説明

舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法および撤去用拡開係止具

【課題】マンホール蓋筒所の仮設路面を効率良く安全に、しかも小規模な工具を用いて撤去できる方法の提供。
【解決手段】舗装路面で埋設された蓋板Dまたは養生板D上の外周を筒状に切断して切断舗装板を形成する切断工程および前記切断舗装板Gの中心箇所に円筒の中心孔14を形成する形成工程を経た後、前記形成工程で形成される中心孔14内に配設される拡開係止具により切断舗装板Gの中心孔14の底部で、蓋板または養生板の上面との間に係止爪2を係入させて切断舗装板Gを分離,離開させると共に、拡開係止具に設けた係止環によりロープ等を係入して切断舗装板を牽引杠上撤去できるようにして成ることを特徴とする舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールを有する新規舗装工事または舗装道路の補修工事にあって、各種の施工方法の内、舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法および撤去用拡開係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路の新規または補修工事には、一般に舗装工法,オーバーレイ工法または切削オーバーレイ工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、これ等の工法の内、舗装工法や切削オーバーレイ工法は、いずれも道路に設けられるマンホール蓋の高さ調整ないしは新規取替えなどのため、工法過程の最初ないし中間でマンホール蓋,マンホール枠を取外し、蓋板や養生板を介在させた盲状態に形成して路面全域の施工を施し、ついでマンホール蓋箇所の仮設路面を切截し、撤去除去し、蓋板や養生板を取除いてマンホール枠を架設してマンホール蓋周辺を路面の高さと一致させて完了させていた(例えば、特許文献2,3参照)。
【0004】
上述の公知例の、仮設中のマンホール蓋箇所路面では、マンホール蓋の大きさより大きな面を一部切截して切断舗装板を形成し、工具を用いて手作業で分別細分化して除去したり、アンカーボルトを打設してロープを用いて切断舗装板の塊状物を杠上撤去したり、或いは、切断舗装板の中心に孔を穿ち、露出された蓋板に設けた係止孔にロープをくぐらせ或はフックを係入させ、蓋板と一緒に切断舗装板の塊状物を一体的に杠上させて撤去させていた(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3644949号公報
【特許文献2】特許第2623491号公報
【特許文献3】特許第2623492号公報
【特許文献4】特開平11−172610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来の鉄カバーに相当する蓋板や養生板は、中心に円形,鍵型等の孔を開け、切断舗装板(仮舗装部)の撤去の際は、下部に置いた蓋板(鉄板)の中心の孔にひっかけ金具をはめて、蓋板(鉄カバー)などと切断塊を同時に撤去していた。しかし、現実に使用している蓋板などの鉄カバーは多くの種類があり、共通性が全く無い。中には中心の孔が開いていないタイプもあり、現在の引き上げ機では総ての蓋板への対応が出来ない。特に、切削オーバーレイ工事は道路舗装工事の際のマンホール鉄蓋設置の為の直し工事であり、大手の道路舗装会社が全体工事を請け負い、鉄蓋撤去の工程は他の数多くの中小の舗装会社が行うケースが多く、蓋板(鉄カバー)などの指定ができないという不都合がある。
【0006】
さらにアンカーボルトの場合は、切断舗装板自体の荷重が大きい場合やアンカーボルトの緊着状態が不十分の場合など、ロープより外れたり危険性が高いという不都合もあり、作業現場の問題点が指摘されている。
【0007】
したがって、作業性が悪く、効率的な処理ができないという問題があった。
【0008】
