実施される回路であり、テスト(RF)信号を発生させるために使用し得る。テスト適合回路が、トランシーバのチップ、特に固有回路に加えられ、固有回路が動作の自己テストモードでテストRF信号を発生し得る。特定のIIP2最小化スキームを実施するための回路を、動作の自己テストモードの際に自動IIP2較正のためのトランシーバチップに含めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的に、ワイヤレス通信に関する。特に本発明は、トランシーバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
音声及びデータの移動体通信を可能にし得るワイヤレスデバイスが長年にわたって使用されている。このようなデバイスは、例えば、携帯電話及び無線機器対応の携帯情報端末(PDA)である。図1は、このようなワイヤレスデバイスのコア部品の一般的なブロック図である。ワイヤレスコア10は、ワイヤレスデバイスの特定用途の機能を制御し無線周波数(RF)トランシーバチップ14に音声又はデータ信号を送受信するためのベースバンドプロセッサ12を有している。RFトランシーバチップ14は、送信信号の周波数の上位変換、及び受信信号の周波数の下位変換に関与する。RFトランシーバチップ14は、アンテナ18に接続されベースステーション又は別の携帯機器から送信信号を受信するための受信コア16、及びアンテナ18を通して信号を送信するための送信コア20を有している。当業者は、図1が単純化したブロック図であり、適切な動作又は機能を可能にするのに必要な他の機能的ブロックを有することを理解するであろう。
【0003】
一般に、送信コア20は、ベースバンドからの電磁信号の送信のために高周波に上位変換するのに関与する一方、受信コア16は、高周波が受信器に達したときにこれらの高周波をその元の周波数帯域に下位変換するのに関与し、これらはそれぞれ上位変換及び下位変換(又は変調及び復調)として知られる。元の信号(又はベースバンド)は、例えば、データ、音声又は映像でよい。これらのベースバンド信号を、マイクロフォン又はビデオカメラといったトランスデューサによって生成してもよく、コンピュータで発生させてもよく、又は電子記憶装置から転送してもよい。一般に、高周波はベースバンド信号よりも大きな範囲の高容量のチャンネルを提供し、高周波の無線周波数(RF)信号は空中を通って伝送し得るため、それらは好適には配線接続又はファイバチャンネルとともに無線通信のために使用される。
【0004】
これらの信号の全ては、一般に、電磁信号である無線周波数(RF)信号と称され;すなわち、一般的には電波の伝搬に関する電磁スペクトルの中の電気的及び磁気的特性を具えた波形である。
【0005】
図2は、図1のワイヤレストランシーバ10で使用し得る直接変換受信コアの回路図である。図2に示すように、受信コア16は、低ノイズのアンプ30、混合器32、可変利得アンプ(VGA)34、フィルタ36、アナログデジタル変換器(ADC)38及びデジタル処理回路40を有している。VGA34、フィルタ36、ADC38及びデジタル処理回路40は、それらはベースバンドプロセッサといった下流側の回路で使用するためにRF入力信号RFinを共同で調整するため、信号処理回路と考えることが可能である。図2の回路で明確に示していないが、当業者は、i及びq信号の別々の伝送経路が存在することを理解するであろう。受信コア16のこのような構成要素の表は包括的ではなく、当業者は特定の構成が遵守すべき通信基準及び選択した受信器アーキテクチャに依存することを理解するであろう。
【0006】
受信コア16の一般的な動作は以下の通りである。RF入力信号RFinが低ノイズのアンプ30によって増幅され、その後、混合器32によってベースバンド周波数R_CLKに下方変換される。このような下方変換されるベースバンド信号は、利得制御電圧VCONTのレベルに応じて可変利得アンプ34によって所望の利得レベルに増幅され、その後、フィルタ36を通してフィルタリングされ信号のダイナミックレンジが減少する。得られた出力信号は、その後、ADC38によってデジタル信号D_SIGNALに変換される。ここで、デジタル信号D_SIGNALは、デジタル処理ユニット40といった下流側の回路によってデジタル領域でさらに処理され得る。大部分の構成では、デジタル処理ユニット40は、ベースバンドプロセッサにデジタル信号Dig_Outを提供する。
【0007】
ここで示す直接変換受信コア16では、混合器32に由来する二次の相互変調積(IIP2)の発生が問題である。IIP2が発生した場合の説明は、図3及び図4を参照して以下のとおりである。
【0008】
既知の差分混合器回路の例を図3に示す。この差分混合器を図2の混合器32として使用し得る。差動対混合回路50はアクティブな混合回路であり、電圧供給VCCと入力nチャンネルトランジスタ54の同じドレイン端子との間で直接接続された負荷抵抗器R1及びnチャンネルトランジスタ52、VCCと入力nチャンネルトランジスタ54の同じドレイン端子との間で直列接続された負荷抵抗器R2及びnチャンネルのトランジスタ56を有している。nチャンネルトランジスタ52のゲート端子は信号zを受信し、nチャンネルトランジスタ54のゲート端子は、zとして表示される信号zの補完を受信する。入力nチャンネルトランジスタ54のゲート端子はRF入力信号xを受信し、そのソース端子はVSSに接続されている。得られる補完出力信号y及びyは、それぞれnチャンネルトランジスタ52及び56のドレイン端子から発せられる。混合器回路50の一方の出力経路58は、入力nチャンネルトランジスタ54のドレインとノードyとの間である一方、他方の出力経路60は入力nチャンネルトランジスタ54のドレインとノードyとの間である。図2の混合器32の環境では、信号xがRFinと等価であり、信号z及びzがR_CLK及びその補完R_CLKと等価であり、信号y及びyが混合器32の出力と等価である。
【0009】
回路に係る問題は、望ましくない相互変調積を有する出力y/yを発生させる入力トランジスタ54の非線形特性にある。入力トランジスタ54を通る電流「I」を以下の式(1)で表すことができる:
I=gVx (1)
ここでgは相互コンダクタンスであり、Vxは入力信号xの電圧である。
【0010】
しかしながら、トランジスタ54のgは非線形であり、実電流「I」は式(2)によって表される:
I=aVx+aVx+aVx+aVx... (2)
ここで、a、a、a及びaは係数であり、a以降の項はn次の相互変調積に関する。
【0011】
相互変調積の影響を、RF信号周波数で高周波構成要素を有してz(t)でベースバンドに下位変換される混合器回路50の出力y(t)に見ることができる。図4aは2つのトーンω及びωでできた入力信号x(t)を示す。図4bは、ωで周波数トーンを有して信号x(t)を下位変換するよう使用される信号z(t)を示す。下位変換の後に、トーンω及びωがωで置換される。図4cは、ω及びωをω−ω及びω−ωでそれぞれ置換することを示す。トーンω−ωは、トランジスタ52及びトランジスタ56又はR1及びR2のミスマッチとともに式(2)の二次項によって発生する。このようなトーンは、無線通信のSNRを事実上分離する。このため、二次の相互変調積の影響を軽減させるために、a以外の全ての係数をこれらの項が消滅するように確実にゼロにすることによって、線形関係を理想的には維持する。
