説明

自転車用内燃式補助手段

【課題】利用者とその補助装置の間に恒常的な協働が可能となる自転車等の軽車両の補助装置を提供する。
【解決手段】特に自転車のような、ペダルとギア変速装置を備える軽車両用のペダリングを補助する装置で、軽車両利用者の人力によるペダリングからの動力を受けるエレメントと機械的に結合された減速装置を備えた熱機関1を含み、該機械的結合は前記ギア変速装置の手前で実行され、熱機関が前記変速を享受するようになっている装置において、前記熱機関と機械的結合の間の熱機関の減速装置の運動機構上に設置された、トルクリミッタ6を含む補助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
過去数年来、市場では電動機により補助された自転車の増加が見られる。これらの自転車は、真に自転車利用者がこの補助装置と協働するように考えられており、過去の実施形態のように、電動機単独では、自転車を前進させることはできない。自転車利用者からの投入は、作用半径を少し大きくすることを可能にし、同時にこの補助装置は、利用者に、自分が非常に元気であるような印象を与える。
【0002】
このような車両(電動自転車)は、効率の良さにおいて全て同等とはとうてい言えず、原動機や、これが作用するのに使う運動機構や、補助の管理、バッテリーや、補助装置が取り付けられた自転車により、異なる。
【0003】
‐このタイプの車両(電動自転車)の原動機はほとんど、定格動力が200ワット、すなわち臨時の自転車利用者が最大限で寄与できるのと同等である。反面、回転速度や、トルク曲線、効率曲線、冷却、ノイズ、重量と価格が異なる。
【0004】
ただ、我々からすると、全て比較的近似するもので、補助する働きにおいて本質的な特質を共有しているといえる。単独で始動し、停止及び低回転数で大きなトルクを提供し、しばしばゆっくり回転し(中にはダイレクトドライブのものもある)、比較的静かで、振動が少なく、あまりにゆっくり回転させさえしなければ、比較的効率が良い。
【0005】
早速述べておくが、このような特質はどれも、熱機関にはひどく欠けている。
【0006】
‐補助装置の原動機の運動機構が、これらの自転車間の決定的な相違点である。
【0007】
これらの補助装置のうち、多くのものにおいて、原動機の変速比はひとつであり、すなわち、原動機は定格動力を、ひとつの速度(時速25 kmのことが多い)でしか供することができないことを意味する。この性質の結果、速度と共に補助動力は下落し、これは逆風の場合困る上、上り坂の時は悲劇的である。この問題に加えて更に、効率は下落(連続走行距離の低下)し、原動機もすぐに過熱するという問題もあり、自転車利用者の運動機構が複数のギア比を提供するとしても、これらの自転車は起伏には不向きである。
【0008】
これよりかなり進化した補助装置の別の系列では、原動機は自転車利用者によるギア比変速を享受し、そのおかげで、自転車のギア比変動の全範囲において、自転車の利用者と原動機は良い協働を続けることができる。
【0009】
‐補助の管理も非常に重要である。一部の法律に応じるために、自転車の利用者がペダルをこがない場合、原動機は作動してはならず、もっともそれが補助装置の定義である。実際は、一部の自転車には、この規程を守らないものがあるが、導入される動力が弱いため、ペダルを踏まずに自転車が使われる機会は非常に少ない機会に制限される。
【0010】
ペダル装置にかかるトルク測定に基づく補助装置に、比例した原動機の反応があるものが最も適切なシステムだという考えは非常に心引かれるものだ。より細かい取り組み方をすれば、自転車利用者がペダル装置に与えるトルクは正弦曲線的であり、特別なレイアウトがない限り原動機の反応もペダル1回転において正弦曲線的である。この詳細は、これらの自転車から補助装置が提供できる大きな利点を奪うことになる。実際、平地では、自転車の慣性により、このようなトルクの変動はあまり感じられないが、上り坂ではそうではない。この場合、自転車はペダル装置の死点毎に減速し、続いて加速する。そういう理由で、ペダリングの平均速度は上り坂においては小さくなり、また、同等の動力において、坂道のペダリングが平地のペダリングより辛いのもそういう理由からである。このトルクの変動はまた、ロードホールディングにも非常に不利である。この詳細は、この側面に関し非常に限られた能力を見せるマウンテンバイクにとって特に顕著となる。
【0011】
詳細には立ち入らないが、補助を上手に管理すれば、ペダル1回転において、一定したトルクを与えられる。このことは、ペダル装置の死点を容易に通り過ぎることを可能にする、一定の最低トルクが得られ、このことは、上り坂または発進の際のペダルの一踏みを相当に「大きくする」。これは追加された動力を大きく超える効果となり、自転車の利用者にとって、平地に近いようなペダリング効率を坂道でも得られるようにする。
【0012】
‐バッテリーは、その分野における近年の進歩にも関らず、このような車両(電動自転車)の大いなる弱点で、基礎研究は200 Wh/kgを超える貯蔵を期待させない。現実では、我々はこれよりはるか遠く離れている。何故ならエネルギー貯蔵は、温度、必要とされる動力、バッテリーの使用年数、既に実行された充電の回数、貯蔵期間や充電の方法というような数多くのパラメーターによるからである。現実では、最も優れたバッテリーは使用年数2年間で平均100 Wh/kgを提供する。
【0013】
液体燃料と類比をするなら、電動モータと熱機関の間の効率の違いを考慮しても、バッテリー1 kgはよくて、50 cm3のタンクと同等で、しかもそのタンクは最低4時間かけて点滴器で満たさねばならず、一杯に満たす度ごとにタンクは縮小していき、使用しないと洩れ、大体3年経てば破裂し、燃料の発熱量は水準が下がるにつれて下がり、リサイクル不可能な非常に高価な金属で製作されたものになる。
【0014】
この類比は風刺的のようだが、これらの自転車が克服しなければならない挑戦を明確に示すものだ。
【0015】
また、リチウムイオン・バッテリー1 kgの価格は約200ユーロ(2007年現在)であり、その寿命がくるまでに、500 x 100 Wh、つまり50 kWh、すなわちエネルギー5ユーロ分を貯蔵する。従って貯蔵にかかる金額は貯蔵されるエネルギーの価格の40倍ということになることに留意したい。
【0016】
この詳細の残酷性は、使用者がバッテリーを換えなければならなくなった時に(大体は2、3シーズン経ったら)余す所なく表れる。調査によると、前記自転車の寿命はこの時点で終わることが多いことが証明されている。
【0017】
以上のことから、これらの自転車は取るに足らない量のエネルギーを積み、運んでいることになる、すなわち定格動力で約1時間分である。一部の国で法律はこれらの自転車に最大速度の規制を課している(時速25〜32 km)、実際は、これらの補助装置の殆どは時速18 kmに達すると、エネルギー節約のために止められ、つまり、発進時の補助でしかない。このことは、製造業者の測定プロトコルに従って、中には80 kmを超えるような連続走行距離を告知することも可能にする。事実では、この距離の大半は補助なし或いは非常に低い補助を伴って実行されるのである。上り坂が上れる自転車は、上り坂では、大体10 kmに満たない連続走行距離である。
【0018】
これは非常に残念である。何故なら、中には本当に満足できる車両(電動自転車)もあり、あまりにユーザーフレンドリーで、原動機を搭載した車両(電動自転車)に乗っていることを知らずに、ただ驚嘆するほど元気だと思えてしまうほどである。街中で、高温真っ只中で10 km前後汗をかかずに走行でき、あまりに発進が楽なためブレーキ操作や、停止するのも、より躊躇しなくなり、安全面でもいいことずくめである。これらのうち、最も優れたもので・・・1時間なら素晴らしいと言える。このことは非常に限られた使用となってしまうことを意味し、いかなる遠出も禁じられ、流通を非常に制限することとなる。
【0019】
化石由来または植物由来の液体燃料による補助装置つきの自転車という考えは、エネルギー貯蔵の問題を全て解決するが、反面、一般的な熱機関は電動機特有の特徴をひとつも有さない。
【0020】
これらは、単独で始動せず、低下回転数は最低限のもので、非常に低回転数の時はトルクが弱く、トルクは原動機の周期において変動が激しく、使用範囲が限られており、効率は比較的低く、かつ負荷と回転数によって変動し、かなり発熱し、振動し、ノイズが多く、かなりの汚染源となりうる。とはいえ、技術が真に知られ、応用が容易で、経済的に製作できる唯一のものである。これらの不都合の殆どを解決あるいは緩和できる配置いくつかについて後述される。これらの配置により、特に快適で、総合的な効率が驚く程良く、びっくりする程耳障りでないような車両(電動自転車)の構想が可能になる。
【0021】
熱機関式補助装置で、電動機式補助装置を備えた自転車のユーザーフレンドリーの度合いに近づくのは楽な目標ではない。各エレメントとも、様々な制約に応えなければならない(中でも機能、重量、配置、人間工学、効率、ノイズ、振動、自転車のトランスミッションとの両立性、価格)このような制約はあまりに大きいため、そのうちの一部の要素に関しては、複数回、それぞれの側面を通して後述する。
【背景技術】
【0022】
熱機関を備えた自転車を扱う特許は何千とあるが、殆どの場合、原動機はペダリングに代替することを目的としている。協働は不可能か、例えば、ごく低速での上り坂走行または発進時など、非常に独特の状況においてのみ可能である。
【0023】
自転車利用者とその補助装置の間に恒常的な協働が可能となるためには数多くの条件が必要であり、この協働が効果的で、調和がとれ、効率の良いものとなって欲しいと願うなら、更にかなり多くの条件が必要となる。
【0024】
第一に、自転車利用者と補助装置それぞれの変速比が、その乗り物の速度範囲全体において互いに両立性があること。この第一の条件は、該当する特許を数十件に制限する。これらの特許の有効範囲についてここで要旨を述べるのはかなり困難であろう。従って、わかる範囲内で、以下の一般記述の進行に沿って、該当すると思われる時に引用してみる。
【0025】
ペダリングの生理学的効率を定義するかなり複雑な詳細には立ち入らずに、(0.2に達しない)臨時的な自転車利用者の最大効率は、1分当たりのペダル回転数が約60から70回で、最大連続動力は約80から90 rpmといえる。
【0026】
現代の自転車のトランスミッションは、数多くのギア比と、6を超えることもあるような大きな変動範囲を提供し、すなわち自転車利用者が例えば時速7 kmから42 kmまでの速度で、自らの最大効率を保ち続けることを可能にする。遭遇する大抵の条件に関して、これらは比較的最適と見なされる。従って自転車にこれを備えることとする。
【0027】
従来型の熱機関の最大効率は比較的容易に0.25を超え、人力による効率より高いとはいえ、まだ比較的低く多量の熱の放出を導くため、これを正しく処理しなければなるまい。
【0028】
この効率は最大負荷においてのみ、かつ比較的狭い回転数範囲内でのみ最大となり、これらの条件以外ではすぐに効率が暴落する。また、最大効率の回転数は、常に最大トルクの回転数に近いことに留意したい。
【0029】
最大負荷の条件は比較的容易に解決でき、すなわち余剰動力がほとんど無い様にすれば、つまり導入される動力がごくわずかであれば条件は満たされる。この詳細は方向性として都合が良い、何故ならば、動力が大きいと、自転車利用者からの投入はまもなく取るに足らないものとなり、余剰となるからである。
【0030】
最大効率の回転数の範囲内に保つという条件はより微妙なもので、速度比が1つだけの運動機構を全て除外することになる。特に、低動力で、遭遇する風や勾配によって、車両速度は極めて変動しやすいからである(この条件が該当する特許数を著しく少なくする)。
【0031】
この問題を解決するための第一の解決法は、遠心式または被駆動式の変速機であるが、可能ではあるこの解決方法は補助装置つき自転車への適用において微妙な技術的な問題を課すものである。
【0032】
比較的エレガントな別の解決方法としては、原動機に関しては、自転車利用者の速度変化を利用することで、これは、加えられる動力が小さい時、可能である。この場合、原動機の回転速度はペダリングの回転速度と比例して関連している。
【0033】
すると、的確な減速率を選択すれば、自転車利用者の最大効率の回転数に対し、原動機の最大効率の回転数がおおよそ対応するようにできる。
【0034】
最大動力の回転数も対応すれば大きなメリットであることもすぐにわかる。最大効率の回転数と最大動力の回転数間の比率を同じにするように、すなわち約65/85=0.76という全く可能な形で、原動機が規程されていれば、このことは可能である。
【0035】
従って自転車利用者は、原動機が仕事をするのに最良の状態になるようにしつつ、自身のために今までしてきた通りに速度の管理をすることになる。人間は自分がエネルギーを供給する場合、自らのエネルギー管理において生来、特段に節約家であるため、無償で、かつ原動機回転数に関して特に最適な補助装置管理システムにつながり、これは熱機関においては肝要なことである。このような配置に伴い、原動機への負荷を確実に大きくする、低動力を導入すると、それは大抵の場合最適の効率で利用されることとなる。
【0036】
参考までに、快適な自転車(非常に直立した姿勢のもの)で、空気のあまり入っていない太いタイヤを備えたものでも、動力400ワットで時速35キロを超えることができる(同じ動力で、競技用自転車は時速50キロに達する)。この400ワットは、(非常に弱い)自転車利用者に対し100ワットと、補助装置に対し300ワットに分けることができる。自転車にこの300ワットを供給するために、送電損失を補うために、原動機は360ワット(2分の1馬力)を供給しなければならないと仮定しよう。
【0037】
優れた熱機関は、1馬力時につき燃料180 gの効率に達することができる。必ずしも常に最高効率にない単純な原動機が望ましいため、その原動機は、平均で220g.HP.h、つまり我々の360ワットの原動機なら1時間当たり、燃料を110g 使うものとみなす。
【0038】
この自転車が100 km走るのには約3時間要し、従って330 gの燃料、すなわち石油なら0.5 リットル弱を消費し、つまり驚くべき12 g CO2/kmの数値となる(この領域において、最も優れた原動機付自転車でも60 g CO2/km以下のものはない)。
【0039】
また、非常に不利な憶測が一貫してあるにも関らず、この数値は、原子力発電による電気あるいは再生可能な電気によるものでない限り、電動機付自転車の届く範囲ではない。
【0040】
この概念は本当に新しいという訳でもない。何故なら世紀初めの仏国特許535, 184号(特許文献1)、そして後に仏国特許915, 817号(特許文献2)、なかでも米国特許3 280 932号(特許文献3)、英国特許637 014号(特許文献4)、米国特許4 397 369号(特許文献5)、米国特許5 076 386号(特許文献6)、米国特許5 361 863号(特許文献7)、米国特許5 941 332号(特許文献8)、欧州特許0 822 136 A2号(特許文献9)で辿ることができるからである。そうでありながら、理論上は非常に魅力的なこの技術を利用した製作はごくわずかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】仏国特許第535184号
【特許文献2】仏国特許第915817号
【特許文献3】米国特許第3280932号
【特許文献4】英国特許第637014号
【特許文献5】米国特許第4397369号
【特許文献6】米国特許第5076386号
【特許文献7】米国特許第5361863号
