説明

自己較正センサ

【課題】微量成分分析検出のための自己較正ガスセンサに関する。
【解決手段】サンプルガスを導入する工程と、吸収サンプル及び流通サンプルを提供するのに十分な程度にサンプルガスの少なくとも一部を吸収する工程と、流通電気信号を提供するのに十分な程度に流通サンプルを検出する工程と、吸収サンプルを解放する工程と、吸収サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に吸収サンプルを検出する工程と、較正サンプルを発生させる工程と、較正サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に較正サンプルを検出する工程とを有する。具体的には、流れチャンネルと、流れチャンネル内に位置する濃度モジュレータと、流れチャンネルに接触するガス発生器と、濃度モジュレータ及びガス発生器の下流側に位置する1又はそれ以上のガス検出器と、ポンプとを有するガスセンサを特徴とする自己較正ガスセンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は自己較正センサに関する。特に、本発明の実施の形態は、微量成分分析検出(trace analyte detection)のための自己較正(self-calibrating)ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]有毒ガス検出器の信頼性は、特にこのような器具が人間の安全性を保証するために使用される場合、多くの用途において極めて重要である。信頼性は、典型的には試験ガスに応答する器具の周期的な検査により得られるが、較正試験ガスは、典型的には大型で大容量で高価なガスシリンダに供給される。
【0003】
[0003]有毒ガス、燃焼ガス混合物、又は酸素濃度の過不足に起因して、潜在的に危険な環境が至る所に存在する。大気が潜在的に危険な成分を含んでいることに対する警告を提供し、または、改善活動を開始するために、多くの形式のガス検出器具が開発されてきた。このようなガス検出器具の例は、炭鉱内の可燃性ガス、オイル分野及び水処理設備における硫化水素、製鋼工場から寝室までの範囲の場所における一酸化炭素及び下水道のような閉じ込められた空間における酸素の検出を含む。各ガス検出器具内には1又はそれ以上のガスセンサが位置し、その機能はガスの濃度に応答して変化する電気信号を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]大半のガスセンサは、出力信号がガス濃度の絶対量ではなくガス濃度に単に比例するように、相対出力信号を提供する。このような場合、ガスセンサは、使用前に既知の試験ガスで較正しなければならない。較正は、またセンサが作動していることを確実にするための機能検査として使用され得る。多くの形式のセンサからの出力は、経時的に変化することがあり、警告無しに作動を停止することがある。このようなセンサは、予想できないベースラインドリフト及びスパンドリフトに悩まされることがある。センサが鈍感になるか又は高感度過ぎる場合、許容できない未検出の有毒分析事象又は高い擬似警告レート(FAR;False Alarm Rates)が生じることがある。頻繁に、ガスセンサの較正は、多くの用途において時間がかかり、高価であり、厄介である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0013]本発明の実施の形態は、流れチャンネルと、流れチャンネル内に位置する濃度モジュレータと、流れチャンネルに接触するガス発生器と、濃度モジュレータ及びガス発生器の下流側に位置する1又はそれ以上のガス検出器と、ポンプとを有するガスセンサに関する。
【0006】
[0014]実施の形態はまたガスを検出する方法に関する。方法はサンプルガスを導入する工程と、吸収サンプル及び流通サンプル(a flow-through sample)を提供するのに十分な程度にサンプルガスの少なくとも一部を吸収する工程と、流通電気信号を提供するのに十分な程度に流通サンプルを検出する工程と、吸収サンプルを解放する工程と、吸収サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に吸収サンプルを検出する工程と、較正サンプルを発生させる工程と、較正サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に較正サンプルを検出する工程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[0005]必ずしも実寸で描くとは限らない図面において、同様の符号はいくつかの図にわたって実質上同様の素子を示す。異なる添え字を伴う同様の符号は実質上同様の素子の異なる例を示す。図面は一般に、非限定的な例として、本明細書で説明する種々の実施の形態を示す。
【0008】
