説明

自走式管内検査カメラ装置

【課題】直視/側視切り替えを可能にした自走式の管内検査カメラ装置に於いて、照明機構を固定化して小型化並びに構成の簡素化を図るとともに、カメラの全視方向に対して斑のない適正な照明を行うことのできるようにした自走式管内検査カメラ装置を提供する。
【解決手段】主制御部100はポテンショメータ113から出力された撮像部13の視方向角度検出信号をもとに、定電流制御回路121,122,123を介して、直視用集光照明部15(集光照明(1))、直斜視用拡散照明部16(拡散照明(2))および側視用拡散照明部17(拡散照明(3))を個別に点灯駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管、下水管、ガス管などを検査する際に適用して好適な自走式管内検査カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管渠、暗渠等の検査に用いられるCCDカメラ装置に於いては、検査対象領域を撮影可能な明るさに保つための照明手段を必要とする。この種、カメラ装置として、従来では、カメラ筐体に照明装置を固定して設けた装置が存在する。さらに照明の均一化を図るために複数の照明装置の照度を調整する機構を備えた装置も存在する。
【0003】
水道管、下水管、ガス管などを検査する際に適用されるCCD管内検査カメラ装置には、管内前方を一定の撮像距離を保って撮影する直視形の管内検査カメラ装置と、検査対象となる管内を走行し、カメラの視方向を上下若しくは上下左右に振りながら管内前方および周側面を検査する直視/側視切り替えを可能にした自走式の管内検査カメラ装置とが存在する。
【0004】
上記した管内検査カメラ装置のうち、直視形の管内検査カメラ装置に於いては、上記したようなカメラと照明装置を同一筐体に固定した構造が適用可能である。しかしながら、直視/側視切り替えを可能にした管内検査カメラ装置に於いては、上記したような構造を適用した場合、カメラの視方向への切り替えに伴って照明装置の向きを切り替える機構が必要となり、装置の大型化並びに構成の煩雑化を招いてしまう。
【特許文献1】特開2001−333423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように管内を自走し、カメラの視方向を上下若しくは上下左右に振りながら管内前方および側周を検査する従来の自走式管内検査カメラ装置に於いては、上記したようにカメラと一体に照明手段を振らせる構成とした場合、装置全体の構成が大型化し、構成の煩雑化を招くという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、直視/側視切り替えを可能にした自走式の管内検査カメラ装置に於いて、照明機構を固定化して小型化並びに構成の簡素化を図るとともに、カメラの全視方向に対して斑のない適正な照明を行うことのできるようにした自走式管内検査カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の自走式管内検査カメラ装置は、検査対象管内を走行する走行ユニットと、前記走行ユニットの走行方向先端部に設けられたカメラユニットと、前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の前方を照明する直視用集光照明部と、前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の前方および斜め前方を照明する直斜視用拡散照明部と、前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の側方を照明する側視用拡散照明部と、前記カメラユニットに収納されたカメラレンズを有する撮像部と、前記撮像部を所定の角度範囲内で上下方向に回動制御する視方向切替部と、前記撮像部の視方向角度に応じて前記直視用集光照明部、前記直斜視用拡散照明部、および前記側視用拡散照明部の各照明を個別に制御する制御部とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、照明機構を固定化して小型化並びに構成の簡素化が図れるとともにカメラの全視方向に対して斑のない適正な照明を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の実施形態に係る自走式管内検査カメラ装置の外観構成を図1及び図2に示す。図1は自走式管内検査カメラ装置の外観構成を示す側面図、図2は同正面図である。
【0011】
自走式管内検査カメラ装置(以下、単にカメラヘッドと称す)10は、検査対象となる管1内を遠隔操作により自走し、管1の前方および側周面を撮影する。カメラヘッド10は、検査対象管1内を走行する走行ユニット(自走車ユニット)11と、走行ユニット11の走行方向先端部に設けられたカメラユニット12とにより構成される。
