自転車
【課題】 スタンド操作の際の足や外部の物でセンサが衝撃を受けることを防止できる車速検出装置を備えた自転車を提供すること。
【解決手段】 車体10aの後部の車軸支持部26aに後輪12の車軸12aを支持させて、車軸支持部26aの近傍に片足スタンド42を取り付け、チェーン27を介した駆動力により後輪12を駆動するようにするとともに、車軸支持部26aにチェーン引き機構を取り付けて、チェーン引き機構の後端部を車軸支持部26aよりもさらに後方に位置させた電動補助自転車10に車速検出装置30を設けた。車速検出装置30を、後輪12に設けたマグネット32と、車軸12aの移動に伴って移動するセンサ用ブラケット33を介して車体10aの後部に取り付けたセンサ37とで構成し、センサ37を、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体10aの後部よりも車体幅方向の内側に配置した。
【解決手段】 車体10aの後部の車軸支持部26aに後輪12の車軸12aを支持させて、車軸支持部26aの近傍に片足スタンド42を取り付け、チェーン27を介した駆動力により後輪12を駆動するようにするとともに、車軸支持部26aにチェーン引き機構を取り付けて、チェーン引き機構の後端部を車軸支持部26aよりもさらに後方に位置させた電動補助自転車10に車速検出装置30を設けた。車速検出装置30を、後輪12に設けたマグネット32と、車軸12aの移動に伴って移動するセンサ用ブラケット33を介して車体10aの後部に取り付けたセンサ37とで構成し、センサ37を、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体10aの後部よりも車体幅方向の内側に配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪に取り付けられた被検出物と、車体フレームにブラケットを介して取り付けられ、被検出物を検出するセンサとを備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、電動補助自転車や自動二輪車などの車両や二輪車(自転車)の中には、走行速度を検出する車速検出装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この電動補助自転車では、車速検出装置は、センサプレートと、ピックアップセンサとで構成されている。そして、センサプレートは、後輪のハブとブレーキドラムとの間でハブと一体に固定され、ピックアップセンサは、センサプレートと対向するようにしてブレーキパネルの車幅方向内側の面に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−185682号公報
【発明の概要】
【0004】
このような電動補助自転車においては、チェーンの張り具合を調節するために後輪の車軸を移動させることがあるが、このような場合でも、精度よく車速を検出できるようにするために、センサが車軸の移動に伴って移動するように構成する必要がある。このため、センサは車軸の近傍に配置される。一方、電動補助自転車の場合、通常車体フレームにおける車軸が取り付けられた部分の近傍に、スタンドが取り付けられている。このように、車軸の近傍に、センサとスタンドとが取り付けられた場合に、乗員が足でスタンドを操作する際に、足でセンサに衝撃を加える虞がある。このため、センサは、乗員の足や、外部の物に衝突しない位置に取り付けることが好ましい。しかしながら、前述した従来の電動補助自転車では、スタンドを操作する際の乗員の足や、外部の物に対してセンサが衝突することを防止するための配置は考慮されていない。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、精度よく車速を検出するためにセンサを車軸の近傍に配置した場合であっても、スタンド操作の際の足や外部の物でセンサが衝撃を受けることを防止できる車速検出装置を備えた自転車を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る自転車の構成上の特徴は、自転車(10)の車体フレーム(10a)の後部の車軸支持部(26a)に後輪(12,62)の車軸(12a,52a,62a)を支持させて、車軸支持部の近傍に自転車を起立させるためのスタンド(42,61)を取り付け、チェーン(27,65)を介した駆動力により後輪を駆動するようにするとともに、車体フレームの車軸支持部にチェーンの張り具合を調節するチェーン引き機構(26d,28,29)を取り付けて、チェーン引き機構の後端部を車体フレームの車軸支持部よりもさらに後方に位置させた自転車に設けられ自転車の走行速度を検出する車速検出装置(30)を備えた自転車であって、後輪に取り付けられた被検出物(32)と、車体フレームに車軸の移動に伴って移動するブラケット(33,63)を介して取り付けられ、被検出物を検出するセンサ(37,64)とを備え、センサが、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に配置されていることにある。
【0007】
本発明に係る自転車が備える車速検出装置は、被検出物と、センサとを備えており、被検出物が、後輪に取り付けられ、センサが、車軸の移動に伴って移動するブラケットを介して車体フレームに取り付けられている。また、車軸を支持する車軸支持部の近傍にスタンドが取り付けられている。そして、センサは、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に位置するように配置されている。この場合、被検出物は、後輪におけるセンサに対向する部分に取り付けられる。このため、乗員が足でスタンドを操作する際に、後方から足がセンサに近づいたときには、センサはチェーン引き機構の後端部によって保護され、自転車の側方から足がセンサに近づいたときには、センサは車体フレームの後部によって保護される。
【0008】
同様に、自転車の後部側から物がセンサに衝突しそうになったときには、センサはチェーン引き機構の後端部によって保護され、自転車の側部側から物が衝突しそうになったときには、センサは車体フレームの後部によって保護される。なお、本発明において、自転車とは、電動補助自転車や自動二輪車など駆動装置が備わった二輪車や、駆動装置が備わっていない二輪車の双方である。また、車体フレームの後部とは、チェーンが掛け渡される一対のスプロケット間に設けられるチェーンステーの後部側部分または、チェーンステーの後部に設けられた取付用部材などである。
【0009】
本発明に係る自転車の他の構成上の特徴は、センサが、車軸よりも下方に配置されていることにある。本発明によると、センサが車軸支持部や車体フレームの後部に隠れて見えにくくなるため、センサを設けることによって自転車の美観が損なうことを防止できる。
【0010】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、車体フレームにおける車軸支持部よりも前方部分にコントローラ(25c)が設置され、コントローラとセンサとを接続するリード線(37c)が、少なくとも車軸の近傍において車軸支持部よりも下方に設置されていることにある。本発明によると、リード線の配索が容易になる。また、リード線が車軸支持部や車体フレームに隠れて見えにくくなるため、リード線によって自転車の美観が損なうことを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、ブラケットに、下縁部が前部側よりも後部側が上方に位置するように形成されたセンサ取付部(35b)が備わっており、センサの下端部がセンサ取付部の下縁部の前部側よりも高い位置に位置するようにして、センサがセンサ取付部の後部側に取り付けられていることにある。本発明によると、センサに対して、路上の障害物などが前方から接近した場合に、センサは、ブラケットの前部により保護される。このため、センサに大きな衝撃が直接加わることがなくなる。
【0012】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、センサがスタンドよりも車体幅方向の内側に配置されていることにある。本発明によると、自転車の駐車時と、走行時との双方のときに、センサがスタンドによって保護される。
【0013】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、センサが、自転車の左側に配置されていることにある。通常、チェーンは、自転車の右側に設けられているため、センサを、自転車の左側に配置することにより、センサの設置位置の確保が容易になる。なお、本発明における左側は、自転車に乗車した乗員から見ての左側である。
【0014】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、スタンドが、自転車の左側に配置された片足スタンド(42)であり、センサが車体フレームの車軸支持部よりも下方に配置されていることにある。本発明によると、駐車時に自転車はセンサを覆うようにして左側に傾くようになる。この場合、センサは、自転車の左側から見ると自転車の下部側で奥まった部分に位置するようになる。このため、センサは外部からの打撃をさらに受けにくくなる。
【0015】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、チェーン引き機構が、車軸支持部から後方への突出量を増すことにより車軸を後方へと移動させるようにしたことにある。この場合、車軸が後方へ移動する量は、チェーン引き機構の車軸支持部から後方への突出量の増加量相当であることが好ましい。本発明によると、チェーンの張り具合を調節するために車軸を後方に移動させると、ブラケットに取り付けられたセンサも一緒に後方に移動する。このため、車軸の位置を前後に変更しても、後輪に取り付けられた被検出部に対するセンサの位置は一定になる。この際、センサの位置が移動しても、チェーン引き機構の車軸支持部から後方への突出量も同様に増加するため、センサがチェーン引き機構によって確実に保護される。
