説明

航空機制御装置及び航空機制御システム

【課題】航空機制御装置において、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性を確保し、演算処理部の台数を低減し、構成を簡素化する。
【解決手段】複数の制御チャンネル13のそれぞれは、電源14と、操作信号を受信するインターフェース16と、操作信号に基づいてアクチュエータの動作指令信号を演算して生成する演算処理部17と、最終的にアクチュエータの動作を制御する制御信号を決定して出力する信号決定部18と、を有する。複数の制御チャンネル13にそれぞれ設けられた演算処理部17は、互いに設計が異なる。信号決定部18は、その信号決定部18が設けられた制御チャンネル13の演算処理部17で生成された第1動作指令信号と、他の制御チャンネル13の演算処理部17で生成された第2動作指令信号とを受信し、第1動作指令信号と第2動作指令信号とを比較することで、制御信号を決定して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置、及び、その航空機制御装置と複数のアクチュエータとを備える航空機制御システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置として、特許文献1においては、上記機器としての舵面を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置が開示されている。特許文献1に開示された航空機制御装置は、複数のアクチュエータを制御するとともに電力を供給するための電源をそれぞれ有する複数の制御チャンネルを備えて構成されている。このように、制御チャンネルが複数設けられていることで、いずれかの制御チャンネルにおいて故障が発生した際であっても、舵面を駆動できて舵面の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されることが意図されている。
【0003】
そして、上記の航空機制御装置における各制御チャンネルには、演算処理装置としてのプライマリフライトコンピュータが備えられている。このプライマリフライトコンピュータは、航空機を操縦する操縦者によるホイール等の操作に基づいて生成された操作信号を他の電子装置であるアクチュエータコントロールエレクトロニクスを介して受信する。そして、プライマリフライトコンピュータは、上記の操作信号に基づいて、舵面を駆動するアクチュエータの動作を指令して制御するための動作指令信号を演算して生成する。
【0004】
前述のように、上記の航空機制御装置は、制御チャンネルが複数設けられていることで、舵面の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されることが意図されている。しかしながら、プライマリフライトコンピュータの故障が発生した場合、そのプライマリフライトコンピュータが設けられた制御チャンネルの作動も不能となる。
【0005】
そして、複数の制御チャンネルにおいて、設計が同一のプライマリフライトコンピュータが設けられていた場合は、ジェネリック故障、即ち、同一のソフトウェア或いはハードウェアに共通して発生し得る故障が発生すると、全ての制御チャンネルの作動が不能となってしまう。このため、特許文献1では開示されていないが、航空機制御装置においては、各制御チャンネルにおける上記のプライマリフライトコンピュータには、設計の異なる複数の演算処理部が備えられていることが必要となる。
【0006】
上記に対し、「IAENG International Journal of Computer Science, 35:4, IJCS_35_4_07」に掲載された「Challenges in Building Fault-Tolerant Flight Control System for a Civil Aircraft」のタイトルの非特許文献1における図3においては、設計の異なる複数の演算処理部を備えたプライマリフライトコントロールの装置構成が開示されている。
【0007】
非特許文献1においては、複数のアクチュエータを制御する複数の制御チャンネルのそれぞれに設けられるプライマリフライトコントロールの構成が開示されている。そして、このプライマリフライトコントロールは、操縦者の操作に基づいて生成された操作信号を受信し、アクチュエータの動作を指令して制御するための動作指令信号を生成する演算処理部として、設計の異なる複数の演算処理部を備えて構成されている。尚、非特許文献1では、具体的には、プライマリフライトコントロールにおいて、製造メーカが異なることで設計の異なる3つの演算処理部(「MICRO-PROCESSOR AMD 29050」、「MICRO-PROCESSOR MOTOROLA 68040」、「MICRO-PROCESSOR INTEL 80486」)が備えられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5493497号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.Sghairi、外4名、“Challenges in Building Fault-Tolerant Flight Control System for a Civil Aircraft”、[online]、IAENG International Journal of Computer Science, 35:4, IJCS_35_4_07、インターネット(URL: http://www.iaeng.org/IJCS/issues_v35/issue_4/IJCS_35_4_07.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、複数のアクチュエータを制御する複数の制御チャンネルのそれぞれにおいて、互いに設計の異なる複数の演算処理部が備えられていることで、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されることになる。
【0011】
