説明

航空機アクチュエータの油圧システム

【課題】機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能で、システムの大型化及び重量の増大を防止し、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システムを提供する。
【解決手段】コントローラ(12a、12b)は、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の一方の機能の喪失時又は低下時に、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)のうち、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の他方である他方側油圧源の下流側に接続されたバックアップ用油圧ポンプである他方側バックアップ用油圧ポンプを運転させるように制御する。他方側油圧源が作動している状態で、他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われることで、他方側油圧源における油冷却装置によって、他方側バックアップ用油圧ポンプを流れる油の冷却が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともにこのアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機においては、動翼(操縦翼面)として形成されて、補助翼(エルロン)や昇降舵(エレベータ)、方向舵(ラダー)等として構成される舵面が設けられている。そして、このような舵面を駆動するアクチュエータとして、油圧作動式のアクチュエータがよく用いられている。また、このようなアクチュエータに対しては、航空機の機体側に設置された油圧源である機体側油圧源から圧油が供給される。しかしながら、機体側油圧源の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生することがあり、これに対し、特許文献1においては、機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合にもアクチュエータに対して圧油を供給することが可能な油圧システム(航空機アクチュエータの油圧システム)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された航空機アクチュエータの油圧システムは、アクチュエータと、機体側油圧源とは独立して設けられたポンプと、電動モータとを備えて構成されている。ポンプは、アクチュエータから排出される圧油を昇圧してアクチュエータに供給可能に設けられている。電動モータは、機体側油圧源において圧力低下が生じてその機能の喪失又は低下が発生したときに上記ポンプを駆動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−46790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
航空機において機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、特許文献1に開示されたような航空機アクチュエータの油圧システムのポンプを作動させることによってアクチュエータを駆動することができる。しかしながら、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時には、上記のポンプ及びポンプ駆動用の電動モータが連続駆動され、油圧システムの連続運転が行われることになる。このため、油圧システム全体の温度上昇を招きやすくなり、更に、圧油としてポンプからアクチュエータに供給されてこのポンプとアクチュエータとの間で循環して使用される油(作動油)の温度の上昇も招き易くなってしまう。このため、連続運転時間の制約や油の劣化に伴う油の交換時期の制約が大きくなってしまうことになる。尚、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時に機能する油圧システムにおいて、油を冷却する油冷却装置を更に追加することも考えられるが、この場合、油圧システムの大型化や重量の増大を招いてしまうことになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であるとともに、システムの大型化及び重量の増大を招くことを防止して、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともに当該アクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧システムに関する。そして、第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、前記アクチュエータとして設けられ、前記航空機の機体側に設置されるとともに油冷却装置を有する第1の油圧源である第1機体側油圧源からの圧油が供給されることで作動し、前記舵面として設けられた第1の舵面を駆動する第1アクチュエータと、前記アクチュエータとして設けられ、前記航空機の機体側に設置されるとともに油冷却装置を有する第2の油圧源である第2機体側油圧源からの圧油が供給されることで作動し、前記舵面として設けられるとともに前記第1の舵面と対で作動するよう設けられた第2の舵面を又は前記第1の舵面を駆動する第2アクチュエータと、前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記第1アクチュエータに対して圧油を供給可能な第1バックアップ用油圧ポンプと、前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記第2アクチュエータに対して圧油を供給可能な第2バックアップ用油圧ポンプと、を備えている。更に、第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、前記第1機体側油圧源及び前記第2機体側油圧源のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプのうち、前記第1機体側油圧源及び前記第2機体側油圧源の他方である他方側油圧源の下流側に接続されたバックアップ用油圧ポンプである他方側バックアップ用油圧ポンプを運転させるように制御するコントローラを備え、前記他方側油圧源が作動している状態で、前記コントローラの制御によって前記他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われることで、前記他方側油圧源における油冷却装置によって、前記他方側バックアップ用油圧ポンプ及び前記他方側油圧源を流れる油の冷却が行われることを特徴とする。尚、第1発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムにおいては、第1アクチュエータの機能の喪失が発生したときには第1バックアップ用油圧ポンプは作動せず(第1バックアップ用油圧ポンプから第1アクチュエータへの圧油の供給は行われず)、第2アクチュエータの機能の喪失が発生したときには第2バックアップ用油圧ポンプは作動しない(第2バックアップ用油圧ポンプから第2アクチュエータへの圧油の供給は行われない)ように構成される。
【0008】
この発明によると、第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した後に第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、第1バックアップ用油圧ポンプから圧油を供給して第1アクチュエータを駆動することができる。そして、第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した後に第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、第2バックアップ用油圧ポンプから圧油を供給して第2アクチュエータを駆動することができる。
【0009】
また、本発明によると、第1及び第2機体側油圧源のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときには、コントローラの制御によって、第1及び第2機体側油圧源のうちの他方(即ち、機能の喪失又は低下が生じていない他方側油圧源)の下流側に接続された他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われる。そして、他方側油圧源が作動している状態で他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われることで、他方側油圧源における油冷却装置によって他方側バックアップ用油圧ポンプ及び他方側油圧源を流れる油の冷却が行われる。このため、第1及び第2機体側油圧源のうちの一方の機能の喪失又は低下が発生したときに運転される他方側バックアップ用油圧ポンプの連続運転が行われても、圧油として他方側バックアップ用油圧ポンプからアクチュエータに供給されてこのポンプとアクチュエータとの間で循環して使用される油(作動油)を冷却することができる。そして、運転中の他方側バックアップ用油圧ポンプを冷却することができるとともに、この他方側バックアップ用油圧ポンプに連結されて熱伝導が生じる電動モータも冷却でき、油圧システム全体としての温度上昇を抑制することができる。また、本発明によると、温度上昇を抑制しつつ、残った機体側油圧源が機能喪失した場合でも(即ち、機能の喪失又は低下が発生していなかった方の機体側油圧源においても機能の喪失又は低下が発生した場合でも)既に起動済みのバックアップ用油圧ポンプにより、機体の制御を連続的に維持することが可能となる。
【0010】
尚、第1及び第2機体側油圧源のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときに、機能の喪失又は低下が発生した機体側油圧源の下流側に接続されたバックアップ用油圧ポンプの運転が行われると、このバックアップ用油圧ポンプ及び使用される油の温度上昇を抑制することが困難となる。しかしながら、本発明によると、上述のように、機体側油圧源における油冷却装置を有効的に活用することができ、バックアップ用油圧ポンプ及び使用される油の温度上昇を抑制することができる。そして、本発明によると、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時に機能する油圧システムにおいて、油を冷却する油冷却装置が更に追加されることがないため、油圧システムの大型化や重量の増大を招いてしまうこともない。
【0011】
従って、本発明によると、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であるとともに、システムの大型化及び重量の増大を招くことを防止して、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システムを提供することができる。
【0012】
第2発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、第1発明の航空機アクチュエータの油圧システムにおいて、前記第1バックアップ用油圧ポンプから前記第1アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第1バックアップ側逆止弁と、前記第1機体側油圧源から前記第1アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第1機体油圧源側逆止弁と、前記第2バックアップ用油圧ポンプから前記第2アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第2バックアップ側逆止弁と、前記第2機体側油圧源から前記第2アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第2機体油圧源側逆止弁と、を備えている。更に、第2発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、前記第1機体油圧源側逆止弁を迂回するように設けられ、前記第1バックアップ用油圧ポンプから前記第1機体側油圧源における油冷却装置への油の循環を可能にする第1迂回経路と、前記第2機体油圧源側逆止弁を迂回するように設けられ、前記第2バックアップ用油圧ポンプから前記第2機体側油圧源における油冷却装置への油の循環を可能にする第2迂回経路と、前記第1迂回経路の状態を連通状態と遮断状態とのいずれかの状態に切替可能な第1切替弁と、前記第2迂回経路の状態を連通状態と遮断状態とのいずれかの状態に切替可能な第2切替弁と、を備え、前記コントローラは、前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生するとともに、前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、前記第1機体側油圧源に油を循環可能な状態のときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプを運転させるとともに、前記第1迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように前記第1切替弁を制御し、前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生するとともに、前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、前記第2機体側油圧源に油を循環可能な状態のときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプを運転させるとともに、前記第2迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように前記第2切替弁を制御することを特徴とする。
【0013】
この発明によると、第1バックアップ側逆止弁及び第1機体油圧源側逆止弁が設けられているため、第1バックアップ用油圧ポンプ及び第1機体側油圧源の作動時に、第1バックアップ用油圧ポンプからの圧油が第1機体側油圧源に逆流することが防止され、第1機体側油圧源からの圧油が第1バックアップ用油圧ポンプに逆流することが防止される。そして、第2バックアップ側逆止弁及び第2機体油圧源側逆止弁が設けられているため、第2バックアップ用油圧ポンプ及び第2機体側油圧源の作動時に、第2バックアップ用油圧ポンプからの圧油が第2機体側油圧源に逆流することが防止され、第2機体側油圧源からの圧油が第2バックアップ用油圧ポンプに逆流することが防止される。