【0012】
しかしながら、混合器回路50は差動タイプの回路であるため、係数aが本質的にゼロに減少しなければならない。図3に示すような差動回路は、一般に、それらに導入される可能性のある歪み成分を本質的に相殺する2つの相補的なデータ経路を有している。理想的な状態では、差動タイプの回路が全ての偶数次の項a、a、a等をゼロに設定する。
【0013】
しかしながら実際には、2つの相補的なデータ経路が完全に一致する場合にのみ偶数次の項がキャンセルされる。例えば図3の混合回路50では、偶数次の項が、双方の抵抗器R1及びR2の特性が同じである(すなわち、R1=R2)場合、双方の抵抗器52及び56の電気的特性が同じである場合、トランジスタ54乃至52及び54乃至56間の接続が同じで場合にキャンセルするであろう。このような状況では、双方のデータ経路が一致していると考えることができる。このため、二次の相互変調積が本質的に無効にされるであろう。
【0014】
しかしながら、このような状況は理想的であり、実際には2つのデータ経路58及び60が互いに電気的に等しくない。半導体回路のレイアウト及び/又はわずかなプロセスのバリエーション及び/又はチップにわたる不調和が、2つの経路間にミスマッチを導入する可能性がある。図3を参照すると、2つの負荷抵抗器がわずかに異なる値を有し、又はトランジスタ52及び56がわずかに異なるドーピングレベル又は寸法差、又はトランジスタ間の接続部にバランスされていない寄生容量を有しており、これらは経路間のミスマッチの原因として十分である。このようなミスマッチにより、二次の相互変調積が現れる原因となる可能性がある。一方又は双方の負荷抵抗器を取り除くことによって、又はチップ上に予め形成された異なる値の抵抗器でデジタル的に切り替えることによって、データ経路のミスマッチを補償し得る。これは、二次の相互変調積の振幅を検出及び測定し、その後で二次の相互変調積の大きさを最小限にする適切な抵抗器を選択することによって、製造されたデバイスのテストの際に一般に行われる。
【0015】
二次の相互変調積を最小限にする別の既知のスキームは、経路のうちの一方に電流を直接的に加え又は一方の電流を除くことによって、混合器の相補的な出力経路をバランスさせ、又は一致させることである。差動混合器での二次の相互変調積を最小限にするための適切なスキームの一例が、共有された米国特許出願番号11/298,667に開示されている。
【0016】
米国特許出願番号11/298,667に示されているスキームに従って、図2の混合器32が差動信号経路をバランスさせるためのIIP2補償信号COMPを受信する。使用される特定のIIP2最小化スキームに応じて、COMPは1又はそれ以上のデジタル又はアナログ信号となり得る。本発明の実施例を参照して、IIP2最小化スキームを採用し得る。
【0017】
IIP2補償信号の適用に先立ってIIP2最小化スキームが採用されるのに拘わらず、発生するIIP2の大きさを測定又は定量化するために、ワイヤレスデバイスを試験しなければならない。そして、適切なIIP2補償信号が、採用されるIIP2最小化スキームに発生及び提供される。
【0018】
図5は、IIP2最小化スキームとともに使用されるワイヤレスデバイスからのIIP2を測定するための包括的なIIP2試験方法を示すフローチャートである。一般に、テストは、チップへの入力信号の適用、IIP2の測定、そしてある信号補償を適用してIIP2を最小限にすることを有している。測定されるパラメータは特定のIIP2最小化スキームに適合するパラメータであると仮定される。本方法は、例えば携帯電話といった、ワイヤレストランシーバチップ、又はワイヤレストランシーバチップを組み込んだワイヤレスシステムといった製造されたワイヤレスデバイスに適用される。
【0019】
本方法は、ステップ70で開始し、そこでテスト入力信号がチップ又はシステムの入力ポートに適用される。いろいろな場所で入手し得るテスト機器でテスト信号を発生させ、二次のトーンを含むようカスタマイズし得る。これは、一般に、受信したRF信号が受信コアに伝播するのと同じ入力である。代替的に、テスト入力信号を特定のテスト入力ポートを通して適用し得る。テスト信号の入力ポイントは、それがIIP2発生及び補償源の前で適用される限り重要ではない。図2の受信コア16の実施例では、入力テスト信号を混合器32の前で適用し得る。代替的に、入力テスト信号を低ノイズアンプ30の入力部又はアンテナポートに適用し得る。
【0020】
ステップ72で、チップ又はシステムの出力が見積もられ、IIP2パラメータが測定される。ステップ74で、適切な補償コード又は信号が発生し、IIP2最小化スキームに適用され、その次にα=aをゼロに調整する。ヒューズ又は他の適切なプログラミング手段を使用して、特定のIIP2補償信号コードをオンチップで又はシステムに常時記憶し得る。
【0021】
補償コードが発生した後にステップ76に進んで、テストすべきさらなるチップ又はシステムがある場合、本方法は、次のチップ又はシステムに関する次のテストループのためにステップ70に戻る。このテスト方法は、テストすべきさらなるチップ又はシステムが無くなるまで繰り返す。
【0022】
上述のように、包装に先立って個別のチップを又はシステム全体をテストするために本方法を使用し得る。チップレベルで各チップがテストされ、適切な補償プログラミングが加えられる。例えば、特定のオンチップヒューズを飛ばすことによって又は包装に先立って不揮発性のメモリに適切な補償コードを記憶することによって、プログラミングを行うことができる。代替的に、包装された各チップをテストすることができ、対応する補償コードが発生する。本システムレベルでこのようなコードを使用して、測定したIIP2を補償し得る。システムレベルでは、IIP2が電話全体の機能として測定され、システムの適切な補償回路をIIP2を適切に最小限にするようにし得る。
【0023】
上述の図5の方法は、ワイヤレスチップ及びシステムをテストしてIIP2を最小限にするのに有効であるが、あまり実用的ではない。特に、本方法は非常に扱いにくく、実行するのに時間が掛かる。これは、回路のミスマッチがチップによって変化し得るという事実によるものであり、このため、各チップ(又はシステム)のIIP2を測定しなければならず、そのチップ(又はシステム)にのみ有効な対応する補償コードが提供される。さらに、信号発生器及びチップ/システムテスト装置といった比較的高価なテスト機器を要する。高い処理能力を要する場合にこのようなコストが増加し、そうでなければ、テストに時間が掛かるであろう。このため、IIP2テスト及び補償は、経済的であり及び/又は時間が掛かる。
【0024】
BIST(内蔵型の自己テスト)スキームが、例えば記憶装置及びコントローラといった半導体システムに現在使用されている。チップがそこで実行される必要なテスト回路を有しているため、このような自己テストはチップによって自動的に実行され、外部のテスト機器の使用の負担及びテスト時間を解放し得る。
【0025】
