説明

航空機用灯具

【課題】 光源をリフレクタに一体化し、リフレクタをランプソケットに着脱し、メンテナンス作業を簡単かつ迅速に行う。
【解決手段】 航空機の機体に装着されるハウジング2の前面に透光カバー3を取り付け、ハウジング2の後端のバックカバー6にイグナイタ5を収める。ハウジング2の内側にリフレクタ15を収容し、リフレクタ15の背後にランプソケット21を設置する。リフレクタ15の前面に大光量の放電ランプ17を固定し、放電ランプ17の電極端子18をリフレクタ15の背面に突設する。透光カバー3を取り外した状態で、リフレクタ15をランプソケット21に着脱し、電極端子18をランプソケット21の給電端子に電気的に接離する。透光カバー3をリテイナー4でハウジング2に締め付け、リフレクタ15を透光カバー3とランプソケット21の間に挟着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体に装着されるハウジングに光源とリフレクタを収めた航空機用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の航空機用灯具として、従来、着陸灯、尾翼灯、ロゴライト、サーチライトなど、機体の外部に装備される外部灯が知られている。例えば、特許文献1には、ヘリコプタや両翼航空機の機体外部にハウジングを装着し、ハウジングの内側にバルブとリフレクタを収めたサーチライトが記載されている。
【特許文献1】特開2001−266603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、航空機用灯具は長時間にわたって点灯するため、光源やその他の部品を定期的に点検し、補修したり交換したりする必要がある。また、次の飛行予定が迫っている場合などには、メンテナンス作業を限られた時間内に実施する必要もある。しかし、従来の灯具によると、特に電気配線の切り離し、再接続に手間がかかり、メンテナンスに長時間を要するという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、その目的は、メンテナンス作業を簡単かつ迅速に行うことができる航空機用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の航空機用灯具は、航空機の機体に装着されるハウジングを備え、ハウジングの前面に透光カバーを取り付け、ハウジングの内側にリフレクタを収容し、リフレクタの前面に光源を固定し、リフレクタの背面に光源の電極端子を突設し、ハウジングの後部に給電端子を備えたランプソケットを設置し、リフレクタをランプソケットに着脱し、電極端子を給電端子に電気的に接離することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の航空機用灯具は、組立状態において電極端子を給電端子に確実に接続できるように、透光カバーをハウジングに締め付けるリテイナーを備え、リテイナーによりリフレクタを透光カバーとランプソケットの間に挟着したことを特徴とする。
【0007】
光源にはフィラメント式のバルブやLED等の半導体光源も使用可能であるが、好ましくは、外部灯の光源として長寿命で大光量の放電ランプを使用できる。本発明の航空機用灯具は、航空機周辺の所定の領域を明るく照明できるように、光源に放電ランプを使用し、放電ランプをその発光管がリフレクタの着脱方向に対して横向きとなるように配置したことを特徴とする。
【0008】
特に、高電力(例えば250W)を供給する航空機用外部灯の場合、イグナイタは例えば±18KVの高電圧パルス(始動電圧)を発生する。このため、放電ランプの始動電圧が降下しないように、イグナイタを灯具と一体に装備するのが望ましい。本発明の航空機用灯具は、放電ランプを始動させるイグナイタをハウジングに組み付け、イグナイタのソケット部にランプソケットの高圧電線を電気的に接続したことを特徴とする。
【0009】
ここで、イグナイタの設置場所は、特に限定されないが、灯具全体を小型に構成する観点から、ハウジングの後端部とするのが望ましい。本発明の航空機用灯具は、ハウジングの後端部にバックカバーを取り付け、バックカバーの内側にイグナイタを収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の航空機用灯具によれば、光源をリフレクタに一体化し、リフレクタの着脱によって光源の電極端子をランプソケットの給電端子に接離するので、電気配線の切り離し、再接続にかかる手間を省き、メンテナンス作業を簡単かつ迅速に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は航空機用灯具の外観を示す。図2は航空機用灯具を機体に設置した状態を示す。図3、図4は航空機用灯具の主要部品を分解して示す。図5は航空機用灯具の組立状態においてイグナイタから放電ランプに至る給電路を示す。