[0015]以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面の参照を含む。図示の目的で、図面は本発明を実践できる特定の実施の形態を示す。ここでは「例」としても参照するこのような実施の形態は、当業者が本発明を実践できるのに十分な程度に詳細に説明する。実施の形態を組み合わせることができ、他の実施の形態を利用することができ、または、本発明の要旨から逸脱することなく、構造的及び論理的な変更を行うことができる。それ故、以下の詳細な説明は限定的な意味としてとらえるべきではなく、本発明の要旨は特許請求の範囲及びその等価物により規定される。
【0009】
[0016]本明細書(英文明細書)において、特に指定しない限り、用語「a」又は「an」は、1又はそれ以上を含むものとして使用し、用語「又は」は、排他的ではない「又は」を参照するものとして使用する。更に、特に指定されないここで使用する用語や専門用語は説明のみを目的とするもので、限定を目的とするものではないことを理解すべきである。更に、本明細書で参照するすべての刊行物、特許及び特許明細書は、参照より個々に組み込まれるが、その全体が参照としてここに組み込まれる。本明細書と参照としてこのように組み込んだ文献との間の矛盾する使用の場合は、組み込んだ参照における使用は本明細書のものに対する補足的なものと考えるべきであり;両立しない矛盾に対して、本明細書における使用が、支配権を有する。
【0010】
[0017]本発明の実施の形態は自己較正ガスセンサ及びガスを検出する方法に関する。自己較正センサは、センサの感度を増大させるために、連続的なベースラインドリフト除去、その固有のベースライン読み取りの連続的なリセット、完全自動化のスパン自己較正及び予備濃度化を含む。センサは、増大した感度及びベースラインドリフト除去のために、予備濃度器及び分析モジュレータとして作用する濃度モジュレータを組み込んでいる。周期的な吸収期間中、センサはベースラインをリセットするための較正ガスを自己発生することができる。更に、センサは完全自動化スパン自己較正を含む。このような特徴が微小寸法に減少できる単一のセンサシステムに組み込まれるので、低価格及び僅かなメンテナンスで、センサにおいて信頼性及び感度が達成される。
【0011】
[0018]図1を参照すると、ある実施の形態に係る自己較正センサ100の概略図を示す。入口102及び出口120を備えた流れチャンネル112は濃度モジュレータ106に接触することができる。モジュレータは、例えばヒータ122及び吸収器104を有することができる。流れチャンネル112はまたガス発生器108に接触(連絡)することができる。ガス発生器108は流れ絞り110に関連して使用することができる。検出器116及びポンプ118は流れチャンネル112に接触して位置決めすることができる。検出器116は透過性の膜114を利用することができる。
【0012】
[0019]濃度モジュレータ106は、予備濃度器及び分析モジュレータとして作用することができる。濃度モジュレータ106はヒータ122に接触する吸収器104を有することができる。吸収器104の例は、例えば、フィルム、樹脂、毛細管又は柱を含む。吸収器は、その突破(breakthrough)体積(BTV)を特徴とすることができ、吸収剤の単位重量当りのキャリヤガスの体積は、吸収剤ベッドの前方から後方へ分析剤を移動させる。ヒータ122は、例えば薄いフィルム又はワイヤとすることができる。吸収器の形式は標的の分析剤(単数又は複数)に対して選択することができる。[0020]検出器116は、例えば電気化学検出器とすることができる。検出器116は、ペリスタ (pellistor) のような可燃性ガス検出器とすることができる。検出器116はまた半導体酸化物とすることができる。
【0013】
[0021]ガス発生器108の例を図2に示す。サンプルガスは、入口202を通して発生器に入ることができる。プラグ又は弁のような絞り210はサンプルの運動を制御するためにチャンネル内に位置することができる。膜212、214は破裂してガス発生反応を開始させるように熱又は電子機器により制御することができる。各反応器208は、作動又は化学的に反応したときに較正ガスを解放する試薬216を収容することができる。サンプル204は較正ガスを通って流れることができ、出口206を通って流れチャンネルへ戻ることができる。反応器208は例えば列を形成することができる。発生する較正ガスは、例えば、メタン、ペンタン、プロパン、一酸化炭素又は二酸化炭素とすることができる。例えば、発生したガスの体積又は出流(flush)時間が検出器のデッドエンド(袋小路;dead end)体積に比べて比較的大きい場合は、絞り即ちプラグ210を利用することができる。
【0014】
[0022]較正ガスを発生させるための反応の例は次のものを含む:
NaOH+NaCOOCH≧NaCO+CH
NaOH+NaSOCH≧NaSO+CH
NaOH+NaCOOCH≧NaCO+CH
NaOH+NaCOOCH11≧NaCO+CH12
CaCO≧CaO+CO
HCOOH+HSO≧HO+HSO+CO
