船舶と船舶の荷役方法
【課題】デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度を増加すると共に、荷役時においては、デッキクレーンのブームを船内側から陸上側、あるいは、陸上側から船内側に振り回すときに、ブームレストが邪魔にならないようにすることができて、作業者の負担を軽減でき、荷役効率を向上できるデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法を提供する。
【解決手段】デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレスト21とを備えた船舶において、前記ブームレスト21を甲板5上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱30の上部に設けると共に、前記ブームレスト21又は前記ブームレスト21と前記支柱30の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成する。
【解決手段】デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレスト21とを備えた船舶において、前記ブームレスト21を甲板5上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱30の上部に設けると共に、前記ブームレスト21又は前記ブームレスト21と前記支柱30の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の荷役に関して、荷役用のデッキクレーンを搭載したバラ積み運搬船などにおいては、デッキクレーンが多く使用されている(例えば、特許文献1,2参照。)。このデッキクレーンを航海中に支持及び固定するブームレストの位置と吊りフックの格納位置に関しては、主に、次の2つの配置が採用されている。
【0003】
図5及び図6に示すように、一つ目の配置の船舶1Xでは、デッキクレーン10の支柱11をハッチ(倉口)2の間又は前端又は後端のいずれかに配置し、航海時などの作業停止時におけるデッキクレーン10のブーム13の先端側を支持するブームレスト21と吊りフックの格納部を、ハッチ2を跨いだハッチ2の間又は前端又は後端のいずれかに配置する。つまり、デッキクレーン10のブームの水平長さを、ハッチを超える長さにして、ブームレスト21を船体の中央線の近傍に格納する。この配置では、デッキクレーン10のブーム13の水平長さをハッチ2の長さ(倉口長さ)に対応させる必要があり、自由にデッキクレーン10の長さとハッチの長さを設計することができないという問題がある。
【0004】
図7及び図8に示すように、二つ目の配置の船舶1Yでは、ブームレスト21を倉口装置の横の甲板上の船側側の支柱配置部位に建てた支柱30に固定して設け、このブームレスト21にデッキクレーン10のブーム13の先端側を載置する。このブームレスト21の高さは、デッキクレーン10の先端側が垂直支柱11の上面よりも低くなると、ブーム13の先端を引き起こすための俯仰用ワイヤ15の張力が著しく大きくなり、ブーム13を引き起こすことができなくなるので、ブーム13がブームレスト21に載置する際に略水平になるように、垂直支柱11の上面の位置、言い換えれば、回転式クレーンハウジング12の下面の位置と略同じ高さになるように設けられる。
【0005】
しかしながら、このブームレスト21の高さでは、甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた固定式のブームレスト21とその支柱30が、ハッチ2のハッチコーミング高さよりも高くなっており、デッキクレーン10のブーム13を船内から陸上側又は陸上側から船内へ振り回すときに、ブームレスト21を回避する必要がある。つまり、ブームレスト21とその支柱30が荷役作業の際に邪魔になり、荷役効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−1688号公報
【特許文献2】特開平10−101292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度を増加すると共に、荷役時においては、荷役時にデッキクレーンのブームを船内側から陸上側、あるいは、陸上側から船内側に振り回すときに、ブームレストが邪魔にならないようにすることができて、作業者の負担を軽減でき、荷役効率を向上できるデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のデッキクレーンを備えた船舶は、デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレストとを備えた船舶において、前記ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部に設けると共に、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成する。
【0009】
この構成によれば、従来技術においては、ブームレストの配置上の制約からデッキクレーンのブームの長さとハッチの長さとが関係付けられていたが、ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上に設けることにより、その関係付けが不要になるので、デッキクレーンのブームの長さとハッチの長さの設計上の自由度が増加する。
【0010】
