説明

自己消炎性熱可塑性ポリウレタン、その使用およびその製造方法

【課題】本発明は、自己消炎性熱可塑性ポリウレタン、その製造方法およびその使用に関する。
【解決手段】防炎化のために、TPUがメラミンおよびメラミンシアヌレート、および必要に応じて防炎加工剤の混合物を含有する点において、本発明の目的を達成することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己消炎性熱可塑性ポリウレタン、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、その良好なエラストマー特性および熱可塑的な加工性のため工業的に非常に重要である。TPUの製造、特性および使用の概観は、例えばKunststoff Handbuch(G.Becker、D.Braun)、第7巻、「Polyurethane」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Verlag、1983年に記載されている。
【0003】
TPUは通常、直鎖状ポリオール(マクロジオール)、例えばポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネートジオールなど、有機ジイソシアネートおよび短鎖状、通常は二官能性のアルコール(鎖延長剤)から製造される。これらは連続的にまたは不連続的に製造され得る。最も既知の製造方法は、ベルトプロセス(GB−A第1057018号)および押出機プロセス(DE−A第1964834号)である。
【0004】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーは、段階的に(プレポリマー計量法)または一段階における全成分の同時反応(ワンショット計量法)によって製造され得る。
【0005】
TPUの欠点はその易燃性である。該欠点を低減するために、防炎加工剤、例えばハロゲン含有化合物などをTPUへ組み込む。しかしながら、これらの生成物の添加は、得られたTPU成形組成物の機械的特性について悪影響を有することが多い。また、ハロゲンを含有しない自己消炎性のTPU成形組成物は、ハロゲン含有物質の腐食作用のため、目標とする価値がある。
【0006】
EP−B第0617079号には、ホスフェートおよび/またはホスホネートとメラミンシアヌレートとの組み合わせの使用が記載されている。とりわけ、ポリマー母材中における該高融点充填剤の配分はわずかではない。さらに、高い充填剤含有量にもかかわらず、燃焼特性は不十分であることが多い。
【0007】
US−A第5110850号には、メラミンの使用が記載されている。非常に多量のメラミンを添加しなければならないが、それにもかかわらず燃焼特性は不十分である。
【0008】
とりわけ、TPUが電気/エレクトロニクス分野において用いられる場合、特にケーブルにおいては、燃焼特性についての要求は非常に厳しい。さらに、燃焼し易いケーブルにおいては、防炎化されていないポリオレフィン(例えばポリプロピレン)がしばしば外装に用いられ、その結果、TPUは、自らの耐燃性に加えて、該ポリオレフィンをさらに消火する役目をも担うことになる。TPU外装の薄い肉厚と同時の良好な押出適性での燃焼特性についてのこれらの厳しい要求は、既知のTPU材料によっては満たされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第1057018号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第1964834号明細書
【特許文献3】欧州特許第0617079号明細書
【特許文献4】米国特許第5110850号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G.Becker、D.Braun、Kunststoff Handbuch、第7巻、「Polyurethane」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Verlag、1983年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ケーブル外装材料として、ハロゲンを含有しない防炎加工剤を含有し、高熱の炎を伴う発火後、数秒で消火し、およびドリップせず、もしくは燃焼ドリップを形成しない自己消炎性熱可塑性ポリウレタンを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
防炎化のために、TPUがメラミンおよびメラミンシアヌレート、および必要に応じて防炎加工剤の混合物を含有する点において、本発明の目的を達成することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施態様は、
a)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネート、
b)ポリヒドロキシ化合物、
c)鎖延長剤、
d)防炎加工剤、および必要に応じて、
e)触媒、
f)連鎖停止剤、および
g)補助物質および/または添加剤
に基づく熱可塑性ポリウレタンであり、該防炎加工剤がメラミンシアヌレートおよびメラミンを含み、および必要に応じて、少なくとも一つのさらなる防炎加工剤を含んでなる。
【0014】
本発明の他の実施態様は上記の熱可塑性ポリウレタンであり、前記ポリヒドロキシ化合物が実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物である。
【0015】
本発明のさらに別の実施態様は、
