説明

自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料およびその製造方法

【課題】、乾いた状態の布状シート材料を殊更な外部水分による湿潤処理などを施さなくても任意且つ自在に濡れた状態として使用できるようにするために新しい技術を提案する。
【解決手段】布状シート材料1の少なくとも一面側に所定の圧力をかけることで破損して内蔵した水分などの液体が沁み出して乾いた状態の布状シート材料を湿潤状態とする液体保持部2を複数個並べ、該液体保持部2をさらに別の布状シート材料1で覆う積層構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常は乾いた状態の布状シート材料を殊更な外部水分による湿潤処理などを施さなくても任意且つ自在に濡れた状態として使用できるようにするために新しい技術を提案するものである。
【0002】
各種の布状シート材料はそれぞれに用途に応じて水分その他の液体に湿潤させた状態で使用されることが多い。
ここで、布状材料とは、タオルや手拭いといった布材料に限られるものではなく、湿潤状態で使用することが好ましい場合を想定することができる、コットンやレーヨンによる不織布、紙製のティッシュなどをも含んだものである。
【0003】
すなわち、汚れなどを拭き取る目的で使用する際には、水やその他の洗剤成分を含ませた状態で湿潤させて用いることで、汚れ除去の効果を高めることが可能であって、実際にそのような製品が多数市販されている。
【0004】
たとえば、代表的なものとしてウェットティッシュのような製品があるが、これは水分や洗剤、除菌剤、香料などを含ませて使用させるものである。しかし、これは事前の製造段階で湿潤処理し、乾燥阻止するためのパッケージに封入しているものであって、パッケージから出した状態ではすぐに乾燥してしまうものである。
【0005】
つまり、用途に応じて水やその他の薬品類などの液体で湿らせた布状材料を使用することは常識的に行われているが、そのためには実際に使用するその場で湿らせるか、事前に湿らせてパッケージングしたものの封を破って使用するというのが当たり前の事とされている。
また、このような技術に関しての文献としては以下のものが見出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−109984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したウェットティッシュのような製品は、その湿潤性を長期間保存するために乾燥阻止用のパッケージが必要であり、ひとたびパッケージから取り出せば短時間で乾燥してしまって良好な使用ができなくなり、また、使用後のパッケージなどが不要なゴミとなってしまう。
【0008】
また、上記した特許文献1のものは、液体塗布シート用積層体であって、独特な積層構造を採る事で優れた塗布性を実現しようとするものであるが、本発明のように乾いた状態の布状材料を外部からの水その他の液体によらずに湿潤させて、所期の目的に相応しい布状材料を得ようという技術思想とは異なったものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記したような課題に鑑みて検討・研究を重ねた結果得られたものであって、一定の圧力を受けることで破損して内部の液体を染み出すことができる液体保持部を多数個備えさせたまったく新しい布状材料を提案するものであって、具体的には以下の如くである。
【0010】
(1) 布状シート材料の少なくとも一面側に所定の圧力をかけることで破損して内蔵した水分などの液体が沁み出して乾いた状態の布状シート材料を湿潤状態とする液体保持部を複数個並べ、該液体保持部をさらに別の布状シート材料で覆う積層構造としていることを特徴とする自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0011】
(2) 液体保持部を破損して内蔵した水分などの液体が沁み出すのに必要な圧力が、1平方cm当り5〜50g前後であることを特徴とする前記(1)項に記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0012】
(3) 液体保持部に内蔵させる水分などの液体が0.01cc〜5.0cc程度であることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0013】
(4) 液体保持部が布状材料1平方cm当り1個以上配置するように並べられていることを特徴とする前記(1)項〜(3)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0014】
(5) 液体保持部から染み出した水分などの液体が布状材料の一面側しか濡らさないように防水シート材をも積層していることを特徴とする前記(1)項〜(4)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0015】
(6) 液体保持部に内蔵させる液体が洗剤、抗菌剤、香料、ワックス材料、色素材料の中の1つ以上を含んだものであることを特徴とする前記(1)項〜(5)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0016】
(7) 液体保持部に内蔵させる液体が消毒液や治療液であって、患部に直接手を触れることなく簡便な処置ができるように成っている事を特徴とする前記(1)項〜(6)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0017】
(8) 水分と接触することで発熱反応又は冷却反応を生じる物質を液体保持部近傍に備えさせていることを特徴とする前記(1)項〜(7)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【0018】