しかしながら、自己テストIIP2及び測定したIIP2に応じた較正に適応した既知のBISTスキームは存在しない。内蔵型のテスト及びIIP2較正では、テスト信号が図5に示すテストスキームに適用されるのと同じ方法で、テスト信号を発生させなければならない。しかしながら、ワイヤレストランシーバへのテスト信号発生回路の追加は、チップのかなりのシリコン領域を消費する可能性がある。ワイヤレストランシーバデバイスのこのような領域を、携帯電話といった携帯機器アプリケーションでの高いシステムインテグレーションにとって魅力的になるよう最小限にすべきであるため、チップ領域の増加は望ましくない。さらに、当業者が理解するように、チップサイズが大きくなるとチップを製造するためのコストが直接的に増加する。
【0026】
このため、テスト時間を減らしつつオンチップの回路を追加する量を最小限にするIIP2較正スキームを提供するのが望ましい。
【発明の概要】
【0027】
本発明の目的は、従前のIIP2較正スキームの少なくとも1の不利益を取り除き又は軽減することである。特に、IIP2較正スキームを実施するための回路の諸経費を最小限にしつつ試験の必要条件を容易にすることが本発明の目的である。
【0028】
第1の態様では、本発明は、ワイヤレスデバイスのための二次の相互変調積(IIP2)較正システムを提供する。この較正システムは、テスト信号発生器と、受信器経路と、較正回路とを有している。テスト信号発生器は、二次のトーンを発生させるよう使用される第1の無線周波数(RF)信号を発生させるための固有回路を有している。受信器経路は、第1のRF信号を受信するための入力ノード、受信周波数に基づいて第1のRF信号を第2のRF信号に下位変換するための回路、及び第2のRF信号に対応するデジタルデータ信号を発生させるための信号処理回路であって二次のトーンを最小限にするための補償信号を受信する信号処理回路を有している。較正回路は、デジタルデータ信号の中の二次のトーンを測定し、補償信号を発生させる。
【0029】
本態様の実施例によれば、ワイヤレストランシーバの固有回路が、基本周波数信号を発生させるための発振回路を有しており、さらに、テスト信号発生器が、二次のトーンを発生させるためのオフセット信号を加えるためのテスト適合回路を有している。テスト適合回路が、基本周波数信号に応じて第1のRF信号を発生させる。ワイヤレストランシーバの固有回路が、基本周波数信号を発生させるための受信器クロック回路を有しており、基本周波数信号が受信周波数に由来する。代替的に、ワイヤレストランシーバの固有回路が、第1のRF信号を発生させるための送信器コア回路を有している。
【0030】
本実施例の態様では、送信器コア回路が、送信ベースバンド発生器回路と、送信経路回路とを有している。送信ベースバンド発生器回路は、基本周波数信号を発生させ、送信経路回路は、この信号を受信する。送信経路回路は、基本周波数信号と受信周波数に由来する高周波搬送信号とを混合する。
【0031】
本態様の別の実施例によれば、テスト適合回路が、オフセット発生器と、混合回路と、スイッチ回路とを有している。オフセット発生器は、オフセット信号を与える。混合回路は、基本周波数信号の複製をオフセット信号に混合して第1のRF信号を与える。スイッチ回路は、オペレーションのテストモードで第1のRF信号を受信器経路の入力ノードに選択的に結合する。オフセット発生器は、デジタルテスト信号を与えるためのテスト信号発生器と、デジタルテスト信号を受信し、デジタルテスト信号をオフセット信号に対応するアナログ信号に変換するためのデジタルアナログ変換器と、を有している。デジタルアナログ変換器は、送信経路回路の構成要素である。さらなる実施例では、テスト適合回路が、オフセット信号を発生させるためのテスト信号発生器と、第1のRF信号を入力ノードに選択的に結合するためのスイッチ回路と、を有している。オフセット信号はテスト信号発生器の中のプリセットのデジタル信号である。
【0032】
第2の態様では、本発明は、二次のトーンを有する無線周波数(RF)テスト信号をオンチップで発生させる方法を提供する。本方法は、固有回路から基本周波数信号を発生させるステップと;テスト回路で二次のトーンに対応するオフセット信号を発生させるステップと;基本周波数信号とオフセット信号とを混合してRFテスト信号を発生させるステップと;を有している。本態様の実施例によれば、基本周波数を発生させるステップが、受信クロック発生器回路又は送信クロック発生回路を有効にするステップを有している。本態様の一実施例では、プリセットのデジタルテスト信号をアナログオフセット信号に変換する。本態様のさらなる実施例では、オフセット信号が、プリセットのデジタルテスト信号であり、混合するステップが、固有の送信経路回路によって実行され、オフセット信号を発生させるステップが、オフセット信号をアナログ信号に変換するステップを有している。RFテスト信号が発生している間に固有の送信経路回路のパワーアンプを無効にする。
【0033】
第3の態様では、本発明は、ワイヤレスデバイスの二次の相互変調(IIP2)テスト及び較正のための方法を提供する。本方法は、a)較正事象を検出するステップと;b)ワイヤレスデバイスの固有回路に二次のトーンを有する無線周波数(RF)テスト信号を発生させるステップと;c)ワイヤレスデバイスの受信経路を通してRFテスト信号を伝送させるステップと;d)ベースバンドのDCトーンである二次のトーンのパラメータを測定し、対応する補償信号を発生させるステップと;e)二次のトーンを最小限にすべく補償信号で受信経路の1又はそれ以上の回路を調節するステップと;を有している。検出するステップが、電源投入リセット事象、電源オン事象及びプリセット有効事象のうちの1を検出するステップを有している。RFテスト信号を発生させるステップが、固有回路から基本周波数信号を発生させるステップと;テスト回路に二次のトーンに対応するオフセット信号を発生させるステップと;基本周波数信号とオフセット信号とを混合してRFテスト信号を発生させるステップと;を有している。伝送させるステップが、較正事象に応じてRFテスト信号を受信経路に結合するステップを有している。検出するステップが、受信経路及び/又は送信経路からアンテナを分離するステップを有している。
【0034】
本態様の実施例によれば、基本周波数を発生させるステップが、受信クロック発生器回路を有効にするステップを有しており、オフセット信号がプリセットのデジタルテスト信号に対応するアナログ信号であり、プリセットのデジタルテスト信号がアナログ信号に変換され、基本周波数を発生させるステップが、送信クロック発生器回路を有効にするステップを有している。
【0035】
本態様の別の実施例では、オフセット信号が、プリセットのデジタルテスト信号であり、混合するステップが固有の送信経路回路によって実行され、オフセット信号を発生させるステップが、オフセット信号をアナログ信号に変換するステップを有している。RFテスト信号が発生している間は固有の送信経路回路のパワーアンプが無効になることができる。
【0036】
本発明の別の態様及び形態が、添付図面とともに以下の本発明の特定の実施例の説明を参照して当業者に明らかとなろう。
【0037】
ここで、添付図面を参照してほんの一例として本発明の実施例を説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、ワイヤレスデバイスのコアのブロック図である。
【図2】図2は、図1のワイヤレスデバイスを示す受信コアの回路図である。
