説明

自給式酸化分解によるジカルボン酸の製造

本発明は、キシレン酸化反応からのオフガスのエネルギー含有量を改善し、およびそのオフガスから軸動力を回収し、同時に廃水処理のコストを最小限に抑えることを提供する。オフガスを用いることで、好ましい比較的低い酸化温度であっても、主空気圧縮機の駆動に必要とされるよりも大きな軸動力が得られる。同時に、キシレンの酸化からの副生成物である水よりも多い量の廃水が蒸気の形態で維持され、自立式(自給式)気相熱酸化分解ユニット中にてオフガス汚染物質と共に処理される。所望される場合は、一次および/または二次酸化反応器を含んでなり、TPAおよび/またはIPAを形成する複数のキシレン酸化反応器からのオフガスを組み合わせてもよい。所望される場合は、空気圧縮機凝縮液と苛性スクラバーのブローダウンとを、TPAプロセスで、または用水として用いて、TPAプラントからの液体廃水排出物の通常の流れを効果的に除去してもよい。所望される場合は、PET形成時の水を含有するPETオフガスを、共用される熱酸化分解ユニット中で処理して、1つに組み合わせたpX‐TPA‐PETプラント(pX-to-TPA-to-PET plant)からの液体廃水排出物の通常の流れを効果的に除去してもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
気化した溶媒の大半が、それを少なくとも1つの冷却、吸収、および/または蒸留手段を通流させることによって反応オフガスから回収され、液化した回収溶媒が得られることは公知である。一般的に、本明細書において「炭化水素化合物」、「揮発性有機化合物」、および「VOC」と称される、少なくとも1つの炭化水素結合を含有する気化化合物を、反応オフガスから最大限回収することが望ましい。
【0002】
少なくとも1つの蒸留手段を用いて、pXの部分酸化によって大量に共生成する過剰量の水を回収溶媒から除去することが公知である。蒸留手段の操作にはエネルギーインプットの少なくとも一部分が必要であることから、pXの部分酸化から得られるエネルギーを利用するための種々の設計が公知である。
【0003】
「TPA形成時の水」という用語は、本明細書において、工業純度のpXフィード1キログラムに対して0.340キログラムの水と定義される。これは、pX+3OからTPA+2HOが得られるという化学量論に従って、pXからTPAを形成することを意図する反応から来るものである。工業純度のpXには少量の不純物が存在し、少量のpXが酸化不足および/または酸化過剰の状態であるが、現在の製造施設では、不純物量が非常に低い工業純度のpXが製造され、そのようなフィードが非常に高い収率で粗TPAおよび/または精製TPAへと変換される。粗物質および/または精製物質において、TPA固体生成物の全体としての収率は、工業純度のpXフィードの質量を1モルあたりの分子量106.16グラムで除算したものに基づき、少なくとも約96、または97、または98、または99モルパーセントであることが好ましい。工業純度のpXフィードは、pXの質量分率として、少なくとも約0.990、または0.995、または0.997、または0.998を含んでなることが好ましい。
【0004】
また、気化溶媒の回収と共に、種々の組み合わせにおけるオフガスの一部分から熱エネルギーおよび機械的軸仕事の両方のエネルギーが回収されることも公知である。公知のエネルギー回収方法の1つは、オフガスの少なくとも一部分を用いて、例えば水またはペンタン等の作動流体を沸騰させ、蒸気を発生させることである。この蒸気を用いて熱を別のユーザーへ移動させるか、またはこの蒸気の圧力を、膨張機、典型的にはターボ膨張機によって低下させて軸仕事出力を得る。ターボ膨張機からのエネルギー回収は、空気供給圧縮機もしくはその他の移動機械の駆動などの機械的仕事へ直接、または電力配電および消費回路網に接続した回転式発電機を駆動することにより電力へ、変換することができる。
【0005】
エネルギー回収のための別の公知の方法は、二原子窒素(dinitrogen)を含んでなるオフガスの少なくとも一部分をターボ膨張機に通流させることである。ターボ膨張機からのエネルギー回収は、空気供給圧縮機もしくはその他の移動機械の駆動などの機械的仕事へ直接、または電力配電および消費回路網に接続した回転式発電機を駆動することにより電力へ、変換することができる。
【0006】
また、オフガス中の蒸気の形態である水の大部分を熱酸化分解手段(thermal oxidative destruction means)(TOD)へと送り、そこで、例えば一酸化炭素、酢酸、酢酸メチル、パラキシレン、および臭化メチル等の有害ガスおよびVOC汚染物質を、例えば水蒸気および二酸化炭素等のより環境上許容される排出物へ変換することも公知である。特定の従来のシステムでは、パラキシレン酸化反応器から熱分解装置へと「反応による水」を蒸気の形態で放出し、有害汚染物質を除去することが開示されている。
【発明の概要】
【0007】
発明者らは、先行技術では意図されていない好ましい態様を発見した。本発明の態様は、特定の酸化反応媒体の反応オフガスからの、発電もしくは直接機械的用途へのより多くの量の軸仕事動力の回収、および/またはTPA形成時の水よりもさらに多い量の水蒸気の放出、および/または自立式(自給式)TOD、を提供することができる。本発明の特定の態様はさらに、液体廃水を効果的に発生させないpX‐TPA‐PETのための組み合わせた施設も提供することができる。
【0008】
好ましい態様では、本発明は、pXおよびmXの両方のフィードによる一次および二次酸化反応器の両発生源を含む実質的にすべての酸化反応オフガスを、共用される溶媒回収蒸留システムに通流させ、次に過熱工程に通流させ、次に、得られる軸仕事の量を増加させるための段階間加熱を含んでなる2段階ターボ膨張機に通流させることを含んでなる。この構成により、プロセス空気圧縮機およびプロセス液体およびスラリーポンプの消費を超える電力が移出できる。ターボ膨張機ヒーター内の凝縮液からのフラッシュ蒸気が、TPAプロセスの別の部分で用いられる。ターボ膨張機の後、水蒸気の一部分を酸化反応オフガスから凝縮させることで、種々のプロセス用途のための液体水が得られ、残りの水蒸気はオフガス中に残り、これはTOD手段へと送られる。所望される場合は、オフガスを加熱してターボ膨張機内で過熱状態を得るために、蒸気加熱ではなく直接燃料燃焼を用いてもよい。所望される場合は、ターボ膨張機の出口部圧力は、オフガスが凝縮手段および液体ノックアウト手段(liquid knock-out means)を通流した後にこれを再圧縮することで低下させてもよい。
【0009】
さらに、本発明の方法のその他の局面について、以下の態様が好ましい。
・TOD、好ましくは蓄熱式熱酸化装置(Regenerative Thermal Oxidizer)(RTO)におけるその環境的軽減が、実質的に、より好ましくは完全に、反応オフガス中に存在しない燃料の追加を必要としない自己加熱型であるように、十分な可燃性燃料値(combustible fuel value)がオフガス中に残っていることが好ましい。この可燃性燃料値の大部分が、酢酸中でのpX酸化の公知の副生成物である酢酸メチル(MeOAc)由来であることがさらにより好ましい。発明者らは、酢酸メチルの単離および加水分解による酢酸含量の回収のための相当量の設備費用および操作コストが、購入した燃料をRTOへ添加することに対して考慮した場合に見合うものではないように、酢酸メチルの形成を十分に低く抑える方法を発見した。
・凝縮水は、多くの場合、TPA酸化反応器へ環境空気を提供する圧縮系内の環境水蒸気から形成され、この水は、潤滑剤および密封流体で汚染されている可能性がある。この凝縮環境水は、液体廃水処理施設へ直接送られるよりは、例えばスクラバー水、急冷水、環流水(reflux water)としてTPAプロセス液体へ投入されるか、または、例えば冷却塔補充水としての用水として用いられることが好ましい。
・オフガス中VOCの除去および/または熱分解の後、多くの現場では、環境へ放出する前に、そのような処理オフガスから臭化水素を除去することが必要となる。このスクラビングは、多くの場合、水性スクラビングを行うことによって臭素塩を生成させるものであり、例えば、水酸化ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムの水溶液を用いてスクラビングして臭化ナトリウムを生成させる。発明者らは、そのようなスクラバー水中に溶解した固形分の制御に用いられるブローダウン水が、液体廃水を形成するのではなく、有利に、例えば冷却塔補充水等の用水として用いられることを発見した。
・PETプロセスもまた、PET形成反応から水を生成し、この水は、例えば、エチレングリコール、アセトアルデヒド、および種々のジオキソラン類等の様々なVOC化合物で汚染されていることが多い。PETプロセスからの汚染水の少なくとも一部分を、近接するTPA施設からのTPA形成時の水と共に、共用される共通の施設で処理することが好ましい。好ましくは、PET形成からの該汚染水は、蒸気の形態のままで維持されて該PET施設から処理のために排出されるか、または該近接するTPA施設からの熱エネルギーの少なくとも一部分を用いて蒸気の形態へ変換される。より好ましくは、PET形成反応からの水は、共用される共通のTODで、TPA形成時の水と共に処理される。
【0010】
単独で、または種々の組み合わせで、本明細書で開示する本発明は、1単位のTPA製造あたりの環境処理を必要とする液体廃水の発生を非常に低く、ゼロにさえ抑えるpX‐TPA施設を提供することができる。さらに、本発明は、1単位のPET製造あたりの環境処理を必要とする液体廃水の発生を非常に低く、ゼロにさえ抑えるpX‐TPA‐PET施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の代表的な態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の本発明は、pXをTPAへ変換するための好ましい一次酸化反応の媒体、プロセス、および手段のために、米国特許第20070293699号および米国特許第20060047158号(これらの全開示事項は参照することで本明細書に組み入れられる)の開示事項と組み合わせることができる。これらの参考文献の開示事項は、一次酸化のための数多くの好ましい機械的特徴およびプロセス条件を含んでなり、プロセス条件には、特に、温度および温度勾配、圧力および圧力勾配、流量、組成および組成勾配、攪拌、ならびに滞留時間および分布が包含される。本明細書における「酸化性化合物」、「溶媒」、「酸化剤」、「反応媒体」、および「炭化水素の(hydrocarbyl)」の使用は、上記の参考文献に従う。
【0013】
本明細書の本発明は、溶媒回収および/または脱水手段における処理の前に、二次酸化反応媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、一次酸化反応媒体からのオフガスの少なくとも一部分と組み合わされる場合に、より好ましい。二次反応媒体は、その芳香族基質のフィードのほとんどを、一次酸化反応媒体および/または別の二次反応媒体であってよい上流の酸化反応器から受ける媒体である。流入する液相芳香族基質のさらなる反応を中心にして最適化された二次酸化反応器の説明については、温度、圧力、流量、組成、攪拌、ならびに滞留時間および分布を含む選択されたプロセス範囲において、種々のコスト、特に、基質、生成物、および溶媒の過剰酸化を包含するコストに対するバランスの取れた形での操作を行うことの利益を包含して、米国特許第20070155985号および米国特許第20070208191号を参照されたい。本明細書において、この種の二次酸化反応器は「ポスト酸化反応器(post-oxidation reactor)」と称する。また、流入する固相芳香族基質のさらなる反応を中心にして最適化された二次酸化反応器の説明については、温度、圧力、流量、組成、攪拌、ならびに滞留時間および分布を含む選択されたプロセス範囲において、種々のコスト、特に、基質、生成物、および溶媒の過剰酸化を包含するコストに対するバランスの取れた形での操作を行うことの利益を包含して、米国特許第20070208190号および米国特許第20070219393号を参照されたい。本明細書において、この種の二次酸化反応器は「消化反応器(digestion reactor)(digestion:温浸、蒸解)」と称する。
【0014】
炭化水素結合を本質的に含んでなる化合物(燃料)の燃焼(酸化的燃焼)によって、動力、特に軸動力を意図的に発生させる場合、該燃焼の温度は、公知の熱力学原理に従って動力回収を最大化するために、機械的に実行可能な限り高く押し上げられることが多い。他方、触媒による部分酸化を行って化学生成物を形成させる場合は、反応媒体の温度および圧力は、得られる収率、転換率、および生成物純度が制御されるように設定されることが普通である。本発明の触媒酸化は、十分に迅速であるため、溶解二原子酸素(dioxygen)の適切な液相中濃度を維持するために十分な注意が必要であり、このことから、系圧力を高めて気相二原子酸素の分圧を高くすることが好ましい。
【0015】
エネルギー回収のためのより高い温度、およびTPA生成物純度のためのより高い圧力が、このように一般的に好ましいにも関わらず、発明者らは、軸動力の回収量を増加させる場合であっても、および排出される蒸気の形態の廃水の量を増加させる場合であっても、一次酸化反応媒体の少なくとも一部分を以下の温和な圧力および温度で操作することが好ましいことを発見した。一次酸化反応媒体の少なくとも一部分を、約12、10、8、7バール(絶対圧)未満の圧力で操作することが好ましい。一次酸化反応媒体の少なくとも一部分を、少なくとも約2、または3、または4、または5バール(絶対圧)の圧力で操作することが好ましい。一次酸化反応媒体の少なくとも一部分を、約200、または190、または180、または170℃未満の温度で操作することが好ましい。一次酸化反応媒体の少なくとも一部分を、少なくとも約120、または130、または140、または150℃、または155℃、または160℃の温度で操作することが好ましい。発明者らは、好ましい反応温度および圧力を得るために要するエネルギーバランスを満足しながら、反応媒体からのオフガス出口において可能な限り最大量の体積および質量の蒸気を発生させることが好ましいことを発見した。望ましくないことには、蒸気の発生量を増加させることで、反応媒体から出るオフガスから液体および固体を分離することがより困難になる。望ましくないことには、そのようなオフガスの増加により、反応オフガスを処理する導管および設備の直径ならびに容量が増加し;特に、これには溶媒回収および/または脱水手段が含まれる。望ましくないことには、本発明の酸化反応媒体は、多くの場合チタンを含んでなる非常に高価な構造材料を必要とするほどの高い腐食性を有するオフガスを発生させる。望ましくないことには、反応媒体から排出される蒸気流量の増加は、溶媒回収および/または脱水手段における処理の過程で質量および体積共に大きく減じられ;ここで、溶媒の炭化水素部分の大半が回収される。しかし、発明者らは、反応オフガス中に形成される溶媒蒸気量の増加を、本質的に水を含んでなり、溶媒回収および/または脱水手段から排出されてオフガスターボ膨張機に流入する蒸気の量の増加として部分的に維持することができることを発見し、このことにより、多くの場合、驚くべきことにその他の操作コストの上昇および設備費用の増加を補って余りある軸エネルギー回収における全体としての経済的利点がもたらされる。本発明の態様では、溶媒回収カラムから生成された炭化水素が減少したオフガスは、炭化水素が減少したオフガス流に基づいて少なくとも10、または15、または20、または30、または35、または40、または45、または50重量%の水蒸気を含んでなる。本発明の別の態様では、溶媒回収カラムから生成された炭化水素が減少したオフガスは、炭化水素が減少したオフガス流に基づいて4、または3、または2、または1重量%未満の酢酸を含んでなる。
