説明

自閉症や脳性麻痺などの精神疾患の予後判定方法

本発明はヒト被験者における精神疾患、特に自閉症又は脳性麻痺の応用行動分析療法に対する予後判定方法を提供する。前記方法は前記精神疾患の応用行動分析療法の成否の見込みを示す化学的マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、及び所望により前記分析に基づき前記被験者の応用行動分析療法を開始、継続、又は中止することを含む。サンプルは好ましくは尿サンプルであり、また好ましい予後判定マーカーは、グルテン誘導体、インドリル−3−アクリロイルグリシン(IAG)、セロトニン取り込み刺激物質、β−カソモルフィンアミド、グリアジノモルフィン、β−カソモルフィン、デルトルフィン、デモルフィン、グルテモルフィン、グルテン エキソフィン、分子量が687Dの化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神障害、例えば自閉症、とりわけ小児自閉症における応用行動分析(ABA)療法の結果の予測や経過のモニタリングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症は、一連の発達障害に対する名称である。自閉症は、1000人中63人という多くの子供を襲い、少なくとも1000人につき6人は重度である。しかも、その罹患率は増加している兆しがある。自閉症の原因ははっきりわかっていなく、ある患者たちには有効な治療方式でも他の患者たちには効果がない。
【0003】
ここで「自閉症」という用語は、重度及び軽度の自閉症、例えばアスペルガー症候群を含む範囲まで拡張して使用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最も成功した自閉症の治療方式として知られているのは恐らく早期集中療法(EIBI)などの応用行動分析療法(ABA)である。そして、ABA療法の中でも、TIPO(早期集中プログラム)が特に有効であることが知られている。実際上ABAは恐らく自閉症に対する最も有効な治療法であり、医薬品療法は効かないと思われる。3歳という幼い子供たちにABAに基づく行動トレーニング(即ち、ABA療法)を用いると約50%はほぼ正常の行動に達する。この療法は早期に始めるほどもっと成功する傾向があり、それゆえ自閉症の早期診断は重要である。しかし、ABA療法は患者と医師の両方の時間を消耗するうえ、患者と医師の両方にとって長くかつ比較的不愉快な体験である。現在のところ個々の患者がABA療法により恩恵を受けられる人たちの中に属するか否かを予め知る方法はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば自閉症の患者の尿や血液から検出できる化学物質など、自閉症に対する生化学的マーカーが存在することはしばらくの間知られていた。しかし、我々は、今驚いたことに、一般的にはABA療法の予後と、とりわけTIPO療法の予後と相関し得る生化学的マーカーが存在することを見出した。これらは恐らく、まだ開始されていないABA療法の成功の見込みと現在進行中の治療の成功の両方に相関する。このようなバイオマーカーを検出することで、医師は成功の見込みがより高いABA療法を提案でき、成功の見込みが低い又はないABA療法の中止又は回避を提案できる。明らかに、これは患者の過度の苦しみ及び家族又は社会の出費を軽減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
EIBI及びTIPO以外のABA療法の他の方式としては、例えばTEACHHを含む。
【0007】
ABA療法はその他の型の精神疾患(又は障害)にも有効であり、これらの疾患のABA療法の成功の見込みの予後も本発明の方法を用いることで得ることができる。これらの精神疾患は、例えば、脳性麻痺(即ち、その精神的要素(mental component))、発達遅延、学習障害、精神遅滞、行為障害、恐怖症性不安障害、パニック障害、強迫性障害、中毒性行為(addictive behaviour)(例えば、喫煙)、無食欲症、過食症、双極性障害、うつ病、ADHD、ツレット症候群、レット症候群、脆弱X(Fragile X)、うつ病、及び広汎性発達障害(PPD及びPPD−NOS)を含む。
【0008】
