説明

航空機位置測定システム、受信局、航空機位置測定方法およびプログラム

【課題】複数の受信局同士の高精度の時刻同期を容易に行うこと。
【解決手段】時刻同期処理部23は、GPS衛星9から到来する信号に基づき自己の受信局11−1の時刻を他の受信局11−2〜11−5の時刻に同期させる際に、GPS衛星9から到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た受信局11−1におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を基準点に一致させるようにクロック源33の信号波形の位相を調整する航空機位置測定システム1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機位置測定システム、受信局、航空機位置測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空港面内にいる航空機を監視するマルチラテレーションシステムが開示されている。マルチラテレーションシステムでは、複数の受信局が1つの航空機から送信される信号を受信する。各受信局は、その信号を1つのセンタ局へ転送する。各受信局は、受信した信号をセンタ局に転送する際に、その信号の受信時刻も併せてセンタ局に転送する。そして、センタ局は、複数の受信局からの信号およびその受信時刻を参照し、その受信時間差によって航空機の位置を特定する。
【0003】
このように、マルチラテレーションシステムにおいては、複数の受信局同士の時刻同期が重要である。このとき、特許文献1のマルチラテレーションシステムのように、受信局同士が同じ空港内のような近距離にある場合、光回線などを受信局同士に敷設することによって、受信局同士の時刻同期を行うことができる。
【0004】
また、上述したようなマルチラテレーションシステムを応用し、航空機の高度を含む位置を監視するシステムが提案されている。すなわち、特許文献1のマルチラテレーションシステムでは、空港内の狭い範囲に配置されていた複数の受信局を、広範囲の地域に配置し、これにより、広範囲の空域における航空機の位置を測定しようというものである。以下では、このようなシステムを航空機位置測定システムと呼ぶことにする。航空機位置測定システムでは、受信局相互間の距離が50km〜70kmにも及ぶ。
【0005】
航空機位置測定システムは、上空を飛行する航空機からの信号を地上の受信局で受信する。このため、山間部やビルなどが立ち並び、地上からのレーダ電波が遮られるような場所においても航空機からの信号を受信できる限り、その位置の測定が可能であるという利点がある。
【0006】
なお、非特許文献1の記載によると、航空機位置測定システムでの航空機高度測定誤差を50feetとする必要があると規定されている。この要求から、他の誤差要因を除くと、航空機位置測定システムでの受信局間の時刻同期を、相対的に10ナノ(nano)秒以下とする必要がある。
【0007】
このような時刻同期に関連する技術として、特許文献2には、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波をGPS受信部が受信することにより生成するGPS同期信号とレーダ装置の内部クロックとを同期させる技術が開示されている。特許文献2では、これにより複数のレーダ装置における時刻同期を行うとしている。
【0008】
また、特許文献3には、GPS受信機を用いて基地局における基準クロックを生成し、これを多数の基地局に分配する技術が開示されている。これによれば、GPS同期信号である1PPS(Pulse Per Second)信号を10/N(Nは基地局数)で分割し、その分割した所定のタイミングで基準クロックを生成する技術が提案されている。この技術を用いて10/N秒の分解能でGPS同期信号である1PPS信号による同期を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−333427号公報
【特許文献2】特開2005−195450号公報
【特許文献3】特表2005−520447号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ICAO(InternationalCivil Aviation Organization)Doc 9574 Manual on Implementaion of a 300m(1000ft)Vertical Separation Minimum Between FL290 and FL410 Inclusive
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
航空機位置測定システムは、上述したように、広範囲に複数の受信局を配置する。したがって、航空機位置測定システムでは、空港内のように狭い範囲で受信局同士の時刻同期に使用した光回線などをそのまま使用することが困難である。
【0012】
また、受信局同士をマイクロウェーブ波を用いた通信回線によって接続することも考えられる。しかしながら、上述したように航空機位置測定システムにおける受信局の設置場所は、山間部やビルの建ち並ぶ地域など、見通しのきかない場所が多く、マイクロウェーブ波による通信回線の設置は困難な場合が多い。
【0013】