【図3】図3は、従来技術のアクティブ混合器回路の回路図である。
【図4】図4a、4b及び4cは、直接的変換オペレーションに由来する二次のトーンを示すパワースペクトルプロットである。
【図5】図5は、ワイヤレストランシーバ又はワイヤレスシステムのIIP2をテストするため及び補償するための方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施例に従った、統合自動IIP2較正アーキテクチャのブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施例に係る、受信器ベースの自動IIP2較正スキームの回路図である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係る、オフセットのテスト信号発生器のブロック図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施例に係る、オフセットのテスト信号発生器のブロック図である。
【図10】図10は、本発明の実施例に係る、受信器及び送信器ベースの自動IIP2較正スキームの回路図である。
【図11】図11は、IIP2を自動的にテスト及び較正する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ワイヤレストランシーバ用の統合自動IIP2較正アーキテクチャが開示されている。このアーキテクチャは、ワイヤレストランシーバが最小限の付加的な回路で二次のトーンを発生させるテスト無線周波数(RF)信号を発生し得るようにする。特に、固有のトランシーバ回路と追加のテスト適合回路との組み合わせを用いてテストRF信号が発生する。固有のトランシーバ回路は、トランシーバのチップ上で実行される回路であり、通常動作の際には固有のトランシーバ機能を実行し、テスト(RF)信号を発生させるためにさらに使用し得る。テスト適合回路がトランシーバチップ、特に固有回路に加えられ、固有回路がオペレーションのテストモードでテストRF信号を発生させることが可能となる。特定のIIP2を最小限にするスキームを実行するための回路を、オペレーションのテストモードの際の自動IIP2較正のためにトランシーバのチップに含めることができる。
【0040】
このように、トランシーバチップに追加する回路の量を最小限にすることによって、コスト軽減が実現される。RFテスト信号をチップ上で発生させることによって、及びIIP2を最小限にするスキームをチップ上で実行することによって、ワイヤレストランシーバチップを容易にプログラムして、IIP2較正アルゴリズムを常時実行し得る。さらに重要なことには、IIP2テスト及び較正をチップ又はシステムの製造段階で実行しなくてもよい。代わりに、システム全体を組み立ててユーザに届けた後に、IIP2較正アルゴリズムを初期化し得る。このため、長いテスト時間といった従来の問題が無くなる。
【0041】
統合自動IIP2較正システムの包括的な実施例を図6に示す。図6の実施例で示す好適な態様は、RFテスト信号を発生させるために、トランシーバ回路の通常動作のために本質的に要する多くの既存の固有回路の再使用である。そうすることによって、RFテスト信号を発生させるための新たな回路の追加を最小限にする。これは、チップ領域、及び最終的にはコストを減らす。
【0042】
自動IIP2較正システム100は、図2に示す受信コア16の回路構成で実行し得る受信コア102、IIP2較正回路104及びテスト信号発生器106を有している。受信コア102は、アンテナからRF入力信号Rfinを受信し、ベースバンドプロセッサのための対応するベースバンド信号BBin_Analog及びBBin_Digitalを発生させる。いくつかのベースバンドプロセッサは、デジタル又はアナログ信号を受信することが可能であり、このような特定の実施例は、受信コア102が1又は双方の信号形式を提供し得ることを単に示している。IIP2較正回路104は、任意のタイプのIIP2最小化スキームの実施例を概略的に示す。本実施例では、IIP2較正回路104が、RF_TESTの二次のトーンの値を測定するためのデジタル信号BBin_Digitalを受信する。そして、適切な補償又は補正信号COMPが、IIP2が最小化される受信コア102の特定の回路にフィードバックされる。IIP2較正回路104は、好適には、図2のデジタル処理回路40に一体化されているが、チップ上の異なる回路で実行し得る。
【0043】
テスト信号発生器106は、受信コア102に二次のトーンを発生させるテストRF入力信号RF_TESTを発生させるテストアダプタ回路110に結合された固有回路108から成る。固有回路は、通常のワイヤレストランシーバ機能を実行するワイヤレストランシーバ構成の部分として既に存在する回路として規定される。規定により、ワイヤレストランシーバの受信コア及び送信コアは、ワイヤレス通信オペレーションの際にそれらを使用するため、固有回路である。これに対して、テストアダプタ回路110といったテスト回路は、通常のオペレーションの際にトランシーバによって実行されない1又はそれ以上の特定のテスト機能を実行するためにワイヤレストランシーバ構成に加えられるものである。例えば、IIP2較正回路104は、それは一般に通常のワイヤレス通信オペレーションの際に動作しないため、テスト回路として分類される。
【0044】
最終的に、スイッチ回路112が、オペレーションのテスト、又は較正モードの際にRF_TESTを受信コア102の入力側に選択的に結合させる。好適には、IIP2較正回路104は、オペレーションのテストモードの際のみに有効となる。さらに、ノードRFinは好適には、較正モードの際には外部アンテナから分離されており、アンテナによって受信される可能性のある望ましくない信号の導入を防ぐことに留意されたい。例えば、GSM半二重システムでは、スイッチがアンテナをRFinノード又は送信コア出力ノードに接続する。このため、IIP2較正モードでは、スイッチを設定してアンテナを送信コア出力ノードに接続することによって、ノードRFinが分離される。
【0045】
オペレーションの通常モードでは、スイッチ回路112がオープンとなり入力ノードRFinからのテスト信号発生器106の信号を遮断する一方、テストアダプタ回路110及びIIP2較正回路104が無効となる。受信コア102及び固有回路108は、それらの通常のワイヤレス送信機能を実行する。例えば、受信コア102は、ベースバンドプロセッサのためのシステムのアンテナからのRF信号を受信及び処理し得る。
【0046】
IIP2較正テストモードでは、適切な固有回路108とともにテストアダプタ回路110が有効となり、テストRF信号が発生する。このテストRF信号は、受信コア102のRFinノードに供給される。
【0047】
IIP2較正回路104は信号の値を測定し、受信コア102の1又はそれ以上の回路にフィードバックされる対応する補償制御信号を発生させる。このため、システムが通常モードの動作に再び入るときに、受信コア102は、二次の相互変調積が実質的に無いベースバンドプロセッサのためのデータ信号を発生させる。好適には、補償信号を1度発生させ、常にアクセスするために不揮発性メモリのある形式で記憶させる。後で説明するように、常にIIP2較正アルゴリズムを初期化し得る。
【0048】