本発明は、叙上の点に着目して成されたもので、仮設されたマンホール蓋箇所の切断舗装板の中心部に円孔を形成し、この円孔内に拡開係止具を配設し、この拡開係止具を外方に拡開して切断舗装板の中心部の下面と、蓋板または養生板と分離,離開させ、かつ同時に前記拡開係止具の側板により中心孔の周縁部で支持させ、この拡開係止具をロープなど介して杠上させることにより、軽量にかつ安全に切断舗装板を杠上させて外部に撤去除去できるようにした舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法および小型軽量で作業員が簡単に携行可能な撤去用拡開係止具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0010】
(1)マンホール基盤またはマンホール枠に、仮りに配設される蓋板またはマンホール基板の上方に間隔を介して設けられる養生板上に敷設されるオーバーレイまたは切削オーバーレイを切断する過程にあって、舗装路面で埋設された蓋板または養生板上の外周を筒状に切断して切断舗装板を形成する切断工程および前記切断舗装板の中心箇所に円筒の中心孔を形成する形成工程を経た後、前記形成工程で形成される中心孔内に配設される拡開係止具により切断舗装板の中心孔の底部で、蓋板または養生板の上面との間に係止爪を係入させて切断舗装板を分離,離開させると共に、拡開係止具に設けた係止環によりロープ等を係入して切断舗装板を牽引杠上撤去できるようにして成ることを特徴とする舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法。
【0011】
(2)マンホール基盤またはマンホール枠に、仮りに配設される蓋板またはマンホール基板の上方に間隔を介して設けられる養生板上に敷設されるオーバーレイまたは切削オーバーレイを切断する過程にあって、舗装路面で埋設された蓋板または養生板上の外周を筒状に切断して切断舗装板を形成する切断工程および前記切断舗装板の中心箇所に円筒の中心孔を形成する形成工程を経た後、前記形成工程で形成される中心孔内に配設される拡開係止具により切断舗装板の中心孔の周縁底部で、蓋板または養生板の上面との間に係止爪を係入させると同時に、周縁部と当接させる側板とにより切断舗装板を分離,離開させると共に、拡開係止具に設けた係止環によりロープ等を係入して切断舗装板を牽引杠上撤去できるようにして成ることを特徴とする舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法。
【0012】
(3)前記(1)または(2)に示される拡開係止具であって、ピストン,シリンダーより成る伸縮機構を内蔵した左右一対の半円弧状の吊環を有する側壁体と、それぞれの側壁体下部に設けられる断面鋭角状で半円弧状の係止爪とより成り、前記伸縮機構には手動の油圧ジャッキを接続して一対の側壁体の左右方向への伸縮作動をできるようにして成ることを特徴とする撤去用拡開係止具。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切削オーバーレイ工法や舗装工法などマンホール蓋に代わって仮設される蓋板とか、マンホールに通ずる蓋壁の開口部を仮に遮蔽する蓋板や養生板などの道路全域に舗装処理された路面でマンホール蓋箇所仮設路面を、筒状の切断によって得られる切断舗装板を撤去するに際し、中心孔に挿入され蓋板や養生板上に配設される撤去用拡開係止具により、一対の半円弧状の側壁体の拡開操作によって蓋板や養生板と分離,離開させて切断舗装板を中心位置で杠上させて外部に撤去できるので、蓋板や養生板の形状の如何を問わず、すべての種類の蓋板や養生板に対応して拡開係止させて確固に杠上処理できるので作業性が良く、しかも拡開係止具は油圧ポンプによるハンドル操作で簡単に、しかも誰でも使用できるので、大型機械が不要で作業コストを頗る軽減できる。
【0014】
さらに拡開係止具は、シリンダーピストンの伸縮機構による伸縮作動で中心孔内で、係止爪により蓋板または養生板と切断舗装板との間に侵入して、切断舗装板を中心孔周辺で確実に確保して杠上できるので、安全で迅速に撤去除去を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0016】
まず始めに、本発明で用いられる撤去用拡開係止具の一実施例について、図1ないし図6について説明する。
【0017】
図面について説明する。
【0018】