A)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネート(a)、
B)ポリヒドロキシ化合物(b)、および
C)鎖延長剤(c)を、
D)防炎加工剤(d)、および必要に応じて、
E)触媒(e)、
F)連鎖停止剤(f)、および
G)補助物質および/または添加剤(g)
の存在下に反応させる工程を含んでなる、上記の熱可塑性ポリウレタンの製造方法であり、前記防炎加工剤がメラミンシアヌレートおよびメラミンを含み、および必要に応じて、少なくとも一つのさらなる防炎加工剤を含んでなる。
【0016】
本発明の他の実施態様は、前記ポリヒドロキシ化合物は実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物である、上記の方法である。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様は、上記の熱可塑性ポリウレタンを含んでなる射出成形物品である。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様は、上記の熱可塑性ポリウレタンを含んでなる押出物品である。
【0019】
従って、本発明は、
a)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネートと、
b)ポリヒドロキシ化合物、特に実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物と、
c)鎖延長剤とから、
d)防炎加工剤、および必要に応じて、
e)触媒、
f)連鎖停止剤、
g)補助物質および/または添加剤
の存在下に得られ、該防炎加工剤としてメラミンシアヌレートおよびメラミン、および必要に応じてさらなる他の防炎加工剤を用いる、自己消炎性熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明による自己消炎性熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
A)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネート(a)を、
B)ポリヒドロキシ化合物(b)、特に実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物および、
C)鎖延長剤(c)と、
D)防炎加工剤(d)、および必要に応じて、
E)触媒(e)、
F)連鎖停止剤(f)、
G)補助物質および/または添加剤(g)
の存在下に反応させ、該防炎加工剤としてメラミンおよびメラミンシアヌレート、および必要に応じてさらなる他の防炎加工剤を用いる、前記方法を提供する。
【0021】
次いで、メラミンおよびメラミンシアヌレートを、必要に応じて、コンパウンドすることによって完成TPUに添加してもよい。
【0022】
熱可塑性ポリウレタン(略してTPUとも称される)は、実質的に直鎖状で熱可塑的に加工可能なポリウレタンである。
【0023】
メラミンおよびメラミンシアヌレートの組み合わせの使用によって自己消炎性TPU成形性組成物を得ることが可能となったことは、驚くべきことであって、完全に予測できないことであった。
【0024】
それ自体既知で、従来の方法によって製造され得る全てのTPUは、原則として本発明による「防炎化」に適している。
【0025】
TPUを以下の成分から好ましく製造する:
【0026】
用い得る有機ジイソシアネート(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族およびヘテロ環式ジイソシアネートまたはこれらのジイソシアネートの任意の所望の混合物である(HOUBEN−WEYL、「Methoden der organischen Chemie」、第E20巻、「Makromolekulare Stoffe」、Georg Thieme Verlag、シュトゥットガルト、ニューヨーク、1987年、第1587〜1593頁またはJustus Liebigs Annalen der Chemie、562、第75〜136頁を参照されたい)。
【0027】
具体的には、次のものを例示できる:脂肪族ジイソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,12−ドデカンジイソシアネートなど;脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロへキサンジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロへキサンジイソシアネートおよび相当する異性体混合物、および4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび相当する異性体混合物など;さらに芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートと2,6−トルイレンジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、ウレタン変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−1,2−ジフェニルエタンおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートなど。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、96重量%を越える4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物、および特に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートは好ましく用いられる。上記のジイソシアネートは、単独でまたは互いの混合物の形態で用いてよい。これらは15mol%(全ジイソシアネートとして計算した)までのポリイソシアネートと一緒に用いてもよいが、多くとも熱可塑的になお加工可能な生成物を形成するような量でポリイソシアネートを添加するべきである。ポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートおよびポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートである。