固有回路108は、好適には、受信経路又は送信経路の部分の回路から成り、特に、振動信号を発生させるためのワイヤレストランシーバで既に実行されている回路から成る。振動信号を発生させるための回路は、比較的大きなシリコン面積を占め易いやめ、これらの既存の固有回路を再使用することによって、大幅なチップ面積を節約し得る。
【0049】
図7は、本発明の実施例に係る、固有の受信経路回路を用いた自動IIP2較正システムの回路の概略である。受信コア102の混合器32が、対応する受信クロック発生回路によって発生する下方変換クロック信号R_CLKを要する。この受信クロック発生回路は、テストRF信号RF_TESTを発生させるために本実施例で使用される。
【0050】
図7の自動IIP2較正システム200は、図2に示すのと同じ構成要素で実行される図6と同じ受信コア102を有している。同じ数の符号は、図2で前述した同じ構成要素に関する。図7のテスト信号発生器106を、受信クロック発生回路202及び受信クロックアダプタ回路204とともに実行する。受信クロック発生回路202は図6の固有回路108の実施例の回路である一方、受信クロックアダプタ回路204は図6のテストアダプタ回路110の実施例の回路である。
【0051】
受信クロック発生回路202は、受信コア102の混合器32のための下方変換クロックR_CLKを発生させるための受信経路の回路である。これは、受信周波数を発生させるための電圧制御される発信器206、発信信号を増幅させるためのアンプ又はバッファ208、及び2/4の分周回路210を有している。2/4の分周回路210を、使用される帯域に応じて2又は4によって増幅信号を分周するよう構成し得る。このような分周信号は、オペレーションの較正モードの際の受信したRFテスト信号をRF_TESTを含む受信したRF信号の下方変換のための混合器32によって使用される搬送波周波数信号R_CLKである。当業者は、受信クロック発生器202の構成が1の可能な構成を表すが、下方変換クロック信号R_CLKを発生させるための受信クロック発生回路202の異なる構成を使用し得ることを理解するであろう。
【0052】
受信クロックアダプタ回路204は受信クロック発生回路202からの出力の使用に関与し、受信経路102に二次の信号を発生させる信号を有するRFテスト信号RF_TESTを発生させる。この信号は、IIP2較正回路104によって検出可能/測定可能な二次のトーンを発生させる。これは、R_CLK信号の複製をベースバンドに二次のトーンを発生させるのに十分なオフセットと混ぜることによって実現される。当業者は、二次のトーンがDCに位置することを理解するであろう。例えば、R_CLKの周波数が500MHzの場合、RF_TESTの所望の周波数を505MHz及び508MHzにオフセットし得る。これは、3MHzで二次のトーンを生成する。しかしながら、RF_TESTが503MHzでの単なる信号トーンの場合、二次のトーンが0Hz又はDCに位置する。
【0053】
受信クロックアダプタ回路204は、アンプ208の出力、混合器216、及びオフセットテスト信号発生器218に結合された2/4の分周回路の複製214を含んでいる。2/4の分周回路の複製214は、2/4の分周回路210と同じ基本周波数信号を発生させる。混合器216が四重化及び同相混合器で構成されてもよいことに留意されたい。オペレーションの較正モードの際にスイッチ回路220が混合器216の出力を受信コア102の入力ノードRFinに結合するよう制御される。オフセットテスト信号発生器218は、混合器216によって2/4の分周回路の複製214の出力と混合されるプリセットのアナログオフセット信号T_SIGNALを提供する。2/4の分周回路210の出力をタップし得るため2/4の分周回路の複製214の介在により二重化となる一方、タップされた出力が不必要に負荷されR_CLKの特性を低下させるため、2/4の分周回路214を複製するのが好適である。R_CLKは好適には良質の信号であり、良好なノイズ特性を有するよう2/4の分周回路210を構成すべきであるため、これは重要である。一方、2/4の分周回路の複製214は、2/4の分周回路210と比較して低質な回路とすることが可能である。したがって、2/4の分周回路の複製214の回路領域を、2/4の分周回路210のそれよりも小さくし得る。何らかの方法で、小さなサイズの低質の受動的混合器として混合器216を実施し得る。任意のデジタル制御される減衰器ブロック(図示せず)を混合器216の出力とスイッチ回路220との間に直列に挿入し得る。
【0054】
図示する実施例では、オフセットテスト信号発生器218を図8に示す回路で実行し得る。この回路は、デジタルアナログ変換器226にnビットのデジタル信号を与えるデジタルテスト信号発生器224を有している。nビットのデジタル信号は、好適には、当業者に周知の様々な手段を介して予めプログラムされている。変換されたアナログ信号T_SIGNALは、nビットのデジタル信号に対応する。また、2つのオフセットテスト信号発生器218を使用することによって、T_SIGNALは同相の方形信号で構成されている。
【0055】
実際の実施では、図7の受信コア102は信号のi及びq経路で二重化しているが、i及びq受信コア回路として1つのIIP2較正回路104のみを使用することに留意されたい。このため、回路設計者は、2/4の分周回路の複製214が同相及び異相信号で提供し得ることを知るべきである。実際には、受信コア102のi又はq信号経路をテストする際に、特定の位相を選択して混合器216に与えるために、スイッチ回路を2/4の分周回路の複製214の出力の間に含めることが可能である。当然ながら、スイッチ回路を2/4の分周回路の複製214の中で一体化し得る。
【0056】
上述の図7の実施例は、RFテスト信号RF_TESTを発生させるために、受信経路の部分と考えられる固有の受信クロック発生回路202を使用する。受信クロックアダプタ回路204の回路は、さらなる回路の形式を要する。上述のように、混合器216及び2/4の分周回路の複製214は複雑ではなく、大幅なシリコン領域を使用しない。一方、オフセットテスト信号発生器218は、チップにより多くの回路を加えるデジタルアナログ変換器を有している。
【0057】
図9は、図7のオフセットテスト信号発生器218の代替的な実施例を示す。特に図9の実施例は、本システムですでに存在する固有の送信経路回路250の回路構成を再使用する。送信コア回路としても知られている固有の送信経路回路250は、電圧制御発生器(VCO)252、アンプ254及び2/4の分周回路256を有する(送信ベースバンド発生器としても知られている)送信クロック発生回路を有している。2/4の分周回路256は、VCO252に由来する基本周波数クロック信号を与える。図9に示す送信クロック発生器の構成は、当技術分野で知られた使用し得るいくつかの可能な構成のうちの1つである。
【0058】
送信経路回路は、信号調整回路258、デジタルアナログDAC260、混合器262、及びパワーアンプ264を有している。送信経路回路は、送信されるRFデータ信号の発生に関与する。信号調整回路258は、バースバンドプロセッサから受信したデジタル信号を調整するためのいくつかの異なる回路を有し得る。これらは、例えば変調回路及びフィルタリング回路を有し得るが、送信される信号の特性を変える回路をも有し得る。