(9) 乾いた状態の布状シート材料の少なくとも一面側に、1平方cm当り1個以上の割合で、1平方cm当り5〜50g前後の圧力を加えると破損して内蔵した0.01cc〜5.0cc程度の水分などの液体を沁み出すようにされた液体保持部を複数個配置して固定し、該液体保持部を乾いた状態の布状材料でさらに覆って積層構造としたことを特徴とする前記(1)項〜(8)項の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
(a)布状シート材料の少なくとも一面側に所定の圧力をかけることで破損して内蔵した水分などの液体が沁み出して乾いた状態の布状シート材料を湿潤状態とする液体保持部を複数個並べ、該液体保持部をさらに別の布状シート材料で覆う積層構造としていることで、実際に使用する際に、本発明シート材料を叩いたり折り畳んで絞ったりすることで、液体保持部を破損させて濡らすことができる。
破損圧力を適度にとることで、普段は乾いた状態の布状材料として使用できながら、必要なときには即座に濡れた布状材料として適切な使用ができるようにすることが可能である。
【0020】
(b)液体保持部を破損して内蔵した水分などの液体が沁み出すのに必要な圧力が、1平方cm当り5〜50g前後であることで、用途に応じた適切な加圧操作によって本発明シート材料を濡れた状態とすることができるようになる。
すなわち、液体保持部があまりに軽微な加圧で破損するようでは単なる保管や運搬中に濡れてしまって不都合であり、逆に大きな加圧を要求し過ぎると使用現場で使い難いものになってしまう。本発明で想定される用途に使う場合に両者のバランスをとった加圧範囲が1平方cm当り5〜50g前後であることを発明者は見出したのである。
また、布状材料の所定位置範囲にのみ液体保持部を配置してその部分に圧力をかけない限りは乾燥したままの布状材料とすることも可能である。
【0021】
(c)液体保持部に内蔵させる水分などの液体が0.01cc〜5.0cc程度であることで、本発明の使用目的に適った布状シート材料の湿潤状態を作り出すことが可能となる。
すなわち、液体保持部に内蔵させる液体量を少なくすればうっすらとした湿潤状態となり、多くすればたっぷりとした湿潤状態とすることができるのである。
【0022】
(d)液体保持部が布状材料1平方cm当り1個以上配置するように並べられていることで、本発明の布状シート材料を満遍なく湿潤状態とすることが可能となる。つまり、この程度の割合で液体保持部を設けておけば、湿潤状態とさせる場合にも布状シート材料素材の毛細管現象によって湿潤部が満遍なく広がることを発明者は確認したのである。
【0023】
(e)液体保持部から染み出した水分などの液体が布状材料の一面側しか濡らさないように防水シート材をも積層していることで、一枚のシート材料でありながら、片面は湿潤状態であって、他面は乾燥状態といった新しい材料を実現することができるようになる。
【0024】
(f)液体保持部に内蔵させる液体が洗剤、抗菌剤、香料、ワックス材料、色素材料の中の1つ以上を含んだものであることで、汚れを落としたり、衛生的にしたり、さわやかな香り付けをしたり、光沢を出したり、色付けしたりといったことを選択・組合わせして同時に行うことができるようになる。
【0025】
(g)液体保持部に内蔵させる液体が消毒液や治療液であって、患部に直接手を触れることなく簡便な処置ができるように成っている事で、接触感染のおそれのある水虫などの皮膚病の治療や傷口などの処置を、清浄性を維持したままで行うことが可能となる。
【0026】
(h)水分と接触することで発熱反応又は冷却反応を生じる物質を液体保持部近傍に備えさせていることで、例えば、暖かい紙おしぼりや冷たい紙おしぼりなどを自在に作ることができるようになる。水分と接触して発熱反応や冷却反応を起こす物質は公知のものを適宜用いればよく、どの程度の反応が望ましいかは設計上の選択事項として容易に決定することができる。
【0027】
(i)乾いた状態の布状シート材料の少なくとも一面側に、1平方cm当り1個以上の割合で、1平方cm当り5〜50g前後の圧力を加えると破損して内蔵した0.01cc〜5.0cc程度の水分などの液体を沁み出すようにされた液体保持部を複数個配置して固定し、該液体保持部を乾いた状態の布状材料でさらに覆って積層構造とすることで、上記してきた本発明の布状シート材料が確実に製造可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の布状シート材料の全体構造の1例を示す説明図面である。
【図2】図2は、本発明の液体保持部の構造の1例を示した説明図面である。
【図3】図3は、本発明の布状シート材料の製造工程を簡単に説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記してきたような本発明の具体的な実施の形態を、適宜に添付図面を用いながら以下説明する。
図1にあるように、本発明の布状シート材料1はベースとなる布状シート材料1aの上に複数個の液体保持部2を並べ、さらにその上に別の布状シート材料1bを重ねることを基本構造としている。
【0030】
液体保持部2には水などの液体を0.01cc〜5.0cc程度密封して保持させているが、この液体保持部2に対して1平方cm当り5〜50g前後の圧力を加えると破損するように選択された素材が用いられている。このような素材は公知のものから適宜に選択することが可能である。
【0031】
上記したような適宜な外圧によって破損させるためには、液体保持部2の素材自体の強度を適切に管理してもよいが、図2に示すように適宜な切り込み部3を設けることで、所望の圧力で所望の箇所が破損して液体が放出されるようにする方が簡便である。
また、密封内蔵する液体は水に限られるものではなく、目的に応じて洗剤、抗菌剤、香料、ワックス材料、色素材料などの中の1つ以上を含んだものとなし得ることは上記したとおりである。
【0032】
本発明の布状シート材料1の液体保持部2を破損させて濡らすための動作としては、折り畳むなどした上で絞る、指で部分的に圧力を加えるなど適当な手法が可能である。特別な動作は必要なく、一点に圧力がかからないようにしておけば意に反して内蔵液体が放出してしまうこともない。