[0023]ガス発生装置及び較正ガスを発生させる方法の例は、本出願人に係る「センサ較正のためのガス発生」という名称の米国特許出願第11/618,398号明細書;「ガスセンサ試験システム及びこれに関連する方法」という名称の米国特許出願第11/618,404号明細書;及び「流体からのガスセンサ較正」という名称の米国特許出願第11/618,414号明細書において見ることができ、これらすべての特許出願は2006年12月29日に出願され、その全体をここに組み込む。
【特許文献1】米国特許出願第11/618,398号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/618,404号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/618,414号明細書
【0015】
[0024]図3を参照すると、ある実施の形態に係るガスを検出する方法700のフローチャートを示す。サンプルガスは流れチャンネルへ導入することができる(302)。サンプルガスの少なくとも一部は吸収サンプル及び流通サンプルを提供するのに十分な程度に吸収することができる(304)。流通サンプルは流通サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に検出することができる(306)。吸収サンプルは吸収サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に解放し(308)検出する(310)ことができる。較正サンプル312は較正サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に発生させ(312)検出する(314)ことができる。[0025]サンプルガスは、例えば射出又はポンピングにより導入することができる(302)。サンプルガスは周囲接触により流れチャンネルに導入することができる(302)。サンプルガスは、ポンプにより連続的に吸引するような方法で、連続的に導入することができる。
【0016】
[0026]サンプルガスは、チャンネル内に位置するフィルムのような吸収器との接触により吸収することができる(304)。標的の分析剤は、例えば吸収器に物理的又は化学的に結合できる。サンプルの一部を吸収する(304)と、標的の分析剤が予測可能及び検出可能な方法で濃縮され、従ってセンサシステムの感度を増大させる。吸収器はまた分析モジュレータとして使用することができ、ベースラインドリフトの実質的な減少を補助する。分析変調及びこのような特徴を組み込んだセンサの例は2006年11月16日に出願された本出願人に係る「分析モジュレータを備えたセンサ」という名称の米国特許出願第60/866,182号明細書において見出すことができ、その開示を全体的にここに組み込む。
【特許文献4】米国特許出願第60/866,182号明細書
【0017】
[0027]流通サンプルを検出することができる(306)。吸収器により吸収されないサンプルの一部として、検出(306)が生じるときに、流通サンプルは検出器へ続くことができる。検出器は、化学信号のような検出信号を電子信号に変換することができる。流通サンプル信号を濾波して、ベースラインドリフトを減少又は実質上排除するために、電子フィルタを使用することができる。サンプルの一部を吸収することにより、吸収サンプル及び流通サンプルは異なる検出信号及びAC出力のような対応する電気信号を有する。例えば、一層遅い流通サンプル信号は吸収サンプル信号から電子的に濾波することができる。
【0018】
[0028]吸収サンプルは、解放することができる(308)。吸収器はヒータと接触することができる。ヒータはサイクルをオン・オフするように制御することができる。ヒータは例えば、サンプルが導入される(302)時間の約50%オンすることができる。ヒータは例えば、サンプルが導入される(302)時間の約10%、その時間の約20%、その時間の約30%又はその時間の約40%オンすることができる。吸収器の加熱は吸収サンプルを解放することができる(308)。吸収器が飽和点に達するのを許容し、吸収器の接触を続行すると、流れチャンネルを通してサンプルの突破を生じさせることができる。吸収されないサンプルの部分は流通サンプルと呼ぶことができ、チャンネルを通り続ける。
【0019】
[0029]吸収器が解放された(308)後、吸収器は検出(310)のために検出器へ進むことができ、または、吸収器は検出(310)前にガス発生器へ送ることができる。流れチャンネル内での流れ絞りの使用はガス発生器への吸収サンプルの案内を補助することができる。ガス発生器は吸収サンプルに接触する較正サンプルを発生させることができる(312)。組み合わされたサンプルは検出することができる(314)。較正サンプルは、吸収サンプルの流れが検出される(314)前又は後に、発生させることができる(312)。既知の量の較正サンプルを利用することにより、スパンドリフトを実質上減少させることができる。このようなスパン修正の例は、加熱素子又は解放機構が「オフ」サイクルにあるときに、生じることができる。加熱又は解放をサイクル化即ち周期化することにより、較正ガスの発生と組み合わせた分析剤の変調はベースラインドリフト及びスパンドリフトを実質上排除する標的信号を提供し、センサは増大した感度を有する。サンプルガスがセンサへ導入されるか又は連続的に供給される限り、ステップを繰り返すことができる。