【特許文献8】米国特許第5941332号
【特許文献9】欧州特許第0822136A2号
【特許文献10】米国特許第6213236号
【特許文献11】英国特許第381310号
【特許文献12】米国特許第2596391号
【特許文献13】米国特許第2331976号
【発明の概要】
【0042】
本発明に係る第1の発明は、ペダル及び可変速比の変速機を装備した自転車のような軽車両用のペダリング補助装置に関し、この装置は、軽車両の利用者からの筋肉によるペダリング動力を受ける要素と機械的に結合された減速装置を装備した熱機関を備え、前記機械的結合は、前記可変速比の変速機の上流でなされるので、前記熱機関は、変速比の前記変化から利益を受ける。前記補助装置は、前記熱機関と機械的結合の間にある、前記熱機関の減速装置の運動機構上に設置されたトルクリミッタを備える。
前記トルクリミッタは、前記減速装置の減速第1段の大車上に設置されている。
前記トルクリミッタは、前記熱機関から前記トルクリミッタが置かれた減速装置の点まで、最大トルクの各分量を伝達できるように調整されている。
【0043】
前記熱機関の減速装置は、少なくとも二つの減速段を含み、前記機関のトルクの周期的変動を緩衝及び/又は円滑化する手段を含む。
前記機械的結合は、前記軽車両のペダルのレベルで実行される。
前記機械的結合は、可変速比の変速機の遊星歯車式変速手段を装備したホイールハブの動力入力軸上で実行される。
前記装置は、エンジンを切って、減速装置を駆動しないで、ペダル操作により自転車を利用することができる第1のフリーホイールを含む。
前記装置は、自転車を後方にペダル操作できるようにする第2のフリーホイールを含む。
【0044】
前記トルクリミッタは、トルクが基準トルク未満であるとき、伝達されるトルクの全トルクを伝達し、伝達されるトルクが校正トルクより大きいとき、校正トルクを伝達する。
機関軸へ戻される前記トルクリミッタの校正トルクは、前記熱機関により配給される最大トルクよりも大きい。
本発明によれば、特に自転車のような軽車両は、上記に特定された補助装置を備える。
【0045】
本発明に係る第2の発明は、ペダル及び変速機を装備した自転車のような軽車両用のペダリング補助装置に関し、この補助装置は、軽車両の利用者からの筋肉によるペダリング動力を受ける要素と機械的に結合された減速装置を装備した熱機関を備える。前記補助装置は、前記熱機関をすっぽりと覆うジャケットを備える。
前記ジャケットは、前記減速装置のケーシングに結合し、かつ前記熱機関から機械的に切り離して、振動を抑える。
前記ジャケットは、前記減速装置の第1の減速段をすっぽりと覆う。
前記ジャケットは、内壁及び外壁を備え、これらの両壁間に、液体を収容する一つ又は複数のタンクが形成される。
【0046】
前記液体は、冷却材であり、外壁を介して大気と熱交換する。この外壁は、波形又はフィン付きのものである。
タンクは、前記熱機関用の潤滑材を収容する。
外側のジャケットは、ストッパで閉じられる充填オリフィスを備え、該オリフィスは、前記装置を傾けることによって潤滑剤を収納するタンクから該オリフィスを介して排出されるように位置している。
タンクは、前記熱機関用の燃料を収容する。
【0047】
前記ジャケットは、発泡プラスチック材料のような音伝達性の低い材料から成る。
前記ジャケットは、フェルト、特にウールフェルト又は連続気泡フォーム等のような遮音性材料から成る。
前記機関は液冷であり、二つのダクトが前記ジャケットを通過して前記ジャケットに液体を流入かつ流出し、前記ジャケットの外側には、これらのタクトに接続された熱交換器が配置されている。
潤滑剤は、冷却材となる。
【0048】
サーモコンタクトにより制御される電気ファンは、冷却が不十分のとき、熱交換器上に空気流を発生する。
前記機関は空冷であり、タービンは、前記装置の後部又は側部に向けられた二つの空気流入及び流出ダクトを介して、前記ジャケット内に空気を吸引かつ排出する。
フレキシブルダクトは、前記機関から前記ジャケットの出口ダクトに熱風を案内して、熱風が前記ジャケット内で再循環するのを回避する。
前記ジャケットの空気入口及び/又は出口ダクトは、内部を空気が通過するセル構造を有する。
前記機関の前記冷却材は、空気と液体の混合物であり、タービンは、前記装置の後部又は側部に向けられた二つの空気入口及び出口ダクトを介して、前記ジャケット内に空気を吸引かつ排出する。
【0049】
フレキシブルダクトは、冷却空気吸引又は排出と前記ジャケットの間に設置されて、熱風が前記ジャケット内で再循環するのを妨げる。
前記装置は、前記ジャケットの空気入口及び/又は出口ダクトに設置された一つ又は二つのセル構造を備えて、前記セル構造が熱交換器である。
前記空気入口ダクト又は空気出口ダクトは、前記機関を支持する中空の梁に連通し、前記中空の梁はその後端に開口を有する。
前記熱機関は、一つ又は二つのバランス軸を備える。
前記ジャケットは、前記熱機関を支持するガス入口オリフィスを備え、このオリフィスは中空の原動機サポートに連通し、このサポートは前記熱機関に供給するための空気入口量を決定する。
【0050】
前記熱機関は、前記ジャケットの外側に設置された気化器を備える。
前記熱機関は排気マフラーを備え、該排気マフラーは、前記熱機関のサポートに固定されるか、又はサドル管を受ける自転車の枠管に固定されるか、前記自転車のフレームスティに固定される。
前記変速機は、可変速比タイプのものであり、前記機械的結合は、前記可変速比の変速機の上流でなされるので、前記熱機関が変速比の前記変化の利益を受ける。
本発明によれば、特に自転車のような軽車両は、上記に定められた補助装置を備える。
【0051】
本発明に係る第3の発明は、ペダルと可変速比の変速機を備えた、特に自転車のような軽車両用のペダリングを補助する装置に関し、この装置は、遠心クラッチ、及び軽車両の利用者からの筋肉によるペダリング動力を受ける要素と機械的に結合された減速装置を装備した熱機関を備え、この機械的結合は、前記可変速比の変速機の上流でなされるので、前記熱機関が変速比の前記変化の利益を受ける。前記機関は、クラッチのロック速度において最大トルクの少なくとも80%を供給する。
前記クラッチは、毎分60回転以下のペダリング率でロックする。
本発明によれば、特に自転車のような軽車両は、上記に定められた補助装置を備える。
【0052】
第2の発明は、ペダリングを補助する装置、特に自転車のような軽車両用の、ペダリングを補助する装置に関する発明であり、すなわち、軽車両に取り付けられる補助装置であって、利用者が軽車両を動かすことを可能とする力を供給する上で助けるための補助装置に関するものである。その軽車両にはペダルと可変速比の変速機が備え付けられている。その補助装置は、軽車両の利用者の筋力によるペダリング動力を受けるエレメントと機械的に結合された減速装置を装備した熱機関を含む。減速装置と、軽車両使用者の筋力によるペダリング動力を受ける要素の間の機械的な結合は、可変速比の変速機の上流でなされるので、前記熱機関は、前記の変速比の変化から利益を受ける。前記熱機関の減速装置は、ベルト式の減速1段目を含む。
第2の発明は、前記のような装置を備えた軽車両に関する。
【0053】
第3の発明は、自転車のような軽車両用のペダリングを補助する装置に関し、前記装置は、熱機関を備え、前記熱機関のスロットル制御に働くサーボモータを備える。
第3の発明は、前記のような装置を備えた軽車両に関する。
【0054】
無論、この三つの発明を互いに組み合わせて、特段にメリットのあるペダリングを補助する装置を定義づけてもよい。そのために、技術的に両立しない場合を除き、いずれかの発明に従う装置のいずれの実施形態も、別の発明に従う装置のいずれの実施形態とも組み合わせてもよい。異なる発明を組み合わせたひとつの実施形態について図を参照しながら後述されている。
【0055】
連鎖上の応力を減少させる配置:
動力の追加投入があった場合の、自転車のトランスミッションの寿命について疑問を抱くのは正当なことである。
【0056】
質の良い自転車のトランスミッションは、1000ワットに達することのあり得る、すなわち瞬間動力2000ワット近くのスプリント走行の動力に耐えることができる。このような瞬間動力の変動が最もトランスミッションに負担をかける。一見すると、同じ動力の場合、補助装置を備えた自転車の方が、従来の自転車よりも瞬間動力がかなり一定しているように思える。それは、もし補助力の底(最低トルク)が一定しているならば、このことはどちらかというとトランスミッションの寿命をより長くするはずである。
【0057】
現実では全く違っており、一部の現象はトランスミッションの断裂すら引き起こすこともあり得る、というのは、この技術は深刻な危険性を含んでいるからだ。
【0058】
第1の危険性は、ピストン式原動機はその周期上で変動的なトルクを生み出し、これは伝達する動力を大きく超えてトランスミッションに負担をかける。
【0059】
このようなトルクの変動を、自転車のトランスミッションに到達する前に選別しないならば、トランスミッションの寿命は非常に短縮されるであろう。
【0060】
第2の危険性は変速に関するものである。現代の自転車のトランスミッションの大きな進歩のひとつは、今は負荷がかかった状態で変速が可能になったことであり、このことは桁外れにその器械の運転を簡素化することになる。
【0061】
変速がディレイラーまたは遊星歯車式ハブで行われるにしても、ある変速比からより小さい変速比への移行は非常に順調に行われるであろう。
【0062】
ところが、ある変速比からより大きな変速比への移行の場合は全く状況が異なる。この場合、原動機とそのトランスミッションは瞬時、回転数が低下し、運動エネルギーの変動は、後輪まで、トランスミッション全体を通過することになる。感覚の面では不規則な動きという形で表れ、変速比が小さい程激しいものとなる。
【0063】
トランスミッションに関しては、全ての変速比において同等の衝撃となり、衝撃は特に変速の変動率と、原動機とそのトランスミッションの慣性によるところが大きい。このようなタイプの変速の際、定格動力の何倍もの力がトランスミッションを通過しうる。
【0064】
特別な配置がない限り、原動機のトルクを安定化する目的で原動機のフライホイールを重くすることは、トランスミッションに対してかなり逆効果な結果を及ぼすことがここでわかる。
【0065】
この現象は連鎖全体にとって破壊的であり、たとえこの瞬間動力を自転車のトランスミッションまで到達させることができたとしても、その場合は、自転車のトランスミッションが苦しむことになり、最良の場合でも、寿命が非常に短くなるということになる。しかし大抵の場合、小歯車の損傷、歯車装置の破損、変速ラチェットやチェーン、フリーホイール、スポークの破損、時にタイヤがリム上で回ってしまってバルブを引きちぎるなどと重なるものとなろう。
【0066】
最もひどいケースは、遊星歯車式ハブによるトランスミッションでみられる。これらの歯車装置はごくわずかしか緩衝ができず、加えてこのようなトランスミッションは一般的にギア比が少なく、それぞれのギア比の間には大きな変動率が見られる。このようなタイプの車輪では、一般的にハブの直径は大きく、スポーク配置にかなり大きな剛性が備わることになる。この特徴は、通常は求められるものだが、これらの衝撃に対しては更に状況を深刻なものにする。というのは、非常に剛性の高い車輪は、実際、僅かしか緩衝しないからである。これら全てのことは、しばしばかなり早期の破損につながる。
【0067】
ディレイラー式トランスミッションの場合、状況はそんなによくなるとはいえない。衝撃は少し激しさが減るが、チェーン幅はより狭く、つまりより丈夫でなく、大きな変速比を本当に小さな小歯車で得るため、噛み合う数本の歯は恐ろしく苦しむ状況となる。
【0068】
反して、ギア比の数が多いので、二つの変速比間の開きを小さくすることが可能となり、このことは、歯1本のみの間隔で有利になるように配された小さな小歯車に関して特にメリットがある。
【0069】
この瞬間動力の数値はまた、減速装置の剛性にも左右され、緩衝のない歯車装置の場合、最悪となる。減速の弾性により状況を少しよくすることはできるが、運動エネルギーの余剰分を十分な期間に分散させることは困難である。それに、非常に強い弾性は、変速毎に、あるいはペダルの一踏み毎に、比較的不快な原動機回転数の揺れにつながり、このような振動はまたオフロードで石や凹凸のある所を通過する度にも起き、非常に困るもので、連鎖全体において大きなトルク変動を生むものである。このような想定的状況は、米国特許5 941 332号に描写される装置でかなりの可能性で遭遇されるものであろう。
【0070】
本発明による装置においては、トルクリミッタが運動エネルギーの余剰分を適正に放散することを可能にする。
【0071】
また、補助装置に備えられた遠心式クラッチは、最悪で約50 rpmのペダル回転数でつながらなければならず、これよりかなり高い回転数で、より長い変速比を選択することとする。従ってクラッチは、この時しっかりとロックされ、正常なトルクリミッタの役割を担うことができないことに留意したい。
【0072】
機械的な観点からは、油圧式コンバーターが比較的理想的な滑らかさとなろうが、重量や、コスト、効率損失がその適用を困難にする。
【0073】
補助装置の運動機構の上で摩擦式トルクリミッタが有効となるような場所は、原動機と二つの動力源の合流点の間に見つかる。このトルクリミッタは、原動機に近いだけあって、より軽量のものとなり、また、合流点に近いだけあってより効果的となる、それは減速装置全体の運動エネルギーを吸収するためである。どのようなことがあろうと、運動エネルギーの大部分は原動機から来るものであり、原動機上に設置されたリミッタは既に非常に良い結果を出す。減速1段目の出力口に設置するのが、トルクがまだあまり強くなく、レイアウトするのが容易で、良い妥協案となる。
【0074】
このトルクリミッタの設定をしておけば、最も適した状態で原動機の最大トルクを伝えることができる。
【0075】
摩擦式リミッタは、必ず係合トルクより高いリリーストルクを有し、やや柔軟なトランスミッションにできれば、本解決法の快適性と有効性が更に改善される。
【0076】
また、フリクションパッキンとして皮革または相当物を使用したリミッタを製作することが可能であることに留意したい。この素材は、リミッタにビスカスカップリングと乾式摩擦の間の中間的な特徴を与える。従ってリミッタは、しばしば恒常的にわずかに滑ることが多いが、非常に柔らかい緩衝を提供できる。
【0077】
このような装備を備えた自転車用トランスミッションは、信頼性ばかりでなく、従来の自転車と比較できるような寿命をも再び回復することができる。このことは、同等の動力において、ペダルの1回転における動力の変動が従来の自転車と比べるとかなり低いことによる。従来の自転車の場合、瞬間動力は連続動力の倍に達することがある。
【0078】
油圧式トランスミッションのひとつのバージョンについて後述するが、そこでは熱機関がポンプを駆動し、ポンプは低速油圧原動機を供給する。この解決法をもってしても、トルクリミッタの装備を免れる訳ではなく、それは前述のような機械的なものでよい。当然、油圧原動機は、低速で、おそらく減速装置を必要とせず、すると大容量のトルクリミッタが不可欠となる。ただし、このリミッタは放出バルブでもよい。
【0079】
振動 ノイズ:
このような装備をそなえた自転車なら、あらゆる種類の地形でも並外れた効率の自転車となるが、利用者の耳のレベルで約90デシベルの音を立てるであろう。これが、ヨーロッパの原動機付自転車として公認され、時速30 kmの時に7.5 mで79 dbだとしても、である。この音量レベルは、原動機付自転車なら受け入れられるが、利用者は自身がペダルをこぐことになると非常に気難しくなるため、早期にこの音にはうんざりすることになるだろう。
