説明

臭素化ポリブタジエンポリマー粒子の形成及び脱揮方法

臭素化ブタジエンポリマーを、溶液から回収し、加熱され、機械的に撹拌されている種粒子床に前記溶液を噴霧することによって粒子の形態にする。種粒子床中で液滴が種粒子と接触し、種粒子の外側にポリマー層を形成し、それによって種粒子を拡大させる。液滴が種粒子床中で種粒子と接触した後、溶媒を液滴から除去する。この方法は、溶媒の除去とある程度大きい粒子の形成とを同時に行える。この方法は、多くても少量の凝集塊及び微粒子しか形成しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月18に出願された米国仮特許出願第61/089,711号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明はプロセス溶液又はスラリーから臭素化ポリブタジエンの脱揮粒子を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臭素化ブタジエンポリマーは、他のポリマー系のための難燃添加剤として注目されている。臭素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーは、例えばポリスチレンフォーム用の難燃添加剤として提案されている。注意深く製造すれば、臭素化ブタジエンポリマー及びコポリマーは十分に熱安定性であることができるので、押出成形又は射出成形のような溶融加工操作において別のバルクポリマーと共に加工できる。火災状況において遭遇するような比較的高温においては、臭素化ブタジエンポリマーはHBrを放出する。HBrは火炎抑制機能を果たすと考えられている。
【0004】
臭素化ブタジエンポリマーは、一般に、元素状臭素又は三臭素化第四アンモニウムを臭素源として用いて、出発ブタジエンポリマーを臭素化させることによって製造される。臭素を用いる直接臭素化方法が特許文献1に記載されている。特許文献2は臭素化剤がフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドである、ブタジエンコポリマーの臭素化方法を記載している。
【0005】
臭素化方法は溶解した出発ポリマーを用いて実施される。臭素化ポリマー生成物は、通常、溶液中にとどまるが、一部分が析出して湿潤スラリーを形成することもある。臭素化生成物はプロセス溶媒から分離する必要がある。その後の取り扱いを容易にするためには、臭素化コポリマーは、少なくとも0.5mmの体積平均粒度を有する粒子の形態にしなければならない。粒子は、場合によっては、15mmにも及ぶことがある。
【0006】
これを実施するためのいくつかのアプローチが当業界に存在する。臭素化ポリマー溶液を一連のフラッシュ室中で加熱して溶媒を除去する普通の脱揮方法を使用できる。ポリマー溶液は、この方法の終わり近くで非常に粘稠になる。その結果、溶媒の除去に長い滞留時間が必要となり、臭素化ポリマーは多量の熱に暴露される。このため、臭素化ブタジエンポリマーは分解するか、又は不純物を含むようになる。ポリマーは、次に、その後の工程で機械的又は熱的に(溶融又は熱可塑化によって)粒子の形態にしなければならない。
【0007】
別のアプローチでは、臭素化ポリマー溶液の噴霧によって、液滴(droplets)が形成される。液滴は加熱して、溶媒を飛ばす。臭素化ポリブタジエンの固体粒子が形成される。固体粒子は水のような非溶媒液体中に分散させ、粒子を洗浄し、溶解不純物を除去する。非溶媒液体は、通常は、粒子から残留溶媒を容易に追い出すために加熱する。この方法は効果的であるが、多量の流体を取り扱い且つ回収しなければならない点で不利である。そのため、投資コスト及び運転コストが、所望のコストよりも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/021418
【特許文献2】WO2008/021417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、臭素化ブタジエンポリマーから溶媒を効率的に除去でき且つ臭素化ポリマーを効率的に粒子の形態にできる方法が必要とされている。理想的には、この方法は、臭素化ポリマーを高温に暴露する必要がなく、又は高温が必要であるとしても、高温への臭素化ポリマーの暴露時間がごく短時間でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一面において、臭素化ブタジエンポリマーの溶液を液滴の形態にし、前記液滴を加熱され、機械的に撹拌されている種粒子床と接触させ、それによって個々の粒子を実質的に凝集させることなく、液滴を種粒子表面に被覆し且つ被覆種粒子から溶媒を揮発させて、臭素化ブタジエンポリマーの固体外層を有する実質的に凝集していない粒子を形成することを含んでなる、臭素化ブタジエンポリマー粒子の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法は、臭素化ブタジエンポリマーからの溶媒の除去とポリマーからの粒子の形成を同時に行う。本発明によれば、粒子は、1つ又はそれ以上の成長段階を経て任意の好都合の粒度まで成長させることができる。ニートな臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度より低い、中温の(moderate)処理温度を使用する。このような中温は、発生する熱分解量を減少させ、その結果として臭素化ブタジエンポリマー中に取り込まれる不純物を減少させる。この方法は、連続式又は回分式のいずれで実施してもよい。
【0012】
本発明の方法の出発原料である臭素化ブタジエンポリマー溶液は臭素化ブタジエンポリマーと少なくとも1種の溶媒とを含む。臭素化ブタジエンポリマーはブタジエンのポリマー又はコポリマーの臭素化によって形成される。適当な出発ブタジエンポリマー及びコポリマーについては後述する。臭素化ポリマーは、好ましくは、本質的に全ての臭素化が出発ポリマーの脂肪族炭素−炭素不飽和の位置で起こるように、選択的に臭素化される。詳細には、ポリマーは、好ましくは、存在し得る芳香環上ではほとんど又は全く臭素化されない。より好ましくは、ポリマーは第三炭素原子上ではほとんど又は全く臭素化されておらず、臭化水素化された位置(即ちHBrからの臭素及び水素が二重結合に付加した位置)を含まず、エーテル基も他の酸素含有基もほとんど又は全く含まない。これらの基が相当量存在すると、臭素化ブタジエンポリマーの熱安定性が低下する傾向がある。また、出発ポリマー中のブタジエン単位の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更に好ましくは少なくとも98%が臭素化されているのが好ましい。出発原料から持ち越された残留脂肪族炭素−炭素二重結合は、臭素化ポリマーを溶融加工操作に用いる場合に、ゲル化又は他の不所望な反応を引き起こすおそれがある。