【実施例】
【0012】
図1、図2に示すように、この実施例の航空機用灯具1はカップ形のハウジング2を備えている。ハウジング2の前面には透光カバー3がリテイナー4で取り付けられている。ハウジング2の後端にはイグナイタ5を収容するバックカバー6が取り付けられ、イグナイタ5に給電用のシールド線7が接続されている。ハウジング2の外面には一対の取付部8が設けられ、取付部8に螺合するネジ9またはボルトによって、ハウジング2が航空機の機体10に装着され、シールド線7の先端のプラグ11が機体10内部の電源回路(図示略)に接続される。なお、この灯具1は着陸灯、尾翼灯、認識灯、ロゴライト等の外部灯として使用され、ハウジング2が灯具1の種類に応じて機体10の適所に装着される。ハウジング2は、機体10に容易に装着でき、かつ十分な強度を確保する観点から、アルミニウムなどの金属材料で形成されている。
【0013】
図3、図4に示すように、ハウジング2の内側は隔壁13で前後に区画され、前面側の灯室14にガラス製のリフレクタ15が収容される。リフレクタ15の前面には透光カバー3に向って開く回転放物面や自由曲面などからなる反射面16が形成されている。反射面16の略焦点位置には放電ランプ17が配置され、放電ランプ17の発光管17aの長手方向両端に電極端子18が固着されている。放電ランプ17は発光管17aがリフレクタ15の着脱方向に対して横向きとなる(図示例では、リフレクタ15の光学軸線15aに対して直角となる)ように配置され、電極端子18によってリフレクタ15に固定されている。リフレクタ15の背面には一対の着座部19が突設され、電極端子18が着座部19を貫通してリフレクタ15の背面側に突設されている。なお、ロゴライトなどの一部の航空機用灯具では、リフレクタ15を光出射方向(光学軸線15a)が斜めになるようにハウジング2に装着することもできる。
【0014】
灯室14の後部にはランプソケット21が配置され、複数のネジ22で隔壁13に固定されている。ランプソケット21はセラミックや樹脂等の絶縁材料で放電ランプ17の発光管17aと同じ方向に長いブロック状に成形されている。ランプソケット21の両端部には、給電端子23が埋設されるとともに、リレクタ15を支承する支承部24が突設され、支承部24の上面に給電端子23の差込口25が露出している。そして、灯具1のメンテナンスに際し、透光カバー3を取り外した状態で、リフレクタ15をランプソケット21に着脱し、放電ランプ17の電極端子18を給電端子23に電気的に接離するようになっている。なお、電極端子18を差込口25に容易に挿入できるように、ハウジング2とリフレクタ15の相対面に凹凸の位置決め部26A,26Bが設けられている。
【0015】
図5に示すように、灯具1の組立状態において、透光カバー3とリフレクタ15はそれぞれの周縁部を接合した状態でリテイナー4によってハウジング2に保持されている。透光カバー3の周縁部にはガスケット27が装着され、リフレクタ15とハウジング2のフランジ部28との間に別のガスケット29が介装されている。リテイナー4は透光カバー3を包囲する円環状に形成され、複数のネジ30でフランジ部28に取り付けられている。そして、リテイナー4により透光カバー3とリフレクタ15をハウジング2に締め付け、リフレクタ15を透光カバー3とランプソケット21との間に挟着し、電極端子18を給電端子23との接続状態に保持するように構成されている。
【0016】
電極端子18は絶縁用セラミック接着剤32でリフレクタ15の着座部19に固着され、接着剤32の露出部が口金33で絶縁保護されている。ランプソケット21の給電端子23は放電ランプ17の発光管17aと平行な接続部23aを備え、接続部23aの一端に電極端子18の差込口25が形成され、接続部23aの他端に高圧電線34の前端が接続されている。高圧電線34はシリコンゴムなどからなる絶縁被膜34aで被覆され、絶縁被膜34aの前端部がランプソケット21の絶縁材料中に埋設され、残りの部分が隔壁13の後側に形成された断熱および絶縁用の空気層35に突出している。そして、電極端子18、給電端子23、高圧電線34のすべてを絶縁材料で被覆し、放電ランプ17への給電路に長い沿面距離を確保し、ハウジング2やネジ9などの金属部材との間の放電リークを確実に防止し、放電ランプ17周辺の絶縁性能を向上できるようになっている。
【0017】