いくつかのこれらの精神疾患はABA療法では改善できない肉体的要素(physical component)も有する(例えば、脳性麻痺のように)が、精神的要素を改善するだけでも患者の生活のクオリティを著しく高めることができる。しかし、治療が効きそうもない精神疾患の患者をABA療法で治療するのは明らかに好ましくなく、ABA療法は慣例的にそのような疾患には使用しない。それゆえに、本発明の予後判定方法は精神疾患の患者の治療における著しい改善を意味する。
【0009】
従って、一の態様から見ると、本発明はヒト被験者における精神疾患(例えば、自閉症)の応用行動分析療法に対する予後判定方法を提供する。前記方法は前記精神疾患の応用行動分析療法の成否の見込みを示す化学的マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、及び所望により前記分析に基づき前記被験者の応用行動分析療法を開始、継続、又は中止することを含む。
【0010】
更なる一の態様において、本発明はヒト被験者における応用行動分析療法の成否の見込みを示す化学的マーカーの測定方法を提供する。前記方法は前記マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、所望により前記体組織又は体液における前記マーカーの含有量の指標を提供すること、及び所望によりABA療法に対する予後の指標を提供することを含む。
【0011】
更なる一の態様において、本発明は、精神疾患を患う又はその疑いがあるヒト被験者のセラグノーシス(theragnosis)方法を提供する。前記方法は前記精神疾患の治療コースの成否の見込みを示す化学的マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、及び所望により前記分析に基づきABA療法などの前記治療コースを開始、継続、又は中止することを含む。
【0012】
自閉症の治療に関する予後において被験者は子供であることが好ましい。実際上、一般的には幼年期に診断される、例えば、自閉症、脳性麻痺、ADHD、ツレット症候群、発達異常、及びレット症候群などの精神疾患について被験者は子供であることが好ましい。ここで子供は18歳まで、より特に1〜16歳、とりわけ2〜15歳、特に3〜12歳のヒトを意味する。
【0013】
本発明の方法における被験者は好ましくは既に特定の精神疾患を患うと診断されたヒトであり、又はそれよりは劣るが好ましくは特定の疾患を有すると疑われたヒトである。
【0014】
ここで体組織又は体液とは、人体からの体液(例えば、血液、唾液、若しくは尿、又はそれらの抽出物若しくは派生物、例えば、血清若しくは血漿)、組織サンプル、又は表面細胞サンプル(例えば、口の内壁などの粘膜表面をこすることにより採集する)を意味する。サンプルは例えば、保存剤、酸化防止剤、又は酵素阻害剤で処理してもよく、基質上で乾燥又は吸収させてもよい。サンプルは好ましくは尿若しくは血清であり、特に好ましくは尿であり、又は口の内側をぬぐい取ることにより採取したサンプルである。保存剤として用いるには、チモールが特に便利である。
【0015】
サンプルを取る日の時間又は患者の飲用パターンによって尿は多め又は少なめに希釈されるかもしれないので、体液が尿である場合、バイオマーカーの濃度は、尿のクレアチニンの含有量に対し標準化して決めることが好ましい。よって、尿のクレアチニンの含有量も本発明の方法で測定するのが好ましい。クレアチニンは、尿中の被検体の分析において尿濃度の標準化要素(normalizing factor)として一般的に使用されており、本発明においては通常の手段により測定してもよい。
【0016】
化学的マーカーの検出は、例えば一般的には逆相勾配溶出(reversed phase gradient elution)を用いるHPLCなどのクロマトグラフィーにより好都合に実施されてもよい。しかし、当然ながら放射性同位元素標識免疫測定法や酵素免疫測定法などのマーカー検出のための他の診断技術を使用してもよい。これらの他の技術は医療診断分野では良く知られており、一般的には被検体に対する、例えば、抗体、抗体フラグメント又は構築物(construct)、単一鎖抗体、オリゴヌクレオチドなどの結合パートナーを必要とする。本発明の方法に用いる被検体に対する抗体は、標準的な抗体作製技術、例えば、被検体と免疫原性担体(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)などの異種蛋白)の免疫原性結合体(conjugate)でマウスや他の哺乳動物を免疫化することにより作製してもよい。また、例えばファージディスプレイライブラリなどの化学又は生物学ライブラリに対するパンニング(panning)により結合パートナーを見つけてもよい。