【0014】
更に、本発明によると、第1及び第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が生じた際には、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの運転が行われ、第1及び第2アクチュエータが駆動されることになる。そして、第1及び第2機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時に第1機体側油圧源に油を循環可能な状態であれば、コントローラによって、第1機体油圧源側逆止弁を迂回する第1迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように、第1迂回経路に設けられた第1切替弁の制御が行われる。これにより、第1バックアップ用油圧ポンプから供給される油が、第1機体側油圧源における油冷却装置も循環し、冷却されることになる。また、第1及び第2機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時に第2機体側油圧源に油を循環可能な状態であれば、コントローラによって、第2機体油圧源側逆止弁を迂回する第2迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように、第2迂回経路に設けられた第2切替弁の制御が行われる。これにより、第2バックアップ用油圧ポンプから供給される油が、第2機体側油圧源における油冷却装置も循環し、冷却されることになる。よって、第1及び第2機体側油圧源の両方の機能の喪失時又は低下時であっても第1及び第2アクチュエータを駆動可能であるとともに、機体側油圧源における油冷却装置を有効的に活用することができ、バックアップ用油圧ポンプ及び使用される油の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
第3発明に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、第1発明又は第2発明の航空機アクチュエータの油圧システムにおいて、前記第1バックアップ用油圧ポンプと当該第1バックアップ用油圧ポンプを駆動する第1電動モータとが、前記第1の舵面が設けられる第1の翼の内部に配置され、前記第2バックアップ用油圧ポンプと当該第2バックアップ用油圧ポンプを駆動する第2電動モータとが、前記第2アクチュエータによって駆動される前記第2の舵面が設けられる第2の翼の内部に配置され、前記第1の翼の表面構造を形成する第1翼構造体部分と前記第2の翼の表面構造を形成する第2翼構造体部分とのうちの少なくともいずれかにおいて貫通形成された孔として設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼の外部の空気を前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部に供給可能な吸気口と、前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記吸気口が設けられた翼構造体部分において貫通形成された孔として設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部の空気を外部に排出可能な排気口と、前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記吸気口が設けられた翼構造体部分に設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられ、前記吸気口を開閉可能な吸気口開閉部と、前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記排気口が設けられた翼構造体部分に設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられ、前記排気口を開閉可能な排気口開閉部と、前記吸気口開閉部を開閉駆動する吸気側駆動機構と、前記排気口開閉部を開閉駆動する排気側駆動機構と、を備え、前記吸気側駆動機構及び前記排気側駆動機構は、前記コントローラからの指令信号に基づいて作動し、前記コントローラは、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプの両方を起動させるときに、前記吸気側駆動機構及び前記排気側駆動機構を作動させて前記吸気口及び前記排気口を開放させることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、第1の翼の内部に第1バックアップ用油圧ポンプ及び第1電動モータが配置され、第2の翼の内部に第2バックアップ用油圧ポンプ及び第2電動モータが配置される。このため、航空機アクチュエータの油圧システムが、アクチュエータに近接した領域に配置されることになり、この油圧システムについて更なる小型化及び軽量化を図ることができる。更に、本発明の油圧システムは、吸気口開閉部及び排気口開閉部が作動することで、吸気口及び排気口を開放し、第1及び第2の翼の外部の低温の空気を第1及び第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部に供給するとともに、第1及び第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部の高温の空気をその翼の外部に排出可能に構成されている。このため、油圧システムにおける第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの少なくともいずれかと第1及び第2電動モータの少なくともいずれかとから発生した熱量を吸気口から排気口へと流動する空気によって抜熱して油圧システムを冷却可能に構成されている。即ち、油圧システムにて発生した熱量を翼の外部の大気へと直接に放熱可能に構成されている。そして、本発明の油圧システムでは、第1及び第2機体側油圧源の両方の機能の喪失又は低下が発生して第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの両方を起動させた場合に、吸気口及び排気口が開放される。このため、第1及び第2機体側油圧源の両方の機能の喪失時又は低下時において、機体側油圧源における油冷却装置を活用できないような場合であっても、油圧システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる。また、本発明の油圧システムでは、吸気口開閉部を開閉駆動する吸気側駆動機構と、排気口開閉部を開閉駆動する排気側駆動機構とが、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの運転を制御するコントローラからの指令信号に基づいて作動する。このため、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの運転を制御するコントローラを有効的に利用し、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの作動状況に連動させるように吸気口と排気口とを開放可能な制御構成を新たな制御装置を別途追加することなく実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、機体側油圧源の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータを駆動可能であるとともに、システムの大型化及び重量の増大を招くことを防止して、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧システムが適用される航空機の一部を示す模式図である。
【図2】図1に示す航空機アクチュエータの油圧システムの一部を含む油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【図3】図2に示す油圧回路図の一部について更に詳細に示す図である。
【図4】図1に示す航空機アクチュエータの油圧システムについて模式的に示すブロック図である。
【図5】図1に示す航空機アクチュエータの油圧システムの一部について翼の一部とともに示す図であって、A−A線矢視位置から見た図である。
【図6】図5に示す航空機アクチュエータの油圧システムの作動を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧システムが適用される航空機の一部を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧システムが適用される航空機の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともにこのアクチュエータに対して圧油を供給する航空機アクチュエータの油圧システムとして広く適用することができるものである。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧システム1(以下、単に「油圧システム1」ともいう)が適用される航空機100の一部を示す模式図であって、航空機100の機体101の胴体部分の一部と一対の主翼(102a、102b)とを図示したものである。尚、図1の模式図では、各主翼(102a、102b)についての中途部分の図示を省略している。
【0021】
主翼102aには、航空機100の舵面を構成する動翼(操縦翼面)として、エルロン(補助翼)103aが設けられている。同様に、主翼102bには、航空機100の舵面を構成する動翼(操縦翼面)として、エルロン(補助翼)103bが設けられている。そして、図1に例示するように、主翼102aにおけるエルロン103aは、複数(例えば、2つ)のアクチュエータ(14a、14c)によって駆動されるように構成されている。また、主翼102bにおけるエルロン103bも、複数(例えば、2つ)のアクチュエータ(14b、14d)によって駆動されるように構成されている。主翼102aの内部には、エルロン103aを駆動するアクチュエータ(14a、14c)と、そのうちの一方のアクチュエータ14aに対して圧油を供給するように構成された油圧装置13aとが設置されている。一方、主翼102bの内部には、エルロン103bを駆動するアクチュエータ(14b、14d)と、そのうちの一方のアクチュエータ14bに対して圧油を供給するように構成された油圧装置13bとが設置されている。
【0022】
尚、本実施形態に係る油圧システム1は、アクチュエータ14a、アクチュエータ14b、油圧装置13a、油圧装置13b、後述するフライトコントローラ12a及びフライトコントローラ12b、等を備えて構成されている。
【0023】
本実施形態においては、一対の主翼(102a、102b)のそれぞれに設置されるアクチュエータ(14a、14b、14c、14d)及び油圧装置(13a、13b)は同様に構成されている。そこで、以下の説明においては、一方の主翼102aに設置されるアクチュエータ(14a、14c)及び油圧装置13aについて説明し、他方の主翼102bに設置されるアクチュエータ(14b、14d)及び油圧装置13bについての説明を適宜省略する。
【0024】
図2は、油圧システム1の一部を含む油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。また、図3は、図2に示す油圧回路図の一部について更に詳細に示す図である。尚、図2は、一方の主翼102aに設けられたエルロン103aを駆動するアクチュエータ(14a、14c)と、そのうちの一方のアクチュエータ14aに対して圧油を供給するように構成された油圧装置13aとを含む油圧回路を示す油圧回路図として図示されている。また、図3は、図2に示す油圧装置13aの油圧回路構成と後述の第1機体側油圧源104の構成とをより詳しく示している。
【0025】
図2に示すように、アクチュエータ(14a、14c)のそれぞれは、シリンダ15、ピストン16aが設けられたロッド16、等を備え、シリンダ15内がピストン15aによって2つの油室(15a、15b)に区画されて構成されている。そして、アクチュエータ14aのシリンダ15における各油室(15a、15b)は、後述の油圧装置13aに含まれる制御弁17aを介して後述の第1機体側油圧源104及びリザーバ回路106と連通可能に構成されている。一方、アクチュエータ14cのシリンダ15における各油室(15a、15b)は、制御弁17bを介して後述の第2機体側油圧源105及びリザーバ回路107と連通可能に構成されている。
【0026】
図1乃至図3に示す第1機体側油圧源104は、圧油を供給する油圧ポンプ104b、通過する油を冷却する熱交換器を有して油圧ポンプ104bから供給する圧油を冷却する油冷却装置104c、等を備えて構成されている。この第1機体側油圧源104は、機体101側に(機体101の内部に)設置された第1の油圧源として設けられている。また、図1及び図2に示す第2機体側油圧源105も、第1機体側油圧源104と同様に、圧油を供給する油圧ポンプ(図示せず)、通過する油を冷却する熱交換器を有して油圧ポンプから供給する圧油を冷却する油冷却装置(図示せず)、等を備えて構成されている。そして、第2機体側油圧源105は、機体101側に(機体101の内部に)設置された第2の油圧源として設けられている。尚、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105のそれぞれは、互いに独立した系統として設けられている。
【0027】
第1及び第2機体側油圧源(104、105)のそれぞれからの圧油が供給されることで、エルロン(103a、103b)を駆動するアクチュエータ(14a、14b、14c、14d)とエルロン(103a、103b)以外の各舵面を駆動するアクチュエータ(図示せず)とが作動するように構成されている。また、第1機体側油圧源104は、一方の主翼102aに設置されたアクチュエータ14aと他方の主翼102bに設置されたアクチュエータ14dとに圧油を供給可能に接続されている。一方、第2機体側油圧源105は、一方の主翼102aに設置されたアクチュエータ14cと他方の主翼102bに設置されたアクチュエータ14bとに対して圧油を供給可能に接続されている。
【0028】