また、デッキクレーンのブームレスト、又は、ブームレストを支持する支柱の一部若しくは全部をブームレストと共に甲板上の船側側の支柱配置部位から取り外して分離できる構造にして、荷役時においては、ブームレスト、又は、ブームレストとその支柱の一部若しくは全部を甲板上の船側側の支柱配置部位から取り外して、荷役の邪魔にならない船上や陸上の他の場所(仮置き場所)に移動することができるようになるので、荷役時にデッキクレーンのブームを船内側から陸上側、あるいは、陸上側から船内側に振り回すときに、ブームレストが邪魔にならないようにすることができるので、作業者の負担を軽減でき、荷役効率を向上できる。
【0011】
また、上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記支柱を上側部材と下側部材とで形成し、前記ブームレストと前記支柱の上側部材を前記支柱の下側部材から取り外し可能に構成する。
【0012】
この構成によれば、ブームレストと支柱全体を取り外し可能に構成する場合よりも、強度的に設計が容易となり、また、取り外し及び組み付けの作業も容易となる。つまり、支柱全体を取り外し可能とし、且つ組み付け時は堅固に固定するための構造よりも、支柱の下側部材を甲板上に残す構造の方が比較的簡単な構成で構造的な強度を得やすい。なお、この場合、下側部材はハッチコーミングの高さ以下になるように形成することが好ましい。また、このブームレストと支柱の上側部材とは、分離可能に形成して、2段階で取り外せるように構成してもよく、更に3以上に分割可能に形成してもよいが、取り外しの手間を考えると一体化しておいた方が便利である。
【0013】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記上側部材と前記下側部材とを、一方が他方に差し込まれる構成とすると、上側部材と下側部材の分離及び合体を、デッキクレーンを用いて容易に行うことができるようになる。通常は上側部材よりも下側部材の方が短くなるように構成するので、上側部材を下側部材の内側に入るようにする方が強度的には設計し易い。また、差し込まれる方の開口部は漏斗状の形状にして、組み付け時の差し込み作業が容易にできるようにすることが好ましい。
【0014】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台から取り外し可能に設けたり、前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したりすると、ハッチコーミングの高さよりも高く形成した下側部材も荷役の邪魔にならなくなる。
【0015】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記ブームレストを前記支柱から取り外し可能に構成すると共に、前記支柱を、該支柱を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成すると、幅広のブームレストを取り外した支柱は、比較的容易に起倒でき、また、甲板上の荷役の邪魔にならない場所に置いておくことができる。そのため、支柱を上側部材と下側部材に分離可能に形成する必要がなくなり、構成も単純化できる。
【0016】
また、上記の目的を達成するためのデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法は、船舶の航海中は、デッキクレーンのブームを、甲板の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部のブームレストに載置して固定すると共に、荷役時は、前記デッキクレーンを用いて、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外して他の場所に移動して、前記デッキクレーンで荷役作業を行う方法である。
【0017】
この方法によれば、航海時においては、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さとハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を荷役の邪魔にならない他の場所(仮置き場所)に移動して荷役できるので、荷役効率を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法によれば、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、ブームレスト、又は、ブームレストとその支柱の一部若しくは全部を荷役の邪魔にならない仮置き場所に移動して荷役することができるので、荷役効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるデッキクレーンを備えた船舶のデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のデッキクレーンを備えた船舶におけるブームレストとその支柱の構成を示した斜視図である。
【図3】取り外し式の下側部材の構成を示した斜視図である。
【図4】起倒式の下側部材の構造を示した斜視図である。
【図5】一つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図6】一つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分平面図である。
【図7】二つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図8】二つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係るデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法について説明する。図1及び図2に示すように、本発明に係る実施の形態のデッキクレーンを備えた船舶1は、デッキクレーン10を備えて構成される。
