説明

船外機

【課題】簡単な構造で動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがない。
【解決手段】エンジン5のクランク軸7の回転動力をドライブ軸11、前後進切換機構12及びプロペラ軸13を経てプロペラに伝達する動力伝達機構10を備え、プロペラ20を回転駆動することによって推進する船外機1において、クランク軸7とプロペラ軸13との間の連結部にトルク変動吸収装置60を配置し、トルク変動吸収装置60を軸受75を介して支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば小型船舶等に搭載される船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型船舶等に搭載される船外機は、エンジンのクランク軸の回転動力をドライブ軸、前後進切換機構及びプロペラ軸を経てプロペラに伝達する動力伝達機構をケーシングに備え、プロペラを回転駆動することによって推進力を発生するようになっている。
【0003】
ところで、クランク軸からプロペラにまで動力が伝達する間の各部にはガタが存在し、エンジン運転中に動力自身のトルク変動が発生することから、このトルク変動によって各部のガタで衝突が起こり、この衝突によって音が発生する。また、特に高馬力の4サイクルエンジンを搭載する大型の船外機にあっては、動力伝達機構に存在するガタによって例えばシフトイン時に発生する推進力の急変によって乗船者に不快なショックを与える等の問題があった。
【0004】
そこで、ドライブ軸の中間に衝撃を吸収するための緩衝装置を設ける提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開昭60−215495号(第1頁〜第7頁、図1〜図13)
【特許文献2】特開2000−280983号公報(第1頁〜第10頁、図1〜図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1はドライブ軸を駆動側部分と被動側部分に分割し、両者の間に緩衝装置を配置した構成であり、特許文献2はドライブ軸またはプロペラ軸を駆動側部分と被動側部分に分割し、両者の間に緩衝装置を配置した構成であり、ドライブ軸またはプロペラ軸を分割する分軸構造が複雑である。
【0006】
また、動力伝達機構の各部の連結部とは別に、特別にドライブ軸またはプロペラ軸を分割して緩衝装置を配置する構造であり、その分動力伝達機構が複雑になる。
【0007】
この発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがないようにした船外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、エンジンのクランク軸の回転動力をドライブ軸、前後進切換機構及びプロペラ軸を経てプロペラに伝達する動力伝達機構を備え、前記プロペラを回転駆動することによって推進する船外機において、
前記クランク軸と前記ドライブ軸との間の連結部にトルク変動吸収装置を配置し、
前記トルク変動吸収装置を軸受を介して支持したことを特徴とする船外機である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記トルク変動吸収装置は、前記クランク軸にスプライン嵌合するクランク軸側連結体と、前記ドライブ軸にスプライン嵌合するドライブ軸側連結体と、前記クランク軸側連結体と前記ドライブ軸側連結体との間に配置されるトルク変動吸収体とを有することを特徴とする請求項1に記載の船外機である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記トルク変動吸収体は、クランク軸側締付部材によって前記クランク軸側連結体に締付固定し、ドライブ軸側締付部材によって前記ドライブ軸側連結体に締付固定することを特徴とする請求項2に記載の船外機である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ドライブ軸側連結体を、軸受を介して支持したことを特徴とする請求項2に記載の船外機である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記トルク変動吸収装置と前記軸受とを予め組み付けてトルク変動吸収ユニットにして配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記軸受を、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有するブロックに取り付け、このブロックを前記クランク軸と前記ドライブ軸との間に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記軸受を、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有するガイドエギゾーストに取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記トルク変動吸収装置を覆うカバーを配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機である。
