説明

舗道の化粧方法

【課題】繊細な絵柄表現が可能で柄のひずみが発生せず、透水性舗装、排水性舗装した舗道や車道などに絵付けしても透水性を持つ舗道用の舗道の化粧方法を提供すること。
【解決手段】舗道の表面に絵柄を印刷する方法において、シルクスクリーン法にて絵柄を印刷すること、前記舗道の表面にプライマー層を設けたこと、前記絵柄を設けたあと表面保護層を設けたこと、前記プライマー層、絵柄層、および表面保護層がJIS A5406−2000に規定する透水性(300mリットル/m・h)を持つこと、前記シルクスクリーン法のスクリーンの線数において、175線から10線の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗道、詳しくはアスファルト、コンクリートで舗装した道路である歩道、車道、自転車道等やインターロッキングブロックにおける道路表面に絵付けするための舗道の化粧方法に関するものである。さらに、透水性舗装、排水性舗装した舗道に印刷しても透水性を持つ舗道の化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舗道や道路等の舗装した道路に交通表示やセンターライン、サイドラインを引いたりする場合は、熱で溶融させた塗料にて描いていた。しかし、溶融インキの吐出口を移動させることで絵柄付けを行うため、ラインや文字を付与する場合は問題ないが、繊細な絵柄を付与するには適さなかった。そこで、転写紙を用いて絵柄を付与する方法も提案されたが、表面の凹凸変化が著しい舗道に対して高精度に転写することが困難であることや、柄が転写された後の転写紙が跡に残るといった問題点があった。
【0003】
また、舗道や道路等の舗装した道路に絵付けする場合は、絵柄を印刷したシートを歩道に貼った交通標識もあったが、夏場の路面温度の上昇と人などから応力が加わると、変形してしまうことがあった((図2)千葉県柏市豊四季 凸版印刷株式会社柏工場近隣の歩道 撮影平成16年7月27日) 尚、実測値アスファルト路面温度は平成16年7月7日41.0℃35%RH(アスファルト路面1m上の毛髪式温度計(SIGMA−II モデルNSII−Q 株式会社佐藤計量器製作所製)、アスファルト路面温度は63.7℃(スポット 温度計 HT−11(ミノルタ株式会社製))。さらに、シートを舗道に貼りつけると透水性が悪くなり、表面に水が溜まり人が滑ったりすることがあった。また、色ガラス、エポキシ樹脂からなるカーラー舗装等もあったが繊細な絵柄はできなかった。
【特許文献1】特開平10−317319号公報
【特許文献2】特開平10−204823号公報
【特許文献3】特開平6−128902号公報
【非特許文献1】日本印刷学会編集,「新版印刷辞典」,新版,大蔵省印刷局 昭和49年9月10日、P.197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、繊細な絵柄表現が可能で柄のひずみが発生せず、透水性舗装、排水性舗装した舗道や車道などに絵付けしても透水性を持つ舗道用の舗道の化粧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その請求項1記載の発明は、舗道の表面に絵柄を印刷する方法において、シルクスクリーン法にて絵柄を印刷することを特徴とする舗道の化粧方法である。
【0006】
その請求項2記載の発明は、前記舗道の表面にプライマー層を設けたことを特徴とする請求項1記載の舗道の化粧方法である。
【0007】
また、請求項3記載の発明は、前記絵柄を設けたあと表面保護層を設けたことを特徴とする請求項1、2のいずれか記載の舗道の化粧方法である。
【0008】
また、請求項4記載の発明は、前記プライマー層、絵柄層、および表面保護層がJIS A5406−2000に規定する透水性(300mリットル/m・h)を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の舗道の化粧方法である。
【0009】
また、請求項5記載の発明は、前記シルクスクリーン法のスクリーンの線数において、175線から10線の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5の何れか記載の舗道の化粧方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明により、舗道の表面に絵柄を印刷する方法において、シルクスクリーン法にて絵柄を印刷することにより、転写による絵付けよりも印刷のしにくい基材へも高精度の絵柄を印刷すことができる。シルクスクリーン法であれば、インキのレオロジー特性(特に粘度)を調整することにより印刷後に、インキが流れて凹部にもインクが入りこみ意匠性がさらに向上する。さらに、印刷した化粧シートを貼る場合、夏場でも施工後に歪まないで透水性のある印刷法を得ることが可能となった。
【0011】
請求項2記載の発明により、舗道の表面にシルクスクリーン法により絵付けする方法において、舗道表面にプライマー層を設けると、インキとの密着性が向上し、さらに、プライマー層に隠蔽のある塗料を選択することにより、インキ密着が向上し、下地の色に影響されずに絵柄を再現できる効果がある。
【0012】
また、請求項3に記載の発明により、シルクスクリーン法により絵柄を設けたあと表面保護層を設けたことにより、絵柄の上に表面保護層が来るため耐磨耗性や耐候性が良くなる効果がある。また、深み感がでる効果がある。
【0013】
また、請求項4載の発明により、前記プライマー層、絵柄層、および表面保護層がJIS A5406−2000に規定する透水性(300mリットル/m・h)を持つことにより雨水がしみ込みやすく地下水面下降防止、高速運転時のハイドロプレーニング防止のための透水性舗装、排水性舗装した舗道や車道などに施工しても透水性を持つ効果がある。また、舗道用化粧シートの上に水が溜まらないので、雨の日に滑って転び難い効果もある。
【0014】