図2及び図3に示すリザーバ回路106は、圧油として供給された後にアクチュエータ(14a、14d)から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源104に連通するように構成されている。また、リザーバ回路106から独立した系統として構成されるリザーバ回路107(図2参照)は、圧油として供給された後にアクチュエータ(14b、14c)から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を有するとともに、第1機体側油圧源104から独立した系統として構成される第2機体側油圧源105に連通するように構成されている。尚、上記のように、リザーバ回路106は、一方の主翼102aに設置されたアクチュエータ14aと他方の主翼102bに設置されたアクチュエータ14dとに接続されるとともに、第1機体側油圧源104に接続されている。これにより、リザーバ回路106に戻った油が第1機体側油圧源104で昇圧され、アクチュエータ(14a、14c)に供給される。一方、リザーバ回路107は、一方の主翼102aに設置されたアクチュエータ14cと他方の主翼102bに設置されたアクチュエータ14bとに接続されるとともに、第2機体側油圧源105に接続されている。これにより、リザーバ回路107に戻った油が第2機体側油圧源105で昇圧され、アクチュエータ(14b、14c)に供給される。
【0029】
尚、アクチュエータ(14a、14b、14c、14d)は、前述のように、エルロン(103a、103b)を駆動する油圧作動式のアクチュエータとして設けられている。そして、本実施形態においては、一方の主翼102aに設けられたエルロン103aが第1の舵面を構成しており、他方の主翼102bに設けられたエルロン103bが第2の舵面を構成している。また、アクチュエータ14aが、第1機体油圧源104からの圧油が供給されることで作動し、第1の舵面であるエルロン103aを駆動する本実施形態における第1アクチュエータを構成している。そして、アクチュエータ14bが、第2機体側油圧源105からの圧油が供給されることで作動し、第1の舵面と対で作動するように設けられた第2の舵面であるエルロン103bを駆動する本実施形態における第2アクチュエータを構成している。尚、以下の説明においては、エルロン103aを第1の舵面103aとも称し、エルロン103bを第2の舵面103bとも称し、アクチュエータ14aを第1アクチュエータ14aとも称し、アクチュエータ14bを第2アクチュエータ14bとも称する。
【0030】
次に、油圧システム1における油圧装置(13a、13b)について説明する。油圧装置13aは、第1アクチュエータ14aに対して圧油を供給するように構成され、油圧装置13bは、第2アクチュエータ14bに対して圧油を供給するように構成されている。尚、本実施形態では、油圧装置(13a、13b)が、エルロン(103a、103b)として構成された舵面を駆動するアクチュエータ(104a、104b)に対して圧油を供給する形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、油圧装置(13a、13b)が、エレベータ(昇降舵)等のエルロン以外の舵面を駆動するアクチュエータに対して圧油を供給する油圧装置として用いられてもよい。
【0031】
図4は、油圧システム1について模式的に示すブロック図である。また、図5は、油圧装置13aについて主翼102aの一部とともに示す図であって、図1のA−A線矢視位置から見た図である。尚、図4では、油圧システム1における構成要素の一部の図示を省略している。また、図5では、主翼102aの一部については、後述のバックアップ用油圧ポンプ18a及び電動モータ19aの側方から見た状態における断面を含む図として透視図法に基づいて図示している。また、図5では、油圧装置13aにおける構成要素の一部の図示を省略しており、主翼102a内における油圧装置13a以外の機器等の図示を省略している。
【0032】
図1乃至図5に示すように、油圧装置13aは、制御弁17a、第1バックアップ用油圧ポンプ18a、第1電動モータ19a、ドライバ20a、第1バックアップ側逆止弁21a、第1機体油圧源側逆止弁22a、リリーフ弁23a、第1迂回経路24a、第1切替弁25a、リザーバ側迂回経路26a、切替弁27a、本実施形態の吸気口である第1吸気口28a、本実施形態の排気口である第1排気口29a、本実施形態の吸気口開閉部である第1吸気口開閉部30a、本実施形態の排気口開閉部である第1排気口開閉部31a、本実施形態の吸気側駆動機構である第1吸気側駆動機構34a、本実施形態の排気側駆動機構である第1排気側駆動機構35a、等を備えて構成されている。
【0033】
制御弁17aは、第1機体側油圧源104に連通する供給通路104a及びリザーバ回路106に連通する排出通路106aと、第1アクチュエータ14aの油室(15a、15b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。この制御弁17aは、例えば、電磁切換弁として構成され、第1アクチュエータ14aの動作を制御するアクチュエータコントローラ11aからの指令信号に基づいて駆動される。尚、ここで、制御弁17aと同様に構成される制御弁17b(図2参照)についてもあわせて説明する。制御弁17bは、第2機体側油圧源105に連通する供給通路105a及びリザーバ回路107に連通する排出通路107aと、アクチュエータ14bの油室(15a、15b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。そして、制御弁17bは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ14cの動作を制御するアクチュエータコントローラ11cからの指令信号に基づいて駆動される。
【0034】
また、制御弁17aは、アクチュエータコントローラ11aからの指令信号に基づいて切り替えられることで、供給通路104aから油室(15a、15b)の一方に圧油が供給され、油室(15a、15b)の他方から排出通路106aに油が排出される。これにより、シリンダ15に対してロッド16が変位し、エルロン103aが駆動される。また、図示を省略するが、制御弁17aと第1アクチュエータ14aとの間には、油室(15a、15b)間の連通状態(モード)を切り替えるモード切替弁が設けられている。尚、制御弁17bの作動については、上述した制御弁17aと同様であるため、説明を省略する。
【0035】
図2乃至図5に示す第1バックアップ用油圧ポンプ18aは、斜板を有する可変容量式の油圧ポンプとして構成されている。この第1バックアップ用油圧ポンプ18aは、その吸込み側が排出通路106aに連通するように接続され、その吐出側が第1バックアップ側逆止弁21aを介して供給通路104aに圧油を供給可能に連通するように接続されている。そして、第1バックアップ用油圧ポンプ18aは、第1機体側油圧源104における油圧ポンプ104bの故障や油漏れ等によって第1機体側油圧源104の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生したときに第1アクチュエータ14aに対して圧油を供給可能な油圧ポンプとして設けられている。
【0036】
尚、上述した第1バックアップ側逆止弁21aは、第1バックアップ用油圧ポンプ18aから第1アクチュエータ14aへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁として設けられている。また、供給通路104aにおける第1バックアップ用油圧ポンプ18aの吐出側であって第1バックアップ側逆止弁21aの下流側が接続する箇所の上流側(第1機体側油圧源104側)には、第1機体油圧源側逆止弁22aが設けられている。この第1機体油圧源側逆止弁22aは、第1機体側油圧源104から第1アクチュエータ14aへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁として設けられている。
【0037】
また、排出通路106aにおける第1バックアップ用油圧ポンプ18aの吸込み側が接続する箇所の下流側(リザーバ回路106側)には、第1アクチュエータ14aから排出された油の圧力が上昇した際にリザーバ回路106へ圧油を排出するリリーフ弁23aが設けられている。また、このリリーフ弁23aには、供給通路104aに連通するとともにバネが配置されたパイロット圧室が設けられている。供給通路104aから供給される圧油の圧力が所定の圧力値よりも低下すると、パイロット圧油として供給通路104aから上記のパイロット圧室に供給されている圧油の圧力(パイロット圧)も所定の圧力値より低下し、排出通路106aがリリーフ弁23aによって遮断されることになる。このように、油圧装置13aでは、上述した逆止弁(21a、22a)及びリリーフ弁23aが設けられていることにより、第1機体側油圧源104の機能の喪失時又は低下時に、第1アクチュエータ14aから排出された油をリザーバ回路106に戻すことなくバックアップ用油圧ポンプ18で昇圧でき、その昇圧された圧油をアクチュエータ14aに供給可能となる。
【0038】
また、図3に示すように、第1迂回経路24aは、第1機体油圧源側逆止弁22aを迂回する油圧経路として設けられている。この第1迂回経路24aは、供給通路104aに対して第1機体油圧源側逆止弁22aの制御弁17a側にて接続するとともに、第1機体油圧源側逆止弁22aを迂回し、排出通路106aに対してリリーフ弁23aのリザーバ回路106側にて接続する油圧経路として設けられている。そして、この第1迂回経路24aは、後述する第1切替弁25aの作動に基づいて、第1バックアップ用油圧ポンプ18aからリザーバ回路106を介して第1機体側油圧源104における油冷却装置104cへの油の循環を可能にするための油圧経路として構成されている。
【0039】
図3に示す第1切替弁25aは、例えば電磁切替弁として設けられ、第1迂回経路24aに設けられている。そして、この第1切替弁25aは、後述するフライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて、励磁位置と消磁位置との間でスプール位置が切り替えられるように作動する。これにより、第1切替弁25aは、第1迂回経路24aの状態を遮断状態と連通状態とのいずれかの状態に切替可能に構成されている。尚、第1迂回経路24aにおける第1切替弁25aと排出通路106aとの間には、オリフィス36が設けられている。このオリフィス36が設けられていることにより、第1切替弁25aが連通状態に切り替えられたときにおける第1迂回経路24aを介した第1バックアップ用油圧ポンプ18aから油冷却装置104cへの油の循環流量が絞られて調整されるように構成されている。
【0040】
図3に示すリザーバ側迂回経路26aは、リリーフ弁23aを迂回する油圧経路として設けられている。このリザーバ側迂回経路26aは、供給通路104aに対して第1機体油圧源側逆止弁22aの第1機体側油圧源104側にて接続するとともに、リリーフ弁23aを迂回し、排出通路106aに対してリリーフ弁23aの制御弁17a側にて接続する油圧経路として設けられている。そして、このリザーバ側迂回経路26aは、後述する切替弁27aの作動に基づいて、リザーバ回路106から第1機体側油圧源104における油冷却装置104cを介して第1バックアップ用油圧ポンプ18aへの油の循環を可能にするための油圧経路として構成されている。
【0041】
図3に示す切替弁27aは、例えば電磁切替弁として設けられ、リザーバ側迂回経路26aに設けられている。そして、この切替弁27aは、後述するフライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて、励磁位置と消磁位置との間でスプール位置が切り替えられるように作動する。これにより、切替弁27aは、リザーバ側迂回経路26aの状態を遮断状態と連通状態とのいずれかの状態に切替可能に構成されている。
【0042】
図2乃至図5に示す第1電動モータ19aは、第1バックアップ用油圧ポンプ18aに対して、カップリング等を介して連結され、この第1バックアップ用油圧ポンプ18aを駆動するように構成されている。この第1電動モータ19aは、ドライバ20aを介して、後述のフライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて運転状態が制御される。尚、ドライバ20aは、フライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて第1電動モータ19aへ供給される電力及び第1電動モータ19aの運転速度(回転速度)を制御してこの第1電動モータ19aを駆動する回路基板等として設けられている。
【0043】
また、図5に示すように、第1電動モータ19aは、第1バックアップ用油圧ポンプ18aが固定されている。そして、第1電動モータ19a及び第1バックアップ用油圧ポンプ18aは、主翼102aの内部に配置される。尚、本実施形態においては、主翼102aが、第1の舵面103aが設けられる第1の翼102aを構成している(以下の説明では、主翼102aを第1の翼102aとも称する)。
【0044】
図5に示すように、第1吸気口28aは、主翼(第1の翼)102aの表面構造を形成する第1翼構造体部分108において貫通形成された孔として設けられ、主翼102aの外部の空気をこの主翼102aの内部に供給可能な孔として形成されている。この第1吸気口28aは、例えば、矩形の貫通孔として形成され、主翼102aの下面側に配置されている。
【0045】
第1排気口29aは、第1翼構造体部分108において貫通形成された孔として設けられ、主翼102aの内部の空気をこの主翼102aの外部に排出可能な孔として形成されている。この第1排気口29aは、例えば、矩形の貫通孔として形成され、主翼102aの上面側に配置されている。
【0046】
図4及び図5に示す第1吸気口開閉部30aは、第1翼構造体部分108における第1吸気口28aの近傍に設けられている。そして、第1吸気口開閉部30aは、第1吸気口28aを塞ぐ第1スライド蓋部材32aと、この第1スライド蓋部材32aをスライド移動自在に支持するスライド支持部(図示せず)とを備え、第1吸気口28aを開閉可能に構成されている。第1スライド蓋部材32aは、例えば、平板状の部材として設けられている。
【0047】
図4及び図5に示す第1吸気側駆動機構34aは、第1吸気口開閉部30aのスライド支持部に対してスライド移動自在に支持された第1スライド蓋部材32aを第1翼構造体部分108に沿ってスライド移動させることで、第1吸気口開閉部30aを開閉駆動するように構成されている。この第1吸気側駆動機構34aは、例えば、電動シリンダを有する駆動機構として、又はリニアモータを有する駆動機構として、或いは油圧シリンダを有する駆動機構として構成されている。そして、この第1吸気側駆動機構34aは、後述するフライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて作動するように構成されている。
