説明

自己保持型電磁弁における電源ユニット

【課題】商用電源を用いることができ、少ない電力で作動し、電源のON、OFF操作で開閉が可能な簡単な直動形自己保持型電磁弁の電源ユニット。
【解決手段】周囲に電磁コイル11が配置された中空筒状体12と、中空筒状体12に軸方向に移動可能に挿入配置され、電磁コイル11の磁界により移動する端部に開閉弁13を有するプランジャ14と、付勢手段15と、プランジャ14を所定位置に保持する永久磁石16とを有する自己保持型の電磁弁1における電源ユニットであって、商用交流電源を直流に整流して所定の電圧に変圧する直流電源装置と、直流電源回路に並列に接続された電圧検出回路と、電圧検出回路と直流電源回路に接続されたパルス発信回路と、パルス発信回路と電磁弁1の電磁コイル11との間に接続された極性切換回路と、直流電源回路に並列接続されたキャパシタ充電回路とからなる電源ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己保持型電磁弁に関し、特に、省エネルギー型の自己保持型電磁弁における電源ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水やガスなどのような流体を管路により搬送する際に、流体の流れを制御する目的で電磁弁が用いられており、特に開または閉状態を長く維持させる必要がある場合には連続して電流を供給するために消費する電気量を省く目的で永久磁石を用いて所定の弁位置に保持させておく自己保持型の電磁弁が知られている。
【0003】
また、前記自己保持型電磁弁において、更に省エネルギー化を図るために、弁を開閉させるための電磁コイルに供給する電源としてパルスを用いた自己保持型電磁弁における電源ユニットが、特開平9−303632号公報、特開平11−132454号公報、特開2004−173683号公報、特開2005−27507号公報、特開2005−248988号公報等に提示されている。
【0004】
しかしながら、前記従来の公報に提示されているパルスを用いた自己保持型電磁弁における電源ユニットは、電源が蓄電池で交流の商用電源を使用できなかったり、パーソナルコンピュータを用いるもので複雑な制御手段が必要であり、或いはパイロットプランジャを用いるもので構成ならびに制御が複雑である等の問題があった。
【特許文献1】特開平9−303632号公報
【特許文献2】特開平11−132454号公報
【特許文献3】特開2004−173683号公報
【特許文献4】特開2005−27507号公報
【特許文献5】特開2005−248988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、商用電源を用いることができるとともに、少ない電力で作動するとともに電源をON、OFF操作するだけで開閉が可能で、しかもパイロットプランジャを必要としない直動形であって製造が容易で安価であるばかりかゼロ圧から使用が可能で簡単な自己保持型電磁弁の電源ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためになされた本発明は、周囲に電磁コイルが配置された中空筒状体と、前記中空筒状体に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに、前記電磁コイルにより生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁を有するプランジャと、前記プランジャを前記反対方向へ付勢する付勢手段と、前記付勢手段に抗して前記所定方向へ移動したプランジャを所定位置に保持する永久磁石とを有する自己保持型の電磁弁における電源ユニットであって、電源スイッチを有する商用の交流電源を直流に整流するとともに所定の電圧に変圧する電源装置と、前記電源装置から出力される直流電源回路に並列に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路と前記電源回路とに接続されたパルス発信回路と、前記パルス発信回路と前記電磁弁の電磁コイルとの間に接続された極性切換回路と、前記直流電源回路に並列接続されたキャパシタ充電回路とからなることを特徴とする。
【0007】
