説明

自転車用リアハブ

【課題】駆動力を計測可能であって、組立ての精度の影響を受けにくい自転車用リアハブを提供する。
【解決手段】自転車用リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、駆動力計測部26と、を備える。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持され、スプロケット集合体を装着可能である。ハブシェル24は、ハブ軸20に回転自在に支持され、駆動部22の回転が伝達される。駆動力計測部26は、駆動部22とハブシェル24との間の駆駆動力伝達経路に設けられる磁歪素子54および磁歪素子54に対向して設けられる検出コイル56を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブ、特に、自転車の後輪のハブを構成する自転車用リアハブに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用リアハブは、後輪の回転中心に配置されるハブ軸と、ハブ軸回りに回転自在に装着されるハブシェルと、ハブシェルに軸方向に隣接して配置されるフリーホイールと、を備えている。フリーホイールは、チェーンに噛み合うスプロケットの回転をハブシェルに伝達する。このフリーホイールとハブシェルとの間にライダーの駆動力を測定可能な駆動力測定部が配置される自転車用リアハブが、従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の自転車用リアハブは、フリーホイールとハブシェルとを連結する連結部材を有する。連結部材は、円筒形状に形成され、一端部にスプロケットが装着され、他端部がハブシェルと連結される。連結部材には、その連結部の捩れを検出するための歪みゲージが設けられ、連結部の捩れ量が検出される。この計測された捩れ量により、ライダーの駆動力を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6418797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリアハブでは、歪みゲージを連結部に直接貼り付けており、たとえば貼り付けるための接着剤の厚みを均一にする必要があるため、精度よく組立てることが難しい。
【0006】
本発明の課題は、駆動力を計測可能であって、組立ての精度の影響を受けにくい自転車用リアハブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用リアハブは、ハブ軸と、駆動部と、ハブシェルと、駆動力計測部と、を備える。駆動部は、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能である。ハブシェルは、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動部の回転が伝達される。駆動力計測部は、駆動部からハブシェルにわたる駆駆動力伝達経路に設けられる磁歪素子および磁歪素子に対向して設けられる検出コイルを有する。
【0008】
この自転車用リアハブでは、駆動部の回転がハブシェルに伝達されるとき、駆駆動力伝達経路に設けられる磁歪素子の透磁率が、駆動力に応じて駆駆動力伝達経路に発生するトルクに応じて変化する。磁歪素子の透磁率の変化によって検出コイルのインダクタンスが変化する。検出コイルのインダクタンスの変化を電気信号として検出することにより駆動力を測定することができる。ここでは、磁歪素子と検出コイルにより駆動力の変化を非接触で検出できるので、組立ての精度の影響を受けにくくすることができる。
【0009】
発明2に係る自転車用リアハブは、発明1に記載の自転車用リアハブにおいて、検出コイルは、磁歪素子に対向可能な位置でハブ軸に装着される。この場合には回転しないハブ軸に検出コイルが装着されるので、検出コイルの出力をハブシェル外部に取り出しやすい。
【0010】
発明3に係る自転車用リアハブは、発明2に記載の自転車用リアハブにおいて、ハブ軸に回転不能に装着され、かつ磁歪素子に対向可能な装着部材をさらに備える。検出コイルは、装着部材に装着される。この場合には、検出コイルをハブ軸に直接ではなくハブ軸に固定される装着部材に配置できるので、検出コイルの配置の自由度を大きくすることができる。
【0011】
発明4に係る自転車用リアハブは、発明1に記載の自転車用リアハブにおいて、検出コイルは、磁歪素子に対向可能な位置でハブシェルに装着される。この場合には、検出コイルを磁歪素子よりもハブ軸の径方向外側に容易に配置できる。
【0012】
発明5に係る自転車用リアハブは、発明1から4のいずれかに記載の自転車リアハブにおいて、検出コイルは、ハブ軸と磁歪素子との間に設けられる。この場合には、検出コイルをハブ軸に直接装着できる。このため、検出コイルの装着構造が簡素化する。