【0021】
図1に示すデッキクレーン10はジブ式デッキクレーンであり、垂直支柱11と回転式クレーンハウジング12とブーム13とを有して構成される。この垂直支柱11は、下部ポストと呼ばれ、ハッチ(倉口)2の間の甲板5に建てられる。回転式クレーンハウジング12は、上部ポストと呼ばれ、垂直支柱11の上部に、この垂直支柱11の垂直軸周りに旋回可能に設けられる。また、ブーム13はジブと呼ばれ、回転式クレーンハウジング12の下側側に一端側(基部側)が垂直面内を回転できるように固定支持されると共に、他端側(先端側)が回転式クレーンハウジング12の頂部に設けられた俯仰用ウィンチ14から繰り出された俯仰用ワイヤ15に支持される。この俯仰用ワイヤ15の巻取りにより、ブーム13の仰角が大きく、即ち垂直に近くなり、俯仰用ワイヤ15の繰り出しにより、ブーム13の仰角が小さく、即ち、水平に近くなる。
【0022】
また、回転式クレーンハウジング12にはクレーン操縦室16と吊り荷用ウィンチ17が設けられ、吊り荷用ウィンチ17から繰り出される吊り荷用ワイヤ18がブーム13の先端側に設けられたシーブ13aを経由して垂下され、この垂下された吊り荷用ワイヤ18の先端に吊りフック(図示しない)が配置される。この吊りフックは吊り荷を吊り下げると共に、吊り荷用ウィンチ17による吊り荷用ワイヤ18の巻上げにより上方に移動し、吊り荷用ウィンチ17による吊り荷用ワイヤ18の繰り出しにより下方に移動する。
【0023】
この構成により、回転式クレーンハウジング12の垂直軸周りの回転操作によるブーム13の方向変化と、俯仰用ウィンチ14の駆動操作によるブーム13の仰角の変化と、吊り荷用ウィンチ17の駆動操作による吊りフックの上下高さの変化とにより、荷役作業を行うことができる。 そして、本発明においては、図2に示すように、航海中にデッキクレーン10のブーム13の先端側を支持するブームレスト21を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱30の上部に設ける。それと共に、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を支柱30の下側部材32から取り外し可能に構成する。
【0024】
ブームレスト21では、作業員がブーム13を固定するための作業を行うので、作業員の落下防止のために手すりが設けられ、また、必要に応じて、ブーム固定具22を設けて、航海中の船体動揺によるブーム13の加速度によって、ブーム13の先端側がブームレスト21と離れて跳ね上がらないように固定できるようにする。また、吊りフック19を固縛できるアイ部材等で形成するフック固定具(図示しない)を設ける。
【0025】
このブーム13の先端の支持は、単に上から載せて重量による固定の場合もあるが、航海中の船体動揺による跳ね上がりを防止するために、ボルトによる締結や両方に設けた係止部材同士の係止や固縛や覆いのブーム固定具22等により固定することが好ましい。また、吊りフックの揺れを防止するために、吊りフックをフック固定具にワイヤ等で固縛する。
【0026】
図1及び図2の構成では、上側部材31が下側部材32に差し込まれる構成とする。例えば、上側部材31と下側部材32をそれぞれパイプ構造とし、上側部材31の外径を下側部材32の内径よりも小さくする。また、下側部材32の開口部は漏斗状の形状、または、案内部材(ガイド)を設けた形状にして、組み付け時の差し込み作業が容易にできるようにすることが好ましい。このように構成すると、上側部材31と下側部材32の分離及び合体を、デッキクレーン10を用いて容易に行うことができるようになる。
【0027】
また、上側部材31を下側部材32に差し込んだ状態で堅固に固定するために、固定ピン用穴32hを上側部材31と下側部材32に設け、固定ピン(ストッパーピン)32aを一か所又は数か所で挿入して一体化して固定できるように構成する。更に、下側部材32の下部に、雨水等が溜まらないように水抜き穴(ドレンホール:図示しない)を設ける。
【0028】
また、上側部材31に下側部材32が差し込まれる構造にしてもよいが、通常は、下側部材32が荷役作業の邪魔にならないように、上側部材31よりも下側部材32の方が短く形成されるので、上側部材31を下側部材32の内側に差し込むように構成する方が強度的には設計し易くなる。
【0029】
また、上側部材31に関しては、作業員がブームレスト21においてブーム13の固定作業ができるように、作業員が昇降するための垂直梯子(図示しない)を上側部材31に沿わせて設ける。また、支柱30が高く、上側部材31も甲板5上に固着する必要がある場合には、上側部材31にワイヤステイ34の先端部34aを固定すると共に、ワイヤステイ34の基端部34bを甲板5上、又は、ハッチカバー2上に設置された固定器具に固縛できるように構成する。このワイヤステイ34は、必要に応じて、デッキクレーンを備えた船舶1の前後方向と横方向(左右舷方向)に設けて、船体動揺のピッチング(縦揺れ)とローリング(横揺れ)に対抗できるようにする。また、ワイヤステイ34の中間にターンバックル(図示しない)を設けて締め付けや締め付けの解除を容易にする。なお、ワイヤステイ34の替わりに、パイプ構造のステイを用いてもよい。なお、支柱30の高さが低く、ワイヤステイ34やパイプステイによる甲板5上への固着が不要な場合には、ワイヤステイ34やパイプステイによる支持構造を省くことができる。
【0030】
