説明

自由高低暗渠側溝

【課題】既設U形側溝の改修において、プレキャストコンクリートを用い自由高低暗渠側溝を構築する。
【解決手段】既設U形側溝は、基礎30の上に側溝本体2を排水勾配に合わせて設置し埋設供用されているが、改修においては部分掘削して上部を除去し、載置する胸壁ブロック3を予定して整形頂面6とする。胸壁ブロック3は、接着材20を介して通水内面沿いに立設し、ステップ7に調整コンクリート8を打設して、載置する掛蓋4の高さに合わせて小段9を設け側溝本体2を形成する。なお、ステップ7上に直接掛蓋4を載置し、固定高さでの組合せとすることも可能である。そして、掛蓋4を連続載置して自由高低暗渠側溝を構築するのであるが、この場合、小段9上にプラスチック、鉄板片などのライナー22でレベル調整したのち、モルタル21をやや厚めに敷いて据付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設U形側溝の改修方法および改修の際に使用されるプレキャストコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
従来、既設側溝の改修は、経年による破損修繕や路面改良等に伴う排水施設の更新のため、一般に現場打コンクリート造、プレキャストコンクリート造とも側溝の上部を除去して改築している。
この改築工法は、プレキャストコンクリート自由勾配側溝では門型構造のため上辺部分を除去できず、U形側溝のみ適用するが、この場合、埋設されたままの下部は温存、底面排水勾配は固定される。
そして、路面計画高は既設側溝の場合当初から長い期間を経て変化し、改築時には多くの場合完成高さの調整が必要とされている。
このように上部の改築に高さ調節は不可欠とされるものの、プレキャストブロックのみではむつかしく、側溝延長沿いの変化には現場打コンクリートでの対応に依存しているが、しかし、蓋掛りのフランジは天端が欠損しやすく、プレキャストブロックが望ましいとされている。
【0003】
【特許文献1】 特開2001−123519号公報
【特許文献2】 特許第3784820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部を除去した既設U形側溝は、埋設下部が温存され、底面排水勾配が固定されているが、路面計画高には延長沿いの変化が要求される。
上部の改築においてはプレキャストコンクリートを用い、さらに自由高低に暗渠側溝を築造する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
既設U形側溝の両側上部を除去した整形頂面の内側沿いに、1対の胸壁ブロックを接着載置し、外側沿いステップ上に暗渠上面の計画高さに対応する調整コンクリートを打設するものである。
そして、U形側溝両側調整コンクリート両小段を支承にして掛蓋をブリッジ状に載置して側溝全体を覆い上部で自由高低に暗渠側溝を形成するものである。
【0006】
側溝の改築は、既設上部の除去整形後にフランジ付き掛蓋でブリッジ状に覆うものであり、掛蓋の脚となるフランジは側壁を兼ねており、通水部に面している内側沿いの胸壁ブロックに近接し、高さ調整コンクリート小段上に位置する。
そして、自立する掛蓋のフランジは埋設土に面する外壁であると同時に設計荷重を支持する構造部材となる。
【発明の効果】
【0007】
埋設のまま温存される既設U形側溝を基部とし、両側壁上部の除去整形面の内側沿いにプレキャストコンクリート胸壁を接着載置するだけで側溝本体が完成する。
そして、外側沿いステップ上調整コンクリート打設およびプレキャストコンクリート掛蓋の載置は最上部での作業となり自由高低暗渠側溝の形成が容易確実で安価にできる。
【0008】
掛蓋形状の多様化も可能で、既設U形側溝を基部とすれば、従来の門型構造自由勾配側溝で不可能な路面設計条件の変化にも適合して改築可能な自由高低暗渠側溝を得ることができる。
【0009】
掛蓋上面の設計荷重は、調整コンクリートを介して既設U形側溝基部全体に伝達され、均等支持の安定構造となる。
そして、側圧および衝撃荷重は上辺部分が掛蓋フランジによって減殺され、U形側溝自体の安定が向上する。
【0010】