発明6に係る自転車用リアハブは、発明1から4のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、検出コイルは、磁歪素子とハブシェルとの間に設けられる。
【0013】
発明7に係る自転車用リアハブは、発明1から6のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、駆駆動力伝達経路に設けられるスリーブをさらに備え、磁歪素子は、スリーブに保持される。この場合には、たとえば磁歪素子を、駆動力の伝達必要な剛性と切り離して形成することができるので、検出に最適な透磁率を有する材料を用いることができる。
【0014】
発明8に係る自転車用リアハブは、発明7に記載の自転車用リアハブにおいて、駆動部とスリーブとは一体形成される。この場合には、駆動部とスリーブとが一体形成されるので、構成が簡素になる。
【0015】
発明9に係る自転車用リアハブは、発明1から8のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、検出コイルの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える。たとえば検出コイルがハブシェルとともに回転しても、その出力を外部に取り出すことが容易となる。
【0016】
発明10に係る自転車用リアハブは、発明1から9のいずれかに記載のリアハブにおいて、検出コイルに電力を供給する電源をさらに備える。この場合には、電源が設けられるので、リアハブと別体で電源を設ける必要がない。
【0017】
発明11に係る自転車用リアハブは、発明10に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は電池である。この場合には、電源の構成が簡素になる。
【0018】
発明12に係る自転車用リアハブは、発明10に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は発電機である。この場合には、自転車が走行していると発電するため、外部からの充電または電池の交換が不要になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁歪素子と検出コイルにより駆動力を非接触で検出できるので、組立ての精度の影響を受けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】スプロケットが装着された本発明の第1実施形態による自転車用リアハブの半截断面図。
【図2】図1における自転車用リアハブの要部断面図。
【図3】スリーブの斜視図。
【図4】第2実施形態の図2に相当する図。
【図5】第3実施形態の図2に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明の第1実施形態による自転車用リアハブ10は、自転車のフレームの後部に設けられるハブ軸装着部102に装着可能である。リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、駆動力計測部26と、無線送信部28と、を備える。ハブシェル24は、ハブ軸20に第1軸受46により回転自在に支持される。駆動部22は、ハブ軸20に第2軸受47により回転自在に支持される。駆動力計測部26は、ライダーの駆動力を測定可能である。無線送信部28は、測定された駆動力に関する情報を無線送信する。無線送信された駆動力に関する情報は、たとえば自転車のハンドル部に装着可能な図示しないサイクルコンピュータに表示される。なお、サイクルコンピュータには、自転車の速度、クランクの回転速度(ケイデンス)、走行距離等の情報も表示される。
【0022】
<ハブ軸>
ハブ軸20は、クイックレリーズ機構29が装着される中空の軸本体30と、軸本体30の第1端部(図2の左側の端部)に装着される第1ロックナット32と、軸本体30の第2端部(図2右側の端部)に装着される第2ロックナット34と、を有する。第1ロックナット32および第2ロックナット34にハブ軸装着部102が装着可能となっている。ここでは、第1ロックナット32および第2ロックナット34がハブ軸装着部102に装着される構成を記載しているが、軸本体30がフレームにハブ軸装着部102に装着される構成としてもよい。
【0023】
図2に示すように、軸本体30の第1端部の内周面には、雌ネジ部30aが形成される。軸本体30の第1および第2端部の外周面には、第1雄ネジ部30bおよび第2雄ネジ部30cがそれぞれ形成される。第1ロックナット32は、雌ネジ部30aに螺合する雄ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。第2ロックナット34は、第2雄ネジ部30cに螺合する雌ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。