また、請求項5記載の発明により、前記シルクスクリーン法のスクリーンの線数において、175線から10線の範囲にあることを特徴とするシルクスクリーン法によるため、凹凸の激しい舗道への化粧が容易にできる効果がある。スクリーン印刷の線数とは、細目スクリーンの1インチ(25.4mm)当たりの黒線の数をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0016】
以下に本発明の舗道の化粧方法を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1に本発明の舗道の化粧方法の一実施例の断面の構造を示す。ここに舗道とは、舗装した道路をいい、アスファルト舗装、コンクリート舗装した歩道、道路等である。アスファルト層10、プライマー層1、絵柄層2、表面保護層3という構成である。
【0018】
シルクスクリーン用インキは、YMCK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、黄(Yellow)、黒(Black))を単色や調色しても良い。
【0019】
インキの有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ジブロムアンサンスロンなどのインダンスレン系キノン化合物、フラバンスロン系、ピランスロン系、ペリレン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系から選ばれる少なくとも一種であり、下記の顔料が例示できる。
【0020】
カラーインデックスナンバー(C.I. Generic Name:Pigment)にて示す。
【0021】
C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、125、129、137、138、147、148、153、154、166、161。
【0022】
C.I.ピグメントオレンジ13、16、36、43、51、55、59、61、73。
【0023】
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、264。
【0024】
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50。
【0025】
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、22、60、64。
【0026】
C.I.ピグメントグリーン7、36。
【0027】
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、等が例示できる。顔料の含有量は記録液中0.1〜10重量%が好ましい。
【0028】
インキのバインダー樹脂として本発明において用いられるバインダー樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル/メラミン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ/メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンエラストマー樹脂等に紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、酸化防止剤、シリカや硫酸バリウム等の体質顔料を添加できる。
【0029】
プライマー層としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、自己乳化型ウレタンアクリレート樹脂、2液硬化ウレタン樹脂、2液硬化エポキシ樹脂等が使える。適切と思われる厚さは1g/m2〜5g/m2程度である。シルクスクリーン法により塗布しても良いし、スプレー塗装、刷毛塗り等しても良い。
【0030】
表面保護層としては、アクリルポリオールにイソシアネートを添加して硬化するタイプ、アクリルポリオールをシリコーン変性し、イソシアネートを添加して硬化するタイプ、電離放射線硬化型樹脂の場合はイミドアクリレート樹脂,エポキシアクリレート樹脂,ウレタンアクリレート樹脂その他各変性樹脂などが使える。紫外線硬化型樹脂の場合は適宜開始剤を選定する。塗工性・保管等の汎用性が高い。適切と思われる厚さは1g/m2〜10g/m2である。シルクスクリーン法により塗布しても良いし、スプレー塗装、刷毛塗り等しても良い。
【0031】
前記樹脂には、耐候性の処方を行うため、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系,トリアジン系,ベンゾフェノン系など)の耐候性処方剤を添加する。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すれば良いが、樹脂固形分に対して0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%である。
【0032】
透水性をJIS A5406−2000にて測定した。尚、透水性は、50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂の上にプライマー層、絵柄層、および表面保護層単体にて測定した。
【0033】
本発明におけるインキの受像物としての舗道のアスファルトは、天然アスファルト、石油アスファルトの2種があるが、石油アスファルトのストレートアスファルトが舗装用として良く使われる。また、被接着物としてのセメントとしては、水と反応して硬化する無機質粉末である水硬性セメントが使える。天然セメント、ポルトランドセメント、混合セメント、水溶性ポリマーを添加したものも使える。また、公知の地面まで雨水等をしみ込ませる透水性舗装や高速道路等のハイドロプレーニング防止のための横方向に水を表面は透水性を持ち、その下の層は不透水層をもつ排水性舗装等にも使える。
【0034】
スクリーン印刷の方法は、公知の方法を使うが、175線から10線の範囲が望ましい。細かいほうが繊細な絵柄になるが、舗道での印刷字に埃によるインキ詰まりや、凹凸の激しい舗道面でもスクリーンの開きが大きいほうが(線数の小さい)埃によるつまりに良い。
【実施例1】
【0035】