【0013】
溶媒は、処理温度及び圧力において、液滴から急速に除去され得る十分な蒸気圧を有する必要がある。溶媒は、好ましくは、大気圧又は若干の減圧下で、ニートな臭素化ブタジエンポリマーの最も高いガラス転移温度より低い温度において、沸騰する。適当な溶媒の例としては、エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ハロゲン化アルカン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン(CH2BrCl)、ジブロモメタン及び1,2−ジクロロエタン;炭化水素、例えばシクロヘキサン及びトルエン;並びにハロゲン化芳香族化合物、例えばブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンが挙げられる。溶媒は、好ましくは、非プロトン性であり、例えば酸素、イオウ又は窒素のようなヘテロ原子に結合した水素原子を含まない。溶媒は溶媒の混合物、例えばハロゲン化溶媒のような溶媒と少量の炭化水素溶媒との混合物であることができる。
【0014】
臭素化ブタジエンポリマー溶液は、出発ブタジエンポリマーが元素状臭素で臭素化される直接臭素化方法から得ることができる。特許文献1(WO2008/021418)に記載されるように、臭素化反応時には脂肪族アルコールが存在できる。得られた臭素化ブタジエンポリマー溶液は、本発明に従って処理する前に、抽出、洗浄又は他の有用な方法によって残留臭素及び他の副生成物を除去できる。
【0015】
別法として、臭素化ブタジエンポリマー溶液は、出発ブタジエンポリマーを三臭素化第四アンモニウムで臭素化させることによって得ることもできる。好ましいこのような方法において、出発ブタジエンポリマーと三臭素化第四アンモニウムとは、それらが反応して臭素化ブタジエンポリマーの溶液と一臭素化第四アンモニウム副生成物とを生成するような反応条件下で、接触させる。好ましくは、一臭素化第四アンモニウムを、還元剤を含む水相によって抽出して、臭素化ポリマー溶液から一臭素化第四アンモニウムを除去する。
【0016】
臭素化ブタジエンポリマー溶液は処理温度において液体であるので、液滴(droplets)の形態にすることができる。
【0017】
溶媒を除去し且つ粒子を形成するために、臭素化ブタジエンポリマー溶液を液滴の形態にし、加熱され、機械的に撹拌されている種粒子床上に分散させる。反応器中への液滴の導入は、ヘッドスペースへの噴霧によって且つ/又は機械的撹拌されている種粒子床中への直接導入によって、実施できる。
【0018】
液滴は種々の噴霧ノズルを用いて形成できる。溶液が、充分に低い粘度を有する場合には、単一流体ノズルを用いて液滴を生成できる。必要に応じて供給圧力を調整して、一定範囲の粘度を有する溶液から液滴を形成できる。より粘度の高い溶液は、溶液の霧化を助けるために臭素化ブタジエンポリマー溶液と同時にガスをノズルから噴霧する二流体ノズルを用いて、液滴の形態にすることができる。霧化に使用するガスは、スイープガスとしても働いて、機械的撹拌されている粒子床からの溶媒蒸気の除去に役立つであろう。
【0019】
臭素化ブタジエンポリマーの濃度及びポリマー溶液の温度は、いずれも、粘度に大きい影響を及ぼす。濃度が高いほど粘度が増加し、温度が高いほど粘度が低下する。臭素化ブタジエンポリマー溶液は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%の臭素化ブタジエンポリマーを含む。
【0020】
臭素化ブタジエンポリマー溶液は、機械的に撹拌されている固体床中に直接挿入されたパイプを通して、反応器中に導入できる。この場合には、好ましくは、取り付けられた高剪断「チョッパー(chopper)」ミキサーに近接してパイプの出口を配置することによって、ミキサーが機械的に撹拌されている固体床の表面下となるようにする。「チョッパー」ミキサーは、溶液を分割して液滴にする。このような高剪断チョッパーは、Littleford Dayなどによって販売されているプロウシェアミキサー(plowshare mixer)として商業的に入手可能である。
【0021】
特に好ましい方法においては、臭素化ブタジエンポリマー溶液を、それが直前の上流プロセス工程において生成されるのと同じ温度(例えば、±10℃)及び同じ溶媒含量で導入する。これにより、溶液の処理前に溶媒の除去及び粒子の形成のために溶液の温度及び/又は濃度を調整する必要性が小さくなるか又は全くなくなる。直前の上流プロセス工程は、例えば出発ブタジエンポリマーを元素状臭素(例えば特許文献1(WO2008/021418)に記載)、三臭素化第四アンモニウム(例えば特許文献2(WO2008/021417)に記載)又は三フッ化第四ホスホニウムのような臭素化剤と接触させる臭素化工程であることができる。直前の上流プロセス工程は、臭素化工程から得られた粗製臭素化ブタジエンポリマーを、典型的には、還元剤を含む水で抽出して臭素化ブタジエン溶液の洗浄溶液を生成する、水抽出工程であってもよい。
【0022】
種粒子は、この方法の条件下で固体であり、この方法の条件下で熱的及び化学的に安定であり且つ臭素化ブタジエンポリマーと不所望に反応しない任意の材料であることができる。種粒子は、この方法において融解又は軟化しないように、ニートな臭素化ブタジエンポリマーと少なくとも等しい融解温度及び/又はガラス転移温度を有する必要がある。種粒子は、この方法の条件下で溶媒に溶解してはならない。種粒子を形成する材料は、また、臭素化ブタジエンポリマーを使用できる下流の用途において存在が許容され得るものでなければならない。
【0023】
従って、例えば、種粒子は、同一の臭素化ブタジエンポリマーの粒子であっても、異なる臭素化ブタジエンポリマーの粒子であってもよい。例えば、この方法において得られる粒子のごく一部を再粉砕して、種粒子を形成してもよい。この方法の間に生成される微粒子を種粒子として用いることもできる。
【0024】