また、特許文献2に記載されているようなGPS受信部が生成するGPS同期信号は、1PPS信号、すなわち1秒周期の信号である。これに対し、航空機位置測定システムにおける受信局のクロック源の周波数は、たとえば10MHzである。さらに、航空機位置測定システムでは、クロック源の10MHzの周波数を分周し、たとえば500MHzのクロックを発生させて用いる。したがって、特許文献2の技術は、非特許文献1に記載しているように10ナノ秒以下というきわめて高い精度の時刻同期を必要とする航空機位置測定システムには適用できない。
【0014】
また、特許文献3の技術では、基地局数Nは高々4〜5個を想定しており、1/4秒〜1/5秒程度の分解能では、航空機位置測定システムに要求される時刻同期の高い精度を到底満たすことはできない。
【0015】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、複数の受信局同士の高精度の時刻同期を容易に行うことができる航空機位置測定システム、受信局、航空機位置測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の観点は、航空機位置測定システムとしての観点である。すなわち、本発明の航空機位置測定システムは、位置情報が確定した複数の受信局と、1つのセンタ局とを備え、複数の受信局は、1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信する航空機信号受信手段と、航空機信号受信手段により受信した信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与してセンタ局に転送する手段と、自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる時刻同期手段と、を備え、センタ局は、複数の受信局の位置情報と複数の受信局で信号を受信した際の受信時間差情報とに基づき、航空機の位置および高度を測定する手段を備える、航空機位置測定システムにおいて、時刻同期手段は、GPSから到来する信号に基づき自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる際に、GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を基準点に一致させるようにクロック源の信号波形の位相を調整するものである。
【0017】
本発明の第二の観点は、受信局としての観点である。すなわち、本発明の受信局は、センタ局が、複数の受信局の位置情報と複数の受信局で1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信した際の受信時間差情報とに基づき、航空機の位置および高度を測定する、航空機位置測定システムに備えられ、1つの航空機から送信される信号を受信する航空機信号受信手段と、航空機信号受信手段により受信した信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与してセンタ局に転送する手段と、自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる時刻同期手段と、を備える受信局において、時刻同期手段は、GPSから到来する信号に基づき自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる際に、GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を基準点に一致させるようにクロック源の信号波形の位相を調整するものである。
【0018】
本発明の第三の観点は、航空機位置測定方法としての観点である。すなわち、本発明の航空機位置測定方法は、位置情報が確定した複数の受信局が、1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信するステップと、受信するステップの処理により受信した信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与してセンタ局に転送するステップと、自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる時刻同期ステップと、を有し、センタ局が、複数の受信局の位置情報と複数の受信局で信号を受信した際の受信時間差情報とに基づき、航空機の位置および高度を測定するステップを有する、航空機位置測定方法において、時刻同期ステップの処理として、GPSから到来する信号に基づき自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる際に、GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を基準点に一致させるようにクロック源の信号波形の位相を調整するステップを有するものである。
【0019】
また、本発明の受信局を他の構成の受信局としての観点から観ると、センタ局が、複数の受信局の位置情報と複数の受信局で1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信した際の受信時間差情報とに基づき、航空機の位置および高度を測定する、航空機位置測定システムに備えられ、1つの航空機から送信される信号を受信する航空機信号受信制御機能と、航空機信号受信制御機能により受信した信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与してセンタ局に転送する転送制御機能と、自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる時刻同期制御機能と、を備える制御部を備える受信局において、制御部は、GPSから到来する信号に基づき自己の受信局の時刻を他の受信局の時刻に同期させる際に、GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を基準点に一致させるようにクロック源の信号波形の位相を調整するものである。