しかしながら、従来の航空機制御装置においては、制御チャンネルのそれぞれにて、設計の異なる複数の演算処理部が備えられるため、演算処理部の台数の増大を招いてしまうことになる。即ち、航空機制御装置全体では、制御チャンネルの数に各制御チャンネルに設けられる演算処理部の数を乗じた台数の演算処理部が必要となる。そして、演算処理部の台数の増大に伴い、構成の複雑化及びコストの増大も招いてしまうことになる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されるとともに、演算処理部の台数を低減でき、構成を簡素化することができる、航空機制御装置を提供することを目的とする。また、その航空機制御装置と複数のアクチュエータとを備える航空機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係る航空機制御装置における第1の特徴は、航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置において、複数の前記アクチュエータを制御するとともに電力を供給するための電源をそれぞれ有する複数の制御チャンネルを備え、全部の複数の前記制御チャンネルのそれぞれ、或いは、一部の複数の前記制御チャンネルのそれぞれは、前記航空機を操縦する操縦者によって行われる前記航空機の操作が入力される操作入力装置によって前記操縦者の操作に基づいて生成された操作信号を受信するインターフェースと、前記インターフェースを介して受信した前記操作信号に基づいて、前記機器を駆動する前記アクチュエータの動作を指令して制御するための動作指令信号を演算して生成する演算処理部と、前記演算処理部で生成された前記動作指令信号と他の信号とに基づいて、最終的に前記アクチュエータの動作を制御するための信号である制御信号を決定して出力する信号決定部と、を有し、複数の前記制御チャンネルにそれぞれ設けられた前記演算処理部は、互いに設計が異なっており、複数の前記制御チャンネルにそれぞれ設けられた前記信号決定部は、当該信号決定部が設けられた前記制御チャンネルに設けられた前記演算処理部で生成された前記動作指令信号である第1動作指令信号と、当該信号決定部が設けられた前記制御チャンネルとは異なる他の前記制御チャンネルに設けられた前記演算処理部で生成された前記動作指令信号である第2動作指令信号と、を受信し、前記第1動作指令信号と、前記他の信号としての前記第2動作指令信号と、を比較することで、前記制御信号を決定して出力することである。
【0014】
この構成によると、全部又は一部の複数の制御チャンネルには、互いに設計が異なる演算処理部がそれぞれ1つ設けられる。そして、各制御チャンネルにおいて、信号決定部は、その信号決定部が設けられた制御チャンネルの演算処理部からの第1動作指令信号と他の制御チャンネルの演算処理部からの第2動作指令信号とを比較して制御信号を決定して出力する。このため、いずれかの制御チャンネルにおいて演算処理部が故障した場合であっても、演算処理部が故障した制御チャンネルに設けられた信号決定部は、他の制御チャンネルの演算処理部からの動作指令信号に基づいて制御信号を決定して出力することができる。そして、同一のソフトウェア或いはハードウェアに共通して発生し得るジェネリック故障の発生も防止される。これにより、演算処理部が故障した制御チャンネルの作動が不能となってしまうことが防止される。よって、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されることになる。そして、上記の構成によると、各制御チャンネルには、互いに設計が異なる演算処理部がそれぞれ1つ設けられる構成のため、航空機制御装置全体としての演算処理部の台数を大幅に低減することができる。また、これにより、航空機制御装置の構成を簡素化でき、更に、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
従って、上記の構成によると、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されるとともに、演算処理部の台数を低減でき、構成を簡素化することができる、航空機制御装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る航空機制御装置における第2の特徴は、第1の特徴を備える航空機制御装置において、前記演算処理部が設けられた前記制御チャンネルは、3つ以上備えられていることである。
【0017】
この構成によると、演算処理部が設けられた制御チャンネルが3つ以上備えられるため、航空機制御装置においては、互いに設計の異なる演算処理部が少なくとも3つ設けられることになる。このため、いずれかの演算処理部が故障した場合であっても、信号決定部は、残る2つの演算処理部で生成された動作指令信号を比較して制御信号を決定して出力することができる。このため、航空機制御装置の信頼性を更に向上させることができる。
【0018】
本発明に係る航空機制御システムにおける特徴は、第1又は第2の特徴を備える航空機制御装置と、当該航空機制御装置によって制御されて航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータと、を備えていることである。
【0019】
この構成によると、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されるとともに、演算処理部の台数を低減でき、構成を簡素化することができる、航空機制御システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、航空機に設置された機器の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されるとともに、演算処理部の台数を低減でき、構成を簡素化することができる、航空機制御装置を提供することができる。また、その航空機制御装置と複数のアクチュエータとを備える航空機制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る航空機制御装置及び航空機制御システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示す航空機制御装置における第1制御チャンネルを示すブロック図である。
【図3】図1に示す航空機制御装置における第2制御チャンネルを示すブロック図である。
【図4】図1に示す航空機制御装置における第3制御チャンネルを示すブロック図である。
【図5】図1に示す航空機制御装置における第4制御チャンネルを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態は、航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置、及び、その航空機制御装置と複数のアクチュエータとを備える航空機制御システムとして、広く適用することができるものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係る航空機制御装置1及び航空機制御システム10を示すブロック図である。航空機制御装置1は、航空機100に設置された動翼であるフライトスポイラー(102、103)を駆動する複数のアクチュエータ(11、12)を制御する装置として構成されている。尚、フライトスポイラー(102、103)は、航空機に設置された本実施形態の機器を構成している。そして、航空機制御システム10は、航空機制御装置1と、航空機制御装置1によって制御されることでフライトスポイラー(102、103)を駆動する複数のアクチュエータ(11、12)と、を備えたシステムとして構成されている。航空機制御装置1及び航空機制御システム10は、航空機100に搭載され、フライトスポイラー(102、103)の動作を電気信号によって制御するFBW(Fly by Wire)による飛行制御装置及び飛行制御システムとして構成されている。