他のポリマーも種粒子として使用できる。種粒子は下流操作で臭素化ブタジエンがブレンドされるであろうポリマーの粒子であってもよい。例えば臭素化ブタジエン粒子をポリスチレンフォーム用の難燃添加剤として用いようとする場合には、ポリスチレンが種粒子であってもよい。このような場合には、この方法で形成される粒子は、種粒子ポリマー及び臭素化ポリマー粒子の両者を含む複合粒子となるであろう。
【0025】
別法として、種々の無機又は有機材料を種粒子として使用できる。
【0026】
種粒子の体積粒径中央値(volume median particle size)は、好ましくは最終生成物の直径の約10〜90%、より好ましくは10〜70%である。より好ましい範囲は、この方法の間に粒子の体積を約2.9〜約1000倍増加させる。絶対量では、種粒子は、好ましくは約50〜3000ミクロンの体積粒径中央値を有する。種粒子は、好ましくは少なくとも500ミクロン、より好ましくは少なくとも1300ミクロンの体積粒径中央値を有する。種粒子は、好ましくは2000ミクロン以下、より好ましくは1400ミクロン以下の体積粒径中央値を有する。
【0027】
種粒子は、臭素化ブタジエンポリマー溶液の液滴と接触させながら、加熱及び機械的撹拌できる容器中に入れる。容器の具体的な設計は重要ではない。容器は、減圧下で操作できるのが好ましい。容器は、連続操作又は回分操作のいずれにも適することができる。容器はまた、1つの容器中で生成された生成物が種として次の容器に移されるような、連続的に又は断続的に操作される一連のこのような容器の形態であってもよい。
【0028】
容器は、種々の型のベント、排気筒などのような、揮発された溶媒を除去するための手段を具備しなければならない。操作中に容器から外へのガスの正流(positive flow)を作るために且つ/又は容器中に望ましい減圧を作るために、容器はポンプ、ファン又は他の装置を備えることができる。好ましくは、排気ガスを濾過して、同伴液滴、又はこの方法において形成される可能性がある臭素化ブタジエンポリマー微粒子を除去する。容器は、また、好ましくは、内圧を制御しながら、容器中にガスを入れることができる1つ又はそれ以上の入口を備える。これにより、圧力制御が可能となり、所望ならば容器を通るスイープガス流の作成が可能となる。装置は容器から除去された揮発溶媒の凝縮手段を更に備える。
【0029】
好ましい型の容器は、複数の撹拌部材が取り付けられた軸方向に回転するシャフトを有する水平向きの円筒容器である。撹拌部材は、シャフトとの回転時に種粒子中を通過して、必要な機械的撹拌を提供する「プロウ」の形状であることができる。熱は、外部ジャケットを通して外部から適用できる。この型のいわゆる「プロウシェア」反応器は、Littleford Day(Florence,Kentucky)から市販されている。
【0030】
この方法の開始時に存在する種粒子の量は、装置設計の検討事項及び望ましい粒子成長によって決定される。回分法の開始時には、最低限でも、機械的撹拌機と接触して撹拌機の作用によって流動化され得る十分な種粒子が、容器中になければならない。この方法は一般に、臭素化ブタジエンポリマー溶液の液滴が導入されるスペース及び/又は溶媒が揮発するスペースを取るために、ある程度のヘッドスペースが容器中で常に利用できることを必要とする。従って、種粒子の存在量は、この方法において起こる粒子成長の量を考慮に入れなければならない。ヘッドスペースは、この方法の間は常に容器の利用可能容積の少なくとも25%とする必要がある。
【0031】
種粒子は容器内部で操作温度まで加熱し、(必要ならば)容器内の圧力を所望の圧力にする。必要に応じて、スイープガス流を作る。種粒子は機械的撹拌機の作用によって流動化させ、臭素化ブタジエンポリマー溶液は液滴の形態で反応器に導入する。液滴は、容器のヘッドスペースに導入されるミスト若しくはスプレーの形態を取ってしてもよいし、又はチョッパーのような機械的手段を用いて種粒子床内に導入してもよい。溶液の導入中は、操作温度及び圧力、スイープガスの流れ(もしあれば)並びに機械的撹拌を持続する。
【0032】
臭素化ブタジエンポリマー溶液の液滴は種粒子の床と接触し、ここで溶媒が液滴から揮発し、臭素化ブタジエンポリマーが固化して、個々の粒子上に被膜を形成する。液滴が種粒子と接触する前に、若干の溶媒が液滴から揮発する場合がある。液滴が、粒子との接触時に種粒子を被覆し且つ種粒子に付着し得る流体の形態であり続けるのに十分な溶媒が液滴中に残っているならば、このような揮発は許容され得る。液滴が種粒子床と接触する前に過度に多い溶媒が液滴から揮発する場合には、微粒子が生成される。これはそのような場合には、液滴が、種粒子の表面に付着しない硬化粒子を形成するためである。
【0033】
液滴は種粒子と接触し、その際に各液滴は1つの種粒子の外側の少なくとも一部を被覆する。十分な機械的撹拌を行うと、液滴は個々の粒子の表面に分散されてシェル又は部分シェル(partial shell)を形成する傾向が強い。液滴は全粒子に分布される傾向が強く、その結果、この方法の所定の時点で形成される臭素化ブタジエンポリマー層は全粒子上でほぼ等しい厚さとなる。直径の小さい種粒子の場合には、この層の直径は大きな相対的変化を生じ得る。直径の大きい種粒子の場合には、この層の直径は相対的変化がごく小さい。従って、粒子の直径の相対的増加は、経時的に小さくなっていく傾向がある。成長している粒子は、通常、ある程度平滑で丸みを帯びた表面と、ある程度球状の形状を呈している。
【0034】
液滴が種粒子と接触して種粒子上に被膜を形成した後、液滴から溶媒を除去する。被覆粒子からの溶媒の除去は、被覆粒子が、反応器にその後に導入される後続液滴と接触する前に行うのが理想的である。このような溶媒の除去により、臭素化ブタジエンポリマーが種粒子表面に析出し、付着性であるが不粘着性の固体被膜が形成される。適用された被膜中の溶媒含量は、5重量%以下、より好ましくは1重量%以下まで減少させるのが一般に好ましい。溶媒がこのようなレベルの場合には、被膜は一般に粘着性でなく、従って、被覆粒子同士がくっつき合う傾向はほとんどない。溶媒含量は、所望ならば、より低いレベルに減少させることができる。以下に記載するように、粒子の溶媒含量を更に減少させるために、脱揮工程を実施することができる。
【0035】
液滴が粒子と接触したら、溶媒は極めて迅速に除去しなければならない。適用被膜中に相当量の溶媒が存在すると、粒子同士がくっつき合い、凝集塊又は他の大きな塊を形成するおそれがある。このような凝集又は付着が起こる理由としては、表面に液相が存在することによる表面張力作用若しくは粒子間の毛細管現象、粒子間の凝集力、溶媒が完全に除去されていないために表面が粘着性であることなどが考えられる。