【0080】
確かに、殆どの個人にとってペダルをこぐと言う行為は自転車を連想させ、自転車は音を立てないものである。
【0081】
実際には、純粋な自転車に乗って時速30 kmの時、ノイズは耳のレベルで約60 dbであるが、このノイズは、主に空気力学的な原因によるため、速度と共にすぐに衰える。
【0082】
本発明の補助装置付の自転車において、時速30 km時に耳のレベルで60 dbまたはそれ以下とする目標は可能である。このことはしかし、自転車の音源となる殆どの対象について多大な作業が必要となる。
【0083】
また、時速100 kmの時、高級フォードアセダン車のノイズは最良で65 dbで、耳のレベルで60 dbは、乗り物公認用の測定プロトコルに従うと約50 dbとなる。
【0084】
補助装置付自転車は、高性能で、扱い易く、簡単に運搬できるようにするため、もちろん可能な限り軽量であることが望ましい。このことは、騒音放出を非常に低音量にするという挑戦を更に達しにくいものにする。何故ならば、軽量さは、非常にノイズと近しい関係だからである。
【0085】
騒音放出に関する目標に達するための最低条件は、まず、いずれの音源も目標値を超えないことであり、一般的にこの最低条件は十分ではない。ここで重要なのは、利用者の耳にとっての音であることを明記したい。
【0086】
最も処理が容易な音源は、乗り物の排気である。対処法は知られており、希望する波長と音量を消音器に与えさえすれば、我々が目標とする低動力に関していえば、結果は比較的容易に得られる。唯一問題となるのはレイアウトである。というのは自転車の人間工学性を損なったり、通常の使用時に火傷の危険を引き起こしたりする訳にはいかないからである。やはり耳に対してあまり不利にならない方向に、音波を向けるのが望ましい。望ましい音量と両立できるレイアウト案については後述する。
【0087】
深刻な吸気ノイズの緩衝は、更にかなり問題となる。大きく、剛性が非常に高い体積が必要で、自転車上でその空間や設置場所をみつけるのは必ずしも容易ではない。自転車を重くし、美観を重々しいものにすることを希望するなら、なおのことである。場合によっては、フレームのいくつかの部分の体積を利用することができる。特定の実施形態において、原動機の減速装置のギアケーシング(1つまたはそれ以上)がこの吸気装置を形成し得る点については、後述する。
【0088】
原動機とその減速装置が発する振動や機械音は、非常に低い音量レベルを目指す場合、更にずい分微妙な問題となる。
【0089】
原動機に関しては、振動は二つの明確な源から発せられる。
【0090】
第1は、2ストローク原動機においては1回転、4ストローク原動機においては2回転の、熱力学的周期上の原動機のトルク変動からくるものである。これは、爆発のリズムに合わせて原動機を軸のまわりで揺れ動かすような振動で、ここでは周期振動とよぶこととする。
【0091】
第2は、原動機の回転に際し、動く部品のいくつかの慣性からくるもので、ここでは機械的振動とよぶことにする。
【0092】
これらの振動はノイズだけではなく、自転車利用者にとって、機械的な不自由を生む。従って、耳にとって困る上、かつ自転車利用者と自転車の接触点全てにおいても困るのである。これらの点を感応性の高い順で挙げるなら、手、足、臀部となる。
【0093】
従って、このような振動が可能な限り弱いことが望ましく、サドルからペダル装置へ、そしてハンドルへとその度合いが小さくなっていくのが望ましい。
【0094】
二つの動力源をペダル装置で合流させることにメリットがある点については、後述する。従って、仏国特許915 817号(特許文献2)、米国特許6 213 236号(特許文献10)、欧州特許0 822 136 A2号(特許文献9)のように、ペダル装置を含む原動機ブロックという構想に強い魅力を感じる所である。
【0095】
しかし、この解決法は、ペダル装置に最大量の振動を生むことになり、それだけでもあまり好都合でない。この振動が自転車のフレーム全体に伝達されないようにするためには、欧州特許0, 822, 136号のように、原動機ブロックがフレーム上に弾性を持たせて取り付けられるべきであり、かつフレームが原動機ブロックより更にずいぶん重くなければならず、これはなかなかあり得ないことである。これが不可能な場合、自転車利用者がおもりの役割を担うことになり、まさに避けたいことである。また、この弾性は、相当なものとなるペダル力と両立するものでなければならず、これも非常に都合が悪い。更に、ペダル装置の弾性は、残念ながら、すべてペダリング効率の損失となってしまう。従って、この形状は、今回の目標に達するには特に都合が悪い。
【0096】
周期振動を強力に抑えるためには、原動機の気筒数が多くなければならず、かつ、可能であれば、4ストロークなら四つ以上、2ストロークなら二つ以上、ということになると経済的に困難を極めることになる。
【0097】
また、2気筒による解決法の中にはいくつか、機械的均衡の点で数多くの利点がみられるものがあり、周期振動をほぼ半分に抑えることができるが、価格はおそらく法外なものとなろうことに留意したい。
【0098】
この振動は、原動機のケーシングの、可動部に対する作用反作用と理解される。一般的に、低速回転時に最大となる。何故なら、この回転数では、原動機は圧縮ごとにエンストを起こしそうになっているからである。また、非常に低回転数で大きな負荷を要求しても、この振動は非常に大きくなり得、その場合は原動機がノッキングをするという。
【0099】
原動機のクラッチがつながっている時、この振動は二つの方法で拡がる。原動機のケーシングがその揺れを自転車フレームに伝え、その間、クランクシャフトがそのトルク変動を、駆動輪までトランスミッション全体を通して伝播する。
【0100】
このため、単気筒熱機関は、電動機より更にかなり頑丈なトランスミッションを要求するのである。
【0101】
本件では重量超過と過剰コストというだけではなく、ノイズや、自転車のトランスミッションの磨耗という代償も払うことになる。
【0102】
従って、これらの振動を分散させるのが特にメリットがある。すると、原動機の固定と結合は、原動機軸のまわりを原動機が若干回転するのを許す方が利点となる。同様に、トランスミッションは、このような周期的なトルク変動を平均化できるような弾性を有する。
【0103】
コストの理由から、車両の原動機は非常に基本的な単気筒のもので、クランクシャフト以外には全く他に平衡をとるための技巧もなく、従って多くの機械的振動を発生させるものになる。
【0104】
これらの振動を制限するためには、一般的にそれは行われるが、振動を発生させる部品の質量を最大限に少なくしなければならず、かつ固定部品の質量を可能な限り重くしなければならない。しかしながら、この領域における我々の可能性は極端に限られたものとなる。重量が増えることは車両の動力学的特質にとって非常に不利となるからである。
【0105】
従って、この振動を選別することは、特にメリットとなる。
【0106】
しかし、この振動を効果的に選別するには、原動機を支える弾性エレメントが大きな質量を有するものに固定される必要がある。
【0107】
自転車利用者には最低限の振動しか届かないようにしたいため、自転車の質量対振動部分の質量の比率に対して働きかけることにしなければならない。
【0108】
より細かく自転車の振動について分析すると、自転車を一塊の質量と見なすことは不可能で、互いに弾性的につながった複数の質量の集合体に似ていると見なすべきだということが示される。このことは、これらの質量の殆どが、ここで処理したい振動に関して慣性の面で非常に役割が弱いこととなり、これも不利なことである。
【0109】
したがって、我々の操作余地は非常に限られたものとなる。非常に効果的な考え方が残されている。つまり、原動機の振動緩衝に必要な動きを可能とする結合あるいは一次動力伝達からなる。このことは、剛性をもたせて減速装置をフレームに固定することを可能とし、自転車の質量対振動部分の質量の比率を明らかに改善する。原動機のエレメントの一部を自転車の方へ移動することで、この比率を更に強化することができる。例えば、排気システムや気化器、点火コイル、オイルタンク、燃料タンク、ある場合は防音用の覆い。
【0110】
原動機をこのように軽量化することは、原動機の振動幅を大きくするが、この現象は、固定質量対振動質量の比率が十分有利になれば、弾性固定具をより効果的にすることで大幅に補うことができる。このことは、特に重い原動機と特に軽いフレーム(中には1 kg以下のフレームもある)を使用しさえしなければ、可能である。
【0111】
この技術の利点は、同等の質量で振動において有利になるという点である。
【0112】
振動緩衝を可能にする、望ましい自由度を原動機に与え得る結合の解決法は数多く存在する。だがこれらの解決法は無視できないほどの質量を有し、時に効率の低下を促し、かつしばしばレイアウト上大きな問題となる程の寸法のものが多く、レイアウトに関する章で触れたい。
【0113】
奇妙なことに、レイアウト上の問題を解決しようとして、これらの解決法のひとつを米国特許5 941 332号(特許文献8)に見出すことができるのである。この特許で原動機は縦型でサドルの後に位置し、その動力を、ねじれケーブルによる可とう性のある結合を通して減速装置へ伝達する。
【0114】
これは、自転車の人間工学性を損なわないという素晴らしい目的のためである。だがこの解決法が原動機固定用の弾性に富んだエレメントを伴わないのが本当に惜しまれる。また、付属品がどれもフレームに移されていないことにも留意したい。
【0115】
この縦型の配置は、レイアウト上の問題を大きく簡素化し、英国特許381 310号(特許文献11)、欧州特許0 822 136 A2号(特許文献9)に見られるが、これは角度伝達を不可欠とする。
【0116】
米国特許5 941 332号(特許文献8)では、この角度伝達はウォームねじでされ、特に静かな解決法である。他の歯車装置を伴うのが惜しまれるが、ノイズや振動が心配だった様子はない。ただ、この解決法は残念極まりない効率で、しかもフレキシブルカプラの効率もよくなく、更に事態は悪化している。特にこの場合に関しては、原動機動力の半分以上が熱となって後輪に到達する前に失われてしまう可能性がある。また、この伝達は不可逆であり、後退操作の際、後輪がブロックされることになる。そして、このタイプのフレキシブルカプラは、先述の変速による動力ピークに耐えて欲しいものなら、特に、非常に重く、またねじれにおける剛性が低すぎるため、おそらく先述の揺れの現象を生むことになろう。
【0117】
縦軸原動機という解決法は、レイアウトの問題を桁外れに簡素化し、各種カプラの取り付けを可能とするが、角度伝達が不可欠となり、この角度伝達が角度歯車装置からなるものの場合、静かなものにするのは非常に困難であり、かつ、この解決法は、重量が重く、コストも高い。これは利用価値を大きく欠くこととなる。
【0118】
また、角度伝達が避けられない場合、1段目は最も速度がはやく、最もうるさいため、減速装置の1段目には使わないようにした方が良いことに留意したい。
【0119】
軽量で、経済的かつ静かになり得るベルト式の角度伝達案については後述するが、この解決法は、前記ベルトへの負担が大きい。
【0120】
比較的特殊な一つの解決法に、本件に関しかなり多くの利点がある。減速装置の1段目は最も速度がはやく、従って防音するのが最も難しく、かつトルクは低い。これをベルトを使用して製作することに非常にメリットがあり、しかもこのベルトが歯(ノッチ)付きのものなら、効率は更に特段に良くなる。だが、このセッティングは、原動機の振動のままに変動する軸距(軸間距離)の支持を非常に悪くする。
【0121】
しかし、このようなトランスミッションは、軸の平行に関する小さな欠点には比較的受容できるものである。
【0122】
従って、考えとしては、プーリの可能な限り近くに、ねじれにおいて弾力のあるコネクティングロッドのようなものを2段目の軸と原動機軸の間に入れることとなる。
【0123】
そうすることで、軸距はほぼ一定した状態に保たれ、原動機は一種の円錐形上の動きを軸に課すことで、原動機は軸の周りの揺動と、あらゆる方向の振動とが起り得る。
【0124】
認められる自由度の度合いに加えて、このシステムは原動機の回転儀(ジャイロ)的慣性の投入により更に強くなる。
【0125】
他方で、原動機をコネクティングロッド上に剛性をもたせて固定をし、コネクティングロッドが自由に回転するのは2段目の軸の周りだけ、とするのも有効であろう。すると、原動機の慣性モーメントは、原動機の質量を増やさずとも増大し、このことは周期振動に関していいことずくめである。
【0126】
そして、前記のコネクティングロッドを、原動機が最も振動が少ないいずれかの方向軸に向けて設置することが、メリットとなる。
【0127】
1段目が最もノイズが多いため、このコネクティングロッドは、ねじれ剛性が低いように設計された防音ケーシングを形成することができる。
【0128】
この解決法は、ペダル装置原動機ブロックのバージョンに適用できるが、自転車の人間工学性を害さないために、十分に幅の狭い原動機が利用できることが条件となる。とはいえ、ペダルに伝わる残存振動と騒音放出に関して言えば、この解決法は尚不利である。何故ならばこの時自転車利用者の身体は、ノイズを遮ることができないからである。
【0129】
振動と音の観点からすると、減速装置を、それゆえ間接的には原動機を、フレームのシートチューブを受ける部分、特にこのチューブと後輪の間に固定することが、大いにメリットがある。
【0130】
この解決法は、振動発生源を、ハンドルとペダルという弱点から遠ざけることを可能とする。他方、サドルとそのチューブは、非常に優れた振動吸収体となる。この領域において、シリコンジェル製のシートは、一流の向上を提供する。
【0131】
この配置は、原動機をシートの後に置くことを可能にし、その場合、自転車利用者の身体は、非常に質の高い音声遮壁を提供する、しかもコスト面でも重量面でも、全く代償を払わないですむのである。この配置の他の利点は、自転車利用者に対する熱放出がない点と、自転車にサスペンションが装備されるなら、フレームの慣性モーメントが増大することにより、そのサスペンションの働きが改善される点である。
【0132】
この解決法は、原動機から比較的遠く、ペダル装置または後輪の方に向けて運動が起こされることを要する。米国特許3 280 932号(特許文献3)参照。
【0133】
運動がペダル装置に伝達される場合、減速装置は3段より少ないことは困難となる(ただし、米国特許5 076 386号(特許文献6)の解決法は別)。
【0134】
緩衝、柔軟性、効率、コスト、軽量性、静粛性、保守に関する目標からみて、運動を原動機から離す上で最も優れた解決法のひとつは、歯付きベルトを使用することである。
【0135】
残念なことに、これは最終段に関しては、寸法の問題でかなり難しい。原動機が本当に非常に動力の弱いものであればその限りではないが。大層ゆっくり回転するこの最終段に関して、特にケーシングで覆うなら、チェーンは良い妥協案である。
【0136】
しかし、歯付きベルトは2段目に関して、あるいは原動機が非常に速い場合に必要となり得る4段の減速装置の2段目と3段目に関しては、全ての利点を集めたものとなる。
【0137】
このまたはこれらの中間段が1段目よりゆっくりで、すなわちノイズが少ないとはいえ、ケーシングにおさめるのが大いにメリットがある。
【0138】
適切な配置にすれば、このケーシングは多くの機能を果たせる。つまり、ケーシングは原動機の支持体の役割を担い、トランスミッションの防音や、泥除け、荷台、マフラーの支持体、そして特に原動機の吸気音を和らげるための吸気装置の役割である。そして無論、このケーシング上に最大限の付属品を設置して原動機の弾性固定具の仕事を容易にするのがメリットとなる。この数々の機能は当然、自転車全体の質量にとっていいことずくめである。