【0016】
反応オフガス中の蒸気化合物は、水蒸気プラスVOCを含んでなる。反応オフガス中の非凝縮性気体化合物は、二原子窒素、二原子酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、および二原子水素(dihydrogen)を含んでなる。本発明の種々の局面を適用することで、発明者らは、pXの部分酸化プロセスを、以下のように反応オフガス中の蒸気化合物の量が増加した状態で行うことが可能であり、それが好ましいことを発見した。反応オフガス中の気体化合物は、反応オフガス1キログラムあたり少なくとも約0.67、または0.72、または0.75、または0.77キログラムであることが好ましい。反応オフガス中の気体化合物は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約12.4、または13.2、または13.8、または14.2キログラムであることが好ましい。
【0017】
反応オフガス中にそのような大量の蒸気を得るために、発明者らは、このような酸化反応は高い発熱性を有して強い冷却を必要とするにも関わらず、伝導性隔離境界面を通しての本発明の酸化反応媒体からの環境への喪失、および意図する熱の除去を大きく抑制することが好ましいことを発見した。酸化反応媒体の少なくとも一部分を含有する容器および/または導管の露出された環境表面領域の少なくとも約70、または90、または95、または99パーセントが、少なくとも約0.01、または0.02、または0.04、または0.08メートルの厚さの断熱材で覆われるようにして断熱を施すことが好ましい。酸化反応媒体の少なくとも一部分を含有する導管および/または容器の露出された環境表面領域を通しての熱エネルギーの喪失が、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約40、または20、または10、または5ワット未満であることが好ましい。伝導性隔離熱交換境界面を通しての、例えば水および空気等の実用冷却流体(utility cooling fluids)による酸化反応媒体の少なくとも一部分の冷却を、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたりの熱エネルギーの除去が約100、または10、または0.1、または0.01ワット未満となるように制限することが好ましい。
【0018】
反応オフガス中にそのような大量の蒸気を得るために、発明者らは、やはりこのような酸化反応が高い発熱性を有して強い冷却を必要とするにも関わらず、酸化反応媒体へのフィードが実行可能な限り高温であることが好ましいことをさらに発見した。少なくとも1つの酸化反応媒体への酸化剤フィードが圧縮空気であって、ここで、圧縮の最終段階を出た後の冷却が最小限に抑えられることが好ましい。該圧縮空気の質量の少なくとも約50、または70、または90、または99パーセントが、少なくとも約60、70、80、90℃の温度で酸化反応媒体へ到達することが好ましい。該圧縮空気の質量の少なくとも約50、または70、または90、または99パーセントが、少なくともおよそ対応する空気圧縮機の放出温度から40、または20、または10、または5℃を減じた温度で酸化反応媒体へ到達することが好ましい。該圧縮空気を送り込むための導管、容器、および制御装置の露出した環境表面領域の少なくとも約50、または70、または90、または95パーセントが、厚さが少なくとも約0.005、または0.01、または0.02、または0.04メートルの断熱材で覆われるように断熱されることが好ましい。
【0019】
溶媒が、少なくとも1つの溶媒回収および/または脱水手段において反応オフガスから回収され、次に、環境温度よりも高く、対応する反応媒体の温度近辺である温度で酸化反応媒体へ戻されることが好ましい。すなわち、炭化水素化合物は、反応オフガスから凝縮され、適切に脱水され、そして反応オフガスよりも大きく冷却されることなく反応媒体へ戻されることが好ましい。より好ましくは、この高温の回収溶媒は、伝導性隔離熱交換境界面を通しての熱エネルギーのインプットが限定された状態で提供される。本明細書の他所で開示されるように、この結果は、該溶媒回収および/または脱水手段において除去される熱エネルギー量を適切に制限することで達成される。一次酸化反応媒体の温度よりも高い温度の回収溶媒へ熱エネルギーを移動しないことが好ましいことから、該回収溶媒の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、約200、または190、または180、または170℃未満の温度で酸化反応媒体へ供給されることが好ましい。該回収溶媒の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、少なくとも反応オフガスのおよその温度から約80、または40、または20、または10℃未満を減じた温度で酸化反応媒体へ供給されることが好ましい。該回収溶媒の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、少なくとも約60、または90、または120、または140℃の温度で酸化反応媒体へ供給されることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段への正味の熱エネルギーインプットの少なくとも約40、または80、または90、または98パーセントが、伝導性隔離熱交換境界面を通しての熱エネルギー移動なしで、流入する反応オフガスから直接得られることが好ましい。該回収溶媒の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、少なくとも対応する反応オフガスのおよその温度から約80、または40、または20、または10℃未満を減じた温度で溶媒回収および/または脱水手段から排出され、同時にそこでは伝導性隔離熱交換境界面を通しての1キログラムの回収溶媒あたり約100、または30、または10、または3キロカロリー未満の熱エネルギーインプットを用いて処理されており、伝導性隔離熱交換境界面を通しての1キログラムの回収溶媒あたり約100、または30、または10、または3キロカロリー未満の熱エネルギーインプットで対応する反応媒体へ流入することが好ましい。回収溶媒の少なくとも一部分を含有する容器および/または導管の露出した環境表面領域の少なくとも約70、または90、または95、または99パーセントが、厚さが少なくとも約0.01、または0.02、または0.04、または0.08メートルの断熱材で覆われるように断熱されることが好ましい。
【0020】
固体TPAのろ過および洗浄から回収されたろ液溶媒が、伝導性隔離熱交換境界面を通しての熱エネルギーの移動によって得られる上昇された温度にて酸化反応媒体へ戻されることが好ましい。ろ液溶媒は、スラリーからの固体TPAの機械的分離および/または洗浄からの溶媒である。ろ液溶媒を得るための1つの手段は、ろ過技術の分野で公知のいずれかの手段によるTPAスラリーのろ過および洗浄であるが、発明者らは、本技術分野で公知のその他のすべての機械的分離をろ液溶媒の生成のために意図しており、例えば重力沈降、遠心分離、およびハイドロクロン(hydroclones)などである。
【0021】
酸化反応媒体へ戻す前に、該ろ液溶媒の少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントを、約100、または80、または70、または60℃未満の温度まで冷却することが好ましい。このことにより、TPAのスラリー中での溶解度が低下することが有用であり、ならびに、ろ液溶媒の腐食性が低減されることで、導管、容器、ポンプ、ならびにろ液溶媒の貯蔵および処理を含んでなるその他の設備、および制御装置に、より安価な構造材料を用いることが可能となることが有用である。該冷却ろ液溶媒のための適切な構造材料は、中程度の耐腐食性を有する種々の金属および合金を含んでなり、チタンならびにその他のより高価で耐腐食性の高い金属および合金の代替材料としてのステンレス鋼または混粒鋼(duplex steels)などである。
【0022】
しかし、該ろ液溶媒の少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントが、少なくとも約60、または90、または120、または140℃の入り口部温度で酸化反応媒体へ供給されることがより好ましい。酸化反応媒体中へフィードされる前に、太陽エネルギー、オフガスからの熱エネルギー、および/または約60、または20、または8、または4バール(絶対圧)未満の圧力で凝縮する蒸気からの熱エネルギーを用いて、該ろ液溶媒の約40、または60、または70、または80重量パーセントを、少なくとも約10、または20、または40、または60℃温度上昇させることが好ましい。この熱エネルギーのろ液溶媒への移動は、伝導性隔離熱交換境界面を通して行われることが好ましい。
【0023】
pXの酸化反応媒体へのフィードは、高温で行われることが好ましい。該pXフィードの少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントが、少なくとも約60、または90、または120、または140℃の入り口部温度で反応媒体へ供給されることがより好ましい。酸化反応媒体中へフィードされる前に、太陽エネルギー、オフガスからの熱エネルギー、および/または約60、または20、または8、または4バール(絶対圧)未満の圧力で凝縮する蒸気からの熱エネルギーを用いて、該pXの約40、または60、または70、または80重量パーセントを、大量貯蔵温度および/または環境温度よりも少なくとも約10、または20、または40、または60℃温度上昇させることが好ましい。この熱エネルギーのpXへの移動は、伝導性隔離熱交換境界面を通して行われることが好ましい。
【0024】
別々に、または組み合わせにより、圧縮空気、回収溶媒、ろ液溶媒、および/またはpXのフィード温度をより高温にすると、好ましい操作温度および圧力を得るためのエネルギーバランスを維持するために、酸化反応器中への液体流量を増加させて供給することが必要となる。より高温のフィードにより、より多くの反応熱が、フィードの顕熱ではなく溶媒蒸発の潜熱として除去され、液体溶媒フィードの増加量は、反応オフガス中の溶媒蒸気として酸化反応器から排出される。望ましくないことに、液体溶媒フィードの供給量を増加させると、ポンプ駆動力の増加に加えて、より高い費用のポンプ、導管、および制御装置が必要となる。
【0025】
環境空気を圧縮する場合、アフタークーラーを省略することによる供給温度の上昇は、冷却とは異なる乾燥手段が提供されない限り、酸化プロセスに投入される水蒸気の量を増加させることが多い。そのような追加された水は、最終的には、分離され、所望される溶媒組成を維持するために、TPA形成時の水と共に酸化プロセスから排出される必要がある。さらに、蒸気として、または液体として、または固体としてであっても、最終的にはそのような追加された水が排出される場合、購入した炭素含有質量の一部が同時発生的に喪失されることが多く、および、先行技術によると、最終的には追加の廃水負荷が生ずる。従って、そのような圧縮環境空気中の追加投入される水蒸気は、炭素の喪失および廃水の増加の可能性が生ずるため、二重に望ましくないと考えられ得る。
【0026】
しかし、本明細書の他所で開示する発明を用いて水の増加量を蒸気として排出し、限定された一致する量のVOCをTODにおける燃焼燃料として用いることにより、発明者らは、酸化剤フィードに用いられる圧縮環境空気中に選択された量の水蒸気を残すことについて正味の明確な恩恵を発見した。従って、本発明の少なくとも1つの酸化反応媒体への酸化剤フィードの少なくとも約70、または80、または90、または95重量パーセントが、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約0.01、または0.03、または0.04、または0.05キログラムの水、および対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約0.12、または0.10、または0.08、または0.07キログラム未満の水を含んでなることが好ましい。
【0027】
酸化反応媒体、より好ましくは一次酸化反応媒体からの排出後、オフガスの少なくとも一部分を用い、1もしくは2つ以上のターボ膨張機手段を用いてある量の軸仕事を作り出すことが好ましい。ターボ膨張機手段または単にターボ膨張機は、連続して段階化された1もしくは2つ以上のターボ膨張機工程であり、所望される場合は、1もしくは2つ以上の段階間の加熱手段を有していてよい。ターボ膨張機の圧力が最も低い段階から排出される、さらなる処理工程の前のオフガスは、本明細書にて、ターボ膨張機オフガスと称される。環境空気から酸化剤を供給するための少なくとも1つの圧縮工程と機械的に連結されるように少なくとも1つのターボ膨張機工程を配置することが好ましい。そのような連結は、回転機械軸および/またはギアボックスによって提供されることが都合が良い。
【0028】
軸動力を最大化するためには、ターボ膨張機へ投入される前のオフガスからの圧力および熱エネルギーの喪失を最小限に抑えることが望ましい。しかし、溶媒の回収のために、ならびに溶媒回収および/または脱水手段における適量の水の除去のために、圧力および熱エネルギーの消費についての競合する需要が存在する。さらに、オフガスの体積が非常に大きくなるため、ターボ膨張機手段の出口部で好ましい低下した圧力では、溶媒回収および/または脱水手段に要する設備費用が大きく上昇する。