【発明の効果】
【0017】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、クランク軸とドライブ軸との間の連結部にトルク変動吸収装置を配置し、動力伝達機構の各部の連結部を利用することで、ドライブ軸を分割する等の構造にする必要がなく簡単な構造である。また、トルク変動を吸収する部分は軸受を介して確実に支持され、動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがない。
【0019】
また、トルク変動吸収装置がクランク軸とドライブ軸との間に配置され、エンジン下方位置の空間を利用してシフト操作部材等を干渉することなく配置することができる。また、トルク変動吸収装置がドライブ軸の上方に位置することで、エンジン側から容易に組み付け、あるいはメンテナンスを行なうことができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、トルク変動吸収装置がトルク変動吸収体とクランク軸側連結体とドライブ軸側連結体とで構成され、クランク軸とドライブ軸との連結部を利用してトルク変動吸収装置を配置する簡単な構造である。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、トルク変動吸収体はクランク軸側連結体及びドライブ軸側連結体に締付固定し、特別な固定構造を用いることなく簡単かつ強固に一体化することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、トルク変動吸収装置の下側に位置するドライブ軸側連結体を軸受によって確実に支持することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、トルク変動吸収装置と軸受とを予め組み付けてトルク変動吸収ユニットにすることで、組み付けが容易である。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、軸受を支持するブロックが、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有する。従って、ブロックによって各種通路が形成されるので、各種通路の連通が容易になる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有するガイドエギゾーストを利用することで、軸受を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、トルク変動吸収装置を覆うカバーを配置し、カバーによって配線等がトルク変動吸収装置に接触することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の船外機の実施の形態について説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0028】
図1は小型船舶に搭載した船外機の側面図、図2はトルク変動吸収装置の断面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4はブロックの平面図、図5はクランク軸側連結体のフランジカップリングを示す図、図6はドライブ軸側連結体のフランジカップリングを示す図、図7はトルク変動吸収体を示す図、図8はトルク変動吸収装置の別の取付を示す断面図、図9は動力伝達機構を示す概略構成図である。
【0029】
先ず、図1に基づいて船外機1の全体構成を説明する。この実施の形態の船外機1は、クランプブラケット2によって小型船舶の船体50に設けられる船尾板50aに取り付けられている。この船外機1の船外機本体1Aは、クランプブラケット2に設けられたチルト軸3を中心として上下方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
また、船外機本体1Aは、トップカウリング4a1とアンダカウリング4a2からなるカウリングと、アッパケーシング4b1とロアケーシング4b2からなるケーシングとを有する。
【0031】
船外機本体1Aの上部には、トップカウリング4a1とアンダカウリング4a2内にエンジン5が収納されている。エンジン5は、4サイクルエンジンが用いられている。アンダカウリング4a2に対してトップカウリング4a1が開閉可能に設けられている。
【0032】
この船外機本体1Aの下部には、プロペラ20がロアケーシング4b2に支持されている。エンジン5の回転動力は、アッパケーシング4b1とロアケーシング4b2内に収納された動力伝達機構10によりプロペラ20に伝達される。
【0033】
エンジン5は、複数の気筒が上下方向に配列されており、クランク軸7は上下方向に配され、エンジン5から下方へ延出する。動力伝達機構10は、ドライブ軸11、前後進切換機構12、プロペラ軸13等から構成される。
【0034】
