説明

自己解離可能な医療デバイス

【課題】高い含有量の治療剤を含み、かつ移植物の完全性を損なうことなく、移植後に剤の徐放を提供することができる自己解離可能な医療デバイスを提供すること。
【解決手段】本開示は、表面を有する移植可能な基材および上記表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層を備える自己解離可能な医療デバイスを記載する。このデバイスは、さらに上記第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層を備え、その結果、上記第一の層の溶解の際に、上記ポリマー層と上記基材は、互いに分離され得、2つのデバイスを形成し得る。上記基材、上記第一の解離可能な層および上記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つは、少なくとも1種の治療剤を含む。実施形態において、上記ポリマー層はまた、上記医療デバイスの表面の一部に付着され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2010年7月8日に出願された米国仮特許出願番号61/362,485の利益およびそれへの優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、医療デバイスに関し、より具体的には移植可能な基材、解離可能な層、ポリマーフィルム層および少なくとも1種の治療剤を備える自己解離可能な(self−detachable)医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
種々の医学的状態は、少なくとも一部において、罹患した患者の身体内に医療デバイスを移植することによって処置され得る。医療デバイスは、身体内に一時的に移植され得るか、または長期の期間、さらには無期限に身体内に残され得る。例えば、外科手術用メッシュは、非生分解性材料から作製され得、そして任意のタイプのヘルニアを修復するために患者の腹部に移植され得る。このメッシュは、欠損を覆って配置されるか(前方修復(anterior repair))または欠損の下に配置され得る(後方修復(posterior repair))。
【0004】
このようなデバイスは、治療剤でコーティングされ得る。しかしながら、治療用コーティングは、その治療剤の濃度において制限され得、デバイスの完全性を弱め得、そして剤の長期の放出を提供することができない可能性がある。高い含有量(payload)の治療剤を含み、かつ移植物(implant)の完全性を損なうことなく、移植後に剤の徐放を提供することができる自己解離可能な医療デバイスを提供することが有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
医療デバイスであって、以下:
表面を有する移植可能な基材、
該表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を備える、医療デバイス。
【0006】
(項目2)
前記第一の解離可能な層および前記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1種の治療剤を含む、上記項目に記載の医療デバイス。
【0007】
(項目3)
前記移植可能な基材が、縫合糸、ステープル、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュ、クランプ、ピン、ねじ、アンカー(anchor)および閉鎖デバイスからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0008】
(項目4)
前記移植可能な基材が外科手術用メッシュを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0009】
(項目5)
前記第一の解離可能な層が、多糖類、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0010】
(項目6)
前記多糖類が、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネート、ペクチン、漿剤、プルラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アラビノキシラン、細菌の多糖類およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0011】
(項目7)
前記タンパク質が、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0012】
(項目8)
前記タンパク質がコラーゲンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0013】
(項目9)
前記第一の解離可能な層がヒドロゲルを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0014】
(項目10)
前記第一の解離可能な層が水溶性ポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0015】
(項目11)
前記第一の解離可能な層が少なくとも1種の必要に応じた成分をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0016】
(項目12)
前記少なくとも1種の治療剤が、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、酵素およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0017】
(項目13)
前記少なくとも1種の治療剤が、ブピバカイン、シスプラチン、フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシンおよびそれらの組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0018】
(項目14)
前記少なくとも1種の治療剤が塩酸ブピバカインを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0019】
(項目15)
医療デバイスであって、以下:
表面を有する外科手術用メッシュ、
該表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を備え、移植後に、該第一の解離可能な層は、該外科手術用メッシュから分離する、医療デバイス。
【0020】
(項目16)
前記第一の解離可能な層および前記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1種の治療剤を含む、上記項目に記載の医療デバイス。
【0021】
(項目17)
前記第二のポリマー層が吸収性ポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0022】
(項目18)
前記第一の解離可能な層がコラーゲンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0023】
(項目19)
前記少なくとも1種の治療剤が、ブピバカイン、シスプラチン、フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシンおよびそれらの組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0024】
(項目20)
前記少なくとも1種の治療剤が塩酸ブピバカインを含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0025】
(項目21)
前記外科手術用メッシュが複数の逆立ったナップをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【0026】
(項目22)
治療剤を送達するための、自己解離可能な医療デバイスであって、該医療デバイスは:
該医療デバイスの少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、ならびに
該第一の解離可能な層および該第二のポリマー層のうちの少なくとも一方に含まれた少なくとも1種の治療剤、
を備え、ここで、該医療デバイスは、移植されるように構成される、医療デバイス。
【0027】