【0139】
原動機の運動以外に、原動機のケーシングそのものも音の発生源であり、防音用の覆いを設置せずには十分にこれを減少させることは大変困難となろう。
【0140】
特に液体冷却式原動機の二重ジャケットは、既に非常に効果的な音声遮断となっており、本適用例にとって非常に推奨されるものである。この配置は、更に原動機を完全にまとめて覆うことを可能とし、桁外れな切り札となる。ただし、この解決法が経済的に現実性がない可能性がある。その場合、油循環による冷却はメリットのある代案となり得る。
【0141】
しかし、冷却を単に空気ですることもあり得る。その場合、覆いは、空気を通しながら、可能な限り音をブロックすると言う挑戦に応えなければならなくなる。
【0142】
構想からしてこの車両は、最高動力で、非常に低速で走行することがあり得るため、この器械の速度による空気の流れで冷却するのは非常に大規模な液体冷却の場合を除いて良識的ではない。
【0143】
最も簡素なバージョンでは、原動機が直接駆動するタービンが送り出す空気で冷却をする。どのような状況でも、このことは原動機の効率に不利であり、そのためこの採取が効率よくされるのが好ましい。そのためには、冷気の流入と暖気の流出の間に再循環ができる限り少ないことが重要になる。また、これらの孔は使用者の方へノイズをあまり発信しないように、車両の後方に向けられるのが好ましい。より好まれる解決法において、暖気の流出は、荷台の梁を通して行うことも可能だということを後述する。荷台は原動機の支持体から形成されている。この配置は、自転車の騒々しいこの一帯で、それぞれの流れをちゃんと分けることを可能としている。
【0144】
原動機の支持体をこの流れを導くために利用しない場合、この暖気の流出を、数センチ長い導管を通して、層流的に暖気の流れを冷気吸引口から遠い所に向けるようにするのが有効であろう。冷気の流入口を車両の後方に向けることは、空気供給量に対して非常に不利に思えるが、実際には、自転車の通常の速度における空気の力学的な圧力は、本当に弱いものである。いずれにしても、最大限、音波は自転車の後方に向けるのが大いにメリットがある。
【0145】
冷却用空気をファンから原動機の熱い部分へ導くケーシングは、既にノイズを緩和するように処理されるが、このケーシングを原動機に固定しないのは難しく、すなわちこれは振動し、ノイズを発することとなる。
【0146】
従って、防音用の覆いは、原動機に固定されないことが好ましく、かつ、原動機が運動時に触れることが無いように、十分に原動機から離れるようにする。したがって、振動選別において、防音用の覆いの質量は、自転車の質量を支えるものとなる。
【0147】
この覆いの空気の流入孔と流出孔から、原動機の音波の大部分を出すことができる。これがおそらく、自転車の発するノイズの主要な音源だろう。わずかな圧の減少となるが、これらの孔の中に細長い小孔状の構造物を設置することで、ノイズを緩和することが可能である。ハニカム構造なら、非常にわずかなコストと重量で大変優れた結果を得られる。小孔の断面の形はあまり重要でなく、間隔を小さくとった平行な板で通行を制限するのでもよい。だが、通行部分の面積と長さは、非常に重要である。圧の減少とノイズ緩和の間で妥協点を見出すこととなる。
【0148】
この構造物は、一流の熱交換器ともなり得る。原動機が液体冷却用ラジエーターを備えるなら、このラジエーターがこれを形成してもよい。これは、液体冷却の場合において、原動機を完全にまとめて覆うに替わる案となる。
【0149】
また、この覆いの中は、どのような冷却方式であれ、ある程度の熱さになることに留意したい。この熱は、原動機の再始動に対して有益な効果を及ぼす。このコンセプトにおいては、原動機を切ることが多くなる。反面、この熱により一部の付属品の機能で困ることになる可能性はある。例えば点火コイルや特に気化器の場合は、燃料を気化させてしまう危険があり、そうなると始動には非常に有害である。従って、これらの付属品を原動機の支持体上で、可能なら冷所に設置するという第2のメリットとなる。
【0150】
この覆いの内側を有利とするように、防音用資材で裏打ちする。また、このような小型原動機において一般的に遭遇する周波数に対し、ウールフェルトが驚くほど効果的であることに留意したい。覆いのある部分は液体タンクの機能を果たし得る。液体の質量は、覆いの慣性を増大させる。そして二重ジャケット効果は、特に防音性が高いものとなる。
【0151】
減速装置:
減速は本コンセプトにおいて重要な主題であり、自転車のギアチェンジを享受するためには、非常に異なる回転数で機能する2つの動力源を合流させなければならない。これはペダル装置と後輪の間のどこかでしてよい。先行技術において、この領域は比較的入念に探られてきた。
【0152】
いくつかの配置が、少し低い減速率を可能としている。米国特許3 280 932号(特許文献3)、米国特許2 596 391号(特許文献12)、欧州特許0 822 136 A2号(特許文献9)、仏国特許535 184号(特許文献1)、米国特許2 331 976号(特許文献13)を参照されたい。
【0153】
ペダル装置上で合流点としたい場合、減速率を最大限大きくすることが必要となり、このことは重量の面でもコストの面でもあまり好都合ではない。これに対し、この配置は、ギアチェンジのタイプの選択に関して大きな自由を製造業者に残し、例えば車輪のハブの中の遊星歯車式、またはより従来型のディレイラー式、あるいは混合式であり得る。一般的にこの造りは、殆どの変速システムとの両立を可能とし、ひとつの同じ補助装置を使って自転車の大きな家族を生み出すことが可能となる。
【0154】
また、この選択肢は、サスペンションのデザインに関して大きな自由を残す。他の解決法では必ずしもそうではない。
【0155】
この減速装置は効率が良く、静かで、可能なら可逆的で(すると後進走行が可能になる)、軽量で、経済的で、かつ周期振動を緩衝できなければならない。更に、自転車上で、その人間工学的性を損なうことなく、設置場所も見つけなければならない。また、出力で10 kgmを超すトルクとなり得ることに留意したい。
【0156】
遅い原動機の方が簡単に構想できるが、自転車を練り上げていく上で必要な幾多の妥協は、おそらく最大動力回転数が6000から10000 rpmの間のものにつながるであろう。このことは大きな減速率を不可欠とする。
【0157】
効率を別にすると、解決法として最も悪いのが歯車装置である。これは重く、コストが高く、うるさく、緩衝器を追加しない限り緩衝しない、つまりこの解決法の現状を更に辛いものとする。
【0158】
この構想の大きく困難な点は、熱機関を備えた二輪車においては、いまだかつてなかったような音量レベルを目指しているという点にある。歯車装置は、たとえ平歯車だとしても、原動機付自転車には通常非常に合ったものとみなされる。ここでの利用はおそらく可能であろうが、製作の質が必ずしも検討の余地を残さないこともあり得る。
【0159】
1段目に関して、一番うるさくない解決法は平マルチVベルトだが、ギアチェンジによる、瞬間的な動力変動が苦手で、寸法を大規模なものにしなければならない。このベルトは、適切な張りにおいてはトルクリミッタの役割を担うこともできると言えなくもないが、空転は処理が困難なノイズを発し、ベルトの寿命を著しく制限する。また、特に、避けがたいことだが、チェーンテンショナーを加えることになった場合、歯付きベルトより効率は悪い。一部の、非常に断面積の小さい台形ベルトを非常に直径の小さいプーリに巻いて利用することもできる。実は、これらは同様に斜線接触タイプのベルトである、平マルチVベルトに非常に近い。
【0160】
米国特許5 361 863号(特許文献7)では、歯付きベルトで、原動機から減速なしで運動を遠心式クラッチへ伝達し、原動機のクラッチを減速装置の方に移動し、おそらくそのことで幅を数センチ稼ごうと言う目的のものがある。不思議な理由で(おそらく同じ速度を保つため)、減速は、他の段からくるものだと確かに述べられている。このトランスミッションは、従って減速装置の1段目ではなく、結合のようである。
【0161】
歯付きベルトは、減速装置にとって、歯車装置よりノイズが少ない、コスト、軽量性、保守不要性、耐磨耗性、緩衝性、そして効率性の利点に満ちている。しかしながら、高速の時、無視できないノイズとなり、1段目に関して特に難しい点となる。従って、非常に低い音量レベルを目指すならば、いくつかの配置が是非必要となる。
【0162】
歯付きベルトのノイズは、主にその線速度と歯の体積によるものである。従って、駆動プーリが可能な限り小さい方が有利であり、これは同等の減速においては重量も稼げることになる。ピッチは有効なように5.08 mm以下で、ベルトの品質は可能な限り良いもので、伝達すべき動力に対し、可能な限り幅の狭いものにしたい。いくつかのしずかなバージョンが歓迎される。
【0163】
しかしながら、非常に遅い原動機の場合を除いて、1段目はすぐに、自転車のノイズの主要な音源のひとつとなる。
【0164】
第1の対処法は、この段をケーシングに収め、ケーシングは振動の章で述べた役割を担うことができる。しかもこのケーシングは、原動機の防音用の覆いの中に設置することができる。
【0165】
大抵の場合、特にトルクリミッタが効果的なら、3以下のピッチが使え、これは非常に効果的である。また、プーリ上の歯の奥をひとつひとつに排気溝を掘ることも可能である。同様に、初期直径を変えずに、大プーリにおいて、ある比率の歯を削除することが可能になる。なぜなら、大プーリは噛み合う歯が多数あるからである。また異なる配置では、幅の狭いベルトを2本隣り合わせに並べるか、あるいは、歯車の周囲に、歯よりも少し深い、中央溝をつくる。これらの対処は全て、ベルト歯が押し出したり、吸い込んだりする空気の速度を小さくするものである。
【0166】
また、1次トランスミッションの大プーリは、トルクリミッタにとって特選の位置であることに留意したい。この位置はまた、ベルト式の1段目の柔軟性により、既に少し平滑化してあるトルクをリミッタが受けることを可能にする。
【0167】
また、この1次トランスミッションは、自転車の中心面からすると、最も中心から離れた要素のひとつとなることにも留意したい。かつ、自転車利用者の動きの邪魔にならないことが重要である。レイアウトに関する章で、あまり困らない位置に設置することや、原動機を横方向にずらすことでトランスミッションが中心面からはみ出るのをわずかにすることができることに触れる。
【0168】
そして、この1次トランスミッションはベルト式の角度伝達でもよい。
【0169】
この技術は、適切に配置された溝車がベルトがねじれて直角を形成するのを可能にするものである。この配置はベルトへの負担が大きいが、原動機を縦方向に配置することを可能とし、桁外れに原動機のレイアウト問題を簡単にしてくれる。原動機は軸上に数多くの付属品を含めなければならず、幅を狭くするのが困難となろう。
【0170】
この解決法は、先述した対振動の配置と両立できるものである。
【0171】
2段目は更にかなりゆっくりで、ノイズの問題は少ない。トルクはより強いとはいえ、歯付きベルトは変わらず、この仕事のための特質を数多く集めたものである。また、最も好ましい配置において、歯付きベルトは更に、大きな軸距を可能としており、原動機から比較的離れたペダル装置の方に運動を移送することを容易にする。ピッチは5または5.08なら、この仕事を特に静かにできるであろう。このベルトは剥き出しで機能できるが、その場合はもう少しノイズが聞こえ、オフロードで水や泥または枝に弱くなり、このことは機能の仕方を妨げうる。この段を閉じたケーシングの中に入れ、かつこのケーシングを、原動機の吸気装置など数多くの他の機能にも利用するのが非常に有利であることは既にみた。この場合は、エアフィルタを二つ設置するのにメリットがあろう。ケーシングの空気流入口に簡単なものを一つと、もう一つを原動機と前記ケーシングの間に設置する。
【0172】
時には、4段の減速装置を使用する必要があり得る。その場合、有利なように3段目の仕事も同じ枠組に入る。
【0173】
また、ペダル装置原動機ブロックの場合、中間段に関して、歯付きをしたベルトの解決法は利点が減る。何故なら、この解決法で軸距が大きいことと、幅が広いことで寸法が大きくなってしまうからである。だが、柔軟性、静かなこと、コスト、軽量であることや、保守の不要により、やはり非常によい解決法ということになる。この解決法は、原動機が非常に優れた音の緩衝体を形成するこのベルトのケーシングの中で空気を吸い込む場合、更によくなる。
【0174】
この主題については、レイアウトに関する章と特定の実施形態で後述する。
【0175】
最終段に関して、特に動力をペダル装置上で伝達するなら尚のこと、運動は非常に遅く、最大回転数で約100 rpmで、従ってトルクは非常に大きなものとなる。
【0176】
このように非常に低い速度の場合、チェーンは数多くの利点を、横方向の寸法、重量、コスト、耐久性、可能な減速率、効率、そして緩衝においてすらみせる。反面、張力調節システムが必要となり、磨耗や悪天候に比較的弱く、注油を要する。それは話題となっている低速で非常に静かであり得る。
【0177】
チェーンの最も大きな利点のひとつは、場合によっては歯数7本まで下がれる、本当に小さなサイズの小歯車でも、機能することができる点である。この特徴と併せて、更に、小さなピッチと自転車のチェーンリングのサイズのリングギヤ(スプロケット)も使うなら、最終段は、軽く10を超え得る、かなりの減速率を提供できるだろう。本プロジェクトでこのことは、特に経済的なバージョンを製作するに当たり、非常に有用になるだろう。ただし、この特徴は我々の場合に関しては限界がある。何故なら、10という率はつまり小さな小歯車が約1000 rpmで回転することを意味し、この回転数では無視できないノイズとなるからである。
【0178】
それに、小さな小歯車は多角形作用が発生し、それは歯数の減少に合わせて急激に増大する。この多角形作用は、チェーンの、通常優れた効率を損ない、各リンクの屈曲はチェーンの早期の磨耗につながる。また、この多角形作用は、トランスミッションにおいて高調波を発生させ、これは自転車のトランスミッションに負担をかけ、ノイズを発生させる。従って妥協が必要となり、可能ならば、歯数9本以上の小さな小歯車にした方が好ましい。いずれにしても、これらの振動を分散させるのが大いにメリットとなる。このことは、比較的簡単に合成樹脂材製のリングギアと適切なくり抜きでできる。小さな小歯車の寿命は、噛み合う歯の本数を増やす、緩み側のチェーンテンショナーで長くできる。このコンセプトで緩み側は仕事することがないため、このチェーンテンショナーは自動で、弾性圧力によるものでよい。
【0179】
チェーンを二重あるいは三重の多列型にすると、チェーンのピッチを小さくでき、同等の減速で、歯数の多い小歯車が可能となり、このことは効率の面からも、寿命や静粛性の面からもいいことずくめである。
【0180】
また、シングルチェーンで、レーシングカート専用のもので、我々の場合に特によく合う、ピッチが7.6 mmのものが存在することに留意したい。このチェーンは大きな減速率を可能とし、幅が広いことから、重量が軽いのに驚くべき丈夫さを備えている。
【0181】
このタイプのチェーンの他の利点は、磨耗に大幅に強くなる、密閉され、全耐用期間減摩タイプのものもあるという点である。この特質の代わりに、効率はやや下がり、コストが上がる。
【0182】
寿命と安全上の理由から、このようなチェーンを可能なら密閉式でオイルが入ってもよい、保護ケーシングの内側に設置するのが有効であろう。