【0048】
図6は、図5に対応して油圧装置13aの作動を説明するための図であって、第1吸気口開閉部30a及び後述の第1排気口開閉部31aが第1吸気口28a及び第1排気口29aを開放した状態を示す図である。この図6に示すように、第1吸気側駆動機構34aによって第1吸気口開閉部30aが駆動されて第1スライド蓋部材32aが第1吸気口28aを開くように移動することで、第1吸気口開閉部30aは、主翼102aの内部を外部に対して開放することになる。一方、第1吸気側駆動機構34aによって第1吸気口開閉部30aが駆動されて第1スライド蓋部材32aが第1吸気口28aを塞ぐように移動することで、第1吸気口開閉部30aは、主翼102aの内部を外部に対して閉鎖することになる。このように、第1吸気口開閉部30aは、第1吸気側駆動機構34aによって駆動されることで、主翼102aの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられるように構成されている。
【0049】
図4及び図5に示す第1排気口開閉部31aは、第1翼構造体部分108における第1排気口29aの近傍に設けられている。そして、第1排気口開閉部31aは、第1排気口29aを塞ぐスライド蓋部材33aと、このスライド蓋部材33aをスライド移動自在に支持するスライド支持部(図示せず)とを備え、第1排気口29aを開閉可能に構成されている。スライド蓋部材33aは、例えば、平板状の部材として設けられている。
【0050】
図4及び図5に示す第1排気側駆動機構35aは、第1排気口開閉部31aのスライド支持部に対してスライド移動自在に支持されたスライド蓋部材33aを第1翼構造体部分108に沿ってスライド移動させることで、第1排気口開閉部31aを開閉駆動するように構成されている。この第1排気側駆動機構35aは、例えば、リニアモータを有する駆動機構として、又は電動シリンダを有する駆動機構として、或いは油圧シリンダを有する駆動機構として構成されている。そして、この第2排気側駆動機構35aは、後述するフライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて作動するように構成されている。
【0051】
そして、図6に示すように、第1排気側駆動機構35aによって第1排気口開閉部31aが駆動されてスライド蓋部材33aが第1排気口29aを開くように移動することで、第1排気口開閉部31aは、主翼102aの内部を外部に対して開放することになる。一方、第1排気側駆動機構35aによって第1排気口開閉部31aが駆動されてスライド蓋部材33aが第1排気口29aを塞ぐように移動することで、第1排気口開閉部31aは、主翼102aの内部を外部に対して閉鎖することになる。このように、第1排気口開閉部31aは、第1排気側駆動機構35aによって駆動されることで、主翼102aの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられるように構成されている。
【0052】
図1及び図4に示す油圧装置13bは、前述した油圧装置13aと同様に構成される。そして、この油圧装置13bは、制御弁17aと同様に構成される制御弁(図示せず)、第2バックアップ用油圧ポンプ18b、第2電動モータ19b、ドライバ20b、第2バックアップ側逆止弁(図示せず)、第2機体油圧源側逆止弁(図示せず)、リリーフ弁23aと同様に構成されるリリーフ弁(図示せず)、第2迂回経路(図示せず)、第2切替弁(図示せず)、リザーバ側迂回経路26aと同様に構成されるリザーバ側迂回経路(図示せず)、切替弁27aと同様に構成される切替弁(図示せず)、本実施形態の吸気口である第2吸気口(図示せず)、本実施形態の排気口である第2排気口(図示せず)、本実施形態の吸気口開閉部である第2吸気口開閉部30b、本実施形態の排気口開閉部である第2排気口開閉部31b、本実施形態の吸気側駆動機構である第2吸気側駆動機構34b、本実施形態の排気側駆動機構である第2排気側駆動機構35b、等を備えて構成されている。尚、油圧装置13bは、上記のように、油圧装置13aと同様に構成されるため、油圧装置13bにおける各構成要素の説明については、油圧装置13aにおける各構成要素の説明を引用することで適宜省略する。
【0053】
第2バックアップ用油圧ポンプ18bは、第1バックアップ用油圧ポンプ18aと同様に構成されている。そして、第2バックアップ用油圧ポンプ18bは、第2機体側油圧源105における油圧ポンプの故障や油漏れ等によって第2機体側油圧源105の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生したときに第2アクチュエータ14bに対して圧油を供給可能な油圧ポンプとして設けられている。
【0054】
第2バックアップ側逆止弁は、第1バックアップ側逆止弁21aと同様に構成されている。そして、この第2バックアップ側逆止弁は、第2バックアップ用油圧ポンプ18bから第2アクチュエータ14bへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁として設けられている。また、第2機体油圧源側逆止弁は、第1機体油圧源側逆止弁22aと同様に構成されている。そして、この第2機体油圧源側逆止弁は、第2機体側油圧源105から第2アクチュエータ14bへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁として設けられている。
【0055】
第2迂回経路は、第1迂回経路24aと同様に構成されている。そして、第2迂回経路は、第2機体油圧源側逆止弁を迂回する油圧経路として設けられている。そして、この第2迂回経路は、第2切替弁の作動に基づいて、第2バックアップ用油圧ポンプ18bからリザーバ回路107を介して第2機体側油圧源105における油冷却装置への油の循環を可能にするための油圧経路として構成されている。第2切替弁は、第1切替弁25aと同様に構成され、第2迂回経路に設けられている。そして、この第2切替弁は、第2迂回経路の状態を遮断状態と連通状態とのいずれかの状態に切替可能に構成されている。
【0056】
第2電動モータ19bは、第2バックアップ用油圧ポンプ18bに対して、カップリング等を介して連結され、この第2バックアップ用油圧ポンプ18bを駆動するように構成されている。この第2電動モータ19bは、ドライバ20bを介して、後述のフライトコントローラ12bからの指令信号に基づいて運転状態が制御される。尚、ドライバ20bは、フライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて第2電動モータ19bへ供給される電力及び第2電動モータ19bの運転速度(回転速度)を制御してこの第2電動モータ19bを駆動する回路基板等として設けられている。
【0057】
また、第2電動モータ19bは、第2バックアップ用油圧ポンプ18bが固定されている。そして、第2電動モータ19b及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bは、主翼102bの内部に配置される。尚、本実施形態においては、主翼102bが、第2の舵面103bが設けられる第2の翼102bを構成している(以下の説明では、主翼102bを第2の翼102bとも称する)。
【0058】
第2吸気口は、主翼(第2の翼)102bの表面構造を形成する第2翼構造体部分において貫通形成された孔として設けられ、主翼102bの外部の空気をこの主翼102bの内部に供給可能な孔として形成されている。尚、第2翼構造体部分は、第1翼構造体部分108と同様に構成される。そして、第2吸気口は、主翼102bの下面側に配置されている。また、第2排気口は、第2翼構造体部分において貫通形成された孔として設けられ、主翼102bの内部の空気をこの主翼102bの外部に排出可能な孔として形成されている。この第2排気口は、主翼102bの上面側に配置されている。
【0059】
第2吸気口開閉部30bは、第2翼構造体部分における第2吸気口の近傍に設けられている。そして、第2吸気口開閉部30bは、第1スライド蓋部材32aと同様に構成されて第2吸気口を塞ぐ第2スライド蓋部材と、この第2スライド蓋部材をスライド移動自在に支持するスライド支持部とを備え、第2吸気口を開閉可能に構成されている。また、第2吸気側駆動機構34bは、第2吸気口開閉部30bのスライド支持部に対してスライド移動自在に支持された第2スライド蓋部材を第2翼構造体部分に沿ってスライド移動させることで、第2吸気口開閉部30bを開閉駆動するように構成されている。この第2吸気側駆動機構34bは、例えば、電動シリンダを有する駆動機構として、又はリニアモータを有する駆動機構として、或いは油圧シリンダを有する駆動機構として構成されている。そして、この第2吸気側駆動機構34bは、後述するフライトコントローラ12bからの指令信号に基づいて作動するように構成されている。また、油圧装置13bにおいても、油圧装置13aと同様に、第2吸気口開閉部30bは、第2吸気側駆動機構34bによって駆動されることで、主翼102bの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられるように構成されている。
【0060】
第2排気口開閉部31bは、第2翼構造体部分における第2排気口の近傍に設けられている。そして、第2排気口開閉部31bは、スライド蓋部材33aと同様に構成されて第2排気口を塞ぐスライド蓋部材と、このスライド蓋部材をスライド移動自在に支持するスライド支持部とを備え、第2排気口を開閉可能に構成されている。また、第2排気側駆動機構35bは、第2排気口開閉部31bのスライド支持部に対してスライド移動自在に支持されたスライド蓋部材を第2翼構造体部分に沿ってスライド移動させることで、第2排気口開閉部31bを開閉駆動するように構成されている。この第2排気側駆動機構35bは、例えば、リニアモータを有する駆動機構として、又は電動シリンダを有する駆動機構として、或いは油圧シリンダを有する駆動機構として構成されている。そして、この第2排気側駆動機構35bは、後述するフライトコントローラ12bからの指令信号に基づいて作動するように構成されている。また、油圧装置13bにおいても、油圧装置13aと同様に、第2排気口開閉部31bは、第2排気側駆動機構35bによって駆動されることで、主翼102bの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられるように構成されている。
【0061】
次に、油圧システム1におけるフライトコントローラ(12a、12b)について説明する(図2乃至図4参照)。フライトコントローラ(12a、12b)は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリ、インターフェース等を備えて構成されている。また、フライトコントローラ12aは、アクチュエータコントローラ11a及びアクチュエータコントローラ11cに対して上位のコンピュータとして設けられ、エルロン103aの動作を指令するコンピュータとして構成されている。そして、エルロン103aの動作を指令する指令信号がアクチュエータコントローラ(11a、11c)に送信され、アクチュエータコントローラ(11a、11c)が、上記の指令信号に基づいて第1アクチュエータ14aを制御し、これにより、エルロン103aの動作が制御されるように構成されている。
【0062】
一方、フライトコントローラ12bは、アクチュエータコントローラ11bとアクチュエータ14dを制御するアクチュエータコントローラ(図示せず)とに対して上位のコンピュータとして設けられ、エルロン103bの動作を指令するコンピュータとして構成されている。そして、エルロン103bの動作を指令する指令信号がアクチュエータコントローラ11b等に送信され、アクチュエータコントローラ11b等が、上記の指令信号に基づいて第2アクチュエータ14bを制御し、これにより、エルロン103bの動作が制御されるように構成されている。
【0063】
ここで、アクチュエータコントローラ(11a、11c)について簡単に説明する。エルロン103aを駆動するアクチュエータ(14a、14c)を制御するアクチュエータコントローラ(11a、11c)は、例えば、集中制御方式のコントローラとして、又は分散処理方式のコントローラとして設置される。集中制御方式の場合、機体101側に設置された1つの筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ11a及びアクチュエータコントローラ11cが設置され、アクチュエータコントローラ11aがアクチュエータ14aを制御し、アクチュエータコントローラ11cがアクチュエータ14cを制御するように構成される。分散処理方式の場合、アクチュエータ14aに搭載された筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ11aが設置され、アクチュエータ14cに搭載された筐体(図示せず)にアクチュエータコントローラ11cが設置され、アクチュエータコントローラ11aがアクチュエータ14aを制御し、アクチュエータコントローラ11cがアクチュエータ14cを制御するように構成される。尚、本実施形態では、複数の異なるアクチュエータコントローラ(11a、11c)に対して1つのフライトコントローラ12aからの指令信号が入力されるように構成されている場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、複数の異なるアクチュエータコントローラ(11a、11c)に対して、それぞれ異なるフライトコントローラからの指令信号が入力されるように構成されていてもよい。エルロン103bを駆動するアクチュエータ(14b、14d)を制御するアクチュエータコントローラについては、アクチュエータコントローラ(11a、11c)と同様に構成されるため、説明を省略する。
【0064】