(項目23)
医療デバイスであって、以下:
第一の解離可能な層;および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を含む、医療デバイス。
【0028】
(項目22a)
治療剤を送達する方法であって、該方法は:
自己解離可能な医療デバイスを移植する工程を包含し、該医療デバイスは、該医療デバイスの少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、ならびに該第一の解離可能な層および該第二のポリマー層のうちの少なくとも一方に含まれた少なくとも1種の治療剤を有する、方法。
【0029】
(摘要)
本開示は、解離可能なフィルム層およびポリマーフィルム層を備える自己解離可能な医療デバイスに関する。
【0030】
(要旨)
したがって、本開示は、表面を有する移植可能な基材および上記表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層を備える自己解離可能な医療デバイスを記載する。このデバイスは、さらに上記第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層を備え、その結果、上記第一の層の溶解の際に、上記ポリマー層と上記基材は、互いに分離され得、2つのデバイスを形成し得る。上記基材、上記第一の解離可能な層および上記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つは、少なくとも1種の治療剤を含む。実施形態において、上記ポリマー層はまた、上記医療デバイスの表面の一部に付着され得る。
【0031】
実施形態において、本明細書に記載の自己解離可能な医療デバイスは、表面を有する外科手術用メッシュおよび上記表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層を備え得る。第二のポリマー層が、上記第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられ得、上記第一の解離可能な層および上記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つは、少なくとも1種の治療剤を含む。上記ポリマー層は、連続的であっても不連続的であってもよい。
【0032】
治療剤を送達する方法もまた開示され、この方法は、自己解離可能な医療デバイスを組織に移植する工程を包含する。上記自己解離可能な医療デバイスは、上記医療デバイスの少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、上記第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、および上記第一の解離可能な層および上記第二のポリマー層のうちの少なくとも一方に含まれた少なくとも1種の治療剤を備える。
【0033】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、表面を有する移植可能な基材および上記表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層を備える自己解離可能な医療デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本開示に記載される一実施形態にしたがう医療デバイスを形成する3枚のシートの織物を示す図である。
【図2】図2は、本開示に記載される別の実施形態にしたがう図1の医療デバイス上での逆立ったナップの形成を可能にするデバイスの概略的な側面図である。
【図3】図3は、本開示に記載される別の実施形態にしたがう医療デバイスの上面図である。
【図4】図4は、本開示に記載されるさらに別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図5】図5は、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図6】図6は、本開示に記載される別の実施形態にしたがう医療デバイスの側面図である。
【図7】図7は、本開示に記載されるさらに別の実施形態にしたがう医療デバイスの側面図である。
【図8】図8は、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの側面図である。
【図9】図9は、本開示に記載される別の実施形態にしたがう医療デバイスの側面図である。
【図10A】図10Aは、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図10B】図10Bは、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図11】図11は、本開示に記載される別の実施形態にしたがう医療デバイスの側面図である。
【図12A】図12Aは、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図12B】図12Bは、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【図12C】図12Cは、本開示に記載されるなお別の実施形態にしたがう医療デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(詳細な説明)
本開示は、移植可能な基材を備える医療デバイスに関する。第一の解離可能な層は、この基材の少なくとも一部に位置づけられ、第二のポリマー層は、この第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられる。少なくとも1種の治療剤は、この基材、この第一の解離可能な層およびこの第二のポリマー層のうちのいずれかと組み合わされ得る。
【0037】
本明細書に記載の医療デバイスは、自己解離可能である。自己解離可能であることによって、基材、解離可能な層およびポリマーフィルム層は、移植後に分離されるようになり得る。移植部位において、医療デバイスは、血液、水、粘液、尿、汗および胆汁などのような体液に曝露され得る。体液への曝露は、解離可能な層を固体から液体に変え得る。特定の実施形態において、解離可能な層は、医療デバイスの基材とポリマー層との間に位置づけられているので、上記解離可能な層の溶解は、上記基材から上記ポリマー層を引き離す。
【0038】
移植可能であることによって、本明細書に記載の医療デバイスは、腹腔の一部内のような、身体内の場所に、任意の期間の間、位置づけられ得る。さらに、用語「移植」および「移植される」は、腹腔の一部内のような、身体内の場所での、任意の期間にわたる医療デバイスの位置づけをいう。
【0039】
本明細書に記載の医療デバイスは、複数の層でコーティングされた外面を有する移植可能な基材を備える。患者の身体への挿入に適切な任意の医療デバイスは、一時的な基準でも永続的な基準でも、本明細書に記載される複数の層でコーティングされ得る。一部の非限定的な例としては、縫合糸、ステープル、メッシュ、パッチ、外科用綿撒糸、バットレス、クリップ、クランプ、ねじ、およびピンのような軟部組織修復デバイスが挙げられる。他の適切なデバイスとしては、ステープルライン強化材(staple line reinforcement)、組織充填材(tissue filler)、実質臓器または管腔構造物のための組織ラップ(tissue wrap)、密閉デバイス、窩壁および床強化材、筋肉内導管(intramuscular conduit)、アクセスデバイス(access device)、および創傷閉鎖デバイス(wound closure device)などが挙げられる。本明細書に記載の医療デバイスは、多孔性であっても、非多孔性であっても、複合材であってもよい。
【0040】
特定の実施形態において、この医療デバイスは、外科手術用メッシュである。本明細書中に記載される外科手術用メッシュは、相互に捩じられたフィラメントから作製された、多孔性布を備え得る。これらのフィラメントは、これらのフィラメントが互いに重なり合って共通の交点を作製する交差部を作製する様式で、水平方向および垂直方向に延び得る。この外科手術用メッシュは、製織され得るか、不織であり得るか、編成され得るか、または編組され得る。一部の実施形態において、これらのフィラメントは、二次元メッシュを形成しても三次元メッシュを形成してもよい。二次元メッシュ基材および/または三次元メッシュ基材のいくつかの例は、米国特許第7,021,086号、米国特許第6,596,002号、米国特許第7,331,199号に見出され得、これらの全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0041】