【0024】
尚、図1では、航空機100の一部である主翼(101a、101b)のみが模式的に図示されている。フライトスポイラー(102、103)は、主翼(101a、101b)に設置される動翼(操縦翼面)として設けられている。本実施形態では、航空機制御装置1及び航空機制御システム10が適用される機器として、動翼としてのフライトスポイラーを例にとって説明しているが、この通りでなくてもよく、他の機器に対して適用されてもよい。例えば、グランドスポイラー、或いは、舵面を構成する動翼としての補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、昇降舵(エレベータ)、等に対して、本実施形態が適用されてもよい。また、他の機器として、航空機におけるランディングギア(降着装置)等の脚(航空機の機体を地上で支持する機構)に対して本実施形態が適用されてもよい。
【0025】
フライトスポイラー(102、103)を駆動するアクチュエータ(11、12)は、例えば、油圧シリンダを有する機構として設けられ、航空機制御装置1からの制御信号に基づいて、圧油の給排が行われ、動作が制御される。尚、航空機制御装置1が、電動アクチュエータとして設けられたアクチュエータを制御する形態が、実施されてもよい。
【0026】
本実施形態では、アクチュエータ11(11a、11b、11c、11d)は、4つ設けられ、一方の主翼101aに設けられた4つのフライトスポイラー102(102a、102b、102c、102d)をそれぞれ駆動するように構成されている。アクチュエータ11aがフライトスポイラー102aを駆動し、アクチュエータ11bがフライトスポイラー102bを駆動し、アクチュエータ11cがフライトスポイラー102cを駆動し、アクチュエータ11dがフライトスポイラー102dを駆動するように設けられている。
【0027】
また、アクチュエータ12(12a、12b、12c、12d)は、4つ設けられ、他方の主翼101bに設けられた4つのフライトスポイラー103(103a、103b、103c、103d)をそれぞれ駆動するように構成されている。アクチュエータ12aがフライトスポイラー103aを駆動し、アクチュエータ12bがフライトスポイラー103bを駆動し、アクチュエータ12cがフライトスポイラー103cを駆動し、アクチュエータ12dがフライトスポイラー103dを駆動するように設けられている。
【0028】
アクチュエータ11aとアクチュエータ12aとが一対で対応して制御され、これにより、フライトスポイラー102aとフライトスポイラー103aとが一対で対応して同時タイミングで駆動される。また、アクチュエータ11bとアクチュエータ12bとが一対で対応して制御され、これにより、フライトスポイラー102bとフライトスポイラー103bとが一対で対応して同時タイミングで駆動される。また、アクチュエータ11cとアクチュエータ12cとが一対で対応して制御され、これにより、フライトスポイラー102cとフライトスポイラー103cとが一対で対応して同時タイミングで駆動される。また、アクチュエータ11dとアクチュエータ12dとが一対で対応して制御され、これにより、フライトスポイラー102dとフライトスポイラー103dとが一対で対応して同時タイミングで駆動される。
【0029】
次に、航空機制御装置1について詳しく説明する。航空機制御装置1は、複数のアクチュエータ(11、12)を制御する複数の制御チャンネル13(13a、13b、13c、13d)を備えて構成されている。各制御チャンネル13は、例えば、筐体内に各種電子機器等が組み込まれて構成された装置として設けられている。また、各制御チャンネル13は、筐体内の各種電子機器及び対応するアクチュエータ(11、12)に対して制御電力を供給するための電源をそれぞれ備えている。そして、本実施形態では、制御チャンネル13は、4つ設けられ、第1制御チャンネル13a、第2制御チャンネル13b、第3制御チャンネル13c、第4制御チャンネル13d、が設けられている。
【0030】
第1制御チャンネル13aは、フライトスポイラー(102a、103a)を駆動するアクチュエータ(11a、12a)を制御する制御チャンネルとして設けられている。第2制御チャンネル13bは、フライトスポイラー(102b、103b)を駆動するアクチュエータ(11b、12b)を制御する制御チャンネルとして設けられている。第3制御チャンネル13cは、フライトスポイラー(102c、103c)を駆動するアクチュエータ(11c、12c)を制御する制御チャンネルとして設けられている。第4制御チャンネル13dは、フライトスポイラー(102d、103d)を駆動するアクチュエータ(11d、12d)を制御する制御チャンネルとして設けられている。尚、本実施形態では、各制御チャンネルが複数(本実施形態では、2つ)のアクチュエータを制御する形態が例示されているが、この通りでなくてもよい。各制御チャンネルが、1つのアクチュエータ又は3つ以上の複数のアクチュエータを制御する形態が実施されてもよい。
【0031】
各制御チャンネル13(13a、13b、13c、13d)は、航空機100を操縦する操縦者(図示せず)によって行われる航空機100の操作が入力される操作入力装置(104、105)によって操縦者の操作に基づいて生成された操作信号を受信するように構成されている。そして、各制御チャンネル13(13a、13b、13c、13d)は、上記の操作信号に基づいて、対応するアクチュエータ(11、12)を制御する。
【0032】
尚、本実施形態では、操作入力装置104は、ホイール106と、位置センサ(107a、107b、107c)と、を備えて構成されている。ホイール106は、航空機100の飛行中或いは着陸時において、操縦者がフライトスポイラー(102、103)の動作を操作するために用いられる。各位置センサ(107a、107b、107c)は、ホイール106の操縦者による操作量をそれぞれ独立して検出可能なセンサとして設けられている。ホイール106を操縦者が操作することで、ホイール106の操作量に対応する操作信号が、各位置センサ(107a、107b、107c)からそれぞれ出力される。このように、操作入力装置104の位置センサ(107a、107b、107c)は、そのいずれかで故障が発生した場合であってもホイール106の操作量の検出を安全に継続可能な冗長性が確保されている。