【0012】
走行ユニット11には、走行用の車輪11f,11f,11r,11r、および同車輪を回転駆動制御する駆動制御機構(図示せず)が設けられる。
【0013】
カメラユニット12には、光学系(カメラレンズ)およびカラーCCDを有する撮像部(CCDカラーカメラ)13が直視方向と側視方向との間で視方向切替可能に収容されている。この撮像部13の視方向に対応してカメラユニット12に透明樹脂窓が設けられている。
【0014】
さらにカメラユニット12には、一対の直視用集光照明部15,15、直斜視用拡散照明部16,16、および側視用拡散照明部17,17により構成される照明ユニットが外筐に固定して設けられている。
【0015】
直視用集光照明部15,15は、例えば側周発光型の白色LEDと、同LEDの光源を集光し反射させるリフレクタとを有して構成され、検査対象となる管1内の前方(直進方向)を照明する。
【0016】
直斜視用拡散照明部16,16は、例えばドーム状発光型白色LEDと、同LEDの光源を拡散する拡散板とを有して構成され、検査対象となる管1内の前方および斜め前方を照明する。
【0017】
側視用拡散照明部17,17は、例えばドーム状発光型白色LEDと、同LEDの光源を拡散する拡散板とを有して構成され、検査対象となる管1内の側方(側周面)を照明する。
【0018】
カメラユニット12に設けられた撮像部13の視方向に於ける、直視用集光照明部15,15と直斜視用拡散照明部16,16と側視用拡散照明部17,17との各照明エリアを図3に示している。直視用集光照明部15,15は、集光照明(1)により管1内の前方(直進方向)を照明する。直斜視用拡散照明部16,16は、拡散照明(2)により管1内の前方および斜め前方を照明する。側視用拡散照明部17,17は、拡散照明(3)により管1内の側方(側周面)を照明する。
【0019】
カメラユニット12内に於いて、撮像部13は、直視方向と側視方向との間で視方向を切替可能とする視方向切替機構により支持されている。この視方向切替機構の一部構成要素を図4に示している。
【0020】
撮像部13の視方向切替機構は、図4に示すように、モータ歯車21、遊び歯車22,23、視方向角度検出歯車24、主歯車25等を有して構成される。モータ歯車21には、視方向切替駆動用モータ(図5に示す符号111参照)の回転駆動トルクが伝達される。遊び歯車22は、モータ歯車21の回転を視方向角度検出歯車24に伝達する。遊び歯車23は、モータ歯車21の回転を主歯車25に伝達する。視方向角度検出歯車24は、主歯車25の回転角度(すなわち撮像部13の視方向角度)を検出するポテンショメータ(図5に示す符号113参照)を回転駆動する。主歯車25は、撮像部13を図示矢印方向に回転(正逆回転)可能に支持し、モータ歯車21の回転を遊び歯車23を介して受けることにより撮像部13の視方向(撮影方向)を直視方向と側視方向との間で任意の角度で切り替える。
【0021】
カメラユニット12に於ける照明制御回路の構成を図5に示している。カメラユニット12に設けられた照明制御回路は、撮像部13の視方向角度に応じて照明ユニットの直視用集光照明部15,15、直斜視用拡散照明部16,16、および側視用拡散照明部17,17の照明を個別に制御するもので、主制御部100と、カメラ駆動制御部110と、照明制御部120とにより構成される。
【0022】
主制御部100は1チップCPUを用いて構成され、照明制御回路全体の制御を含むカメラユニット12全体の遠隔操作指令に従う動作制御を司る。
【0023】
カメラ駆動制御部110は、撮像部13の視方向を直視方向と側視方向との間で任意の角度で切替駆動する視方向切替駆動用モータ111(首振用DCモータ)と、主制御部100の制御の下に視方向切替駆動用モータ111を正逆回転駆動するモータ制御部112と、撮像部13の視方向角度(図4に示す主歯車25の回転角度)を検出する首振角度検出ポテンショメータ113とを有して構成される。
【0024】
照明制御部120は、主制御部100の制御の下に、各一対の直視用集光照明部15,15(集光照明(1))、直斜視用拡散照明部16,16(拡散照明(2))、および側視用拡散照明部17,17(拡散照明(3))を、それぞれ個別に、例えば128レベルの照度単位で点灯駆動制御する定電流制御回路121,122,123を有して構成される。
【0025】
上記した撮像部13の視方向角度制御に伴う照明ユニットの照明制御の具体例を図6(a)乃至(e)および図7(a)乃至(e)に示している。
【0026】
即ち、主制御部100は、首振角度検出ポテンショメータ113から出力された、撮像部13の視方向角度検出信号をもとに(図6の(a)乃至(e))、定電流制御回路121,122,123を介して、直視用集光照明部15,15、直斜視用拡散照明部16,16、および側視用拡散照明部17,17を図7(a)乃至(e)に示すように個別に点灯駆動制御する。