【0036】
溶媒の除去が遅すぎると、粒子床が湿る場合が多い。粒子床は実質的に乾燥した状態であり続けなければならない。「実質的に乾燥した」とは、床中の粒子が単一粒子として、又はおそらくは、少数の粒子からなる短寿命凝集塊として流動化され得ることを意味する。このような短寿命凝集塊は通常、静電力又はファン・デル・ワールス力によって団結し、永久に結合されるのではない。実質的に乾燥した床においては、床中の液体材料(例えば溶媒、溶解臭素化ブタジエンポリマー又は溶融臭素化ブタジエンポリマー)の量は常に十分に少ないので、粒子がくっつき合ったり、凝集したりすることはそれほどない。湿潤床は、通常、粒子中の溶媒の重量及びより大きい塊への粒子の付着又は凝集のため、流動化がより困難になる。床の流動化に必要なエネルギーは増加する。これは、機械的撹拌機を所定の速度で操作するのに必要なエネルギーの増加、又は所定のエネルギー入力での撹拌速度の低下によって、明白に示される。従って、機械的撹拌機の操作のために消費されるエネルギーの増加及び/又は機械的撹拌機の出力の減少は、場合によっては、粒子床が湿潤したことを示すことがある。
【0037】
液滴から除去された溶媒はガスを形成する。ガスは、反応器から取り出されなければ反応器中に蓄積し、反応器内の圧力を増加させるであろう。蒸発した溶媒は、方法を減圧下で実施することによって、反応器を通過するスイープガス流を作ることよって、又は単に容器をガス抜きすることによって、反応器からうまい具合に除去される。これらの方法のいくつかを組合せて使用してもよい。蒸発溶媒の燃焼リスクを減少させるために、スイープガスの含有酸素を、空気に比較して減少させることができる。
【0038】
前述のようにして被膜を適用するにつれて、粒子の大きさが増大する。時間と共に、粒子表面への液滴の連続堆積及び乾燥によって、個々の粒子に多数の被膜が適用され、各連続被膜層の形成につれて、粒子の大きさが増大する。粒子が所望の大きさとなるまで、この方法を続ける。
【0039】
この方法の操作は、相互に関係するいくつかの操作パラメーター、例えば操作温度、操作圧力、液滴の大きさ、容器への液滴の導入速度、固体床の質量及びその粒度分布、使用する個々の溶媒、並びに粒子の撹拌速度などに左右される。従って、このような操作パラメーターを互いに組合せて選択することにより、方法を前述のようにして実施する。主に回避すべきなのは、粒子の凝集と過剰な微粒子形成である。
【0040】
操作温度は、好ましくはニートな臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度未満である。臭素化ブタジエンポリマーが複数のガラス転移温度を有する場合には、操作温度は最も高いガラス転移温度より低くなければならない。これにより、臭素化ブタジエンポリマーは、溶媒除去時に、種粒子の表面に非粘着性の固体被膜を形成できる。本発明では、「ニートな」臭素化ブタジエンポリマーは1重量%以下のプロセス溶媒を含む。好ましくは、操作温度は、ニートな臭素化ブタジエンポリマーの最も高いガラス転移温度よりも少なくとも10℃低い。110℃未満のプロセス温度は、ほとんどの場合、臭素化ブタジエンポリマーの最も高いガラス転移温度よりも低い。しかし、この方法で多くの場合に見られる滞留時間(典型的には1〜10時間)による、この方法における臭素化ブタジエンポリマーの熱分解を最小限に抑えるためには、若干低い処理温度で操作するのがより好ましい。特に好ましい温度は40〜70℃である。
【0041】
種粒子が臭素化ブタジエンポリマーよりも低い温度で融解し、昇華し、分解し、反応し又は軟化する材料でできている場合には、種粒子がプロセスの間中熱的及び化学的に安定であり続けるように、操作温度は更に十分に低くなければならない。「熱的に安定(thermally stable)」とは、当該材料が操作条件下で熱によって分解も反応もせず、融解もせず、昇華もせず又はその他の方法で流体を形成することもないことを意味する。
【0042】
溶媒の揮発速度は言うまでもなく、操作圧力及び操作温度に左右される。一般に、一定温度においては、操作圧力が低いほど溶媒の急速な揮発に有利である。場合によっては、溶媒の除去速度を増加させるために、操作圧力は、大気圧未満に減少させることができる。これは、例えば、種粒子床が湿った場合又は操作速度が所望の速度より遅い場合に、実施する。例えば前記床を乾燥状態に保つためには、個々の操作温度において溶媒の蒸気圧未満である圧力でプロセスを実施するのが好ましい。或いは、液滴からの溶媒除去速度を減少させるためには、場合によっては、操作圧力を増加させることができる。このことは、例えば液滴が種粒子床と接触する前に過度に多い溶媒が液滴から除去されており、その結果として微粒子が生成されている場合に実施することができる。
【0043】
場合によっては、減圧で操作を行うと、そうでない場合には使用できないある種の溶媒が使用可能になる。例えば、溶媒が大気圧において、ニートな臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度より高い沸点を有する場合には、操作圧力の低下によってその溶媒の使用が可能になることがある。操作圧力は、臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度に対して影響があったとしてもほとんどない。従って、その場合、操作圧力の低下により、そうしなければ使用できないであろうより高沸点の溶媒を、ニートな臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度より低い温度で急速に揮発させることが可能になる。
【0044】
従って、ニートな臭素化ブタジエンポリマーのガラス転移温度より低い温度で操作しながら、溶媒の揮発に必要な速度が得られるように、操作温度及び操作圧力を合わせて選択する。好ましい操作圧力は、操作温度(即ち種粒子床の温度)において溶媒の蒸気圧より低い。操作圧力は、例えば1〜50kPa(絶対)又は10〜40kPa(絶対)であることができる。
【0045】
非常に小さい液滴寸法は、本発明方法に悪影響を及ぼすおそれがある。小さい液滴は、容器のヘッドスペースを通過する際に、より大きい液滴よりも急速に溶媒を失う。液滴は濃縮されるので固化し、結果として種粒子床中の粒子を被覆しないおそれがある。そのため、いずれの個別条件群下でも、小さい液滴は、大きい液滴よりも微粒子を生成する可能性が高い。微粒子が形成されるか又は粒子が凝集する可能性が生じる前に溶媒が除去されるように、種粒子床を十分に機械的に撹拌するのであれば、多少大きい液滴は許容できる。