【0183】
従って、これらのチェーンは、寸法やコスト、減速率でメリットがあるが、これらに欠点がない訳ではない。歯車装置式の解決法もそうである。
【0184】
場合によっては、レイアウトと動力が許すなら、歯付きベルトも最終減速を担うことができる。このようなごく低回転数においては、これらのベルトは特に静かだが、破断や歯とびに対して弱いため、ベルト幅を広くし、噛み合う歯数を多くすることが不可欠となる。減速率は従って比較的低くなり、このことは減速の問題を、おそらく三つある、他の段に振り向けることになるだろう。このような、ごく低回転数では、歯付きベルトは伝達されるワット数からすると重くさえなる。だがこの解決法はきれいで、保守が必要なく、比較的経済的で、非常に静かで、柔軟性で、利用者に対して危険が少ない。従ってこれを使用することは利点がない訳ではない。
【0185】
この解決法は、我々の最も好むバージョンにおいて、トルクと配置が許す場合、チェーンの替わりになることもあり得る。
【0186】
ペダル装置原動機ブロックのバージョンについては、後述する。これは完全に歯付きベルト使用のものである。
【0187】
ペダル装置原動機ブロックを大いにコンパクトなものにしたい場合、最も遅い最終の数段において、好ましくははすば歯車の、歯車装置を使うことができる。減速装置が4段の場合は、2段目は比較的速いため、合成樹脂製の大きな小歯車にしてノイズを小さくすることができる。
【0188】
また別の解決法は、ベルト式の1段目を大きな減速率にして歯車装置の段の速度を大きく減少させる。その際、この歯車装置の段は二つであろう。この解決法は、1段目に必要な大プーリがボトムブラケット軸と同心で、かつ自転車のトランスミッションの逆側に設置されるなら、大いにコンパクトになり得る。この大プーリは歯車装置式減速装置のケーシングの中へと運動を、ボトムブラケット軸の周りを回転するスペーサーにより伝達する。
【0189】
1段目がベルト式でも、この二つの解決法は周期振動の緩衝は少ないため、自転車のトランスミッションを更に大きく疲弊させる。連鎖の中に追加で柔軟性のあるエレメントを組み入れることが強く推奨される。
【0190】
変速が遊星歯車式ハブで行われる場合、チェーンも歯付きベルトで置き換えることができる。
【0191】
米国特許3 280 932号(特許文献3)は、動力の合流が後輪の遊星歯車式ハブで行われる解決法を扱っている。この合流の利点は、より低い減速率を要し、2段のみで達成できる点である。この解決法の妥当性が先述の全ての配置によって大きく改善され得ることは明らかである。同様に、リアサスペンション式の実施形態の場合、減速装置の中間軸をトレーリングアームの関節の軸上に設置し、そうすることで原動機をフレームに固定し、従って懸架された質量を減らすことができてメリットがあろう。
【0192】
減速装置はまた、油圧式であってもよい。その場合、米国特許3 280 932号(特許文献3)に記されているように、原動機はポンプを駆動し、油圧式の遅い原動機が運動をペダル装置または車輪に伝達する。更にもう少し軽量になるために、油圧式原動機は、あるいは、機械的減速の1つの段を通じて運動を伝達してもよい。トルクリミッタは超過圧力リリーフ弁でもよい。この魅力的な解決法は、大きくレイアウトを簡素化するが、おそらくかなりコストがかかり、効率は比較的低く、必ずしも静かでないだろう。
【0193】
レイアウト:
あるいはペダルをこぐこともできるような原動機付自転車をつくるのではなく、真に、効果的でペダリングの補助装置付の自転車をつくることが目的であるから、一部の機械装置が自転車の人間工学性を損なうことは歓迎されないことであろう。
【0194】
肝要な難点は、ペダリングの際、自転車利用者の両足、両脚が行き来するエリアに由来するもので、このエリアはかなり大きく、ペダリング・エリアとよぶことにする。このペダリング・エリアは、ステムの後のごくわずかな面積を除けば、水平チューブ型の従来型のフレームのほぼ全面をカバーする。足のサイズが大きい場合、かかとがリアフォークに触れそうになる。ペダリングの際、両足や両脚が行き来する体積を定義することができ、それをペダリング体積とよぶことにする。この体積の中にはいかなるエレメントもあってはならない。ペダリング・エリアは実の所、自転車の垂直方向で縦方向の面にペダリング体積を投影したものである。
【0195】
人間工学性を良くするには、両脚が平行した面2つで仕事するのが肝要となる。また、利用者の骨盤を広げるのは容易ではないため、フレーム中心面に対するクランクハンドルの隔たりの値は非常に狭い範囲内に含まれなければならないことになる。非常に辛く、非効率的なペダリングを受け入れるなら別だが。
【0196】
この値を、一部のプロフェッショナルの人達がするように、骨盤の幅に合わせるまでしないにしても、クランクハンドルの外面から中心面までを100 mmとする値が、平均的体型の者にとって最大限許容できる限界とされている。
【0197】
また、多くの国でペダルを低い位置にした時の最低地上角度を課して、カーブ時にペダルが地面に触れるのを避けるのを目的としている。当然、ペダルの隔たりが大きいとペダル装置をより高く設置することを不可欠とし、するとサドルも更に高くなり、ついに停止時に両足が地面につかなくなることにすぐにつながってしまいかねない。この詳細は、都会型使用を使命とし得る自転車にとって、重要である。
【0198】
やはり人間工学的な理由から、現代のクランクハンドルはまっすぐ(ボトムブラケット軸に対し垂直)ではなく斜めになっている。斜めであることの目的は、このハンドルの外面と足首の摩擦を避けるためである。この斜めである点と、ペダルからボトムブラケット軸上のペダル固定点までの最低厚を考慮すると、最良で中心面から65 mmとなり、機械装置を設置するにはずいぶん場所が少ない。この低い値は既に人間工学的にみて良くなく、100 mm中心線からずらすことにつながり、左側にしか適用できない。
【0199】
トランスミッション側では、チェーンラインとよばれるもののために問題は強調される。自転車に標準的な車輪が装備され、9つの小歯車の車輪なら中間小歯車は中心面から45 mmの距離に位置し、3枚組チェーンリングの中間チェーンリングはこの距離に設置されなければならない。この距離がチェーンラインとよばれるもので、目的は対立する小歯車とチェーンリング上でチェーンが斜めになる度合いを制限しようというものである。当然2枚組または1枚のみのチェーンリングの場合でも、このチェーンライン上に中心を配さなければならない。
【0200】
これらのことから小さなチェーンリング上のチェーンと中心面の間は約35 mmの距離となるが、この距離からチェーンリング変換の通り道のために更に数ミリメーター差し引かなければならない。
【0201】
また、チェーンが通常より仕事が多いコンセプトでチェーンラインを守らないことがあれば特に遺憾なことであろう。
【0202】
これらの制限のため、配置は非常に困難であるが、他にも更に制限が加わる。既にペダル装置原動機ブロックをレイアウトするための場所はごく限られているのがわかる。
【0203】
この視点から巧妙な構想が英国特許637 014号と米国特許2 596 391号に見られ、これはペダルの中心からのずれを穏当な値内におさめることを可能とした。このことは創意工夫のあるペダル装置減速装置とここでは垂直のクランクハンドルのおかげである。だがこれらの実施形態では遠心式クラッチも、強制冷却も含まず、複数枚組みのチェーンリングは不可能で、ノイズは気にかけていない。
【0204】
チェーンラインは、遊星歯車式ハブのトランスミッションの場合はもう少し有利になり得る。しかし、このタイプの変速でしか機能できない補助装置を構想するのが遺憾である。
【0205】
車輪に関して、現在の標準から外れるという条件付きなら、チェーンラインで数ミリメーター稼ぐことができる。これは、ハブにおける幅が現在の135 mmより広い車輪を使った場合である。この稼いだ分は、先述した人間工学的な制限により限界付けられるものの、我々の場合において、なお、大きな利点となる。とにかく、幅150または160 mmは可能であるはずだ。
【0206】
ペダリング・エリアの他の場所では更に余地は限られている。何故ならば、エックス脚、太いふくらはぎ、突き出たくるぶし、太い腿、狭い骨盤という形態的特徴も結び合わせて考えなければならないからである。
【0207】
二つだけ、より容易な位置がある。すなわち原動機は、ステムと膝の通り道の間または、サドルの後なら楽に場所がとれる。
【0208】
第1の設置場所は、今世紀初頭と戦後にもてはやされた。この場所は、原動機にしてもその減速装置にしても、運動がペダル装置の方に伝達されるにしても、後輪の方にしても、最も容易にレイアウトができる。
【0209】
反面、原動機は、ノイズや振動をハンドルへと発散し、かつ熱や臭いを使用者の方に放出するのに絶好の場所にあり、レイアウトが簡単なことが利用上不愉快という形でずい分高くついている。
【0210】
第2の解決法に不都合がない訳ではない。荷台はある程度の体積分切り詰めることになり、非常に急な下り坂でとるような一部の極端な姿勢で、自転車の利用者がサドルを超えて臀部を後へ後退させる場合に原動機が邪魔になり得るし、また、ベビーシートを使用できるかどうか疑わしい。
【0211】
バイク的なアプローチは、重心をあまりに高くしてしまう恐れがあろう。実際は、このことが基本的にひどく安定性にかけるこの車両にどちらかというとある程度の安定性を与える。
【0212】
原動機は比較的容易にサドルの後にレイアウトできるが、ペダル装置の方へ運動を伝達するのは容易でない。何故なら、ペダリング・エリアの非常に場所が限られた箇所が通り道となるからである。また、おそらくリアフォークがあるだろうことから、運動の通り道に関する難点は更に大きくなるだろう。
【0213】
唯一、米国特許5 941 332号(特許文献8)がこの難点を、フレキシブルケーブルと縦軸型原動機を使用することで避けることができたが、先述の短所を含む。
【0214】
反面、この後方配置は、通常使用において特段邪魔にならずに、比較的寸法の大きな原動機を設置することを可能とする。振動発生源をハンドルやペダルから遠ざけ、熱による害を全て排除する。また、原動機を横断軸に配置することが可能となり、前述の利点がある。
【0215】
しかし特筆すべきは、同様の工学的技術を使って、サドルの後の原動機は他の解決法に比べてノイズに関してかなりの利点を与える。
【0216】
この解決法は、構造において本当に従来型の自転車フレームを伴うことが可能であるが、それはペダル装置式原動機ブロックを使った実現の場合不可能である。
【0217】
克服しなければならない難点を述べるため、まず原動機動力がペダル装置に到達したところから始めよう。
【0218】
この動力を自転車のトランスミッション側に到達させたくなるものだ。ちなみに、米国特許4 397 369号(特許文献5)、米国特許5 076 386号(特許文献6)、米国特許5 361 863号(特許文献7)から知れるように、先人達もそうしている。
【0219】
この解決法は複数の側面から危険である。まず先述の通り、チェーンラインのため、フレームの方に利用可能な場所がごくわずかしか残されない、また、自転車のチェーンステーがあることを考慮に入れると更に場所が無い。一般的に、チェーンステーはハンドルブローと呼ばれる、トランスミッション側のチェーンステーの変形で、大きいチェーンリングがチェーンステーに触れずに位置につけるようにするためのものを受ける。すると、チェーンラインを尊重し、補助装置付自転車から従来型自転車へ自動的に移行し、かつ容易に後ろ向きのペダリングができるようにするのに必要な二つのフリーホイールを設置したいとなると、運動の伝達用の場所が本当に少ししか残されないことになる。
【0220】
動力が自転車のトランスミッションとは反対の側から到達するとなると、ボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)の内側に回転するスペーサーが不可欠となる。この回転するスペーサーは、BSA標準型ケースでは場所を見つけるのが困難だが、もう少し大きいアメリカ標準型ケースならあり得る。ボトムブラケット軸は、例えば後ろ向きにペダルをこぎたい時にこの回転するスペーサーの内側で回転し得るが、フリーホイールのおかげで、前向きにペダルをこいだ時にはスペーサーを駆動する。ちなみに2つの動力源の合流はそこで行われるのである。
【0221】
この配置は、大きなチェーンリングと同じ直径のリングギアを全く不都合なく設置することを可能とし、最低地上高の減少が受け入れられるなら、更に大きな直径でもあり得る。このリングギアと回転するスペーサーの間にフリーホイールが設置されることで、原動機が停止した状態で減速装置を駆動せずにペダルをこげるようにする。また、ペダルとチェーンステーとの間の利用可能な場所は、場合によっては、歯付きベルトによる伝達を可能にし得る。この解決法は自転車のトランスミッション側を手つかずのままにするため、複数枚組みのチェーンリングの使用などを可能にする。
【0222】
次の段は有利なように歯付きベルト式にするが、二つの解決法が可能である。運動は自転車の軸上、サドル支持チューブの前または後あるいはサイドかつタイヤに触れないように十分にずれた所を通過し得る。
【0223】
この段をシートチューブの後に設置することは、シートチューブと車輪の間に減速装置の段に十分な場所を残すために、チェーンステーを伸ばすことを不可欠とする。だが、本当に驚くほどの踏破能力を有するこのようなタイプの車両では、この配置はほぼ必須といえる。また、ホイールベースを大きくすることなしには、自転車の利用者にとって、前輪を地面に接するように保つのがかなり困難になるだろう。この2段目の上端を1段目の到達口をペダリング・エリア外にできるように設置することができ、このことは、原動機が幅広の場合非常にメリットがある。この解決法で運動は、リアフォークが備え付けられ、特に低くレイアウトされることが無ければ、一般的にリアフォークの間を通過する。
【0224】
2段目をシートチューブの前に設置することも可能だが、すると1段目の動力到達がペダリング・エリア内になってしまう。この解決法は、しばしば偏心原動機を不可欠とし、すると1次トランスミッションはシートチューブやある場合はリアフォークに触れそうになる。逆Y型リアフォークが、中心面から1次トランスミッションをあまりに離さずに通すのに特に推奨される。
【0225】
第2の解決法はシートチューブの側に2段目を設置し、より標準的なホイールベースを可能とするが、使えるベルト幅が制限される。シートチューブより幅が広い可能性のある後輪タイヤも避けなければならない場合、状況は更に深刻になる。
【0226】
一般的に、中心面より最も中心から離れた装置の一つである1次トランスミッションが運動をペダル装置の方へ、従ってペダリング・エリアの方向に向ける。ペダリング・エリア内に場所を見つけられる程特段に幅の狭い原動機がない限り、中心を外れた原動機は、1次トランスミッションの出口がペダリング・エリアに入ることを可能にする。この配置は、原動機をペダリング・エリアのちょうど境界の所に設置することを可能にし、するとレイアウトの面で、よりコンパクトにできるなど、いくつか利点が得られる。
【0227】
1次トランスミッションが中心面からはみ出る度合いを制限するために、遠心式クラッチが原動機上にある場合、クラッチを1次トランスミッションの小プーリの外側に移動することが可能である。この配置では、プーリ自身がクラッチベルの軸受けを形成している。このセッティングは、中心からのずれを20 mm以上稼ぐことができ、このことは、ペダリング・エリア内にトランスミッションを入れなければならない場合、大きな助けとなる。
