説明

自己制御式永久磁石発電機

交流発電機は、回転磁界を発生させる永久磁石手段と、永久磁界に隣接し且つ回転磁界内にある少なくとも2つの界磁巻線を含む電機子手段と、負荷に接続される電機子手段の1次巻線と、電機子上の1次巻線からオフセットされ且つ容量性負荷に接続された2次巻線とを備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電磁誘導の発見は、1831年11月24日、ファラデーにより英国学士院の面前で口頭発表をした論文において公表された。発明者らは、各種の設計の電気磁気機械の開発を直ちに開始した。その結果、1832年、電流が導体を通過すると磁界を発生させることが分かった。力線の概念が既に確立されており、永久磁石の場の中で導線コイルが回転することにより導線内に電圧が発生することは公知であった。
【0002】
発電機は、次の2つの部品、すなわち、初期の機械では簡単な又は複合の永久磁石からなっていた磁場システムと、電気を発生させるコイルシステム又は巻線とを含むことは一般的に知られている。2つのシステムの相対的運動は必須であるが、磁石又はコイルのいずれが移動するかは重要ではなく、実際には、両タイプの構造が使用されている。
【0003】
ファラデーによる実験室での実証の後、一般に公開された最初の電気磁気機械は、1832年にパリでHippolyte Pixiiにより発表された。この機械では、界磁石はコイルに対して回転した。該機械は手動式であり、実用模型に過ぎなかったが、ファラデーの原理に基づいて構築された最初の実用的な発電機であった。
【0004】
最初の商業規模での発電機の製造は、E.M.Clarkeによるものであった。彼は、1830年代、ロンドンで科学機器のメーカーとして事業を営んでいた。Clarkeの設計は、コイルが磁石の両側面と平行な面で回転する点でそれまでのものとは異なっていた。Clarkeは、各種のタイプの巻線を使用して実験を行った最初の人物であったと思われ、間もなく、ユーザの要件に適合するように出力を変えることができることを見出した。
【0005】
1855年4月11日、「改良された電磁気バッテリー」に対しデンマークのSoren Hjorthに英国特許第806号が付与された。記載される当該機械は、主励磁が電磁石から得られる発電機である。Hjorthは、電磁石磁場システムから得られる利点、すなわち、磁界の界磁強度は変化させることができることを認識していた。彼の特許の添付図面では、一連のコイルを支持する回転ディスクが2列の電磁石の間を回転するように作られ、初期励磁を供給するための永久磁石が付加された機械を示していた。
【0006】
1866年12月、E.W.Von Siemensは、永久磁石を使用しない機械的エネルギーから電気的エネルギーへの変換に関して記載した論文をベルリン科学アカデミーに提出した。1867年2月14日、彼の兄弟のCharles Siemensは、ロンドンの英国学士院に論文の内容を通知し、自己励磁原理を実証する手動式の模型発電機を提示した。
【0007】
今日では、Zenobe Grammeが真に連続電流を生成できる最初の発電機を構築したと一般的に考えられている。Gramme社は、1873年までには、英国ウエストミンスターの時計塔における公判用の機械を提供していた。Grammeの発電機は、1874年までにフランス海軍の少なくとも2隻の主力艦及びロシア海軍の一部の艦船に使用されていた。
【0008】
【特許文献1】英国特許806号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、発電技術の歴史全体は、永久磁石界磁システムから電磁気自励式発電機への進歩である。この発展の理由は、同期発電機、すなわち永久磁石の界磁により励磁される定速回転交流発電機は、該発電機に掛かる負荷に反比例する電圧を発生することによる。負荷が増大するに従って出力電圧は低下する。この永久磁石交流発電機の欠点は、これまで商業的に使用することを妨げてきた。従来技術により教示される全ての従来の発電機、すなわち界磁励磁用に電磁石を使用する発電機は、スリップリング又は整流子により電気的に接続されたこれらの回転巻線を有する必要がある。これらのスリップリング又は整流子、及びこれらの関連ブラシは、摩損による故障を生じやすい。このようなリング及び整流子は交換又はメンテナンスを行う必要がある。これらは、本発明より以前においては従来技術が克服していない問題を提起する。
【0010】
交流電力は一定の回転速度で作動する発電機により生成される。これらの発電機は、磁界を通して巻線を運動させ、ファラデーの法則に従って電流の流れを誘起する。電流の流れを誘起する磁界が一定であり、磁界を通る導体速度も一定の場合には、発電機により発生する電圧は、発電機に加わる負荷の一次関数となる。負荷が増加するに従って、出力電圧は、交流回路の動作を予測する公知の電気法則に従って減少する。
【0011】
一定で作動する交流発電機の磁界が永久磁石の運動により発生する場合には、主磁界の磁界強度は一定であり、従って、発電機の電圧出力は、発電機出力の両端に加わる負荷に反比例することになる。負荷に対する電圧出力のこの反比例の関係により、これまで永久磁石を同期交流発電機の主磁界として使用することができなかった。永久磁石発電機は、主磁界をもたらす永久磁石を保持する発電機の回転部分に対する電気的接続を必要としないので、簡単且つ信頼性がある。
【0012】
本発明者は、変動する電気負荷の下で一定速度で作動し、負荷の増加に伴って発電機の電圧低下を生じるこの長年の問題を回避する永久磁石交流発電機を教示した従来技術については全く認識していない。
【0013】
大部分の電気負荷は、適切な作動を行うために電圧調整を必要とする電子機器を備える。永久磁石交流発電機は、本質的に固定磁界であるので定電圧出力を供給する能力がない。従来技術では定電圧巻線界磁発電機の利用を教示しており、ここで、磁界を発生させるのに使用される発電機部分は電磁石であり、その磁界強度は主発電機に加わる負荷条件に応じて電子又的は磁気的フィードバック回路を使用して変えることができる。
【0014】