1,1は左右一対の側壁体、2,2は前記側壁体1,1の下部に設けた半円弧状の係止爪で、断面鋭角状αを備える。3,3は側壁体1,1に設けた係合可能の方形状の筐体で、開口部4,4を有し、両開口部4,4を介してピストン5,シリンダー6より成る伸縮機構7を収納させてある。8,8は前記一対の側壁体1,1の上部で一対の筐体3,3に突設したアーム板で、ロープの挿入や吊下げ用のフックなどを係止できる孔9,9が穿たれている。
【0019】
10は前記伸縮機構7と油圧ホース11と接続される手動操作ハンドル12を有する油圧ポンプを示す。
【0020】
13,13は、一対の側壁体1,1間に於いて、両側上下に配設した片側2個、両側で4個の引張スプリングであって、両側壁体1,1が左右に伸張した際、伸縮機構7の伸張方向への作用力を解放した時に、引張スプリング13,13の復元力によって、収縮させるように働かせるものである。
【0021】
上述の撤去用拡開係止具Aを用いた本発明のマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法についての実施例を以下に説明する。
【0022】
図7(a)は、マンホール箇所仮設路面は切削オーバーレイ工法の舗装工事の過程の内、マンホール蓋,蓋枠を取り外し、マンホールに通ずる基壁Bの開口部Cに仮設用の蓋板Dを遮蔽載置し、マンホール設置面まで舗装材を充填し、ついで路面全体を切削処理を施し、オーバーレイEを施工した後、蓋板Dを中心として平面円形のかつ断面弧状の切断線Fを有する切断舗装板Gが形成されている状態を示している。
【0023】
図7(b)は、(a)の切削オーバーレイ工法において、基壁Bの開口部Cより上方に間隔を置いて養生板Dを設けて、マンホール設置面までの舗装材の充填を少量にして路面全体を切削処理を施し、オーバーレイEを施工した後、養生板Dを中心として平面円形かつ断面弧状の切断線Fを有する切断舗装板Gが形成されている状態を示している。
【0024】
図7(c)は、舗装工法、すなわち、未舗装の道路を最初に舗装する場合のマンホール箇所仮設路面のオーバーレイ施工例を示しており、基盤Bの開口部Cに仮設用の蓋板Dを遮蔽載置し、マンホール設置面まで舗装材を充填し、ついでオーバーレイEを施工した後、蓋板Dを中心として平面円形のかつ断面弧状の切断線Fを有する切断舗装板Gが形成されている状態を示している。
【0025】
そして、蓋板Dまたは養生板Dの位置に穿孔工具を用いて中心孔14が穿孔されている状態を示す斜面で示されている。
【0026】
この中心孔14の大きさeは、前記撤去用拡開係止具Aが投入できる大きさeに設定しなければならない。
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【0027】
なお、中心孔14の穿孔工程と切断舗装板Gの切断線Fの工程との前後は、何等特定されるものではない。
【0028】
上述の図7(a)(b)(c)は、いずれも本発明に係る切断舗装板Gを形成する切断工程と、切断舗装板の中心孔14の形成工程を示しており、以下に切断舗装板の拡開係止具による杠上撤去できる除去工程を示す。
【0029】
前記撤去用拡開係止具Aを切断舗装板Gの中心孔14内に挿入して蓋板Dまたは養生板D上に設置させる。
【0030】
ついで作業者は、油圧ポンプ10の操作ハンドル12で上下動させることにより、油圧ポンプ10内の油は油圧ホース11より撤去用拡開係止具A内に供給され、筐体3,3内の伸縮機構7のピストン5をシリンダー6内に摺動させ、一対の側壁体1,1を外方に拡開させる。
【0031】
この一対の側壁体1,1の下部には断面鋭角状の半円弧状の係止爪2,2が設けられているので、蓋板D上を中心孔14の切断舗装板Gの下面と係入し、蓋板Dと切断舗装板Gとを分離させ乍ら、確固に切断舗装板Gを支持できる状態とすることができる。
【0032】
斯かる状態を確認した後、作業者は油圧ポンプ10の作動を停止して、撤去用拡開係止具Aによる切断舗装体Fとの係合状態を維持させて、切断舗装体Fのアーム板8,8の孔9,9内にロープHをくぐらせたり、フックを係入して好みの牽引具を用いて切断舗装体Fを蓋板Dと分離して上方に杠上し、表面外方に取除くものである。
【0033】
なお、図示では側壁体1,1に中心孔14の内周壁と当接する円弧状の側板を設けていないが、この側板を設ける時は、中心孔14の周壁を押止するので、挟持効果をより高めることができる(図示せず)。
【0034】