【0228】
二つの特定の実施形態で、ペダル装置原動機ブロックのケースについて後述する。
【0229】
いずれにしても、一つまたは複数のマフラーのレイアウトは、非常に音量の大きいノイズを容認するのでなければ、解決しがたい。
【0230】
リアサスペンションのない自転車なら、一つまたは複数のマフラーは、邪魔にならない場所としてチェーンステーに沿って設置できる。この場所は、ペダリング・エリアの外になり、ノイズと熱を車両の後方に向けるので、理想的である。
【0231】
リアサスペンション付きの自転車の場合、原動機を後の位置にすることを選択しない限り、この問題は更に微妙である。この場合サドルの後の原動機支持体上に1つまたは複数のマフラーは場所が見つかり、熱に対する保護材で覆うという条件付で荷台となることも可能である。
【0232】
シートチューブの後というこの配置は、ペダル装置原動機ブロックの場合でもメリットがあるが、この場合マフラーは直接シートチューブを支持するチューブに固定され、最も好ましい実施形態における原動機支持体とほぼ同じポジションをしめ、泥除けと、適切な断熱をすれば荷台の機能も担うことができる。
【0233】
補助装置の管理:
最も簡素なバージョンで、使用者はスロットルによって、原動機のトルクと、それゆえ所望の補助の値を調整する。この値は、原動機付自転車で要される動力ほどしばしば変化はしないので、回転式グリップで、減速すると自動的に戻るものによる制御はあまり推奨されない。レバーによる制御で、ハンドルに両手をおいたまま操作できるように配置され、所望のポジションで安定したものの方が明らかにより快適である。この調整は自動ではなく、止まりたい時はスロットルを切る必要がある。ただし、導入される動力が弱いためスロットルを切らずに緊急ブレーキをかけることは可能となる。使用上のミスで最も困るのは、フルスロットル時に原動機を止め、スロットルを低速回転ポジションに戻すのを忘れたまま停止状態で原動機を再始動した時である。この場合、そのように期待されていないのに、自転車は前進したがる。変速比が小さい場合のみこの問題は本当に困り、この場合、自転車の駆動力に反するのが困難な可能性がある。
【0234】
この不適切な使用を不可能にするには、スロットルを切ったときしかコンタクトブレーカーを作動できないようにするか、コンタクトブレーカーをスロットルレバーを低速回転ポジションを超えて強制的に動かして作動させるかとなる。
【0235】
同様に、スロットルレバーはブレーキと結合してもよい。ブレーキの片方または両方に対する操作で低速回転ポジションに戻るようにする。このことは、ブレーキ装置とスロットルレバーが機械的にまたは油圧で結合されているならごく簡単にできる。
【0236】
このような装備の自転車は、本当の意味で補助装置つきとはいえない。何故ならば原動機単独で使えるからだ。だが現実には、ペダリングを止めるとほぼ必ずギア比を一つまたは複数落とさなければならず、またペダリングありとなしとでは成果があまりに違うので、自転車を原動機単独で利用することは、本当に稀であろう。
【0237】
より高性能な実施形態に従うと、補助装置にスロットルと、サーボモータとペダル回転センサーが備えられている。利用者はやはり補助装置のトルクを決めるスロットルをコントロールするが、この制御は、ペダル回転センサーがサーボモータにスロットルを有効にするように指令を出さないと有効にならない。ペダル回転センサーは、回転の2方向の区別ができ、後ろ向きの回転はペダリングを止めることと同等に扱われる。更に別のスイッチ、あるいは機械装置により、マニュアルモードに移ることが可能となる。中には、例えばオフロードなどの使用法ではマニュアルモードの方が効果的になる。また、サーボモータはオールオアナッシング方式で機能し、仕事をするのに例えばスロットルケーブルの被覆に作用することもでき、これを長くすることでスロットルを有効状態にすることに留意したい。これはスロットルレバーの一部をなしてもよい。
【0238】
更に高性能な管理方式に従うと、自転車には、ペダルにトルク統制装置や回転センサー、スロットルのサーボモータと情報統制ユニットが備えられている。数多くの装置がペダルでのトルク測定を可能とするが、フレームに対してボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)が作用する力を統制する方が簡単たり得る。
【0239】
停止時、トルクはクランクハンドル角度がどのポジションでも測定できるが、加速の指令がサーボモータに出されるのは、かなりの回転が登録された時だけである。続いて、トルク測定はペダルの1回転につき、規定通りの角度ポジション2つにおいて2回測定され、クランクハンドルが回転を続けるうちは、2回の測定の間は一定した補助となる。ペダルが停止あるいは回転の向きを逆にした場合、スロットルは瞬時に切られる。更に精巧な管理の場合は、測定はやはり規定通りの2つの角度ポジションにおいて行われるが、ペダルの回転全体の測定と登録がされ、ペダルの次の回転の時、その前の回転と比べて、いずれかの値がかなり変動すれば、原動機のトルクは修正され得る。当然新しい記録が古いものにとって替わる。コントロールユニットは、また、ブレーキ制動、様々な補助モードの選択スイッチ、原動機回転数、原動機温度、変速情報、加速度計及び傾斜計のような他の情報も受け取れる。
【0240】
出力で、コントロールユニットは次のことができる:
原動機が回転する時、操縦者に知らせる。このことは状況によっては非常に便利である(市街地では周囲のノイズが低速回転時の原動機音を隠し、下り坂の時も同様)。
【0241】
ブレーキをかけた場合に、たとえトルクと回転が検出された場合でも補助装置を切る。
【0242】
変速の指示を出す、あるいは変速の管理すらする。
【0243】
より大きな変速比への変速が検出された時にスロットルダウンする。
【0244】
自転車利用者が提供する瞬間動力または平均動力を表示する。
【0245】
原動機が冷たい時や熱すぎる時に補助を制限する。
【0246】
原動機動作時間を伝える。保守を容易にするのが目的である。
【0247】
自転車利用者に自分のペダリングの平均テンポを伝える。
【0248】
最高速度を制限する。
【0249】
転倒したと推定されるときに原動機を切る。
【0250】
コントロールユニットは使用者のペダリング・テンポに関する精巧な診断をし、特定のペダリングタイプ(非常に速いまたは非常に遅い場合)用に、減速装置の減速率をカスタマイズすることができる。
【0251】
原動機:
ここでは、外燃式原動機を仮定して始めたい。蒸気機関であれ、スターリングであれ、これらの原動機は我々の適用例にとって数多くの利点を呈し得る。中には自己始動式で、また始動時に強力なトルクを有するものもある。これらの原動機の効率が非常に高いこともあり得る。特にスターリングは、多燃料式で、継続燃焼は汚染を発生させず、ゆっくり回転することが多く、非常に静かで、中には非常に振動の少ない型がある(ロンビック機構式スターリング、直角V型スターリング、低速蒸気機関)。蒸気用のボイラーの中には殆ど瞬間加熱のものもある。残念なことに、その技術はコントロールされていないのか、今はもうあまりきちんとコントロールできないのか、そのため、これらを適用するのは困難で、疑う余地無く本当に残念である。
【0252】
内燃式原動機は単独で始動ができない。従って、自転車が停止する度に原動機を切るのは穏当ではない。他方で、これらの原動機は低速回転数では有効な動力を供給できない。遠心式クラッチまたはトルクコンバーター(低効率のもの)があれば、穏当な動力を提供するに十分な回転数に達することができる。クラッチまたはビスカスカップリングのスリップ中、原動機が自らの最大負荷に耐えられることが望ましいとすらいえる。
【0253】
利用者が継続的に非常にゆっくりペダルをこぎたいと思うことがあり得る。そう仮定して、50 rpmというテンポが可能である。ただし遠心式クラッチが恒常的にスリップすることは考えにくい。このクラッチは従って最も遅くてペダリングが45 rpmになったらつながらないとならない。十分普遍的になるためには、我々の補助装置は少なくとも90 rpmまでは自転車利用者についていけなければならない。
【0254】
このことは、原動機の使用範囲は最大回転数の少なくとも50%はないといけないことになり、これは単気筒にしては比較的大きくなる。
【0255】
この制限に加えて、得るのがより微妙な別の制限を加えなければならない。すなわちペダリング範囲全体にわたって減少していくトルクである。このことはつまりクラッチがつながる時に原動機のトルクは最大になることを意味し、当然、高いペダリング回転数まで自転車利用者についていけるよう、トルクはあまりはやく暴落してはならない。
【0256】
この条件なしには、補助装置と自転車利用者の間の協働は調和が取れない。
【0257】
例えば、坂道で補助装置が希望の値となるようなペダリングのテンポに達するために加速の努力を供給しなければならないのは特に不快であろう。同様に斜面にかかるとき、補助は速度と共に暴落し、このことは実際よりも傾斜変動をより困難なものに感じさせる。このことはしばしばギア比を複数落とすことを余儀なくし、そしてトルク回転数が再び見つかった時には、おそらく補助過剰になっていることだろう。このことは比較的早期に不安定な回転数、比較的早期に我慢ならないものとなろう。この状況の場合、その逆というよりはむしろペダリングによって補助された機械化といえる。
【0258】
ところがペダリング回転数と共に減少していく補助曲線があれば、ペダリング回転数が減少すれば補助が強くなり、困難を取り除き、必要な変速の回数を減らし、操縦を容易にする。
【0259】
実際は自転車利用者は非常に敏感なダイナモ試験機のように反応し、トルクのわずかな屈曲も感じ取る。
【0260】
このくだりを例証するなら、ノイズのことを無視するなら、例えば8000 rpmの時に最大動力400ワット、最大回転数9000 rpm、4500 rpm時に最大トルク、6000 rpm時に最大効率、低速回転は3000 rpmの原動機なら、約100/1の減速装置と4500 rpmでつながるクラッチに結合されると比較的理想的であろう。
【0261】
このような原動機は10 cm3以下の排気量であってもよく、従って特に軽量でコンパクトだが、この原動機と減速装置をこのような高回転数で、かつ望ましいレベルまで防音するのは特に困難であろう。
【0262】
4000 rpm時で最大動力となり、最大回転数が4500 rpm、2250 rpm時に最大トルク、3000 rpm時に最大効率、低速回転は1500 rpmの原動機も、約50/1の減速装置を備えて比較的理想的で、かつ静かにするのがずっと簡単であろう。
【0263】
ただし、反面この原動機は排気量がずっと多くなり、より重く、寸法の大きいものになる。しかし、これだけ低回転数で信頼度の高い低速回転は軽量であって欲しい原動機で得るのは困難である。同様に非常に弱い、最大トルク回転数時のノッキングを避けるのはかなり困難であろう。非常に大きなフライホイールを備え付けるというのでなければ、である。そうした場合、この解決法は更に重いものとなる。
【0264】
従って、原動機はおそらく約6000 rpmの最大動力となり、75/1の減速を必要とし、これは相当なもので、全ての技術的解決法の届く範囲内にはないものである。
【0265】
無論、クラッチがつながった後に数%増大するトルクを認めることは可能だが、その場合、変動が大きい分だけ使用上の不愉快が大きくなる。
【0266】
この特徴を中間的なペダリング回転数を助けるために利用することもできる。このことは安全面でいいことずくめで、製品の精神にのぴったり合うものとなる。
【0267】
2ストローク原動機はこれらの条件を満たすのに高価な工夫なしには非常に難しい上、汚染的排出物もあり、かつ効率を高めるためにはやはり高価な他の工夫なしにはできない。これらの原動機は非常に束縛の多いオイルと石油の混合か、やはり高価なオイルポンプを必要とする。そして原動機の公害防止をするよう課す法規制がないとはいえ、2ストローク原動機は煙を発し、集団で走行する場合非常に困ることになる。それに、空気力学的な乱流は衣服に臭いのする煙をいつも送ってきて、衣服にそれはしみ込み、これも大きな不愉快である。そのためこれらの利用は困難あるいはあまり推奨されるものではない。
【0268】
このことは、これらの原動機が4ストローク原動機よりコンパクトで、非常に軽量で、周期振動と機械ノイズの発生が少ないためかなり残念なことである。
【0269】
望まれる特徴は反面、4ストローク原動機で比較的簡単に得られる。特にこの場合そうであるように、高い比出力を望まない場合。
この特定の適用例では、ノイズと振動は第一流の欠点となる。それに、縦軸でない限り、原動機の幅はレイアウト上の大きな問題となる。多くの付属品が原動機により駆動されなければならない。最悪の場合、原動機が駆動しなければならないのは、フライホイール、点火装置、ファン、原動機の分配作動機構、オイルポンプ、ウォーターポンプ、トルクリミッタ、遠心式クラッチ、動力出口、始動装置、発電機、これら全ての付属品が駆動軸上にあるなら幅の狭い原動機はかなり製作しにくいだろう。従ってこれらの付属品を他の軸に分散するのが大いにメリットとなろう。既に触れた通り、トルクリミッタは減速装置のいずれかの軸にあってもよく、クラッチも同様だがいくつか不都合がある。無論、原動機が4ストロークのものなら、カムシャフトをなかでもウォーターポンプに使える。運動は既に減速されており、このシャフトを動力出口に使うのは非常に魅力的であろう。この技術については既に仏国特許535, 184号で辿ることができる。実際は、可能なこの解決法は解決するのと同じくらい問題も生じるため、これを選ぶのは自明とはいえない。
【0270】
我々の場合、原動機が駆動する軸を一つまたは複数増やすことは付属品の駆動のために大いに助かる可能性がある。
【0271】
また、振動の処理は本書の機械において特に重要性を帯びるため、本原動機にバランスシャフトを備えることは大いにメリットとなろう。加えて、一つまたは複数のバランスシャフトはいくつかの付属品を駆動するという機能も担うことができるのもすぐにわかる。
【0272】
経済的な視点からは、本適用例には単気筒原動機以外は想像しにくい。しかしながら、振動や周期の規則正しさの視点からすると、水平対向2気筒エンジンあるいはいくらか劣るが90°V型2気筒エンジンが明らかに有利な点を有することにも留意したい。
【0273】
理想的には水平対向2気筒エンジンの両方の気筒が同じ軸にあるものだが、このことはリンク機構の構想において深刻な問題を呈する。
【0274】
この問題に関して言えば、非常に悪い使い方というのも可能であることを述べておこう(ただし、ギアチェンジが電子ユニット制御の場合を除く)。つまり、要領を会得していない人は大きな変速比で斜面に挑む可能性があり、かつクラッチがつながるにはペダルテンポが遅すぎ、しばらく続くと過熱、ひいてはエレメントの損傷につながる。このような結果はクラッチ付近に、このような状況になった場合、原動機を止められる熱スイッチを設置して避ける事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0275】
本発明について他にも利点や特徴が、限定的でない例として示される添付図より、より明確に浮き出ることだろう。これらの図のうち:
【図1】自転車の第1の実施形態を左側から見た斜視図である。
【図2】自転車の第1の実施形態を右側から見た斜視図である。
【図3】ペダリングを補助する装置の一つの実施形態の減速装置の初めの二段の斜視図である。
【図4】一つのトルクリミッタの断面図である。