【0016】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、チェーン引き機構が、車軸支持部に設けられ車軸を前後方向に移動可能に支持する車軸支持溝(26d)と、車軸に係合して車軸支持部より後方に延びるねじ部(28)と、車軸支持部の後部に設けられねじ部と螺合できるナット(29)とを備え、ナットを回転させることにより、ねじ部が車軸とともに車軸支持溝に対して移動するようにしたことにある。この場合、ブラケットに挿通穴(34c)が形成され、挿通穴に車軸を挿通させた状態で、ブラケットが車体フレームに取り付けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によると、チェーンの張り具合を調節するために車軸を前後方向に移動させると、ブラケットに取り付けられたセンサも一緒に後方に移動する。このため、車軸の位置を前後に変更しても、後輪に取り付けられた被検出部に対するセンサの位置は一定になる。また、ねじ部の後端は、チェーン引き機構の後端となる部分であり、車軸が後方に移動したときには、ねじ部も後方に移動し、車軸が前方に移動したときには、ねじ部も前方に移動する。このため、車軸の位置にかかわらず、センサは、自転車の後部側から物が衝突しそうになったときには、ねじ部の後端部によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車速検出装置を備えた電動補助自転車を示した側面図である。
【図2】チェーン引き機構を示した斜視図である。
【図3】ねじ部材を示しており、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図4】後輪に車速検出装置およびスタンド用ブラケットが取り付けられた状態を示した側面図である。
【図5】マグネットホルダーを示した側面図である。
【図6】センサ用ブラケットを示しており、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図7】センサ用ブラケットにセンサを取り付けた状態を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】マグネットホルダーとセンサとの位置関係を示した断面図である。
【図9】片足スタンドを備えた電動補助自転車が駐車した状態を示した概略説明図である。
【図10】変形例に係る電動補助自転車の後輪に車速検出装置およびスタンド用ブラケットが取り付けられた状態を示した側面図である。
【図11】両足スタンドを備えた電動補助自転車が駐車した状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車速検出装置30を備えた本発明の自転車としての電動補助自転車10を示している。この電動補助自転車10は、車体10aと、車体10aの前部に取り付けられた前輪11と、車体10aの後部に取り付けられた後輪12とを備えている。車体10aは、ヘッドパイプ13、フロントフォーク14、ダウンチューブ15、シートチューブ16、一対のチェーンステー17および一対のシートステー18(ともに一方しか図示せず)を、以下に説明するように連結して形成されている。
【0020】
ヘッドパイプ13は、車体10aの前部の上方部分に位置する短いパイプからなっており、上部よりも下部が前方に位置するように傾斜して略上下方向に延びるように配置されている。フロントフォーク14は、ステアリング軸14aと、ステアリング軸14aの下端から二股に分岐したフォーク本体14bとで構成されており、ステアリング軸14aの下部側部分をヘッドパイプ13内に、回転可能に挿入してヘッドパイプ13に組み付けられている。このため、ヘッドパイプ13の下方には、二股に分岐したフォーク本体14bが突出している。また、ヘッドパイプ13の後部中央には、後方斜め下に向かって傾斜して延びるダウンチューブ15が連結されている。
【0021】
そして、ダウンチューブ15の後端側に、ヘッドパイプ13およびフロントフォーク14と略平行するシートチューブ16が配置されている。シートチューブ16の下端部は、ダウンチューブ15の後端部に連結されており、そのダウンチューブ15とシートチューブ16との連結部の下方には、後述するペダルクランク部24が設けられている。このペダルクランク部24の左右両側から、一対のチェーンステー17が互いに間隔を保って後方に延びている。そして、シートチューブ16の上部から、二股に分岐したシートステー18が互いに間隔を保って後方斜め下に向かって傾斜して延びている。シートステー18の分岐した後端部は、それぞれ一対のチェーンステー17の後端部に連結されている。
【0022】
そして、このように構成された車体10aのステアリング軸14aの上端にハンドル21が取り付けられている。ハンドル21の左右両端には、グリップ21aが設けられ、グリップ21aの近傍には、それぞれ、ブレーキレバー22が設置されている。また、シートチューブ16の上端にサドル23が上下に位置変更可能な状態で取り付けられている。そして、ダウンチューブ15、シートチューブ16およびチェーンステー17が連結される部分に、運転者が駆動力を入力するためのペダルクランク部24が設けられている。
【0023】
このペダルクランク部24は、ペダルクランク軸24aと、ペダルクランク軸24aに連結されたスプロケット(図示せず)と、クランクアーム24bと、クランクアーム24bを介してペダルクランク軸24aに連結されたペダル24cとを備えている。また、ペダルクランク部24の大部分はカバー部材によって覆われており、カバー部材の内部には、ドライブユニット25が収容されている。このドライブユニット25は、ペダル24cに加えられた力を検出するセンサ25a、電動モータ25b、コントローラ25cなどから構成されており、運転者によるペダル踏力と、電動モータ25bからの補助力がスプロケットに伝達される。このスプロケットは、ペダルクランク部24の右側部分に設けられている。なお、この右側部分は、サドル23に座った運転者から見て右側部分で、以下、左右方向は、サドル23に座った運転者から見た方向として説明する。
【0024】
前輪11は、フロントフォーク14の下端部に回転可能に支持されている。すなわち、フロントフォーク14の両下端部は前輪11の車軸11aの両側部分を回転可能に支持しており、これによって、前輪11は、車軸11aを中心として回転可能になっている。このため、ハンドル21を操作することにより、フロントフォーク14のステアリング軸14aを軸周り方向に回転させると、ステアリング軸14aの回転量に応じて前輪11は左右に方向を変える。
【0025】
一対のチェーンステー17の後端部と、一対のシートステー18の後端部とは、それぞれ一対の後輪ブラケット26(図2参照)によって連結されており、後輪12は、この一対の後輪ブラケット26によって回転自在に支持されている。このため、後輪12は、一対のチェーンステー17間および一対のシートステー18間に位置している。後輪ブラケット26は、図2に示したように、後輪12の車軸12aを支持する車軸支持部26aと、車軸支持部26aの前部から前方に延びてチェーンステー17の後端部に溶接によって連結された水平連結部26bと、車軸支持部26aの上部から前方斜め上方に延びてシートステー18の後端部に溶接によって連結された傾斜連結部26cとで構成されている。
【0026】
そして、車軸支持部26aの中央部分に左右に貫通して前後に延びる略長円形の車軸支持溝26dが形成されている。また、後輪ブラケット26の外側面は滑らかな平面で構成されている。そして、各車軸支持部26aの車軸支持溝26dに、後輪12の車軸12aの両側部分が支持されており、これによって、後輪12は、車軸12aを中心として回転可能になっている。なお、車軸12aは、後輪12の中心に位置する円筒状のハブ12bの両端の中心からそれぞれ外部に向かって延びており、ハブ12bに対して回転自在になっている。そして、ハブ12bの両側にフランジ状部分が設けられ、その右側の面にスプロケット(図示せず)が取り付けられている。このスプロケットとペダルクランク部24のスプロケットとの間にはチェーン27が掛け渡されている。
【0027】
また、車軸支持部26aにおける車軸支持溝26dの後部側の内面と後部外面との間には、ねじ挿通穴が形成されており、このねじ挿通穴に、チェーン27の引っ張り具合を調節するためのねじ部材28が挿通している。ねじ部材28は、図3(a),(b)に示したように、リング状の係合部28aと、係合部28aの後部から後方に延びるねじ部28bとで構成されており、係合部28aは、後輪12の車軸12aが回転することなく挿通できるように形成されている。そして、係合部28aに車軸12aが挿通して互いに係合したときに、ねじ部28bの後部は、車軸支持部26aの後部から突出する。
【0028】
また、ねじ部28bにおける車軸支持部26aから突出した部分に、ナット29が螺合している。このため、ナット29を回転することにより、ねじ部28bにおける車軸支持部26aから突出した部分の長さを調節することができ、これによって、後輪12の車体10aに対する前後の位置を変更してチェーン27の引っ張り具合を調節することができる。なお、車軸支持溝26dを備えた車軸支持部26a、ねじ部材28およびナット29で本発明に係るチェーン引き機構が構成される。
【0029】
車速検出装置30は、図4に示したように、後輪12のハブ12bと、左側に位置する後輪ブラケット26とを介して設けられている。すなわち、車速検出装置30は、円板状のマグネットホルダー31に設けられたマグネット32(図5参照)と、センサ用ブラケット33に設けられたセンサ37(図7(a),(b)参照)とで構成されており、マグネットホルダー31は、後輪12のハブ12bの左側に位置するフランジ状部分の左側の面に取り付けられ、センサ用ブラケット33は、左側に位置する後輪ブラケット26に取り付けられている。マグネット32は、図5に示したように、S極とN極とからなる12対のマグネットで構成されており、マグネットホルダー31の外周側に、S極のマグネット32とN極のマグネット32とが交互に位置するようにして配置されている。また、マグネットホルダー31の外周部には、マグネットホルダー31をハブ12bに取り付けるための3つの締結部31aが形成されている。