【0029】
本明細書で開示するように、発明者らは、ターボ膨張機手段におけるオフガスからの軸動力の回収に対して、溶媒回収および/または脱水手段における反応オフガスからの圧力ならびに温度エネルギーの消費のバランスを取ることを可能とする特徴の組み合わせを発見した。好ましい溶媒回収および/または脱水手段の発見および実施可能な程度の開示は本明細書の他所に含まれる。そこへ進む前に、ターボ膨張機手段に関連する好ましい局面を開示する。
【0030】
ターボ膨張機工程への入口部流量に関する好ましい圧力範囲について考える。溶媒回収および/または脱水手段からの出口部オフガスの圧力の低下は、反応媒体の上側表面近くの反応オフガスが形成される部分から測定された静圧で、約2、または1、または0.5、または0.2バール未満であることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段の出口部とターボ膨張機の入口部との間のオフガスへ熱エネルギーを供給する所望の加熱手段を通しての摩擦流体圧力損失(frictional flowing pressure loss)は、約32,000、または16,000、または8,000、または4,000パスカル未満であることが好ましい。第一のターボ膨張機工程への入口部におけるオフガス圧力の低下は、反応媒体の上側表面近くの反応オフガスが形成される部分から測定された静圧で、約2、または1、または0.5、または0.2バール未満であることが好ましい。少なくともターボ膨張機工程上の入口部における圧力は、少なくとも約2、または3、または4、または5バール(絶対圧)であることが好ましい。第一のターボ膨張機工程への入口部における圧力は、約12、または10、または8、または7バール(絶対圧)未満であることが好ましい。熱交換手段などのいずれの段階間導管および処理工程においても、第一のターボ膨張機段階への入口部と最終段階の出口部との間で合計した摩擦流体圧力損失は、約64,000、または32,000、または16,000、または8,000パスカル未満であることが好ましい。
【0031】
断熱を通して出て行く熱エネルギーの損失、および摩擦流体損失による圧力エネルギーの損失を最小限に抑えるために、溶媒回収および/または脱水手段からのオフガスの出口からターボ膨張機の入口部までの距離を最小とすることが望ましいが、発明者らは、ターボ膨張機へのオフガス入口部は、周囲の地盤面から高さ方向に測定して約40、または30、または20、または10メートル未満以内に配置することが好ましいことを発見した。溶媒回収および/または脱水手段から排出されるオフガスの高度は地盤面から50メートル超過であり得ることから、これによって、オフガスの高度水頭(elevation head)がターボ膨張機入口部での静圧へ最大限に再変換される。
【0032】
軸動力の回収を高めるためには、ターボ膨張機上の背圧を最小限に抑えることが好ましい。背圧を低下させることは、排出されるガスの減圧率および体積を最大化することにより、ターボ膨張機による軸動力回収を最大化する手助けとなる。しかし、本発明のターボ膨張機オフガスは、他の競合する必要性を有する。最低限でも、周囲環境へ放出される前に、導管、制御装置、ならびに多くの場合凝縮手段および環境処理手段を含んでなる種々の設備を通流するための圧力が提供される必要がある。より低い圧力のターボ膨張機オフガスを生成することは、設計を非常に困難とし、これらの下流プロセスにおける設備費用が非常に高くなる。ターボ膨張機オフガスの圧力を高くすることは、特に膨張機オフガス中の水蒸気の(実質的に)「すべて」を凝縮することが好ましいプロセス設計において、好ましい量の水およびVOCの凝縮を容易にするために必要である。圧力が低い場合、環境温度に近い実用冷却流体を用いてターボ膨張機オフガスから適切な部分の水蒸気およびVOCを凝縮することは、その達成が困難または不可能であり、実用冷却流体を冷却することは、そのような大量の熱負荷に対しては望ましくない。また、ターボ膨張機オフガスに維持される圧力が高まると、熱交換係数の向上、いずれかの任意の実用冷却流体の供給温度との温度差の向上、ならびに該熱交換手段内における速度、圧力低下、および流量分布の管理に起因して、熱交換手段に必要とされる物理的なサイズが小さくなる。大部分または大半の水蒸気およびVOCを凝縮した後でさえ、ターボ膨張機オフガスの圧力が低いことは、依然として、さらなる下流の導管、制御装置、および設備のサイズが大きくなることを意味する。さらに、プロセス設計の中には、膨張機オフガスまたは凝縮器オフガスを用いてTPA生成物粉末を運搬することが好ましいものもあり、このことは、ターボ膨張機の背圧を高めることに対する別の必要性を生む可能性がある。
【0033】
本発明の1つの局面によると、発明者らは、オフガス導管、制御装置、熱交換機手段、TOD手段、およびスクラバー手段に対する開示された設計が、オフガスターボ膨張機の出口部において以下の好ましい圧力条件を可能とするものであることを発見した。ターボ膨張機オフガスの圧力は、約0.9、または0.6、または0.4、または0.3バール(ゲージ圧)未満であることが好ましい。ターボ膨張機オフガスの圧力は、少なくとも約0.05、または0.10、または0.15、または0.20バール(ゲージ圧)であることが好ましく、本局面は、周囲環境へ放出する前に、開示された導管、制御装置、ならびにオフガス凝縮器、凝縮液デミスター(condensate demisting and demisting)、TOD、およびスクラバーを含んでなるが、再圧縮工程は含まない設備にターボ膨張機オフガスを通流させるのに十分な圧力エネルギーを供給するものである。
【0034】
本発明の別の局面によると、上記のように下流での圧力の利用を最小限に抑え、および凝縮器熱交換手段の後に位置するオフガス再圧縮工程も提供することにより、ターボ膨張機の背圧をさらに最小限に抑えることが好ましく、ここで、ターボ膨張機オフガス中に存在する水蒸気の少なくとも約10、または20、または40、または80重量パーセントが液体の水として除去される。発明者らは、本明細書の本発明に従って水蒸気を周囲環境へ放出する場合であっても、本明細書の本発明に従うオフガスからの効率的な水蒸気の除去により、上流のターボ膨張機でのより大きな減圧で提供されるエネルギーの増加よりも必要とするエネルギーが少ないことが有用である残留オフガスに対する、再圧縮工程が可能となることを発見した。さらに、オフガス凝縮手段と再圧縮手段への入口部との間にノックアウト手段を配置することがより好ましい(凝縮器オフガスおよびノックアウトオフガスについての開示事項ならびに呼称に関しては本明細書の他所を参照されたい)。オフガス再圧縮を用いる場合、凝縮器オフガスを、より好ましくはノックアウトオフガスを、少なくとも約0.05、または0.1、または0.2、または0.3バール再圧縮することが好ましい。オフガス再圧縮を用いる場合、凝縮器オフガスを、より好ましくはノックアウトオフガスを、約0.9、または0.8、または0.7、または0.6バール未満再圧縮することが好ましい。オフガス再圧縮を用いる場合、ターボ膨張機の最低圧力の段階から排出されるオフガスの圧力は、約0.3、または0.2、または0.1、または0.0バール(ゲージ圧)未満であることが好ましい。オフガス再圧縮を用いる場合、ターボ膨張機の最低圧力の段階から排出されるオフガスの圧力は、少なくとも約−0.9、または−0.6、または−0.4、または−0.3バール(ゲージ圧)であることが好ましい。オフガス再圧縮を用いる場合、少なくとも1つのターボ膨張機工程および/または環境空気から酸化剤を供給するための少なくとも1つの圧縮工程と機械的に連結されるように、少なくとも1つの再圧縮工程を配置することが好ましい。そのような連結は、回転機械軸および/またはギアボックスによって提供されることが都合が良い。
【0035】
ここで、ターボ膨張機手段へのオフガス入口部における、または所望されて提供される場合は溶媒回収および/または脱水手段の後、ならびに該ターボ膨張機手段の前に配置されるオフガス予備加熱手段の入口部における好ましい温度について考える。第一のターボ膨張機工程への入口部における温度は、所望される場合は第一のターボ膨張機手段の前に配置してよいいずれのオフガス予備加熱手段よりも前で測定して、少なくとも約110、または120、または130、または135℃であることが好ましい。第一のターボ膨張機工程への入口部における温度は、第一のターボ膨張機手段の前に配置されたいずれのオフガス予備加熱手段よりも前で測定して、約190、または175、または165、または155℃未満であることが好ましい。反応媒体の上側表面近くの反応オフガスが形成される部分からオフガスが第一のターボ膨張機手段へ投入される部分までで測定した温度の低下が、所望される場合は第一のターボ膨張機手段の前に配置してよいいずれのオフガス予備加熱手段よりも前で測定して、約50、または40、または30、または25℃未満の低下であることが好ましい。
【0036】
作動流体の露点またはそれ未満の温度で操作される凝縮ターボ膨張機(condensing turboexpanders)は本技術分野で公知であるが、本発明のオフガス中のある成分は、多くの構造材料に対して、これらがオフガスの露点に近すぎる温度で操作されるターボ膨張機に用いられる場合、過度な量の侵食および腐食を引き起こす。腐食性成分は、水および/または二原子酸素と合わせて、カルボン酸および/または臭素を含んでなると考えられる。
【0037】
従って、ターボ膨張機の少なくとも1つの段階からの出口部における温度が、オフガスの局所的な露点温度(local dewpoint temperature)よりも少なくとも約5、または10、または20、または25℃高い状態で操作することが好ましい。より好ましくは、このような露点からの温度乖離(clearance)が、ターボ膨張機のすべての段階からの出口部で維持される。そのような温度は、ターボ膨張機の機械効率を制限すること、溶媒回収および/もしくは脱水手段からの出口とターボ膨張機の出口との間でオフガスへ熱エネルギーを添加すること、ならびに/またはターボ膨張機を通しての圧力減少を制限すること、を含んでなる種々の手段によって得られる。
【0038】
しかし、露点が十分に避けられた場合、設備費用および操作コストに関連して、ターボ膨張機オフガスにおける過剰な過熱による本発明の操作は望ましくないことが多いことを発明者らは発見した。従って、ターボ膨張機の少なくとも1つの段階の出口部、およびオフガス凝縮器入口部における温度が、局所的な露点よりも約150、または120、または90、または60℃未満高い状態で操作することが好ましい。
【0039】
効率の低いターボ膨張機は、ターボ膨張機出口部温度を好ましい露点範囲に確実に維持するために必要である添加される熱エネルギーが少ない。作動流体から除去されて機械動力へ変換されるエンタルピーが減少すると、ターボ膨張機から出る温度は本来高くなる。熱的加熱の相対コストおよび電力のコストによっては、タービンの機械効率を向上させることは最適化されたコストに対して不利益であるかまたは有益であり得る。発明者らは、送られた熱エネルギーの単位コストが同一の単位で表された電力コストの約0.3倍未満である場合、ターボ膨張機の機械効率を最大化し、追加の熱エネルギーインプットを用いて膨張機出口部にて所望される露点範囲を得ることが好ましいことを発見した。これは、電気的に作り出される動力のサイクルが達成し得るものよりも効率は低く、たとえば、熱エネルギーインプットに対する機械エネルギーアウトプットの比は少なくとも約0.5であり、従って、オフガスへの熱エネルギーインプットを用いることは、得られる軸仕事と比較して賢明ではないと考えられ得る。しかし、露点回避の問題は、熱エネルギーインプットを徐々に増やしていくことを、膨張機における効率の向上、および/またはそこでの減圧の増加と結びつけることで、全体としての著しいエネルギー回収の向上を達成することができることを意味する。従って、本発明で用いられるターボ膨張機の機械効率は、オフガス作動流体の理想的な等エントロピー膨張によって達成することが可能である最大軸仕事アウトプットの少なくとも約65、または75、または80、または85パーセントであることが好ましい。
【0040】
ターボ膨張機からの機械的動力アウトプットを増加させるためには、特に高効率ターボ膨張機を使用しながら露点に対する好ましい範囲内の出口部温度を維持することに関連して、溶媒回収および/もしくは脱水手段から排出されてターボ膨張機へ流入する間のオフガス、ならびに/または多段階ターボ膨張機における段階間の位置におけるオフガスへ、以下の量の熱エネルギーを提供することが好ましい:対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約100、または200、または300、または350ワット;対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約1,000、または800、または600、または500ワット未満;ターボ膨張機オフガス1キログラムあたり少なくとも約10、または20、または30、または40ワット;ターボ膨張機オフガス1キログラムあたり約100、または90、または80、または70ワット未満;少なくとも約10、または20、または40、または60℃である熱エネルギーインプットからのオフガス温度上昇;ならびに、約250、または200、または150、または100℃未満である熱エネルギーインプットからのオフガス温度上昇。
【0041】
そのような量の熱エネルギーは、伝導性隔離熱交換境界面を含んでなり、好ましくは本技術分野で公知の種々の耐腐食性金属および合金を含んでなる熱交換手段を介して供給される。好ましくは、熱エネルギーは高温作動流体により、より好ましくは凝縮して凝縮液体水の一部分を形成する水蒸気により供給される。さらに、発明者らは、オフガス熱交換手段で形成される凝縮液から低圧力フラッシュ蒸気の少なくとも一部分を形成すること、および該フラッシュ蒸気の少なくとも一部分を、例えば、キシレン、回収溶媒、ろ液溶媒、TPA固体、および/またはオフガスの一部分の加熱等の、TPA製造プロセス内の他所での少なくとも1つの熱交換手段で用いることが好ましいことを開示する。
【0042】