エンジン5から下方へ延出するクランク軸7には、トルク変動吸収装置60を介してドライブ軸11が連結され、前後進切換機構12はドライブ軸11の回転方向を前後進に変換する。この前後進切換機構12の出力側に連結されたプロペラ軸13の後端部には、プロペラ20が取り付けられている。
【0035】
ドライブ軸11の中間部には、ドライブ軸11によって回転駆動されるウォータポンプ21が設けられている。また、前後進切換機構12における前後進の切り換えはシフトロッド22によって行われる。
【0036】
次に、トルク変動吸収装置60の構成の詳細を図2乃至図7に基づいて説明する。この実施の形態のトルク変動吸収装置60は、クランク軸7にスプライン嵌合するクランク軸側連結体61と、ドライブ軸11にスプライン嵌合するドライブ軸側連結体62と、クランク軸側連結体61とドライブ軸側連結体62との間に配置されるトルク変動吸収体63とを有する。
【0037】
クランク軸側連結体61は、金属素材を鍛造成形したものであり、図2及び図5に示すように、フランジカップリング61aと、スプライン連結軸部61bとを有する。フランジカップリング61aは、図5に示すように、筒部61a1と、この筒部61a1の端部に形成されたフランジ部61a2と、このフランジ部61a2の略120度の位置から外方へ延出された3箇所の取付部61a3とを有する。このフランジ部61a2には、スプライン連結軸部61bと連結する取付雌ネジ孔61a4が略90度の4箇所に形成されている。また、3箇所のそれぞれの取付部61a3には、トルク変動吸収体63と連結する取付雌ネジ孔61a5が形成されている。
【0038】
スプライン連結軸部61bは、図2に示すように、スプライン軸部61b1と、このスプライン軸部61b1の端部に形成されたフランジ部61b2とを有する。フランジ部61b2には、フランジカップリング61aと連結する取付挿通孔61b3が4箇所に形成されている。
【0039】
フランジカップリング61aとスプライン連結軸部61bとの連結は、4本の締付部材であるボルト64をそれぞれスプライン連結軸部61bの取付挿通孔61b3から挿通し、フランジカップリング61aの取付雌ネジ孔61a4に螺着して締付固定する。
【0040】
ドライブ軸側連結体62は、金属素材を鍛造成形したものであり、図2及び図6に示すように、フランジカップリング62aと、スプライン連結軸部62bとを有する。フランジカップリング62aは、図6に示すように、筒部62a1と、この筒部62a1の端部に形成されたフランジ部62a2と、このフランジ部62a2の略120度の位置から外方へ延出された3箇所の取付部62a3とを有する。この3箇所のそれぞれの取付部62a3には、トルク変動吸収体63と連結する取付雌ネジ孔62a4が形成されている。また、筒部62a1には、スプライン連結軸部62bと連結する取付スプライン孔62a5が軸芯位置に形成されている。
【0041】
スプライン連結軸部62bは、図2に示すように、スプライン有底筒部62b1と、このスプライン有底筒部62b1の底部に形成されたフランジ部62b2と、スプライン有底筒部62b1の底部に形成された軸芯方向に延びる取付スプライン軸部62b3とを有する。
【0042】
フランジカップリング62aとスプライン連結軸部62bとの連結は、フランジカップリング62aの取付スプライン孔62a5にスプライン連結軸部62bの取付スプライン軸部62b3をスプライン嵌合し、この取付スプライン軸部62b3にワッシャー65を介してナット66を締付固定する。
【0043】
トルク変動吸収体63は、インサート金属とゴム部材とからなり、図2及び図7に、6個のインサート金属63a1〜63a6と、6個のゴム部材63b1〜63b6とを有する。6個のインサート金属63a1〜63a6は、図7に示すように、正六角形の角部の位置にあり、6個のゴム部材63b1〜63b6は、それぞれのインサート金属63a1〜63a6を連結し、トルク変動吸収体63が正六角形の環状に形成されている。
【0044】
インサート金属63a1〜63a6のうち、インサート金属63a2,63a4,63a6が距離D1偏位して配置されている。偏位しないインサート金属63a1,63a3,63a5には、フランジカップリング61aに取り付ける取付挿通孔63a11,63a31,63a51が形成されている。偏位したインサート金属63a2,63a4,63a6には、フランジカップリング62aに取り付ける取付挿通孔63a21,63a41,63a61が形成されている。 クランク軸側連結体61とドライブ軸側連結体62との間にトルク変動吸収体63が配置される。このドライブ軸側連結体62は、フランジカップリング62aの筒部62a1にオイルシール70とブッシュ71とをサークリップ72により支持し、この筒部62a1をフランジカップリング61aの筒部61a1に嵌合し、クランク軸側連結体61とドライブ軸側連結体62とを組み付ける。
【0045】
トルク変動吸収体63とクランク軸側連結体61とは、トルク変動吸収体63のインサート金属63a1,63a3,63a5をスプリングピン73によってフランジカップリング61aの3個の取付部61a3に組み付け、クランク軸側締付部材67を取付挿通孔63a11,63a31,63a51に挿通して3箇所の取付雌ネジ孔61a5に締付固定する。