【0059】
オフセットテスト発生器218は、図8の発生器224と同じものが可能なデジタル信号発生器266、及び送信経路回路からのデジタルアナログ変換器260を有している。本実施例では、デジタルテスト信号発生器266を選択的に分離するためにデジタルアナログ変換器260の入力側からのスイッチ手段268を使用しつつ、デジタルアナログ変換器260の出力側からのT_SIGNAL信号を分離するためにスイッチ手段270を使用し得る。オフセット信号発生器218の動作は、固有回路のアナログデジタル変換器の構成要素を使用するため、さらなる構成要素を必要としないことを除いて、図8について前述したのと同じである。
【0060】
当業者は、通常動作のために既にチップに実装されているデジタルアナログ変換器を、固有の送信経路回路250のデジタルアナログ変換器260の所定の場所で使用し得ることを理解するであろう。
【0061】
本発明の別の実施例では、テスト信号を発生させるのに要するさらなる回路の総量をさらに最小限にし得る。図7の実施例は、受信経路の受信クロック発生回路202を再使用するが、少なくとも2/4の分周回路の複製214及び混合器216の追加を要する。
【0062】
図10は、テスト信号を発生させるための送信経路回路を使用した本発明の実施例を示す。自動IIP2較正システム300は、図7の実施例で使用されるのと同じ受信コア102及びIIP2較正回路104を有している。ここで、テスト信号発生器106は送信経路回路302及び送信経路アダプタ回路304とともに実行される。送信コア回路302は、所望のオフセットを有するRFテスト信号RF_TESTを発生させ、所望のオフセットが送信経路アダプタ回路304によって提供される。
【0063】
送信器コア回路302は、図7の受信クロック発生器回路106対して同等に機能する送信器クロック発生回路と、送信器経路回路とを有している。送信器クロック発生器は、送信器経路回路によって使用されるクロックを与え、送信のためにデータ信号を高い周波数に変換する。送信クロック発生器回路は、電圧制御発信器(VCO)306、アンプ308及び2/4の分周回路310を有している。2/4の分周回路310は、VCO306に由来する搬送波周波数クロック信号を与える。図10に示す送信器クロック発生器の構成は、当技術分野で既知の使用し得るいくつかの可能な構成のうちの1である。
【0064】
送信経路回路は、信号調整回路312、デジタルアナログDAC314、混合器316、及びパワーアンプ318を有している。送信経路回路は、送信すべきRFデータ信号を発生させるために関与する。信号調整回路312は、ベースバンドプロセッサから受信されるデジタル信号を調整するためのいくつかの異なる回路を有している。これらは、例えば、変調回路及びフィルタリング回路を有し得るが、送信される信号の特性を変える回路をも有し得る。
【0065】
送信器経路適応回路304は、オフセット信号を発生させるためのデジタルテスト信号発生器320、発生したオフセット信号をDAC314の入力端子に結合するための第1のスイッチ322、及びパワーアンプ318の出力と受信コア102のノードRFinとの間で結合される第2のスイッチ324を有している。スイッチ324を、混合器316の後のどこかに配置してもよい。例えば、318の出力側にそれを配置してもよい。オフセット信号をデジタルでプログラムすることが可能であり、図7のテスト信号発生器106によって発生するオフセット信号と同じ特性を有する。当業者は、任意のビット数を有するプリセットのデジタルオフセット信号を発生させるのに様々な回路を使用できることを理解するであろう。デジタルテスト信号発生器320及びスイッチ322を、その小さな大きさにより信号調整回路312に容易に組み込むことが可能である。また、適応回路304、デジタルテスト信号発生器320、及びスイッチ322をデジタル領域の信号ブロックの中に結合してもよい。
【0066】
オペレーションの通常モード、すなわち、送信モードでは、第1のスイッチ322が「オープン」位置に設定されてデジタルテスト信号発生器320の出力をDAC314の入力から切り離す一方、第2のスイッチ324がパワーアンプ318の出力をノードRFinから切り離すよう設定される。送信時に、信号調整回路312によって受信されるデータが、送信経路回路302を通して処理され、アンテナの信号RFoutとして与えられる。特に調整されたデジタル信号は、DAC314を介してアナログ信号に変換され、ここで混合器316及びプリパワーアンプ318によって高い周波数に変換されて増幅され、下流側のパワーアンプさらにはアンテナを通して送信される(図10には双方を図示しない)。送信経路回路302のオペレーションが当技術分野でよく知られている。オペレーションの通常モードの際にデジタルテスト信号発生器320を有効にすることができる。
【0067】
オペレーションの較正モードでは、デジタルテスト信号発生器320を有効にすることができ、スイッチ322及び324が「クローズド」位置に設定される。好適には、信号調整回路312の出力は、3状態であり、切断され又は単に無効になっている。ここで、DAC314の入力端子が発生したオフセット信号をデジタルテスト信号発生器320から受信し、この信号が送信経路回路302を通して処理され、クローズドスイッチ324を介してRFinに供給される。アンテナからの信号をRFinノードで受信すべきではないため、アンテナは、好適には、送信モードに切り替えられる。さらに、アンプ318の出力が一般にオフチップでアンテナまで送られ較正モードの際に送信経路回路302がアクティブであるため、空気中にテスト信号を送信しないように、パワーアンプ318を止めるべきである。
【0068】
図6、7及び10に示す自動IIP2較正システムの実施例は、1つの受信コア102に結合された1つのテスト信号発生器106を示す。図7及び10の実施例では1つのみを示すが、各受信コア102が複数の受信経路を有し得ることに留意されたい。各受信経路をある特定の周波数帯域のために取っておくことができ、各受信経路がi及びq経路を有している。これは、受信器ブロック102の大部分の回路が各受信経路について2回実施されることを意味する。クワッドバンドのトランシーバでは、IIP2較正を要するトータルで8の受信経路を有している。チップの設計制限及び周波数方式に基づいて自動IIP2較正システムの特定の構成を決めることができる。例えば、テスト時間が重要ではないがチップ領域を最小限にすることが重要な場合、1つのテスト信号発生器106を2又はそれ以上の受信経路間で共有し得る。好適には、同じ周波数帯域の受信経路について1つのテスト信号発生器106を共有する。このような実施では、RF_TEST出力がオペレーションの較正モードで有効となる特定の受信経路に選択的に接続される。従って、受信又は送信経路(206又は306)の電圧制御発信器が、選択した受信経路に関して対応する周波数を発生させるよう制御される。各テスト信号発生器106が使用され得る受信経路の数は、電圧制御発信器(206又は306)の範囲に依存する。好適にはチップ上にIIP2較正回路104を有するため、各受信経路についてそれぞれ発生したIIP2補償信号COMPが、オペレーションの通常モードの際に、次のアクセスのためにメモリに記憶される。