【0028】
ポリヒドロキシル化合物またはポリオール(b)は、平均で少なくとも1.8〜多くとも3.0のツェレビチノフ活性水素原子および450〜10000、好ましくは450〜6000の数平均分子量Mを有するものである。これらの生産に起因して、これらはしばしば少量の非直鎖状化合物を含有する。従って、「実質的に直鎖状のポリオール」と称されることも多い。ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールまたはこれらの混合物は好適である。
【0029】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有する1以上のアルキレンオキシドと、二つの結合した活性水素原子を含有する出発分子を反応させることによって調製してよい。アルキレンオキシドとして、例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシドを挙げることができる。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物は好ましく用いられる。アルキレンオキシドは、単独で、交互に連続して、または混合物として用いてよい。可能な出発分子は、例えば、水、アミノアルコール、例えばN−アルキル−ジエタノールアミンなど、例えばN−メチルジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−へキサンジオールなどである。出発分子の混合物は、必要に応じて用いてもよい。さらに、適当なポリエーテルオールは、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランのさらなる重合生成物である。三官能性ポリエーテルは、二官能性ポリエーテルを基準として0〜30重量%の割合で用いてもよいが、多くとも熱可塑的になお加工可能な生成物を形成するような量である。実質的に直鎖状のポリエーテルジオールは、450〜6000の数平均分子量Mを好ましく有する。これらは、単独でまたは互いの混合物の形態で用いてよい。
【0030】
適当なポリエステルジオールは、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸、および多価アルコールから製造してよい。可能なジカルボン酸は、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸など、または芳香族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などである。ジカルボン酸は、単独で、または混合物として、例えば、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸混合物の形態で用いてよい。ポリエステルジオールの製造のために、適切な場合には、ジカルボン酸の代わりに相当するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸塩化物などを用いることは有利であり得る。多価アルコールの例は、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールである。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独で、または互いの混合物の状態で用いてよい。炭酸と、上記のジオール、特に4〜6個の炭素原子を有するもの、例えば1,4−ブタンジオールまたは1,6−へキサンジオールなどとのエステル、ω−ヒドロキシカルボン酸、例えば、ω−ヒドロキシカプロン酸などの縮合生成物、またはラクトン、例えば必要に応じて置換したω−カプロラクトンの重合生成物はさらに適当である。エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−へキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−へキサンジオール1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンは、ポリエステルジオールとして好ましく用いられる。ポリエステルジオールは、450〜10000の数平均分子量Mを有し、単独で、または互いの混合物の形態で用いてよい。
【0031】
鎖延長剤(c)は、平均1.8〜3.0のツェレビチノフ活性水素原子を有し、60〜400の分子量を有する。アミノ基、チオール基またはカルボキシル基を含有する化合物に加えて、これらは、2〜3個、好ましくは2個のヒドロキシル基を有するものを意味すると理解される。
【0032】