本開示において使用するために適切なメッシュとしては、例えば、コラーゲン複合メッシュ(例えば、PARIETEXTM複合メッシュ(Covidienとして事業実施中のTyco Healthcare Group LPから市販されている))が挙げられる。PARIETEXTM複合メッシュは、再吸収性コラーゲンフィルムが片面に接着された、三次元ポリエステル織物である。別の適切なメッシュとしては、Parietex ProgripTM自己固定メッシュ(これもまた、Covidienから市販されている)が挙げられる。Parietex ProgripTMは、ポリ乳酸(PLA)マイクログリップを備えるポリエステルメッシュである。他の適切なメッシュとしては、PARIETENE(登録商標)、PARIETEXTM、SURGIPROTM(全て、Covidienから市販されている);PROLENETM(Ethicon,Inc.から市販されている);MARLEX(登録商標)、DULEX(登録商標)、3D MAX(登録商標)メッシュ、PERFIX(登録商標)プラグ、VENTRALEX(登録商標)、およびKUGEL(登録商標)パッチ(全て、C.R.Bard,Inc.から市販されている);PROLITETM、PROLITE ULTRATM(全て、Atrium Medicalから市販されている);COMPOSIX(登録商標)、SEPRAMESH(登録商標)、およびVISILEX(登録商標)(全て、Davol,Inc.から市販されている);およびDUALMESH(登録商標)、MYCROMESH(登録商標)、およびINFINIT(登録商標)メッシュ(全て、W.L.Goreから市販されている)の名称で販売されているメッシュが挙げられる。さらに、本開示の範囲および文脈内にあるメッシュは、生物学的材料(例えば、同種移植片(すなわち、Lifecell製のAlloDerm(登録商標)再生組織マトリックス)、自家移植片、および異種移植片(すなわち、Covidien製のPERMACOLTM))を含み得る。代替の実施形態において、加工/精製された組織もまた使用され得る。
【0042】
特定の好ましい実施形態において、ParietexTM複合メッシュまたはParietexTMPro−gripが、本発明にしたがって利用され得る。
【0043】
上記フィラメントは、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよく、実施形態において、複数のマルチフィラメントが組み合わされて、ヤーンを形成し得る。上記メッシュは、ヘルニア修復に適切な任意のサイズおよび/または形状に構成され得ることが予想される。上記フィラメントは、コア/シース構築物を含み得る。
【0044】
特定の実施形態において、上記医療デバイスは、ヤーンの少なくとも3つのシートまたはたて糸およびそれと同数のガイドバーを使用して、トリコットタイプまたはラッセルタイプのたて編機で編成された外科手術用メッシュであり得る。
【0045】
後ろのバーに、生体適合性ポリマーの第一のモノフィラメントまたはマルチフィラメント10が、図1において実線として表わされるように、1つおきのガイドに通される(糸を通されるガイドと通されないガイドが交互になる)。中間のバーに、生体適合性ポリマーの第二のモノフィラメントまたはマルチフィラメント11が、図1において破線として表わされるように、3つおきのガイドに通される(1つのガイドに糸を通し、3つのガイドに糸を通さないパターンが繰り返される)。この中間のバーは、メッシュの縦方向の織り糸(column)の間に、ジグザグの透かしパターンを与えるような様式で働く。最後に、前のバーに、生体適合性ポリマーの第三のモノフィラメントまたはマルチフィラメント12が、図1において細い線として表されるように、1つおきのガイドに通されて(糸を通されるガイドと通されないガイドが交互になる)、鎖編みの働きをする。第三のフィラメント12(すなわち、鎖編み)は、第一のフィラメント10を閉じ込めて(imprison)このメッシュの長さを維持し、一方で、第二のフィラメント11によって形成された中間シートを有するメッシュの形成に寄与する。異なるフィラメントがヤーンを形成し得、そして以下の図表に従って動かされ得る。
【0046】
【表1】

後ろのバーは、第一のフィラメントまたはヤーンを、部分的なよこ糸として、鎖編みの下に、鎖編みを形成しない針に「巻かれる」ように配置する。この理由により、次の列では、鎖編みを形成しない針には、第一のフィラメントまたはヤーンが巻かれず、ループ14aを形成するフィラメントが外れてメッシュの前面から突出することを可能にする。
【0047】
中間のバーにおいて、3つおきに糸を通す(1つのガイドに糸を通し、3つのガイドに糸を通さないパターンが繰り返される)ことにより、変位(displacement)に関して、幅が安定であり、組織の良好な一体化を可能にする透かしの入った、軽量の生地(ground texture)を形成することが可能になる。
【0048】
このように得られたメッシュ14は、ループ14aとともに提供され得(図2)、これらは、メッシュ表面の一方に対して垂直であり得る。ループ14aは、直角に保持され得、このことは、使用されたフィラメントの剛性または腰の強さ(nerve)によって得られ得る。この剛性は、グリップ機能を確実にする逆立ったナップの続いての形成のために必要とされ得る。
【0049】
織機を離れる際に、メッシュ14は、メッシュの長さと幅とを安定化する熱硬化操作に供され得る。次に、メッシュは、図2に示されるように、電熱抵抗器を備えるシリンダー13にメッシュを通過させることにある、逆立ったナップを形成する段階に供され得る。メッシュ14は、それぞれ上流15a、15b、および下流16a、16bの2対のローラーによってシリンダー13上で平らに圧縮される。これらのローラーは、それらの圧縮力を制御するために垂直方向に変位可能である。
【0050】
この制御、ならびにシリンダー13に配置された抵抗器の温度の制御およびシリンダー13を横切ってメッシュ14が動く速度の制御は、各ループ14aが2つの逆立ったナップ17を形成するように、ループ14aの各々の先端を融解させることを可能にする。
【0051】
したがって、各々の逆立ったナップ17は、メッシュ14に対して垂直に突出した、実質的に直線状の本体を有し得、この本体の自由端における先端17aは、本体の幅よりも大きな幅を有する。先端17aは、ほぼ球状の形状またはマッシュルームの形状を有する。逆立ったナップ17は、メッシュ14に、移植されたときに組織に付着する能力を付与する。加えて、逆立ったナップ17は、折りたたまれるか丸められたときに、メッシュ14の他の部分に付着し得る。実施形態において、上記解離可能な層は、逆立ったナップを含むメッシュの一部に位置づけられ得る。他の実施形態において、この解離可能な層は、逆立ったナップを含まないメッシュの一部に位置づけられ得る。
【0052】
上記第一の解離可能な層は、上記医療デバイスの表面の任意の部分に位置づけられ得る。一部の実施形態において、この解離可能な層は、連続層を形成し得る。例えば、この解離可能な層は、外科手術用メッシュの表面上に連続層を形成し得、このメッシュの多孔は、連続的なフィルムによってふさがれる。他の実施形態において、この解離可能な層は、この医療デバイスの表面の不連続な(intermittent)部分を覆う不連続層を形成し得る。一例において、この解離可能な層は、外科手術用メッシュの表面上の不連続層を形成し得、ここで、このメッシュの多孔は、不連続的なフィルムによって維持される。
【0053】
解離可能であることまたは溶解可能なことによって、本明細書に記載の第一の層は、移植部位にある体液との相互作用に続いて、固体またはゲルから液体または気体に変わり得る。実施形態において、上記第二のポリマー層は、上記第一の解離可能な層の上のみに位置づけられ得る。このような実施形態において、この第一の層の溶解は、上記医療デバイスの表面からのこの第二のポリマー層の完全な放出または解離を可能にし得る。
【0054】
代替的な実施形態において、上記第一の層はヒドロゲルを含み得る。移植ならびに体液および/または水または生理食塩水の取り込みの際に、このヒドロゲルは膨張し得、上記医療デバイスの表面および/または上記ポリマー層から解離し得る。解離の際に、この第一の層および上記第二の層は、この医療デバイスの表面との接触から解放される。ヒドロゲルは、本明細書に列挙されるもののような生体吸収性ポリマーを含み得る。