【0046】
トルク変動吸収体63とドライブ軸側連結体62とは、トルク変動吸収体63のインサート金属63a2,63a4,63a6をスプリングピン74によってフランジカップリング62aの3個の取付部62a3に組み付け、クランク軸側締付部材68を取付挿通孔63a21,63a41,63a61に挿通して3箇所の取付雌ネジ孔62a4に締付固定する。
【0047】
このように、トルク変動吸収体63はクランク軸側連結体61及びドライブ軸側連結体62に締付固定することで、特別な固定構造を用いることなく簡単かつ強固に一体化することができる。
【0048】
ドライブ軸側連結体62には、スプライン連結軸部62bのスプライン有底筒部62b1に2個の軸受75をサークリップ76によって支持する。2個の軸受75の間にはカラー77が介在されている。この2個の軸受75には、軸受ホルダ78がサークリップ79によって保持される。このように、トルク変動吸収装置60と軸受75とを予め組み付けてトルク変動吸収ユニットAにして配置することで、エンジン5とガイドエギゾースト90との間、あるいはガイドエギゾースト90とアッパケーシング4b1との間への組み付けが容易である。
【0049】
このトルク変動吸収ユニットAは、スプライン連結軸部61bのスプライン軸部61b1をクランク軸7のスプライン孔部7aにスプライン嵌合し、スプライン連結軸部62bのスプライン有底筒部62b1をドライブ軸11のスプライン上端部11aにスプライン嵌合し、軸受ホルダ78をブロック80のブラケット81に取り付けて配置する。
【0050】
ブラケット81は、図2及び図3に示すように、軸受ホルダ取付部81aと、ブロック取付部81bとを有する。ブラケット81の軸受ホルダ取付部81aと軸受ホルダ78とをボルト82によって締付固定する。ブラケット81のブロック取付部81bとブロック80とをボルト83によって締付固定する。
【0051】
ブロック80は、図2及び図3に示すように、エンジン5とガイドエギゾースト90との間に配置される。ブロック80の上部にはクランクケース99がボルト95によって締付固定され、ブロック80の下部にはガイドエギゾースト90と排気ボックス91とがボルト96によって締付固定されている。
【0052】
ブロック80には、図3及び図4に示すように、排気ガス通路80a、冷却水通路80b、供給潤滑油通路80c、戻し潤滑油通路80dを有する。ガイドエギゾースト90には、図2及び図3に示すように、排気ガス通路90a、冷却水通路90b、供給潤滑油通路90c、戻し潤滑油通路90dを有する。ブロック80の排気ガス通路80a、冷却水通路80b、供給潤滑油通路80c、戻し潤滑油通路80dは、ガイドエギゾースト90の排気ガス通路90a、冷却水通路90b、供給潤滑油通路90c、戻し潤滑油通路90dとそれぞれ連通している。このように、ブロック80によって各種通路が形成されるので、各種通路の連通が容易になる。
【0053】
また、ブロック80には、図2及び図4に示すように、トルク変動吸収装置60を覆うカバー85がボルト86によって締付固定されている。このカバー85は、上部を覆う部分85aと半分の側部を覆う部分85bとを有し、下方が開口されている。ブロック80の凹部80eによって、図4に示すように、トルク変動吸収装置60の側方の略半分を覆い、カバー85によってトルク変動吸収装置60の上方から側方の略半分を覆っており、配線等がトルク変動吸収装置60に接触することを防止することができる。
【0054】
ブロック80はアッパケーシング4b1に支持され、このブロック80に軸受75が軸受ホルダ78、ブラケット81を介して取り付けられており、ブロック80によって各種通路の形成と取付構造が容易になる。
【0055】
また、ガイドエギゾースト90は、図8に示すように、一部90eを上方へ延出してブロックのように形成し、軸受75を同様な構成でガイドエギゾースト90に取り付けるようにしてもよい。このガイドエギゾースト90は、アッパケーシング4b1に支持される。ガイドエギゾースト90を利用することで、軸受75を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0056】
この実施の形態では、図9に示すように、エンジン5のクランク軸7の上部には、フライホイールマグネトを備え、クランク軸7の回転動力をトルク変動吸収装置60、ドライブ軸11、前後進切換機構12及びプロペラ軸13を経てプロペラ20に伝達する。前後進切換機構12は、ピニオン12a、ギヤ12b及びドッグクラッチ12cを有し、ドライブ軸11からプロペラ軸13の間の各部にはガタが存在しエンジン運転中に動力自身のトルク変動が発生するが、トルク変動吸収装置60のトルク変動吸収体63によって吸収され、動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがない。
【0057】
この実施の形態では、図9に示すように、クランク軸7とドライブ軸11との間の連結部にトルク変動吸収装置60を配置し、動力伝達機構の連結部を利用してトルク変動吸収装置60を配置することで、例えばドライブ軸11を分割する等の構造にする必要がなく簡単な構造である。また、トルク変動を吸収する部分は軸受75を介して確実に支持され、動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがない。