【0027】
撮像部13の視方向角度が図6(a)に示す、走行ユニット11の走行方向(前進方向)に沿う角度にあるとき、図7(a)に示すように、直視用集光照明部15,15および直斜視用拡散照明部16,16を略同じ照度で点灯駆動し((1)≒(2))、側視用拡散照明部17,17を消灯制御する((3):OFF)。
【0028】
撮像部13の視方向角度が図6(b)に示す、走行ユニット11の走行方向と走行方向に直交する方向との間の走行方向を0度とした1/4の角度(≒22.5度)にあるとき、図7(b)に示すように、直視用集光照明部15,15の照度(LED光源の輝度)を直斜視用拡散照明部16,16の照度より下げて直視用集光照明部15,15および直斜視用拡散照明部16,16を点灯駆動し((1)<(2))、側視用拡散照明部17,17を消灯制御する((3):OFF)。
【0029】
この図7(a)から図7(b)への状態遷移に於ける直視用集光照明部15,15および直斜視用拡散照明部16,16の照度切り替えは、上記した128レベルの範囲内で段階的(連続的)に行われる。
【0030】
撮像部13の視方向角度が図6(c)に示す、走行ユニット11の走行方向と走行方向に直交する方向との中間の角度(≒45度)にあるとき、図7(c)に示すように、直斜視用拡散照明部16,16および側視用拡散照明部17,17を略同じ照度で点灯駆動し((2)≒(3))、直視用集光照明部15,15を消灯制御する((1):OFF)。
【0031】
この図7(b)から図7(c)への状態遷移に於ける直視用集光照明部15,15、直斜視用拡散照明部16,16、および側視用拡散照明部17,17の照度切り替えは、上記した128レベルの範囲内で段階的(連続的)に行われる。
【0032】
撮像部13の視方向角度が図6(d)に示す、走行ユニット11の走行方向と走行方向に直交する方向との間の走行方向を0度とした3/4の角度(≒67.5度)にあるとき、図7(d)に示すように、直斜視用拡散照明部16,16の照度を側視用拡散照明部17,17の照度より下げて直斜視用拡散照明部16,16および側視用拡散照明部17,17を点灯駆動し((2)<(3))、直視用集光照明部15,15を消灯制御する((1):OFF)。
【0033】
この図7(c)から図7(d)への状態遷移に於ける直斜視用拡散照明部16,16および側視用拡散照明部17,17の照度切り替えは、上記した128レベルの範囲内で段階的(連続的)に行われる。
【0034】
撮像部13の視方向角度が図6(e)に示す、走行ユニット11の走行方向に直交する角度(≒90度)にあるとき、図7(e)に示すように、側視用拡散照明部17,17のみを点灯駆動し((3):点灯)、直視用集光照明部15,15および直斜視用拡散照明部16,16を消灯制御する((1)(2):OFF)。
【0035】
この図7(d)から図7(e)への状態遷移に於ける直斜視用拡散照明部16,16および側視用拡散照明部17,17の照度切り替えは、上記した128レベルの範囲内で段階的(連続的)に行われる。
【0036】
このような、撮像部13の視方向角度に応じた照明制御を行うことで、照明ユニットを撮像部13の視方向切り替えに連動して動かすことなく、照明ユニットの各照明部(直視用集光照明部15,15、直斜視用拡散照明部16,16、側視用拡散照明部17,17)をカメラユニット12に固定した構成にて、撮像部13の全視方向に対して常に輝度斑のない均一な照度の管内照明が可能となる。
【0037】
なお、本発明の構成並びに制御は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形並びに応用可能である。例えばカメラユニット12内の撮像部13を走行ユニット11に対して水平方向に旋回可能にした自走式管内検査カメラ装置に於いても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る自走式管内検査カメラ装置の外観構成を示す側面図。
【図2】上記実施形態に係る自走式管内検査カメラ装置の外観構成を示す正面図。
【図3】上記実施形態に係る直視用集光照明部と直斜視用拡散照明部と側視用拡散照明部との各照明エリアを示す図。
【図4】上記実施形態に係るカメラユニットに設けられた撮像部13の視方向切替機構部の構成を示す図。
【図5】上記実施形態に係るカメラユニットに設けられた照明制御回路の構成を示すブロック図。
【図6】上記実施形態に係る撮像部の視方向角度制御に伴う照明ユニットの照明制御の具体例を示す図。