【0055】
一部の実施形態において、上記第二のポリマー層の一部は、上記第一の解離可能な層に位置づけられ得、この第二のポリマー層の一部は、上記医療デバイスの表面に位置づけられ得る。このような実施形態において、この第一の層の溶解は、この第二のポリマー層の一部のみの放出または解離を可能にし得、そして/またはこの医療デバイスの表面とこの第二のポリマー層との間に開放孔(open pore)を作り出し、組織の内方成長を促進し得る。
【0056】
上記第一の解離可能な層は、移植部位に位置づけられたときおよび/または体液に曝露されたときに溶解するのに適切な任意の材料を含み得る。この解離可能な層を形成するのに使用される適切な材料の一部の非限定的な例としては、多糖類、タンパク質、ペプチド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。実施形態において、この解離可能な層は、移植の際に溶解することができる多糖類フィルムを含み得る。適切なフィルム材料の一部の非限定的な例としては、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネート、ペクチン、漿剤、プルラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アラビノキシラン(arabinoxylan)、細菌の多糖類およびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、この解離可能な層は、カルボキシメチルセルロースを含み得る。
【0057】
他の実施形態において、上記解離可能な層は、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、フィブリノゲン、トロンビン、絹およびそれらの組み合わせのようなタンパク質を含み得る。特に有用な実施形態において、この解離可能な層は、溶解可能なコラーゲンを含み得る。
【0058】
用語「コラーゲン」は、天然であろうと合成であろうと、ヒト起源または動物起源の任意のタイプのコラーゲンを包含することが意図され、これらとしては、例えば、富化されたI型ヒトコラーゲン、III型ヒトコラーゲン、また富化されたI型+III型ヒトコラーゲンまたはIV型ヒトコラーゲン、あるいはI型動物コラーゲンまたはI型+III型動物コラーゲンのような他のコラーゲンが挙げられる。このコラーゲンは酸化されていても、酸化されていなくてもよい。
【0059】
特定の実施形態において、上記コラーゲンは、架橋することなく酸化され得る。例えば、天然のコラーゲンは、酸性の溶液に浸漬され得、そして/または酸性の溶液で洗浄され得、特にペプシン消化によるテロペプチドを除去し得る。
【0060】
上記コラーゲンはまた、酸化的開裂によって改変され得る。この目的のために、M.TARDYら(FR−A−2 601 371および米国特許第4,931,546号、これらの全体の内容は、参考として本明細書に援用される)によって記載された技術を応用して、過ヨウ素酸またはその塩のうちの1種を使用することができる。
【0061】
この技術は、10℃と25℃との間の温度、10分間〜72時間、酸性の溶液中のコラーゲンと、1〜10−5 Mの濃度、好ましくは5 10−3〜10−1 Mの濃度の過ヨウ素酸またはその塩のうちの1種の溶液とを混合することからなることを簡潔に想起される。
【0062】
このプロセスは、コラーゲンの成分の一部(これらは、ヒドロキシリジンおよび糖類)を分解し、したがって、架橋を引き起こすことなく反応性部位を作り出す。
【0063】
コラーゲンの酸化的開裂は、後に膠原性材料における穏やかな架橋を可能にするが、例えば、β照射またはγ照射による穏やかに架橋する他の手段、あるいは穏やかに架橋する他の剤(例えば、適切に低くかつ非毒性の用量での化学試薬)によって、この作用を提供する可能性を排除しない。
【0064】
一部の適用のために、本明細書に記載の医療デバイスの解離可能な層は、酸化されていないコラーゲンまたは任意の割合での酸化されていないコラーゲンおよび酸化されたコラーゲンの混合物から作製され得る。
【0065】
さらに他の実施形態において、上記解離可能な層はまた、水溶性ポリマーを含み得る。
【0066】
本明細書に記載の医療デバイスはまた、任意の生分解性ポリマーから作製され得るポリマーフィルム層を含む。この生分解性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトコポリマーを含む)であり得る。この生分解性ポリマーは、線状ポリマー、分枝ポリマー、またはデンドリマー(dendrimer)であり得る。この生分解性ポリマーは、天然起源であっても合成起源であってもよい。
【0067】
一部の非限定的な例としては、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネート、ペクチン、漿剤、プルラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸(HA)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アラビノキシラン、細菌の多糖類およびそれらの組み合わせを含む適切な多糖類が挙げられる。特定の実施形態において、上記解離可能な層は、カルボキシメチルセルロースを含み得る。
【0068】
上記基材を形成するのに使用される生体吸収性材料の一部の非限定的な例としては、以下からなる群より選択されるポリマーが挙げられる:脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミン基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(フマル酸プロピレン);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニサル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびにこれらの組み合わせ。
【0069】
より具体的には、本発明の目的で、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0071】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0072】
特定の実施形態において、前駆体(例えば、モノマーまたはマクロマー)を含むヒドロゲルは、本開示において使用され得る。前駆体の1つのタイプは、求電子剤または求核剤である官能基を有し得る。本明細書で使用される用語「官能基」は、互いに反応して結合を形成し得る基をいう。求電子剤は、求核剤と反応し、共有結合を形成する。特定の実施形態において、第一の前駆体上の第一のセットの求電子性官能基は、第二の前駆体上の第二のセットの求核性官能基と反応し得る。
【0073】
適切な求電子性官能基としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミド、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、ハロゲン化アリール、スルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、およびイミドエステルなどが挙げられる。実施形態において、この求電子性官能基は、スクシンイミジルエステルである。
【0074】
存在し得る適切な求核基としては、例えば、─NH、─SH、─OH、─PHおよび─CO−NH−NHが挙げられる。適切な前駆体の他の例は、米国特許第6,152,943号、同第6,165,201号、同第6,179,862号、同第6,514,534号、同第6,566,406号、同第6,605,294号、同第6,673,093号、同第6,703,047号、同第6,818,018号、同第7,009,034号および同第7,347,850号(これらの各々の全体の開示は、参考として本明細書に援用される)に記載される。
【0075】
上記解離可能な層と上記ポリマー層との両方はまた、少なくとも1種の必要に応じた成分から構成され得る。適切な必要に応じた成分の一部の例としては、乳化剤、粘度増強剤、色素、顔料、香料、pH改変剤、湿潤剤、可塑剤および酸化防止剤などが挙げられる。これらの必要に応じた成分は、この解離可能な層および/またはポリマー層の約10重量%までを占め得る。
【0076】