所望される場合は、そのような量の熱エネルギーは、二原子酸素で燃料を酸化し、得られた高温反応生成物をオフガスと直接組み合わせることによって供給してよい。該高温反応生成物は、溶媒回収および/もしくは脱水手段から排出されてターボ膨張機へ流入する間の位置、ならびに/または多段階ターボ膨張機における段階間の位置で投入される。好ましくは、該燃料は炭化水素結合を含んでなる。より好ましくは、該燃料は、アルコール、アセテート、および/または炭化水素を含んでなる。さらにより好ましくは、該燃料は、メタノール、エタノール、メタン、プロパン、ブタン、および/または燃料オイルを主に含んでなる。最も好ましくは、該燃料は、少なくとも約50、または70、または90、または95重量パーセントのメタンを含んでなる。
【0043】
好ましくは、溶媒回収および/または脱水手段からのオフガスは、多くの場合、比較的二原子酸素に乏しく、水蒸気が豊富であることから、圧縮環境空気の一部分が、該燃料の酸化のために供給される。より好ましくは、化学量論量の二原子酸素の少なくとも約50、または70、または90、または100重量パーセントが、酸化反応ゾーンへフィードされる圧縮環境空気から該燃料のために提供される。二原子酸素の化学量論量とは、供給された燃料を水と二酸化炭素へ完全に変換するのに要する最少量である。さらにより好ましくは、化学量論量の二原子酸素の少なくとも約300、または200、または150、または120重量パーセント未満が、酸化反応ゾーンへフィードされる圧縮環境空気から該燃料のために提供される。好ましくは、該燃料の酸化のためのピーク温度は、少なくとも約300、または400、または600、または800℃である。好ましくは、該燃料の少なくとも約10、または50、または80、または95重量パーセントの酸化の促進に酸化触媒は用いられない。好ましくは、溶媒回収および/または脱水手段から排出されるオフガス中のVOCの少なくとも約10、または50、または80、または95重量パーセントは、ターボ膨張機の最終段階から排出される前に燃焼されない。
【0044】
ターボ膨張機への入口部における温度および圧力を上昇させることに加えて、発明者らは、本明細書の開示事項が、少なくとも1つのターボ膨張機手段の入口部へ到達する水蒸気の質量を増加させることについても好ましいことを発見した。このような組成は、一次酸化反応媒体、溶媒回収および/または脱水手段、ならびに接続導管の設計および操作に関する本明細書の開示事項によって可能となる。少なくとも1つのターボ膨張機工程へ流入するオフガスの組成は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約3.0、または3.3、または3.5、または3.6キログラムの水を含んでなることが好ましい。少なくとも1つのターボ膨張機工程へ流入するオフガスの組成は、同じ位置におけるオフガス1キログラムあたり少なくとも約0.38、または0.42、または0.44、または0.46キログラムの水を含んでなることが好ましい。少なくとも1つのターボ膨張機工程の入口部へ流入するオフガスの質量流量は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約6.9、または7.3、または7.6、または7.8キログラムであることが好ましい。
【0045】
ここで、溶媒回収および/または脱水手段へ戻って考える。本明細書にて「揮発性有機化合物」および「VOC」と称される、少なくとも1つの炭化水素結合を有する気化化合物を、反応オフガスから最大限回収することが一般的に望ましい。オフガスから回収されない場合、これらの化合物は望ましくなく周囲環境へ放出されるか、またはより好ましくは、TODにてそのほとんどが水蒸気および二酸化炭素へと変換される。TOD排出物はより環境的に優しいものではあるが、溶媒回収および/または脱水手段からのVOCの喪失が操作上のコストであることに変わりはない。
【0046】
より具体的には、TODへ流入するオフガス中におけるpX、酢酸、および酢酸メチルの喪失を限定することが一般的に望ましい。そのような喪失の最小限化は、溶媒回収および/または脱水手段における種々の機械的方法に影響されるが、分離は、最終的には、熱力学、ならびに溶媒回収および/または脱水手段におけるエネルギー消費によって制御される。一般的には、エネルギー消費が大きくなると、VOCの喪失が少なくなり得る。そのようなエネルギー消費は、溶媒回収および/または脱水手段における、温度の低下および/または還流比の上昇をもたらす。
【0047】
しかし、発明者らは、揮発性有機化合物の喪失をその必要最低限度上まで意図的に引き上げることによって、TODの燃料需要およびターボ膨張機の軸動力回収と合わせた場合に全体のプロセスの経済性が向上する結果となることを発見した。
【0048】
従って、本明細書で開示するように反応オフガスを処理する少なくとも1つの溶媒回収および/または脱水手段において、エネルギー除去およびエネルギー喪失を制御することが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段から排出されるオフガスの少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントの温度が、反応媒体の上側表面近くの反応オフガスが形成される部分で測定して、約50、または40、または30、または25℃未満低下することが好ましい。大量の熱エネルギーが、ターボ膨張機の後に最終的には周囲環境へ放出されるにも関わらず、溶媒回収および/または脱水手段を含んでなる導管、容器、および制御装置の露出した環境表面領域の少なくとも約70、または90、または95、または99パーセントが、少なくとも約0.01、または0.02、または0.04、または0.08メートルの厚さである断熱材料で断熱されることが好ましい。溶媒回収および/もしくは脱水手段を含んでなる導管ならびに/または容器の露出した環境表面領域を通しての熱エネルギーの喪失は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約40、または20、または10、または5ワット未満であることが好ましい。
【0049】
対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約1,000、または100、または1、または0.1ワット未満の熱エネルギーが、反応媒体の上側表面近くの反応オフガスが形成される部分に位置する伝導性隔離熱交換境界面を通してプロセス流体から除去されるように、およびその中の二原子窒素の少なくとも約80、または90、または95、または99重量パーセントがターボ膨張機手段を通流してしまうまで、熱エネルギー回収を制限することが好ましい。反応オフガスからエネルギーを回収するための公知のいくつかの設計は、熱エネルギーを伝導性隔離熱交換境界面を通して抽出して、ターボ膨張機にオフガスを通流させる前に実用流体を加熱および/または蒸発させることによって溶媒を凝縮かつ回収することを含んでなる。次に、実用流体は、軸動力の発生、および/または他の工程における熱エネルギーの移動に用いられる。代表的な実用熱移動流体および/または冷却流体は、液体および/もしくは気体の水、液体および/もしくは気体の軽質脂肪族炭化水素、ならびに/または空気を含んでなる。
【0050】
溶媒回収および/または脱水手段は、共沸分離化合物を添加せずに操作されることが好ましい。代表的な共沸蒸留化合物は、酢酸n‐ブチルおよび/または酢酸n‐プロピルを含んでなる。溶媒回収および/または脱水手段は、反応オフガスから回収される溶媒1キログラムあたりの共沸蒸留化合物の正味の添加量を約0.1、または0.01、または0.001、または0.0001キログラム未満として操作されることが好ましい。
【0051】
本発明の溶媒回収および/または脱水手段は、反応オフガス中に存在する非凝縮性気体および/または二原子窒素の少なくとも約80、または90、または95、または99重量パーセントを処理する高効率蒸留手段を含んでなることが好ましい。該蒸留手段は、少なくとも約20、または25、または30、または35の分離の理論段階を含んでなることが好ましい。該蒸留手段を通流するオフガスの流体摩擦圧力損失は、約60、または40、または20、または10キロパスカル未満であることが好ましい。いずれの蒸留トレイも、トレイあたり約1,200、または900、または700、または500パスカル未満である低圧力低下の設計であることが好ましいが、これは、望ましくないことに、そのようなトレイのターンダウン操作(operating turndown)が制限される。本技術分野で公知の構造化されたパッキング(structured packing)を用いることがより好ましいが、高価な耐腐食性冶金が必要であり、さらにチタンを含んでなる金属には引火の可能性もある。該蒸留手段を、少なくとも2種類の異なる容器径を用いて構築することが好ましく、ここで、上側セクションの水平方向最大径は、下側セクションの少なくとも約4メートルの高さを通して存在する水平方向最大径の約1.0、または0.96、または0.92、または0.90倍未満であり、反応オフガス中の二原子窒素の少なくとも約80、または90、または95、または99重量パーセントを処理している。
【0052】
ターボ膨張機から排出後、オフガスの少なくとも一部分が、本明細書でオフガス凝縮器と称される少なくとも1つの熱交換手段で冷却され、それによって、本明細書で環流(reflux)と称される、本質的に水を含んでなる液体を生成し、少なくともその一部分が該溶媒回収および/または脱水手段へフィードされることが好ましい。オフガス凝縮器の入口部における温度、圧力、および/または組成に対する種々の好ましい範囲は、ターボ膨張機の最終段階の出口部と同じであることが好ましい。オフガスの流体摩擦圧力損失は、該オフガス凝縮器内において約16、または12、または8、または4キロパスカル未満であることが好ましい。オフガス再圧縮工程なしで操作する場合、該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの圧力は、少なくとも約0.02、または0.08、または0.12、または0.16バール(ゲージ圧)であることが好ましい。オフガス再圧縮工程なしで操作する場合、該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの圧力は、約0.6、または0.5、または0.4、または0.3バール(ゲージ圧)未満であることが好ましい。所望される場合は行ってもよいオフガス再圧縮工程と共に操作する場合、該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの圧力は、少なくとも約−0.8、または−0.7、または−0.6、または−0.5バール(ゲージ圧)であることが好ましい。所望される場合は行ってもよいオフガス再圧縮工程と共に操作する場合、該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの圧力は、約0.1、または0.0、または−0.1、または−0.2バール(ゲージ圧)未満であることが好ましい。該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの温度は、少なくとも約30、または40、または50、または60℃であることが好ましい。該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの温度は、約110、または100、または90、または80℃未満であることが好ましい。該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの温度は、ターボ膨張機出口部温度よりも少なくとも約10、または20、または30、または35℃低下されることが好ましい。該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの温度は、ターボ膨張機出口部温度よりも約100、または80、または70、または60℃未満低下されることが好ましい。対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約3,100、または2,900、または2,700、または2,500ワット未満の熱エネルギーが該オフガス凝縮器で除去されることが好ましい。対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約1,600、または1,800、または2,000、または2,100ワットの熱エネルギーが該オフガス凝縮器で除去されることが好ましい。
【0053】
環流の量および温度を選択かつ制御することで、凝縮器から排出されるオフガス中のVOCの喪失を最小限に抑えることとのバランスを取りながら、ターボ膨張機へ流入する水蒸気が最大化される。溶媒回収および/または脱水手段への環流の流れは、該溶媒回収および/または脱水手段の設備を有する酸化反応器で生成されるTPA形成時の水1キログラムあたり少なくとも約7.0、または8.0、または8.5、または9.0キログラムの液体水を含んでなることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段への環流の流れは、該溶媒回収および/または脱水手段の設備を有する酸化反応器で生成されるTPA形成時の水1キログラムあたり約12.0、または11.0、または10.5、または10.0キログラム未満の液体水を含んでなることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段への環流の流れは、溶媒回収および/または脱水手段から排出される水蒸気1キログラムあたり少なくとも約0.70、または0.75、または0.79、または0.82キログラムの液体水を含んでなることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段への環流の流れは、溶媒回収および/または脱水手段から排出される水蒸気1キログラムあたり約0.98、または0.96、または0.92、または0.90キログラム未満の液体水を含んでなることが好ましい(所望される場合は行ってもよい燃料の直接燃焼と共に操作する場合、燃料の燃焼によってより多くの質量の水が形成される)。溶媒回収および/または脱水手段へフィードされる環流の温度は、少なくとも約40、または50、または55、または60℃であることが好ましい。溶媒回収および/または脱水手段へフィードされる環流の温度の低下は、オフガス中の凝縮器から排出される水蒸気の温度より約40、または30、または20、または10℃未満低い温度であることが好ましい。
【0054】
