説明

舗装材の粘弾性測定方法

【課題】骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができる舗装材の粘弾性測定方法を提供する。
【解決手段】アスファルトおよび骨材を含有する舗装材の粘弾性を測定する舗装材の粘弾性測定方法であって、舗装材を加熱した後に、2mm以下のふるいにかける舗装材の粘弾性測定方法である。舗装材を100〜140℃で加熱することが好ましく、舗装材を15〜45分間、加熱することが好ましい。2mm以下のふるいにかけた後の舗装材の貯蔵弾性率G’を、60℃で測定することが好ましく、10Hz、せん断ひずみ1.0%の条件で測定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は舗装材の粘弾性測定方法に関し、詳しくは骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができる舗装材の粘弾性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の舗装材はアスファルトと骨材からできており、一方、舗装材への要求特性としては、耐わだち性が良好であることが求められている。
【0003】
そこで、耐わだち性の評価方法として、舗装サンプルに繰返しタイヤを通過させ、その際の動的安定度を評価するホイールトラッキング試験という方法が用いられている。また、耐わだち性はアスファルトの粘弾性と相関があることから、粘弾性を測定することで耐わだち性を評価する方法もとられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、粘弾性測定装置を用いて60の貯蔵弾性率G’を測定する耐わだち性の評価方法が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−63958号公報(段落[0032]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘弾性を測定する方法では、粘弾性の測定を行うにあたり、サンプルの作製が必要になるが、粘弾性測定サンプルが直径8mm、高さ2mmのバインダーであり、舗装材をそのまま用いると、大きさが2mm超えの骨材が混入するため、サンプル作製に工夫が必要であった。また、骨材を含まない形(アスファルトのみからなる)でのサンプルを作製し粘弾性を測定することもできるが、骨材を含まないため、粘弾性の評価値=耐わだち性という相関関係が成り立たず、有効な評価法といえるものではなかった。
【0007】
さらに、粘弾性を測定する方法では、実際の舗装を評価する際にはバインダーの抽出を行わなければならず、耐わだち性の評価には抽出装置および相当量の材料が必要であり、測定にも時間がかかった。さらにまた、バインダーの性状ではあるものの、実際の舗装になると骨材の種類や粒度の影響を受けやすいため、バインダーレベルでその性能を見極めることは非常に難しかった。そのため、耐わだち性に対しては実際に測定をしてみないとその性能を確認することができなかった。
【0008】
また、舗装サンプルに繰返しタイヤを通過させ、その際の動的安定度を評価するという方法は、工数や時間がかかり、評価サンプルの量も膨大になるという問題点が生じていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができる舗装材の粘弾性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘弾性測定の舗装材を特定の条件で処理して測定用のサンプルを作製することにより、骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、アスファルトおよび骨材を含有する舗装材の粘弾性を測定する舗装材の粘弾性測定方法であって、
前記舗装材を加熱した後に、2mm以下のふるいにかけることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、前記舗装材を100〜140℃で加熱することが好ましく、前記舗装材を15〜45分間、加熱することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、2mm以下のふるいにかけた後の舗装材の貯蔵弾性率G’を、60℃で測定することが好ましく、10Hz、せん断ひずみ1.0%の条件で測定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成としたことにより、骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができる舗装材の粘弾性測定方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粘弾性測定用サンプルを示す斜視図である。