【0024】
<駆動部>
駆動部22は、いわゆるフリーホイールと呼ばれる部材を含んで構成される。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持される第1部材40と、第1部材40の外周側に配置される第2部材42と、第1部材40と第2部材42との間に配置されるワンウェイクラッチ44と、スリーブ52と、を有する。
【0025】
第1部材40は、第2軸受47によりハブ軸20に回転自在に支持される筒状の部材である。第2軸受47は、第2内輪体47aと、第2外輪体47bと、複数の第2転動体47cと、を有する。第2内輪体47aは、外周部にねじが形成され、軸本体30の第2雄ネジ部30cにねじ込んで固定される。第2外輪体47bは、内周部にねじが形成され、第1部材40の外周面に形成される雄ねじ部にねじ込んで固定される。複数の第2転動体47cは、第2内輪体47aおよび第2外輪体47bの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第2転動体47cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第2転動体47cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0026】
第1部材40は、ワンウェイクラッチ44のクラッチ爪44aが収納される凹部40aを外周部に有する。第1部材40の第1端部(図2の左側の端部)は、ハブシェル24の内周側まで延びている。第1部材40の外周面には、第2部材42を回転自在に支持する第3軸受48の第3玉押し面48aおよびハブシェル24を回転自在に支持する第5軸受50の第5玉押し面50aが形成される。第1部材40の第1端部の外周部には、スリーブ52の第1端部(図2の左側の端部)が連結される第1連結部40bが形成される。スリーブ52は、第1部材40とともに一体的に回転する。
【0027】
第2部材42は、第3軸受48および第4軸受49により第1部材40に対して回転自在に支持される筒状部材である。第3軸受48は、前述した第3玉押し面48aと、第3玉受け面48bと、複数の第3転動体48cとによって形成される。第3玉受け面48bは、第2部材42の第1端部(図2の左側の端部)の内周面に形成される。複数の第3転動体48cは、第3玉押し面48aと第3玉受け面48bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第3転動体48cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第3転動体48cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0028】
第4軸受49は、第2外輪体47bの外周面に形成された第4玉押し面49aと、第4玉受け面49bと、複数の第4転動体49cとによって形成される。第4玉受け面49bは、第2部材42のハブ軸方向の中間部の内周面に形成される。複数の第4転動体49cは、第4玉押し面49aと第4玉受け面49bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第4転動体49cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第4転動体49cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0029】
第2部材42は、図1に示すように、外周面にスプロケット集合体80を装着するスプロケット装着部42aを有する。スプロケット集合体80は、第2部材42と一体的に回転する。スプロケット集合体80は、駆動力伝達部材の一例である。スプロケット装着部42aは、たとえば、外周部に周方向に間隔を隔てて配置された凸部または凹部を有するスプラインを有する。スプロケット集合体80は、歯数が異なる複数(たとえば9個)のスプロケット80a〜80iを有する。スプロケット集合体80のいずれかのスプロケットに噛み合うチェーン81により、図示しないクランクの回転が駆動部22に伝達される。ここでは、スプロケット装着部42aに複数のスプロケットが装着されるが、スプロケット装着部42aに装着されるスプロケットの数は、1つであってもよい。
【0030】