発明者らは、本発明に従ってオフガス凝縮器をそのような低い圧力とすることで、凝縮器の入口および出口におけるオフガスの体積が大きく増加することに注目する。異常に大口径の導管を使用しない限りは、流速および摩擦圧力損失が悪影響を及ぼしてしまう。従って、ターボ膨張機出口部とオフガス凝縮器入口部との間のオフガス導管は、少なくとも約1.2、または1.5、または1.8、または2.1メートルの直径であることが好ましく、これは、種々の高価で耐腐食性である金属および金属合金から作製される圧力プロセス導管としては非常に大きいものである。導管の直径およびコストを軽減するために、ターボ膨張機出口部とオフガス凝縮器入口部との間の導管でのオフガス空塔速度(superficial velocity)は、1秒あたり少なくとも約30、または40、または50、または60メートルであることが好ましい。これらは、侵食に関して、特に露点に近い腐食性プロセスガスとしては異常に速い導管速度であり、露点に対して注意深い制御が必要である。オフガス凝縮器出口部では、ある程度の液滴の存在によって侵食および腐食の可能性が高められており、本明細書の他所で開示するように、液体除去のためのノックアウト手段へ流入するまで、このような導管での空塔速度を1秒あたり約30、または25、または20、または15メートル未満にまで制限することが好ましい。
【0055】
発明者らはまた、本発明に従ってオフガス凝縮器を低圧力で操作することで、必要量の環流を凝縮させるために、より低いプロセス温度を用いざるを得なくなることにも注目する。このより低いプロセス温度は、冷却流体の温度近くまで低下させられ、およびより低いプロセス圧力は、プロセス側の境膜伝熱係数を減少させる。すべての因子により、種々の高価で耐腐食性である金属および金属合金を典型的には含んでなる伝導性隔離熱交換境界面の面積を増加せざるを得なくなる。
【0056】
本発明のオフガス凝縮器の設計課題およびコストは、本発明のいくつかの局面に従って好ましい量の水蒸気を周囲環境へ排出する場合に、なおさらに増幅される。選択された量の水蒸気を排出することは、新しいまたは付着汚れのない伝導性隔離熱交換境界面によって、製造速度を低下させてTPAを製造する場合のより低い質量流量スループットおよび/またはエネルギー負荷によって、ならびに例えば日々のおよび季節による環境変化によって多くの場合そうであるように様々な冷却媒体の温度によって、操作を行う場合であっても、オフガス凝縮器内で除去されるエネルギーの量を意図的に制御する必要性をもたらす。
【0057】
オフガス凝縮器手段の制御に対する特定の課題は、ほとんどの冷却塔水系が、環境空気による蒸発冷却によって大きく濃縮される量の固体を溶解して含有することである。そのような冷却水の流れを調整してオフガス凝縮器のプロセス温度を制御する場合、排出される冷却水の温度が上昇する。そのような冷却水の温度が上がりすぎると、溶解している固体の一部が析出する。残念なことに、そのようなこぶ状堆積物の下では、多くの高耐腐食性金属合金は素早く腐食され、点腐食によって孔が開いてしまう。従って、発明者らは、本発明に従うオフガス凝縮器に対する以下の好ましい態様を開示する。本明細書で用いる「凝縮器オフガス」は、少なくとも一部分が少なくとも1つのオフガス凝縮器で処理されたオフガスを含んでなる。
【0058】
液体水を生成する該オフガス凝縮器は、空冷を含んでなることが好ましく、ここで、環境空気が、該オフガスを含有する伝導性隔離熱交換境界面と接触する。強制排気ファンを用いて、該オフガスを含有する伝導性隔離熱交換境界面を通る空気流を作ることが好ましい。ファンの速度、ファンブレードのピッチ、空気流制御ルーバー、ならびに/またはその他の空気流および/もしくは空気温度制御手段を用いて、例えば、凝縮器オフガスの温度および/または圧力;凝縮器液体の温度および/または流速;例えば赤外線組成分析等のいずれかのライン上測定による凝縮器オフガスおよび/または凝縮液の化学組成、の少なくとも1つのプロセス変数に応答して、オフガス冷却の量を調節することが好ましい
【0059】
液体水を生成する該オフガス凝縮器は、該オフガスを含有する伝導性隔離熱交換境界面と接触する冷却水を含んでなることがより好ましい。冷却水流速、冷却水入口部温度、および/または冷却水出口部温度を用いて、例えば、凝縮器オフガスの温度および/または圧力;例えば凝縮器液体の温度および/または流速;赤外線組成分析等のいずれかのライン上測定による凝縮器オフガスおよび/または凝縮液の化学組成、の少なくとも1つのプロセス変数に応答して、オフガス冷却の量を調節することが好ましい。該水冷式熱交換手段から排出される冷却水の少なくとも一部分の温度が、少なくとも約50、または60、または70、または80℃であることが好ましい。該冷却水が、環境空気との直接接触によって冷却される水を含んでなることが好ましい。該冷却水が、「クローズドループ冷却水」であることがより好ましい。該クローズドループ冷却水が含んでなる全溶解固形物(TDS)の量が減少されていることが好ましく、例えば脱イオン水または復水である。環境空気との直接接触によって冷却される冷却用水を含んでなる熱交換手段において、該クローズドループ冷却水から少なくとも一部分の熱が除去されることが好ましい。平板熱交換手段において、該クローズドループ冷却水から少なくとも一部分の熱が除去されることが好ましい。
【0060】
所望される場合は、好ましくは、例えば、凝縮器オフガスの温度および/または圧力;凝縮器液体の温度および/または流速;例えば赤外線組成分析等のいずれかのライン上測定による凝縮器オフガスおよび/または凝縮液の化学組成、の少なくとも1つのプロセス変数に応答して、伝導性隔離熱交換境界面の少なくとも一部分を時々稼働状態から外してよい。該表面の部分は、通流するオフガスおよび/または通流する実用冷却流体との接触から取り除くことによって稼働状態から外される。
【0061】
所望される場合は行ってよいオフガス凝縮器で除去されるエネルギー量を制御するための方法は、その開示事項のすべてを参照することで本明細書に組み入れられる米国特許第6,504,051号に開示されるように、ターボ膨張機オフガスの一部分を該凝縮器にバイパスさせることである。しかし、そのようなガスのバイパスは、エネルギー除去の調節および制御の必要性を解決したとしても、新しい問題を引き起こす。第一に、バイパスされたオフガスからの溶媒蒸気の凝縮が容易ではないため、そのようなバイパスは質量バランスならびにエネルギーバランスに密接な影響を及ぼす。エネルギーバランスを満足させることを求めてバイパスされるガスが多すぎるかまたは少なすぎる場合、溶媒回収系に対する水バランスが乱され、それによって回収される溶媒が湿潤し過ぎるかまたは乾燥し過ぎることになり;ならびに、環境への放出および/またはTODへ送られるVOCの量も乱される。第二に、共用される共通の環境処理手段で処理するために、凝縮器オフガスおよびバイパスオフガスを再組合せすることが望ましい。しかし、温度の低い液体飽和ガス流を温度の高い液体飽和ガスと組み合わせる場合、典型的には霧状のエアロゾルが発生することから、このような再組合せは問題がある。そのようなエアロゾルは、温度が低くおよび/または乱れの少ない表面上に液滴として集まる傾向があるため、導管および設備において点腐食に関する危険性を発生させる。そのようなエアロゾルを、圧力低下および/または熱エネルギーインプットを限定した状態で高速のプロセス流から素早く除去することは困難であるが、そのような霧状物は、分離時間を延ばせば容易に合着させて雨状の液滴とすることが可能である。
【0062】
従って、発明者らは、本発明についての以下の好ましい態様を発見した。ターボ膨張機から排出後、オフガスの少なくとも一部分を、少なくとも1つのオフガス凝縮器をバイパスさせ、以下の好ましい局面の1もしくは2つ以上を用いて「バイパスオフガス」を形成する。該バイパスオフガスは、オフガス凝縮器から排出されるオフガスとの組合せ、TODへの流入、および/または周囲環境への放出の前に、伝導性隔離熱交換境界面を含んでなる熱交換手段において、約60、または50、または30、または10℃未満冷却されることが好ましい。該バイパスオフガスは、ターボ膨張機から排出される全オフガスの少なくとも約1、または2、または4、または8重量パーセントであることが好ましい。該バイパスオフガスは、ターボ膨張機から排出される全オフガスの約50、または40、または30、または20重量パーセント未満であることが好ましい。該バイパスオフガスの流速を用いて、例えば、凝縮器オフガスの温度および/または圧力;凝縮器液体の温度および/または流速;例えば赤外線組成分析等のいずれかのライン上測定による凝縮器オフガスおよび/または凝縮液の化学組成、の少なくとも1つのプロセス変数に応答してオフガス冷却の量を調節することが好ましい。周囲環境へ放出する前に、該バイパスオフガスを、オフガス凝縮器から排出されたオフガスの少なくとも一部分と組合せて、「混合オフガス」を形成することが好ましい。以下の特徴の少なくとも1つを利用する「ノックアウト手段」が、凝縮器オフガスの少なくとも一部分を処理し、それによって「ノックアウトオフガス」を生成することが好ましい。好ましくは、該ノックアウト手段へ流入する液体の少なくとも約10、50、98、99.9重量パーセントが分離され、オフガス二原子窒素の約50、または95、または99、または99.8重量パーセント未満と混合されて、該ノックアウト手段の高さの80、または60、または40、または10パーセント低い地点の開口部から排出される。好ましくは、該ノックアウト手段の少なくとも一部分が、少なくとも1つのオフガス凝縮器よりも低い高さに位置し、ガス‐プラス‐液体の多相流が該ノックアウト手段へ供給される。好ましくは、液体水の該ノックアウト手段からの排出は、オフガス凝縮器からの流れの入口部よりも低い位置の開口部から行われる。好ましくは、該ノックアウト手段中のオフガスの垂直空塔速度(superficial vertical velocity)は、水平径が最大である平面において毎秒約4、または3、または2、または1メートル未満である。好ましくは、該ノックアウト手段中のオフガスの水平空塔速度(superficial horizontal velocity)は、垂直径が最大である平面において毎秒約6、または5、または4、または3メートル未満である。好ましくは、該ノックアウト手段中のオフガスの平均滞留時間は、約20、または13、または8、または5秒未満である。好ましくは、該ノックアウト手段中のオフガスの平均滞留時間は、少なくとも約0.5、または1.0、または1.5、または2.0秒である。好ましくは、該ノックアウト手段中の液体の平均滞留時間は、少なくとも約0.5、または2、または4、または8分である。好ましくは、該ノックアウト手段中の液体の平均滞留時間は、約60、または48、または24、または12分未満である。好ましくは、圧力隔離境界面(pressure isolating boundary surface)以外の少なくとも1つの液体除去衝突面(liquid-removing impingement surface)が該ノックアウト手段に含まれる。好ましくは、ノックアウト手段を通流するオフガスと接触する固体表面領域は、該ノックアウト手段から排出されるオフガス1キログラムあたり少なくとも約0.0005、または0.001、または0.002、または0.004平方メートルである。好ましくは、該ノックアウト手段を通流するオフガスの少なくとも一部分が、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり、少なくとも約0.001、または0.005、または0.01、または0.02平方メートルの非圧力隔離固体表面領域(non-pressure isolating solid surface area)と接触する。好ましくは、ノックアウト手段へ流入するオフガス中に存在する少なくとも約500、または200、または75、または25ミクロンよりも小さい液滴の少なくとも約70、または80、または90パーセントが、ノックアウトオフガスから除去される。発明者らは、ノックアウト手段に関するこれらの種々の好ましい特徴が、バイパスオフガスを伴う場合であってもまたは伴わない場合であっても、凝縮器オフガスを処理するノックアウト手段において好ましいことを開示する。
【0063】
バイパスオフガスの少なくとも一部分が、オフガス凝縮器から排出されたオフガスの少なくとも一部分も処理するTODで処理されることが好ましい。より好ましくは、TODへ流入する前に、バイパスオフガスの少なくとも一部分が凝縮器オフガスの少なくとも一部分と組合わされて混合オフガスが形成される。最も好ましくは、TOD手段へ流入する前に、熱エネルギーを添加して該混合オフガスの温度を上昇させる。この加熱により、オフガス導管、容器、およびその他の筐体中での凝縮が低減され、従って、構造材料へのコストが最小限に抑えられる。この熱エネルギーは、全体として、または一部として、該混合オフガス流、該バイパスオフガス流、または該凝縮器排出オフガス流へ添加してよい。該混合オフガスの温度は、該オフガス凝縮器から排出されるオフガスの温度よりも少なくとも約10、または20、または40、または60℃高いことが好ましい。
【0064】
発明者らは、バイパスオフガスがない場合であっても、本局面に従うノックアウトオフガスへ熱エネルギーを添加することが好ましいことを開示する。オフガス凝縮器およびノックアウト手段を、以下のように、冷却水を高い位置までポンプでくみ上げるためのコスト、高さのある構造体および支持体のためのコスト、ならびに、オフガス凝縮器および/もしくはノックアウト手段の内部におけるならびに/またはそれを通る凝縮液体の重力流動を可能とする高さの提供、これらのバランスが同時に保たれるように配置することが好ましい。少なくとも1つのオフガス凝縮器の最も低い位置の冷却表面の高さは、地表面高さから約50、または30、または20、または10メートル未満高いことが好ましい。少なくとも1つのオフガス凝縮器の最も高い位置の冷却表面の高さは、地表面高さから少なくとも約6、または9、または12、または15メートル高いことが好ましい。ノックアウト手段内部に含有される液体(liquid inventory)の高さは、周囲の地表面高さから少なくとも約0.5、または1、または2、または3メートル高いことが好ましい。ノックアウト手段内部に含有される液体の高さは、地表面高さから約20、または15、または10、または5メートル未満高いことが好ましい。
【0065】
本明細書の開示に従うオフガスターボ膨張機からの動力回収の改善および/またはTODの自己加熱を組合わせて、発明者らは、増加した量の水蒸気を排気オフガス中に残したままにすることによって、そのような水蒸気量の増加は多くの場合VOC喪失の増加を伴うものであるにも関わらず、驚くべき利益が得られることを発見した。従って、発明者らは、凝縮器オフガス、ノックアウトオフガス、および/またはTOD入口部オフガス中に存在する「排気水蒸気」についての以下の好ましい態様を開示する。排気水蒸気は、TPA形成時の水の約400、または300、または250、または200重量パーセント未満であることが好ましい。これによって、ワンススルーターボ膨張機の動力サイクルにおいて液体水を蒸発させるのに酸化反応熱を過大に費やすことが、それに続くTODにおける処理のための設備費用および操作コストと共に回避され、およびそれに付随する溶媒回収および/または脱水手段への環流供給の増加もない。排気水蒸気は、TPA形成時の水の少なくとも約100、または110、または130、または150重量パーセントであることが好ましい。回収された溶媒系の過剰な脱水およびそれによる酸化反応条件の乱れを避けるために、TPA形成時の水を超える量の水の好ましい発生源を本明細書で開示する。