掛蓋は、1種類ですべての高さ調整に対応でき、既設U形側溝基部の上辺を覆って保護する。
また、埋戻しによって掛蓋自体も安定し、ガタツキ音の生じないU形自由高低暗渠側溝構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 上辺を除去した既設U形側溝基部にステップ付胸壁ブロックを用いた自由高低暗渠側溝の実施例を示す切欠斜面図である。
【図2】 上辺を除去した既設U形側溝基部にステップ無しの胸壁ブロックを用いた自由高低暗渠側溝の実施例を示す切欠斜面図である。
【図3】 図1のA〜A線にそった断面図である。
【図4】 図2のB〜B線にそった断面図である。
【図5】 図1の実施例におけるステップ付胸壁ブロックの斜面図である。
【図6】 図2の実施例におけるステップ無しの胸壁ブロックの斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
既設U形側溝は現場打またはプレキャストコンクリートにより、基礎上に水路勾配に合わせて埋設されている。
古くなった側溝の破損修繕や路面改造に伴う改修の場合、一般に上辺部分を除去して改築する。
この場合、埋設されたままの既設U形側溝基部は排水施設としての主要通水断面と排水勾配を保持して温存固定される。
そして、通水断面の上辺を構成する胸壁を両内側沿いに接着継ぎし、両外側沿いステップ上に暗渠側溝上面の完成計画高さに載置する掛蓋に対応せしめて打設したモルタルないし調整コンクリートが硬化したのち、U形側溝基部を覆い掛蓋をブリッジ状に載置する。
掛蓋の側壁と脚を兼ねるフランジの底面は調整コンクリート小段の敷モルタルによって水密が確保された暗渠構造のU形自由高低側溝全体が形成される。
【0013】
既設U形側溝基部の改築は、両側壁上部の除去カット面内側沿いにプレキャストコンクリート胸壁ブロックを接着載置し、外側沿いには調整コンクリートを打設するステップを形成する。
胸壁ブロックの形成はステップ付きのL形状とするか、胸壁部のみのI形状でカット面の残り部分をステップとするものである。
【0014】
既設U形側溝基部の両側に胸壁ブロックを接着載置かさ上げ構築し、全通水断面を形成する。
胸壁は下端のみ接着ないしアンカー植立の自由端であり、寸法例としては、高さ16.5cmで、掛蓋のフランジ高さをこれにプラス1cmほど余裕分を加味した組合せが一般的である。
この場合、予定する高低は0〜10cmで、その内訳は調整コンクリート0〜10cm、敷モルタル1.5cm、胸壁とフランジの重なり代15〜5cmとなる。
なお、胸壁の接着は エポキシ樹脂や無収縮モルタル等により、さらには適宜アンカー植立を加味するが、胸壁自体掛蓋フランジで覆われているため、外圧荷重の負担は僅少で、構造上十分なものとなる。
【実施例】
【0015】
図1、図2に実施例の施工状態を示す。
図1はステップ付き胸壁ブロックを用いた実施例であり、図2はステップなしの胸壁ブロックを用いた実施例である。
(1)は既設U形側溝基部、(2)は側溝本体、(3)は胸壁ブロック、(4)は掛蓋である。
既設U形側溝基部(1)は図3、図4に示すとおり切除した両側側壁(5)(5)、上部内側沿いにプレキャストコンクリート胸壁ブロック(3)を接着載置し、調整コンクリート分を加味した低い位置にステップ(7)を設けてある。
既設U形側溝は、基礎(30)の上に側溝本体(2)を排水勾配に合わせて設置し埋設供用されているが、改修においては部分掘削して上部を除去し、載置する胸壁ブロック(3)を予定して整形頂面(6)とする。
胸壁ブロック(3)は、接着材(20)を介して通水内面沿いに立設し、ステップ(7)に調整コンクリート(8)を打設して、載置する掛蓋(4)の高さに合わせて小段(9)を設け側溝本体(2)を形成する。
なお、ステップ(7)上に直接掛蓋(4)を載置し、固定高さでの組合せとすることも可能である。
そして、掛蓋(4)を連続載置して自由高低暗渠側溝を構築するのであるが、この場合、小段(9)上にプラスチック、鉄板片などのライナー(22)でレベル調整したのち、モルタル(21)をやや厚めに敷いて据付する。
【0016】
胸壁ブロック(3)は、図5、図6に示すとおり長さ1m、2m等のプレキャスト製品として供給される。