図2に示すように、ワンウェイクラッチ44は、第2部材42の自転車の進行方向の回転だけを第1部材40に伝達するために設けられる。これにより、クランクの進行方向の回転だけがハブシェル24に伝達される。またハブシェル24の進行方向の回転は第2部材42に伝達されない。ワンウェイクラッチ44は、凹部40aに第1姿勢および第2姿勢に揺動自在に設けられるクラッチ爪44aと、第2部材42の内周面に形成されたラチェット歯44bと、クラッチ爪44aを付勢する付勢部材44cと、を有する。クラッチ爪44aは第1姿勢でラチェット歯44bに接触し、第2姿勢でラチェット歯44bから離脱する。付勢部材44cは、第1部材40に形成された環状溝に装着される。付勢部材44cは、金属線材をC字状に湾曲して形成されたバネ部材であり、クラッチ爪44aを第1姿勢側に付勢する。
【0031】
スリーブ52は、駆動部22からハブシェル24にわたる駆動力伝達経路に設けられる。スリーブ52は、第1端部(図2の左側の端部)が駆動部22の第1部材40に連結される。スリーブ52と第1部材40とは一体的に回転する。この実施形態では、スリーブ52は、駆動部22の第1部材40の第1端部とハブシェル24の第2端部(図1の右側の端部)の内周面との間に設けられる。スリーブ52は、図3に示すように、筒状の部材であり、第1端部(図3の左側の端部)に第1連結部40bに係合する第1係合部52aを有する。第1係合部52aは、ハブ軸方向に凹んだ凹部およびハブ軸方向に突出した凸部の少なくともいずれかを有する。本実施の形態では、第1係合部52aはハブ軸方向に凹凸状に形成される。スリーブ52は、第2端部(図3の右側の端部)に第2連結部24cに係合する第2係合部52bを有する。第2係合部52bは、ハブ軸方向に凹んだ凹部およびハブ軸方向に突出した凸部の少なくともいずれかを有し、本実施の形態では、第2係合部52bはハブ軸方向に凹凸状に形成される。スリーブ52をスプロケット集合体80に近接するハブシェル24の第2端部に接続することによって、第1部材40のハブ軸方向の大きさをできるだけ小さくして、重量の増加を抑制することができる。ここでは、第1および第2係合部52aおよび52bは、ハブ軸方向に凹凸状に形成されるが、半径方向に突出する凹部または凸部を有する形状としてもよく、セレーションであってもよい。
【0032】
スリーブ52には、周方向に間隔を隔てて形成される複数の孔52cが形成される。孔52cは、周方向に長細い長円形であり、スリーブ52を貫通している。この実施形態では、孔52cは、中間部を挟んでスリーブ52の第1および第2端部側のそれぞれに設けられる。この孔52cは、駆動部22からハブシェル24に駆動力(トルク)が伝達されるときに、スリーブ52を駆動力に応じて捩れやすくするために設けられる。
【0033】
<ハブシェル>
ハブシェル24は、図2に示すように、第1端部(図2の左側の端部)が第1軸受46によりハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。ハブシェルの第2端部(図2の右側の端部)は、前述したように第5軸受50により駆動部22を介してハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。第1軸受46は、内周面にねじが形成され、軸本体30の第1雄ネジ部30bにねじ込んで固定される第1内輪体46aと、第1外輪体46bと、複数の第1転動体46cと、を有する。第1転動体46cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第1転動体46cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0034】
第5軸受50は、前述した第5玉押し面50aと、ハブシェル24の第2端部の内周部にたとえば圧入固定された第5外輪体50bと、複数の第5転動体50cと、を有する。第5転動体50cは、第5玉押し面50aと第5外輪体50bとの間に周方向に間隔を隔てて配置される。第5転動体50cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第5転動体50cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0035】
ハブシェル24の外周部には、図1に示すように、自転車の後輪のスポークを連結するための第1ハブフランジ24aおよび第2ハブフランジ24bがハブ軸20の軸方向に間隔を隔てて環状に突出して形成される。ハブシェル24の第2端部(図2の右側の端部)の内周部に、第5軸受50に隣接してスリーブ52の第2端部を連結する第2連結部24cが形成される。
【0036】
<駆動力計測部>
駆動力計測部26は、磁歪素子54と、検出コイル56と、を有する。
【0037】