【図5】一つのボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)の断面図である。
【図6】ペダル装置を右側から見た斜視図である。
【図7】一つの減速装置ケーシングを左側から見た斜視図である。
【図8】ペダリングを補助する装置の第2の実施形態を右側から見た斜視図である。
【図9】第2の実施形態の連鎖の斜視図である。
【図10】第2の実施形態の断面の斜視図である。
【図11】第2の実施形態の横断面図である。
【図12】本発明によるペダリングを補助する装置の第3の実施形態の連鎖の斜視図である。
【図13】第3の実施形態の連鎖の横断面図である。
【0276】
図8から図13では、クランクハンドルは意図的に自転車の垂直面と縦断面に対し対照で描かれている。これは、クランクハンドルの運動に干渉することなく補助装置を配置できる利用可能な空間をよりよく描くためである。クランクハンドルは、通常、互いに180°で取り付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0277】
図1で特定の第1の実施形態が見られ、そこでは、原動機(1)はサドルの後に設置され、自転車の構造は非常に従来型のものである。チェーンステー(2)のみが少し長くなっており、2段目の減速装置のケーシング(3)の場所を十分に空けるようになっている。このように長くなっていることはまた前輪が急勾配において重みがかからなくなることを避ける目的もある。
【0278】
この長さを比較的標準的なものにし、かつ自転車のトランスミッション・チェーンにかかる力を減少させるため、車輪は直径24インチになっている。この図で、リアサスペンションの大きなサスペンショントラベルを可能にするように補助装置は設置されている。サスペンションなしの自転車ということもあり得、その場合、リアフォークはシートチューブを支持するチューブ(4)に固定され、原動機とその支持体(2)はより低い位置に設置される。
【0279】
この実施形態で、原動機(1)とその1次トランスミッション(5)はペダリング・エリア外にあり、従ってこれらの中心面からのずれは、ペダリングの人間工学性に影響を与えないものとなっている。原動機(1)とその1次トランスミッション(5)は特段幅の狭いものである必要はない。この詳細は比較的幅の広い歯付きした1段目ベルト(16)の取り付けを可能とし、このことは3 mmのピッチを利用することを可能とし、このことは静粛性の面でいいことずくめである。それに、その幅はベルト2本を隣り合わせに並べるか、または中央溝のあるプーリを使用することを可能とする。それは更にノイズを抑えるためである。同じ理由から、もとの直径を保ちつつ大プーリ上の歯をある比率分削減することもできる。
【0280】
続いて運動は自転車の軸へと、ケーシング(3)の中に設置された、歯付きベルトの減速装置2段目に送られる。そして運動はリアフォークがある場合は、それを超えていく。従って運動は自転車にリアフォークが備え付けられる場合、その間を通過していく。
【0281】
この図で1次トランスミッション(5)の柔軟なケーシングのふたは外され、トルクリミッタ(6)が見えるようになっている。トルクリミッタはまた、減速装置1段目の大プーリの機能も担う。原動機(1)の弾性固定具(7)のうちのひとつも見える。運動は小歯車(8)から2段目ケーシングを出て、小歯車はチェーン(9)とリングギア(10)と共に減速装置の最終段となる3段目を形成している。このリングギア(10)はここでは強化合成樹脂製で、剛性を和らげるためのくり抜きを含む。このことで、小歯車(8)の多角形作用によるチェーン(9)の速度の変動を緩衝するためである。このチェーン(9)はレーシングカート専用の型でピッチが7.6 mmのものである。このリングギア(10)はフリーホイール(12)上に取り付けられ、補助なしにペダルをこぐ時に減速装置が駆動されないようになっている。このフリーホイール(12)は回転するスペーサー上に取り付けられ、そのスペーサーは運動を自転車のトランスミッションのチェーンリング(13)に伝える。
【0282】
2段目ケーシング(3)はシートチューブ(4)に、部品(14)を締め付けるねじで締め付け固定されている。たわむことで、このシートチューブ(4)は残存振動の選別に貢献している。
【0283】
また2つのマフラー・サイレンサー(15a)と(15b)がケーシング(3)の後部に配置されているのも見られる。ここなら使用者を全く邪魔せずに必要な場所が十分に得られる。
【0284】
図2は、自転車を右側から見た斜視図で、ここでは右側のサイレンサー(15a)と2段目ケーシング(3)のふたが取り除かれている。このことでケーシング(3)の中の歯付きベルトによる減速装置2段目の配置が見られる。この2段目は5 mmピッチで、歯付きされた小プーリ(17)、そのベルト(18)と大プーリ(19)からなる。ここでもケーシング(3)の内側の利用可能な幅が比較的広く、既に述べたトランスミッションのノイズを減少させるための措置は可能となる。また、この配置は比較的幅の広いベルトの使用を可能とし、比較的強い動力との両立が可能である。
【0285】
この実施形態で、ケーシング(3)は、原動機の吸気のための吸気装置として役立っている。この理由から2段目ケーシング(3)は有効な、少なくとも1つの中央駒(20)を備え、原動機の吸気が発する圧力波の影響でケーシングの横側の振動を制限するようになっている。空気はこのケーシング(3)の中に管(21)を通って入り、管の直径と長さは一部の困るような周波数を緩和するために定められる。
【0286】
ケーシング(3)の後方梁(22)は、冷却の暖気とノイズを車両後方へ誘導し、冷却用空気吸入口の方へ暖気が再度流れるのを避けるようになっている。この梁(22)にもまたサイレンサー(23)が見られ、ここではハニカム構造で、巣房孔は流れの向きに向けられている。原動機が液体冷却式の場合、このサイレンサー(23)はラジエーターになれる。暖気の導管(24)は、原動機と弾力性のある接続になっており、原動機の振動運動に耐えられるようなものである。
【0287】
また、このケーシング(3)は、この特定の実施形態においては次の機能を有する。すなわち2段目の防音や、原動機の支持体、原動機の吸気用吸気装置、泥除け、荷台、マフラー・サイレンサーの支持体、冷却用暖気流出孔と、フレームの惰性増大。
【0288】
右のクランクハンドル(25)は、チェーンリング支持体(27)と協働するフリーホイール(26)が備え付けられている。このフリーホイールはペダリングの動力をチェーンリング支持体(27)へ伝達することと後ろ方向のペダリングができるようにする。これらの詳細は図5のペダル装置の断面図の方がよく見える。
【0289】
図3は、原動機と減速の初めの2段を示している。1次トランスミッションのコネクティングロッドの柔軟なケーシング(5)がここでよく見える。この実施形態で選択されたセッティングでは、原動機は剛性をもたせて1段目ケーシング(5)に固定されている。これは1次トランスミッションの軸距が十分に広いからである。そのことによって、同重量で、ケーシング(5)の中空軸(28)が具現する揺れ軸に対する慣性モーメントを増大させることが可能になる。この中空軸(28)は2段目ケーシング(3)の入力接管と協働するようになっており、そうすることでケーシング(5)とすなわち原動機(1)がこの接管に対し自由に回転できるようになっている。このケーシング(3)と原動機(1)の角度は、原動機の振動が少ない方向に合うように選ばれる。
【0290】
ここで、原動機は二つだけの振動緩衝体に取り付けられている。その固定用の穴(30)が示されている。しかしながら、このような緩衝体の数と特徴は、1段目ケーシング(5)のねじれやたわみにおける堅さを考慮して各々の原動機に合う様に適応させなければならない。
【0291】
この図で、弾性ワッシャーを押さえるナットからなる、トルクリミッタの調整装置(29)が見られる。同様に、原動機(1)の手動始動機構(92)の位置も見られる。この機構(92)は従来型の引きひも始動機である。始動用引き手は適切な転換により有利なようにサドルとハンドルの間に設置される。
【0292】
図4は、トルクリミッタ(6)の断面図を示している。大きな1段目プーリ(31)は自己潤滑性軸受け(33)により、シャフト(32)上で自由に回転できるようになっている。フリクションプレート(34)は軸(32)に締め付けて取り付けてある。これら2つの装置は軽合金製でもよいが、高品質バージョンでは、表面処理により摩擦面を補強する。この処理は硬質陽極処理でもよい。フリクションパッキン・ワッシャー(35)はここでは非常に柔らかい滑りを提供できるよう皮革製だが、より従来的なフリクション素材も適する。このワッシャー(35)は皮革の場合穴を、そして剛性のフリクション素材の場合は放射状の溝を含み、ほこりの冷却と排出を助ける。プーリ(31)は軸スラストをベアリング(36)から受ける。場合によっては、スラストと両立する場合、このベアリング(36)は内部隙間を大きくした単なる玉軸受でもあり得る。このベアリングはやや斜線接触のベアリングのように作動し、コスト的に大きく有利である。このベアリング(36)は軸スラストを引っ張り棒(37)から受け、引っ張り棒はシャフト(32)に弾性ワッシャー(39)を押し付けるナット(38)によって圧力がかかっている。トルクの制限された運動は続いて2段目の小プーリ(17)に伝達される。
【0293】
図5は、ペダル装置の断面図を示している。リングギア(10)によりペダル装置に動力が到達し、そのリングギアはリングギア支持体(41)によってフリーホイール(12)に取り付けられている。このフリーホイール(12)はボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)(43)の中に設置された回転するスペーサー(42)に取り付けられている。
【0294】
提示されているセッティングでは、自転車用の標準的なフリーホイールの使用が可能である。このことは経済的に大きな利点である。何故ならば、強力なトルクに耐え得る軽量のフリーホイールの設計は容易ではないからである。ここでは回転時の連結は、フリーホイール(12)を回転するスペーサー(42)の肩(44)止めでねじ留めされ、確実にされている。
【0295】
スペーサー(42)は、チェーンリング支持体(46)を通してチェーンリング(13)(45)に運動を伝達する。このチェーンリング支持体(46)の回転時の停止はここでは回転するスペーサー(42)上の左のねじ切りによって確実にされている。このチェーンリング支持体(46)はケースの右側ベアリング(47)止まりになっている。スペーサー(48)は締め付け軸抗力を受けて左側ベアリング(49)に伝達し、左側ベアリングはこれを回転するスペーサー(42)の肩(50)に向ける。ボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)(43)の中にねじ留めされたナット(51)が左側ベアリング(49)をケースの中で動かなくしている。
【0296】
この設置により、単独でも複数枚組みでも殆どのチェーンリング(13)(45)の取り付けが可能となる。また、後輪はディレイラー式や、遊星歯車式または混合のギアチェンジを受けることができる。
【0297】
回転するスペーサー(42)は、回転するスペーサー(42)の中をボトムブラケット軸(53)が回転できるようにするための軸受け(52a)(52b)を含む。回転するスペーサー(42)の中のボトムブラケット軸(53)の相対運動は臨時的なもののため、これらの軸受け(52)は簡単な減摩性合成樹脂製の軸受け、または鋼鉄製軸受けをPTFEで覆ったものにしてもよい。これは特に経済的で軽量でかさばらない。
【0298】
ボトムブラケット軸(53)は、ここでは右クランクハンドル(25)にはめ込まれかしめられている。右クランクハンドルは、ここでは右クランクハンドル(25)の肩(54)の止めでねじ留めされた自転車タイプのフリーホイール(26)を受けている。
【0299】
このフリーホイール(26)のリングギアの歯または穴は、チェーンリングの支持体(46)と連動するねじの円筒形頭と協働してペダリングのトルクをチェーンリングの支持体(46)に伝える。このセッティングは、フリーホイールとチェーンリングの支持体間の同心性および軸あわせ上の小さな欠陥を許し、製作を簡単にする。
【0300】
ボトムブラケット軸(53)のもう一端は軸に沿った縦溝があり、左クランクハンドル(56)も同様で、かつ締め付けのための仕組み(47)も有する。左クランクハンドル(56)はフリクションワッシャーに当たる止めの位置に締め付けて設置され、ペダル装置の横方向の遊び調整を可能としている。
【0301】
図6は、フリーホイール(26)とチェーンリングの支持体(46)の間の協働をより詳細に示している。ここで自転車タイプのフリーホイール(26)のリングギア(59)は歯ではなく穴4つ(58)を含む。チェーンリングの支持体は、ねじの円筒形頭(55)を受けるための4つの座ぐり加工(60)を含む。このねじの頭(55)はフリーホイール(26)の穴(58)から伝達されるトルクを受ける。この仕組みは穴(58)の代わりに歯を含むリングギア(59)でも正しく機能するが、無論、座ぐり(60)が歯の溝に対応することが条件となる。
【0302】
図7は、1次トランスミッションの柔軟なケーシング(5)の2段目ケーシング(3)への接合点を示している。この接合は、ケーシング(5)の中空軸(28)の2段目ケーシング(3)の入力接管(40)上での自由回転によって実行される。
【0303】
1段目ケーシング(5)がねじれについて剛性が低くなるようにするため、1段目ケーシングのふた(図示されていない)はねじ穴(61)に合わせ、中央でねじによって固定される。
【0304】
管の空気吸い込み穴(21)も見える。これは原動機の吸気のために、2段目ケーシング(3)に空気が入るようにするためである。
【0305】
いくつかのレイアウトは図示されていないが、遠心式クラッチは、可能な限り軽量となるように原動機上に設置される。1段目の出口に設置することもあり得るが、その場合、重量がより重くなり、クラッチ接続の正確な回転数を得るために、製作により大きな困難を伴うだろう。これに対し、このクラッチを1次トランスミッションの出口に位置させると、原動機を軽くし原動機の支持体を重くするので、重量配分を改善する。このことは、原動機の弾性固定具(7)の機能に有益で、かつ原動機の幅を減少させる。
【0306】
図示されていない気化器は、原動機の支持体(3)上の、できれば原動機の防音ケーシング(図示されていない)の外に固定され、原動機の運動に耐えることのできる柔軟な導管を通って原動機に供給する。この導管の長さと直径は、望まれる回転数に原動機のトルクを確立しやすくするよう合わせられる。
【0307】
エアフィルタは、気化器と原動機の支持体であるケーシング(3)の間に位置して、原動機を、2次トランスミッションの放出する繊維やゴムから保護するようになっている。より粗い、別のフィルタを、トランスミッションを保護するように、2段目ケーシング(3)の空気流入孔(21)に位置することができる。
【0308】
原動機の防音用覆い(図示されていない)は、減速1段目のケーシング(5)を包み込み、自転車後方に向けられた冷却用空気入り口を含むのが有利である。この空気入り口にはハニカム状の消音器を備えるのが有利である。原動機が液体冷却式なら、これはラジエータになり得る。この覆いは、原動機の支持体(3)上に固定され、原動機の支持体(3)上にかつ互いに固定された半分に別れた中空パーツ二つ、からなり、スキーブーツタイプのレバー式固定具で固定されている。この防音ケーシングは合成樹脂製の発泡素材でできており、内側には音声緩和素材の裏打ちを含む。ここではウールフェルトである。