【0030】
センサ用ブラケット33は、本発明に係るブラケットを構成するもので、板部材を折り曲げ加工することにより形成されている。このセンサ用ブラケット33は、図6(a),(b)に示したように、固定片34と、センサ取付片35と、固定片34とセンサ取付片35とを連結する連結片36とからなっている。固定片34は、後輪ブラケット26の外側表面に沿える略矩形の平面状部34aと、平面状部34aの後端(図6の右側)中央部分で、平面状部34aに直交して平面状部34aの裏面側(車体10aの幅方向の内部側)に突出する回転防止部34bとを備えている。そして、平面状部34aにおける回転防止部34bの前方には挿通穴34cが形成されている。
【0031】
回転防止部34bの上下方向の幅は、車軸支持部26aの車軸支持溝26dの上下方向の幅よりも僅かに短く設定され、挿通穴34cの直径は、車軸12aの直径よりも僅かに長く設定されている。そして、固定片34は、後輪ブラケット26の外側表面に平面状部34aを沿わせて、挿通穴34cに車軸12aを挿通させたときに、回転防止部34bが、車軸支持溝26dの内部に位置し、下端縁部が後輪ブラケット26の下端縁部に沿うように構成されている。また、固定片34の下部は前部側に切欠き部を設けることによって幅が狭くなっており、その幅狭部分の下端に連結片36が連なっている。連結片36は、固定片34に直交して車体10aの幅方向の内部側でかつ前方に向かって傾斜して延びている。
【0032】
センサ取付片35は、前後に細長く曲がった部分で構成されており、連結片36の内部側端部から連結片36に直交して下方に延びている。このセンサ取付片35は、連結片36に連結された部分よりも前部側が水平方向に延びる幅の狭い幅狭部35aで構成され、連結片36に連結された部分から後部にかけての部分が、幅狭部35aよりも幅が広く前部側よりも後部側の方が高くなるように傾斜したセンサ取付部35bで構成されている。そして、幅狭部35aの前部側部分の上下にそれぞれ小さな略半円状の切欠き部35cが形成され、センサ取付部35bの後部には位置決め穴35dが形成されている。また、センサ取付部35bの前後方向の中央には、センサ取付部35bの前後の部分よりも外部側に突出することにより内部側が窪んだ段部35eが形成されている。
【0033】
センサ37は、図7(a),(b)に示したようにして、センサ取付片35のセンサ取付部35bの内側面に取り付けられている。センサ37は、検出部37aと、検出部37aをセンサ取付部35bに固定するための取付部材37bとで構成されている。取付部材37bは、検出部37aの表面を露出させて検出部37aを収容した状態で、センサ取付部35bの表面、周面および裏面の外周部を覆っており、位置決め穴35dに対応する部分には、位置決め穴35dに嵌合する突起が形成されている。
【0034】
また、センサ37は、段部35eを利用してセンサ取付部35bに設置されている。このため、センサ37は、位置ずれすることなくセンサ取付部35bの内側面に固定されている。センサ37の後部からは後方(図7の右側)に向かってリード線37cが延びており、このリード線37cは、切欠き部35cの部分で、結束バンド38によって幅狭部35aに固定されている。リード線37cは、チェーンステー17の下部に沿って前方に延び、その先端部は、ドライブユニット25のコントローラ25cに接続されている。
【0035】
この場合、センサ37が取り付けられたセンサ用ブラケット33は、後輪ブラケット26に取り付けられることよって左右方向にずれることを防止され、車軸12aによって後輪ブラケット26の表面に沿って位置ずれすることを防止され、車軸支持溝26dへの回転防止部34bの係合によって車軸12aの軸周り方向に回転することを防止される。このため、センサ37は、車軸12aに対して一定の位置に保持される。これによって、図8に示したように、センサ37のマグネットホルダー31に対する位置関係も常に一定になる。
【0036】
図8は、マグネットホルダー31とセンサ37とが配置された部分を略水平方向に切断した面を略下方から見た状態を示した断面図であり、マグネット32とセンサ37とは近接した状態で配置されている。また、マグネット32とハブ12bとの間には、ダンパ31bが設けられている。この場合、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部よりも前方で、車軸12aよりも下方に位置している。さらに、センサ用ブラケット33のセンサ取付片35が固定片34よりも車体幅方向の内側に位置し、そのセンサ取付片35の内側面にセンサ37が取り付けられているため、センサ37は、後輪ブラケット26よりも車体幅方向の内側に位置している。
【0037】
また、図4に示したように、センサ用ブラケット33の固定片34を覆うようにして、後輪ブラケット26には、スタンド用ブラケット41が取り付けられ、このスタンド用ブラケット41を介して片足スタンド42が取り付けられている。そして、スタンド用ブラケット41と片足スタンド42との間には、ばね43とロックレバー44とが設けられている。スタンド用ブラケット41は、車軸12aが挿通できる挿通穴を備えた固定部41aと、片足スタンド42が取り付けられる取付部41bとを備えており、挿通穴に車軸12aを通し、固定部41aで、後輪ブラケット26の前後の上面と、固定片34の表面とを覆うようにして後輪ブラケット26に取り付けられている。
【0038】
そして、スタンド用ブラケット41の表面で車軸12aにナット45を螺合させて締め付けることにより、車軸12a、センサ用ブラケット33およびスタンド用ブラケット41が後輪ブラケット26に固定されている。なお、車軸12aの左右両端にはそれぞれねじが形成されており、このねじとナット45が螺合する。また、車軸12aの右側端部にもナットが螺合しており、このナットと車軸12aとの螺合により、車軸12aの右側端部が右側の後輪ブラケット26に固定されている。
【0039】
片足スタンド42は、軸部42aを介して、取付部41bに回転可能に取り付けられている。この片足スタンド42は、軸部42aを中心として、下方位置と後方略水平位置との間で回転し、図9に示したように、下方に位置しているときに、電動補助自転車10を支持して起立状態に維持する。このとき、電動補助自転車10は、やや左側に傾斜する。また、電動補助自転車10を走行させる際には、図1に示したように、片足スタンド42を後方略水平位置まで回転させる。この片足スタンド42の各状態は、ばね43によって維持される。
【0040】
すなわち、ばね43は、一端が、取付部41bにおける軸部42aよりも車軸12aに近い部分に係止され、他端が、ロックレバー44を介して、片足スタンド42における軸部42aよりも先端側部分に連結されている。このため、図1の状態では、片足スタンド42は、ロックレバー44を介してばね43によって上方に付勢される。また、片足スタンド42が下方に位置しているときには、ばね43(両端を結ぶ線)が軸部42aよりも前方に位置するようになり、片足スタンド42は、ロックレバー44を介してばね43によって前方に付勢される。
【0041】
ロックレバー44は、一端が、軸部44aによって、片足スタンド42に回転可能に連結され、中央部分に、ばね43の他端が係止されている。このロックレバー44は、軸部44aを中心として、片足スタンド42に対して、接近した状態とやや離間した状態とで回転でき、片足スタンド42を下方に位置させた状態で、片足スタンド42に接近させることによりロック機能が働いてその状態が維持される。また、ロックレバー44を、片足スタンド42に対して離間させたときに、片足スタンド42は回転可能になる。
【0042】
また、フロントフォーク14における前輪11の上部に対応する部分には、前輪ブレーキ22aが設けられ、シートステー18における後輪12の上部に対応する部分には、後輪ブレーキ22bが設けられている。前輪ブレーキ22aと後輪ブレーキ22bとは、それぞれブレーキレバー22の操作により、対応する前輪11または後輪12を制動する。さらに、フロントフォーク14の前部にはバスケット46が設置されている。
【0043】
この構成において、電動補助自転車10を走行させる際には、まず、片足スタンド42を下げてロックした状態で駐車している電動補助自転車10のロックレバー44を、足で後方に回転させてロックを解除する。そして、片足スタンド42を足で上方に押し上げて電動補助自転車10を走行可能な状態にする。この場合、センサ37は、スタンド用ブラケット41に隠れた部分に位置しているため、足に当たって衝撃を受けることはない。なお、図4では、センサ37の取り付け位置を示すため、スタンド用ブラケット41の一部を切り欠いているが、このスタンド用ブラケット41は、図1に示したように、センサ用ブラケット33の後部を側方から覆うように構成されている。
【0044】
また、電動補助自転車10を走行させている際に、路上の障害物などが前方からセンサ37に接近してきた場合には、センサ37の下端部よりも下方で、かつ前方に、センサ用ブラケット33の下端部が位置しているため、障害物が直接センサ37に衝突することはない。さらに、走行中の電動補助自転車10に側方から物が飛んできてセンサ37に接近してきた場合には、センサ37は、スタンド用ブラケット41によって保護される。これによって、センサ37に対して衝撃が加わることが防止されるか、または、大きな衝撃が加わることが防止される。さらに、電動補助自転車10が停止しているときに、電動補助自転車10の後部側から物が接近してきてセンサ37に衝突しそうになったときには、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部によってその物に衝突することを防止される。
【0045】