【0046】
同様に、種粒子床の凝集及び湿潤を制御するために、液滴の導入速度を、単独で又は他の操作パラメーターと組合せて調整することができる。液滴の添加速度も微粒子の形成に影響を与えるおそれがある。液滴の添加速度が速すぎると、かなりの割合の臭素化ブタジエン液滴が、後続の液滴が種粒子と接触する前に種粒子表面で固化する時間が十分でなくなる。このため、この軟層が大きい粒子から剥がれ落ち、微粒子が形成される可能性がある。いずれの操作条件群下でも、このように微粒子を形成することなく、プロセスを操作できる最大成長速度がある。一般にこの上限は各系について求めなければならないが、粒径増加速度の上限は、操作時間1時間当たり約50〜100ミクロン程度である場合が多い。場合によっては、これらよりも速い成長速度を達成することが可能なこともある。この上限で操作する必要はなく、いずれの系の実際の操作においても、より遅い成長速度を達成することができる。
【0047】
溶媒の選択は言うまでもなく、臭素化ブタジエン溶液からの溶媒の揮発性に影響を及ぼす。
【0048】
種粒子床の凝集及び湿潤は、機械的撹拌の速度に左右され得る。強く撹拌されている床ほど、個々の粒子が互いに分離される可能性が高いため、所定の操作条件群下で乾燥したままでいる傾向が強い。粒子の分離により、個々の粒子の表面は、容器の加熱表面及び容器のヘッドスペース中の雰囲気と接触する可能性が高くなり、そこで粒子は溶媒を揮発させるためのエネルギーを効率的に吸収できる。撹拌の増加によっても、機械的作用によってより多くの熱エネルギーが粒子に与えられ、それが粒子の温度を上昇させる傾向が強い。従って、撹拌の増加も、溶媒の急速な揮発に有利である。粒子床は撹拌によって加熱される傾向が強いので、激しく撹拌しすぎると床が過熱されるおそれがある。このため、機械的撹拌によって供給される機械的エネルギーの量は、望ましいか又は必要な最大操作温度を超えないように、制限する場合もある。機械的撹拌によって過度に加熱される場合には、プロセス温度を制御するために、容器外面を冷却することができる。一般に、コスト面からは、機械的撹拌機による機械的エネルギー入力が低い方が有利である。但し、これは言うまでもなく、床が乾燥したままであり、所望の操作温度の維持に必要と考えられる残りの熱エネルギーが容器の外面から供給されることが前提である。
【0049】
臭素化ポリマーの供給は、所望の粒度が達成されるまで又は容器が更なる粒子の成長に対応できなくなるまで、続ける。後者の状態は、典型的には、粒子が容器内の利用可能体積の約70〜75%を満たす場合に起こる。これは、蒸気の離脱を可能にするのにある程度のヘッドスペースが必要であるためである。容器が更なる粒子の成長に対応できない場合には、臭素化ブタジエンの供給を中止しなければならず、且つ/又は粒子が所望の粒度に達していなくても、粒子の一部を除去せざるを得ない。
【0050】
従って、一つの操作モードにおいては、反応器が更なる粒子の成長に対応できなくなるまで、粒子を成長させる。その時点で、粒子の一部を除去し、プロセスを残りの粒子を用いて再開し、再び、所望の粒度が得られるまで又は容器が再度それ以上の粒子の成長に対応できなくなるまで、粒子を成長させる。その時点で、粒子を更に除去することができ、所望の粒度が得られるまでプロセスを無限に繰り返すことができる。このプロセスの種々の段階から除去された粒子は別個により大きい粒度まで成長させてもよいし、又は溶媒に再溶解させて、液滴の形態でこのプロセスに再導入してもよい。プロセスの各反復操作において、粒子は反復操作毎に逐次的に大きくなるので、単位体積当たりの粒子表面積が減少することに注目されたい。各逐次反復操作において、単位体積当たりの表面積がこのように小さくなるほど、半径方向の成長速度は大きくなるので、微粒子の生成をもたらすであろう半径方向の成長の上限を超える操作を回避するために、後の反復操作ほど臭素化ブタジエンポリマー溶液の供給速度を遅くする必要があると考えられる。
【0051】
別の操作モードにおいては、粒子は、所望の粒度が得られるまで、複数の反応器中で段階的に成長させる。この操作モードは、最終粒子が種粒子より著しく大きい(例えば2倍又はそれ以上大きい)直径を有する回分法に特に適する。この操作モードでは、粒子を第1反応器中で、反応器が更なる粒子の成長に対応できなくなるまで(又は別の中間粒度まで)成長させる。次に、粒子を、粒子が更に成長できる1つ又はそれ以上の他の反応器に移す(粒子の全てを移す場合には、反応器はより大きい)。
【0052】
本発明方法は連続的に実施できる。連続操作においては、床中の粒子の一部を、プロセスを実施しながら連続的又は断続的に除去し、新しい種粒子を、プロセスを実施しながら連続的又は断続的に種粒子床に供給する。連続操作モードにおいては、下記の安定なポピュレーションバランスを維持するために、添加する種粒子の数は、常に、生成物として除去される粒子の数に厳密に一致しなければならない。取り出した粒子は、反応器中で種々の粒度の断面を示すであろう。取り出した粒子は篩い分け又は他の適当な方法によって粒子サイズで分類して、望ましい粒子サイズの粒子を分離して取り出し、より小さい粒子を種粒子としてプロセスに戻すことができる。別法として、より小さい粒子を本明細書中に記載した型の別の反応器に送り、そこで更に成長させることもできる。より小さい粒子はまた、溶媒に再溶解させて、このプロセスで再利用することもできる。
【0053】
本発明の或る態様においては、反応器中の粒子のポピュレーションがプロセスの操作中、本質的に一定であり続けるように、プロセスを安定したポピュレーションバランスで実施する。このような場合、臭素化ブタジエンポリマー溶液が添加され且つ粒子が成長するにつれて、反応器中の粒子の数は、プロセスの初めに装入された種粒子の数にほぼ等しいまま推移する(例えば出発種粒子の数と比較して±5%又は±2%)。ほとんどの回分法において、安定したポピュレーションバランスが得られる。連続法においては、プロセスに装入された種粒子の数が取り出される粒子の数に常にほぼ等しい場合には、安定したポピュレーションバランスが維持される。安定したポピュレーションバランスが維持される場合には、プロセスに導入される臭素化ブタジエンポリマーの本質的に全てが、新しい粒子を形成するのではなく、種粒子を被覆し且つ成長させるのに消費される。安定したポピュレーションバランスの維持は、生成物粒子のより狭い粒子サイズ分布に有利である。プロセスの実施中に反応器中の粒子の数が著しく変化する場合には、このような変化は、連続的又は断続的に取り出される粒子の粒子サイズ分布の拡大につながるおそれがある。