また、図2乃至図4に示すように、アクチュエータコントローラ11aの上位コンピュータであるフライトコントローラ12aは、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105からの後述の信号を受信するとともに、ドライバ20a、第1吸気側駆動機構34a、第1排気側駆動機構35a、第1切替弁25a、切替弁27aに対しても指令信号を送信可能に構成されている。また、アクチュエータコントローラ11bの上位コンピュータであるフライトコントローラ12bは、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105からの後述の信号を受信するとともに、ドライバ20b、第2吸気側駆動機構34b、第2排気側駆動機構35b、第2切替弁、リザーバ側迂回経路に設けられる切替弁、に対しても指令信号を送信可能に構成されている。尚、図4では、フライトコントローラ(12a、12b)からの指令信号で作動する各切替弁についての図示を省略している。即ち、図4では、油圧装置13aにおける第1切替弁25a及び切替弁27aについての図示と、油圧装置13bにおける第2切替弁及びリザーバ側迂回経路に設けられる切替弁についての図示とを省略している。
【0065】
第1機体側油圧源104からフライトコントローラ12aに対しては、圧力検知信号S1と油残存検知信号S2とが送信され、第2機体側油圧源105からフライトコントローラ12bに対しては、圧力検知信号S3と油残存検知信号S4とが送信されるように構成されている(図4参照)。そして、第1機体側油圧源104からの圧力検知信号S1は、フライトコントローラ12aに加えてフライトコントローラ12bにおいても受信され、第2機体側油圧源105からの圧力検知信号S3は、フライトコントローラ12bに加えてフライトコントローラ12aにおいても受信されるように構成されている。
【0066】
圧力検知信号S1は、例えば、第1機体側油圧源104に設けられてその吐出圧力を検知する圧力センサ(図示せず)での圧力検知信号として構成される。そして、各フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号S1に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下を検知するように構成されている。また、圧力検知信号S3は、例えば、第2機体側油圧源105に設けられてその吐出圧力を検知する圧力センサ(図示せず)での圧力検知信号として構成される。そして、各フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号S3に基づいて、第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下を検知するように構成されている。
【0067】
例えば、各フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号S1の圧力値が所定の第1圧力値以下となったタイミングに応じて第1機体側油圧源104の機能の低下を検知し、圧力検知信号S1の圧力値が第1圧力値よりも更に低い所定の第2圧力値以下となったタイミングに応じて第1機体側油圧源104の機能の喪失を検知するように構成されている。また、各フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号S3の圧力値が所定の第1圧力値以下となったタイミングに応じて第2機体側油圧源105の機能の低下を検知し、圧力検知信号S3の圧力値が第1圧力値よりも更に低い所定の第2圧力値以下となったタイミングに応じて第2機体側油圧源105の機能の喪失を検知するように構成されている。
【0068】
油残存検知信号S2は、例えば、第1機体側油圧源104におけるアキュムレータ(図示せず)に設置された油面計(又は、油量検知センサ)での油面検知信号(又は、油量検知信号)として構成される。そして、上記油面計にて第1機体側油圧源104のアキュムレータにおける油面が検知され、第1機体側油圧源104において循環可能な状態で残存している油の量を指標することになるその油面検知信号が、油残存検知信号S2としてフライトコントローラ12aにて受信される。フライトコントローラ12aでは、油残存検知信号S2に基づいて、第1機体側油圧源104において循環可能な状態で残存している油の量を検知する。尚、例えば、フライトコントローラ12aは、油残存検知信号S2の油面値が所定の油面値未満であれば、第1機体側油圧源104において油が十分に残存しておらず油が循環不能な状態であることを検知するように構成されている。一方、フライトコントローラ12aは、油残存検知信号S2の油面値が所定の油面値以上であれば、第1機体側油圧源104において油が十分に残存しており油が循環可能な状態であることを検知するように構成されている。
【0069】
油残存検知信号S4は、例えば、第2機体側油圧源105におけるアキュムレータ(図示せず)に設置された油面計(又は、油量検知センサ)での油面検知信号(又は、油量検知信号)として構成される。そして、上記油面計にて第2機体側油圧源105のアキュムレータにおける油面が検知され、第2機体側油圧源105において循環可能な状態で残存している油の量を指標することになるその油面検知信号が、油残存検知信号S4としてフライトコントローラ12bにて受信される。フライトコントローラ12bでは、油残存検知信号S4に基づいて、第2機体側油圧源105において循環可能な状態で残存している油の量を検知する。尚、例えば、フライトコントローラ12bは、油残存検知信号S4の油面値が所定の油面値未満であれば、第2機体側油圧源105において油が十分に残存しておらず油が循環不能な状態であることを検知するように構成されている。一方、フライトコントローラ12bは、油残存検知信号S4の油面値が所定の油面値以上であれば、第2機体側油圧源105において油が十分に残存しており油が循環可能な状態であることを検知するように構成されている。
【0070】
また、フライトコントローラ12aは、圧力検知信号(S1、S3)に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失及び低下が発生しておらず第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が発生したことを検知したときに、ドライバ20aを介して第1電動モータ19aの運転を開始させ、第1機体側油圧源104の下流側に接続された第1バックアップ用油圧ポンプ18aを運転させるように制御する。そして、第1機体側油圧源104が作動している状態で、フライトコントローラ12aの制御によって第1バックアップ用油圧ポンプ18aの運転が行われることで、第1機体側油圧源104における油冷却装置104cによって、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104を流れる油の冷却が行われることになる。
【0071】
また、フライトコントローラ12bは、圧力検知信号(S1、S3)に基づいて、第2機体側油圧源105の機能の喪失及び低下が発生しておらず第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生したことを検知したときに、ドライバ20bを介して第2電動モータ19bの運転を開始させ、第2機体側油圧源105の下流側に接続された第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させるように制御する。そして、第2機体側油圧源105が作動している状態で、フライトコントローラ12bの制御によって第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転が行われることで、第2機体側油圧源105における油冷却装置によって、第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105を流れる油の冷却が行われることになる。
【0072】
これにより、油圧システム1においては、フライトコントローラ(12a、12b)が、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転を制御する本実施形態におけるコントローラを構成している。即ち、フライトコントローラ(12a、12b)は、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときに、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bのうち、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の他方である他方側油圧源の下流側に接続されたバックアップ用油圧ポンプである他方側バックアップ用油圧ポンプを運転させるように制御するよう構成されている。そして、油圧システム1においては、上記の他方側油圧源が作動している状態で、フライトコントローラ(12a、12b)の制御によって上記の他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われることで、上記の他方側油圧源における油冷却装置によって、上記の他方側バックアップ用油圧ポンプ及び上記の他方側油圧源を流れる油の冷却が行われるように構成されている。
【0073】
尚、フライトコントローラ(12a、12b)は、他方側バックアップ用油圧ポンプを運転させるように制御している状態において航空機が着陸姿勢に入った段階で、機能の喪失又は低下が発生した機体側油圧源の下流側に接続されたもう一方のバックアップ用油圧ポンプも運転させるように制御するよう構成されていてもよい。例えば、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生したために第2機体側油圧源105の下流側の第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させている状態において航空機が着陸姿勢に入った段階で、もう一方の第1バックアップ用油圧ポンプ18aも起動し、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方を運転させるように制御してもよい。これによって、着陸段階において、機能の喪失又は低下が発生していなかった方の機体側油圧源においても機能の喪失又は低下が急激に発生した場合であっても、既に他方側バックアップ用油圧ポンプに加えてもう一方のバックアップ用油圧ポンプも作動しているため、瞬間的にでも機体の制御が失われてしまうことが防止され、安全な飛行を確保することができる。
【0074】
また、フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号(S1、S3)及び油残存検知信号S2に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生するとともに、第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、第1機体側油圧源104に油を循環可能な状態のときに、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させるとともに、第1迂回経路24a及びリザーバ側迂回回路26aを連通状態に移行させる。即ち、上記の状態のときには、フライトコントローラ(12a、12b)は、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)を運転させるとともに、第1迂回経路24aの状態を連通状態に切り替えるように第1切替弁25aを制御し、リザーバ側迂回経路26aの状態を連通状態に切り替えるように切替弁27aを制御するように構成されている。
【0075】
そして、フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号(S1、S3)及び油残存検知信号S4に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生するとともに、第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、第2機体側油圧源105に油を循環可能な状態のときに、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させるとともに、油圧装置13bにおける第2迂回経路及びリザーバ側迂回回路を連通状態に移行させる。即ち、上記の状態のときには、フライトコントローラ(12a、12b)は、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)を運転させるとともに、油圧装置13bにおいて、第2迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように第2切替弁を制御し、リザーバ側迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように切替弁を制御するように構成されている。
【0076】
尚、フライトコントローラ(12a、12b)は、更に、前述したタイミング以外のタイミングにおいても、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させるように構成されていてもよい。例えば、フライトコントローラ(12a、12b)は、圧力検知信号(S1、S3)に関わらず、航空機が着陸姿勢に入った段階で、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bを運転させてもよい。これによって、着陸段階で急激に第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が生じても、既に第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bは作動しているため、安全な飛行を確保することができる。
【0077】
また、フライトコントローラ(12a、12b)は、上記のように第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bの両方を起動させるときに、各吸気側及び排気側の駆動機構(34a、34b、35a、35b)を作動させるように構成されている。即ち、フライトコントローラ(12a、12b)は、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方を起動させる際に、第1吸気側駆動機構34a及び第1排気側駆動機構35aを作動させて第1吸気口28a及び第1排気口29aを開放させ、第2吸気側駆動機構34b及び第2排気側駆動機構35bを作動させて第2吸気口及び第2排気口を開放させるように構成されている。
【0078】
