説明

航空機用気象レーダの多機能フロントエンド

【課題】本発明の課題は、1ユニット化した受信部と、送信部を1モジュール内に収納して多機能フロントエンド部を構成することにより、高周波経路の最短化が図れ、小型化、軽量化及び電力効率向上を可能することにある。
【解決手段】本発明は、高周波の送信信号もしくは受信信号が入出力される入出力端を備えるサーキュレータ32及びサーキュレータ32の出力端に直列接続されるスイッチ41、リミッタ33、低雑音増幅器34、周波数変換用ミキサ35,38を1ユニット化した受信部42と、サーキュレータ32の入力端に直列接続される固体化増幅方式の高周波電力増幅器36及びバンドパスフィルタ37よりなる送信部43とを具備し、受信部42と送信部43を1モジュール内に収納することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載される気象レーダの多機能フロントエンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は従来の航空機用気象レーダのフロントエンドを示す構成説明図である。図2において、11はハーモニックフィルタ、12はサーキュレータ、13はリミッタ、14は低雑音増幅器、15はミキサ、16は高周波電力増幅器、17はバンドパスフィルタ、18はミキサ、19は分配器、20は発振器である。
【0003】
ハーモニックフィルタ11及びサーキュレータ12はフロントエンド部21を構成し、リミッタ13、低雑音増幅器14、及びミキサ15は受信部22を構成し、高周波電力増幅器16、バンドパスフィルタ17、及びミキサ18は送信部23を構成し、分配器19及び発振器20は発振部24を構成する。フロントエンド部21と受信部22は同軸ケーブル25で接続され、フロントエンド部21と送信部23は同軸ケーブル26で接続され、フロントエンド部21には導波管27を介して空中線(図示せず)が接続される。
【0004】
図2に示すように、低周波の送信信号はミキサ18に入力され、ミキサ18には発振器20からの発振周波数が分配器19を介して入力される。ミキサ18は低周波の送信信号と発振器20からの発振周波数を混合して高周波の送信信号を出力し、ミキサ18から出力された送信信号はバンドパスフィルタ17を通って高周波電力増幅器16で増幅される。高周波電力増幅器16で増幅された送信信号はサーキュレータ12及びハーモニックフィルタ11を経由して空中線に高周波信号として出力され、空中線から電波が放射される。
【0005】
電波が目標物に当たり戻ってきた反射波は空中線で受信され高周波信号を抽出する。空中線から出力された受信信号はハーモニックフィルタ11及びサーキュレータ12を経由してリミッタ13に入力されて制限された後、低雑音増幅器14で増幅されてミキサ15に入力される。ミキサ15には発振器20からの発振周波数が分配器19を介して入力される。ミキサ15は高周波の受信信号と発振器20からの発振周波数を混合して低周波の受信信号を指示器(図示せず)に出力して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平8−501383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の航空機用気象レーダのフロントエンド21は、空中線と送信部23及び受信部22との高周波信号の授受を行う機能として、サーキュレータ12及びハーモニックフィルタ11などで構築されることが多く、フロントエンド21、受信部22、送信部23、発振部24が別の構造体により構築されて構造的に分離されている。このため、送信又は受信の信号通過損失が大きくなり、また、損失をカバーするために送信部23の高周波電力増幅器16が高出力を要することとなり、レーダシステム構築において構造体そのものが大型化となる方向にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の航空機用気象レーダの多機能フロントエンドは、高周波の送信信号もしくは受信信号が入出力される入出力端を備えるサーキュレータ及び前記サーキュレータの出力端に直列接続されるスイッチ、リミッタ、低雑音増幅器、周波数変換用ミキサを1ユニット化した受信部と、前記サーキュレータの入力端に直列接続される固体化増幅方式の高周波電力増幅器及びバンドパスフィルタよりなる送信部とを具備し、前記受信部と前記送信部を1モジュール内に収納することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る航空機用気象レーダの多機能フロントエンドは、空中線結合部に位置付けられるサーキュレータを含めて、スイッチ、リミッタ,低雑音増幅器、ミキサと共に受信部として1ユニット化し、1ユニット化した受信部と、送信部の固体化増幅方式高周波電力増幅器、バンドパスフィルタを1モジュール内に収納することにより、高周波経路の最短化が図れ、小型化、軽量化及び電力効率向上が可能となる。また、フロントエンドに外付けのハーモニックフィルタと発振部の選定により、フロントエンドの使用周波数幅を広めることができる。さらに、フロントエンド内への制御や使用電源が、複数ライン構築する手間が省け簡素化される。また、フロントエンド内の受信部は、スイッチ及び低雑音増幅器を送信中に電源オフ(OFF)することにより送受信のアイソレーション効果が期待できる。また、フロントエンド内の送信部は高周波電力増幅器が固体化増幅方式により、信頼性に優れ、故障率が低くなる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る航空機用気象レーダの多機能フロントエンドを示す構成説明図である。