【0066】
TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、酸化剤の供給と共に、より好ましくは圧縮された環境空気と共にプロセスに流入した水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。圧縮空気中の流入する水蒸気の好ましい量は、本明細書の他所で開示する。TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、芳香族および溶媒の過剰酸化から形成される水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。排気水蒸気は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり、芳香族および溶媒の過剰酸化から形成される水を少なくとも約0.05、または0.10、または0.15キログラム含んでなることが好ましい。排気水蒸気は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり、芳香族および溶媒の過剰酸化から形成される水を約0.05、または0.04、または0.03キログラム未満含んでなることが好ましい。
【0067】
TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、液体溶媒を含んでなるプロセス流中への加圧蒸気(少なくとも約50、90、95、99重量パーセントの水、少なくとも約110、または140、または180、または220℃)の注入から形成された水を含んでなることが好ましい。好ましい適用は、熱エネルギー源として、ならびに導管、開口部、および設備のフラッシュ媒体(flushing medium)としての蒸気を含んでなる。TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、続いてガスを周囲環境へ放出するプロセス排気口の洗浄に用いられる水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、米国特許第4,939,297号、米国特許第7,351,396号、および米国特許出願第2005‐0038288号の開示事項を含んでなる溶媒精製および/または触媒回収プロセスにおける共沸分離の補助として用いられる水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。
【0068】
TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、所望される場合に溶媒回収および/または脱水手段からの出口部とターボ膨張機からの出口部との間のオフガスの加熱に用いられる場合、燃料の酸化から形成される水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。
【0069】
TPA形成時の水を超える排気水蒸気は、近接するPETプロセスに由来し、TODの出口部の前、より好ましくはTODの入口部の前にてTPAプロセスに流入する水の少なくとも一部分を含んでなることが好ましい。該PETプロセスは、該TPAプロセスからの最短水平距離が約1800、900、300、100メートル未満であるように配置されることが好ましい。該PETプロセスは、該TPAプロセスからのTPA生成物を用いてPETの少なくとも一部分を形成することが好ましい。該TPA生成物の少なくとも一部分は、パラキシレン、パラトルアルデヒド、および/またはパラトルイル酸から形成された後、約72、または24、または12、または4時間未満以内に該近接するPETプロセスの反応媒体中へフィードされることが好ましい。該PETプロセス由来の水は、TPA形成時の水1キログラムあたり少なくとも約0.02、または0.2、または0.3、または0.4キログラムであることが好ましい。該PETプロセス由来の水は、TPA形成時の水1キログラムあたり約1.1、または0.9、または0.7、または0.6キログラム未満であることが好ましい。
【0070】
TODは、一酸化炭素およびVOCを含んでなるオフガス化合物の酸化、特に酢酸メチルの酸化による自給式であることが好ましい。オフガスの燃料含有量は、TODに流入する全燃料含有量の少なくとも約60、70、80、90パーセントであることが好ましい。燃料含有量の算出は、水蒸気および二酸化炭素ガスを含んでなる気相生成物が得られる酸化反応の熱として行われる。オフガスの燃料含有量は、物質群を直接組合せる場合であっても、または隔離伝導性熱交換表面を介する間接的な場合であっても、例えば空気もしくはその他の気体/蒸気の顕熱加熱、および/または水もしくはその他の液体の顕熱もしくは潜熱加熱等の冷却手段を用いないTODの操作に要する最小燃料含有量の約160、または140、または120、または110パーセント未満であることが好ましい。
【0071】
TODは、以下の開示に従うオフガス中の酢酸メチルで燃料供給されることが有用であり、それが支配的でさえあることが好ましい。酢酸メチルは、酢酸中におけるpXのTPAへの液相酸化の公知の副生成物である。酢酸メチルを単離して、次にそれを水で加水分解して酢酸溶媒および副生成物であるメタノール排出物を回収する技術は本技術分野にて公知である。発明者らは、例えば、米国特許第20070293699号および米国特許第20070208191号(その開示事項の全体を参照することで本明細書に組み入れられる)等の効率的なTPA合成系が、酢酸メチルの正味の形成率を有用に低下させることを発見した。オフガス中のCO成分は、比較的低い発熱量を有し、オフガスは、多くの場合、比較的少量のMeBrおよび酢酸を含有する。酢酸メチルは、必要とされる温度、および酢酸メチル自体を含む汚染物質の分解効率を達成するための、TODに対する有用な燃料含有量を提供する。オフガスの燃料含有量が低すぎる場合、必要とされる温度および汚染物質の分解効率を達成するために、例えば、メタン、メタノール、および燃料油等の追加燃料をTODへ供給しなければならない。
【0072】
発明者らは、ノックアウトオフガス中の酢酸メチルに対する以下のような好ましい範囲、すなわち、さらなる酢酸メチル形成の抑制、ならびに/または分離および加水分解によるその含有酢酸の回収のための設備費用ならびに操作コストに対してTOD中の酢酸メチルの燃料値のバランスが保たれることが有用である範囲、を発見した。ノックアウトオフガス中および/またはTODへ流入するオフガス中の酢酸メチル含有量は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約0.003、または0.005、または0.007、または0.008キログラムであることが好ましい。ノックアウトオフガス中および/またはTODへ流入するオフガス中の酢酸メチル含有量は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約0.030、または0.025、または0.020、または0.015キログラム未満であることが好ましい。酢酸メチルは、TODへ流入する全燃料含有量の少なくとも約20、または30、または40、または50パーセントを提供することが好ましい。本発明の別の態様では、ノックアウトオフガス中および/またはTODへ流入するオフガス中の、酢酸メチルおよび/またはメタノール含有量は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約0.030、または0.025、または0.020、または0.015キログラ未満であることが好ましい。酢酸メチルは、TODへ流入する全燃料含有量の少なくとも約20、または30、または40、または50パーセントを提供することが好ましい。
【0073】
ノックアウトオフガス中および/またはTODへ流入するオフガス中の酢酸含有量は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり約0.005、または0.004、または0.003、または0.002キログラ未満であることが好ましい。ノックアウトオフガス中および/またはTODへ流入するオフガス中の一酸化炭素含有量は、非凝縮性気体化合物のみにより乾燥基準で算出して、約0.45、または0.40、または0.35、または0.30モルパーセント未満であることが好ましい。
【0074】
しかし、オフガス中に元々含まれる可燃性燃料であっても添加された燃料であっても、TOD中でのエネルギーの浪費が多すぎることは望ましくない。従って、TODによって放出される全燃焼エネルギーは、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり600、または500、または450、または400キロジュール未満であることが好ましい。この少ない量の必要とされる燃焼熱は、種々の手段により本技術分野で公知のように、TODの出口付近の高温処理オフガスと該TODの入口付近の未処理オフガスとの間の効率的な熱統合によって達成される。
【0075】
燃焼熱の供給は、本明細書で開示するように、操作方法およびオフガス組成によって適切に制御される。TODは、少なくとも約200、または400、または600、または800℃のピーク内部温度で操作することが好ましい。TODへ流入するオフガス中の炭素の少なくとも約94、または96、または98、または99モルパーセントが、TODから排出される前にCO2へと酸化されることが好ましい。より好ましくは、本明細書のすべての開示事項におけるTOD手段は、蓄熱式熱酸化(RTO)手段である。
【0076】
酸化反応オフガス中の一酸化炭素およびVOC汚染物質の除去ならびに/または分解の後、多くの現場では処理オフガスからの臭素の実質的な除去が必要である。この臭素の低減は、多くの場合、TODからの処理オフガスの水性スクラビング(aqueous scrubbing)によって行われ、例えば、水酸化ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムの水溶液を用いたオフガスの液体スクラビング等により臭化ナトリウム塩を生成させる。時間経過と共にスクラバー水中の種々の塩の濃度が上昇し、より純粋な水の補充と共に、排出物のブローダウンを行う必要がある。好ましくは、該オフガススクラバーの補充水は、ろ過水である。より好ましくは、該スクラバーの補充水は、脱ミネラル水、脱イオン水、および/または復水である。
【0077】
発明者らは、本質的に水を含んでなる該スクラバー液体ブローダウン排出物が、有利に、例えば冷却塔の補充水等の用水として用いられることを発見した。従って、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり少なくとも約0.01または0.05キログラムのオフガススクラバー液体排出水を、該スクラバー水を廃水処理ユニットへ、および/または直接周囲環境へ排出するのではなく、用水として用いることが好ましい。本発明の別の態様では、酸化反応媒体を含んでなる製造設備から得られるいずれの排出水も、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり排出水0.01から0.05キログラム割合にて、用水を廃水処理ユニットおよび/または直接周囲環境へ排出するのではなく、用水として用いてよい。
【0078】
所望される場合は行ってよいより好ましい態様では、本発明は、共用される組み合わされた溶媒回収および/もしくは脱水手段、ターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、ならびに/または臭素スクラバーを通して処理するために、一次および二次の両方の酸化反応器のオフガス源を含む酸化反応オフガスの組合せを含んでなる。
【0079】
エネルギー回収に関して望ましくないことに、二次反応媒体の操作圧力および温度は、一次反応媒体と比べておよび/または互い同士と比べて、実質的に異なっていることが多く、時には著しく高い。高圧反応オフガスを減圧バルブを通して低圧オフガスへ単純に膨張させると、通常はエントロピーを大きく損失し、これに続く軸仕事を作り出す能力の喪失をもたらす。しかし、本発明は、ターボ膨張機への入口部において、組合されたオフガスのエンタルピーが維持されることが有用であり、この組合されたオフガス流は、TODに先立って、COとVOCの燃料値を1つに合わせることが有用である。
【0080】
共用される共通の溶媒回収および/もしくは脱水手段、ターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、ならびに/または臭素スクラバーにおいて、少なくとも2つの別々の反応媒体からのオフガスを処理することが好ましい。該別々の反応媒体の少なくとも一部分が互いに水平方向に分離されている距離は、約1,000、または500、または300、または150メートル未満であることが好ましい。「一体化されたプロセス」とは、2つの異なるプロセス/施設からのフィードまたは生成物流が、組合され、ターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、および/または臭素スクラバーから成る群より選択される少なくとも1つの共通設備を用いて処理されることを意味する。
【0081】
オフガス混合物を形成する場合、混合物中の二次酸化反応媒体を発生源とする全オフガスの量は、混合物中の一次酸化反応媒体を発生源とする全オフガスの量よりも相当量少ないことが好ましい。一次および二次オフガスの混合物中において、二次酸化反応媒体由来のオフガスは、組合せオフガス質量の約20、または10、または5、または2重量パーセント未満、および組合せオフガスの二原子窒素質量の約20、または10、または5、または2重量パーセント未満を含んでなることが好ましい。一次および二次オフガスの混合物中において、二次酸化反応媒体由来のオフガスは、組合せオフガス質量の少なくとも約0.1、または0.2、または0.4、または0.8重量パーセント、および組合せオフガスの二原子窒素質量の約0.1、または0.2、または0.4、または0.8重量パーセント未満を含んでなることが好ましい。
【0082】