次に、油圧システム1の作動について説明する。第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の機能の喪失及び低下が発生していない状態では、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転は行われない。この状態では、第1アクチュエータ14aに対しては、制御弁17aを介して第1油圧供給源104からの圧油が油室(15a、15b)の一方に供給され、油室(15a、15b)の他方から油が排出されて制御弁17aを介してリザーバ回路106に戻されることになる。同様に、第2アクチュエータ14bに対しても第2機体側油圧源105からの圧油が供給され、第2アクチュエータ14bから排出された油がリザーバ回路に油が戻されることになる。また、アクチュエータコントローラ11aからの指令信号に基づいて制御弁17aの接続状態が切り替えられることで、圧油の供給及び油の排出が行われる油室(15a、15b)の切り替えが行われ、第1アクチュエータ14aが作動してエルロン103aが駆動される。同様に、第2アクチュエータ14bが作動してエルロン103bが駆動される。
【0079】
一方、第1機体側油圧源104のみの機能の喪失及び低下が発生すると、前述のように、第2機体側油圧源105の下流側に接続された第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転が行われる。即ち、第2機体側油圧源105及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bのパラレル運転が行われることになる。そして、第2アクチュエータ14bに対して第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105からの圧油が供給され、第2アクチュエータ14bから排出された油の一部が第2バックアップ用油圧ポンプ18bに吸い込まれて昇圧されて残りの油がリザーバ回路107に戻されることになる。これにより、エルロン103bが駆動され、更に、第2機体側油圧源105における油冷却装置によって、第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105を流れる油の冷却が行われる。
【0080】
また、第2機体側油圧源105のみの機能の喪失及び低下が発生すると、前述のように、第1機体側油圧源104の下流側に接続された第1バックアップ用油圧ポンプ18aの運転が行われる。即ち、第1機体側油圧源104及び第1バックアップ用油圧ポンプ18aのパラレル運転が行われることになる。そして、第1アクチュエータ14aに対して第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104からの圧油が供給され、第1アクチュエータ14aから排出された油の一部が第1バックアップ用油圧ポンプ18aに吸い込まれて昇圧されて残りの油がリザーバ回路106に戻されることになる。これにより、エルロン103aが駆動され、更に、第1機体側油圧源104における油冷却装置104cによって、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104を流れる油の冷却が行われることになる。
【0081】
また、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の両方の機能の喪失又は低下が発生すると、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転が行われる。尚、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の両方の機能の喪失又は低下が発生することは、確率的に極めて稀であり、このようなケースが発生する場合であっても、通常、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bの一方の運転が既に行われている状態で、他方の運転も開始されることになる。
【0082】
また、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失又は低下が発生して第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転が行われる際において、第1機体側油圧源104に油を循環可能な状態のときは、第1切替弁25a及び切替弁27aが作動し、第1迂回経路24a及びリザーバ側迂回経路26aが連通状態に切り替えられる。これにより、第1バックアップ用油圧ポンプ18aから吐出された油の少なくとも一部が第1機体側油圧源104の油冷却装置104cを定常的に循環することになり、油の冷却が行われることになる。尚、このとき、第1機体側油圧源104においては、フライトコントローラ12aからの指令信号に基づいて、油圧ポンプ104bを通過することなく油冷却装置104cを通過して油が循環するように、油圧回路(図示せず)が切り替えられる。
【0083】
また、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失又は低下が発生して第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転が行われる際において、第2機体側油圧源105に油を循環可能な状態のときは、油圧装置13bにおける第2切替弁とリザーバ側迂回経路用の切替弁とが作動し、第2迂回経路及びリザーバ側迂回経路が連通状態に切り替えられる。これにより、第2バックアップ用油圧ポンプ18bから吐出された油の少なくとも一部が第2機体側油圧源105の油冷却装置を定常的に循環することになり、油の冷却が行われることになる。尚、このとき、第2機体側油圧源105においては、フライトコントローラ12bからの指令信号に基づいて、第2機体側油圧源105内の油圧ポンプを通過することなく油冷却装置を通過して油が循環するように、油圧回路(図示せず)が切り替えられる。
【0084】
また、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のいずれにおいても機能の喪失及び低下が発生していない状態、又は、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のいずれか一方のみにおいて機能の喪失及び低下が発生した状態では、各吸気口開閉部(30a、30b)及び各排気口開閉部(31a、31b)は各吸気口及び各排気口を閉鎖している。即ち、上記の状態では、第1吸気口開閉部30aが第1スライド蓋部材32aにおいて第1吸気口28aを塞ぐとともに、第1排気口開閉部31aがスライド蓋部材33aにおいて第1排気口29aを塞いでおり、主翼102aの内部が外部に対して閉鎖されている。そして、同様に、第2吸気口開閉部30bが第2吸気口を塞ぐとともに、第2排気口開閉部31bが第2排気口を塞いでおり、主翼102bの内部が外部に対して閉鎖されている。
【0085】
一方、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失又は低下が発生して第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方が起動されるタイミングでは、フライトコントローラ(12a、12b)からの指令信号に基づいて、第1及び第2吸気側駆動機構(34a、34b)と第1及び第2排気側駆動機構(35a、35b)とが作動する。そして、第1吸気口開閉部30aが第1吸気側駆動機構34aによって駆動されて第1スライド蓋部材32aがスライド移動し、第1排気口開閉部31aが第1排気側駆動機構35aによって駆動されてスライド蓋部材33aがスライド移動する。これにより、第1吸気口28aが開放されるとともに第1排気口29aが開放されることになる。同様に、第2吸気口及び第2排気口も開放されることになる。
【0086】
そして、第1吸気口28aが開放されることで、主翼102aにおいて高圧側となるこの主翼102aの下面側に配置された第1吸気口28aから主翼102aの外部の空気が流入することになる。そして、第1排気口29aが開放されることで、主翼102aにおいて低圧側となるこの主翼102aの上面側に配置された第1排気口29aから主翼102aの内部の空気が流出することになる。このように、主翼102aの外部の低温の空気が第1吸気口28aから主翼102aの内部に流入するとともに、主翼102aの内部の空気が第1排気口29aから外部へと流出する空気の流れが形成されることになる。即ち、図6において、二点鎖線で図示する矢印Hで示す空気の流れが形成されることになる。尚、主翼102bにおいても、第2吸気口及び第2排気口が開放されることで、上記と同様の空気の流れが形成されることになる。
【0087】
尚、第1バックアップ用油圧ポンプ18a、第1電動モータ19a及び使用されている油にて発生した熱量は、第1翼構造体部分108の内部の空気へと熱伝導、熱伝達(対流)及び熱放射によって伝達される。そして、第1翼構造体部分108の内部の空気へと伝達された熱量は、上述した第1吸気口28aから主翼102aの外部の空気が流入して第1排気口29aから主翼102aの内部の空気が流出する空気の流れ(二点鎖線の矢印Hで示す空気の流れ)に伴って、主翼102aの外部へと抜熱されることになる。即ち、主翼102aの外部の低温の空気が主翼102aの内部へ供給され、主翼102aの内部の高温の空気が主翼102aの外部に排出されることになる。これにより、第1吸気口28aから第1翼構造体部分108の内部を通過して第1排気口29aへと流動する空気を介して第1バックアップ用油圧ポンプ18a、第1電動モータ19a及び使用されている油が冷却され、それらの温度上昇が抑制されることになる。尚、主翼102b内においても、上記と同様に、第2吸気口から第2翼構造体部分の内部を通過して第2排気口へと流動する空気を介して第2バックアップ用油圧ポンプ18b、第2電動モータ19b及び使用されている油が冷却され、それらの温度上昇が抑制されることになる。
【0088】
尚、フライトコントローラ(12、12b)は、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方が起動されるときであって、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の少なくともいずれかにおいて油を循環可能でない状態のときに、吸気側及び排気側の各駆動機構(34a、34b、35a、35b)を作動させて各吸気口及び各排気口を開放させるように構成されることが望ましい。又は、フライトコントローラ(12、12b)は、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方が起動されるときであって、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方ともに油を循環可能でない状態のときに、吸気側及び排気側の各駆動機構(34a、34b、35a、35b)を作動させて各吸気口及び各排気口を開放させるように構成されることが望ましい。これらの場合、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方が起動されるときであって、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のそれぞれの油冷却装置による冷却が可能なときに、又は、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の一方の油冷却装置による冷却が可能なときに、各吸気口及び各排気口が開放されずに閉鎖されたままとなる。このため、機体側油圧源(104、105)の油冷却装置を有効的に活用できる際における吸気口及び排気口の開放頻度を低減させ又は無くし、翼効率の低下を防止しながら、システム全体の温度上昇と油の温度上昇とを抑制することができる。
【0089】
以上説明したように、油圧システム1によると、第2機体側油圧源105の機能の喪失又は低下が発生した後に第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、第1バックアップ用油圧ポンプ18aから圧油を供給して第1アクチュエータ14aを駆動することができる。そして、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が発生した後に第2機体側油圧105の機能の喪失又は低下が発生した場合であっても、第2バックアップ用油圧ポンプ18bから圧油を供給して第2アクチュエー14bを駆動することができる。
【0090】
また、油圧システム1によると、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときには、フライトコントローラ(12a、12b)の制御によって、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のうちの他方(即ち、機能の喪失又は低下が生じていない他方側油圧源)の下流側に接続された他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)の運転が行われる。そして、他方側油圧源(104又は105)が作動している状態で他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)の運転が行われることで、他方側油圧源(104又は105)における油冷却装置によって他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)及び他方側油圧源(104又は105)を流れる油の冷却が行われる。このため、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のうちの一方の機能の喪失又は低下が発生したときに運転される他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)の連続運転が行われても、圧油として他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)からアクチュエータ(14a又は14b)に供給されてこのポンプとアクチュエータとの間で循環して使用される油(作動油)を冷却することができる。そして、運転中の他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)を冷却することができるとともに、この他方側バックアップ用油圧ポンプ(18a又は18b)に連結されて熱伝導が生じる電動モータ(19a又は19b)も冷却でき、油圧システム1全体としての温度上昇を抑制することができる。また、油圧システム1によると、温度上昇を抑制しつつ、残った機体側油圧源が機能喪失した場合でも(即ち、機能の喪失又は低下が発生していなかった方の機体側油圧源においても機能の喪失又は低下が発生した場合でも)既に起動済みのバックアップ用油圧ポンプにより、機体の制御を連続的に維持することが可能となる。