一部の実施形態において、上記解離可能な層は、少なくとも1種の可塑剤(すなわち、グリセロール)を含み得る。例えば、この解離可能な層は、カルボキシメチルセルロースとグリセロールとの組み合わせを含み得、解離可能なフィルムを形成し得る。
【0077】
本明細書に記載される解離可能なフィルムは、当業者に公知の任意の適切な方法によって形成され得る。特定の実施形態において、多糖および任意の必要に応じた成分を含む溶液が、形成され得る。この溶液は、バルクのシートストックに注型され得るか、超音波噴霧器を使用して噴霧コーティングされ得るか、押出され得るか、または成形され得るなどして、本明細書に記載の解離可能なフィルムを形成し得る。適切な溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、水、緩衝液、生理食塩水およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
一部の実施形態において、上記解離可能な層は、上記医療デバイスの表面の一部上に直接フィルムとして注型され得る。他の実施形態において、この解離可能な層は、この医療デバイスの表面の一部上に直接噴霧コーティングされ得る。さらに他の実施形態において、この解離可能な層は、この医療デバイス上に位置づけられる前に形成され得る。さらに別の実施形態において、この解離可能なフィルム層は、上記医療デバイスの表面と組み合わせる前に上記ポリマー層と組み合わされ得る。
【0079】
本明細書に記載の解離可能なフィルム層は、特定の時間範囲内で溶解するように設計され得る。例えば、この解離可能な層は、移植から72時間未満内で溶解するように設計され得る。一部の実施形態において、この解離可能な層は、移植後、約5秒〜約24時間に及ぶ時間枠の中で溶解し得る。特定の実施形態において、この解離可能な層は、移植後、約30秒〜約12時間で溶解し得る。
【0080】
一部の実施形態において、上記解離可能なフィルム層は溶解しない可能性があるが、水和し膨張して、上記基材から分離し得る。例えば、この解離可能なフィルムは、ヒドロゲルを含み得る。ヒドロゲルを含み得る適切な材料としては、本明細書に記載されるものが挙げられる。
【0081】
本明細書に記載のポリマーフィルムは、当業者に公知の任意の適切な方法によって形成され得る。特定の実施形態において、上記ポリマーおよび任意の必要に応じた成分を含む溶液が、形成され得る。この溶液は、バルクのシートストックに注型され得るか、超音波噴霧器を使用して噴霧コーティングされ得るか、押出され得るか、または成形され得るなどして、本明細書に記載のポリマーフィルム層を形成し得る。適切な溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトンおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このポリマーは、このポリマーフィルムの約0.1%(w/w)〜約95%(w/w)を占め得る。
【0082】
特定の実施形態において、CMCは、上記解離可能なフィルムの約0.1%(w/w)〜約95%(w/w)を占め得る。一部の実施形態において、このCMCは、この解離可能なフィルムの約1%(w/w)〜約75%(w/w)を占め得る。
【0083】
特定の実施形態において、コラーゲンは、上記解離可能なフィルムの約0.1%(w/w)〜約95%(w/w)を占め得る。一部の実施形態において、コラーゲンは、この解離可能なフィルムの約1%(w/w)〜約75%(w/w)を占め得る。
【0084】
一部の実施形態において、上記ポリマーフィルム層は、上記解離可能なフィルムおよび/または上記医療デバイスの表面の一部上に直接フィルムとして注型され得る。他の実施形態において、このポリマーフィルム層は、この解離可能なフィルムおよび/またはこの医療デバイスの表面の一部上に直接噴霧コーティングされ得る。さらに他の実施形態において、このポリマー層は、この医療デバイス上に位置づけられる前に形成され得る。さらに別の実施形態において、このポリマーフィルム層は、不活性基材上へ超音波噴霧ノズルを使用して形成され得る。
【0085】
特定の実施形態において、上記第一の層または上記第二の層は、噴霧技術(例えば、超音波噴霧)を使用して作製され得る。フィルムを噴霧することは、上記治療剤の高い治療上の含有量(therapeutic payload)(>1mg/cm)を含む、特有の能力をもたらす。例えば、本明細書に記載の医療デバイスは、疎水性ポリマーを含む第一の溶液と治療剤を含む第二の溶液とを超音波噴霧ノズルを介して通過させ、液滴を形成させることによって製造され得る。これらの液滴は、混合され得る一方、シリコーンシートのような不活性基材、もしくは医療デバイスの解離可能な層に向かって落下し得るか、またはそれらに堆積され得、フィルムを形成し得る。
【0086】
一部の実施形態において、上記フィルムは、疎水性ポリマーと治療剤とを含む単一の層を備える。他の実施形態において、これらのフィルムは、疎水性ポリマーを含む第一の層と治療剤を含む第二の層とを備える。さらに他の実施形態において、これらのフィルムは、三層構造体を備え、ここで治療剤を含む第二の層が、ある疎水性ポリマーを含む第一の層と、同じかまたは異なる疎水性ポリマーを含む第三の層との間に位置づけられる。
【0087】
特定の実施形態において、上記フィルムの疎水性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、およびε−カプロラクトンを含む、ホモポリマーまたはコポリマーを含み得る。例えば、本明細書中に記載される治療剤は、ラクチドとグリコリド、またはグリコリドとε−カプロラクトンのコポリマー(例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー)と組み合わせられ得る。グリコリドの量を増加させると、このフィルムの分解速度が増加し得る。一方で、ラクチドおよび/またはカプロラクトンの量を増加させると、このフィルムの分解/吸収プロフィールが延長され得る。例えば、ラクチドに富むコポリマー(すなわち、約50%より多いラクチド)は、特定のポリマー(例えば、グリコリド)の溶解度を高めるために、特に有用であり得る。
【0088】
上記フィルムを形成するのに使用される疎水性ポリマーは、超音波噴霧器を通過させる前に、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを含むポリマー溶液を最初に形成し得る。このポリマー溶液を形成するのに適切な溶媒の一部の非限定的な例は、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトンおよびそれらの組み合わせを含み得る。このポリマーは、この溶液において約1.0%(w/w)〜約25%(w/w)を占め得る。
【0089】
一部の実施形態において、上記疎水性ポリマーの溶液を形成するのに使用される溶媒は、上記治療剤の溶液を形成するのに使用された溶媒と同じでなくてもいい。一部の実施形態において、この治療剤は、このポリマー溶液を形成するのに使用された溶媒と混和しない。
【0090】
用語「治療剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして有利な効果、治療効果、薬理学的効果、および/または予防効果を提供する、任意の物質または物質混合物を包含する。この剤は、薬理学的効果を提供する薬物であり得る。
【0091】
用語「薬物」とは、治療効果を与え得る任意の剤(例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬(例えば、局所および全身)、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、および酵素が挙げられる。剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0092】
薬物として含まれ得る、他の治療剤としては、避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬(antispasmodics);抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0093】
本明細書に記載のフィルムに含まれ得る適切な剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそのアナログ、ムテイン、ならびに活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0094】