【0033】
液体保持部2を破損させて放出された液体は、布状シート材料1を濡らすことになるが、この際に図3に示すように、防水シート材料4をも積層させるようにすれば、表側か裏側のどちらか所望の一方のみを濡らして、他方は乾いたままとしながら使用することができるようになる。
【0034】
このようにすることで、例えば、雑巾のような用途に本発明を応用する場合に、一面は濡れ雑巾であって他面が乾いた雑巾となるといった、今までにない製品を実現することができるようになる。
【0035】
上記してきた本発明の布状シート材料1を適切に製造する方法の1例を示したのが図3である。
すなわち、布状シート材料1aに防水シート材料4を重ねて接着する(この場合は、布状シート材料1a側を濡らさないようにするため)。その上に接着部5を介して液体保持部2を複数個並べて接着させる。
【0036】
さらにその上に布状シート材料1bを乗せて一体となるように接着することで本発明の布状シート材料1が完成する。
【実施例1】
【0037】
縦横共に20cmのサイズとして本発明の布状シート材料1を作成した。液体保持部2には水を密封し、各0.1ccとした。また、図3に示すように防水シート材料4も備えたものとして、濡れた面と乾いた面とができるようにした。
【0038】
出来上がったシート材料1はそのままでは両面乾いた状態であり、普通に重ねて収納等しても水が漏れるようなことはなかった。シートの一部を指で押して圧力を加えたり絞る動作などを加えると部分的に液体保持部2が損壊されて水が放出され、一面側は濡れた状態として雑巾のような使い方ができるようになった。
一方、他面側は乾いた状態であって乾いた雑巾として使用できる状態のままであった。
【0039】
したがって、このような本発明品によれば、濡れ雑巾と乾いた雑巾とが1枚で実現されることになった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記してきたような本発明によれば、いつでもどこでも手軽に濡れたシート状材料を手に入れることができるようになり、目的や用途に応じた液体を採用することも簡単で、様々なデザインなどを施すことも可能であって、製造コストなども低廉なものとして実現できることから、広い応用範囲を持った素材として提案することができるものであるので、産業上の利用可能性において非常に優れた発明であると考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 本発明の布状シート状材料
1a 布状シート状材料
1b 別の布状シート状材料
2 液体保持部材
3 切り込み部
4 防水シート材料
5 接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布状シート材料の少なくとも一面側に所定の圧力をかけることで破損して内蔵した水分などの液体が沁み出して乾いた状態の布状シート材料を湿潤状態とする液体保持部を複数個並べ、該液体保持部をさらに別の布状シート材料で覆う積層構造としていることを特徴とする自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項2】
液体保持部を破損して内蔵した水分などの液体が沁み出すのに必要な圧力が、1平方cm当り5〜50g前後であることを特徴とする請求項1に記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項3】
液体保持部に内蔵させる水分などの液体が0.01cc〜5.0cc程度であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項4】
液体保持部が布状材料1平方cm当り1個以上配置するように並べられていることを特徴とする請求項〜請求項3の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項5】
液体保持部から染み出した水分などの液体が布状材料の一面側しか濡らさないように防水シート材をも積層していることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項6】
液体保持部に内蔵させる液体が洗剤、抗菌剤、香料、ワックス材料、色素材料の中の1つ以上を含んだものであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項7】
液体保持部に内蔵させる液体が消毒液や治療液であって、患部に直接手を触れることなく簡便な処置ができるように成っている事を特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項8】
水分と接触することで発熱反応又は冷却反応を生じる物質を液体保持部近傍に備えさせていることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料。
【請求項9】
乾いた状態の布状シート材料の少なくとも一面側に、1平方cm当り1個以上の割合で、1平方cm当り5〜50g前後の圧力を加えると破損して内蔵した0.01cc〜5.0cc程度の水分などの液体を沁み出すようにされた液体保持部を複数個配置して固定し、該液体保持部を乾いた状態の布状材料でさらに覆って積層構造としたことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1つに記載の自在に湿潤状態と成し得る布状シート材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6402(P2013−6402A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152285(P2011−152285)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500099858)クリエーティブカミヤ株式会社 (4)
【出願人】(501130338)
【Fターム(参考)】