【0054】
粒子が所望の粒子サイズに達したら、臭素化ブタジエン溶液の供給を停止する。粒子から残留溶媒を追い出し且つ凝集を防ぐために、粒子を後に一定時間、機械的に撹拌し続けることができる。温度及び/又は圧力条件も、同じ理由から保持することができる。微粒子の生成はもはや問題とはならないので、この段階では、臭素化ブタジエンポリマー溶液の添加中の操作条件に比較して、温度を上昇させ且つ/又は圧力を低下させることが可能である。但し、このより高い温度は、粒子の凝集や熱分解を起こすほど高くはないことが前提である。この段階で、粒子中の溶媒含量は1000ppm未満、好ましくは100ppm未満まで減少させるのが望ましいことが多い。この脱揮は、粒子を成長させるのに用いた型の機械的撹拌反応器又は別の型の反応器のいずれでも実施してよい。脱揮は、粒子成長プロセスの最後に反応器中で実施できる。場合によっては、サイクル時間の短縮(ひいては生産速度の増加)のために又は他の理由で、より高い温度を使用できるような、粒子成長プロセスに用いたのとは異なる装置中で脱揮を行うことが好ましい。
【0055】
生成物粒子は、所望ならば篩い分け又は他の適当な手段によって粒子サイズで分類することができる。より小さい粒子は、この方法に循還させて更に成長させることもできるし、種粒子として使用することもできるし、或いは溶媒中に再溶解させてこの方法に循還させることもできる。生成物の一部は、所望ならば、粉砕して更なる種粒子を形成することもできる。微粒子は、大きさが十分であれば種粒子として使用することもできるし、或いは溶媒に再溶解させ、供給溶液として本プロセスに再導入して、液滴を生成することもできる。
【0056】
生成物粒子は、好ましくは0.5〜15mm、特に1〜10mmの体積平均粒子サイズを有する。
【0057】
本発明方法を正しく実施すれば、粒子の凝集はほとんど又は全く起こらない。本発明方法において、凝集が回避されるか又は最小である場合には、種粒子の粒子サイズとプロセスにおいて導入される臭素化ブタジエンポリマー溶液の量から生成物の粒子サイズを予測できる。粒子が凝集すると、著しく大きい、即ち、予測される粒子サイズの少なくとも2倍の大きさの塊が形成される。従って、凝集塊の形成は生成物の平均粒子サイズを増大させる。また、凝集塊の存在により、粒子サイズ分布が拡大されるか、或いはより大きい粒子の「テール(tail)」が生じるであろう。凝集塊は、また、ほとんどの場合、目視検査又は顕微鏡検査を実施すれば明らかである。このような検査では、凝集塊は、2つ又はそれ以上の融合した一次粒子の塊のように見える。本発明では、凝集塊は、本プロセスで生成される粒子(即ち粒子サイズによる分類の前の、取り出されたままの粒子)の5重量%以下、好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下でなければならない。
【0058】
臭素化ブタジエンポリマー溶液は、生成物粒子中に組み込まれることができる1種又はそれ以上の添加剤を含むことができる。添加剤は、プロセス温度において溶媒に可溶であり且つ安定でなければならない。添加剤は、プロセスの操作条件下で、粒子に適用される臭素化ブタジエンポリマー被膜を粘着性にするものであってはならない。添加剤は、ブタジエンポリマー中に混和性又は可溶性であることができるが、必ずしもその必要はない。この種の添加剤の例としては、例えば難燃添加剤、難燃補助剤、熱安定剤、紫外線安定剤、成核剤、酸化防止剤、発泡剤、酸掃去剤及び着色剤などが挙げられる。
【0059】
更に、1種又はそれ以上の他のポリマーも臭素化ブタジエンポリマー溶液中に存在できる。このような場合には、本発明方法で生成される粒子は、臭素化ブタジエンポリマーと溶液中に存在する任意の他のポリマーとのブレンドとなるであろう。
【0060】
臭素化ブタジエンポリマーは、上流のプロセスで出発ブタジエンポリマーから製造される。出発ブタジエンポリマーはホモポリマーであることができるが、多くの場合、ブタジエンと1種又はそれ以上の他のモノマーとのコポリマーであろう。臭素化ブタジエンホモポリマーは、この方法で使用するにはガラス転移温度が低すぎる場合がある。ガラス転移温度が非常に低い場合には、粘着性のポリマー被膜が形成され、それが粒子の凝集につながる。
【0061】
ブタジエンコポリマーはランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれであってもよく、少なくとも10重量%の重合ポリブタジエンを含まなければならない。ブタジエンは重合して、2つの型の反復単位を形成する。本明細書中で「1,2−ブタジエン単位」と称する1つの型は、
【0062】
【化1】

【0063】
の形態を取るので、ポリマーに側鎖不飽和基を導入する。本明細書中で「1,4−ブタジエン」単位と称する第2の型は、−CH2−CH=CH−CH2−の形態を取り、ポリマー主鎖に不飽和を導入する。ブタジエンポリマーは少なくとも若干の1,2−ブタジエン単位を含まなければならない。ブタジエンポリマー中のブタジエン単位のうち、適当には少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%。更に好ましくは少なくとも25%が1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位はブタジエンポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%又は少なくとも70%を占めることができる。1,2−ブタジエン単位の割合は、ポリマー中のブタジエン単位の85%超、又は更には90%超であってもよい。
【0064】
制御された1,2−ブタジエン含量を有するブタジエンポリマーの製造方法は、J.F.Henderson and M.Szwarc,Journal of Polymer Science(D,Macromolecular Review),Volume 3,page 317(1968);Y.Tanaka,Y.Takeuchi,M.Kobayashi及びTadokoro,J.Polym.Sci.A-2,9,43〜57(1971);J.Zymona,E.Santte 及びH.Harwood,Macromolecules,6,129〜133(1973);並びにH.Ashitakaら,J.Polym.Sci.Polym.Chem.,21,1853〜1860(1983)に記載されている。