これらの巻線型界磁発電機は種々の電圧調整手段に依存する。例えば、交流発電機は、発電機の主磁界を発生する電磁巻線の磁界強度を変えることにより電圧調整を行い、発電機の出力両端に負荷を加えることにより生ずる電機子反作用を補償することができる。このことは、外部の電子又は磁気電圧レギュレータを使用しフィードバック回路を介して達成することができる。これらの電圧制御手段は、電気機械設計の当業者には周知である。代替的に、従来技術はまた、主巻線から約90度に配置される別個の励磁巻線の使用についても教示している。これらの励磁巻線は、電圧の増加により主負荷に反作用し、主磁界を増大させることで、発電機出力の両端の負荷を増大させることにより生ずるリアクタンスを補償する。従来技術ではまた、主巻線を外側のブラシレス発電機磁界に通すことは周知であり、これは主磁界強度を増加さて増加した負荷を補償する効果がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、主回転磁界が永久磁石により提供される永久磁石発電機である。負荷は、電機子の周囲に巻かれた主巻線に接続され、該電機子は更に、1次巻線から90度だけオフセットされた2次巻線を備え、容量性負荷に接続される。容量性負荷の値は、全負荷が1次巻線の両端に加えられたときに1次巻線のリアクタンスを相殺するように選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
永久磁石101は、矢印105で示される方向に軸103を中心に回転する。環状電機子107は、永久磁石101を円筒状に囲む。電機子107及び永久磁石101は環状109を定める。
【0017】
電機子107は、1次巻線113を収容する1次巻線スロット111に取り付けられる。1次巻線113は、電気負荷である負荷115に並列接続される。
【0018】
電気負荷115は、適切に作動するため制御された電圧を必要とするあらゆる装置とすることができる。
【0019】
電気子107は更に、1次巻線から90度オフセットされた2次巻線チャネル117を備え、2次巻線119を収容する。2次巻線119は容量性負荷121に並列接続される。
【0020】
容量性負荷121の値は、容量性負荷121及び2次巻線119により発生するリアクタンスが、抵抗負荷115及び1次巻線113から形成される回路によって発生するリアクタンスに正比例するように選択される。
【0021】
本発明の1次及び2次巻線は、単相巻又は多相巻とすることができる。2次巻線が多相巻である場合、容量性負荷121は多相容量性負荷になる。
【0022】
永久磁石101により発生する永久磁界(図示せず)は、電機子の周囲を回転して、1次巻線113及び2次巻線119に電圧を誘起する。容量性負荷121は、全負荷で負荷115からの電機子リアクタンスに等しくなるに必要な電機子リアクタンスを提供する十分な容量のものである。
【0023】
機能上無負荷の状態では、本発明において、回転する永久磁石101により生成される励磁と、容量性負荷121に接続される2次電気巻線119とのベクトル和は、1次巻線113の両端に発電機の公称出力電圧を生成する。
【0024】
負荷115が1次巻線113に接続された場合、1次巻線のリアクタンスは、2次巻線119及び容量性負荷121のリアクタンスにより相殺されることになる。2次巻線119は、1次巻線113から約90度にあり、従って、巻線119のリアクタンスは、巻線113上の負荷に正比例する。
【0025】
その結果、本発明により教示される永久磁石交流発電機の電圧出力は、無負荷から全負荷まで相対的に一定である。従って、これにより本発明は、何らかの巻線型界磁に接続される外部レギュレータを使用することなく、永久磁石同期交流定速発電機の電圧調整を達成する。
【0026】
発明者は、本発明が、交流定電圧発電機技術における全般的な進歩であると考える。本発明者の考えでは、その新規性により、巻線型界磁を使用することなく定速永久磁石発電機から調整された出力電圧を提供する能力がもたらされる。従って、上記の概略的な実施例は、本発明の好ましい実施形態の一般的な場合を示しているが、本発明は、この特定の実施形態に限定されるべきではなく、添付の請求項の範囲及びこれらの均等物によってもの限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従って構築された発電機の概略断面図である。
【符号の説明】
【0028】
101 永久磁石
103 軸
107 電機子
109 間隙
111 1次巻線スロット
113 1次巻線
115 電気負荷
117 2次巻線スロット
119 2次巻線
121 容量性負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.回転磁界を発生させる永久磁石手段と、
b.前記永久磁石磁界に隣接し且つ前記回転磁界内にある少なくとも2つの界磁巻線を含む電機子手段と、
c.負荷に接続される前記電機子手段の1次巻線と、
d.前記電機子上で前記1次巻線からオフセットされ、容量性負荷に接続された2次巻線と、
を備える交流発電機。
【請求項2】
全負荷が前記1次巻線の両端に加えられた場合、前記容量性負荷の電機子リアクタンスは、前記1次巻線の電機子リアクタンスに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
全負荷が前記1次巻線の両端に加えられ且つ前記オフセットが約90度である場合、前記容量性負荷の電機子リアクタンスは、前記1次巻線の電機子リアクタンスに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
全負荷が前記1次巻線の両端に加えられ、前記オフセットが約90度であり、及び前記磁界の回転が一定の角速度である場合、前記容量性負荷の電機子リアクタンスは、前記1次巻線の電機子リアクタンスに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505620(P2009−505620A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526296(P2008−526296)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/031750
【国際公開番号】WO2007/022139
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508043202)パワー グループ インターナショナル インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】