【0091】
上記のように、本実施形態によると、機体側油圧源(104、105)における油冷却装置を有効的に活用することができ、バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)及び使用される油の温度上昇を抑制することができる。そして、本実施形態によると、機体側油圧源(104、105)の機能の喪失時又は低下時に機能する油圧システム1において、油を冷却する油冷却装置が更に追加されることがないため、油圧システム1の大型化や重量の増大を招いてしまうこともない。
【0092】
従って、本実施形態によると、機体側油圧源(104、105)の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータ(14a、14b)を駆動可能であるとともに、システムの大型化及び重量の増大を招くことを防止して、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システム1を提供することができる。
【0093】
また、油圧システム1によると、第1バックアップ側逆止弁21a及び第1機体油圧源側逆止弁22aが設けられているため、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104の作動時に、第1バックアップ用油圧ポンプ18aからの圧油が第1機体側油圧源104に逆流することが防止され、第1機体側油圧源104からの圧油が第1バックアップ用油圧ポンプ18aに逆流することが防止される。そして、第2バックアップ側逆止弁及び第2機体油圧源側逆止弁が設けられているため、第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105の作動時に、第2バックアップ用油圧ポンプ18bからの圧油が第2機体側油圧源105に逆流することが防止され、第2機体側油圧源105からの圧油が第2バックアップ用油圧ポンプ18bに逆流することが防止される。
【0094】
更に、油圧システム1によると、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の機能の喪失又は低下が生じた際には、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転が行われ、第1及び第2アクチュエータ(14a、14b)が駆動されることになる。そして、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の機能の喪失時又は低下時に第1機体側油圧源104に油を循環可能な状態であれば、フライトコントローラ12aによって、第1機体油圧源側逆止弁22aを迂回する第1迂回経路24aの状態を連通状態に切り替えるように、第1迂回経路24aに設けられた第1切替弁25aの制御が行われる。これにより、第1バックアップ用油圧ポンプ18aから供給される油が、第1機体側油圧源104における油冷却装置104cも循環し、冷却されることになる。また、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の機能の喪失時又は低下時に第2機体側油圧源105に油を循環可能な状態であれば、フライトコントローラ12bによって、第2機体油圧源側逆止弁を迂回する第2迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように、第2迂回経路に設けられた第2切替弁の制御が行われる。これにより、第2バックアップ用油圧ポンプ18bから供給される油が、第2機体側油圧源105における油冷却装置も循環し、冷却されることになる。よって、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失時又は低下時であっても第1及び第2アクチュエータ(14a、14b)を駆動可能であるとともに、機体側油圧源(104、105)における油冷却装置を有効的に活用することができ、バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)及び使用される油の温度上昇を抑制することができる。
【0095】
また、油圧システム1によると、第1の翼102aの内部に第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1電動モータ19aが配置され、第2の翼102bの内部に第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2電動モータ19bが配置される。このため、航空機アクチュエータの油圧システム1が、アクチュエータ(14a、14b)に近接した領域に配置されることになり、この油圧システム1について更なる小型化及び軽量化を図ることができる。更に、油圧システム1は、第1吸気口開閉部30a及び第1排気口開閉部31aが作動することで、第1吸気口28a及び第1排気口29aを開放し、第1の翼102aの外部の低温の空気を第1の翼102aの内部に供給するとともに、第1の翼102aの内部の高温の空気を第1の翼102aの外部に排出することができる。同様に、第2吸気口開閉部30b及び第2排気口開閉部31bが作動することで、第2吸気口及び第2排気口を開放し、第2の翼102bの外部の低温の空気を第2の翼102bの内部に供給するとともに、第2の翼102bの内部の高温の空気を第2の翼102bの外部に排出することができる。このため、油圧システム1における第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)と第1及び第2電動モータ(19a、19b)とから発生した熱量を第1吸気口28aから第1排気口29aへと流動する空気及び第2吸気口から第2排気口へと流動する空気によって抜熱して油圧システム1を冷却できる。即ち、油圧システム1にて発生した熱量を第1及び第2の翼(102a、102b)の外部の大気へと直接に放熱可能に構成されている。
【0096】
また、油圧システム1では、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失又は低下が発生して第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の両方を起動させた場合に、各吸気口及び各排気口が開放される。このため、第1及び第2機体側油圧源(104、105)の両方の機能の喪失時又は低下時において、機体側油圧源(104、105)における油冷却装置を活用できないような場合であっても、油圧システム1全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる。また、油圧システム1では、吸気口開閉部(30a、30b)を開閉駆動する吸気側駆動機構(34a、34b)と、排気口開閉部(31a、31b)を開閉駆動する排気側駆動機構(35a、35b)とが、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転を制御するフライトコントローラ(12a、12b)からの指令信号に基づいて作動する。このため、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転を制御するフライトコントローラ(12a、12b)を有効的に利用し、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、1b)の作動状況に連動させるように各吸気口と各排気口とを開放可能な制御構成を新たな制御装置を別途追加することなく実現することができる。
【0097】
尚、本実施形態では、アクチュエータ14aを第1アクチュエータ14aとして、アクチュエータ14bを第2アクチュエータ14bとして、機体側油圧源104を第1機体側油圧源104として、機体側油圧源105を第2機体側油圧源105として説明したが、「第1」及び「第2」の名称については、逆に組み合わされる形態であってもよい。即ち、アクチュエータ14aを第2アクチュエータ14aとして、アクチュエータ14bを第1アクチュエータ14bとして、機体側油圧源104を第2機体側油圧源104として、機体側油圧源105を第1機体側油圧源105として説明する形態であっても、同様の効果を奏する発明が構成されることになる。尚、上述した本実施形態に対して「第1」及び「第2」の名称が逆に組み合わされる形態の場合は、バックアップ用油圧ポンプ、電動モータ、等の各構成要素においても、「第1」及び「第2」の名称が逆に組み合わされることになる。
【0098】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る航空機アクチュエータの油圧システム2(以下、単に「油圧システム2」ともいう)及び航空機アクチュエータの油圧システム3(以下、単に「油圧システム3」ともいう)について説明する。図7及び図8は、油圧システム2及び油圧システム3が適用される航空機100の一部を示す模式図であって、航空機100の機体101の後部と一対の水平尾翼(109a、109b)と垂直尾翼111とを図示したものである。尚、垂直尾翼111については、機体101から分離した状態で模式的に示している。
【0099】
図7に示す油圧システム2は、第1実施形態の油圧システム1と同様に、第1アクチュエータ14a及び第2アクチュエータ14bと、油圧装置(13a、13b)と、図示しないフライトコントローラ(12a、12b)とを備えて構成されている。但し、油圧システム2は、第1アクチュエータ14aが、水平尾翼109aに設けられた第1の舵面であるエレベータ(昇降舵)110aを駆動するアクチュエータとして構成され、第2アクチュエータ14bが、水平尾翼109bに設けられた第2の舵面であるエレベータ(昇降舵)110bを駆動するアクチュエータとして構成されている点において、第1実施形態の油圧システム1とは構成が異なっている。
【0100】
また、図8に示す油圧システム3は、第1実施形態の油圧システム1と同様に、第1アクチュエータ14a及び第2アクチュエータ14bと、油圧装置(13a、13b)と、図示しないフライトコントローラ(12a、12b)とを備えて構成されている。但し、油圧システム3は、第1アクチュエータ14aが、垂直尾翼111に設けられた第1の舵面であるラダー(方向舵)112を駆動するアクチュエータとして構成され、第2アクチュエータ14bも、垂直尾翼111に設けられた第1の舵面であるラダー(方向舵)112を駆動するアクチュエータとして構成されている点において、第1実施形態の油圧システム1とは構成が異なっている。
【0101】
尚、油圧システム2及び油圧システム3の説明においては、第1実施形態と構成が異なる点について説明し、第1実施形態と同様に構成される要素の具体的構成、即ち、第1及び第2アクチュエータ(14a、14b)、油圧装置(13a、13b)、フライトコントローラ(12a、12b)、第1及び第2機体側油圧源(104、105)、等の具体的な構成については、図面において同一の符号を付すことで、又は同一の符号や名称を引用することで、説明を省略する。
【0102】
油圧システム2及び油圧システム3は、油圧装置(13a、13b)が共有された形態として構成されている。即ち、油圧装置13aの第1バックアップ用油圧装置18a、及び、油圧装置13bの第2バックアップ用油圧装置18bは、油圧システム2の要素を構成するとともに、油圧システム3の要素も構成している。尚、各アクチュエータ(14a、14b)への圧油の供給及び排出を切り替えるための各制御弁については、油圧システム2における各アクチュエータ(14a、14b)と油圧システム3における各アクチュエータ(14a、14b)とに対し、それぞれ対応して設けられている。また、油圧システム3においては、前述のように、第1の舵面であるラダー112が、第1アクチュエータ14a及び第2アクチュエータ14bによって駆動されるように構成されている。
【0103】
油圧システム2及び油圧システム3において、第1機体側油圧源104のみの機能の喪失及び低下が発生すると、第2機体側油圧源105の下流側に接続された油圧装置13bの第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転が行われる。即ち、第2機体側油圧源105及び第2バックアップ用油圧ポンプ18bのパラレル運転が行われることになる。そして、第2アクチュエータ14bに対して第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105からの圧油が供給され、第2アクチュエータ14bから排出された油の一部が第2バックアップ用油圧ポンプ18bに吸い込まれて昇圧されて残りの油がリザーバ回路107に戻されることになる。これにより、エレベータ110b及びラダー112が駆動され、更に、第2機体側油圧源105における油冷却装置によって、第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2機体側油圧源105を流れる油の冷却が行われる。
【0104】
また、油圧システム2及び油圧システム3において、第2機体側油圧源105のみの機能の喪失及び低下が発生すると、第1機体側油圧源104の下流側に接続された油圧装置13aの第1バックアップ用油圧ポンプ18aの運転が行われる。即ち、第1機体側油圧源104及び第1バックアップ用油圧ポンプ18aのパラレル運転が行われることになる。そして、第1アクチュエータ14aに対して第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104からの圧油が供給され、第1アクチュエータ14aから排出された油の一部が第1バックアップ用油圧ポンプ18aに吸い込まれて昇圧されて残りの油がリザーバ回路106に戻されることになる。これにより、エレベータ110a及びラダー112が駆動され、更に、第1機体側油圧源104における油冷却装置104cによって、第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1機体側油圧源104を流れる油の冷却が行われることになる。
【0105】