【0065】
好ましい出発材料は、ブタジエンと少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとのランダム、ブロック又はグラフトコポリマーである。「ビニル芳香族」モノマーは、重合可能なエチレン性不飽和基が芳香環の炭素原子に直接結合した芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーには、非置換物質、例えばスチレン及びビニルナフタレン並びにエチレン性不飽和基上で置換された且つ/又は環置換された化合物がある。環置換ビニル芳香族モノマーはハロゲン、アルコキシル、ニトロ又は非置換若しくは置換アルキル基が芳香環の炭素原子に直接結合したものを含む。このような環置換ビニル芳香族モノマーの例としては、2−若しくは4−ブロモスチレン、2−若しくは4−クロロスチレン、2−若しくは4−メトキシスチレン、2−若しくは4−ニトロスチレン、2−若しくは4−メチルスチレン及び2,4−ジメチルスチレンが挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びそれらの混合物である。
【0066】
「ビニル芳香族単位」は、ビニル芳香族モノマーが重合される場合に形成される出発原料中の反復単位である。適当なブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、5〜90重量%の重合ビニル芳香族モノマー単位と少なくとも10重量%の重合ブタジエンを含む。
【0067】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーはランダム、ブロック(ジブロック若しくはトリブロック型のようなマルチブロックを含む)又はグラフト型のコポリマーであることができる。スチレン/ブタジエンブロックコポリマーは商業的量で広く入手可能である。Dexco Polymersから商標名Vector(登録商標)として入手可能なものが適当である。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、A.F.Halasa,Polymer,Volume 46,page 4166(2005)に記載された方法に従って製造できる。スチレン/ブタジエンラグラフトコポリマーは、A.F.Halasa,Journal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition),Volume 14,page 497(1976)に記載された方法に従って製造できる。スチレン/ブタジエンランダム及びグラフトコポリマーは、Hsieh及びQuirk,Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,1996に記載された方法に従って製造することもできる。
【0068】
ブタジエンポリマーはビニル芳香族モノマー及びブタジエン以外のモノマーを重合させることによって形成された反復単位を含むこともできる。このような他のモノマーとしては、エチレン及びプロピレンのようなオレフィン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸のようなアクリレート又はアクリル酸モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは、ブタジエンとランダムに重合させてもよいし、重合させてブロックを形成してもよいし、或いはブタジエンポリマーにグラフトさせてもよい。
【0069】
最も好ましい型のブタジエンポリマーは、1つ若しくはそれ以上のポリスチレンブロックと1つ又はそれ以上のポリブタジエンブロックを含むブロックコポリマーである。これらの中で、1つの中央ポリブタジエンブロックと複数の末端ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマーが特に好ましい。
【0070】
ブタジエンポリマーは、臭素化前は、1,000〜400,000、好ましくは2,000〜300,000、より好ましくは5,000〜200,000、更に好ましくは50,000〜175,000の範囲内の重量平均分子量を有する。本発明では、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した、ポリスチレン標準に比較した見掛けの分子量である。GPC分子量の測定は、直列に接続された2つのPolymer Laboratories PLgel 5μm Mixed−CカラムとAgilent G1362A屈折率検出器を装着したAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを用いて、テトラヒドロフラン(THF)を1mL/分の速度で流し且つ溶離剤として35℃の温度まで加熱しながら、実施できる。
【0071】
出発ブタジエンポリマーは、好ましくは溶媒の存在下で臭素化剤、例えば元素状臭素(例えば特許文献1(WO2008/021418)に記載)、三臭化第四アンモニウム(例えば特許文献2(WO2008/021417)に記載)又は三臭素化第四ホスホニウムと接触させることによって臭素化される。このような臭素化プロセスから得られた粗製臭素化ブタジエン溶液は水抽出工程に供されることができ、臭素化工程において得られた粗製臭素化ブタジエンポリマーは、そこで、典型的には、還元剤を含む水で抽出されて、臭素化ブタジエン溶液の洗浄溶液が生成される。臭素化ブタジエンの粗製溶液又は洗浄溶液は、いずれも、本発明の方法において出発原料として使用できる。
【0072】
本発明において製造される臭素化ブタジエンポリマー粒子は、種々の有機ポリマーへの難燃添加剤として有用である。当該有機ポリマーは、ビニル芳香族若しくはアルケニル芳香族ポリマー(アルケニル芳香族ホモポリマー、アルケニル芳香族コポリマー、又は1種若しくはそれ以上のアルケニル芳香族ホモポリマー及び/若しくはアルケニル芳香族コポリマーのブレンドを含む)及び臭素化コポリマーが可溶であるか又は臭素化ポリマーを分散させて10μm未満、好ましくは5μm未満の大きさのドメインを形成できる他の有機ポリマーを含む。ブレンド重量に基づき、0.1〜25重量%の範囲内の臭素含量をブレンドに与えるのに充分な量の臭素化ブタジエンポリマーがブレンド中に存在するのが好ましい。
【0073】