【0020】

[0030]図4を参照すると、ある実施の形態に係る自己較正センサ信号のグラフ400を示す。信号402はベースライン及びスパンドリフトを伴う信号を表す。信号404はスパンドリフトを伴う信号を示す。ドリフトを伴わない理論的なベースラインは信号406により示す。ドリフトを除去しない分析変調は信号408で示す。信号410はヒータ又は解放機構のサイクルを示す。信号412はベースライン及びスパンドリフトを除去した後の修正された変調信号を表示する。
【0021】
[0031]図5を参照すると、ある実施の形態に係るガス発生のグラフ500を示す。信号502、504はアセテート反応で発生したメタンガスを感知する2つの触媒ビードセンサからの信号である。信号504は信号502のセンサから下流側のセンサからのものである。発生したガスは後で信号504のセンサに到達し、ガス濃度は一層小さくなる。その理由は、ガスの一部が信号502のセンサで消費されるからである。信号504のセンサは一連の測定中に感度を失うことがあり、そのため、新たな較正が望ましいことがある。
【0022】
[0032]図6を参照すると、ある実施の形態に係るセンサ応答のグラフ600を示す。信号602、604は50%の相対湿度での合成空気における較正されたアンモニア信号を検出する2つのセンサを表す。信号606はガス発生器により生じるような既知の較正ガス濃度を表す。
【0023】
[0033]図7を参照すると、ある実施の形態に係るガスパルスのグラフ700を示す。メタンガスパルスは0.1cmの反応物体積の繰り返しの加熱により発生し、触媒ビードセンサにより検出された。[0034]要約は、読者が技術的な開示の本質及び要点を迅速に確かめることができるように37C.F.R.§1.72(b)に応じるために提供した。要約は、特許請求の範囲の要旨又は意味を解釈又は制限するために使用されるものではないという合意のもとに提出する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ある実施の形態に係る自己較正センサの概略図である。
【図2】ある実施の形態に係るガス発生器の概略図である。
【図3】ある実施の形態に係るガスを検出する方法のフローチャートである。
【図4】ある実施の形態に係る自己較正センサ信号を示すグラフである。
【図5】ある実施の形態に係るガス発生を示すグラフである。
【図6】ある実施の形態に係るセンサ応答を示すグラフである。
【図7】ある実施の形態に係るガスパルスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサであって、
流れチャンネルと;
流れチャンネル内に位置する濃度モジュレータと;
流れチャンネルに接触するガス発生器と;
濃度モジュレータ及びガス発生器の下流側に位置する1又はそれ以上のガス検出器と;
ポンプと;を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記濃度モジュレータがヒータ及び吸収器を有することを特徴とする請求項1のガスセンサ。
【請求項3】
前記吸収器がフィルムを有することを特徴とする請求項2のガスセンサ。
【請求項4】
前記ガス発生器がメタンガス発生器であることを特徴とする請求項1のガスセンサ。
【請求項5】
前記1又はそれ以上の検出器が電気化学検出器であることを特徴とする請求項1のガスセンサ。
【請求項6】
ガスを検出する方法であって、
サンプルガスを導入する導入工程と;
吸収サンプル及び流通サンプルを提供するのに十分な程度に、前記サンプルガスの少なくとも一部を吸収する工程と;
流通電気信号を提供するのに十分な程度に、流通サンプルを検出する工程と;
吸収サンプルを解放する解放工程と;
吸収サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に、吸収サンプルを検出する工程と;
較正サンプルを発生させる工程と;
較正サンプル電気信号を提供するのに十分な程度に、較正サンプルを検出する工程と;を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記導入工程がサンプルを連続的に導入する工程を有することを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】
前記検出工程が電気信号を生じさせる電気化学検出器に接触する工程を有することを特徴とする請求項6の方法。
【請求項9】
前記解放工程が加熱工程を有することを特徴とする請求項6の方法。
【請求項10】
請求項6の方法であって、更に第2の吸収サンプル及び第2の流通サンプルを提供するのに十分な程度に、第2のサンプルの少なくとも一部を吸収する工程を有することを特徴とする請求項6の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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