【0017】
被検体に対する結合パートナーの作製は、また、例えばEP−A−818744の技術を用いるCAM―Dによって実施されてもよい。
【0018】
我々の研究はABA療法の予後に対する広範囲のマーカーが存在していることを示した。これらの一部は以前にも自閉症のバイオマーカー、即ち診断マーカーであると考えられていた。このことは、それらの予後判定マーカーとしての機能と矛盾するものではないことを強調しなければならない。しかしながら、以前にはABA療法の予後判定に有用であるマーカーの存在は一切示唆されていなかった。
【0019】
本発明における、特に興味深い予後判定マーカーは7つのクループに分けられると思われる。
1.グルテン誘導体(gluten derivatives)
2.インドリル−3−アクリロイルグリシン(indolyl-3-acryloylglycine(IAG))
3.インドリル−3−アクリル酸(indolyl-3-acrylic acid)(血清中)
4.セロトニン取り込み刺激物質(serotonin uptake stimulators)
5.オピオイドとその誘導体(opioids and derivatives thereof)
6.カゼイン誘導体(casein derivatives)
7.未確認の尿の成分(unidentified urine components)
【0020】
いずれのマーカーについても、その含有量はコントロールプール(pool)の平均値と比較することが好ましい。前記コントロールプールは、例えば、好ましくは同程度の年齢(例えば、2年以内)、特に好ましくは同じ性別の、さらに特に好ましくは少なくとも10個体からなる無症候性個体のセット、ABA療法の有効者(responder)のセット、又はABA療法の無効者(non-responder)のセットである。コントロールプールの平均値の平均偏差及び標準偏差(SD)は予め決定し、キャリブレーションツールとして本発明のユーザに提供することが好ましい。無症候コントロールの平均値より高い値は、関連性を示すと見なされ、平均値プラスSDより高い値は、更なる関連性を示し、平均値プラス2xSDより高い値は、高い関連性を示す。ABA療法前と療法期間中又は療法後とで2回又はそれ以上の検査が行われた場合において、値の減少、特にコントロール+2xSD以上からコントロール+2xSD以下への減少は、少なくとも部分的な成功を示している、即ち治療は継続又は完了すべきであることを示していると見なされる。
【0021】
より明確には、以下の化合物は予後判定マーカー、特に自閉症の予後判定マーカーであることが分った。
1.HPLCにおいて馬尿酸の後かつIAGの前に溶出するグルテン誘導体
2.IAG
3.セロトニン取り込み刺激物質(pyro-Glu-Trp-Gly-NH2
4.セロトニン取り込み刺激物質の後かつβ−カソモルフィンアミド(beta-casomorphineamides)の前に溶出するカゼイン誘導体
5.β−カソモルフィンアミド、例えば、β−カソモルフィン−1−3−アミド、β−カソモルフィン−1−4−アミド、及びβ−カソモルフィン−1−5−アミド、特にβ−カソモルフィン−1−4−アミド(Tyr-Pro-Phe-Pro-NH2
6.グリアジノモルフィン(Gliadinomorphine)
7.β−カソモルフィン(beta-casomorphines)、例えば、β−カソモルフィン l−3(Tyr-Pro-Phe)、β−カソモルフィン 1−5(Tyr-Pro-Phe-Pro-Gly)、又はβ−カソモルフィン 1−4(Tyr-Pro-Phe-Pro)
8.分子量がおよそ687Daの化合物
9.デルトルフィン(Deltorphins)、例えば A、I(C)又はII(B)
10.デルモルフィン(Dermorphine)
11.グルテモルフィン(Glutemorphine)
12.グルテン エキソフィン(Gluten Exophins)、例えば、A5、B5及びC
【0022】