磁歪素子54は、スリーブ52の外周面の中間部に固定して設けられる。磁歪素子54はスリーブに、たとえば接着して固定される。磁歪素子54および検出コイル56は、磁性材料の逆磁歪効果を利用したセンサである。磁歪素子54は、スリーブ52にトルクが作用し、スリーブ52表面の主応力が変化すると透磁率が変化する。磁歪素子54は、第1磁化容易軸54cを有する帯状の第1磁歪材54aと、第1磁化容易軸54cと交差する第2磁化容易軸54dを有する第2磁歪材54bと、を有する。この実施形態では、第1磁化容易軸54cと第2磁化容易軸54dとは直交している。
【0038】
検出コイル56は、図2に示すように、ハブ軸20の軸本体30に回転不能に連結される装着部材58に固定される。装着部材58の内周面は、磁歪素子54の外周面に対向して配置される。装着部材58は、軸本体30に固定される軸本体30から外周側に延びる第1部分と、第1部分の端部からハブ軸方向に延びる第2部分とを有する。ここでは第1部分および第2部分は環状または筒状に形成される。検出コイル56は、第2部分に設けられる。検出コイル56は、第1磁歪材54aに対向して配置される第1コイル56aと、第2磁歪材54bに対向して配置される第2コイル56bと、を有する。本実施の形態では、検出コイル56は、磁歪素子54とハブシェル24との間に設けられる。
【0039】
駆動力計測部26は、磁歪素子54の透磁率の変化によって生じる検出コイル56のインダクタンスの変化を電気信号として検出することにより駆動力を測定する。駆動力は、トルクを含む。
【0040】
<無線送信部>
無線送信部28は、図1に示すように、たとえばハブシェル24の第1端部のハブ軸方向外側に配置される。無線送信部28は、ハブ軸20の外周部に固定されるケース部28aを有する。ケース部28aは、ハブ軸20に固定される固定部28dを有する。固定部28dには、軸本体30が挿通する。固定部28dは、第1ロックナット32を締めることによって、第1ロックナット32と第1外輪体46aとの間で、これらに直接または間接的に挟まれて固定される。ケース部28aの内部には、回路基板28bが配置される。検出コイル56と回路基板28bとは図示しない配線で電気的に接続される。回路基板28bには、マイクロコンピュータ、検出コイル56からの出力を増幅する増幅器、増幅器によって増幅された信号をデジタル信号に変換するAD(Analog-Digital)変換回路および無線送信回路等の電子部品と、電源としての充電池28cとが搭載される。本実施形態では、マイクロコンピュータ、増幅器、およびAD変換回路は、駆動力計測部26の一部を構成する。
【0041】
無線送信部28は、検出コイル56の出力に基づく情報を無線送信する。無線送信部28から無線送信された情報は、図示しないサイクルコンピュータにより駆動力、トルク、およびパワーの少なくともいずれかとして表示される。検出コイル56の出力に基づいて、回路基板28bに設けられるマイクロコンピュータにおいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよく、またサイクルコンピュータにおいて、受信した情報に基づいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよい。充電池28cの代わりに、一次電池を設けてもよい。充電池28cまたは一次電池は、ケース部28aから着脱可能に設けられる。ケース部28aには、たとえば充電池28cを充電するときに用いられる端子が設けられてもよい。
【0042】
このように構成されたリアハブ10では、自転車に取り付けられてライダーがペダルをこぐと、ライダーの踏力が駆動力として駆動部22からハブシェル24に伝達される。このとき、駆動部22のスリーブ52の主応力が変化し、磁歪素子54の透磁率が変化し検出コイル56のインダクタンスが変化する。この変化を表す電気信号を回路基板28bで処理し、無線送信部28がサイクルコンピュータに無線送信する。サイクルコンピュータでは、無線送信された駆動力を表す情報を受信して表示する。これにより、ライダーは、自分が発生している駆動力、トルク、パワーなどを知ることができる。
【0043】
ここでは、磁歪素子54と検出コイル56により駆動力を非接触で検出できるので、組立ての精度の影響を受けにくくすることができる。
【0044】
<第2実施形態>