【0033】
また、操作入力装置105は、スピードブレーキレバー108と、位置センサ(109a、109b、109c)と、を備えて構成されている。スピードブレーキレバー108は、航空機100の着陸時において、操縦者がフライトスポイラー(102、103)の動作を操作するために用いられる。各位置センサ(109a、109b、109c)は、スピードブレーキレバー108の操縦者による操作量をそれぞれ独立して検出可能なセンサとして設けられている。スピードブレーキレバー108を操縦者が操作することで、スピードブレーキレバー108の操作量に対応する操作信号が、各位置センサ(109a、109b、109c)からそれぞれ出力される。このように、操作入力装置105の位置センサ(109a、109b、109c)は、そのいずれかで故障が発生した場合であってもスピードブレーキレバー108の操作量の検出を安全に継続可能な冗長性が確保されている。
【0034】
ここで、制御チャンネル13の構成について、更に詳しく説明する。図2は、第1制御チャンネル13aを示すブロック図である。図3は、第2制御チャンネル13bを示すブロック図である。図4は、第3制御チャンネル13cを示すブロック図である。図5は、第4制御チャンネル13dを示すブロック図である。
【0035】
図1乃至図5に示すように、本実施形態では、第1乃至第3制御チャンネル(13a、13b、13c)は、電源14、インターフェース(15、16)、演算処理部17、信号決定部18を備えて構成されている。一方、第4制御チャンネル13dは、電源14、信号決定部18を備えて構成されている。即ち、本実施形態では、インターフェース(15、16)及び演算処理部17は、全部の複数(4つ)の制御チャンネル(13a、13b、13c、13d)ではなく、一部の複数(3つ)の制御チャンネル(13a、13b、13c)のそれぞれに備えられている。また、本実施形態では、演算処理部17が設けられた制御チャンネル13が、3つ設けられている。
【0036】
尚、電源14として、電源(14a、14b、14c、14d)が設けられている。また、インターフェース15として、インターフェース(15a、15b、15c)が設けられている。また、インターフェース16として、インターフェース(16a、16b、16c)が設けられている。また、演算処理部17として、第1演算処理部17a、第2演算処理部17b、第3演算処理部17cが設けられている。また、信号決定部18として、信号決定部(18a、18b、18c、18d)が設けられている。
【0037】
第1制御チャンネル13aは、電源14a、インターフェース15a、インターフェース16a、第1演算処理部17a、信号決定部18aを備えて構成されている。
【0038】
電源14aは、アクチュエータ(11a、12a)、第1演算処理部17a、等に対して制御電力を供給するための電源として設けられている。また、電源14aに対しては、電力供給経路における上流側の主電源として航空機100の機体中央側に設置された異なる2系統の電源からそれぞれ電力が供給される。図2(図3乃至図5も同様)では、電源14a(14)に対して、一方の系統の主電源から電圧V1の電力が供給され、他方の系統の主電源から電圧V2の電力の供給が可能な形態が例示されている。
【0039】
そして、電源14aは、主電源から供給される2系統の電力のうちの一方の電力を第1演算処理部17a等に供給する。例えば、電源14aは、電圧V1と電圧V2とを比較し、より高い電圧の電力を選択し、アクチュエータ(11a、12a)等に供給する。また、電源14aは、供給電力切替スイッチを備え、電圧V1の電力と電圧V2の電力とを所定タイミングで切り替えてアクチュエータ(11a、12a)等に供給するように構成されていてもよい。
【0040】
インターフェース15aは、操縦者によるホイール106の操作に基づいて位置センサ107aで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース15aに入力された操作信号は、操作信号S11として、第1演算処理部17aに対して入力されるとともに、第2制御チャンネル13bの第2演算処理部17b及び第3制御チャンネル13cの第3演算処理部17cに対しても入力される。尚、操作信号S11は、図示が省略されたデータバスを介して第2演算処理部17b及び第3演算処理部17cに対して送信される。
【0041】
インターフェース16aは、操縦者によるスピードブレーキレバー108の操作に基づいて位置センサ109aで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース16aに入力された操作信号は、操作信号S21として、第1演算処理部17aに対して入力されるとともに、第2演算処理部17b及び第3演算処理部17cに対しても入力される。尚、操作信号S21は、図示が省略されたデータバスを介して第2演算処理部17b及び第3演算処理部17cに対して送信される。
【0042】
第1演算処理部17aは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、或いはプロセッサ、等の演算処理装置として構成されている。そして、第1演算処理部17aは、インターフェース(15a、16a)を介して受信した操作信号(S11、S21)に基づいて、フライトスポイラー(102、103)を駆動するアクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S31を演算して生成する。動作指令信号S31は、例えば、アクチュエータ(11、12)の動作位置を指令する信号として構成される。
【0043】
また、第1演算処理部17aは、後述するインターフェース(15b、16b)を介して受信した操作信号(S12、S22)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S31を演算する処理も行うように構成されている。更に、第1演算処理部17aは、後述するインターフェース(15c、16c)を介して受信した操作信号(S13、S23)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S31を演算する処理も行うように構成されている。
【0044】
そして、第1演算処理部17aは、操作信号(S11、S21)に基づく動作指令信号S31と、操作信号(S12、S22)に基づく動作指令信号S31と、操作信号(S13、S23)に基づく動作指令信号S31とを比較する。これにより、第1演算処理部17aは、操作信号(S11、S21)に基づく動作指令信号S31の異常を監視して検知できるように構成されている。
【0045】