臭素化ブタジエンポリマーのブレンドは、他の添加剤、例えば他の難燃添加剤、難燃補助剤、熱安定剤、紫外線安定剤、成核剤、酸化防止剤、発泡剤、酸掃去剤及び着色剤を含むことができる。前述のように、これらは場合によっては、本発明方法において出発原料として使用する臭素化ブタジエンポリマーの溶液又はスラリーに添加することができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の説明のために示し、本発明の範囲を限定することを目的としない。全ての部及び百分率は、特に断らない限り重量に基づく。
【0075】
約270μmの体積粒度中央値(Beckman Coulter LS 13 320ドライパウダー粒度分析装置を用いて測定)を有する砂(シリカ)粒子3.2kgを、Littleford Dayの実験室規模(5L)の横型プロウシェア反応器に装入する。反応器には、加熱及び冷却用の水ジャケット、真空ポンプ、排気ガスから微粒子を濾過するためのバグハウス、パージガスを導入するための入口並びに液体スプレーを容器中に導入するための単一流体ノズルを装着する。
【0076】
砂粒子を、排気流中に種粒子を同伴することなく床を流動化させるのに十分な機械的撹拌を行いながら、68℃に加熱する。反応器内部の圧力を27kPa(絶対)に調整し、臭素化ブタジエン/スチレンブロックコポリマーのジクロロエタン(溶媒)中10重量%溶液を約0.14kg/分の速度で噴霧する。排気流を反応器から絶えず取り出して、内圧を25kPa(絶対)に保持する。溶媒の蒸気圧は、この温度において150kPaである。溶媒の蒸気圧より低い反応器圧は粒子の床が乾燥していることを示す。臭素化ブタジエン溶液の供給を開始すると、粒子床の温度は51℃まで低下する。ジャケットは95℃であるので、ジャケットと固体流動床との間の大きい温度差は良好な熱移動を示す。
【0077】
本発明の方法を、これらの条件下で約20分間実施する。この間に、臭素化ブタジエンポリマー液滴が粒子を被覆し、粒子の粒度を増大させる。ポリマー溶液の供給の最後に、供給ノズルを溶媒で簡単にすすいで、目詰まりを防ぐ。次に、蒸気ジャケットに熱を適用することなく、更に30分間撹拌を続けることによって、種粒子床を脱揮する。撹拌機の機械的エネルギーは、ジャケット流がオフであっても、脱揮工程中に床温度が約70℃まで上昇するのに十分なエネルギーを提供する。ノズルのすすぎ完了後は、オーバーヘッド系中に蒸気流がほとんどないため、系の圧力は約13kPaまで低下する。脱揮工程の完了後、種粒子床を約41℃まで冷却する。その時点で、出口を開けると、出口から生成物固体が自由に流れる。生成物の体積粒度中央値は約340μmであり、26%の増加である。これは、出発粒子の体積のほぼ倍増に相当する。これらの条件下では、若干量の微粒子が少量のより大きい凝集塊と共に生成されるが、反応器内面は清浄であり、これは、臭素化ブタジエンポリマーが反応器表面を被覆していないことを示している。粒子はわずかに灰色に着色しており、これは、出発シリカ粒子の研磨性によると考えられる。シリカ粒子は、ポリマーで被覆される前に、反応器のステンレス硬表面を若干摩耗させると考えられる。
【0078】
種粒子として新しい砂を用いた同様の実験において、供給材料を床に0.10gk/分の速度で70分間噴霧する。最終粒子生成物の体積粒度中央値は約710μm、粒子成長は直径で170%。体積で約2000%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭素化ブタジエンポリマーの溶液を分散させて液滴を形成させ、前記液滴を加熱され、機械的に撹拌されている種粒子床に適用し、それによって個々の粒子を実質的に凝集させることなく、液滴を種粒子の表面に被覆し且つ被覆種粒子表面から溶媒を揮発させて、臭素化ブタジエンポリマーの固体外層を有する、実質的に凝集していない生成物粒子を形成せしめることを含んでなる、臭素化ブタジエンポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記生成物粒子の体積が種粒子の体積の約2.9〜1000倍である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記種粒子が50〜3000ミクロンの体積粒径中央値を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の実質的に凝集していない生成物粒子が0.5〜15mmの体積粒径中央値を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水平型プロウシェア反応器中で実施する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記種粒子床の温度が前記臭素化ブタジエンポリマーの最も高いガラス転移温度より低い請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記種粒子床の温度が40〜70℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力が前記の種粒子床温度において臭素化ブタジエンポリマー溶液の溶媒の蒸気圧より低い請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力が減圧である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続的に実施する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
安定なポピュレーションバランスが維持される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回分法である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
粒子を多段で最終粒子サイズまで成長させる請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500324(P2012−500324A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523928(P2011−523928)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/054146
【国際公開番号】WO2010/022041
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】