この実施例の図1、図3、図5に示すものはステップ(7)付きで側壁(5)と一致する幅のL形状断面としており、ステップ(7)に長さ方向等間隔の埋込インサート(24)があり、必要に応じアンカー(23)を建て調整コンクリート(8)の支圧強度に寄与する。
なお、L形状断面の幅は必ずしも側壁(5)と合致しなくともよい。
また図2、図4、図6に示すものは、胸壁のみのI型断面としており、底面に長さ方向等間隔の埋込インサート(24)があり、必要に応じアンカー(23)付きとし、整形頂面(6)外側沿いをステップ(7)として残し植立する。
【0017】
掛蓋(4)は、図1、図2、図3、図4に示すとおり長さ1m、2m等のプレキャスト製品として供給される。
掛蓋(4)は、両側に側壁と脚を兼ねるフランジ(10)(10)を有し、調整コンクリートの小段(9)(9)を支承にして側溝本体(2)を覆いブリッジ状に載置されている。
フランジ(10)、(10)の内面間隔は側溝本体の両胸壁ブロック(3)、(3)にほぼ外接するものとし、曲線施工や施工誤差に対する余裕分として例えば1〜3cmの間隔を加味してある。
さらにフランジ(10)は上載荷重及び側圧荷重の条件に対応した厚さ強度を具備している。
【0018】
図1、図3の実施例では、スリット(25)を固定梁(27)によって連続状態に設けた掛蓋(4)で、同じスリット付落し蓋(26)が開口部にセットされている。また図2、図4はゆるいV形断面で、スリット(25)を固定梁(27)によって連続状態に設けた掛蓋(4)で歩車道境界ブロック(31)をセットした実施例である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
既設側溝の上辺の除去は、ハツリ、破砕、切断工法等が一般に十分普及している。
しかし、従来の自由勾配側溝は、当初施工時のみ底部自由排水勾配に適合するもので、改修時には門型構造のため上辺部分は除去できず、路面との現場合せ高低調整は困難である。
とりわけ道路沿いに商店や民家が密集していると地表面の人工化が進み、暗渠上面の現場に合せた計画高に施工する必要があるので、U形側溝の場合には本発明による自由高低暗渠側溝が最適で、生産供給においても在来の道路用コンクリート製品と同等に安価に流通する。
また、胸壁ブロックはアングル状のほか、ステップ端を曲げてクランク状(図示省略)に、また材質も例えばセメントをベースとする反応性微粉末を使用した無機系複合材料技術での鋼材並みの高靱性超高強度コンクリートとするなど鉄筋を配することなく厚さ20mm以下も可能で、大幅な軽量化によって施工性が向上する。
【符号の説明】
【0020】
1 既設U形側溝基部
2 側溝本体
3 胸壁ブロック
4 掛蓋
5 側壁
6 整形頂面
7 ステップ
8 調整コンクリート
9 小段
10 フランジ
20 接着材
21 モルタル
22 ライナー
23 アンカー
24 インサート
25 スリット
26 落し蓋
27 固定梁
30 基礎
31 境界ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設U形側溝の両側上部を除去した整形頂面の内側沿いに、1対の胸壁ブロックを接着載置し、両ステップ部に現場打設した高低調整コンクリートの小段を支承にしてブリッジ状に掛蓋を載置することを特徴とする自由高低暗渠側溝。
【請求項2】
胸壁ブロックがステップ付きのアングル状とし、ステップ面インサートにアンカー鉄筋を植立して高低調整コンクリートを補強することを特徴とする請求項1記載の自由高低暗渠側溝。
【請求項3】
ステップ無しの胸壁ブロック底面インサートにアンカー鉄筋を植立し、既設U形側溝の両側上部を除去した整形頂面の挿入孔に前記アンカー鉄筋を挿入することを特徴とする請求項1記載の自由高低暗渠側溝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−36707(P2012−36707A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183446(P2010−183446)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(503234115)
【Fターム(参考)】