本発明のポリマーフィルムにおいて使用され得る水溶性薬物のいくつかの特定の非限定的な例としては、リドカイン、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、ジブカイン、シロリムス(sirolimus)、タキソール、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレン、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム、ケタミン、フルラゼパム、アモバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、ブロムワレリル尿素、抱水クロラール、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、プリミドン、エトスクシミド、カルバマゼピン、バルプロエート、アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アミノピリン、アンチピリン、スルピリン、メピリゾール(mepirizole)、チアラミド、ペリキサゾール(perixazole)、ジクロフェナク、アンフェナク(anfenac)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、エプタゾシン、ジメンヒドリネート、ジフェニドール、dl−イソプレナリン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、チオチキセン、フルペンチキソール、フロロピパミド、モペロン、カルピプラミン、クロカプラミン、イミプラミン、デシプラミン、マプロチリン、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、メプロバメート、ヒドロキシジン、サフラジン(saflazine)、アミノ安息香酸エチル、カルバミン酸クロルフェネシン、メトカルバモール、アセチルコリン、ネオスチグミン、アトロピン、スコポラミン、パパベリン、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、ピロヘプチン、プロフェナミン、レボドパ、マザチコール、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、アミノフィリン、コリン、テオフィリン、カフェイン、安息香酸ナトリウム、イソプロテレノール、ドパミン、ドブタミン、プロプラノロール、アルプレノロール、ブプラノロール、チモロール、メトプロロール、プロカインアミド、キニジン、アジマリン、ベラパミル、アプリンジン、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、イソソルビド、エタクリン酸、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、アラセプリル、ヒドララジン、ヘキサメトニウム、クロニジン、ブニトロロール、グアネチジン、ベタニジン、フェニレフリン、メトキサミン、ジルチアゼム、ニコランジル、ニカメタート、ニコチンアルコールタートレート、トラゾリン、ニカルジピン、イフェンプロジル、ピペリジノカルバメート、シネパジド、チアプリド(thiapride)、ジモルホラミン、レバロルファン、ナロキソン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ノルチステロン、クロミフェン、テトラサイクリン、サリチル酸メチル、イソチペンジル、クロタミトン、サリチル酸、ナイスタチン、エコナゾール、クロコナゾール(cloconazole)、ビタミンB、シコチアミン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ニコチン酸、葉酸、ニコチンアミド、パントテン酸カルシウム、パントテノール(pantothenol)、パンテチン、ビオチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、エタンシレート、プロタミン、コルヒチン、アロプリノール、トラザミド、グリミジン、グリブゾール、メトホルミン(metoformin)、ブホルミン、オロチン酸、アザチオプリン、ラクツロース、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、チオ−TEPA、ニムスチン、チオイノシン、フルオロウラシル、テガフール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アクラルビシン、プロカルバジン、シスプラチン、メトトレキサート、ベンジルペニシリン、アモキシシリン、ペニシリン、オキシシリン(oxycillin)、メチシリン、カルベニシリン、アンピシリン、セファレキシン、セファゾリン、エリスロマイシン、キタサマイシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、ミノサイクリン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、フラジオマイシン、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、ネオマイシン、バノマイシン(vanomycin)、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、スルファニル酸(sulfanilic acid)、シクロセリン、スルフィソミジン、イソニアジド、エタンブトール、アシクロビル、ガンシクロビル(gancyclovir)、ビダバリン(vidabarine)、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、コカイン、ペチジン、フェンタニール、上記薬物のポリマー形態およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0095】
この水溶性薬物は、必ずしも、塩形態(すなわち、塩酸テトラサイクリン)に変換される必要はないかもしれない。一部の実施形態において、この治療剤は、麻酔薬(すなわち、ブピバカイン、リドカイン、およびベンゾカインなど)を含み得る。
【0096】
上記治療剤は例示目的のために提供されたが、本開示はこれらに限定されないことが理解されるべきである。特に、特定の治療剤が上記で具体的に言及されたが、本開示は、このような剤の類似体、誘導体および結合体を包含することが理解されるべきである。
【0097】
上記治療剤は、上記医療デバイス、上記ポリマー層および/または上記解離可能な層と組み合わされ得る。一部の実施形態において、この治療剤は、この解離可能な層内に含められ得、上記第一の層が溶解したときにこの治療剤の即時放出を提供し得る。一部の実施形態において、この治療剤は、上記ポリマーフィルム内に含められ得、このポリマーフィルムが上記基材から解離した後にこの治療剤の徐放を提供し得る。このフィルムは、高い含有量の治療剤を含み得るので、このポリマーフィルムは、より長い期間にわたって上記剤の徐放を提供し得る。
【0098】
上記水溶性治療剤は、治療剤溶液を形成するために任意の適切な溶媒と組み合わされ得る。一部の有用な非限定的な例としては、有機溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン、水およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、この治療剤のための溶媒は、上記疎水性ポリマーのための共溶媒ではない。一部の実施形態において、この疎水性ポリマーは、この治療剤のための溶媒と混和しない。
【0099】
上記水溶性治療剤は、約1マイクログラム/mL〜約1グラム/mLの範囲の濃度で溶液を形成し得る。特定の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約1mg/mL〜約500mg/mLの範囲であり得る。さらに他の実施形態において、この治療剤溶液の濃度は、約10mg/mL〜約300mg/mLの範囲であり得る。溶液によって、治療剤調製物は、懸濁物、エマルジョン、および分散物などを包含することが意図される。
【0100】