図3、図5に示すように、放電ランプ17を始動させるイグナイタ5はバックカバー6の内側に収容され、バックカバー6が複数のネジ37でハウジング2の後端面(イグナイター5の装着面)に取り付けられている。イグナイタ5の前面には一対の挿入孔38が形成され、挿入孔38にイグナイタソケット39の脚部40が着脱可能に挿入されている。イグナイタソケット39は樹脂やセラミックなどの絶縁材料で形成され、脚部40と反対側にソケット部41を空気層35に突出するように備えている。ソケット部41には、高圧電線34とその絶縁皮膜34aの後端部が着脱される接続口42が形成されるとともに、接続口42をイグナイタ5の出力端子43に導通させる接続導体44が埋設されている。そして、空気層35を通る部分の高圧電線34を絶縁皮膜34aで被覆し、高圧電線34とイグナイタ5との接続部に高度の絶縁を確保した状態で、イグナイタ5の電子回路(図示略)がランプソケット21の給電端子23に電気的に接続されている。
【0018】
したがって、上記構成の航空機用灯具1によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)放電ランプ17をリフレクタ15に一体化し、リフレクタ15をランプソケット21に着脱することによって、電極端子18を給電端子23に接離するので、電気配線の切り離し、再接続にかかる手間を省き、放電ランプ17の点検、交換等のメンテナンス作業を限られた時間内に簡単かつ迅速に実施できる。
(b)灯具1の組立状態では、透光カバー3の取付部品であるリテイナー4を利用して、リフレクタ15を透光カバー3とランプソケット21との間に挟着するので、別部品を使用することなく、電極端子18を給電端子23に簡単かつ確実に接続できる。
【0019】
(c)放電ランプ17を発光管17aがリフレクタ15の着脱方向に対して横向きとなるように配置したので、放電ランプ17の光をリフレクタ15の反射面16で反射させ、航空機周辺の所定の領域を明るく照明できる。
(d)イグナイタ5をハウジング2に組み付け、イグナイタ5のソケット部41にランプソケット21の高圧電線34を接続したので、始動電圧を降下させることなく大光量の放電ランプ17を確実に点灯できるうえ、イグナイタ5をランプソケット21から切り離して容易にメンテナンスできる。
(e)イグナイタ5をハウジング2の後端のバックカバー6に収容したので、カバー6でイグナイタ5を保護できるとともに、イグナイタ5をリフレクタ15の着脱方向と同じ方向に配列して、灯具1の全体を小型に構成できる。
【0020】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を任意に変更して実施することも可能である。
(1)図1に示す透光カバー3を長円形、四角形、多角形など、灯具1の種類や用途に応じて適宜に変形すること。
(2)透光カバー3に着色ガラスまたはレンズを使用すること。
(3)図3に示すイグナイタ5からイグナイタソケット39を省き、ソケット部41をイグナイタ5の前面に一体的に設けること。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す航空機用灯具の外観斜視図である。
【図2】該灯具の機体設置形態を示す側面図である。
【図3】該灯具の分解形態を示す斜視図である。
【図4】該灯具の分解形態を示す断面図である。
【図5】該灯具の組立形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 航空機用灯具
2 ハウジング
3 透光カバー
4 リテイナー
5 イグナイタ
6 バックカバー
10 機体
15 リフレクタ
17 放電ランプ
18 電極端子
21 ランプソケット
23 給電端子
34 高圧電線
41 ソケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体に装着されるハウジングを備え、ハウジングの前面に透光カバーを取り付け、ハウジングの内側にリフレクタを収容し、リフレクタの前面に光源を固定し、リフレクタの背面に光源の電極端子を突設し、ハウジングの後部に給電端子を備えたランプソケットを設置し、前記リフレクタをランプソケットに着脱し、前記電極端子を給電端子に電気的に接離することを特徴とする航空機用灯具。
【請求項2】
前記透光カバーをハウジングに締め付けるリテイナーを備え、リテイナーにより前記リフレクタを透光カバーとランプソケットの間に挟着した請求項1記載の航空機用灯具。
【請求項3】
前記光源に放電ランプを使用し、放電ランプをその発光管が前記リフレクタの着脱方向に対して横向きとなるように配置した請求項1又は2記載の航空機用灯具。
【請求項4】
前記放電ランプを始動させるイグナイタをハウジングに組み付け、イグナイタのソケット部に前記ランプソケットの高圧電線を電気的に接続した請求項1、2又は3記載の航空機用灯具。
【請求項5】
前記ハウジングの後端部にバックカバーを取り付け、バックカバーの内側に前記イグナイタを収容した請求項4記載の航空機用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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