そして、電動補助自転車10を停止させた状態で、駐車のため片足スタンド42を足で後方から下方に押圧する際には、センサ37の後方には、ねじ部材28の後端部が位置し、センサ37の左側方には、スタンド用ブラケット41が位置するため、足によってセンサ37が衝撃を受けることはない。さらに、電動補助自転車10が駐車しているときには、電動補助自転車10は、図9に示したように、左側に傾斜した状態になるため、センサ37は、電動補助自転車10の左側から見ると奥まった部分に位置するようになる。このため、外部の物でセンサ37が衝撃を受けることが生じ難くなる。
【0046】
このように、本実施形態に係る電動補助自転車10に備わった車速検出装置30は、マグネット32と、センサ37とを備えており、マグネット32が、後輪12のハブ12bに取り付けられ、センサ37が、センサ用ブラケット33を介して、車体10aの後部に設けられた後輪ブラケット26に取り付けられている。また、車軸12aの左端部には、スタンド用ブラケット41を介して片足スタンド42が取り付けられている。そして、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部よりも前方で、後輪ブラケット26の後部よりも車体幅方向の内側で、さらに、車軸12aよりも下方に位置するように配置されている。また、センサ37の下端部よりも下方で、かつ前方に、センサ用ブラケット33の下端部が位置している。
【0047】
このため、乗員が足で片足スタンド42を操作する際や、外部の物がセンサ37に近づいたときに、センサ37は、ねじ部材28、後輪ブラケット26、スタンド用ブラケット41およびセンサ用ブラケット33によって保護される。これによって、センサ37に衝撃が加わることがなくなるか、または、加わったとしてもその衝撃は直接的なものでないため小さなものとなる。この結果、センサ37が衝撃によって破損したり、センサ37に位置ずれが生じたりすることが防止される。さらに、片足スタンド42が、電動補助自転車10の左側に配置されているため、駐車時に電動補助自転車10はセンサ37を覆うようにして左側に傾くようになる。このため、センサ37は外部からの打撃をさらに受けにくくなる。
【0048】
また、センサ37を、車軸12aよりも下方に配置したため、後輪ブラケット26やスタンド用ブラケット41に隠れて見えにくくなり、センサ37を設けることによって電動補助自転車10の美観が損なうことを防止できる。また、センサ37とコントローラ25cとを接続するリード線37cは、チェーンステー17の下部に沿って延びているため、チェーンステー17に隠れて見えにくくなるため、リード線37cによって電動補助自転車10の美観が損なうことを防止できる。さらに、リード線37cを、チェーンステー17に沿わせたことにより、配索がしやすくなる。
【0049】
また、センサ用ブラケット33を車軸12aに取り付けたため、チェーン27の張り具合を調節するために車軸12aを前後に移動させたときには、センサ用ブラケット33に取り付けられたセンサ37も車軸12aと一緒に移動する。このため、車軸12aの位置を前後に変更しても、後輪12に取り付けられたマグネット32に対するセンサ37の位置は一定になるため、適正な速度検出の維持が可能になる。さらに、センサ用ブラケット33は、後輪ブラケット26の表面と、車軸12aと、車軸支持溝26dへの回転防止部34bの係合とによって車軸12aに対して一定の位置に保持される。これによっても、マグネット32に対するセンサ37の位置にずれが生じることがより確実に防止される。
【0050】
図10は、前述した電動補助自転車10の変形例に係る電動補助自転車が備えるスタンド用ブラケット51を、車軸52aでなく、チェーンステー57とシートステー58との後部に取り付けた状態を示している。チェーンステー57とシートステー58には、それぞれ挿通穴を備えた取付部が形成されており、スタンド用ブラケット51は、3個のボルト51aを介してチェーンステー57とシートステー58とに固定されている。この電動補助自転車のそれ以外の部分の構成は、前述した電動補助自転車10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0051】
この変形例では、チェーン引きのために、車軸52aとともに、センサ用ブラケット33を移動させても、スタンド用ブラケット51の取り付け位置は変更されない。したがって、チェーン引きの操作をスタンド用ブラケット51に関係なく行え、チェーン引きの操作が容易になる。この変形例に係る電動補助自転車のそれ以外の作用効果は、前述した実施形態の作用効果と同様である。
【0052】
また、図11は、前述した電動補助自転車10の他の変形例に係る電動補助自転車の概略を示している。この電動補助自転車には、略コ字状の両足スタンド61が備わっており、両足スタンド61の両端部は、後輪62の車軸62aの両側に、スタンド用ブラケット(図示せず)を介して回転可能に取り付けられている。そして、後輪62と両足スタンド61の左側部分との間で、車軸62aの下側にセンサ用ブラケット63を介してセンサ64が配置されている。このように、電動補助自転車には、片足スタンドでなく、両足スタンド61を設けてもよい。この場合、センサ64は、図11に、二点鎖線で示した後輪62の右側に位置するチェーン65と両足スタンド61の右側部分との間に配置してもよい。
【0053】
また、前述した電動補助自転車10のさらに他の変形例として、前述した車軸支持溝26dを備えた車軸支持部26a、ねじ部材28およびナット29で構成されるチェーン引き機構に代えて、偏心カムを備えたチェーン引き機構を用いることができる。この場合の偏心カムは、車軸が貫通する車軸貫通孔を備えており、車軸貫通孔に車軸が貫通している。そして、偏心カムの外周側には偏心カムに当接するストッパが設けられており、偏心カムが車軸を中心として回転することにより、車軸とストッパとの間の距離が変化する。この車軸とストッパとの間の距離の増減分だけ車軸が移動して、チェーンの張り具合が調節される。この場合も偏心カムの後端は車軸とともに後方への突出量を増すようになる。
【0054】
また、本発明に係る自転車は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜、変更して実施することが可能である。例えば、前述した実施形態では、センサ37,64を、車軸12a,52a,62aよりも下方に配置しているが、センサ37,64は、車軸12a,52a,62aよりも上方に配置することもできる。また、前述した電動補助自転車10では、車体10aの左側にセンサ37を配置しているが、車体10aの右側にセンサ37を配置してもよい。この場合、乗員の足で操作される片足スタンド42が車体10aの左側に位置しているため、片足スタンド42を操作する足がセンサ37に当たることはない。さらに、本発明に係る自転車のそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…電動補助自転車、10a…車体、12,62…後輪、12a,52a,62a…車軸、17,57…チェーンステー、25c…コントローラ、26…後輪ブラケット、26a…車軸支持部、26d…車軸支持溝、27,65…チェーン、28…ねじ部材、29…ナット、30…車速検出装置、32…マグネット、33,63…センサ用ブラケット、34c…挿通穴、35b…センサ取付部、37,64…センサ、37c…リード線、41,51…スタンド用ブラケット、42…片足スタンド、61…両足スタンド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪に取り付けられた被検出物と、車体フレームにブラケットを介して取り付けられ、被検出物を検出するセンサとを備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、電動補助自転車や自動二輪車などの車両や二輪車(自転車)の中には、走行速度を検出する車速検出装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。この電動補助自転車では、車速検出装置は、センサプレートと、ピックアップセンサとで構成されている。そして、センサプレートは、後輪のハブとブレーキドラムとの間でハブと一体に固定され、ピックアップセンサは、センサプレートと対向するようにしてブレーキパネルの車幅方向内側の面に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−185682号公報
【発明の概要】
【0004】
このような電動補助自転車においては、チェーンの張り具合を調節するために後輪の車軸を移動させることがあるが、このような場合でも、精度よく車速を検出できるようにするために、センサが車軸の移動に伴って移動するように構成する必要がある。このため、センサは車軸の近傍に配置される。一方、電動補助自転車の場合、通常車体フレームにおける車軸が取り付けられた部分の近傍に、スタンドが取り付けられている。このように、車軸の近傍に、センサとスタンドとが取り付けられた場合に、乗員が足でスタンドを操作する際に、足でセンサに衝撃を加える虞がある。このため、センサは、乗員の足や、外部の物に衝突しない位置に取り付けることが好ましい。しかしながら、前述した従来の電動補助自転車では、スタンドを操作する際の乗員の足や、外部の物に対してセンサが衝突することを防止するための配置は考慮されていない。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、精度よく車速を検出するためにセンサを車軸の近傍に配置した場合であっても、スタンド操作の際の足や外部の物でセンサが衝撃を受けることを防止できる車速検出装置を備えた自転車を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る自転車の構成上の特徴は、自転車(10)の車体フレーム(10a)の後部の車軸支持部(26a)に後輪(12,62)の車軸(12a,52a,62a)を支持させて、車軸支持部の近傍に自転車を起立させるためのスタンド(42,61)を取り付け、チェーン(27,65)を介した駆動力により後輪を駆動するようにするとともに、車体フレームの車軸支持部にチェーンの張り具合を調節するチェーン引き機構(26d,28,29)を取り付けて、チェーン引き機構の後端部を車体フレームの車軸支持部よりもさらに後方に位置させた自転車に設けられ自転車の走行速度を検出する車速検出装置(30)を備えた自転車であって、後輪に取り付けられた被検出物(32)と、車体フレームに車軸の移動に伴って移動するブラケット(33,63)を介して取り付けられ、被検出物を検出するセンサ(37,64)とを備え、センサが、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に配置されていることにある。