また、下側部材32に関しては、下側部材31の高さがハッチコーミング4の高さ以下の場合には、そのままでも荷役の邪魔にならないので、下側部材32のパイプ又はパイプに取り付けたフランジを甲板5上に直接溶接して固着したり、下側部材31のパイプに取り付けたフランジを甲板5上に固着して設けた固定用基台33にボルト締め等で固着したりする。
【0031】
また、下側部材31の高さがハッチコーミング4の高さよりも高い場合には、そのままでは荷役の邪魔になるので、この下側部材31を、この下側部材31を固定するために甲板5上に設けた固定用基台33から取り外し可能に設けたり、固定用基台33に対して起倒可能に形成したりする。
【0032】
取り外し式の場合は、下側部材32の下部のフランジ32bと固定用基台33との間をボルト結合として、ボルトの取り外しにより、下側部材32を固定用基台33から取り外せるように構成したり、図3に示すように、固定用基台33に案内板33aを設けて、この案内板33aに横方向(水平方向:矢印方向)から下側部材32のフランジ32bをスライドさせることで、着脱可能に構成したりする。
【0033】
起倒式の場合は、下側部材32の下部と固定用基台33とをヒンジを用いて接合して下側部材32が固定用基台33に対して転倒可能な構造にしたり、図4に示すように、下側部材32の下部32cにピン32d回りに回転する部分を設けて折れ曲がるように構成し、更に、ヒンジ部に倒れ止めストッパーを設けたりする。これらにより、荷役時に、下側部材32を倒して、下側部材32がハッチコーミング4の高さよりも低くなるようにして、下側部材32が荷役の邪魔になるのを防止する。また、上側部材31の組み付け時には、下側部材32を起こして鉛直にして、この下側部材32に上側部材31を差し込む。
【0034】
次に、上記のデッキクレーンを備えた船舶1における荷役方法について説明する。この荷役方法では、航海中は、デッキクレーン10のブーム13を、ハッチカバー3の横の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレスト21に載置して支持する。
【0035】
また、荷役開始時には、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10で吊って置き、この状態で、支柱30の上側部材31を固定支持しているワイヤステイ34を中間に設けたターンバックルを緩めて外すと共に、上側部材31と下側部材32を接続している固定ピン32aを引き抜いて固着を解除する。
【0036】
次に、デッキクレーン10で、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を吊り上げて、上側部材31を下側部材32から引き抜いて、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を、下側部材3から取り外してハッチ2の横の甲板5上や開口しないハッチカバー2上等の荷役の邪魔にならない船内又は陸上の仮置き場所に移動する。また、必要に応じて、下側部材32を取り外したり、倒したりして、荷役の邪魔にならない状態にする。これらの作用後に、でデッキクレーン10による荷役作業を行う。これにより、ブームレスト21と支柱30の上側部材31が荷役の邪魔にならない状態で、荷役を効率よく行うことができるようになる。
【0037】
荷役終了後は、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10で吊り上げて、仮置き場所から下側部材32の場所に移送した後、甲板上の船側側の固定ピン用穴32h支柱配置部位の下側部材32に差し込む等して組み込む。この状態、固定ピン32aを固定ピン用穴32hに挿入して固定し、また、ワイヤステイ34を中間に設けたターンバックルを締めつけて張って上側部材31を固定支持する。その後、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10から切り離し、デッキクレーン10のブーム13の先端を組み立てられたブームレスト21に載せてブーム固定具22で固定する。
【0038】
このブーム13のブームレスト21への載置に際しては、図示していないが、吊りフックのフック固定具への固定も行う。この固定は、吊りフックの真下にあるアイ部材などで形成されるフック固定具に吊りフックをワイヤで固縛し、ワイヤの中間に設けたターンバックルを締めつけて固定する。この固定により、ブーム13が単にブームレスト21に載置されて固定されていない場合でも、この張力によりブーム13が船体動揺等により跳ね上がるのを防止できる。ブーム13と吊りフックの支持又は固定が終了すると、デッキクレーン10の航海のための固定は終了する。
【0039】
なお、上記の説明では、ブームレスト21と支柱30の一部である上側部材31のみを支柱配置部位から取り外すことができるように構成しているが、ブームレスト21と支柱30の全部を支柱配置部位から取り外すことができるように構成してもよい。この場合は、例えば、図2において、支柱30の上側部材31と下側部材32を固着して一体の構成とし、下側部材32の下部に設けたフランジ32aを固定用基台33から取り外せるように構成する等する。
【0040】
また、ブームレスト21を支柱30から取り外し可能に形成し、支柱30を一体の構成とし、固定用基台33に対して、起倒可能に構成してもよい。この場合は、幅広のブームレスト21を取り外した支柱30は、比較的容易に起倒でき、また、甲板5上の荷役の邪魔にならない場所に置いておくことができる。そのため、支柱30を上側部材31と下側部材32に分離可能に形成する必要がなくなり、構成も単純化できる。