信号決定部18aは、例えば、オペアンプ等のアナログ回路として構成されている。そして、信号決定部18aは、第1演算処理部17aで生成された動作指令信号S31と他の信号とに基づいて、最終的にアクチュエータ(11a、12a)の動作を制御するための制御信号を決定して出力するボーティング(Voting)を行うボータ(Voter)として設けられている。
【0046】
具体的には、信号決定部18aは、信号決定部18aが設けられた第1制御チャンネル13aに設けられた第1演算処理部17aで生成された動作指令信号S31である第1動作指令信号S31と、第2動作指令信号(S32、S33)とを受信する。第2動作指令信号(S32、S33)は、信号決定部18aが設けられた第1制御チャンネル13aとは異なる後述の他の制御チャンネル(13b、13c)に設けられた演算処理部(17b、17c)で生成された動作指令信号(S32、S33)として構成される。そして、信号決定部18aは、第1動作指令信号S31と、前述した他の信号としての第2動作指令信号(S32、S33)とを比較することで、最終的にアクチュエータ(11a、12a)の動作を制御するための制御信号を決定して出力する。尚、第2動作指令信号(S32、S33)は、第2演算処理部17b及び第3演算処理部17cから、図示が省略されたデータバスを介して送信され、第1演算処理部17aにて受信される。
【0047】
信号決定部18aは、種々の処理により、第1動作指令信号S31と第2動作指令信号(S32、S33)とを比較して上記の制御信号を決定することができる。例えば、信号決定部18aは、第1動作指令信号S31、第2動作指令信号S32、及び第2動作指令信号S33のうち、信号出力としての大きさが中間の値の信号を上記の制御信号として決定することができる。又は、信号決定部18aは、第1動作指令信号S31、第2動作指令信号S32、及び第2動作指令信号S33の信号出力の大きさの平均値を演算してその平均値の信号を上記の制御信号として決定することができる。或いは、信号決定部18aは、第1動作指令信号S31、第2動作指令信号S32、及び第2動作指令信号S33のうちの2つの信号を比較してそのうちのいずれかの信号出力の値が異常である可能性があると判断したときに、残る1つの信号を上記の制御信号として決定することができる。
【0048】
上記のように、最終的にアクチュエータ(11a、12a)の動作を制御するための制御信号が、信号決定部18aにて決定されると、その決定された制御信号が第1制御チャンネル13aから出力される。そして、この制御信号に基づいて、アクチュエータ(11a、12a)の動作が制御されることになる。
【0049】
第2制御チャンネル13bは、電源14b、インターフェース15b、インターフェース16b、第2演算処理部17b、信号決定部18bを備えて構成されている。
【0050】
電源14bは、アクチュエータ(11b、12b)、第2演算処理部17b、等に対して制御電力を供給するための電源として設けられている。尚、電源14bは、第1制御チャンネル13aの電源14aと同様に構成されるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
インターフェース15bは、操縦者によるホイール106の操作に基づいて位置センサ107bで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース15bに入力された操作信号は、操作信号S12として、第2演算処理部17bに対して入力されるとともに、第1演算処理部17a及び第3演算処理部17cに対しても入力される。尚、操作信号S12は、図示が省略されたデータバスを介して第1演算処理部17a及び第3演算処理部17cに対して送信される。
【0052】
インターフェース16bは、操縦者によるスピードブレーキレバー108の操作に基づいて位置センサ109bで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース16bに入力された操作信号は、操作信号S22として、第2演算処理部17bに対して入力されるとともに、第1演算処理部17a及び第3演算処理部17cに対しても入力される。尚、操作信号S22は、図示が省略されたデータバスを介して第1演算処理部17a及び第3演算処理部17cに対して送信される。
【0053】
第2演算処理部17bは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、或いはプロセッサ、等の演算処理装置として構成されている。そして、第2演算処理部17bは、インターフェース(15b、16b)を介して受信した操作信号(S12、S22)に基づいて、フライトスポイラー(102、103)を駆動するアクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S32を演算して生成する。動作指令信号S32は、動作指令信号S31と同様に、アクチュエータ(11、12)の動作位置を指令する信号として構成される。
【0054】
また、第2演算処理部17bは、インターフェース(15a、16a)を介して受信した操作信号(S11、S21)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S32を演算する処理も行うように構成されている。更に、第2演算処理部17bは、インターフェース(15c、16c)を介して受信した操作信号(S13、S23)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S32を演算する処理も行うように構成されている。
【0055】
そして、第2演算処理部17bは、操作信号(S12、S22)に基づく動作指令信号S32と、操作信号(S11、S21)に基づく動作指令信号S32と、操作信号(S13、S23)に基づく動作指令信号S32とを比較する。これにより、第2演算処理部17bは、操作信号(S12、S22)に基づく動作指令信号S32の異常を監視して検知できるように構成されている。
【0056】
信号決定部18bは、例えば、オペアンプ等のアナログ回路として構成されている。そして、信号決定部18bは、第2演算処理部17bで生成された動作指令信号S32と他の信号とに基づいて、最終的にアクチュエータ(11b、12b)の動作を制御するための制御信号を決定して出力するボーティング(Voting)を行うボータ(Voter)として設けられている。
【0057】