【0007】
本発明に係る自転車が備える車速検出装置は、被検出物と、センサとを備えており、被検出物が、後輪に取り付けられ、センサが、車軸の移動に伴って移動するブラケットを介して車体フレームに取り付けられている。また、車軸を支持する車軸支持部の近傍にスタンドが取り付けられている。そして、センサは、チェーン引き機構の後端部よりも前側で、車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に位置するように配置されている。この場合、被検出物は、後輪におけるセンサに対向する部分に取り付けられる。このため、乗員が足でスタンドを操作する際に、後方から足がセンサに近づいたときには、センサはチェーン引き機構の後端部によって保護され、自転車の側方から足がセンサに近づいたときには、センサは車体フレームの後部によって保護される。
【0008】
同様に、自転車の後部側から物がセンサに衝突しそうになったときには、センサはチェーン引き機構の後端部によって保護され、自転車の側部側から物が衝突しそうになったときには、センサは車体フレームの後部によって保護される。なお、本発明において、自転車とは、電動補助自転車や自動二輪車など駆動装置が備わった二輪車や、駆動装置が備わっていない二輪車の双方である。また、車体フレームの後部とは、チェーンが掛け渡される一対のスプロケット間に設けられるチェーンステーの後部側部分または、チェーンステーの後部に設けられた取付用部材などである。
【0009】
本発明に係る自転車の他の構成上の特徴は、センサが、車軸よりも下方に配置されていることにある。本発明によると、センサが車軸支持部や車体フレームの後部に隠れて見えにくくなるため、センサを設けることによって自転車の美観が損なうことを防止できる。
【0010】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、車体フレームにおける車軸支持部よりも前方部分にコントローラ(25c)が設置され、コントローラとセンサとを接続するリード線(37c)が、少なくとも車軸の近傍において車軸支持部よりも下方に設置されていることにある。本発明によると、リード線の配索が容易になる。また、リード線が車軸支持部や車体フレームに隠れて見えにくくなるため、リード線によって自転車の美観が損なうことを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、ブラケットに、下縁部が前部側よりも後部側が上方に位置するように形成されたセンサ取付部(35b)が備わっており、センサの下端部がセンサ取付部の下縁部の前部側よりも高い位置に位置するようにして、センサがセンサ取付部の後部側に取り付けられていることにある。本発明によると、センサに対して、路上の障害物などが前方から接近した場合に、センサは、ブラケットの前部により保護される。このため、センサに大きな衝撃が直接加わることがなくなる。
【0012】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、センサがスタンドよりも車体幅方向の内側に配置されていることにある。本発明によると、自転車の駐車時と、走行時との双方のときに、センサがスタンドによって保護される。
【0013】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、センサが、自転車の左側に配置されていることにある。通常、チェーンは、自転車の右側に設けられているため、センサを、自転車の左側に配置することにより、センサの設置位置の確保が容易になる。なお、本発明における左側は、自転車に乗車した乗員から見ての左側である。
【0014】
本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、スタンドが、自転車の左側に配置された片足スタンド(42)であり、センサが車体フレームの車軸支持部よりも下方に配置されていることにある。本発明によると、駐車時に自転車はセンサを覆うようにして左側に傾くようになる。この場合、センサは、自転車の左側から見ると自転車の下部側で奥まった部分に位置するようになる。このため、センサは外部からの打撃をさらに受けにくくなる。
【0015】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、チェーン引き機構が、車軸支持部から後方への突出量を増すことにより車軸を後方へと移動させるようにしたことにある。この場合、車軸が後方へ移動する量は、チェーン引き機構の車軸支持部から後方への突出量の増加量相当であることが好ましい。本発明によると、チェーンの張り具合を調節するために車軸を後方に移動させると、ブラケットに取り付けられたセンサも一緒に後方に移動する。このため、車軸の位置を前後に変更しても、後輪に取り付けられた被検出部に対するセンサの位置は一定になる。この際、センサの位置が移動しても、チェーン引き機構の車軸支持部から後方への突出量も同様に増加するため、センサがチェーン引き機構によって確実に保護される。
【0016】
また、本発明に係る自転車のさらに他の構成上の特徴は、チェーン引き機構が、車軸支持部に設けられ車軸を前後方向に移動可能に支持する車軸支持溝(26d)と、車軸に係合して車軸支持部より後方に延びるねじ部(28)と、車軸支持部の後部に設けられねじ部と螺合できるナット(29)とを備え、ナットを回転させることにより、ねじ部が車軸とともに車軸支持溝に対して移動するようにしたことにある。この場合、ブラケットに挿通穴(34c)が形成され、挿通穴に車軸を挿通させた状態で、ブラケットが車体フレームに取り付けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によると、チェーンの張り具合を調節するために車軸を前後方向に移動させると、ブラケットに取り付けられたセンサも一緒に後方に移動する。このため、車軸の位置を前後に変更しても、後輪に取り付けられた被検出部に対するセンサの位置は一定になる。また、ねじ部の後端は、チェーン引き機構の後端となる部分であり、車軸が後方に移動したときには、ねじ部も後方に移動し、車軸が前方に移動したときには、ねじ部も前方に移動する。このため、車軸の位置にかかわらず、センサは、自転車の後部側から物が衝突しそうになったときには、ねじ部の後端部によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車速検出装置を備えた電動補助自転車を示した側面図である。
【図2】チェーン引き機構を示した斜視図である。
【図3】ねじ部材を示しており、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図4】後輪に車速検出装置およびスタンド用ブラケットが取り付けられた状態を示した側面図である。
【図5】マグネットホルダーを示した側面図である。
【図6】センサ用ブラケットを示しており、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図7】センサ用ブラケットにセンサを取り付けた状態を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】マグネットホルダーとセンサとの位置関係を示した断面図である。
【図9】片足スタンドを備えた電動補助自転車が駐車した状態を示した概略説明図である。
【図10】変形例に係る電動補助自転車の後輪に車速検出装置およびスタンド用ブラケットが取り付けられた状態を示した側面図である。
【図11】両足スタンドを備えた電動補助自転車が駐車した状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車速検出装置30を備えた本発明の自転車としての電動補助自転車10を示している。この電動補助自転車10は、車体10aと、車体10aの前部に取り付けられた前輪11と、車体10aの後部に取り付けられた後輪12とを備えている。車体10aは、ヘッドパイプ13、フロントフォーク14、ダウンチューブ15、シートチューブ16、一対のチェーンステー17および一対のシートステー18(ともに一方しか図示せず)を、以下に説明するように連結して形成されている。
【0020】
ヘッドパイプ13は、車体10aの前部の上方部分に位置する短いパイプからなっており、上部よりも下部が前方に位置するように傾斜して略上下方向に延びるように配置されている。フロントフォーク14は、ステアリング軸14aと、ステアリング軸14aの下端から二股に分岐したフォーク本体14bとで構成されており、ステアリング軸14aの下部側部分をヘッドパイプ13内に、回転可能に挿入してヘッドパイプ13に組み付けられている。このため、ヘッドパイプ13の下方には、二股に分岐したフォーク本体14bが突出している。また、ヘッドパイプ13の後部中央には、後方斜め下に向かって傾斜して延びるダウンチューブ15が連結されている。
【0021】
そして、ダウンチューブ15の後端側に、ヘッドパイプ13およびフロントフォーク14と略平行するシートチューブ16が配置されている。シートチューブ16の下端部は、ダウンチューブ15の後端部に連結されており、そのダウンチューブ15とシートチューブ16との連結部の下方には、後述するペダルクランク部24が設けられている。このペダルクランク部24の左右両側から、一対のチェーンステー17が互いに間隔を保って後方に延びている。そして、シートチューブ16の上部から、二股に分岐したシートステー18が互いに間隔を保って後方斜め下に向かって傾斜して延びている。シートステー18の分岐した後端部は、それぞれ一対のチェーンステー17の後端部に連結されている。