【0020】
また、本発明の第四の観点は、プログラムとしての観点である。すなわち、本発明のプログラムは、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の受信局における制御部の機能を実現するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の受信局同士の高精度の時刻同期を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る航空機位置測定システムの全体構成図である。
【図2】図1の受信局およびセンタ局の要部ブロック構成図である。
【図3】図1のGPS信号受信部から出力されるGPS同期信号とクロック源から出力される10MHz信号との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る航空機位置測定システムにおける最大誤差範囲を示す図である。
【図5】図1の時刻同期処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係る航空機位置測定システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の第一の実施の形態に係る航空機位置測定システム1の全体構成図について)
本発明の第一の実施の形態に係る航空機位置測定システム1の全体構成を図1、図2を参照して説明する。航空機位置測定システム1は、図1に示すように、複数の受信局11−1〜11−5と、1つのセンタ局12とを有して構成されている。なお、受信局11−1〜11−5の構成は、全て同一である。よって、以下の説明では、主に受信局11−1について説明し、他の受信局11−2〜11−5についての説明は簡略化または省略するが、受信局11−1についての説明は、そのまま他の受信局11−2〜11−5にも適用できる。
【0024】
図2は、受信局11−1、センタ局12の要部ブロック構成図である。受信局11−1は、航空機8からの信号を受信するアンテナ21、複数のGPS衛星9からの信号を受信するアンテナ22、受信部23、信号処理部24、および信号転送処理部25を有して構成されている。
【0025】
受信部23は、GPS信号受信部31、時刻同期処理部32、およびクロック源33を有して構成されている。GPS信号受信部31は、複数のGPS衛星9からの信号を受信して1PPS信号を出力する。時刻同期処理部32は、クロック源33のクロックの信号波形をGPS時刻に同期させる処理を行う。なお、以下の説明では、クロック源33のクロックを10MHz信号と呼ぶ。その原理の詳細については、後述するが、時刻同期処理部32は、GPS信号受信部31から供給されたGPS時刻に同期した1PPS信号からGPS時刻の変化のタイミングを検出するとともに、そのタイミングに対応するGPS時刻を抽出する。
【0026】
そしてGPS時刻の変化タイミングの所定の位置を時刻同期の基準点とした上で、10MHz信号の信号波形の所定の部分に着目し、この所定の部分が当該基準点と一致するように10MHz信号の信号波形の位相を調整する。このようにして10MHz信号をGPS時刻に同期させる。時刻同期処理部32は、1PPS信号から抽出したGPS時刻を、GPS時刻の変化タイミングに合わせて信号処理部24に供給する。
【0027】
信号処理部24は、航空機信号受信部41、タイムスタンプ付与部42、およびPLL部43を有して構成されている。航空機信号受信部41は、航空機8からのSSR(Secondary Surveillance Radar)モードA/C/S応答、もしくはスキッタ信号を受信解読して処理データを生成する。PLL部43は、10MHz信号を分周して500MHzのクロックを生成する。また、タイムスタンプ付与部42は、PLL部43が生成した500MHzのクロックを用い、2ナノ秒(nsec)単位で、受信局11−1が航空機8から上述の信号を受信した時刻のタイムスタンプをこの信号に付与する。
【0028】
すなわち、タイムスタンプ付与部42は、10MHzが500MHzに分周されたクロックを用いてタイムスタンプの付与を行う。これによれば、タイムスタンプ付与部42は、GPS時刻に同期するように位相調整された10MHz信号を分周して得られた500MHzのクロックを用いて時刻付与を行うことができる。すなわち、10MHzを500MHzに分周するようにしたので、2ナノ秒単位で、時刻付与を行うことができる。また、信号転送処理部25は、タイムスタンプが付与された信号をセンタ局12へ転送する。
【0029】
センタ局12は、航空機位置測定部51を有して構成されている。航空機位置測定部51は、受信局11−1〜11−5の位置情報と受信局11−1〜11−5で航空機8からの信号を受信した際の受信時間差とに基づき、航空機8の高度を含む位置を測定する。
【0030】