【図2】耐わだち性と粘弾性の相関性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、アスファルトおよび骨材を含有する舗装材の粘弾性を測定する舗装材の粘弾性測定方法であり、舗装材を加熱した後に、2mm以下のふるいにかけることを肝要とするものである。舗装材を加熱してバラバラにし、ふるいにかけて骨材を2mm以下のものに選定して骨材を含んだ粘弾性測定のためのサンプルを作製することで、骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができるようになり、耐わだち性の評価を容易にすることが可能となった。
【0017】
また、本発明において、加熱はふるいにかけやすくするために行うものであるため、その条件は特には制限しないが、高温長時間の加熱はアスファルトの劣化を引き起こすおそれがあるため避けた方がよい。
【0018】
そのため、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、舗装材を100〜140℃で加熱することが好ましい。加熱温度が100℃未満であるとアスファルトがバラバラにならないおそれがあり、一方、加熱温度が140℃超えるとアスファルトが劣化し、正確な粘弾性の測定ができなくなるおそれがあり、好ましくない。
【0019】
また、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、舗装材を15〜45分間、加熱することが好ましい。加熱時間が15分未満であると、アスファルトがバラバラにならないおそれがあり、一方、加熱時間が45分超えると、アスファルトが劣化し、正確な粘弾性の測定ができなくなるおそれがあり、好ましくない。
【0020】
さらに、本発明の舗装材の粘弾性測定方法は、2mm以下のふるいにかけた後の舗装材の貯蔵弾性率G’を、60℃で測定することが好ましく、10Hz、せん断ひずみ1.0%の条件で測定することが好ましい。具体的には、粘弾性測定機器として、Dynamic Shear Rheometer(Anton Paar社製)等を使用し、さらに図1に示すようなφ8mm×2mmの粘弾性測定用サンプル1を使用して測定することができる。
【0021】
本発明においては、上記のように骨材を含んだ状態でバインダーの粘弾性試験を行うことができ、バインダーの粘弾性試験は既知であるが、本発明の方法であれば施工後でも舗装材の一部採取することで耐わだち性が評価可能であり、また既知の粘弾性試験のようにバインダーの抽出をする必要がない。
【0022】
本発明において使用することのできるアスファルトとしては、特に制限されるものではなく、慣用のアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、アスファルト乳剤やタール、ピッチ、オイルなどを添加したカットバックアスファルト、再生アスファルトなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。本発明におけるアスファルトの好適配合量は、20〜70質量%の範囲内である。
【0023】
また、骨材の種類には特に制限はなく、砕石、砂、石粉など通常の舗装用アスファルトに用いられるものを適宜用いることができる。
【0024】
また、バインダー中には、例えば、強度等を向上させるために、他の熱可塑性エラストマーを添加することができる。かかる他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の1種または2種以上の組み合わせを適宜選択して用いることができる。これら他の熱可塑性エラストマーの配合量は、例えば、全バインダーに対し、1〜20質量%程度とすることができる。また、施工性を改良するために、バインダー中に、低分子量の石油樹脂を1〜40質量%程度含有させてもよい。
【0025】
また、本発明における舗装材中にはゴム粉を配合することができ、かかるゴム粉としては、特に制限はされないが、廃タイヤを粉砕したゴム粉であることが好ましい。廃タイヤを破砕したゴム粉としては、TBゴム粉や乗用車用廃タイヤを破砕したゴム粉(以下「PSゴム粉」と称する)などが挙げられるが、所望の効果を得る上で、本発明においてはPSゴム粉であることがより好ましい。廃タイヤを破砕したゴム粉を用いることにより、廃タイヤをリサイクル使用することになるため、廃タイヤの不法投棄等の公害問題の解決にも貢献することができる。
【0026】
さらに、本発明における舗装材には必要に応じ、添加剤として、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着性改良剤、老化防止剤、金属不活性剤、光安定剤、発泡剤、水分除去剤、希釈溶剤、物性調整用高分子または低分子添加剤などを配合したものでもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
ゴム粉を添加した舗装には舗装材(アスファルトラバー)があるが、これは廃タイヤを粉砕したゴム粉とストレートアルファルトとをあらかじめ混合するプレミックスタイプと、プラントで骨材と混合する際にゴム粉を添加するプラントミックスタイプに分けられる。本実施例1〜4においては、プラントミックスタイプのアスファルトラバーを使用した。作製方法の詳細については以下に述べる。なお、本実施例1〜4では、いずれも骨材としては、硬質砂岩、砂および石灰岩粉末を使用する。
【0028】
(実施例1)