上記ポリマーフィルムを形成することにおいて、上記治療剤溶液および上記ポリマー溶液は、超音波噴霧ノズルに通され得る。超音波噴霧器は、溶液の噴霧化をもたらす振動を発生させるために使用され得る、超音波噴霧ノズルを備える。この噴霧器の本体は、3つの主要なセクション、すなわち、フロントホーン(噴霧化セクション)、リアホーン(リアセクション)、および1対の円板状の圧電変換器からなるセクションから構成される。これらの3つの要素は、一緒に働いて、ノズル表面に送達される溶液の噴霧化のために必要とされる振動を発生させるための手段を提供する。これらの溶液は、リアホーンの取付具を通って入り、管を通過し、次いで、フロントホーンの中心軸を通る。最後に、これらの溶液は、このノズルの噴霧化表面に達し、ここで噴霧化が起こる。圧電変換器は、外部電源により提供された電気エネルギーを、高周波数の機械的運動、すなわち振動に変換する。この溶液は、基礎となる振動エネルギーを吸収し、そして表面張力波を発生させる。これらの表面張力波の振幅が臨界値を超えると、これらの波がつぶれて、これらの溶液の小さい液滴を排出する。
【0101】
この超音波噴霧器ノズルは、種々の制御器を備え得、これらの制御器は、本明細書中に記載されるポリマーフィルムの特徴を変更するように調節され得る。いくつかの非限定的な例としては、振動周波数、作動電力、溶液流量、ノズル速度、およびノズルの移動距離が挙げられる。本明細書中に記載されるフィルムを形成する際に、この噴霧器ノズルは、約20kHz〜約100kHzの範囲の周波数で振動し得、このノズルは、約2ワット〜約10ワットの範囲の電力で作動し得る。一部の実施形態において、この噴霧器ノズルは、約48kHzの周波数で振動し得、そして約6ワットの電力で作動し得る。
【0102】
特定の実施形態において、上記超音波噴霧ノズルは、移動可能であり得る。このノズルは、約10mm/秒〜約200mm/秒の範囲の速度で移動し得る。他の実施形態において、このノズルの速度は、約50mm/秒〜約150mm/秒の範囲であり得る。さらに、これらの移動可能なノズルの高さは、不活性基材から約30mm〜約60mmの範囲であり得る。
【0103】
また、上記噴霧器ノズルを通される溶液の流量は、約0.1mL/分〜約5mL/分の範囲内で変動され得る。実施形態において、これらの溶液の流量は、約0.5mL/分〜約2.0mL/分の範囲内であり得る。この流量は、ポリマー溶液ごとに、そして治療剤溶液ごとに、異なり得る。噴霧器制御器の各々が、通過する異なる溶液の各々について個々に調節され得ることが想定される。
【0104】
ここで、図3を見ると、医療デバイス110は、表面115aを有し、かつ孔119を作り出す相互に接続されたフィラメント117のネットワークを含む基材115(すなわち、外科手術用メッシュ)を備える。解離可能な層120は、基材115の表面115aの少なくとも一部に位置づけられる。第二のポリマー層125は、第一の解離可能な層120の少なくとも一部に位置づけられる。孔119は、解離可能な層120およびポリマー層125によってふさがれない。図3に示されるように、ポリマー層125のどの部分も基材115に接続されず、したがって、解離可能な層120の溶解の際に、ポリマー層125および基材115は互いに解離または分離されるようになり、基材115および基材115と類似する多孔構成を示すポリマーフィルム125を備える移植可能な医療デバイスを作り出す。少なくとも1種の治療剤は、この基材、この解離可能な層および/またはこのポリマー層内に位置づけられ得る。
【0105】
一部の実施形態において、上記基材の多孔は、ふさがれない可能性がある。例えば、図4において、解離可能な層220は、医療デバイス210の孔の少なくとも一部をふさぐような様式で医療デバイス210の表面215に位置づけられる。移植後に、解離可能な層220が水和し、体液中に溶解し、基材215からポリマーフィルム層225を引き離し、基材215(すなわち、外科手術用メッシュ)の開放孔構造および構成を曝露することが想定される。一部の実施形態において、図4にさらに示されるように、ポリマー層225は、解離可能な層220とは異なるサイズまたは寸法であり得る。
【0106】
図5を見ると、医療デバイス310は、基材315、解離可能な層320およびポリマーフィルム層325を備える。ポリマーフィルム層325は、第一の層324、第二の層326および第三の層328を含む三層構造体312を含むフィルムとして示される。第一の層324は、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含み得、第二の層326は、少なくとも1種の水溶性治療剤を含み得る。第三の層328は、第一の層324に含まれるものと同じまたはそれとは異なる疎水性ポリマーを含み得る。例えば、一部の実施形態において、第二の層326は、ブピバカインのような治療剤を含み得、この第一の層およびこの第三の層は、同じ疎水性ポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含み得る。別の例において、3つ全ての層が、同じポリマー材料(すなわち、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン))を含み得、第二の層326はまた水溶性が高い治療剤を含み得る。
【0107】
図6において、医療デバイス410は、組織および/またはメッシュの他の部分に付着するための複数の逆立ったナップ417を含む外科手術用メッシュ415である。解離可能なフィルム層420およびポリマーフィルム層425は、逆立ったナップ417を含まない外科手術用メッシュ415の一部に位置づけられる。しかしながら、実施形態において、図7に示されるもののように、解離可能な層520およびポリマー層525は、逆立ったナップ517を含む外科手術用メッシュ515の一部に位置づけられ得る。この実施形態は、メッシュの固定が遅延され得る場合に有利であり得る。例えば、外科医がメッシュを位置づけるのに時間を要し、一旦位置づけられると、この解離可能な層は溶解し得、この逆立ったナップ517がメッシュを所定の位置に係留することを可能にする。
【0108】
さらに他の実施形態において、図8に示されるもののように、医療デバイス610は、1つより多い解離可能な層620aおよび620bならびに/または1つより多いポリマー層625aおよび625bを含み得る。もちろん、本明細書に注記されるように、少なくとも1種の治療剤が、移植の際の上記治療剤の送達のために、医療デバイス、解離可能な層、ポリマー層およびそれらの組み合わせのいずれかに含まれ得る。
【0109】
図9は、別の実施形態を示し、ここでは、ポリマー層725aおよび725bは、解離可能な層720の一部、そしてまた医療デバイス710の基材715の一部に付着され得る。このような実施形態において、解離可能な層720の溶解は、ポリマー層725の一部のみを基材715から引き離し、それによって組織の内方成長を可能にし得るポリマー層725と基材715との間の開放孔を残す。
【0110】
図10Aおよび図10Bに示されるように、基材815、解離可能な層820およびポリマーフィルム層825を備える医療デバイス810は、移植および/または体液(水、血液、粘液、生理食塩水およびデキストロースなどを含む)への曝露の後に、複数の部分に分離する。解離可能な層820は水和して、体液に溶解し、ポリマーフィルム層825を基材815から引き離し、複数の別個の移植可能な医療デバイス(すなわち、図10Bに例示されるような、治療剤(示されていない)の送達のためのメッシュ815およびフィルム825)を作り出す。
【0111】
図11は、解離可能な層920およびポリマーフィルム層925を備える医療デバイス910を示す。ポリマー層925は、解離可能な層920の少なくとも一部に位置づけられる。一部の実施形態において、解離可能な層920は、移植部位において、その場で溶解し得、ポリマーフィルム層925のみを残し得る。
【0112】
図12A、図12Bおよび図12Cに示されるように、基材1015、解離可能な層1020、ポリマーフィルム層1025および治療剤1030を備える医療デバイス1010は、移植および/または体液(水、血液、粘液、生理食塩水およびデキストロースなどを含む)への曝露の後に、複数の部分に分離する。解離可能な層1020は水和して、体液に溶解し、治療剤1030とともにポリマーフィルム層1025を、基材1015から引き離し、複数の別個の移植可能な医療デバイス(すなわち、図12Bに示されるような、治療剤1030の送達のためのメッシュ1015およびフィルム1025)を作り出す。時間が経過すると、フィルム1025は分解および/または溶解し、フィルム1025から治療剤1030を放出する(図12Cを参照のこと)。
【0113】