2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールなどは、鎖延長剤として好ましく用いられるが、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸ビス−エチレングリコールまたはテレフタル酸−ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、(シクロ)脂肪族ジアミン、例えばイソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−プロピレン−1,3−ジアミンおよびN,N’−ジメチルエチレンジアミンなど、および芳香族ジアミン、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルイレンジアミンまたは3,5−ジエチル−2,6−トルイレンジアミンまたは第1級モノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラアルキル−置換4,4’−ジアミノジフェニルメタンなども適当である。エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンまたは1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAは、鎖延長剤として特に好ましく用いられる。上記の鎖延長剤の混合物を用いてもよい。さらに、比較的少量のトリオールを添加してもよい。
【0033】
本発明に従えば、メラミンとメラミンシアヌレートの混合物は、防炎加工剤(d)として用いられる。メラミンとメラミンシアヌレートは、市販されている形態で用いてよい。
【0034】
メラミンとメラミンシアヌレートの全量は、TPUの全量を基準として、好ましくは10乃至60重量%、特に好ましくは15〜50重量%の間である。メラミンとメラミンシアヌレートの重量比は、30:1〜1:30、好ましくは10:1〜1:10の間である。
【0035】
さらなる防炎加工剤(メラミンとメラミンシアヌレートを除く)、例えばホスフェートおよび/またはホスホネートなどを必要に応じて用いてもよい。概観については、例えば、H.Zweifel、Plastics Additives Handbook、第5版、Hanser Verlag Munich、2001年、第12章;J.Green、J.of Fire Sciences、1997年、15、第52〜67頁またはKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第10巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク、第930〜998頁を参照されたい。組み込み得る防炎加工剤は、例えばUS−B第7160974号に記載のように、さらなる防炎加工剤として同様に用いてもよい。
【0036】
適当な触媒(e)は、先行技術から既知の従来の第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど、および特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、ビスマス化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレートまたは脂肪族カルボン酸の錫ジアルキル塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレートなどである。好適な触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、および鉄、ビスマスおよび錫の化合物である。本発明によるTPU中における触媒の全量は、TPUの全量を基準として、通常0〜5重量%、好ましくは0〜2重量%である。
【0037】
イソシアネートに対して単官能性である化合物(f)は、いわゆる連鎖停止剤として、TPUを基準として2重量%までの割合で用いてよい。適当な化合物は、例えばモノアミン、例えばブチル−およびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンまたはシクロヘキシルアミンなど、およびモノアルコール、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルなどである。
【0038】
本発明による熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、TPUの全量を基準として最大20重量%までの量で補助物質および添加剤(g)を含有してよい。典型的な補助物質および添加剤は、潤滑油および離型剤、例えば脂肪酸エステル、その金属セッケン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミドおよびシリコーン化合物など、粘着防止剤、抑制剤、加水分解、光、熱および変色に対する安定剤、染料、顔料、無機および/または有機の充填剤、可塑剤、例えばホスフェート、フタレート、アジペート、セバケートおよびアルキルスルホン酸エステルなど、静真菌作用および殺菌作用の物質ならびに充填剤および強化剤とその混合物である。強化剤は、特に、繊維強化剤、例えば先行技術に従って製造され、サイズ剤で充填されていてもよい無機繊維などである。上記の補助物質および添加剤についてのより詳細な情報は、技術文献、例えば、J.H.SaundersおよびK.C.Frischによるモノグラフ、「High Polymaers」、第XVI巻、ポリウレタン、第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers、1962年および1964年、R.GachterおよびH.MullerによるTaschenbuch fur Kunststoff−Additive(Hanser Verlag、ミュンヘン、1990年)またはDE−A第2901774号に見出される。