【0069】
一方、テスト時間が重要でありチップ領域を最小限にすることが重要ではない場合、各受信経路がそれ自身のテスト信号発生器106及びIIP2較正回路104を有し得る。当然ながら、構成は上記の2つに限定されず、2つの構成の適切な組み合わせを実施し得る。当業者は、追加のロジック及び/又はスイッチ回路を各構成を実行するために要することを理解するであろう。
【0070】
以下は、図6乃至図10の自動IIP2較正システムの実施例を用いたワイヤレストランシーバをテストするための方法の説明である。図11は、本方法の概略的な順序を示すフローチャートである。本発明に係る実施例を組み込んだワイヤレストランシーバチップが製造され、例えば携帯電話といったシステムの中で一体化されると仮定する。
【0071】
本方法はステップ400で開始し、ここで較正事象が検出されてIIP2較正テストを初期化する。本システムによって、ユーザの動作によって、又はチップテスト又はシステムアッセンブリ段階の際に実行される他の標準テストの間に、較正事象を自動的に始動し得る。自動システム始動の例が、前の較正のときからシステム又は所定の温度変化の検出が可能となるシステムのパワーアップリセット(すなわち、電池の差込)を含め得る。ユーザの動作によるの始動の例は、本システムの手による電源投入を含め得る。さらに、較正事象の検出に応答して、さらなるシステムの構成要素を必要な状態に設定し得る。例えば図7の実施例では、アンテナを送信器コア出力に接続するようアンテナスイッチを設定することができ、発生するRF_TEST信号をRFinノードに最終的に接続するようスイッチ回路220をクローズし得る。例えば図10の実施例では、アンテナが送信器コア出力に結合するようアンテナスイッチを設定することができ、スイッチ回路324を閉じることができ、パワーアンプ318を無効にし得る。較正事象に応じて他のシステム構成要素を設定し得ることを当業者は理解するであろう。
【0072】
ステップ402に進むと、自動IIP2較正システムが有効になり、RFテスト信号が発生し、閉じたスイッチ回路(図7の符号220及び図10の符号324)を通して受信コアの少なくとも1の受信経路に加えられる。ステップ404で、RFテスト信号RF_TESTが少なくとも1の受信経路を介して伝送され、対応するデジタル信号のIIP2のパラメータを測定する。このパラメータは、ベースバンドのDCトーンを含めることができるが、これに限定されない。
【0073】
最後にステップ406で、IIP2を測定するIIP2較正回路が、受信経路の混合器回路への適用のために、適切な補償信号、コードを発生させる。一旦発生させると不揮発性メモリにコードを記憶し得る。このためIIP2較正スキームは、このコードにいつでもアクセスし得るため、コードを発生させるよう一度実行することのみを必要とする。一方、システムに電源が投入されている間にのみこのコードが保持される場合には、システムに電源が投入されるごとにコードを再発生させる。
【0074】
ワイヤレストランシーバの受信コアの各受信経路について上記の方法のステップ402乃至406を繰り返し得る。ステップ402乃至406の繰り返しは、チップ上で実行されるテスト信号発生器の数に応じて繰り返される。例えば、クワッドバンドのワイヤレストランシーバで1つのテスト信号発生器が共有された状態で、ステップ402乃至406が8回繰り返される(i及びq信号経路を有する各受信経路について2回)。各受信経路がそれ自身の専用のテスト信号発生器及びIIP2較正回路を有する場合、ステップ402乃至406のみが2回繰り返されることを要する。
【0075】
本発明の上述の実施例は、ワイヤレストランシーバの受信コアのためのIIP2較正のためのオンチップの内蔵型自己テストスキームを開示している。RFテスト信号のオンチップでの発生が、ワイヤレストランシーバの主に固有回路及び最低限の追加的な回路を使用することによってなされる。追加的な回路は顕著な設計上の諸経費を受けず、ワイヤレストランシーバのチップ上に相当な領域を占めない。このため、ワイヤレストランシーバで自動IIP2較正スキームを実行するための余分なコストが最小限となる。較正オペレーションをいつでも、好適にはユーザが受け取った後にシステムレベルで実行し得るため、IIP2較正は事実上超並列処理である。このため、製造段階でのIIP2テスト及び較正時間がゼロに減少する。
【0076】
本発明の上記の実施例は、単なる具体例を意図するものである。本書に添付された特許請求の範囲のみによって規定される本発明の範囲から逸脱せずに当業者は特定の実施例に対して改変、修正及び変更を行ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスデバイスのための二次の相互変調積(IIP2)較正システムであって、
二次のトーンを有する第1の無線周波数(RF)信号を発生させるための固有回路を有するテスト信号発生器と、
前記第1のRF信号を受信するための入力ノード、受信周波数に基づいて前記第1のRF信号を第2のRF信号に下位変換するための回路、及び前記第2のRF信号に対応するデジタルデータ信号を発生させるための信号処理回路であって前記二次のトーンを最小限にするための補償信号を受信する信号処理回路を有する受信器経路と、
前記デジタルデータ信号の中の前記二次のトーンを測定し、前記補償信号を発生させるための較正回路と、
を具えていることを特徴とするIIP2較正システム。
【請求項2】
ワイヤレストランシーバの前記固有回路が、基本周波数信号を発生させるための発振回路を有しており、
さらに、前記テスト信号発生器が、前記二次のトーンに一致するオフセット信号を前記基本周波数信号に加えるためのテスト適合回路を有しており、
前記テスト適合回路が、前記基本周波数信号に応じて前記第1のRF信号を発生させることを特徴とする請求項1に記載のIIP2較正システム。
【請求項3】
前記ワイヤレストランシーバの固有回路が、前記基本周波数信号を発生させるための受信器クロック回路を有しており、
前記基本周波数信号が前記受信周波数に由来することを特徴とする請求項2に記載のIIP2較正システム。
【請求項4】
前記ワイヤレストランシーバの固有回路が、前記第1のRF信号を発生させるための送信器コア回路を有していることを特徴とする請求項2に記載のIIP2較正システム。
【請求項5】
前記送信器コア回路が、前記基本周波数信号を発生させるための送信クロック発生器回路と、データ信号及び前記オフセット信号のうちの一方を受信するための送信経路回路と、を有しており、
前記送信経路回路が、前記基本周波数信号と前記オフセット信号とを混合して前記第1のRF信号を発生させることを特徴とする請求項4に記載のIIP2較正システム。
【請求項6】
前記テスト適合回路が、前記オフセット信号を与えるためのオフセット発生器と、
基本周波数信号の複製を前記オフセット信号に混合して前記第1のRF信号を与えるための混合回路と、
オペレーションのテストモードで前記第1のRF信号を前記受信器経路の前記入力ノードに選択的に結合するためのスイッチ回路と、
を有していることを特徴とする請求項2に記載のIIP2較正システム。
【請求項7】
前記オフセット発生器が、デジタルテスト信号を与えるためのテスト信号発生器と、