【0041】
上記の構成のデッキクレーンを備えた船舶1及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法によれば、従来技術においては、ブームレスト22の配置上の制約からデッキクレーン10のブーム13の長さとハッチ2の船長方向の長さとが関係付けられていたが、デッキクレーン10のブーム13の先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレスト21に載置して固定できるので、その関係付けが不要になり、デッキクレーン10のブーム13の長さとハッチ2の長さの設計上の自由度が増加する。
【0042】
また、荷役時においては、ブームレスト21、又は、ブームレスト21とその支柱30、又は、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を、船上若しくは陸上の荷役の邪魔にならない場所に移動して荷役することができるので、荷役効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法は、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、ブームレスト又はブームレストとその支柱の又はブームレストとその支柱の上側部材を荷役の邪魔にならない場所に移動して荷役することができ、荷役効率を向上させることができるので、バラ積み貨物やコンテナを運搬するためのデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法として利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 デッキクレーンを備えた船舶
2 ハッチ(倉口)
3 ハッチカバー
4 ハッチコーミング
5 甲板
10 デッキクレーン
13 ブーム
21 ブームレスト
30 支柱
31 上側部材
32 下側部材
32a 固定ピン
32b フランジ
32c 下側部材の下部
32d ピン
32h 固定ピン用穴
33 固定用基台
34 ワイヤステイ
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の荷役に関して、荷役用のデッキクレーンを搭載したバラ積み運搬船などにおいては、デッキクレーンが多く使用されている(例えば、特許文献1,2参照。)。このデッキクレーンを航海中に支持及び固定するブームレストの位置と吊りフックの格納位置に関しては、主に、次の2つの配置が採用されている。
【0003】
図5及び図6に示すように、一つ目の配置の船舶1Xでは、デッキクレーン10の支柱11をハッチ(倉口)2の間又は前端又は後端のいずれかに配置し、航海時などの作業停止時におけるデッキクレーン10のブーム13の先端側を支持するブームレスト21と吊りフックの格納部を、ハッチ2を跨いだハッチ2の間又は前端又は後端のいずれかに配置する。つまり、デッキクレーン10のブームの水平長さを、ハッチを超える長さにして、ブームレスト21を船体の中央線の近傍に格納する。この配置では、デッキクレーン10のブーム13の水平長さをハッチ2の長さ(倉口長さ)に対応させる必要があり、自由にデッキクレーン10の長さとハッチの長さを設計することができないという問題がある。
【0004】
図7及び図8に示すように、二つ目の配置の船舶1Yでは、ブームレスト21を倉口装置の横の甲板上の船側側の支柱配置部位に建てた支柱30に固定して設け、このブームレスト21にデッキクレーン10のブーム13の先端側を載置する。このブームレスト21の高さは、デッキクレーン10の先端側が垂直支柱11の上面よりも低くなると、ブーム13の先端を引き起こすための俯仰用ワイヤ15の張力が著しく大きくなり、ブーム13を引き起こすことができなくなるので、ブーム13がブームレスト21に載置する際に略水平になるように、垂直支柱11の上面の位置、言い換えれば、回転式クレーンハウジング12の下面の位置と略同じ高さになるように設けられる。
【0005】
しかしながら、このブームレスト21の高さでは、甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた固定式のブームレスト21とその支柱30が、ハッチ2のハッチコーミング高さよりも高くなっており、デッキクレーン10のブーム13を船内から陸上側又は陸上側から船内へ振り回すときに、ブームレスト21を回避する必要がある。つまり、ブームレスト21とその支柱30が荷役作業の際に邪魔になり、荷役効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−1688号公報
【特許文献2】特開平10−101292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度を増加すると共に、荷役時においては、荷役時にデッキクレーンのブームを船内側から陸上側、あるいは、陸上側から船内側に振り回すときに、ブームレストが邪魔にならないようにすることができて、作業者の負担を軽減でき、荷役効率を向上できるデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のデッキクレーンを備えた船舶は、デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレストとを備えた船舶において、前記ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部に設けると共に、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成する。