少なくとも1つの二次酸化反応媒体からの反応オフガスの少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、一次酸化反応媒体からの反応オフガスの少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントと組合されて、共用される共通の溶媒回収および/もしくは脱水手段、ターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、ならびに/または臭素スクラバーにおいて処理されることが好ましい。該二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、少なくとも約160、または175、または190、または200℃の温度にて形成されることが好ましい。該二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、約250、または240、または230、または220℃未満の温度にて形成されることが好ましい。該二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、少なくとも約7、または10、または13、または16バール(絶対圧)の圧力にて形成されることが好ましい。該二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、約40、または34、または28、または24バール(絶対圧)未満の圧力にて形成されることが好ましい。
【0083】
少なくとも2つの別々の二次酸化反応媒体からの反応オフガスの少なくとも一部分が、互いに、および一次酸化反応媒体からの反応オフガスの少なくとも一部分と組合されて、共用される共通の溶媒回収および/もしくは脱水手段、ターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、ならびに/または臭素スクラバーにおいて処理されることが好ましい。少なくとも1つの二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、該一次酸化反応媒体からの該オフガスの一部分よりも約20、または15、または10、または5℃未満高い温度にて形成されることが好ましい。1つの二次媒体からのオフガスの少なくとも一部分が、該一次酸化反応媒体からの該オフガスの一部分、および/または別の二次酸化反応媒体からの該オフガスの一部分よりも、少なくとも約10、または15、または25、または35℃高い温度にて形成されることが好ましい。1つの二次媒体からの該オフガスの少なくとも一部分が、別の二次酸化反応媒体からの該オフガスの一部分と比較して約20、または15、または10、または5℃未満異なる温度にて形成されることが好ましい。該反応オフガスの少なくとも1つが、該一次反応媒体の一部分から水平方向に約60、または20、または8、または2メートル未満離れている二次酸化反応媒体由来であることが好ましい。該反応オフガスの少なくとも1つが、該一次反応媒体の一部分から水平方向に少なくとも約4、または8、または16、または32メートル離れている二次酸化反応媒体由来であることが好ましい。
【0084】
少なくとも1つの二次酸化反応媒体からの反応オフガス中の二原子窒素の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントが、一次酸化反応媒体からの反応オフガス中の二原子窒素の少なくとも約40、または60、または80、または90重量パーセントと組合されて、共用される共通のターボ膨張機手段、凝縮器手段、ノックアウト手段、TOD、および/または臭素スクラバーで処理されることが好ましい。
【0085】
本明細書の本発明は、全モノカルボン酸不純物含有量が、少なくとも約1,000、または2,000、または4,000、または6,000ppmwである粗TPA;全モノカルボン酸不純物含有量が、約1,000、または500、または300、または200ppmw未満である精製TPA;ならびに、いずれかの相対比にて同時に粗TPAおよび精製TPAの両方、を製造するプロセスに対して好ましい。モノカルボン酸不純物は、特に、安息香酸、パラ‐トルイル酸、および4‐カルボキシベンズアルデヒドを含んでなる。
【0086】
本明細書の本発明は、色のbが、約4.0、または3.5、または3.0、または2.5b単位未満である精製TPAの製造に対してより好ましい。本明細書で用いるb値は、反射モードを用いる測定器Hunter Ultrascan XE(ハンターアソシエーツラボラトリー(Hunter Associates Laboratory, Inc.)、11491 サンセットヒルズロード(Sunset Hills Road),レストン,バージニア州 20190‐5280、www.hunterlab.com)などの分光分析機器で測定した1つの色属性である。正の読み取り値は黄味(または青色の吸収)を意味し、負の読み取り値は青味(または黄色の吸収)を意味する。
【0087】
本明細書の本発明は、例えば、pXに対してmX、TPAに対してIPA、パラ‐トルイル酸に対してメタ‐トルイル酸、および4‐カルボキシベンズアルデヒドに対して3‐カルボキシベンズアルデヒド等の、パラ‐化学種をメタ‐化学種に置き換えることにより、本開示のすべての局面において、m‐キシレン(mX)をイソフタル酸(IPA)へ変換するプロセスに適用される。この拡張は、IPAを別に作製するプロセスに適用される。この拡張はまた、TPAとIPAの両方を作製する部分的におよび/または完全に組み合わされたプロセスにも適用される。
【0088】
異なる反応媒体からの反応オフガスを組合せて溶媒回収および/もしくは脱水手段、ターボ膨張機、凝縮器、ノックアウト手段、TOD、ならびに/または臭素スクラバーの少なくとも1つで処理することに関する本発明の局面はまた、少なくとも1つの反応媒体中の主たる芳香族種がパラ置換であり、少なくとも1つの他の反応媒体中の主たる芳香族種がメタ置換である場合にも、すべての局面で適用される。回収された溶媒に関する本発明のすべての局面はまた、一方のキシレンの酸化からの反応オフガスから回収された溶媒の少なくとも一部分が、続いて72、または48、または24、または12時間以内に他方のキシレンを酸化する反応媒体中で使用される場合にも適用される。ろ液溶媒に関する発明のすべての局面はまた、一方の芳香族ジカルボン酸を主体とする固体生成物からの分離によって形成されたろ液溶媒の少なくとも一部分が、続いて72、48、24、12時間以内に他方のキシレンを酸化する反応媒体中で使用される場合にも適用される(一方のろ液からのCo/Mn/Brさらには重質芳香族不純物を他方のろ液から隔離しておくことは可能であり、それが好ましい場合が多いものの、水、酢酸、および安息香酸成分を分離しておくことは好ましくない)。
【0089】
主たる芳香族種がパラ置換であるプロセスからのろ液溶媒(パラろ液)の少なくとも一部分、および主たる芳香族種がメタ置換であるプロセスからのろ液溶媒(メタろ液)の一部分を、導管、圧力容器、および/もしくは回転設備品の少なくとも1つを共用する溶媒精製ならびに/または触媒回収プロセスで処理することが好ましい。適切なろ液精製ユニットは、米国特許第4,939,297号、米国特許第7,351,396号、および米国特許出願第2005‐0038288号(これらの全開示事項を参照することで本明細書に組み入れられる)に開示されているものを含んでなる。パラ‐ろ液およびメタ‐ろ液の少なくとも一部分が同時に共フィードされることが、順に行われることと比較して、より好ましい。精製されたろ液の少なくとも一部分および/または該プロセスから回収された触媒の少なくとも一部分が続いて用いられて、酸化反応媒体の少なくとも一部分が形成され、続いてパラ‐ろ液またはメタ‐ろ液の一部分、より好ましくは両方のろ液の一部分が形成されることが好ましい。該ろ液溶媒精製および/または触媒回収プロセスによってパラ‐ろ液から除去された芳香族不純物の少なくとも約10、または40、または80、または98重量パーセントが、該プロセスによってメタ‐ろ液から除去された芳香族不純物の少なくとも約10、または40、または80、または98重量パーセントと物理的に組合されることが好ましい。
【0090】
酸化剤供給のための圧縮空気に関する本発明のすべての局面は、圧縮手段からの圧縮空気の一部分が分割されて、主たる芳香族種がパラ置換である少なくとも1つの酸化反応媒体、および主たる芳香族種がメタ置換である少なくとも1つの他の酸化反応媒体へ酸化剤が供給される場合に適用される。
【0091】
酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液に関する本発明のすべての局面は、酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液の少なくとも一部分が分割されて、その一部が、主たる芳香族種がパラ置換である少なくとも1つのプロセス工程で用いられ、別の一部が、主たる芳香族種がメタ置換である少なくとも1つの他のプロセス工程で用いられる場合に適用される。
【0092】
1つの態様では、より小さいIPA製造プロセスが、より大きいTPA製造プロセスと共配置されていることが好ましい。少なくとも1つのメタ置換を主体とする反応媒体からのオフガスが、少なくとも1つのパラ置換を主体とする反応媒体からのオフガスと組合される場合、メタ置換を主体とする媒体から発生するオフガスが、組合されたオフガスの質量の約50、または40、または30、または20重量パーセント未満を、および組合されたオフガス中の二原子窒素の質量の約50、または40、または30、または20重量パーセント未満を構成することが好ましい。
【0093】
少なくとも1つのメタ置換を主体とする反応媒体からのオフガスが、少なくとも1つのパラ置換を主体とする反応媒体からのオフガスと組合される場合、メタ置換を主体とする媒体から発生するオフガスが、組合されたオフガスの質量の少なくとも約0.5、または1.0、または1.5、または2.0重量パーセントを、および組合されたオフガス中の二原子窒素の質量の約0.5、または1.0、または1.5、または2.0重量パーセント未満を構成することが好ましい。
【0094】
環境空気圧縮手段が、少なくとも1つのメタ置換を主体とする反応媒体および少なくとも1つのパラ置換を主体とする反応媒体へ酸化剤を供給する場合、メタ置換を主体とする反応媒体が、該空気圧縮手段からの酸化剤の全質量流量の約50、または40、または30、または20重量パーセント未満を受けることが好ましい。環境空気圧縮手段が、少なくとも1つのメタ置換を主体とする反応媒体および少なくとも1つのパラ置換を主体とする反応媒体へ酸化剤を供給する場合、メタ置換を主体とする反応媒体が、該空気圧縮手段からの酸化剤の全質量流量の少なくとも約0.5、または1.0、または1.5、または2.0重量パーセントを受けることが好ましい
【0095】
該IPAおよびTPA製造プロセスは、少なくとも1つの共配置されるPET製造プロセスと共配置されることがより好ましい。該共配置されたプロセスで製造されるIPAは、共配置されたPET製造プロセスへフィードされる全ジカルボン酸の少なくとも約0.5、または1.0、または1.5、または2.0重量パーセントを構成することが好ましい。また、該共配置されたプロセスで製造されるIPAは、共配置されたPET製造プロセスへフィードされる全ジカルボン酸の約16、または12、または8、または4重量パーセント未満を構成することも好ましい。
【0096】
別の態様では、IPAおよびTPAを共配置する場合であっても、またはしない場合であっても、メタ置換種を主に含んでなる一次反応媒体からフィードされるIPAの少なくとも一部分が、溶解、選択的水素処理、および再沈澱によって3‐CBAおよび/または着色種を除去することによる該IPAの精製を行うことなく、PET反応媒体へフィードされることがより好ましい。
【0097】
1つの態様では、PET反応媒体へフィードされる該IPAは、メタ置換を主体とする一次酸化反応媒体から直接の粗IPAであるか、または該一次反応媒体よりも約24、16、12、8度未満高い平均反応温度である二次反応媒体中で形成される後酸化IPAであることが好ましい。該粗IPAおよび/または後酸化IPAは、少なくとも約20、または80、または160、または320ppmwの3‐CBA;約3,000、または2,400、または1,800、または1,200ppmw未満の3‐CBA;少なくとも約2、または4、または8、または16ppmwの2,6‐DCF;ならびに、約160、または120、または80、または60ppmw未満の2,6‐DCFを含んでなることが好ましい。
【0098】
別の態様では、PETへフィードされる該IPAは、該一次反応媒体よりも少なくとも約16、または24、または30、または36℃高く、および該一次反応媒体よりも約80、または70、または60、または50℃未満高い平均反応温度である二次反応媒体中で形成される消化IPA(digested IPA)であることが好ましい。該消化IPAは、少なくとも約10、または40、または60、または80ppmwの3‐CBA;約1,000、または800、または500、または300ppmw未満の3‐CBA;少なくとも約2、または4、または6、または8ppmwの2,6‐DCF;ならびに、約120、または80、または60、または40ppmw未満の2,6‐DCFを含んでなることが好ましい。
【0099】
本発明の別の局面は、酸化剤供給のために環境空気を圧縮する過程で、蒸気として保持されるのではなく、凝縮かつ除去される環境水の処分の改善に関する。加圧環境空気を供給するための圧縮手段は、少なくとも1つの中間冷却器を用いて圧縮熱を除去することでプロセスを熱力学的および機械的により効果的とする多段階圧縮系を含んでなる場合が多い。そのような系では、典型的には、中間冷却器で凝縮水が生成され、この水は、典型的には、続いての圧縮段階への入口部の前で空気から分離される。そのような酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液は、潤滑剤および/または密封流体で汚染される場合があるため、該凝縮液は、従来から、生物学的またはその他の処理技術を含んでなる場合もあるが、恐らくはオイルスキマーのみである廃水処理施設へ送られる。
【0100】