【0309】
原動機は、力学的バランスシャフトを一つまたは二つを備えるのが有利である。同様に冷却方式は液体の方が好ましい。ここで原動機は、連続でファンを駆動し、空気の流れは防音用覆い(図示されていない)の中に入り、そこからまた出る。従って、原動機は閉じ込められている訳ではない。
【0310】
スロットルは、ブレーキ作動があるまで、要求されたポジションで安定するレバーで構成される。この機能は、このスロットルレバーの摩擦を増大させる要素に作用するブレーキグリップの復元力によって確保される。これはハンドル上のブレーキグリップのどちらかの上、好ましくは右側に設置される。
【0311】
コンタクトブレーカーはこのレバーを低速回転ポジションを強制的に超えたポジションで操作される。
【0312】
図示されていない第1の変形によると、1次トランスミッション上で広い幅が利用可能なため、マルチV平ベルトの使用が可能である。これらのベルトの利点は直径の小さいプーリに巻きつくことができることである。小プーリ上でベルトを張り、接触弧を長くするために引き締め用の溝車が必要になり得る。これらのベルトの効率は歯付きベルトより良くなく、トランスミッションを換気のないケーシングに閉じ込めることが、不可能ということもあるだろう。この場合、トランスミッションは、原動機の防音用の覆いの中に設置されるのが有利である。別の解決法は、原動機の吸い込みを1次ケーシングの内側にすることである。一般的にこれで十分な換気になる。この場合、導管が2次ケーシング(3)から1次ケーシング(5)へと空気を導く。このような想定の場合、エアフィルタは原動機を埃から保護するために適切な箇所に移動される。
【0313】
図示されていない第2の変形によると、クランクハンドルの片方が、ここでは合成樹脂製の円盤を受ける。この円盤は、衣服と右または左のトランスミッション・リングギアの接触を避けるのに役立つことができる。しかしその主要な機能は、クランクハンドルの回転センサーと協働することである。
【0314】
このために円盤の周辺部には穴または歯を含み、センサーはそれから動きと方向を感知する。
【0315】
オールオアナッシング方式のサーボモータがスロットルケーブルの被覆に作用する。回転センサーがクランクハンドルの順回転を検出した場合、サーボモータは被覆を長くし、スロットルを有効状態にする。
【0316】
図示されていない第3の変形によると、原動機は、液体冷却式で防音用の覆いの中に完全に閉じ込められている。冷却用空気の流れはこの覆いの中を通過しない。車両速度による空気の流れに晒されたラジエーターは、車両の通常の冷却を確保するが、この流れが不十分の時、電動ファンがこれを補強する。
【0317】
ラジエーターが原動機の支持体(3)上に1次トランスミッション(5)と対称に設置されれば、自転車の利用者に与える熱による不快感を全く引き起こさない。
【0318】
このバージョンでは、排気管の、防音用覆いの内側にある部分は、防音ジャケットで二重になっている。
【0319】
図示されていない第5の変形によると、3段目のチェーンが歯付きベルトにより代替されている。このベルトの幅は、フレームのチェーンステーの存在によって制限されるため、この変形では大きな動力を発揮し得ない。
【0320】
図8は、第2の特定の実施例の斜視図を示している。ここで補助装置は、全て歯付きベルトで製作されたペダル装置原動機ブロックにより構成されている。原動機(101)とその1次減速用ケーシング(105)は、ここでは図の便宜上、メインケーシング(103)の軸上に設置されている。しかし、そのケーシング(105)と原動機(101)は、配置や振動対策上の理由から別の向きになってもよいことは明らかである。メインケーシング(103)への入力は、チェーンライン側からされ、ここでは右側である。
【0321】
このタイプの補助装置は、従来品ではない自転車フレーム上に取り付けられる。このフレームは、とりわけボトムブラケット・シェル(ペダル装置ケース)がない。メインケーシング(103)は、図示されていない固定用取付けタブを含み、これらはケーシングをフレームに固定し、原動機の弾性固定具を受けるのを可能とし、場合によってはリアサスペンションのトレーリングアームを受けることもできる。そのケーシング(105)は第1の実施形態と同じ機能を有し、自転車のトランスミッションを保護するトルクリミッタ(106)も同じく。
【0322】
また、このような補助装置つきの場合、車両は自転車にあまり似ず、視覚的にそれ以上に原動機付自転車に類似している。
【0323】
図9は、4つの段を含む補助装置の運動機構を示している。ここでクラッチ(162)は1次トランスミッションの小プーリの外側に移され、このことは原動機がクランクハンドルが行き来する領域に入らなければ、もう少し幅の広い原動機を可能にする。
【0324】
運動機構は、次のとおり、原動機がクラッチベルと連動し、駆動軸のまわりで自由回転状態の1段目の小プーリを通じて、運動をクラッチ(162)に伝える。
【0325】
運動は続いてトルクリミッタ(106)の役目も担う1段目の大プーリまで進み、大プーリはそれを中間軸(163)に伝達する。運動は続いて中間軸(163)上に固定された2段目の小プーリ(164)へと進む。そして運動は2段目の大プーリ(165)へ進むがこの大プーリは3段目の小プーリ(166)と連動し、これ全てがボトムブラケット軸上で自由回転状態にある。運動は続いて3段目の大プーリ(167)へ向かい、この大プーリは4段目の小プーリ(168)と連動し、これ全てが中間軸(163)上で自由回転状態にある。終に運動は4段目の大プーリ(169)に到達し、この大プーリは運動をフリーホイールを経て回転するスペーサーに伝達し、このスペーサーはチェーンリング支持体(146)に運動を伝達する。クランクハンドルからチェーンリング支持体(146)に伝達される運動は、第1の実施形態のように実行される。
【0326】
この実施形態では、後の3段で大小のプーリは歯数もピッチも同じでよく、幅だけが伝達するトルクによって変化する。ここでは減速率はそれぞれの段で3に近く、5 mmのピッチが選ばれている。
【0327】
図10は、二つ目の実施形態の断面の斜視図を示している。この図が示すように、この実施形態は、全体的に特に空気が多く入っており、この実施形態は非常に軽量になれる。
【0328】
当然メインケーシング(103)は原動機の吸気のための吸気装置として役立つ。そのため、全ての玉軸受または針状ころ軸受は密閉され、全耐用期間減摩タイプのものである。
【0329】
この視点からは1段目ケーシング(105)の接合点が中空軸(128)のおかげでケーシング(103)の入力接管(140)のまわりを回転できる。回転するスペーサー(142)は、第1の実施形態より短い。4段あるにも関らず、効率が比較的良い理由は、殆どの摩擦が低い差動速度で行われ、ここでは後の3段で摩擦トルクは駆動力となっているからである。
【0330】
しかしながら各段で利用可能な幅が狭いため、許容動力は限られる。
【0331】
図11の断面図は、各機能で利用可能なスペースの使用がよく見える。図をわかりにくくしないために断面の線影は書き込まれていない。メインケーシング(103)の分割面は自転車の中心面の軸上にある。ここで図はクランクハンドルの自転車の中心面からのずれを、配置の章で述べた100 mm以下の値に抑えている。
【0332】
また原動機はクランクハンドルの行き来するエリアに入らなければ、もう少し幅が広くなることができることもわかる。
【0333】
いくつかの配置はそれをペダリング・エリアの外に設置することも許し、そのことは更に幅の広い原動機を可能にするが、偏心させることが条件となる。
【0334】
カウンタシャフト(163)と左クランクハンドル(156)の間の大きなスペースが使われていないのがわかる。この空間をどのように最適に利用できるか、第3の実施形態で見ていくが、それはこの第2の実施形態に適用できる解決法である。
【0335】
図示されていない変形によると、減速装置のケーシング(103)は仕切られ、最後の段はチェーン式である。
【0336】
図示されていない変形によると、ケーシングは仕切られ、最後の段は歯車装置式で、追加の歯車装置が軸距の差を補う。
【0337】
図12は、第3の実施形態の運動機構の斜視図を示す。これは特段にコンパクトなペダル装置原動機ブロックとして組織され、減速の段3段のみによって構成されている。1段目はベルト式で後の2段は歯車装置式である。
【0338】
この実施形態の主要な特性は、1段目の大プーリ(231)がボトムブラケット軸(253)と同心になっていることである。このセッティングは、このプーリが非常に大きな直径となることを可能にし、自転車の最低地上高を減少するのを認めれば、自転車のトランスミッションの大きいチェーンリグ(213)の直径を超えることもできる。
【0339】
このプーリ(231)は運動をトルクリミッタ(206)に伝達し、これは2段目の小さい小歯車(281)に、回転するスペーサー(282)を通じて運動を伝達する。運動は続いて2段目の大きい小歯車に進み、これは3段目の小さい小歯車(284)と連動している。この小歯車(284)は従って運動を大きい小歯車(285)に伝達し、これはチェーンリングの支持体(227)に、フリーホイールと第2の回転するスペーサーを通じて運動を伝達する。
【0340】
1段目の大きな減速率は速度を制限することを可能とし、従ってその後の歯車式の2段のノイズも制限する。ベルト式の1段目はトランスミッションにある程度の弾力性をトランスミッションに与え、周期振動を緩衝する。
【0341】
この1段目は、ここではマルチV平ベルトで製作されている。引き締め用溝車を付け加えることができる。これは張りの調節をし、ベルト(286)の1段目の小プーリへの巻きつき弧を長くするのを可能とするためである。
【0342】
他の実施形態と同じようにこの1次トランスミッションは有利なように1段目の弾性ケーシングの中に設置される。
【0343】
図13は、3つの軸(ペダル装置、中間軸、原動機)を通る面の断面から見た運動機構を示す。ここでは図示上の理由でこれらの軸を並べてある。大プーリ(231)を特殊なレイアウトの仕方をすることでベルトの行程(287)を左クランクハンドル(256)の内面(288)より向こう側にずらすことを可能とする。このレイアウトは他の機械装置を配置するためのスペースを沢山空け、原動機(201)の幅をより広くすることを可能にする。このレイアウトは第2の実施形態の2段目に適用できる。
【0344】
図で原動機(201)はクランクハンドルの行き来するエリアに入らず、この場合、遠心式クラッチ(262)を小プーリ(289)の外側に場所を移すことも原動機のために幅を空ける。
【0345】
図示されていないメインケーシングはランク装置のベアリング(290a)(290b)および中間軸(291)のベアリングを支え、オイルが入る。これは従って原動機の吸気装置として役立つことはできない。
【0346】
第1の変形によると、1段目は歯付きベルト式である。
【0347】
図示されていない第2の変形によると、2段目と3段目は歯付きベルト式である。
【0348】
図示されていない第3の変形によると、非常に幅が狭く、好ましくはバランスの取ってある原動機は減速装置と単一で堅固なブロックを形成し、その3段とも歯車装置式で、全てケーシングの中に包含される。いずれかの段に周期振動緩衝器が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自転車のような、ペダルとギア変速装置を備える軽車両用のペダリングを補助する装置で、軽車両利用者の人力によるペダリングからの動力を受けるエレメントと機械的に結合された減速装置を備えた熱機関(1;101;201)を含み、その機械的な結合は前記ギア変速装置の手前で実行され、熱機関が前記変速を享受するようになっている装置において、前記熱機関と機械的結合の間の熱機関の減速装置の運動機構上に設置された、トルクリミッタ(6; 106; 206)を含む補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載された前記装置において、前記トルクリミッタは前記減速装置の減速1段目の大きな車上に設置される装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された前記装置において、前記トルクリミッタはできる限り正確に前記熱機関の最大トルクをこのトルクリミッタが設置されている減速装置の箇所に伝達できるよう設定されている装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載された前記装置において、前記熱機関の前記減速装置が少なくとく2段の減速段を含み、前記原動機のトルクの周期的変動の緩衝及び/又は平滑化の手段(10, 11; 16, 18)を内包する装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された前記装置において、前記機械的結合は前記軽車両のペダル装置のレベルで実行される装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載された前記装置において、前記ギア変速装置の遊星歯車式手段による変速を行う車輪ハブの入力軸上で機械的結合は実行される装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載された前記装置において、原動機が止まった状態で、減速装置の駆動なしに、ペダリングによって車両の利用を可能にするに適した第1のフリーホイール(12)を内包した装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載された前記装置において、後ろへペダリングを可能にするに適した第2のフリーホイール(26)を内包した装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された前記装置において、前記トルクリミッタは伝達すべきトルクが設定トルク以下の場合このトルクを完全に伝達し、伝達すべきトルクが設定トルクより大きい場合は設定トルクを伝達するのを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載された前記装置において、駆動軸に戻されるトルクリミッタの設定トルクは熱機関が産出する最大トルクより大きい装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに従う補助装置を含む、特に自転車のような軽車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−219094(P2011−219094A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141782(P2011−141782)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2010−514031(P2010−514031)の分割
【原出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(510000596)
【出願人】(500348697)コミッサリア ア レネルジー アトミーク (21)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L´ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblance, Batiment le Ponant D 7501 5 Paris, France