ここで受信局11の受信部23の時刻同期処理部32における同期方法について、その原理を、図3を参照して説明する。図3は、1PPS信号と10MHz信号の信号波形との関係を示す図である。信号波形F1は、GPS信号受信部31から供給される1PPS信号の信号波形を示す。1PPS信号の立ち下がり状態の開始点がGPS時刻を示すようになっている。信号波形F2は、クロック源33から供給される10MHz信号の信号波形を示す。信号波形F2に沿って付されている矢印は、10MHz信号の信号波形の立ち上がり状態、または、立ち下がり状態の方向を示している。
【0031】
1PPS信号の立ち下がり状態の開始点に、GPS時刻が対応付けられていることから、時刻同期処理部32は、1PPS信号の立ち下がり状態の開始点を、例えば1PPS信号のレベルの変化を監視することで検出する。
【0032】
時刻同期処理部32は、1PPS信号の立ち下がり状態の後(すなわち、GPS時刻が示されたときから)、最初に、10MHz信号の信号波形が立ち上がり状態の方向からゼロクロス点を通過したタイミングが1PPS信号の立ち下がり状態の開始点と一致するように、10MHz信号の信号波形の位相を遅らせる。
【0033】
このようにして、各受信局11−1〜11−5の時刻同期処理部32において、時刻同期処理が行われる。
【0034】
すなわち、このように、各受信局11−1〜11−5において、10MHz信号の信号波形の所定のゼロクロス点(すなわち、立ち上がり状態の曲線のゼロクロス点)をGPS時刻の基準点と一致させるようにしたので、各受信局11−1〜11−5において、10MHz信号をGPS時刻に同期させることができる。
【0035】
また、各受信局11−1〜11−5において、同じ規則に従って10MHz信号の信号波形をGPS時刻に対して位相調整するようにしたので、各受信局11−1〜11−5の時刻の同期を取ることができる。
【0036】
なお、現在のルールでは、1PPS信号の立ち下がり状態の開始点とGPS時刻とが対応付けられていることから、1PPS信号の立ち下がり状態の開始点を基準点とすることが好都合である。しかしながら、将来、GPS時刻が1PPS信号の他の波形部分に対応付けられるような場合には、当該他の波形部分を基準点としてもよい。また、GPS時刻が示されてから、最初の、10MHz信号の信号波形の立ち上がり状態の曲線が通過するゼロクロス点と1PPS信号の基準点とが一致するように位相調整したが、最初の、10MHz信号の信号波形の立ち下がり状態の曲線が通過するゼロクロス点と1PPS信号の基準点とが一致するように位相調整するようにしてもよい。すなわち、各受信局11−1〜11−5が共通の条件に従えば、10MHz信号の信号波形のいずれの部分が1PPS信号の基準点と一致するように位相調整されてもかまわない。
【0037】
ここで時刻同期処理部32における同期処理による誤差範囲を、図4を参照して説明する。図4の上段に示すように、ある受信局において、1PPS信号が立ち下がったときに、10MHz信号が立ち上がり状態のゼロクロス点になったとすると、10MHz信号の位相を調整する必要はない。
【0038】
一方、図4の下段に示すように、ある受信局において、1PPS信号の立ち下がる直前に、10MHz信号が立ち上がり状態のゼロクロス点になったとすると、そのゼロクロス点の次のゼロクロス点が1PPS信号の立ち下がり状態の開始点に一致するように10MHz信号の位相を遅らせる必要がある。
【0039】
すなわち図4の上段と下段に示す場合が、各受信局における時刻の最大誤差となる。このように、時刻同期処理部17における最大誤差範囲は、1周期未満に収まる。このため、高い精度の時刻同期を行うことができる。
【0040】
以上の処理をフローチャートで説明すると図5に示すようになる。
START:時刻同期処理部32は、受信局11−1の電源あるいは時刻同期処理の開始スイッチ(不図示)がON状態になると処理を開始してステップS1の処理へ移行する。
【0041】
ステップS1:時刻同期処理部32は、GPS信号受信部31から入力される1PPS信号を監視して1PPS信号の立ち下がり状態の開始点を判断する。時刻同期処理部32は、1PPS信号の立ち下がり状態の開始点が見付けられないときには(ステップS1でNo)、ステップS1の処理を繰り返す。一方、時刻同期処理部32は、1PPS信号の立ち下がり状態の開始点を見付けると(ステップS1でYes)、ステップS2の処理へ移行する。
【0042】
ステップS2:時刻同期処理部32は、10MHz信号を監視することにより10MHz信号が立ち上がり状態か否か判断する。時刻同期処理部32は、10MHz信号が立ち上がり状態でなければ(ステップS2でNo)、ステップS2の処理を繰り返す。一方、時刻同期処理部32は、10MHz信号が立ち上がり状態であることを見付けると(ステップS2でYes)、ステップS3の処理へ移行する。
【0043】
ステップS3:時刻同期処理部32は、10MHz信号を監視することにより10MHz信号がゼロクロス点に有るか否か判断する。時刻同期処理部32は、10MHz信号がゼロクロス点になければ(ステップS3でNo)、ステップS3の処理を繰り返す。一方、時刻同期処理部32は、10MHz信号がゼロクロス点になると(ステップS3でYes)、ステップS4の処理へ移行する。
【0044】
ステップS4:時刻同期処理部32は、時刻同期(すなわち、当該ゼロクロス点と1PPS信号の基準点とを一致させる)を実施して処理を終了する(END)。
【0045】