【0022】
そして、このように構成された車体10aのステアリング軸14aの上端にハンドル21が取り付けられている。ハンドル21の左右両端には、グリップ21aが設けられ、グリップ21aの近傍には、それぞれ、ブレーキレバー22が設置されている。また、シートチューブ16の上端にサドル23が上下に位置変更可能な状態で取り付けられている。そして、ダウンチューブ15、シートチューブ16およびチェーンステー17が連結される部分に、運転者が駆動力を入力するためのペダルクランク部24が設けられている。
【0023】
このペダルクランク部24は、ペダルクランク軸24aと、ペダルクランク軸24aに連結されたスプロケット(図示せず)と、クランクアーム24bと、クランクアーム24bを介してペダルクランク軸24aに連結されたペダル24cとを備えている。また、ペダルクランク部24の大部分はカバー部材によって覆われており、カバー部材の内部には、ドライブユニット25が収容されている。このドライブユニット25は、ペダル24cに加えられた力を検出するセンサ25a、電動モータ25b、コントローラ25cなどから構成されており、運転者によるペダル踏力と、電動モータ25bからの補助力がスプロケットに伝達される。このスプロケットは、ペダルクランク部24の右側部分に設けられている。なお、この右側部分は、サドル23に座った運転者から見て右側部分で、以下、左右方向は、サドル23に座った運転者から見た方向として説明する。
【0024】
前輪11は、フロントフォーク14の下端部に回転可能に支持されている。すなわち、フロントフォーク14の両下端部は前輪11の車軸11aの両側部分を回転可能に支持しており、これによって、前輪11は、車軸11aを中心として回転可能になっている。このため、ハンドル21を操作することにより、フロントフォーク14のステアリング軸14aを軸周り方向に回転させると、ステアリング軸14aの回転量に応じて前輪11は左右に方向を変える。
【0025】
一対のチェーンステー17の後端部と、一対のシートステー18の後端部とは、それぞれ一対の後輪ブラケット26(図2参照)によって連結されており、後輪12は、この一対の後輪ブラケット26によって回転自在に支持されている。このため、後輪12は、一対のチェーンステー17間および一対のシートステー18間に位置している。後輪ブラケット26は、図2に示したように、後輪12の車軸12aを支持する車軸支持部26aと、車軸支持部26aの前部から前方に延びてチェーンステー17の後端部に溶接によって連結された水平連結部26bと、車軸支持部26aの上部から前方斜め上方に延びてシートステー18の後端部に溶接によって連結された傾斜連結部26cとで構成されている。
【0026】
そして、車軸支持部26aの中央部分に左右に貫通して前後に延びる略長円形の車軸支持溝26dが形成されている。また、後輪ブラケット26の外側面は滑らかな平面で構成されている。そして、各車軸支持部26aの車軸支持溝26dに、後輪12の車軸12aの両側部分が支持されており、これによって、後輪12は、車軸12aを中心として回転可能になっている。なお、車軸12aは、後輪12の中心に位置する円筒状のハブ12bの両端の中心からそれぞれ外部に向かって延びており、ハブ12bに対して回転自在になっている。そして、ハブ12bの両側にフランジ状部分が設けられ、その右側の面にスプロケット(図示せず)が取り付けられている。このスプロケットとペダルクランク部24のスプロケットとの間にはチェーン27が掛け渡されている。
【0027】
また、車軸支持部26aにおける車軸支持溝26dの後部側の内面と後部外面との間には、ねじ挿通穴が形成されており、このねじ挿通穴に、チェーン27の引っ張り具合を調節するためのねじ部材28が挿通している。ねじ部材28は、図3(a),(b)に示したように、リング状の係合部28aと、係合部28aの後部から後方に延びるねじ部28bとで構成されており、係合部28aは、後輪12の車軸12aが回転することなく挿通できるように形成されている。そして、係合部28aに車軸12aが挿通して互いに係合したときに、ねじ部28bの後部は、車軸支持部26aの後部から突出する。
【0028】
また、ねじ部28bにおける車軸支持部26aから突出した部分に、ナット29が螺合している。このため、ナット29を回転することにより、ねじ部28bにおける車軸支持部26aから突出した部分の長さを調節することができ、これによって、後輪12の車体10aに対する前後の位置を変更してチェーン27の引っ張り具合を調節することができる。なお、車軸支持溝26dを備えた車軸支持部26a、ねじ部材28およびナット29で本発明に係るチェーン引き機構が構成される。
【0029】
車速検出装置30は、図4に示したように、後輪12のハブ12bと、左側に位置する後輪ブラケット26とを介して設けられている。すなわち、車速検出装置30は、円板状のマグネットホルダー31に設けられたマグネット32(図5参照)と、センサ用ブラケット33に設けられたセンサ37(図7(a),(b)参照)とで構成されており、マグネットホルダー31は、後輪12のハブ12bの左側に位置するフランジ状部分の左側の面に取り付けられ、センサ用ブラケット33は、左側に位置する後輪ブラケット26に取り付けられている。マグネット32は、図5に示したように、S極とN極とからなる12対のマグネットで構成されており、マグネットホルダー31の外周側に、S極のマグネット32とN極のマグネット32とが交互に位置するようにして配置されている。また、マグネットホルダー31の外周部には、マグネットホルダー31をハブ12bに取り付けるための3つの締結部31aが形成されている。
【0030】
センサ用ブラケット33は、本発明に係るブラケットを構成するもので、板部材を折り曲げ加工することにより形成されている。このセンサ用ブラケット33は、図6(a),(b)に示したように、固定片34と、センサ取付片35と、固定片34とセンサ取付片35とを連結する連結片36とからなっている。固定片34は、後輪ブラケット26の外側表面に沿える略矩形の平面状部34aと、平面状部34aの後端(図6の右側)中央部分で、平面状部34aに直交して平面状部34aの裏面側(車体10aの幅方向の内部側)に突出する回転防止部34bとを備えている。そして、平面状部34aにおける回転防止部34bの前方には挿通穴34cが形成されている。
【0031】
回転防止部34bの上下方向の幅は、車軸支持部26aの車軸支持溝26dの上下方向の幅よりも僅かに短く設定され、挿通穴34cの直径は、車軸12aの直径よりも僅かに長く設定されている。そして、固定片34は、後輪ブラケット26の外側表面に平面状部34aを沿わせて、挿通穴34cに車軸12aを挿通させたときに、回転防止部34bが、車軸支持溝26dの内部に位置し、下端縁部が後輪ブラケット26の下端縁部に沿うように構成されている。また、固定片34の下部は前部側に切欠き部を設けることによって幅が狭くなっており、その幅狭部分の下端に連結片36が連なっている。連結片36は、固定片34に直交して車体10aの幅方向の内部側でかつ前方に向かって傾斜して延びている。
【0032】
センサ取付片35は、前後に細長く曲がった部分で構成されており、連結片36の内部側端部から連結片36に直交して下方に延びている。このセンサ取付片35は、連結片36に連結された部分よりも前部側が水平方向に延びる幅の狭い幅狭部35aで構成され、連結片36に連結された部分から後部にかけての部分が、幅狭部35aよりも幅が広く前部側よりも後部側の方が高くなるように傾斜したセンサ取付部35bで構成されている。そして、幅狭部35aの前部側部分の上下にそれぞれ小さな略半円状の切欠き部35cが形成され、センサ取付部35bの後部には位置決め穴35dが形成されている。また、センサ取付部35bの前後方向の中央には、センサ取付部35bの前後の部分よりも外部側に突出することにより内部側が窪んだ段部35eが形成されている。
【0033】
センサ37は、図7(a),(b)に示したようにして、センサ取付片35のセンサ取付部35bの内側面に取り付けられている。センサ37は、検出部37aと、検出部37aをセンサ取付部35bに固定するための取付部材37bとで構成されている。取付部材37bは、検出部37aの表面を露出させて検出部37aを収容した状態で、センサ取付部35bの表面、周面および裏面の外周部を覆っており、位置決め穴35dに対応する部分には、位置決め穴35dに嵌合する突起が形成されている。
【0034】
また、センサ37は、段部35eを利用してセンサ取付部35bに設置されている。このため、センサ37は、位置ずれすることなくセンサ取付部35bの内側面に固定されている。センサ37の後部からは後方(図7の右側)に向かってリード線37cが延びており、このリード線37cは、切欠き部35cの部分で、結束バンド38によって幅狭部35aに固定されている。リード線37cは、チェーンステー17の下部に沿って前方に延び、その先端部は、ドライブユニット25のコントローラ25cに接続されている。
【0035】
この場合、センサ37が取り付けられたセンサ用ブラケット33は、後輪ブラケット26に取り付けられることよって左右方向にずれることを防止され、車軸12aによって後輪ブラケット26の表面に沿って位置ずれすることを防止され、車軸支持溝26dへの回転防止部34bの係合によって車軸12aの軸周り方向に回転することを防止される。このため、センサ37は、車軸12aに対して一定の位置に保持される。これによって、図8に示したように、センサ37のマグネットホルダー31に対する位置関係も常に一定になる。
【0036】