ABA療法の効果が少ない又は無いという予後判定は、無症候コントロールの平均値より著しく高いHPLCピーク面積(又は高さ)であって、グルテン誘導体のピークの総面積(又は高さ)がIAGのそれよりも大きく、及び/又は、セロトニン取り込み刺激物質のピーク総面積(又は高さ)がIAGのそれよりも大きいという、HPLCのピーク面積(又は高さ)に基づいてもよい。(しかしながら、異常に高いIAGレベルそれ自体は、アスペルガーの前兆であり、及び/又は、それゆえABA療法の予後判定となり得る)。使用されうる1つのコントロール因子(control factor)であるIAGのピーク総面積(又は高さ)は、それ自体が、無症候コントロールセットの値の少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも2倍になるべきである。さらに、グルテン誘導体は、HPLCのパターン(trace)において馬尿酸とIAGに対応するピークの間に少なくとも二つのピークとして現れる。これらのピークの内、もっと顕著な二番目のピークを上記のように予後判定に用いてもよい。これらのピークの第一のピーク面積(又は高さ)が、ABA療法が有効である患者のコントロールセットの値(それ自体が無症候コントローセットにおける同等物の値より高い)より著しく高い場合、前記第一のピーク面積(又は高さ)それ自体が、ABA療法の効果が少ない又はないことを示す。同様に、IAGピーク高さが、ABA療法が有効である患者のコントロールセットの高さ(同様に、無症候コントロールセットにおける同等物の値より高い)より大きい場合は(例えば少なくとも50%大きい)、そのIAGピーク自体が、効果が少ないという予後を示す。
【0023】
本発明の方法に用いる検出技術は任意の適切な分析技術でよい。しかしながら、液体クロマトグラフィーの使用が好ましく、HPLCが特に好ましい。代わりとなる実施形態としてはハイフネーテッド技術(hyphenated technique)、即ち分光技術と結合した分離技術を含むものを都合よく用いてもよい。これらのハイフネーテッド技術の例としては、MS又はNMRを結合したLC及びGCを含み、LC−MSが好ましい。これらのハイフネーテッド技術は、予測マトリクス(無症候コントロール、有効者コントロール、及び効果の少ない者コントロールから作製する)をハイフネーテッド技術によるデータマトリクスに応用することで、「結果」、即ち、治療の成功の見込みの良し悪し、又は現行の治療の進行の良し悪しについての結果を生み出し得るという利点を有する。さらに、これらの予測マトリクスは、例えばWO02/03056に記載されているように、バイオマーカーの化学的同定なしでも作製することができる。従って、本発明は、更なる態様において、ハイフネーテッド分析技術のデータマトリクスに応用でき、例えば自閉症などの精神疾患のABA療法の効果の予後を示す値を提示する予測マトリクスを提供する。
【0024】
予測マトリクス及びハイフネーテッド分析技術の使用は分析されるサンプルがタンパク質や核酸を含む場合、例えば血液サンプルを用いる場合に特に適切である。この場合、サンプルは所望によりデオキシリボヌクレアーゼ又はプロテアーゼなどの酵素で前もって処理してもよい。このようにして、治療予後判定のための遺伝学的マーカーは、まだ同定されていない場合でも、予測マトリクスに貢献できる。予測マトリクスが、例えばオリゴヌクレオチドなどの核酸からの著しい貢献を含む場合には関連性のあるクロマトグラフィフラクションをさらに分析することで関連性のある遺伝子シーケンスやフラグメントを検出してもよい。
【0025】
予後判定マーカーが化学的に同定されている場合は、例えばWO02/090995に開示されているような自動測定装置で、例えばバッファ、抗体などすべての必要な測定試薬を含む測定カートリッジ(assay cartridge)を用いて測定するのが便利であると思われる。このように本発明は、更なる態様において、精神疾患についてのマーカー(例えば自閉症、即ちIAGなどの診断マーカー)又はそれらの精神疾患のABA療法の効果に対する予後判定マーカーの測定に用いるための測定カートリッジを提供する。実際に尿サンプルの測定を行なう場合には2つのこのようなカートリッジを用いるのが好ましい。一つ目はマーカーの値を確認し、二つ目は参照(reference)化合物、例えばクレアチニンの値を確認する。これにより、上述したようにマーカーの値が尿の濃度を考慮して調整され得る。
【0026】
本発明は、更なる態様において、例えば、ハイフネーテッド分析機械と機能的に連結され、本発明の予測マトリクスによりプログラム化されたコンピューターを提供する。本発明は、なお更なる一の態様において、本発明の予測マトリクスによりプログラム化されたデータキャリア、例えば、チップ、ディスク又はテープを提供する。
【0027】
ハイフネーテッド技術に基づく予測マトリクスに加えて、ハイフネーテッド若しくは非ハイフネーテッド分光若しくはクロマトグラフィー技術を用いて未知のサンプルに実行して既知(コントロール)サンプルとの比較を行う主成分分析(PCA)を使用し、予測又は予測マトリクスを作製してもよい。