(本発明の第二の実施の形態の航空機位置測定システム1Aについて)
本発明の第二の実施の形態に係る航空機位置測定システム1Aについて図6を参照して説明する。図6は、航空機位置測定システム1Aの全体構成図である。航空機位置測定システム1Aは、航空機位置測定システム1とは一部が異なる。以下では、第一の実施の形態と同一または同種の部材は同一または同一系の符号を用いて説明し、その説明を省略または簡略化し、かつ異なる部材について主に説明する。なお、以下の説明では、受信局11A−1について説明するが、他の受信局11A−2〜11A−5(不図示)についても同様である。
【0046】
航空機位置測定システム1Aの受信局11A−1は、航空機位置測定システム1の受信局11−1の構成に加え、補正信号受信部60を有する。補正信号受信部60は、請求項の「補正信号受信手段」に相当する。補正信号受信部60は、MSAS(MTSAT Satellite-based Augmentation System:運輸多目的衛星用衛星航法補強システム)やWAAS(Wide Area Augmentation System:広域補強システム)等のSBAS(Satellite Based Augmentation System:静止衛星型衛星航法補強システム)61によるGPS信号の補正信号を受信する。
【0047】
補正信号受信部60がSBAS61からの補正信号を受信すると、この補正信号をGPS信号受信部31Aに伝達する。GPS信号受信部31Aは、請求項の「信号補正手段」に相当する。これによりGPS信号受信部31Aでは、1PPS信号をGPS時刻に高い精度で同期させることができる。これにより時刻同期処理部32が行う時刻同期についてもGPS時刻に対して高い追従精度で行うことができる。これにより、時刻同期処理部32による時刻同期精度をリアルタイムで高めることができる。また、これにより、センタ局12の航空機位置測定部51における航空機8の位置測定精度についてもリアルタイムで高めることができる。
【0048】
(プログラムの実施の形態)
また、受信局11−1、11A−1の各部を制御する機能は、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置(CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)など)によって実現されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、受信局11−1、11A−1の各部を制御する機能が実現される。また、その他の機能についてもソフトウェアにより実現可能な機能については汎用の情報処理装置とプログラムとによって実現することができる。
【0049】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、受信局11−1、11A−1の出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、受信局11−1、11A−1の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、受信局2、2Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。受信局11−1、11A−1の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0050】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0051】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえば、受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5におけるGPS信号受信部31、31Aでの受信データ(GPSエフェメリスデータ、コード情報、搬送波情報など)をセンタ局12に集める。そして、その受信データを利用して受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5から見える共通ビュー衛星(コモンビュー方式)を利用し、センタ局12にて、受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−1の間の時刻差を求める。これにより、センタ局12は、各受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5のタイムスタンプ付与部42で付与された時刻(タイムスタンプ)に差分を加えて補正する。センタ局12の航空機位置測定部51は、補正された時刻を用いて航空機8の位置算出を行ってもよい。これによれば、航空機位置測定部51における位置算出精度を高めることができる。
【0052】
また、数週間後の処理になるが、GPSの精度暦を入手し、受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5の間の時刻差をより正確に求めることにより、航空機位置測定部51における位置算出精度を高めてもよい。このときに、各受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5において、同じ規則に従って10MHz信号の信号波形の所定のゼロクロス点に1PPS信号の基準点を一致させるようにしたのでこの処理が可能になる。