前記電源スイッチをON操作することにより前記電源装置から直流電源回路に所定の直流電源が出力され、この直流電源を電圧検出回路により検出して、前記パルス発信回路から前記電磁コイルに弁開パルスを出力して開閉弁を開けるとともに開けた状態で前記永久磁石により開弁状態に保持する。同時にキャパシタ充電回路に電流が流れ、キャパシタ充電回路が所定の電流を保持した状態にある。そして、前記電源スイッチをOFF操作したとき、直流電源回路に流れている電流が遮断されたことを電圧検出回路により検出して、前記キャパシタ充電回路が放電してその際に生じる電流を用いて前記パルス発信回路から前記電磁コイルに弁閉パルスを出力して開閉弁を閉じる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の課題は、商用電源を用いることができることから蓄電池を用いる場合のように交換時期の確認や交換作業を要することがなく、停電の際にも自動閉弁が可能でありきわめて安全で、少ない電力で作動するとともに電源をON、OFF操作するだけで開閉が可能で、しかもパイロットプランジャを必要としない直動形であって製造が容易で安価であるばかりかゼロ圧から使用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の電源ユニットを使用するための自己保持型電磁弁1の一例を示すものであり、従来の自己保持型電磁弁と同様に、周囲に電磁コイル11が配置された中空筒状体12と、前記中空筒状体12に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに前記電磁コイル11により生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁13を有するプランジャ14と、前記プランジャ14を前記反対方向へ付勢するコイルばねを利用した付勢手段15と、前記付勢手段15に抗して前記所定方向へ移動したプランジャを所定位置に保持する永久磁石16とを有する。
【0011】
図2は前記図1に示した自己保持型電磁弁1を操作するために用いられる本発明である電源ユニットの好ましい実施の形態におけるブロック回路図であり、例えば100又は200VのAC(交流電源)である電源スイッチSWを有する商用電源の入力部2に例えば4.5V程度に変圧するとともに直流に整流するための直流電源装置3が接続されており、この電源装置3から出力される直流電源回路4には電圧検出回路5が並列に接続されている。この電圧検出回路5は例えば所定のICチップにより構成され、前記直流電源回路4の+電圧を検出するとパルス電流を出力する。
【0012】
また、前記直流電源回路4における前記電圧検出回路5の下流には、+側に逆流防止用のダイオードDが直列接続されているともに、その下流において、例えば5F(5V)程度で前記図1に示した自己保持型電磁弁1の電磁コイル11に適用させた所定容量の電気二重層キャパシタCが並列に接続されてなるキャパシタ充電回路6が設けられており、更に前記直流電源回路4の下流には前記電圧検出回路5の出力側が接続されたパルス発生回路7が並列に接続されている。このパルス発生回路7は前記電圧検出回路5から出力されるパルスを受けて、弁開パルス及び弁閉流パルスを発生し、これらの弁開パルス及び弁閉流パルスが前記図1に示した電磁弁1の電磁コイル11との間に接続された極性切換回路8に接続されている。
【0013】
そして、前記極性切換回路8は例えば所定のICチップにより構成され、図2に示すように、前記弁開スイッチSW1およびSW2は前記直流電源回路4における前記キャパシタ充電回路6の接続箇所よりも上流側において前記電磁弁1の電磁コイル11と接続されており前記パルス発生回路7からの弁開パルスの出力期間中はON状態になり、前記弁閉スイッチSW3およびSW4は前記直流電源回路4における前記キャパシタ充電回路6の接続箇所よりも下流側において前記電磁弁1の電磁コイル11と接続されており前記パルス発生回路7からの弁閉パルスの出力期間中はON状態になる。
【0014】
このように構成される本実施の形態を使用するには、先ず、AC電源の入力部2を所定の商用電源に接続し、電源スイッチSWをON操作すると、直流電源装置3により所定電圧、所定電流の直流電気が直流電源回路4に流れる(図3に示す(1)AC入力の経時チャート参照)。
【0015】
直流電源回路4に電流が流れると(図3に示す(2)直流電源回路(+V1)の経時チャート参照)、前記キャパシタ充電回路6に所定容量の電気が充電される(図3に示す(3)充電回路(+V2)の経時チャート参照)。そして、充電が完了すると電圧検出回路5からパルス波(パルス1)がパルス発生回路7に出力される(図3に示す(4)電圧検出回路の経時チャート参照)。尚、この充電状態は開状態に保持されている間中、持続されるが、通常、一旦充電状態になると電気の供給は維持電流だけであり、殆ど電気を必要としないのできわめて経済的である。