【0009】
この構成によれば、従来技術においては、ブームレストの配置上の制約からデッキクレーンのブームの長さとハッチの長さとが関係付けられていたが、ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上に設けることにより、その関係付けが不要になるので、デッキクレーンのブームの長さとハッチの長さの設計上の自由度が増加する。
【0010】
また、デッキクレーンのブームレスト、又は、ブームレストを支持する支柱の一部若しくは全部をブームレストと共に甲板上の船側側の支柱配置部位から取り外して分離できる構造にして、荷役時においては、ブームレスト、又は、ブームレストとその支柱の一部若しくは全部を甲板上の船側側の支柱配置部位から取り外して、荷役の邪魔にならない船上や陸上の他の場所(仮置き場所)に移動することができるようになるので、荷役時にデッキクレーンのブームを船内側から陸上側、あるいは、陸上側から船内側に振り回すときに、ブームレストが邪魔にならないようにすることができるので、作業者の負担を軽減でき、荷役効率を向上できる。
【0011】
また、上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記支柱を上側部材と下側部材とで形成し、前記ブームレストと前記支柱の上側部材を前記支柱の下側部材から取り外し可能に構成する。
【0012】
この構成によれば、ブームレストと支柱全体を取り外し可能に構成する場合よりも、強度的に設計が容易となり、また、取り外し及び組み付けの作業も容易となる。つまり、支柱全体を取り外し可能とし、且つ組み付け時は堅固に固定するための構造よりも、支柱の下側部材を甲板上に残す構造の方が比較的簡単な構成で構造的な強度を得やすい。なお、この場合、下側部材はハッチコーミングの高さ以下になるように形成することが好ましい。また、このブームレストと支柱の上側部材とは、分離可能に形成して、2段階で取り外せるように構成してもよく、更に3以上に分割可能に形成してもよいが、取り外しの手間を考えると一体化しておいた方が便利である。
【0013】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記上側部材と前記下側部材とを、一方が他方に差し込まれる構成とすると、上側部材と下側部材の分離及び合体を、デッキクレーンを用いて容易に行うことができるようになる。通常は上側部材よりも下側部材の方が短くなるように構成するので、上側部材を下側部材の内側に入るようにする方が強度的には設計し易い。また、差し込まれる方の開口部は漏斗状の形状にして、組み付け時の差し込み作業が容易にできるようにすることが好ましい。
【0014】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台から取り外し可能に設けたり、前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したりすると、ハッチコーミングの高さよりも高く形成した下側部材も荷役の邪魔にならなくなる。
【0015】
上記のデッキクレーンを備えた船舶において、前記ブームレストを前記支柱から取り外し可能に構成すると共に、前記支柱を、該支柱を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成すると、幅広のブームレストを取り外した支柱は、比較的容易に起倒でき、また、甲板上の荷役の邪魔にならない場所に置いておくことができる。そのため、支柱を上側部材と下側部材に分離可能に形成する必要がなくなり、構成も単純化できる。
【0016】
また、上記の目的を達成するためのデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法は、船舶の航海中は、デッキクレーンのブームを、甲板の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部のブームレストに載置して固定すると共に、荷役時は、前記デッキクレーンを用いて、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外して他の場所に移動して、前記デッキクレーンで荷役作業を行う方法である。
【0017】
この方法によれば、航海時においては、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さとハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を荷役の邪魔にならない他の場所(仮置き場所)に移動して荷役できるので、荷役効率を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法によれば、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、ブームレスト、又は、ブームレストとその支柱の一部若しくは全部を荷役の邪魔にならない仮置き場所に移動して荷役することができるので、荷役効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるデッキクレーンを備えた船舶のデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のデッキクレーンを備えた船舶におけるブームレストとその支柱の構成を示した斜視図である。
【図3】取り外し式の下側部材の構成を示した斜視図である。
【図4】起倒式の下側部材の構造を示した斜視図である。