【0053】
すなわち、各受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5において、同じ規則に従って10MHz信号の信号波形の所定のゼロクロス点と1PPS信号の基準点とが一致するように位相調整しているのであれば、後日、GPSの精度暦を入手し、各受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5の間の時刻差をより正確に求めようとしたときに、各受信局11−1〜11−5、11A−1〜11A−5における正確な時刻同期タイミングの検証を行うことが可能になる。この正確な時刻同期タイミングの検証に基づけば正確な時刻同期の補正が可能になる。
【符号の説明】
【0054】
1、1A…航空機位置測定システム、11−1〜11−5、11A−1〜11A−5…受信局、12…センタ局、8…航空機、9…GPS衛星、21、22…アンテナ、41…航空機信号受信部(航空機信号受信手段)、42…タイムスタンプ付与部(転送する手段の一部)、25…信号転送処理部(転送する手段の一部)、43…PLL部、31…GPS信号受信部(時刻同期手段の一部、同期する手段の一部)、31A…GPS信号受信部(信号補正手段)、32…時刻同期処理部(時刻同期手段、同期する手段の一部)、33…クロック源、51…航空機位置測定部(測定する手段)、60…補正信号受信部(補正信号受信手段)、61…SBAS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報が確定した複数の受信局と、1つのセンタ局とを備え、
複数の上記受信局は、
1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信する航空機信号受信手段と、
上記航空機信号受信手段により受信した上記信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与して上記センタ局に転送する手段と、
自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる時刻同期手段と、
を備え、
上記センタ局は、複数の上記受信局の位置情報と複数の上記受信局で上記信号を受信した際の受信時間差情報とに基づき、上記航空機の位置および高度を測定する手段を備える、
航空機位置測定システムにおいて、
上記時刻同期手段は、GPS(Global Positioning System)から到来する信号に基づき自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる際に、上記GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た上記受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を上記基準点に一致させるように上記クロック源の信号波形の位相を調整する、
ことを特徴とする航空機位置測定システム。
【請求項2】
請求項1記載の航空機位置測定システムにおいて、
前記基準点は、前記GPS同期信号の波形における立ち下がり状態の開始点から立ち下がり状態の終了点、もしくは立ち上がり状態の開始点から立ち上がり状態の終了点までの間に設定され、
前記所定の条件を満たすゼロクロス点は、前記基準点となる時刻から最初の前記クロック源の信号波形の立ち上がり状態の曲線、もしくは立ち下がり状態の曲線が通過するゼロクロス点である、
ことを特徴とする航空機位置測定システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の航空機位置測定システムにおいて、
前記転送する手段は、前記GPS時刻が割付けられたクロックをさらに分周したクロックを用いて前記タイムスタンプを付与する、
ことを特徴とする航空機位置測定システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の航空機位置測定システムにおいて、
前記GPS同期信号を補正するシステムからの信号を受信する補正信号受信手段と、
上記補正信号受信手段により受信した信号によって前記GPS同期信号を補正する信号補正手段と、
を備える、
ことを特徴とする航空機位置測定システム。
【請求項5】
センタ局が、複数の受信局の位置情報と複数の上記受信局で1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信した際の受信時間差情報とに基づき、上記航空機の位置および高度を測定する、航空機位置測定システムに備えられ、
1つの航空機から送信される信号を受信する航空機信号受信手段と、
上記航空機信号受信手段により受信した上記信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与して上記センタ局に転送する手段と、
自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる時刻同期手段と、
を備える受信局において、
上記時刻同期手段は、GPSから到来する信号に基づき自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる際に、上記GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た上記受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を上記基準点に一致させるように上記クロック源の信号波形の位相を調整する、