発明者らは、同時に廃水処理のコストを削減し、用水の購入および/または精製のためのコストを低減する、酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液に関して、以下のような改善された使用を発見した。酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液の少なくとも一部分を、TPAプロセスおよび/または近接するPETプロセスへ、より好ましくは以下のプロセス工程の少なくとも1つにおいてフィードすることが好ましい。TPA溶媒回収および/または脱水手段、特に本明細書で定義される環流として。TPAろ液溶媒精製系、特に、より好ましくは本明細書に含まれる参考文献に従う酢酸イソプロピルを含んでなる、TPA触媒成分の回収のための共沸分離補助剤として。粗TPAの選択的接触水素化によるTPA精製のためのプロセス。TPAもしくはPETプロセスまたは貯蔵容器からの環境排気口上のスクラバー。
【0101】
酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液の少なくとも一部分を、より好ましくは以下の系を含んでなり、最も好ましくはTPAプロセスおよび/または近接するPETプロセスによって使用されるための、少なくとも1つの用水系へフィードすることが好ましい。冷却水系、より好ましくは、水が空気との直接接触によって冷却される冷却塔水系。ろ過水系。脱イオン水系および/または脱ミネラル水系。消火用水系。
【0102】
酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液の量は、環境湿度、冷却媒体温度、pXのフィード速度、および反応オフガス中の過剰の二原子酸素により、一時的および平均の両方で変化する。従って、好ましい開示された使用は、対応する酸化反応媒体へフィードされるpX1キログラムあたり、少なくとも約0.01、または0.02、または0.04、または0.08キログラムの酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液を含んでなることが好ましい。
【0103】
一般的に、水蒸気の排気は、種々のプロセス工程を介してのその導入とのおおよその連続するバランスを取りながら行うことが好ましいが;一時的に過剰の液体廃水を発生させる製造の乱れおよびメンテナンス作業が存在することは避けられない。例えば、プロセスシャットダウンの間、検査または補修のためにプロセス容器を開ける場合、その前に、本質的にすべての溶媒、基質、および生成物を除去するために十分な水洗または蒸気洗浄が行われることが多く;そして、主要なメンテナンス作業の場合、そのような通常とは異なる水(upset-water)の量は多くなり得る。液体廃水のために少なくとも1つの貯水槽を提供し、その後この液体廃水を少なくとも1つのプロセス工程へ戻し、その後本明細書の他の開示に従って水蒸気として排気することが好ましい。そのような液体廃水の貯水槽は、VOCの周囲環境への放出を制御するために効果的に隔離されることが好ましい。そのような貯水槽の容積は、少なくとも約50、または100、または200、または400立方メートルであることが好ましい。そのような貯水槽の容積は、約12,000、または9.000、または6,000、または3,000立方メートル未満であることが好ましい。
【0104】
プロセスおよび/もしくは用水に対する開示された適用にて酸化剤‐供給‐中間冷却器‐凝縮液ならびに/または臭素スクラバー水を用いることと合わせて、蒸気の形態の水を、より好ましくはTODでの処理後に周囲環境へ放出することに関する種々の局面を組み合わせると、形成された固体TPA生成物1キログラムあたり、約400、または350、または300、または250、または200、または100、または50、または20グラム未満の液体廃水排出物が生成されることが好ましい。この性能が、長期間にわたって本質的に連続して維持されることが好ましい。このような低レベルの液体廃水排出物の生成が、連続する24時間のうち少なくとも約60、または80、または90、または95パーセントの時間にわたって行われることが好ましい。少なくとも約4、または16、または64、または254日間の期間にわたって平均して、このような低レベルの液体廃水排出物の生成が行われることが好ましい。PET合成施設もまた、TPAの少なくとも一部分をPETへ変換する反応から水を生成し、この水は、例えば、エチレングリコール、アセトアルデヒド、および種々のジオキソラン類等の様々なVOC化合物で汚染されている場合が多い。PET形成時の汚染水の少なくとも一部分を、共用される共通の施設にて、近接するTPA施設からのTPA形成時の水と共に処理することが好ましい。好ましくは、PET形成からの該汚染水は、蒸気の形態のままで該PET施設から処理のために排出されるか、または該近接するTPA施設からの熱エネルギーの少なくとも一部分を用いて蒸気の形態へ変換される。
【0105】
本発明の別の態様では、副生成物として生成されるかまたは酸化に添加され、該製造施設から蒸気として外部環境へと排出される水の量は、芳香族化合物1キログラムあたり少なくとも0.3、または0.4、または0.49キログラムである。本明細書で用いる製造施設は、廃水処理を含んでよい。
【0106】
より好ましくは、近接するPET合成施設での反応からのPET形成時の気化水の少なくとも一部分は、酸化反応媒体からの反応オフガスの処理に関する本明細書のいずれかのおよび/またはすべての開示事項に従って、共用される共通のTOD、さらにより好ましくはRTOにて、TPA形成時の気化水の少なくとも一部分と共に処理される。TPAを形成する酸化反応媒体の少なくとも一部分は、該PET合成施設からの最短の水平距離が約1800、または900、または300、または100メートル未満となるように配置されることが好ましい。TPAの少なくとも一部分が、パラキシレンからの形成後約72、または24、または12、または4時間未満以内に該近接するPET合成施設の反応媒体中へフィードされることが好ましい。該近接するPET合成施設からのオフガスの少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントが、少なくとも1つの一次酸化反応媒体からの反応オフガスの少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントと共に、共用される共通のTOD、より好ましくはRTOにて処理されることが好ましい。TPA製造施設からのTPA形成時の水の少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントが、該近接するPET製造施設におけるPET形成時の水の少なくとも約40、または60、または70、または80重量パーセントと共に、共用される共通のTOD、より好ましくはRTOにて処理されることが好ましい。
【0107】
該TPA製造施設からのプロセス廃水排出物の通常の流量と合わせた該近接するPET製造施設からのプロセス廃水排出物の通常の流量は、形成されるPET1キログラムあたり約400、または200、または100、または50グラム未満の液体廃水排出物であることが好ましい。該TPA製造施設で製造されるTPAの量が、該近接するPET製造施設で消費されるTPAの量と10重量パーセントを超えて異なる場合、該TPA施設からの液体廃水排出物は、該PET施設における使用の比率によって比例配分され、この値は該PET施設からの液体廃水排出物と合計され、製造されるPETの量で除算される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸を製造する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも1つの酸化装置で芳香族化合物を酸化し、それによって酸化装置オフガスと、芳香族ジカルボン酸を含んでなる酸化装置生成物とを生成させる工程と、
(b)前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分を熱酸化分解(TOD)装置へ直接または間接的にフィードする工程と、
(c)前記TOD装置中の前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分を酸化する工程であって、前記TOD装置の定常状態操作の間、前記熱酸化分解装置に供給される燃料含有量の少なくとも60パーセントが、前記酸化装置オフガスまたは前記酸化装置オフガスの反応生成物を起源とする、工程と
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記TODが蓄熱式熱酸化装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TOD装置の定常状態操作の間、前記熱酸化分解装置に供給される燃料含有量の少なくとも70パーセントが、前記酸化装置オフガスを起源とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TOD装置の定常状態操作の間、前記TOD装置に導入される前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分中に存在する炭素の少なくとも90モル%が、前記TOD中で二酸化炭素へと酸化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TOD装置中の酸化された前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分が、前記酸化装置へフィードされる前記芳香族化合物1キログラムあたり少なくとも0.003キログラムおよび前記酸化装置へフィードされる芳香族化合物1キログラムあたり0.030キログラ未満の量で、酢酸メチルおよび/またはメタノールを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記TOD装置中の酸化された前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分が、前記酸化装置へフィードされる前記芳香族化合物1キログラムあたり0.005キログラ未満の量で、酢酸を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記TOD装置中の酸化された前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分が、前記酸化装置へフィードされる前記芳香族化合物1キログラムあたり0.045キログラ未満の量で、一酸化炭素を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記TOD装置中の酸化された前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分が、前記酸化装置へフィードされる前記芳香族化合物1キログラムあたり少なくとも0.005キログラムおよび前記酸化装置へフィードされる芳香族化合物1キログラムあたり0.020キログラ未満の量で、酢酸メチルを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記TOD装置中の酸化された前記酸化装置オフガスの少なくとも一部分中に存在する前記酢酸メチルが、前記工程(a)の酸化の副生成物である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
溶媒回収工程の後または間および前記TOD装置の前に、酢酸メチルが実質的に、除去、変換、または加水分解されないで、前記溶媒回収工程から排出される実質的に全ての酢酸メチルが前記TOD装置へフィードされる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記TOD装置からのTODオフガスを臭素スクラバーで処理し、それによって臭素が減少したオフガスを生成させる工程をさらに含んでなる、請求項1または5に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化装置オフガスからの炭化水素化合物を溶媒回収系で回収し、それによって炭化水素が減少したオフガスを生成させる工程をさらに含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素が減少したオフガスの少なくとも一部分を熱的加熱系で加熱し、それによって加熱されたオフガス流を提供する工程をさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱されたオフガス流の少なくとも一部分を少なくとも一つのターボ膨張機に通流し、それによって仕事を作り出し、かつターボ膨張機オフガスを生成させる工程をさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ターボ膨張機オフガスをオフガス凝縮器で冷却し、それによって前記ターボ膨張機オフガス中に存在する水蒸気を凝縮し、それによって凝縮器オフガスと凝縮された液体とを含んでなる凝縮器排出物を提供する工程をさらに含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記凝縮器排出物の少なくとも一部分をノックアウト容器に通流させ、それによって前記凝縮器排出物をノックアウトオフガスとノックアウト液とに分離する工程をさらに含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ノックアウトオフガスの少なくとも一部分をオフガス圧縮機で再圧縮する工程をさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ノックアウトオフガスの少なくとも一部分に、熱酸化分解(TOD)をTOD装置で施し、それによってTODオフガスを生成させる工程をさらに含んでなる、請求項1または5に記載の方法。
【請求項19】
前記芳香族化合物がパラキシレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化装置が気泡カラム反応器である、請求項1または5に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−507516(P2012−507516A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534495(P2011−534495)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/005760
【国際公開番号】WO2010/062313
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511069965)グルポ、ペトロテメックス、ソシエダッド、アノニマ、デ、カピタル、バリアブレ (6)
【氏名又は名称原語表記】GRUPO PETROTEMEX,S.A. DE C.V.
【Fターム(参考)】