下記表3に示した粒度の骨材93.2質量%と、下記表2に示した物性の加硫粉砕ゴム粉(TBゴム粉、USS東洋社製PS−#4000)1.0%質量%とを混合する(ドライミキシング)。次いで、ここに下記表1に示した物性のストレートアスファルト60/80(新日本石油社製ストレートアスファルト60−80、StAs60/80)を5.7%質量%添加混合して(ウェットミキシング)、下記表4の条件で密粒度アスファルト混合物(舗装材)を作製した。
【0029】
(実施例2)
下記表3に示した粒度の骨材93.3質量%と、下記表2に示した物性の加硫粉砕ゴム粉(TBゴム粉、USS東洋社製PS−#4000)1.0%質量%とを混合する(ドライミキシング)。次いで、ここに下記表1に示した物性のストレートアスファルト60/80(新日本石油社製ストレートアスファルト60−80、StAs60/80)を5.6%質量%添加混合して(ウェットミキシング)、下記表4の条件で密粒度アスファルト混合物(舗装材)を作製した。
【0030】
(実施例3)
下記表3に示した粒度の骨材93.1質量%と、下記表2に示した物性の加硫粉砕ゴム粉(TBゴム粉、USS東洋社製PS−#4000)1.0%質量%とを混合する(ドライミキシング)。次いで、ここに下記表1に示した物性のストレートアスファルト60/80(新日本石油社製ストレートアスファルト60−80、StAs60/80)を5.9%質量%添加混合して(ウェットミキシング)、下記表4の条件で密粒度アスファルト混合物(舗装材)を作製した。
【0031】
(実施例4)
下記表3に示した粒度の骨材94.4質量%を混合し(ドライミキシング)、ここに下記表1に示した物性のストレートアスファルト60/80(新日本石油社製ストレートアスファルト60−80、StAs60/80)を5.6%質量%添加混合して(ウェットミキシング)、下記表4の条件で密粒度アスファルト混合物(舗装材)を作製した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
(耐わだち性と粘弾性の相関性評価)
耐わだち性と粘弾性の相関性を確認するため、実施例1〜4で作製した密粒度アスファルト混合物の評価を行った。ホイールトラッキング試験のサンプルの作製方法および試験法に関しては「舗装試験法便覧」に準拠した。
【0037】
また、実施例1〜4で作製した密粒度アスファルト混合物を120℃、30分間加熱し、次いで該密粒度アスファルト混合物の一部をふるいにかけ、2mm以下の骨材を含む密粒度アスファルト混合物を採取し、これについて下記条件で粘弾性試験を行った。結果を下記表5および図2に示す。
【0038】
(粘弾性試験条件)
使用機器:Dynamic Shear Rheometer(Anton Paar社製)
測定条件・サンプル形状:φ8mm×2mm
設定条件:10Hz、せん断ひずみ1.0%(ひずみ制御)
試験温度:60℃
耐わだち性評価であるホイールトラッキング試験が60℃で行われることから、粘弾性試験も60℃のときの貯蔵弾性率G’を採用した。
【0039】
【表5】

【0040】
表5および図2から、動的安定度と骨材を含んだ密粒度アスファルト混合物の貯蔵弾性率G’との間には相関性があることが確認できた。また、今回使用した骨材は種類や粒度がいずれも異なるが、貯蔵弾性率G’への影響は見られなかった。したがって、貯蔵弾性率G’の値から動的安定度を予測することが可能であり、この評価法が妥当であることが確認できた。さらに、今回実施例として用いたプラントミックスタイプのアスファルトラバーを動的安定度3000回/mm以上を目標値とした場合、G’=120[kPa]以上が目標となるが、本発明の粘弾性測定方法を使用することで、材料や作製条件を検討するにあたり少量の混合物を作製すればよく、サンプルを作製してホイールトラッキング試験を行う必要がなくなることが確認できた。以上から、本発明の粘弾性測定方法を使用することで、骨材を含んだ舗装材の粘弾性測定ができ、耐わだち性の評価を容易にすることができた。
【符号の説明】
【0041】
1 粘弾性測定用サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトおよび骨材を含有する舗装材の粘弾性を測定する舗装材の粘弾性測定方法であって、
前記舗装材を加熱した後に、2mm以下のふるいにかけることを特徴とする舗装材の粘弾性測定方法。
【請求項2】
前記舗装材を100〜140℃で加熱する請求項1記載の舗装材の粘弾性測定方法。
【請求項3】
前記舗装材を15〜45分間、加熱する請求項1または2記載の舗装材の粘弾性測定方法。
【請求項4】
2mm以下のふるいにかけた後の舗装材の貯蔵弾性率G’を、60℃で測定する請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の舗装材の粘弾性測定方法。
【請求項5】
10Hz、せん断ひずみ1.0%の条件で測定する請求項4記載の舗装材の粘弾性測定方法。

【図1】
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【図2】
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