シルクスクリーン用インクとして、Y(アンスラキノン、イソインドリノン)、M(ジケトピロロピロール)、C(フタロシアニンブルー)、K(カーボンブラック)からなる顔料を選択し、公知のロジンエマルジョン、分散剤、グリセリンを添加してYMCKの四種のシルクスクリーン用インキを作製した。
【0036】
次に、受像体としてのアスファルト混合物として密粒度アスファルト混合物を50回つき固めて厚み50mm縦600mm横300mmのアスファルト板を作製した。配合は、6号砕石:37.0%、7号砕石:20.0%、砕砂16.0%、スクリーニングス:16.0%、細砂:8.0%、石粉:3.0%、ストレートアスファルト60−80(針入度75 1/10mm(25℃)(中近東産 昭和シェル石油株式会社製):5.7%の配合をアスファルト温度151〜157℃、骨材の加熱温度175℃にて作製した。
【0037】
次に、前記シルクスクリーン用インクを175線のスクリーンで前記アスファルト受像体に木目柄を印刷した。
【実施例2】
【0038】
前記アスファルト受像体に、プライマー層として2液硬化ウレタン樹脂にフィラーを添加して乾燥後の塗布量が2g/mスプレー塗工したあと実施例1の方法で100線の木目柄を印刷した。
【実施例3】
【0039】
前記アスファルト受像体に、実施例1の方法で木目柄を60線で印刷したあと、表面保護層として2液硬化ウレタン樹脂を乾燥後の塗布量が10g/m塗工した。
【実施例4】
【0040】
前記アスファルト受像体に、プライマー層として2液硬化ウレタン樹脂にフィラーを添加して乾燥後の塗布量が2g/mスプレー塗工したあと実施例1の方法で木目柄を10メッシュで印刷した。次に表面保護層として2液硬化ウレタン樹脂を乾燥後の塗布量が10g/m塗工した。
<比較例1>
実施例4のスクリーン線数を200線にしたほかは、実施例4の条件で作製した。
<比較例2>
実施例4のスクリーン線数を5線にしたほかは、実施例4の条件で作製した。
<性能比較>
以上のように作製した実施例1〜4の舗道の化粧方法により作製した実施例について外観を目視にて○△×にて評価した。結果を表1に示す。
【0041】
メタルハライドランプ方式試験機 JTM G 01 2000 日本試験機工業会規格
JTM STANDARD Metalhalide Lamp type apparatus
ダイプラ・メタルウェザー(KU−R5CI−A) (ダイプラ・ウィンテス株式会社製)
光源ランプ:MW−60W、フィルター:KF−1(照射範囲295nmから780nm)
条件:照度65±3mW/cm(測定域 330nmから390nm)
Light(照射)(53℃,50%RH)20.00時間、Dew(暗黒結露)(30℃,98%RH)4.00時間、Rest(休止)(30℃,98%RH)0.01時間で終了。 シャワーはDewの前後に30秒。
【0042】
以上の24.01時間を1サイクルとする。
【0043】
尚、純水はb),c)ともに柏市の市水を蒸気加温制御盤(栗田工業株式会社製)にて25℃に加温したあと、下記の装置にて導電率2μS/cm以下の純水にして使用した。
【0044】
純水製造機は栗田工業株式会社製の残留塩素除去器:カーボナーCF70F、軟水器:KS−MA−54BF、逆浸透膜(RO膜:
Reverse Osmosis膜)装置:マクエースKN−600型、連続脱イオン装置:ピュアエースPA−480X型である。
【0045】
また、ビカット軟化温度をJIS K7206−1999により舗道用化粧シートを測定した。
【0046】
また、色彩色差をCR−200(ミノルタ株式会社製)にて測定した。
【0047】
また、舗道用化粧シートの透水性をJIS A5406−2000にて測定した。尚、透水性は、50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂の上にプライマー層、絵柄層、表面保護層を実施例の構成にして単体にて測定した。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、舗道、詳しくはアスファルト、コンクリートで舗装した道路である歩道、車道、自転車道等やインターロッキングブロックにおける道路表面に絵付けするための舗道の化粧方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の舗道の化粧方法の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】従来の舗道用化粧シートの歪んだ例である。
【符号の説明】
【0051】
1…プライマー層
2…絵柄層
3…表面保護層
10…アスファルト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗道の表面に絵柄を印刷する方法において、シルクスクリーン法にて絵柄を印刷することを特徴とする舗道の化粧方法。
【請求項2】
前記舗道の表面にプライマー層を設けたことを特徴とする請求項1記載の舗道の化粧方法。
【請求項3】
前記絵柄を設けたあと表面保護層を設けたことを特徴とする請求項1、2のいずれか記載の舗道の化粧方法。
【請求項4】
前記プライマー層、絵柄層、および表面保護層がJIS A5406−2000に規定する透水性(300mリットル/m・h)を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の舗道の化粧方法。
【請求項5】
前記シルクスクリーン法のスクリーンの線数において、175線から10線の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の舗道の化粧方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−70466(P2006−70466A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251949(P2004−251949)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】