具体的には、信号決定部18bは、信号決定部18bが設けられた第2制御チャンネル13bに設けられた第2演算処理部17bで生成された動作指令信号S32である第1動作指令信号S32と、第2動作指令信号(S31、S33)とを受信する。第2動作指令信号(S31、S33)は、信号決定部18bが設けられた第2制御チャンネル13bとは異なる他の制御チャンネル(13a、13c)に設けられた演算処理部(17a、17c)で生成された動作指令信号(S31、S33)として構成される。そして、信号決定部18bは、第1動作指令信号S32と、前述した他の信号としての第2動作指令信号(S31、S33)とを比較することで、最終的にアクチュエータ(11b、12b)の動作を制御するための制御信号を決定して出力する。尚、第2動作指令信号(S31、S33)は、第1演算処理部17a及び第3演算処理部17cから、図示が省略されたデータバスを介して送信され、第2演算処理部17bにて受信される。
【0058】
信号決定部18bは、第1制御チャンネル13aに設けられた信号決定部18aと同様の処理により、第1動作指令信号S32と第2動作指令信号(S31、S33)とを比較して上記の制御信号を決定することができる。
【0059】
上記のように、最終的にアクチュエータ(11b、12b)の動作を制御するための制御信号が、信号決定部18bにて決定されると、その決定された制御信号が第2制御チャンネル13bから出力される。そして、この制御信号に基づいて、アクチュエータ(11b、12b)の動作が制御されることになる。
【0060】
第3制御チャンネル13cは、電源14c、インターフェース15c、インターフェース16c、第3演算処理部17c、信号決定部18cを備えて構成されている。
【0061】
電源14cは、アクチュエータ(11c、12c)、第3演算処理部17c、等に対して制御電力を供給するための電源として設けられている。尚、電源14cは、第1制御チャンネル13aの電源14aと同様に構成されるため、詳細な説明を省略する。
【0062】
インターフェース15cは、操縦者によるホイール106の操作に基づいて位置センサ107cで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース15cに入力された操作信号は、操作信号S13として、第3演算処理部17cに対して入力されるとともに、第1演算処理部17a及び第2演算処理部17bに対しても入力される。尚、操作信号S13は、図示が省略されたデータバスを介して第1演算処理部17a及び第2演算処理部17bに対して送信される。
【0063】
インターフェース16cは、操縦者によるスピードブレーキレバー108の操作に基づいて位置センサ109cで生成された操作信号を受信するインターフェースとして設けられている。インターフェース16cに入力された操作信号は、操作信号S23として、第3演算処理部17cに対して入力されるとともに、第1演算処理部17a及び第2演算処理部17bに対しても入力される。尚、操作信号S23は、図示が省略されたデータバスを介して第1演算処理部17a及び第2演算処理部17bに対して送信される。
【0064】
第3演算処理部17cは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、或いはプロセッサ、等の演算処理装置として構成されている。そして、第3演算処理部17cは、インターフェース(15c、16c)を介して受信した操作信号(S13、S23)に基づいて、フライトスポイラー(102、103)を駆動するアクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S33を演算して生成する。動作指令信号S33は、動作指令信号S31と同様に、アクチュエータ(11、12)の動作位置を指令する信号として構成される。
【0065】
また、第3演算処理部17cは、インターフェース(15a、16a)を介して受信した操作信号(S11、S21)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S33を演算する処理も行うように構成されている。更に、第3演算処理部17cは、インターフェース(15b、16b)を介して受信した操作信号(S12、S22)に基づいて、アクチュエータ(11、12)の動作を指令して制御するための動作指令信号S33を演算する処理も行うように構成されている。
【0066】
そして、第3演算処理部17cは、操作信号(S13、S23)に基づく動作指令信号S33と、操作信号(S11、S21)に基づく動作指令信号S33と、操作信号(S12、S22)に基づく動作指令信号S33とを比較する。これにより、第3演算処理部17cは、操作信号(S13、S23)に基づく動作指令信号S33の異常を監視して検知できるように構成されている。
【0067】
信号決定部18cは、例えば、オペアンプ等のアナログ回路として構成されている。そして、信号決定部18cは、第3演算処理部17cで生成された動作指令信号S33と他の信号とに基づいて、最終的にアクチュエータ(11c、12c)の動作を制御するための制御信号を決定して出力するボーティング(Voting)を行うボータ(Voter)として設けられている。
【0068】
具体的には、信号決定部18cは、信号決定部18cが設けられた第3制御チャンネル13cに設けられた第3演算処理部17cで生成された動作指令信号S33である第1動作指令信号S33と、第2動作指令信号(S31、S32)とを受信する。第2動作指令信号(S31、S32)は、信号決定部18cが設けられた第3制御チャンネル13cとは異なる他の制御チャンネル(13a、13b)に設けられた演算処理部(17a、17b)で生成された動作指令信号(S31、S32)として構成される。そして、信号決定部18cは、第1動作指令信号S33と、前述した他の信号としての第2動作指令信号(S31、S32)とを比較することで、最終的にアクチュエータ(11c、12c)の動作を制御するための制御信号を決定して出力する。尚、第2動作指令信号(S31、S32)は、第1演算処理部17a及び第2演算処理部17bから、図示が省略されたデータバスを介して送信され、第3演算処理部17cにて受信される。
【0069】
信号決定部18cは、第1制御チャンネル13aに設けられた信号決定部18aと同様の処理により、第1動作指令信号S33と第2動作指令信号(S31、S32)とを比較して上記の制御信号を決定することができる。
【0070】
上記のように、最終的にアクチュエータ(11c、12c)の動作を制御するための制御信号が、信号決定部18cにて決定されると、その決定された制御信号が第3制御チャンネル13cから出力される。そして、この制御信号に基づいて、アクチュエータ(11c、12c)の動作が制御されることになる。
【0071】
尚、上述したように、航空機制御装置1においては、複数の制御チャンネル13(13a、13b、13c)にそれぞれ設けられた信号決定部18は、第1動作指令信号と第2動作指令信号とを受信する。第1動作指令信号は、その信号決定部18が設けられた制御チャンネル13に設けられた演算処理部17で生成された動作指令信号として構成される。第2動作指令信号は、その信号決定部18が設けられた制御チャンネル13とは異なる他の制御チャンネル13に設けられた演算処理部17で生成された動作指令信号として構成される。そして、信号決定部18は、第1動作指令信号と第2動作指令信号とを比較することで、制御信号を決定して出力する。