また、第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105の両方の機能の喪失又は低下が発生すると、油圧装置13aの第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び油圧装置13bの第2バックアップ用油圧ポンプ18bの運転が行われる。そして、この場合において、第1機体側油圧源104に油を循環可能な状態のときは、油圧装置13aにおける第1切替弁25a及び切替弁27aが作動し、第1迂回経路24a及びリザーバ側迂回経路26aが連通状態に切り替えられる。これにより、第1バックアップ用油圧ポンプ18aから吐出された油の少なくとも一部が第1機体側油圧源104の油冷却装置104cを定常的に循環することになり、油の冷却が行われることになる。また、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)の運転が行われる場合において、第2機体側油圧源105に油を循環可能な状態のときは、油圧装置13bにおける第2切替弁とリザーバ側迂回経路用の切替弁とが作動し、第2迂回経路及びリザーバ側迂回経路が連通状態に切り替えられる。これにより、第2バックアップ用油圧ポンプ18bから吐出された油の少なくとも一部が第2機体側油圧源105の油冷却装置を定常的に循環することになり、油の冷却が行われることになる。
【0106】
また、油圧システム2においては、水平尾翼109aには、その内部に第1バックアップ用油圧ポンプ18a及び第1電動モータ19aが配置されている。そして、水平尾翼109aには、第1実施形態における主翼102aと同様に、1吸気口28a、第1排気口29a、第1吸気口開閉部30a、第1排気口開閉部30a、第1吸気側駆動機構34a、第1排気側駆動機構35aが設けられている。一方、水平尾翼109bには、その内部に第2バックアップ用油圧ポンプ18b及び第2電動モータ19bが配置されている。そして、水平尾翼109bには、第1実施形態における主翼102bと同様に、第2吸気口、第2排気口、第2吸気口開閉部30b、第2排気口開閉部30b、第2吸気側駆動機構34b、第2排気側駆動機構35bが設けられている。そして、第1実施形態と同様に、フライトコントローラ(12a、12b)からの指令信号に基づいて、第1及び第2吸気側駆動機構(34a、34b)と第1及び第2排気側駆動機構(35a、35b)とが作動し、第1吸気口28a、第2吸気口、第1排気口29a、第2排気口の開閉制御が行われる。
【0107】
以上説明した本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、本実施形態によると、機体側油圧源(104、105)の機能の喪失時又は低下時であってもアクチュエータ(14a、14b)を駆動可能であるとともに、システムの大型化及び重量の増大を招くことを防止して、システム全体の温度上昇と使用される油の温度上昇とを抑制することができる、航空機アクチュエータの油圧システム2及び航空機アクチュエータの油圧システム3を提供することができる。また、本実施形態によると、油圧システム2及び油圧システム3において、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)と第1及び第2電動モータ(19a、19b)とを共有させ、構成要素を効率化することができる。このため、航空機100におけるシステム全体としての小型化及び軽量化を図ることができる。
【0108】
尚、本実施形態では、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)と第1及び第2電動モータ(19a、19b)とが、油圧システム2及び油圧システム3において共有され、水平尾翼(109a、109b)の内部に配置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第1及び第2バックアップ用油圧ポンプ(18a、18b)と第1及び第2電動モータ(19a、19b)とは、油圧システム2と共有されるか否かによらず、垂直尾翼111の内部に配置される形態であってもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、エルロン、エレベータ及びラダー以外の舵面を駆動するアクチュエータを有するとともにそのアクチュエータに対して圧油を供給する航空機アクチュエータの油圧システムを実施してもよい。また、航空機アクチュエータの油圧システムと機体側油圧源とを接続する油圧回路形態については、種々変更して実施してもよい。また、第1及び第2バックアップ用油圧ポンプの運転を制御するコントローラの形態については、第1及び第2実施形態で例示したフライトコントローラの形態に限らず、種々変更して実施してもよい。また、第1迂回経路、第2迂回経路、第1切替弁、第2切替弁の形態については、第1実施形態で例示した回路形態やバルブ形態に限らず、種々変更して実施してもよい。また、吸気口及び排気口の配置や形状については、種々変更して実施してもよい。また、吸気口開閉部、排気口開閉部、吸気側駆動機構及び排気側駆動機構の形態については、種々変更して実施してもよい。また、吸気口開閉部及び排気口開閉部は、航空機の飛行中に一旦開放されると、航空機が着陸するまでは開放されたままの状態に維持されるように構成されていてもよい。
【0110】
また、上述の実施形態では、吸気口として第1及び第2吸気口が設けられ、排気口として第1及び第2排気口が設けられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。吸気口は、第1翼構造体部分及び第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかに設けられていればよい。また、排気口は、第1翼構造体部分及び第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって吸気口が設けられた翼構造体部分に設けられていればよい。また、吸気口開閉部は、第1翼構造体部分及び第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって吸気口が設けられた翼構造体部分に設けられていればよい。また、排気口開閉部は、第1翼構造体部分及び第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって排気口が設けられた翼構造体部分に設けられていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともにこのアクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧システムとして、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0112】
1 航空機アクチュエータの油圧システム
12a、12b フライトコントローラ(コントローラ)
14a 第1アクチュエータ
14b 第2アクチュエータ
18a 第1バックアップ用油圧ポンプ
18b 第2バックアップ用油圧ポンプ
100 航空機
101 機体
103a エルロン(第1の舵面)
103b エルロン(第2の舵面)
104 第1機体側油圧源
105 第2機体側油圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の舵面を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともに当該アクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧システムであって、
前記アクチュエータとして設けられ、前記航空機の機体側に設置されるとともに油冷却装置を有する第1の油圧源である第1機体側油圧源からの圧油が供給されることで作動し、前記舵面として設けられた第1の舵面を駆動する第1アクチュエータと、
前記アクチュエータとして設けられ、前記航空機の機体側に設置されるとともに油冷却装置を有する第2の油圧源である第2機体側油圧源からの圧油が供給されることで作動し、前記舵面として設けられるとともに前記第1の舵面と対で作動するよう設けられた第2の舵面を又は前記第1の舵面を駆動する第2アクチュエータと、
前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記第1アクチュエータに対して圧油を供給可能な第1バックアップ用油圧ポンプと、
前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記第2アクチュエータに対して圧油を供給可能な第2バックアップ用油圧ポンプと、
前記第1機体側油圧源及び前記第2機体側油圧源のいずれか一方の機能の喪失又は低下が発生したときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプのうち、前記第1機体側油圧源及び前記第2機体側油圧源の他方である他方側油圧源の下流側に接続されたバックアップ用油圧ポンプである他方側バックアップ用油圧ポンプを運転させるように制御するコントローラと、
を備え、
前記他方側油圧源が作動している状態で、前記コントローラの制御によって前記他方側バックアップ用油圧ポンプの運転が行われることで、前記他方側油圧源における油冷却装置によって、前記他方側バックアップ用油圧ポンプ及び前記他方側油圧源を流れる油の冷却が行われることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機アクチュエータの油圧システムであって、
前記第1バックアップ用油圧ポンプから前記第1アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第1バックアップ側逆止弁と、
前記第1機体側油圧源から前記第1アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第1機体油圧源側逆止弁と、
前記第2バックアップ用油圧ポンプから前記第2アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第2バックアップ側逆止弁と、
前記第2機体側油圧源から前記第2アクチュエータへ向かう方向の油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する第2機体油圧源側逆止弁と、
前記第1機体油圧源側逆止弁を迂回するように設けられ、前記第1バックアップ用油圧ポンプから前記第1機体側油圧源における油冷却装置への油の循環を可能にする第1迂回経路と、
前記第2機体油圧源側逆止弁を迂回するように設けられ、前記第2バックアップ用油圧ポンプから前記第2機体側油圧源における油冷却装置への油の循環を可能にする第2迂回経路と、
前記第1迂回経路の状態を連通状態と遮断状態とのいずれかの状態に切替可能な第1切替弁と、
前記第2迂回経路の状態を連通状態と遮断状態とのいずれかの状態に切替可能な第2切替弁と、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生するとともに、前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、前記第1機体側油圧源に油を循環可能な状態のときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプを運転させるとともに、前記第1迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように前記第1切替弁を制御し、
前記第1機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生するとともに、前記第2機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生し、且つ、前記第2機体側油圧源に油を循環可能な状態のときに、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプを運転させるとともに、前記第2迂回経路の状態を連通状態に切り替えるように前記第2切替弁を制御することを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の航空機アクチュエータの油圧システムであって、
前記第1バックアップ用油圧ポンプと当該第1バックアップ用油圧ポンプを駆動する第1電動モータとが、前記第1の舵面が設けられる第1の翼の内部に配置され、
前記第2バックアップ用油圧ポンプと当該第2バックアップ用油圧ポンプを駆動する第2電動モータとが、前記第2アクチュエータによって駆動される前記第2の舵面が設けられる第2の翼の内部に配置され、
前記第1の翼の表面構造を形成する第1翼構造体部分と前記第2の翼の表面構造を形成する第2翼構造体部分とのうちの少なくともいずれかにおいて貫通形成された孔として設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼の外部の空気を前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部に供給可能な吸気口と、
前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記吸気口が設けられた翼構造体部分において貫通形成された孔として設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部の空気を外部に排出可能な排気口と、
前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記吸気口が設けられた翼構造体部分に設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられ、前記吸気口を開閉可能な吸気口開閉部と、
前記第1翼構造体部分及び前記第2翼構造体部分のうちの少なくともいずれかであって前記排気口が設けられた翼構造体部分に設けられ、前記第1の翼及び前記第2の翼のうちの少なくともいずれかの内部を外部に対して開放する位置と閉鎖する位置との間で位置が切り替えられ、前記排気口を開閉可能な排気口開閉部と、
前記吸気口開閉部を開閉駆動する吸気側駆動機構と、
前記排気口開閉部を開閉駆動する排気側駆動機構と、
を備え、
前記吸気側駆動機構及び前記排気側駆動機構は、前記コントローラからの指令信号に基づいて作動し、
前記コントローラは、前記第1バックアップ用油圧ポンプ及び前記第2バックアップ用油圧ポンプの両方を起動させるときに、前記吸気側駆動機構及び前記排気側駆動機構を作動させて前記吸気口及び前記排気口を開放させることを特徴とする、航空機アクチュエータの油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−13122(P2012−13122A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148545(P2010−148545)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】