【0028】
本発明の態様は、自閉症のみに関連するのではなく、より一般に応用でき、とりわけ、一般的には学習障害及び精神障害、例えば、精神遅滞、精神発達遅延、うつ病、精神分裂病、難読症及び注意欠陥障害(例えば、ADHD)に応用できる。このような場合、本発明は行動療法の有効可能性の予測に用いてもよい。また、行動療法を医薬品、例えば鎮静薬又はリタリンなどの他の精神に影響を与える薬による治療より優先して使用すべき場合の予測に用いてもよい。以上のように、これらは本発明の更なる態様を形成する。
【0029】
ここで下記の制限されない実施例及び添付図を参照しながら本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0030】
尿サンプルのHPLC検査
朝一番の尿として食べ物又は飲み物をとる前の尿を採集した。
尿をサンプル容器で採集し、−20℃に保存した。
尿を解凍し、環境温度において遠心機で4000xg、10分間回して、pHを測定し、コスター・スピンX(Costar Spin X)酢酸セルロースフィルターでろ過した。
尿のクレアチニンの含有量を標準的臨床手順により測定した。
250nMのクレアチンを含む尿をHPLCに用いた。
尿をアセトニトル勾配のトリフルオロ酢酸の逆相C18カラムを通過させた。
アセトニトルの濃度は10mMトリフルオロ酢酸溶液であり、勾配は下記のとおりである。
時間 アセトニトル(%)
15 0
75 40
80 60
89 60
94 0
115 0
【実施例2】
【0031】
HPLC結果
ピークは非常に一貫性がある。ピークは、典型的に22〜23分に溶出するメインピーク(馬尿酸―HA)の後にほとんど逸脱することなく順番に現れる。このようにすべての分子はその後順番に現れる。システムをバッファの濃度で操作することで他の分子の割り当てを許容しながらこの時点でHAが現れるようにする。各作業単位(run)でコントロールを幾つかの精製分子とともに流すことでそれらの溶出を検査する。
【0032】
興味のあるピークがHAに続く(ピーク0、識別ラベルした図4参照)。
括弧内はピークの溶出時間である。
無効者プールにおいて注目すべきピークは少なくともピーク1(24.6)、2(26.1)、4(30.4)、6(33.7)、10(43.5)である。
有効者プールにおいて注目すべきピークは少なくともピーク6(34.2)、7(35.7)、8(37.5)、10(43.4)である。
【0033】
ラベル化された図4は付加のピークを示しており、患者は説明したピークの完全なスペクトルを示していない。すべての患者が同じプロファイルを持っているわけではない。他の重要と思われるピークは、β−カソモルフィン 1−6(、β−カソモルフィン 1−7(61分)、β−カソモルフィン 1−8(63分)、デルトルフィン(A、56分)、デルトルフィン I又は(C)、デルトルフィン II又は(B)、デルモルフィン(59分)、A4 グルテモルフィン(42分)、グルテン エキソフィン A5(43分)、グルテン エキソフィン B5、グルテン エキソフィン C、グリアジノモルフィン(51〜52分)、β−カソモルフィン 1−5 アミド(65分)である。括弧内は対応する溶出時間である。
【実施例3】
【0034】
マススペクトル
C18逆相カラムとともにTOF−MSに用いられたキャピラリシステムを200〜2000でスキャンした。無効者の一人及び有効者の一人からサンプルを準備する。サンプルは単に流され、クレアチニンにより標準化されなかった。注目すべきなのは無効者と有効者のプロファイルの幾つかの相違点であり、最も明らかなのは有効者における34分の時の分子量が687.36のピークである。調べられた3人の無効者にはこのピークが存在しないことが検査により明らかになった。この患者と他の患者におけるHPLCクロマトグラムの検査により、化合物の絶対的な発現には大きな差異がないことが明らかになった。
【実施例4】
【0035】
脳性麻痺
一人は脳性麻痺であり、一人は脳性麻痺でない女性の一卵性双子から尿サンプルを採取し、実施例1と同様、HPLC分析を行った。脳性麻痺である双子及び脳性麻痺ではない双子のHPLCパターンをそれぞれ図7及び図8に示した。脳性麻痺である双子のパターンには脳性麻痺ではない双子のHPLCパターンにはない又はより顕著ではない、たくさんのピークを含んでいることがすぐに分る。
【0036】