【図2】従来の航空機用気象レーダのフロントエンドを示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る航空機用気象レーダの多機能フロントエンドを示す構成説明図である。図1において、31はハーモニックフィルタ、32はサーキュレータ、33はリミッタ、34は低雑音増幅器、35はミキサ、36は固体化増幅方式の高周波電力増幅器、37はバンドパスフィルタ、38はミキサ、39は分配器、40は発振器、41はスイッチである。
【0013】
図1に示すように、高周波信号が入出力される空中線(図示せず)にはハーモニックフィルタ31の一端が例えば導波管により接続され、ハーモニックフィルタ31の他端にはサーキュレータ32の入出力端が接続される。サーキュレータ32の出力端にはスイッチ41を介してリミッタ33の入力端が接続され、リミッタ33の出力端は低雑音増幅器34の入力端に接続される。低雑音増幅器34の出力端はミキサ35の一方の入力端に接続され、ミキサ35の他方の入力端には分配器39の一方の出力端が接続される。ミキサ35の出力端には低周波受信信号が加えられる指示器(図示せず)が接続される。分配器39の入力端には発振器40が接続される。
【0014】
分配器39の他方の出力端はミキサ38の一方の入力端が接続され、ミキサ38の他方の入力端には低周波送信信号を発生する送信機(図示せず)が接続される。ミキサ38の出力端にはバンドパスフィルタ37の入力端が接続され、バンドパスフィルタ37の出力端には高周波電力増幅器36の入力端が接続され、高周波電力増幅器36出力端はサーキュレータ32の入力端に接続される。
【0015】
サーキュレータ32、スイッチ41、リミッタ33、低雑音増幅器34、ミキサ35,38、及び分配器39は1ユニット化した受信部42を構成し、高周波電力増幅器36及びバンドパスフィルタ37は送信部43を構成し、受信部42及び送信部43は1モジュール内に収納されて航空機用気象レーダの多機能フロントエンド部44を構成する。多機能フロントエンド部44にはハーモニックフィルタ31及び発振器40がそれぞれ外付けされる。
【0016】
すなわち、低周波の送信信号はミキサ38に入力され、ミキサ38には発振器40からの発振周波数が分配器39を介して入力される。ミキサ38は低周波の送信信号と発振器40からの発振周波数を混合して高周波の送信信号を出力し、ミキサ38から出力された送信信号はバンドパスフィルタ37を通って高周波電力増幅器36で例えばX帯固体化増幅(雲や雨に対して反射しやすい周波数帯としてXバンドを用いる)により増幅される。高周波電力増幅器36で増幅された送信信号はサーキュレータ32及びハーモニックフィルタ31を経由して空中線に高周波信号として出力され、空中線から電波が放射される。
【0017】
電波が目標物に当たり戻ってきた反射波は空中線で受信され高周波信号を抽出する。空中線から出力された受信信号はハーモニックフィルタ31、サーキュレータ32、及びスイッチ41を経由してリミッタ33に入力されて制限された後、低雑音増幅器34で増幅されてミキサ35に入力される。ミキサ35には発振器40からの発振周波数が分配器39を介して入力される。ミキサ35は高周波の受信信号と発振器40からの発振周波数を混合して低周波の受信信号を表示器等(図示せず)に出力して表示する。
【0018】
以上のように本発明は、高周波電力増幅、受信低雑音増幅、周波数変換及び送受経路を備えた多機能フロントエンドであり、一般的にレーダの送受信部及び空中線接合部を担う機能を備える。これらは、内部パターン化を主として製品のコンパクト化、省スペース化を実現でき、送受信部の小型化だけでなく、空中線と一体化できるなど、特に、航空機搭載などの実装スペースに制約がある場合に有効的である。このように、多機能フロントエンドは、空中線結合部と送受信部が一体化、モジュール化を実現することにより、航空機搭載における設置スペースの制約や構造体の小型化において有効的であり、送受信機能を空中線部に配備する、低電力化ができるなどの機能メリットを有する。
【0019】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0020】
31…ハーモニックフィルタ、32…サーキュレータ、33…リミッタ、34…低雑音増幅器、35…ミキサ、36…固体化増幅方式の高周波電力増幅器、37…バンドパスフィルタ、38…ミキサ、39…分配器、40…発振器、41…スイッチ、42…受信部、43…送信部、44…多機能フロントエンド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波の送信信号もしくは受信信号が入出力される入出力端を備えるサーキュレータ及び前記サーキュレータの出力端に直列接続されるスイッチ、リミッタ、低雑音増幅器、周波数変換用ミキサを1ユニット化した受信部と、
前記サーキュレータの入力端に直列接続される固体化増幅方式の高周波電力増幅器及びバンドパスフィルタよりなる送信部とを具備し、
前記受信部と前記送信部を1モジュール内に収納することを特徴とする航空機用気象レーダの多機能フロントエンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−220896(P2011−220896A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91597(P2010−91597)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】