【0039】
本発明によるTPUの製造のために、ビルダー成分(a)、(b)、(c)および必要に応じて(f)を、本発明による防炎加工剤(d)および必要に応じて触媒(e)および補助物質および/または添加剤(g)の存在下、ジイソシアネート(a)のNCO基とツェレビチノフ活性水素原子を含有する成分(b)、(c)、(d)および(f)の合計の当量比が、0.9:1〜1.1:1であるような量で反応させる。組み込み得る防炎加工剤を(d)として用いる場合には、これをビルダー成分(a)、(b)および(c)の反応の間、全ての場合に存在させるが、メラミンおよびメラミンシアヌレートをその後、TPUに添加してもよい。
【0040】
本発明によるTPU成形組成物は、自己消炎性であって、ドリップせず、および燃焼ドリップを形成しない。
【0041】
本発明によるTPUは必要に応じて、さらに、例えばシートまたはブロックを製造するためにTPUを状態調節することによって、シュレッダーまたはミル中での粉砕または造粒によって、溶融によるガス抜き(devolatilization)および造粒によって、加工してよい。TPUは、連続的なガス抜き(devolatilization)および押出物品形成のために装置を好ましく通過させる。該装置は、例えば多軸スクリュー押出機(TSE)であってよい。
【0042】
本発明によるTPUは、特にケーブル外装用の、射出成形物品および押出物品の製造のために好ましく用いられる。
【0043】
以下の実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0044】
上記の全ての参照は、全ての有用な目的のためにその全体を参照することによって組み込まれる。
【0045】
本発明を具体的に表現するある特定の構造が示され、および記載されているが、根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく種々の変形および一部を再構成することができることは当業者には明らかであり、本明細書に示され、および記載された特定の形態に制限されないことも同様である。
【実施例】
【0046】
以下は用いる略称である:
〔Terathane(登録商標) 1000〕
=1000g/molの分子量を有するポリエーテル;Du Pont de Nemours製の製品
〔MDI〕
メチレン−4,4’−(フェニル−ジイソシアネート)、Bayer MaterialScience AG製のDesmodur(登録商標) 44 M
〔BDO〕
1,4−ブタンジオール
〔Irganox(登録商標) 1010〕
テトラキス(メチレン−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート))メタン、Ciba Specialty Chemicals Inc.製の製品
〔Licowax(登録商標) C〕
Clariant Wurtz GmbH製の離型剤
〔MC〕
メラミンシアヌレート、防炎加工剤
〔M〕
メラミン、防炎加工剤
〔BDP〕
ビスフェノールAジフェニルホスフェート、オリゴマー混合物、防炎加工剤
〔IHPO〕
イソブチル−ビス(ヒドロキシプロピル)−ホスフィンオキシド、防炎加工剤
【0047】
TPU−Aの製造(IHPOとBDPを用いた)
BDP(TPUの全量を基準として10重量%)、Irganox(登録商標) 1010(TPUの全量を基準として0.4重量%、)および錫ジオクトエート(Terathane(登録商標) 1000の量を基準として100ppm)を含有したTerathane(登録商標) 1000(650g/分)を180℃に加熱し、ZSK 53(Werner&Pfleiderer製二軸スクリュー押出機)の最初のハウジング中にギアポンプを用いて連続的に計量した。
【0048】
ブタンジオール(98g/分)およびIHPO(51g/分;60℃、TPUの全量を基準として4重量%)を同じハウジング中にLicowax(登録商標) C(5g/分;TPUの全量を基準として0.4重量%)と一緒に連続的に計量した。
【0049】
次いでDesmodur(登録商標) 44 M(461g/分)をハウジング3中に連続的に計量した。
【0050】
押出機のハウジング1〜3を80℃に加熱し、ハウジング4〜8を220〜230℃に加熱し、その一方、最後の4ハウジングを冷却した。スクリュー速度は290rpmであった。
【0051】
スクリューの末端で、熱溶融物をストランドとして取り出し、水槽中で冷却し、粒状化した。
【0052】
TPU−Aを実施例1〜4のための基礎原料として75重量%の量で用いた。
【0053】
TPU−Bの製造
92のショアA硬度を有するTPUを製造した。この目的のために、1000gのTerathane(登録商標) 1000、180gのBDO、7gのIrganox(登録商標) 1010および4gのLicowax(登録商標) Cの混合物を1分あたり500回転(rpm)の速度でブレードスターラーで撹拌しながら(Terathane(登録商標) 1000を基準として)50ppmの錫ジオクトエートと共に180℃に加熱した。その後、745gのMDIを添加した。次いで該混合物を110秒間撹拌し、TPUを注ぎ出した。最後に、該物質を80℃で30分間、後処理した。完成TPUを、裁断し、粒状化し、さらに加工した。
【0054】
TPU−Bを実施例5〜7のための基礎原料として64.5重量%の量で用いた。