そして、切断舗装板Gを撤去後、油圧ポンプ10への油圧作用を作業者により解放することにより伸縮機構7は引張スプリング13,13の収縮力によりピストン5はシリンダー6内で帰動し、筐体3,3間隔も縮小し、現状に復帰して、係止爪2,2は中心孔14と係合を外して分離し取外すことができる。
【0035】
なお、図示していないが、爾後、基壁B上の基盤Dや養生板Dを取除き、基壁Bの上部に調整枠などを配設してマンホール枠を路面の高さと合わせて設置し、マンホール枠の外周の環状凹処に舗装材などを充填して、従来と同一の工法でマンホール蓋を敷設して完成させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明工法に用いられる撤去用係止具の一実施例を示す斜視図
【図2】図1の要部の一部切欠側面図
【図3】図1の平面図
【図4】図2の作動状態を示す一部切欠側面図
【図5】図4の平面図
【図6】全体の分解状態を示す斜視図
【図7】(a),(b),(c) 本発明工法の切断舗装体の切断工程と中心孔の形成工程の3例を示す断面図
【図8】(a),(b),(c) 切断舗装板を撤去除去する除去工程の過程図
【符号の説明】
【0037】
1 側壁体
2 係止爪
3 筐体
4 開口部
5 ピストン
6 シリンダー
7 伸縮機構
8 アーム板
9 孔
10 油圧ポンプ
11 油圧ホース
12 操作ハンドル
13 引張スプリング
14 中心孔
α 断面鋭角状
A 撤去用拡開係止具
B 基壁
C 開口部
D 蓋板
養生板
E オーバーレイ
F 切断線
G 切断舗装板
H ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール基盤またはマンホール枠に、仮りに配設される蓋板またはマンホール基板の上方に間隔を介して設けられる養生板上に敷設されるオーバーレイまたは切削オーバーレイを切断する過程にあって、舗装路面で埋設された蓋板または養生板上の外周を筒状に切断して切断舗装板を形成する切断工程および前記切断舗装板の中心箇所に円筒の中心孔を形成する形成工程を経た後、前記形成工程で形成される中心孔内に配設される拡開係止具により切断舗装板の中心孔の底部で、蓋板または養生板の上面との間に係止爪を係入させて切断舗装板を分離,離開させると共に、拡開係止具に設けた係止環によりロープ等を係入して切断舗装板を牽引杠上撤去できるようにして成ることを特徴とする舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法。
【請求項2】
マンホール基盤またはマンホール枠に、仮りに配設される蓋板またはマンホール基板の上方に間隔を介して設けられる養生板上に敷設されるオーバーレイまたは切削オーバーレイを切断する過程にあって、舗装路面で埋設された蓋板または養生板上の外周を筒状に切断して切断舗装板を形成する切断工程および前記切断舗装板の中心箇所に円筒の中心孔を形成する形成工程を経た後、前記形成工程で形成される中心孔内に配設される拡開係止具により切断舗装板の中心孔の周縁底部で、蓋板または養生板の上面との間に係止爪を係入させると同時に、周縁部と当接させる側板とにより切断舗装板を分離,離開させると共に、拡開係止具に設けた係止環によりロープ等を係入して切断舗装板を牽引杠上撤去できるようにして成ることを特徴とする舗装道路工事におけるマンホール蓋箇所仮設路面の撤去方法。
【請求項3】
請求項1または2に示される拡開係止具であって、ピストン,シリンダーより成る伸縮機構を内蔵した左右一対の半円弧状の吊環を有する側壁体と、それぞれの側壁体下部に設けられる断面鋭角状で半円弧状の係止爪とより成り、前記伸縮機構には手動の油圧ジャッキを接続して一対の側壁体の左右方向への伸縮作動をできるようにして成ることを特徴とする撤去用拡開係止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−150758(P2010−150758A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327516(P2008−327516)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503140539)セーブマシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】