ことを特徴とする受信局。
【請求項6】
請求項5記載の受信局において、
前記基準点は、前記GPS同期信号の波形における立ち下がり状態の開始点から立ち下がり状態の終了点、もしくは立ち上がり状態の開始点から立ち上がり状態の終了点までの間に設定され、
前記所定の条件を満たすゼロクロス点は、前記基準点となる時刻から最初の前記クロック源の信号波形の立ち上がり状態の曲線、もしくは立ち下がり状態の曲線が通過するゼロクロス点である、
ことを特徴とする受信局。
【請求項7】
請求項5または6記載の受信局において、
前記転送する手段は、前記GPS時刻が割付けられたクロックをさらに分周したクロックを用いて前記タイムスタンプを付与する、
ことを特徴とする受信局。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項記載の受信局において、
前記GPS同期信号を補正するシステムからの信号を受信する補正信号受信手段と、
上記補正信号受信手段により受信した信号によって前記GPS同期信号を補正する信号補正手段と、
を備える、
ことを特徴とする受信局。
【請求項9】
位置情報が確定した複数の受信局が、
1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信するステップと、
上記受信するステップの処理により受信した上記信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与してセンタ局に転送するステップと、
自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる時刻同期ステップと、
を有し、
上記センタ局が、複数の上記受信局の位置情報と複数の上記受信局で上記信号を受信した際の受信時間差情報とに基づき、上記航空機の位置および高度を測定するステップを有する、
航空機位置測定方法において、
上記時刻同期ステップの処理として、GPSから到来する信号に基づき自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる際に、上記GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た上記受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を上記基準点に一致させるように上記クロック源の信号波形の位相を調整する、
ことを特徴とする航空機位置測定方法。
【請求項10】
請求項9記載の航空機位置測定方法において、
前記基準点は、前記GPS同期信号の波形における立ち下がり状態の開始点から立ち下がり状態の終了点、もしくは立ち上がり状態の開始点から立ち上がり状態の終了点までの間に設定され、
前記所定の条件を満たすゼロクロス点は、前記基準点となる時刻から最初の前記クロック源の信号波形の立ち上がり状態の曲線、もしくは立ち下がり状態の曲線が通過するゼロクロス点である、
ことを特徴とする航空機位置測定方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の航空機位置測定方法において、
前記転送するステップの処理として、前記GPS時刻が割付けられたクロックをさらに分周したクロックを用いて前記タイムスタンプを付与するステップを有する、
ことを特徴とする航空機位置測定方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項記載の航空機位置測定方法において、
前記GPS同期信号を補正するシステムからの信号を受信するステップと、
この受信するステップの処理により受信した信号によって前記GPS同期信号を補正するステップと、
を有する、
ことを特徴とする航空機位置測定方法。
【請求項13】
センタ局が、複数の受信局の位置情報と複数の上記受信局で1つの航空機から送信される信号をそれぞれ受信した際の受信時間差情報とに基づき、上記航空機の位置および高度を測定する、航空機位置測定システムに備えられ、
1つの航空機から送信される信号を受信する航空機信号受信制御機能と、
上記航空機信号受信制御機能により受信した上記信号にその受信時刻のタイムスタンプを付与して上記センタ局に転送する転送制御機能と、
自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる時刻同期制御機能と、
を備える制御部を備える受信局において、
上記制御部は、GPSから到来する信号に基づき自己の上記受信局の時刻を他の上記受信局の時刻に同期させる際に、上記GPSから到来する信号に基づき生成されるGPS同期信号の波形の規則的な変化に基づき設定される基準点から見た上記受信局におけるクロック源の信号波形の所定の条件を満たすゼロクロス点を上記基準点に一致させるように上記クロック源の信号波形の位相を調整する、
ことを特徴とする受信局。
【請求項14】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項13記載の受信局における前記制御部の機能を実現する、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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