【0072】
また、航空機制御装置1においては、複数の制御チャンネル(13a、13b、13c)にそれぞれ設けられた演算処理部17(17a、17b、17c)は、互いに設計が異なっている。各制御チャンネル(13a、13b、13c)の演算処理部17の設計が互いに異なる形態としては、例えば、第1演算処理部17a、第2演算処理部17b、及び第3演算処理部17cの製造メーカーが、互いに異なっている形態が挙げられる。或いは、第1演算処理部17a、第2演算処理部17b、及び第3演算処理部17cが、異なる時期に開発されており、開発された世代が異なる形態が挙げられる。また、第1演算処理部17a、第2演算処理部17b、及び第3演算処理部17cの組み合わせにおいて、いずれかがFPGAとして構成され、他のいずれかがプロセッサとして構成されていてもよい。
【0073】
ここで、第1乃至第3演算処理部(17a、17b、17c)のそれぞれの製造メーカ、シリーズ名、型番の具体例を例示する。具体例としては、例えば、第1乃至第3演算処理部(17a、17b、17c)のうちの1つが、製造メーカが「Actel」でシリーズ名が「ProASIC3」で型番が「A3PE1500」であり、他の1つが、製造メーカが「Altera」でシリーズ名が「CycloneIII」で型番が「EP3C25」であり、残る1つが、製造メーカが「Xilinx」でシリーズ名が「Virtex-5」で型番が「XQ5VLX155T」である例を挙げることができる。
【0074】
最後に、第4制御チャンネル13dについて説明する。第4制御チャンネル13dは、電源14d、信号決定部18dを備えて構成されている。電源14dは、アクチュエータ(11d、12d)、等に対して制御電力を供給するための電源として設けられている。尚、電源14dは、第1制御チャンネル13aの電源14aと同様に構成されるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
信号決定部18dは、例えば、オペアンプ等のアナログ回路として構成されている。そして、信号決定部18dは、第1演算処理部17aで生成された動作指令信号S31と、第2演算処理部17bで生成された動作指令信号S32と、第3演算処理部17cで生成された動作指令信号S33とに基づいて、最終的にアクチュエータ(11d、12d)の動作を制御するための制御信号を決定して出力するボーティング(Voting)を行うボータ(Voter)として設けられている。
【0076】
尚、動作指令信号S31、動作指令信号S32、及び動作指令信号S33は、第1演算処理部17a、第2演算処理部17b、及び第3演算処理部17cから、図示が省略されたデータバスを介して送信され、信号決定部18dにて受信される。また、信号決定部18dは、第1制御チャンネル13aに設けられた信号決定部18aと同様の処理により、動作指令信号S31、動作指令信号S32、及び動作指令信号S33を比較して上記の制御信号を決定することができる。
【0077】
上記のように、最終的にアクチュエータ(11d、12d)の動作を制御するための制御信号が、信号決定部18dにて決定されると、その決定された制御信号が第4制御チャンネル13dから出力される。そして、この制御信号に基づいて、アクチュエータ(11d、12d)の動作が制御されることになる。
【0078】
以上説明したように、航空機制御装置1によると、複数の制御チャンネル13(13a、13b、13c)には、互いに設計が異なる演算処理部17(17a、17b、17c)がそれぞれ1つ設けられる。そして、各制御チャンネル(13a、13b、13c)において、信号決定部18(18a、18b、18c)は、その信号決定部18が設けられた制御チャンネル13の演算処理部17からの第1動作指令信号と他の制御チャンネル13の演算処理部17からの第2動作指令信号とを比較して制御信号を決定して出力する。
【0079】
上記により、いずれかの制御チャンネル13において演算処理部17が故障した場合であっても、演算処理部17が故障した制御チャンネル13に設けられた信号決定部18は、他の制御チャンネル13の演算処理部17からの動作指令信号に基づいて制御信号を決定して出力することができる。そして、同一のソフトウェア或いはハードウェアに共通して発生し得るジェネリック故障の発生も防止される。これにより、演算処理部18が故障した制御チャンネル13の作動が不能となってしまうことが防止される。よって、フライトスポイラー(102、103)の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されることになる。そして、航空機制御装置1によると、各制御チャンネル13には、互いに設計が異なる演算処理部17がそれぞれ1つ設けられる構成のため、航空機制御装置1全体としての演算処理部17の台数を大幅に低減することができる。また、これにより、航空機制御装置1の構成を簡素化でき、更に、製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
従って、本実施形態によると、フライトスポイラー(102、103)の動作を安全に継続可能な冗長性が確保されるとともに、演算処理部17の台数を低減でき、構成を簡素化することができる、航空機制御装置1及び航空機制御システム10を提供することができる。
【0081】
また、本実施形態によると、演算処理部17が設けられた制御チャンネル13(13a、13b、13c)が3つ備えられるため、航空機制御装置1においては、互いに設計の異なる演算処理部17(17a、17b、17c)が3つ設けられることになる。このため、いずれかの演算処理部17が故障した場合であっても、信号決定部18は、残る2つの演算処理部17で生成された動作指令信号を比較して制御信号を決定して出力することができる。このため、航空機制御装置1の信頼性を更に向上させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0083】
(1)上述の実施形態では、航空機制御装置及び航空機制御システムが適用される機器として、動翼としてのフライトスポイラーを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の機器に対して適用されてもよい。例えば、グランドスポイラー、或いは、舵面を構成する動翼としてのエルロン、ラダー、エレベータ、等に対して、本発明が適用されてもよい。また、航空機の動翼の動作を制御する飛行制御装置又は飛行制御システムとして構成された場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、飛行制御装置及び飛行制御システム以外の装置又はシステムに本発明が適用されてもよい。例えば、航空機におけるランディングギア等の脚の動作を制御する装置又はシステムに本発明が適用されてもよい。