前記実施形態では、検出コイル56をハブ軸20に固定される装着部材58に装着し、磁歪素子54を検出コイル56とハブ軸20の軸本体30との間に配置している。第2実施形態では、図4に示すように、検出コイル156をハブ軸20の軸本体30の外周面に直接配置する。なお、以降の説明では、第1実施形態と構成および形状が同様な部材についての説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、リアハブ110において、駆動部122のスリーブ152は、駆動部122の第1部材140と一体形成される棒状の部分である。スリーブ152の内周部に駆動力計測部126の磁歪素子154が保持される。スリーブ152は、ハブシェル24の内部で第1部材140に一体で形成される。第1部材140の第1端部(図4の左側の端部)は、ハブシェル24の第2端部(図4の右側の端部)に向けて折り曲げられている。この第1部材140の先端部は、ハブシェル24の第2連結部24cに一体的に回転可能に連結される。ここでスリーブ152は、ハブ軸まわりの周方向に間隔をあけて設けられる複数の棒状部分によって形成されるが、前記実施の形態と同様に円筒状に形成されてもよく、また第1部材140とは別体で設けられてもよい。
【0046】
検出コイル156は、前述したようにハブ軸20の軸本体30の外周面に直接固定される。したがって、第2実施形態では検出コイル156は、磁歪素子154とハブ軸20との間に設けられる。
【0047】
このような構成の第2実施形態のリアハブ110でも、第1実施形態と同様に、磁歪素子154と検出コイル156により駆動力を非接触で検出できるので、組立ての精度の影響を受けにくくすることができる。
【0048】
<第3実施形態>
第1および第2実施形態では、検出コイルをハブ軸20に回転不能に装着するが、第3実施形態では、図5に示すように、リアハブ210の駆動力計測部226の検出コイル256をハブシェル224に装着する。検出コイル256とハブシェル224とは一体的に回転する。ハブシェル224の内周部には、検出コイル256を装着するための環状のコイル装着部材258が設けられる。スリーブ252は、駆動部224の第1部材240の途中に配置される。第1部材240は、ハブ軸方向でハブシェル224の中央部にセレーションによって連結される。スリーブ252の概略構成は、第1実施形態のスリーブ52と同様な構成であるが、スリーブ252の両端は第1部材240に固定されている。このスリーブ252の外周面に磁歪素子254が保持される。この第3実施形態では、第2実施形態と同様に検出コイル256は、磁歪素子254とハブシェル224との間に設けられる。
【0049】
第3実施形態では、検出コイル256が回転するため、無線送信部228は、ハブシェル224に固定される。ここでは、ハブシェル224の内周部に無線送信部228が固定される。無線送信部228をハブシェル224の内周部に固定する場合であっても、アンテナはハブシェル224の外部に配置するのが好ましい。
【0050】
また、リアハブ210では、磁歪素子254及び無線送信部228の電源として発電機60が設けられる。発電機60は、ハブ軸20の軸本体30の外周面に固定される磁石62と、磁石62の外周側に磁石62に対向して配置される回転子64とを有する。回転子64は、ハブシェル224の内周面に固定されるコイルボビンと、コイルボビンに巻き付けられる発電コイルと、発電コイルの周囲に配置されるヨークと、を有する。発電コイルの出力が無線送信部228に設けられる整流器によって直流に整流され、電源として使用される。
【0051】
このような第3実施形態のリアハブ210でも、第1および第2実施形態と同様に、磁歪素子254と検出コイル256により駆動力を非接触で検出できるので、組立ての精度の影響を受けにくくすることができる。また、第1および第2の実施の形態よりもハブシェル224のハブ軸方向の中間部の外径を小さくすることができる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
(a)前記実施形態では、ワンウェイクラッチを有するいわゆるフリーハブを含んで駆動部22を構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、フリーハブを有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0054】
(b)前記実施形態では、クイックレリーズ機構29を有するリアハブを例示したが、クイックレリーズ機構を有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0055】
(d)前記実施形態では、電源として発電機及び充電池を例示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、充電可能なコンデンサ等の蓄電素子を用いてもよい。また、電源として充電不能な一次電池を用いてもよい。
【0056】
(e)前記第3実施形態では、発電機60は検出コイル56および無線送信部28の電力供給に用いられるが、本発明はこれに限定されない。無線送信部において、発電機60から出力される交流の電力波形を検波してリアハブの回転速度信号を得てもよい。得られた回転速度信号に関する情報と、駆動力測定部によって測定した駆動力であるトルクとを用いて、マイクロコンピュータにおいてパワーを計算してもよい。また、無線送信部が回転速度信号に関する情報をサイクルコンピュータに送信することにより、後輪の周長を乗算することにより、サイクルコンピュータでの車速表示に用いることができる。