図8は、マグネットホルダー31とセンサ37とが配置された部分を略水平方向に切断した面を略下方から見た状態を示した断面図であり、マグネット32とセンサ37とは近接した状態で配置されている。また、マグネット32とハブ12bとの間には、ダンパ31bが設けられている。この場合、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部よりも前方で、車軸12aよりも下方に位置している。さらに、センサ用ブラケット33のセンサ取付片35が固定片34よりも車体幅方向の内側に位置し、そのセンサ取付片35の内側面にセンサ37が取り付けられているため、センサ37は、後輪ブラケット26よりも車体幅方向の内側に位置している。
【0037】
また、図4に示したように、センサ用ブラケット33の固定片34を覆うようにして、後輪ブラケット26には、スタンド用ブラケット41が取り付けられ、このスタンド用ブラケット41を介して片足スタンド42が取り付けられている。そして、スタンド用ブラケット41と片足スタンド42との間には、ばね43とロックレバー44とが設けられている。スタンド用ブラケット41は、車軸12aが挿通できる挿通穴を備えた固定部41aと、片足スタンド42が取り付けられる取付部41bとを備えており、挿通穴に車軸12aを通し、固定部41aで、後輪ブラケット26の前後の上面と、固定片34の表面とを覆うようにして後輪ブラケット26に取り付けられている。
【0038】
そして、スタンド用ブラケット41の表面で車軸12aにナット45を螺合させて締め付けることにより、車軸12a、センサ用ブラケット33およびスタンド用ブラケット41が後輪ブラケット26に固定されている。なお、車軸12aの左右両端にはそれぞれねじが形成されており、このねじとナット45が螺合する。また、車軸12aの右側端部にもナットが螺合しており、このナットと車軸12aとの螺合により、車軸12aの右側端部が右側の後輪ブラケット26に固定されている。
【0039】
片足スタンド42は、軸部42aを介して、取付部41bに回転可能に取り付けられている。この片足スタンド42は、軸部42aを中心として、下方位置と後方略水平位置との間で回転し、図9に示したように、下方に位置しているときに、電動補助自転車10を支持して起立状態に維持する。このとき、電動補助自転車10は、やや左側に傾斜する。また、電動補助自転車10を走行させる際には、図1に示したように、片足スタンド42を後方略水平位置まで回転させる。この片足スタンド42の各状態は、ばね43によって維持される。
【0040】
すなわち、ばね43は、一端が、取付部41bにおける軸部42aよりも車軸12aに近い部分に係止され、他端が、ロックレバー44を介して、片足スタンド42における軸部42aよりも先端側部分に連結されている。このため、図1の状態では、片足スタンド42は、ロックレバー44を介してばね43によって上方に付勢される。また、片足スタンド42が下方に位置しているときには、ばね43(両端を結ぶ線)が軸部42aよりも前方に位置するようになり、片足スタンド42は、ロックレバー44を介してばね43によって前方に付勢される。
【0041】
ロックレバー44は、一端が、軸部44aによって、片足スタンド42に回転可能に連結され、中央部分に、ばね43の他端が係止されている。このロックレバー44は、軸部44aを中心として、片足スタンド42に対して、接近した状態とやや離間した状態とで回転でき、片足スタンド42を下方に位置させた状態で、片足スタンド42に接近させることによりロック機能が働いてその状態が維持される。また、ロックレバー44を、片足スタンド42に対して離間させたときに、片足スタンド42は回転可能になる。
【0042】
また、フロントフォーク14における前輪11の上部に対応する部分には、前輪ブレーキ22aが設けられ、シートステー18における後輪12の上部に対応する部分には、後輪ブレーキ22bが設けられている。前輪ブレーキ22aと後輪ブレーキ22bとは、それぞれブレーキレバー22の操作により、対応する前輪11または後輪12を制動する。さらに、フロントフォーク14の前部にはバスケット46が設置されている。
【0043】
この構成において、電動補助自転車10を走行させる際には、まず、片足スタンド42を下げてロックした状態で駐車している電動補助自転車10のロックレバー44を、足で後方に回転させてロックを解除する。そして、片足スタンド42を足で上方に押し上げて電動補助自転車10を走行可能な状態にする。この場合、センサ37は、スタンド用ブラケット41に隠れた部分に位置しているため、足に当たって衝撃を受けることはない。なお、図4では、センサ37の取り付け位置を示すため、スタンド用ブラケット41の一部を切り欠いているが、このスタンド用ブラケット41は、図1に示したように、センサ用ブラケット33の後部を側方から覆うように構成されている。
【0044】
また、電動補助自転車10を走行させている際に、路上の障害物などが前方からセンサ37に接近してきた場合には、センサ37の下端部よりも下方で、かつ前方に、センサ用ブラケット33の下端部が位置しているため、障害物が直接センサ37に衝突することはない。さらに、走行中の電動補助自転車10に側方から物が飛んできてセンサ37に接近してきた場合には、センサ37は、スタンド用ブラケット41によって保護される。これによって、センサ37に対して衝撃が加わることが防止されるか、または、大きな衝撃が加わることが防止される。さらに、電動補助自転車10が停止しているときに、電動補助自転車10の後部側から物が接近してきてセンサ37に衝突しそうになったときには、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部によってその物に衝突することを防止される。
【0045】
そして、電動補助自転車10を停止させた状態で、駐車のため片足スタンド42を足で後方から下方に押圧する際には、センサ37の後方には、ねじ部材28の後端部が位置し、センサ37の左側方には、スタンド用ブラケット41が位置するため、足によってセンサ37が衝撃を受けることはない。さらに、電動補助自転車10が駐車しているときには、電動補助自転車10は、図9に示したように、左側に傾斜した状態になるため、センサ37は、電動補助自転車10の左側から見ると奥まった部分に位置するようになる。このため、外部の物でセンサ37が衝撃を受けることが生じ難くなる。
【0046】
このように、本実施形態に係る電動補助自転車10に備わった車速検出装置30は、マグネット32と、センサ37とを備えており、マグネット32が、後輪12のハブ12bに取り付けられ、センサ37が、センサ用ブラケット33を介して、車体10aの後部に設けられた後輪ブラケット26に取り付けられている。また、車軸12aの左端部には、スタンド用ブラケット41を介して片足スタンド42が取り付けられている。そして、センサ37は、チェーン引き機構のねじ部材28の後端部よりも前方で、後輪ブラケット26の後部よりも車体幅方向の内側で、さらに、車軸12aよりも下方に位置するように配置されている。また、センサ37の下端部よりも下方で、かつ前方に、センサ用ブラケット33の下端部が位置している。
【0047】
このため、乗員が足で片足スタンド42を操作する際や、外部の物がセンサ37に近づいたときに、センサ37は、ねじ部材28、後輪ブラケット26、スタンド用ブラケット41およびセンサ用ブラケット33によって保護される。これによって、センサ37に衝撃が加わることがなくなるか、または、加わったとしてもその衝撃は直接的なものでないため小さなものとなる。この結果、センサ37が衝撃によって破損したり、センサ37に位置ずれが生じたりすることが防止される。さらに、片足スタンド42が、電動補助自転車10の左側に配置されているため、駐車時に電動補助自転車10はセンサ37を覆うようにして左側に傾くようになる。このため、センサ37は外部からの打撃をさらに受けにくくなる。
【0048】
また、センサ37を、車軸12aよりも下方に配置したため、後輪ブラケット26やスタンド用ブラケット41に隠れて見えにくくなり、センサ37を設けることによって電動補助自転車10の美観が損なうことを防止できる。また、センサ37とコントローラ25cとを接続するリード線37cは、チェーンステー17の下部に沿って延びているため、チェーンステー17に隠れて見えにくくなるため、リード線37cによって電動補助自転車10の美観が損なうことを防止できる。さらに、リード線37cを、チェーンステー17に沿わせたことにより、配索がしやすくなる。
【0049】
また、センサ用ブラケット33を車軸12aに取り付けたため、チェーン27の張り具合を調節するために車軸12aを前後に移動させたときには、センサ用ブラケット33に取り付けられたセンサ37も車軸12aと一緒に移動する。このため、車軸12aの位置を前後に変更しても、後輪12に取り付けられたマグネット32に対するセンサ37の位置は一定になるため、適正な速度検出の維持が可能になる。さらに、センサ用ブラケット33は、後輪ブラケット26の表面と、車軸12aと、車軸支持溝26dへの回転防止部34bの係合とによって車軸12aに対して一定の位置に保持される。これによっても、マグネット32に対するセンサ37の位置にずれが生じることがより確実に防止される。
【0050】
図10は、前述した電動補助自転車10の変形例に係る電動補助自転車が備えるスタンド用ブラケット51を、車軸52aでなく、チェーンステー57とシートステー58との後部に取り付けた状態を示している。チェーンステー57とシートステー58には、それぞれ挿通穴を備えた取付部が形成されており、スタンド用ブラケット51は、3個のボルト51aを介してチェーンステー57とシートステー58とに固定されている。この電動補助自転車のそれ以外の部分の構成は、前述した電動補助自転車10と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0051】
この変形例では、チェーン引きのために、車軸52aとともに、センサ用ブラケット33を移動させても、スタンド用ブラケット51の取り付け位置は変更されない。したがって、チェーン引きの操作をスタンド用ブラケット51に関係なく行え、チェーン引きの操作が容易になる。この変形例に係る電動補助自転車のそれ以外の作用効果は、前述した実施形態の作用効果と同様である。