前記デジタルテスト信号を受信し、前記デジタルテスト信号を前記オフセット信号に対応するアナログ信号に変換するためのデジタルアナログ変換器と、
を有していることを特徴とする請求項6に記載のIIP2較正システム。
【請求項8】
前記デジタルアナログ変換器が、送信経路回路の構成要素であることを特徴とする請求項7に記載のIIP2較正システム。
【請求項9】
前記テスト適合回路が、前記オフセット信号を発生させるためのテスト信号発生器と、
前記第1のRF信号を前記入力ノードに選択的に結合するためのスイッチ回路と、
を有していることを特徴とする請求項5に記載のIIP2較正システム。
【請求項10】
前記オフセット信号がプリセットのデジタル信号であり、
前記送信経路回路が、前記オフセット信号をアナログ信号に変換するためのアナログデジタル変換器と、
前記基本周波数信号と前記オフセット信号とを混合して前記第1のRF信号を与えるための混合器回路と、
を有していることを特徴とする請求項9に記載のIIP2較正システム。
【請求項11】
二次のトーンを有する無線周波数(RF)テスト信号をオンチップで発生させるための方法であって、
a)固有回路から基本周波数信号を発生させるステップと;
b)テスト回路で前記二次のトーンに対応するオフセット信号を発生させるステップと;
c)前記基本周波数信号と前記オフセット信号とを混合して前記RFテスト信号を発生させるステップと;
を具えていることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記基本周波数を発生させるステップが、受信クロック発生器回路を有効にするステップを有していることを特徴とする請求項11に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項13】
前記オフセット信号が、プリセットのデジタルテスト信号に対応するアナログ信号であることを特徴とする請求項11に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項14】
前記プリセットのデジタルテスト信号を前記アナログ信号に変換するステップを有していることを特徴とする請求項13に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項15】
前記基本周波数を発生させるステップが、送信クロック発生器回路を有効にするステップを有していることを特徴とする請求項11に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項16】
前記オフセット信号が、プリセットのデジタルテスト信号であることを特徴とする請求項11に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項17】
前記混合するステップが、固有の送信経路回路によって実行され、
前記オフセット信号を発生させるステップが、前記オフセット信号をアナログ信号に変換するステップを有していることを特徴とする請求項16に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項18】
前記RFテスト信号が発生している間に前記固有の送信経路回路のパワーアンプを無効にすることを特徴とする請求項17に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項19】
ワイヤレスデバイスの二次の相互変調(IIP2)テスト及び較正のための方法であって、
a)較正事象を検出するステップと;
b)前記ワイヤレスデバイスの固有回路に二次のトーンを有する無線周波数(RF)テスト信号を発生させるステップと;
c)前記ワイヤレスデバイスの受信経路を通して前記RFテスト信号を伝送させるステップと;
d)前記二次のトーンのパラメータを測定し、対応する補償信号を発生させるステップと;
e)前記二次のトーンを最小限にすべく前記補償信号で前記受信経路の1又はそれ以上の回路を調節するステップと;
を具えていることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記検出するステップが、電源投入リセット事象、電源オン事象、及びプリセット有効事象のうちの1を検出するステップを有していることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記RFテスト信号を発生させるステップが、
i)固有回路から基本周波数信号を発生させるステップと;
ii)テスト回路に前記二次のトーンに対応するオフセット信号を発生させるステップと;
iii)前記基本周波数信号と前記オフセット信号とを混合して前記RFテスト信号を発生させるステップと;
を有していることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記伝送させるステップが、前記較正事象に応じて前記RFテスト信号を前記受信経路に結合するステップを有していることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記検出するステップが、前記受信経路からアンテナを分離するステップを有していることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記基本周波数を発生させるステップが、受信クロック発生器回路を有効にするステップを有していることを特徴とする請求項21に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項25】
プリセットのデジタルテスト信号を前記オフセット信号に変換するステップを有していることを特徴とする請求項24に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項26】
前記基本周波数を発生させるステップが、送信クロック発生器回路を有効にするステップを有していることを特徴とする請求項21に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項27】
前記混合するステップが固有の送信経路回路によって実行され、
前記オフセット信号を発生させるステップが、プリセットデジタル信号をアナログ信号に変換するステップを有していることを特徴とする請求項26に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。
【請求項28】
前記RFテスト信号が発生している間は前記固有の送信経路回路のパワーアンプが無効になることを特徴とする請求項27に記載のRFテスト信号をオンチップで発生させるための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−517386(P2010−517386A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546625(P2009−546625)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000162
【国際公開番号】WO2008/089574
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(509209203)
【Fターム(参考)】