【0084】
(2)上述の実施形態では、一部の複数の制御チャンネルのそれぞれが、インターフェース、演算処理部、及び信号決定部を備えて構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。全部の複数の制御チャンネルのそれぞれが、インターフェース、演算処理部、及び信号決定部を備えて構成された形態が実施されてもよい。
【0085】
(3)上述の実施形態では、各信号決定部が、全ての演算処理部からの動作指令信号を受信して比較し、制御信号を決定する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。信号決定部が、一部の複数の演算処理部からの動作指令信号を受信して比較し、制御信号を決定する形態が実施されてもよい。この例として、制御チャンネルが4つ設けられ、4つの制御チャンネルに互いに設計の異なる演算処理部がそれぞれ設けられた形態を例にとって説明する。この場合、各制御チャンネルにおける信号決定部が、その信号決定部が設けられた制御チャンネルの演算処理部からの動作指令信号と、他の2つの制御チャンネルの演算処理部からの動作指令信号とを受信し、それらを比較し、制御信号を決定して出力してもよい。この形態によると、各演算処理部における演算処理負荷を削減することができる。これにより、各演算処理部の演算処理能力に関する要求仕様を緩和することができ、コストの低減を図ることができる。
【0086】
(4)上述の実施形態では、制御チャンネルが4つ設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。制御チャンネルが、2つ又は3つ、或いは5つ以上設けられた形態が実施されてもよい。
【0087】
(5)上述の実施形態では、各演算処理部が、受信した複数の操作信号に基づいて、複数の動作指令信号を演算し、これらの複数の動作指令信号を比較するように構成された形態が例示されている。これにより、上述の実施形態では、各演算処理部が、動作指令信号の異常を監視して検知できるように構成されている。しかし、各演算処理部において、動作指令信号の異常を監視するための上記の構成は、必ずしも設けられていなくてもよい。そして、各演算処理部において、受信した操作信号の異常を監視する構成が設けられていてもよい。この場合、例えば、各演算処理部は、受信した複数の操作信号を比較することで、操作信号の異常を監視する。そして、各演算処理部は、複数の操作信号の比較結果に基づいて、動作指令信号を演算するための操作信号を決定するように構成される。更に、各演算処理部は、決定した上記の操作信号に基づいて、動作指令信号を演算するように構成される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置、及び、その航空機制御装置と複数のアクチュエータとを備える航空機制御システムとして、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 航空機制御装置
11、11a、11b、11c、11d アクチュエータ
12、12a、12b、12c、12d アクチュエータ
13、13a、13b、13c、13d 制御チャンネル
14、14a、14b、14c、14d 電源
15、15a、15b、15c インターフェース
16、16a、16b、16c インターフェース
17、17a、17b、17c 演算処理部
18、18a、18b、18c、18d 信号決定部
100 航空機
104、105 操作入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータを制御する航空機制御装置であって、
複数の前記アクチュエータを制御するとともに電力を供給するための電源をそれぞれ有する複数の制御チャンネルを備え、
全部の複数の前記制御チャンネルのそれぞれ、或いは、一部の複数の前記制御チャンネルのそれぞれは、
前記航空機を操縦する操縦者によって行われる前記航空機の操作が入力される操作入力装置によって前記操縦者の操作に基づいて生成された操作信号を受信するインターフェースと、
前記インターフェースを介して受信した前記操作信号に基づいて、前記機器を駆動する前記アクチュエータの動作を指令して制御するための動作指令信号を演算して生成する演算処理部と、
前記演算処理部で生成された前記動作指令信号と他の信号とに基づいて、最終的に前記アクチュエータの動作を制御するための信号である制御信号を決定して出力する信号決定部と、
を有し、
複数の前記制御チャンネルにそれぞれ設けられた前記演算処理部は、互いに設計が異なっており、
複数の前記制御チャンネルにそれぞれ設けられた前記信号決定部は、当該信号決定部が設けられた前記制御チャンネルに設けられた前記演算処理部で生成された前記動作指令信号である第1動作指令信号と、当該信号決定部が設けられた前記制御チャンネルとは異なる他の前記制御チャンネルに設けられた前記演算処理部で生成された前記動作指令信号である第2動作指令信号と、を受信し、前記第1動作指令信号と、前記他の信号としての前記第2動作指令信号と、を比較することで、前記制御信号を決定して出力することを特徴とする、航空機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機制御装置であって、
前記演算処理部が設けられた前記制御チャンネルは、3つ以上備えられていることを特徴とする、航空機制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の航空機制御装置と、当該航空機制御装置によって制御されて航空機に設置された機器を駆動する複数のアクチュエータと、を備えていることを特徴とする、航空機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103714(P2013−103714A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246198(P2012−246198)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(500558894)ビーエーイー・システムズ・コントロールズ・インコーポレーテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS Controls, Inc.
【Fターム(参考)】