これらの相違は再現可能であること、また、相違に関連する化合物はどうやら環境温度での長期間(>8時間)のインキュベーションや凍結/溶解サイクルの反復を通しても安定していることが分った。病気に襲われている双子でははっきりと現れるが、病気に襲われていない双子ではない又はより顕著でないHPLCピークの例として、11.920、14.800、22.667、27.120、30.213、34.667、39.707、41.333、42.240、47.093、及び86.240分のピークを含む。これらの数字は当然ながら小数点1又は2まで端数を切り上げてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、自閉症無症候コントロールセットの尿のHPLCのパターンである。
【図2】図2は、ABA療法が有効な自閉症患者セットからプールした尿のHPLCのパターンである。
【図3】図3は、ABA療法が無効な自閉症患者セットからプールした尿のHPLCのパターンである。
【図4A】図4Aは、ABA療法が無効な自閉症患者の尿のHPLCのパターンである。
【図4B】図4Bは、ABA療法が無効な自閉症患者の尿のHPLCのパターンである。
【図5】図5は、ABA療法が無効な自閉症患者の尿のマススペクトルのパターンである。
【図6】図6は、ABA療法が有効な自閉症患者の尿のマススペクトルのパターンである。
【図7】図7は、女性の一卵性双子中、脳性麻痺と診断された女性の尿のHPLCのパターンである。
【図8】図8は、図7の双子と同じ女性の双子の中、脳性麻痺無症候の女性の尿のHPLCのパターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者における精神疾患の応用行動分析療法に対する予後判定方法であって、前記精神疾患の応用行動分析療法の成否の見込みを示す化学的マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、及び所望により前記分析に基づき前記被験者の応用行動分析療法を開始、継続、又は中止することを含む、予後判定方法。
【請求項2】
ヒト被験者における応用行動分析療法の成否の見込みを示す化学的マーカーの測定方法であって、前記マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、所望により前記体組織又は体液における前記マーカーの含有量の指標を提供すること、及び所望によりABA療法に対する予後の指標を提供することを含む、測定方法。
【請求項3】
精神疾患を患う又はその疑いがあるヒト被験者のセラグノーシス(theragnosis)方法であって、前記精神疾患の治療コースの成否の見込みを示す化学的マーカーの有無について前記被験者の体組織又は体液サンプルを分析すること、及び所望により前記分析に基づき前記治療コースを開始、継続、又は中止することを含む、セラグノーシス方法。
【請求項4】
前記精神疾患は自閉症である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記精神疾患は脳性麻痺である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記被験者は既に前記精神疾患を患うと診断されている、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記被験者は子供である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルは尿サンプルである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
精神疾患のABA療法効果の予後を示す値を作り出すハイフネーテッド分析技術のデータマトリクスに応用できる、予測マトリクス。
【請求項10】
精神疾患のマーカー又は精神疾患のABA療法の効果に対する予後判定マーカーの測定に用いる測定カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−532033(P2008−532033A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557576(P2007−557576)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000699
【国際公開番号】WO2006/090185
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507289461)
【Fターム(参考)】