【0057】
(f)前記各実施の形態の構成は、相互に組み合わせることができる。たとえば、第1および第2の実施の形態において、第3の実施の形態のようにハブシェルの内部に発電機を設けてもよい。この場合、発電機は、ハブ軸に発電コイルを設けて、ハブシェルまたは第1部材に磁石を設ける構成とすることができる。また第3の実施の形態において、発電機の代わりに一次電池または二次電池を設けてもよい。またたとえば、第3の実施の形態において、検出コイルをハブ軸に設けてもよい。またたとえば第1の実施の形態において、検出コイルをハブシェル24に設けてもよい。
【0058】
(g)前述した各実施の形態では、磁歪素子をスリーブに設ける構成としているが、磁歪素子をスリーブとを一体で形成してもよい。この場合には部品点数を少なくすることができる。
【0059】
(h)前記実施形態では、スリーブにはスリーブを貫通する孔が形成されるが、貫通する孔の代わりに凹所を形成してもよく、また孔を設けない構成としてもよい。
【0060】
(i)前記実施形態において、第1軸受から第5軸受のいずれか1つまたは複数をすべり軸受けに変更してもよい。この場合には、重量を軽減することができる。
【0061】
(j)前記実施形態において、第1部材のうち、フリーホイールを構成する部分を、他の部分から着脱自在に構成してもよい。このように構成するとフリーホイールを自由に交換することができる。第1部材のうち着脱可能な部分は、セレーションなどの連結機構によって他の部分に結合されればよい。
【符号の説明】
【0062】
10 リアハブ
20 ハブ軸
22 駆動部
24 ハブシェル
26 駆動力計測部
28 無線送信部
28c 充電池
52 スリーブ
54 磁歪素子
56 検出コイル
58 装着部材
60 発電機
80 スプロケット集合体
110 リアハブ
122 駆動部
126 駆動力計測部
152 スリーブ
154 磁歪素子
156 検出コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用リアハブであって、
ハブ軸と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能な駆動部と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、前記駆動部の回転が伝達されるハブシェルと、
前記駆動部と前記ハブシェルとの間の駆駆動力伝達経路に設けられる磁歪素子および前記磁歪素子に対向して設けられる検出コイルを有する駆動力計測部と、
を備える自転車用リアハブ。
【請求項2】
前記検出コイルは、前記磁歪素子に対向可能な位置でハブ軸に装着される、請求項1に記載の自転車用リアハブ。
【請求項3】
前記ハブ軸に回転不能に装着され、かつ前記磁歪素子に対向可能な装着部材をさらに備え、
前記検出コイルは、前記装着部材に装着される、請求項2に記載の自転車用リアハブ。
【請求項4】
前記検出コイルは、前記磁歪素子に対向可能な位置で前記ハブシェルに装着される、請求項1に記載の自転車用リアハブ。
【請求項5】
前記検出コイルは、前記ハブ軸と前記磁歪素子との間に設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項6】
前記検出コイルは、前記磁歪素子と前記ハブシェルとの間に設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項7】
前記駆動部は、前記駆駆動力伝達経路に設けられるスリーブを含み、
前記磁歪素子は、前記スリーブに保持される、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項8】
前記スリーブは、前記駆動部に一体形成される、請求項7に記載の自転車用リアハブ。
【請求項9】
前記検出コイルの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項10】
前記検出コイルに電力を供給する電源をさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項11】
前記電源は電池である、請求項10に記載の自転車用リアハブ。
【請求項12】
前記電源は発電機である、請求項10に記載の自転車用リアハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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