本明細書に記載の医療デバイスは、個々の部分の任意の組み合わせを組み合わせることによって形成され得る。例えば、グリセロールおよびカルボキシメチルセルロースおよび/またはコラーゲンを含む解離可能なフィルムは、溶液注型(solution casting)を介して調製され得、ポリ(グリコリド−ε−カプロラクトン)を含むポリマー層は超音波噴霧ノズルによる溶液噴霧(solution spraying)によって形成され得、そして図1に示される三次元メッシュは個々に編成され得る。これらの解離可能なフィルムおよびポリマーフィルムは、乾燥され得、そしてあるサイズに切断され得るかまたは打ち抜かれ得、熱、圧縮、接着剤、および機械的なかみ合いなどの任意の組み合わせによってメッシュの表面に接続され得る。
【0114】
別の例において、上記解離可能なフィルム層および上記ポリマー層は、一緒に形成され得る。上記医療デバイスの表面は、この解離可能な層と接触させられ得、その後乾燥させて、上記基材をこの解離可能な層(これは、このポリマー層に付着され得る)に付着させ得る。
【0115】
なお別の例において、上記基材および上記複数の層は、モノリシック構造体として同時に形成され得る。
【0116】
本明細書に記載の医療デバイスは、身体内に治療剤を送達するために使用され得る。この剤の送達は、即時的なものであっても、時間をわたって持続してもよい。実施形態において、本明細書に記載される自己解離可能な医療デバイスは移植され得、これは、解離可能な層、ポリマー層およびこれらの2つの層のうちの一方に含まれる少なくとも1種の治療剤を備え得る。
【0117】
種々の改変が、本明細書に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、実施形態において、カニューレ、トロカールまたは腹腔鏡送達デバイスを介して身体に送達される前に、上記医療デバイスは丸められ得る。別の例において、本明細書に記載の医療デバイスは、任意の適切な滅菌プロセス(すなわち、γ照射)を使用して滅菌され得、そして任意の適切な医療デバイスパッケージ(すなわち、注射可能な医療デバイスパッケージ)に包装され得る。したがって、当業者は、特許請求の範囲およびその精神の範囲内で他の改変を想定する。
【符号の説明】
【0118】
110、210、1010 医療デバイス
115、215、1015 基材、メッシュ
119 孔
120、220、1020 (第一の)解離可能な層
125、225、1025 (第二の)ポリマー(フィルム)層
1030 治療剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスであって、以下:
表面を有する移植可能な基材、
該表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を備える、医療デバイス。
【請求項2】
前記第一の解離可能な層および前記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1種の治療剤を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記移植可能な基材が、縫合糸、ステープル、外科用綿撒糸、バットレス、メッシュ、クランプ、ピン、ねじ、アンカー(anchor)および閉鎖デバイスからなる群より選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記移植可能な基材が外科手術用メッシュを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記第一の解離可能な層が、多糖類、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記多糖類が、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、アルギネート、ペクチン、漿剤、プルラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アラビノキシラン、細菌の多糖類およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記タンパク質が、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記タンパク質がコラーゲンを含む、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記第一の解離可能な層がヒドロゲルを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記第一の解離可能な層が水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記第一の解離可能な層が少なくとも1種の必要に応じた成分をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1種の治療剤が、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬(antiepileptics)、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬(antispasmodics)、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、酵素およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1種の治療剤が、ブピバカイン、シスプラチン、フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシンおよびそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1種の治療剤が塩酸ブピバカインを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
医療デバイスであって、以下:
表面を有する外科手術用メッシュ、
該表面の少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を備え、移植後に、該第一の解離可能な層は、該外科手術用メッシュから分離する、医療デバイス。
【請求項16】
前記第一の解離可能な層および前記第二のポリマー層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1種の治療剤を含む、請求項15に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記第二のポリマー層が吸収性ポリマーを含む、請求項15に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記第一の解離可能な層がコラーゲンを含む、請求項15に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記少なくとも1種の治療剤が、ブピバカイン、シスプラチン、フルオロウラシル、メトトレキサート、カプサイシンおよびそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1種の治療剤が塩酸ブピバカインを含む、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記外科手術用メッシュが複数の逆立ったナップをさらに含む、請求項15に記載の医療デバイス。
【請求項22】
治療剤を送達するための、自己解離可能な医療デバイスであって、該医療デバイスは:
該医療デバイスの少なくとも一部に位置づけられた第一の解離可能な層、
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、ならびに
該第一の解離可能な層および該第二のポリマー層のうちの少なくとも一方に含まれた少なくとも1種の治療剤、
を備え、ここで、該医療デバイスは、移植されるように構成される、医療デバイス。
【請求項23】
医療デバイスであって、以下:
第一の解離可能な層;および
該第一の解離可能な層の少なくとも一部に位置づけられた第二のポリマー層、
を含む、医療デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2012−16593(P2012−16593A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152000(P2011−152000)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】