【0016】
そして、前記電圧検出回路5から出力されたパルス波(パルス1)がパルス発生回路7に出力されると、弁開パルス(1パルス)が極性切換回路8に出力され(図3に示す(3)充電回路(+V2)の経時チャート参照)、極性切換回路8の弁開スイッチSW1および弁開スイッチSW2を開状態として前記図1に示した電磁弁1の電磁コイル11に前記直流電源回路4から電気が流れプランジャ14を開方向へ移動させる。
【0017】
次に、電磁弁1を閉じるには、前記電源スイッチSWをOFF操作する。電源スイッチSWがOFF操作されると、AC電源の入力部2からの商用電源が切断され(図3に示す(1)AC入力の経時チャート参照)、直流電源回路4の電圧が0になり(図3に示す(2)直流電源回路(+V1)の経時チャート参照)、これを電圧検出回路5が検出して電圧検出回路5からパルス波(パルス2)が発生し、これがパルス発生回路7に出力されると、弁閉パルス(2パルス)が極性切換回路8に出力され(図3に示す(6)弁閉パルスの経時チャート参照)、極性切換回路8の弁閉スイッチSW3および弁閉スイッチSW4を開状態として前記図1に示した電磁弁1の電磁コイル11に前記キャパシタ充電回路6に充電されている所定容量の電気が電磁コイル11に放電されてプランジャ14を前記永久磁石16の吸着力に抗して閉じ方向へ移動させ、開閉弁13が付勢手段15により閉位置に保持される。
【0018】
このように本実施の形態によれば、充電や管理が必要な蓄電池を用いることなく商用電源を用いることが可能であり、少ない電力で作動するとともに電源スイッチSWをON、OFF操作するだけで開閉が可能で、しかもパイロットプランジャを必要としない直動形であって製造が容易で安価であるばかりかゼロ圧から使用も可能である。
【0019】
尚、前記実施の形態では、電源スイッチSWをON、OFF操作する場合を示したが、例えば自己保持中(開状態)で停電や自己などにより入力電源が遮断された場合には、前記電源スイッチSWをOFF操作した場合と同様の手順により開閉弁13が閉じるのできわめて安全である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が用いられる自己保持型電磁弁の一例を示す縦断面図。
【図2】本発明の好ましい実施の形態におけるブロック回路図。
【図3】図2に示した実施の形態における各回路や装置における電圧の変化を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0021】
1 自己保持型電磁弁、2 入力部、3 直流電源装置、4 直流電源回路、5 電圧検出回路、6 キャパシタ充電回路、7 パルス発生回路、8 極性切換回路、11 電磁コイル、12 中空筒状体、13 開閉弁、14 プランジャ、15 付勢手段、16 永久磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に電磁コイルが配置された中空筒状体と、前記中空筒状体に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに、前記電磁コイルにより生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁を有するプランジャと、前記プランジャを前記反対方向へ付勢する付勢手段と、前記付勢手段に抗して前記所定方向へ移動したプランジャを所定位置に保持する永久磁石とを有する自己保持型の電磁弁における電源ユニットであって、
電源スイッチを有する商用の交流電源を直流に整流するとともに所定の電圧に変圧する電源装置と、前記電源装置から出力される直流電源回路に並列に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路と前記電源回路とに接続されたパルス発信回路と、前記パルス発信回路と前記電磁弁の電磁コイルとの間に接続された極性切換回路と、前記直流電源回路に並列接続されたキャパシタ充電回路とからなることを特徴とする自己保持型電磁弁における電源ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−156314(P2009−156314A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333459(P2007−333459)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000137018)株式会社ベン (21)
【Fターム(参考)】