【0055】
押出
一軸スクリュー押出機:
一軸スクリュー押出機30/25D(Brabender製Plasticorder PL 2000−6)中においてメラミンシアヌレートおよび/またはメラミン(量については表1を参照されたい)を添加してTPU顆粒を溶融し(計量3kg/時間;温度230〜195℃)、次いでストランド造粒機を用いて顆粒に加工した(実施例1および2)。
【0056】
二軸スクリュー押出機(TSE):
メラミンおよび/またはメラミンシアヌレート(量については表1を参照されたい)を製造したTPU顆粒に添加した。以下の構成:
1.コンベヤー部を有する冷吸入域
2.第1ニーディング域を有する第1加熱部分(175℃)
3.コンベヤー部およびニーディング域を有する第2加熱域(185℃)
4.ニーディング域、コンベヤー部および真空ガス抜き(devolatilization)を有する第3加熱域(190℃)
5.クロスヘッド(195℃)およびダイ(190℃)
を有する、タイプDSE 25、4Z、360Nmの押出機上で、220rpmの速さでの10kg/時間の供給によって押出を実施し、次いで、ストランド造粒機を用いて顆粒へと押出物を加工した(実施例3〜7)。
【0057】
防炎特性の決定
防炎特性を、UL94Vに従って、3mmの試験試料の厚さにて決定した(Underwriters Laboratories Inc.安全の規格、「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」、第14頁以下参照、ノースブルック、1998年およびJ.Triotzsch、「International Plastics Flammability Handbook」、第346頁以下参照、Hanser Verlag、ミュンヘン、1990年に記載されている)。
【0058】
この試験において、V−0等級は、10秒未満の後燃焼時間で燃焼ドリップしないことを示す。従って、この等級を有する生成物は耐燃性と記載される。V−2等級は、30秒未満の後燃焼時間および詰綿の発火を示し、不適切な耐燃性を示す。不合格とは、試料がさらに長い後燃焼時間を有することを意味する。
【0059】
【表1】

【0060】
全ての実施例は防炎加工剤を35.5重量%の全量で含有する。
【0061】
比較例1において、TPU−Aを実施し、一軸押出機を用いて25重量%のMCと共に押出した。MCの組込が出来なかったため、防炎特性を決定することはできなかった。
【0062】
本発明による実施例2において、TPU−Aを一軸スクリュー押出機によって18重量%のMCおよび7重量%のMと共に押出した。比較例1とは対照的に、組込みが可能であった;燃焼試験ではV−0を得た。
【0063】
比較例3はTSEを用いた25重量%のMCでのTPU−Aの押出を表し、組込が可能であるが、燃焼試験ではV−2のみの等級を得た。
【0064】
本発明による実施例4は、18重量%のMCおよび7重量%のMとのTPU−Aの押出を示す。組込は可能であった。燃焼試験ではV−0を得た。
【0065】
比較例5および7において、さらなる防炎加工剤を含有しないTPU−Bをそれぞれ35.5重量%のMC(比較例5)および35.5重量のMと共に押出した(比較例7)。組込は可能であった。しかしながら、燃焼特性は不十分であった。
【0066】
25.5重量%のMCと10重量%のMを有するTPU−Bは、非常に良好な燃焼特性を有し、非常に容易に加工できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
h)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネート、
i)ポリヒドロキシ化合物、
j)鎖延長剤、
k)防炎加工剤、および必要に応じて、
l)触媒、
m)連鎖停止剤、および
n)補助物質および/または添加剤
に基づく熱可塑性ポリウレタンであって、該防炎加工剤がメラミンシアヌレートおよびメラミンを含み、および必要に応じて、少なくとも一つのさらなる防炎加工剤を含んでなる、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシ化合物は実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
A)有機ジイソシアネートおよび/または変性有機ジイソシアネート(a)、
B)ポリヒドロキシ化合物(b)、および
C)鎖延長剤(c)を、
D)防炎加工剤(d)、および必要に応じて、
E)触媒(e)、
F)連鎖停止剤(f)、および
G)補助物質および/または添加剤(g)
の存在下に反応させる工程を含み、該防炎加工剤がメラミンシアヌレートおよびメラミンを含み、および必要に応じて、少なくとも一つのさらなる防炎加工剤を含んでなる、前記方法。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシ化合物は実質的に二官能性ポリヒドロキシ化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンを含んでなる、射出成形品。
【請求項6】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンを含んでなる、押出品。

【公開番号】特開2009−138197(P2009−138197A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−309740(P2008−309740)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】