【0058】
また、この実施の形態のように、トルク変動吸収装置60をクランク軸7とドライブ軸11との間に配置することで、エンジン下方位置の空間を利用してシフト操作部材88等を干渉することなく配置することができる。また、トルク変動吸収装置60がドライブ軸11の上方に位置することで、エンジン側から容易に組み付け、あるいはメンテナンスを行なうことができる。
【0059】
トルク変動吸収装置60がトルク変動吸収体63とクランク軸側連結体61とドライブ軸側連結体62とで構成され、クランク軸7とドライブ軸12との連結部を利用してトルク変動吸収装置60を配置する簡単な構造である。また、トルク変動吸収装置60の下側に位置するドライブ軸側連結体62を軸受75によって確実に支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明の船外機は、エンジンのクランク軸の回転動力をドライブ軸、前後進切換機構及びプロペラ軸を経てプロペラに伝達する動力伝達機構を備え、プロペラを回転駆動することによって推進し、クランク軸とプロペラ軸との間の連結部にトルク変動吸収装置を配置し、トルク変動吸収装置を軸受を介して支持し、簡単な構造で動力伝達機構の衝突音をなくし、かつ乗船者に不快なショックを与えることがないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】小型船舶に搭載した船外機の側面図である。
【図2】トルク変動吸収装置の断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】ブロックの平面図である。
【図5】クランク軸側連結体のフランジカップリングを示す図である。
【図6】ドライブ軸側連結体のフランジカップリングを示す図である。
【図7】トルク変動吸収体を示す図である。
【図8】トルク変動吸収装置の別の取付を示す断面図である。
【図9】動力伝達機構を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 船外機
4a1 トップカウリング
4a2 アンダカウリング
4b1 アッパケーシング
4b2 ロアケーシング
5 エンジン
7 クランク軸
10 動力伝達機構
11 ドライブ軸
12 前後進切換機構
13 プロペラ軸
60 トルク変動吸収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸の回転動力をドライブ軸、前後進切換機構及びプロペラ軸を経てプロペラに伝達する動力伝達機構を備え、前記プロペラを回転駆動することによって推進する船外機において、
前記クランク軸と前記ドライブ軸との間の連結部にトルク変動吸収装置を配置し、
前記トルク変動吸収装置を軸受を介して支持したことを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記トルク変動吸収装置は、前記クランク軸にスプライン嵌合するクランク軸側連結体と、前記ドライブ軸にスプライン嵌合するドライブ軸側連結体と、前記クランク軸側連結体と前記ドライブ軸側連結体との間に配置されるトルク変動吸収体とを有することを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記トルク変動吸収体は、クランク軸側締付部材によって前記クランク軸側連結体に締付固定し、ドライブ軸側締付部材によって前記ドライブ軸側連結体に締付固定することを特徴とする請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ドライブ軸側連結体を、軸受を介して支持したことを特徴とする請求項2に記載の船外機。
【請求項5】
前記トルク変動吸収装置と前記軸受とを予め組み付けてトルク変動吸収ユニットにして配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項6】
前記軸受を、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有するブロックに取り付け、このブロックを前記クランク軸と前記ドライブ軸との間に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項7】
前記軸受を、排気ガス通路、冷却水通路、潤滑油通路を有するガイドエギゾーストに取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
前記トルク変動吸収装置を覆うカバーを配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−15818(P2006−15818A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193498(P2004−193498)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)