【0052】
また、図11は、前述した電動補助自転車10の他の変形例に係る電動補助自転車の概略を示している。この電動補助自転車には、略コ字状の両足スタンド61が備わっており、両足スタンド61の両端部は、後輪62の車軸62aの両側に、スタンド用ブラケット(図示せず)を介して回転可能に取り付けられている。そして、後輪62と両足スタンド61の左側部分との間で、車軸62aの下側にセンサ用ブラケット63を介してセンサ64が配置されている。このように、電動補助自転車には、片足スタンドでなく、両足スタンド61を設けてもよい。この場合、センサ64は、図11に、二点鎖線で示した後輪62の右側に位置するチェーン65と両足スタンド61の右側部分との間に配置してもよい。
【0053】
また、前述した電動補助自転車10のさらに他の変形例として、前述した車軸支持溝26dを備えた車軸支持部26a、ねじ部材28およびナット29で構成されるチェーン引き機構に代えて、偏心カムを備えたチェーン引き機構を用いることができる。この場合の偏心カムは、車軸が貫通する車軸貫通孔を備えており、車軸貫通孔に車軸が貫通している。そして、偏心カムの外周側には偏心カムに当接するストッパが設けられており、偏心カムが車軸を中心として回転することにより、車軸とストッパとの間の距離が変化する。この車軸とストッパとの間の距離の増減分だけ車軸が移動して、チェーンの張り具合が調節される。この場合も偏心カムの後端は車軸とともに後方への突出量を増すようになる。
【0054】
また、本発明に係る自転車は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜、変更して実施することが可能である。例えば、前述した実施形態では、センサ37,64を、車軸12a,52a,62aよりも下方に配置しているが、センサ37,64は、車軸12a,52a,62aよりも上方に配置することもできる。また、前述した電動補助自転車10では、車体10aの左側にセンサ37を配置しているが、車体10aの右側にセンサ37を配置してもよい。この場合、乗員の足で操作される片足スタンド42が車体10aの左側に位置しているため、片足スタンド42を操作する足がセンサ37に当たることはない。さらに、本発明に係る自転車のそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…電動補助自転車、10a…車体、12,62…後輪、12a,52a,62a…車軸、17,57…チェーンステー、25c…コントローラ、26…後輪ブラケット、26a…車軸支持部、26d…車軸支持溝、27,65…チェーン、28…ねじ部材、29…ナット、30…車速検出装置、32…マグネット、33,63…センサ用ブラケット、34c…挿通穴、35b…センサ取付部、37,64…センサ、37c…リード線、41,51…スタンド用ブラケット、42…片足スタンド、61…両足スタンド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車体フレームの後部の車軸支持部に後輪の車軸を支持させて、前記車軸支持部の近傍に前記自転車を起立させるためのスタンドを取り付け、チェーンを介した駆動力により前記後輪を駆動するようにするとともに、前記車体フレームの車軸支持部に前記チェーンの張り具合を調節するチェーン引き機構を取り付けて、前記チェーン引き機構の後端部を前記車体フレームの車軸支持部よりもさらに後方に位置させた前記自転車に設けられ前記自転車の走行速度を検出する車速検出装置を備えた自転車であって、
前記後輪に取り付けられた被検出物と、
前記車体フレームに前記車軸の移動に伴って移動するブラケットを介して取り付けられ、前記被検出物を検出するセンサとを備え、
前記センサが、前記チェーン引き機構の後端部よりも前側で、前記車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に配置されていることを特徴とする自転車。
【請求項2】
前記センサが、前記車軸よりも下方に配置されている請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
前記車体フレームにおける前記車軸支持部よりも前方部分にコントローラが設置され、前記コントローラと前記センサとを接続するリード線が、少なくとも前記車軸の近傍において前記車軸支持部よりも下方に設置されている請求項2に記載の自転車。
【請求項4】
前記ブラケットに、下縁部が前部側よりも後部側が上方に位置するように形成されたセンサ取付部が備わっており、前記センサの下端部が前記センサ取付部の下縁部の前部側よりも高い位置に位置するようにして、前記センサが前記センサ取付部の後部側に取り付けられている請求項2に記載の自転車。
【請求項5】
前記センサが前記スタンドよりも車体幅方向の内側に配置されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の自転車。
【請求項6】
前記センサが、前記自転車の左側に配置されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の自転車。
【請求項7】
前記スタンドが、前記自転車の左側に配置された片足スタンドであり、前記センサが前記車体フレームの前記車軸支持部よりも下方に配置されている請求項6に記載の自転車。
【請求項8】
前記チェーン引き機構が、前記車軸支持部から後方への突出量を増すことにより前記車軸を後方へと移動させるようにした請求項1に記載の自転車。
【請求項9】
前記車軸が後方へ移動する量は、前記チェーン引き機構の前記車軸支持部から後方への突出量の増加量相当である請求項8に記載の自転車。
【請求項10】
前記チェーン引き機構が、前記車軸支持部に設けられ前記車軸を前後方向に移動可能に支持する車軸支持溝と、前記車軸に係合して前記車軸支持部より後方に延びるねじ部と、前記車軸支持部の後部に設けられ前記ねじ部と螺合できるナットとを備え、前記ナットを回転させることにより、前記ねじ部が前記車軸とともに前記車軸支持溝に対して移動するようにした請求項8または9に記載の自転車。
【請求項11】
前記ブラケットに挿通穴が形成され、前記挿通穴に前記車軸を挿通させた状態で、前記ブラケットが前記車体フレームに取り付けられている請求項10に記載の自転車。
【請求項1】
自転車の車体フレームの後部の車軸支持部に後輪の車軸を支持させて、前記車軸支持部の近傍に前記自転車を起立させるためのスタンドを取り付け、チェーンを介した駆動力により前記後輪を駆動するようにするとともに、前記車体フレームの車軸支持部に前記チェーンの張り具合を調節するチェーン引き機構を取り付けて、前記チェーン引き機構の後端部を前記車体フレームの車軸支持部よりもさらに後方に位置させた前記自転車に設けられ前記自転車の走行速度を検出する車速検出装置を備えた自転車であって、
前記後輪に取り付けられた被検出物と、
前記車体フレームに前記車軸の移動に伴って移動するブラケットを介して取り付けられ、前記被検出物を検出するセンサとを備え、
前記センサが、前記チェーン引き機構の後端部よりも前側で、前記車体フレームの後部よりも車体幅方向の内側に配置されていることを特徴とする自転車。
【請求項2】
前記センサが、前記車軸よりも下方に配置されている請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
前記車体フレームにおける前記車軸支持部よりも前方部分にコントローラが設置され、前記コントローラと前記センサとを接続するリード線が、少なくとも前記車軸の近傍において前記車軸支持部よりも下方に設置されている請求項2に記載の自転車。
【請求項4】
前記ブラケットに、下縁部が前部側よりも後部側が上方に位置するように形成されたセンサ取付部が備わっており、前記センサの下端部が前記センサ取付部の下縁部の前部側よりも高い位置に位置するようにして、前記センサが前記センサ取付部の後部側に取り付けられている請求項2に記載の自転車。
【請求項5】
前記センサが前記スタンドよりも車体幅方向の内側に配置されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の自転車。
【請求項6】
前記センサが、前記自転車の左側に配置されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の自転車。
【請求項7】
前記スタンドが、前記自転車の左側に配置された片足スタンドであり、前記センサが前記車体フレームの前記車軸支持部よりも下方に配置されている請求項6に記載の自転車。
【請求項8】
前記チェーン引き機構が、前記車軸支持部から後方への突出量を増すことにより前記車軸を後方へと移動させるようにした請求項1に記載の自転車。
【請求項9】
前記車軸が後方へ移動する量は、前記チェーン引き機構の前記車軸支持部から後方への突出量の増加量相当である請求項8に記載の自転車。
【請求項10】
前記チェーン引き機構が、前記車軸支持部に設けられ前記車軸を前後方向に移動可能に支持する車軸支持溝と、前記車軸に係合して前記車軸支持部より後方に延びるねじ部と、前記車軸支持部の後部に設けられ前記ねじ部と螺合できるナットとを備え、前記ナットを回転させることにより、前記ねじ部が前記車軸とともに前記車軸支持溝に対して移動するようにした請求項8または9に記載の自転車。
【請求項11】
前記ブラケットに挿通穴が形成され、前記挿通穴に前記車軸を挿通させた状態で、前記ブラケットが前記車体フレームに取り付けられている請求項10に記載の自転車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−52772(P2013−52772A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192686(P2011−192686)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
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