【図7】上記実施形態に係る撮像部の視方向角度制御に伴う照明ユニットの照明制御の具体例を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1…検査対象となる管、10…自走式管内検査カメラ装置(カメラヘッド)、11…走行ユニット(自走車ユニット)、11f,11f,11r,11r…走行用の車輪、12…カメラユニット、13…撮像部、15…直視用集光照明部、16…直斜視用拡散照明部、17…側視用拡散照明部、21…モータ歯車、22,23…遊び歯車、24…視方向角度検出歯車、25…主歯車、100…主制御部、110…カメラ駆動制御部、111…視方向切替駆動用モータ、112…モータ制御部、113…ポテンショメータ、120…照明制御部、121,122,123…定電流制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象管内を走行する走行ユニットと、
前記走行ユニットの前進方向先端部に設けられたカメラユニットと、
前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の前方を照明する直視用集光照明部と、
前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の前方および斜め前方を照明する直斜視用拡散照明部と、
前記カメラユニットに固定して設けられ前記検査対象管内の側方を照明する側視用拡散照明部と、
前記カメラユニットに収納されたカメラレンズを有する撮像部と、
前記撮像部を所定の角度範囲内で上下方向に回動制御し前記撮像部の視方向を切り替える視方向切替部と、
前記撮像部の視方向角度に応じて前記直視用集光照明部、前記直斜視用拡散照明部、および前記側視用拡散照明部の各照明を個別に制御する制御部と
を具備したことを特徴とする自走式管内検査カメラ装置。
【請求項2】
前記直視用集光照明部、前記直斜視用拡散照明部、および前記側視用拡散照明部は、前記カメラレンズの周囲に横方向に対で設けられる請求項1に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像部の視方向が前記走行ユニットの走行方向に沿う角度にあるとき、前記直視用集光照明部および前記直斜視用拡散照明部を点灯駆動し、前記側視用拡散照明部を消灯制御することを特徴とする請求項2に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像部の視方向が前記走行ユニットの走行方向と直交する角度にあるとき、前記側視用拡散照明部を点灯駆動し、前記直視用集光照明部および前記直斜視用拡散照明部を消灯制御することを特徴とする請求項3に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記撮像部の視方向が前記走行ユニットの走行方向と前記走行方向に直交する方向との中間の角度にあるとき、前記直斜視用拡散照明部および前記側視用拡散照明部を点灯駆動し、前記直視用集光照明部を消灯制御することを特徴とする請求項4に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記撮像部の視方向が前記走行ユニットの走行方向に対して前記走行方向に直交する方向の1/4の角度を基準にした一定の角度内にあるとき、前記直斜視用拡散照明部の照度を前記直視用集光照明部の照度より高くして前記直視用集光照明部および前記直斜視用拡散照明部を点灯駆動し、前記側視用拡散照明部を消灯制御することを特徴とする請求項5に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記撮像部の視方向が前記走行ユニットの走行方向に対して前記走行方向に直交する方向の3/4の角度を基準にした一定の角度内にあるとき、前記側視用拡散照明部の輝度を前記直斜視用拡散照明部より高くして前記側視用集光照明部および前記直斜視用拡散照明部を点灯駆動し、前記直視用集光照明部を消灯制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の自走式管内検査カメラ装置。
【請求項8】
前記視方向切替部は、前記撮像部を前記走行ユニットの走行方向に沿う視方向角度と前記走行ユニットの走行方向と直交する視方向角度との間で1度以内の角度を単位に多段切替制御し、
前記制御部は、前記視方向切替部によって前記撮像部の視方向が切り替えられる都度、前記直視用集光照明部、前記直斜視用拡散照明部、および前記側視用拡散照明部のうち点灯状態にある照明部の輝度を切り替えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の自走式管内検査カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−20258(P2008−20258A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190730(P2006−190730)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】