【図5】一つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図6】一つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分平面図である。
【図7】二つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分側面図である。
【図8】二つ目の従来技術のデッキクレーンを備えた船舶におけるデッキクレーンのブームの航海中の配置を示した部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係るデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法について説明する。図1及び図2に示すように、本発明に係る実施の形態のデッキクレーンを備えた船舶1は、デッキクレーン10を備えて構成される。
【0021】
図1に示すデッキクレーン10はジブ式デッキクレーンであり、垂直支柱11と回転式クレーンハウジング12とブーム13とを有して構成される。この垂直支柱11は、下部ポストと呼ばれ、ハッチ(倉口)2の間の甲板5に建てられる。回転式クレーンハウジング12は、上部ポストと呼ばれ、垂直支柱11の上部に、この垂直支柱11の垂直軸周りに旋回可能に設けられる。また、ブーム13はジブと呼ばれ、回転式クレーンハウジング12の下側側に一端側(基部側)が垂直面内を回転できるように固定支持されると共に、他端側(先端側)が回転式クレーンハウジング12の頂部に設けられた俯仰用ウィンチ14から繰り出された俯仰用ワイヤ15に支持される。この俯仰用ワイヤ15の巻取りにより、ブーム13の仰角が大きく、即ち垂直に近くなり、俯仰用ワイヤ15の繰り出しにより、ブーム13の仰角が小さく、即ち、水平に近くなる。
【0022】
また、回転式クレーンハウジング12にはクレーン操縦室16と吊り荷用ウィンチ17が設けられ、吊り荷用ウィンチ17から繰り出される吊り荷用ワイヤ18がブーム13の先端側に設けられたシーブ13aを経由して垂下され、この垂下された吊り荷用ワイヤ18の先端に吊りフック(図示しない)が配置される。この吊りフックは吊り荷を吊り下げると共に、吊り荷用ウィンチ17による吊り荷用ワイヤ18の巻上げにより上方に移動し、吊り荷用ウィンチ17による吊り荷用ワイヤ18の繰り出しにより下方に移動する。
【0023】
この構成により、回転式クレーンハウジング12の垂直軸周りの回転操作によるブーム13の方向変化と、俯仰用ウィンチ14の駆動操作によるブーム13の仰角の変化と、吊り荷用ウィンチ17の駆動操作による吊りフックの上下高さの変化とにより、荷役作業を行うことができる。 そして、本発明においては、図2に示すように、航海中にデッキクレーン10のブーム13の先端側を支持するブームレスト21を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱30の上部に設ける。それと共に、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を支柱30の下側部材32から取り外し可能に構成する。
【0024】
ブームレスト21では、作業員がブーム13を固定するための作業を行うので、作業員の落下防止のために手すりが設けられ、また、必要に応じて、ブーム固定具22を設けて、航海中の船体動揺によるブーム13の加速度によって、ブーム13の先端側がブームレスト21と離れて跳ね上がらないように固定できるようにする。また、吊りフック19を固縛できるアイ部材等で形成するフック固定具(図示しない)を設ける。
【0025】
このブーム13の先端の支持は、単に上から載せて重量による固定の場合もあるが、航海中の船体動揺による跳ね上がりを防止するために、ボルトによる締結や両方に設けた係止部材同士の係止や固縛や覆いのブーム固定具22等により固定することが好ましい。また、吊りフックの揺れを防止するために、吊りフックをフック固定具にワイヤ等で固縛する。
【0026】
図1及び図2の構成では、上側部材31が下側部材32に差し込まれる構成とする。例えば、上側部材31と下側部材32をそれぞれパイプ構造とし、上側部材31の外径を下側部材32の内径よりも小さくする。また、下側部材32の開口部は漏斗状の形状、または、案内部材(ガイド)を設けた形状にして、組み付け時の差し込み作業が容易にできるようにすることが好ましい。このように構成すると、上側部材31と下側部材32の分離及び合体を、デッキクレーン10を用いて容易に行うことができるようになる。
【0027】
また、上側部材31を下側部材32に差し込んだ状態で堅固に固定するために、固定ピン用穴32hを上側部材31と下側部材32に設け、固定ピン(ストッパーピン)32aを一か所又は数か所で挿入して一体化して固定できるように構成する。更に、下側部材32の下部に、雨水等が溜まらないように水抜き穴(ドレンホール:図示しない)を設ける。
【0028】
また、上側部材31に下側部材32が差し込まれる構造にしてもよいが、通常は、下側部材32が荷役作業の邪魔にならないように、上側部材31よりも下側部材32の方が短く形成されるので、上側部材31を下側部材32の内側に差し込むように構成する方が強度的には設計し易くなる。
【0029】
また、上側部材31に関しては、作業員がブームレスト21においてブーム13の固定作業ができるように、作業員が昇降するための垂直梯子(図示しない)を上側部材31に沿わせて設ける。また、支柱30が高く、上側部材31も甲板5上に固着する必要がある場合には、上側部材31にワイヤステイ34の先端部34aを固定すると共に、ワイヤステイ34の基端部34bを甲板5上、又は、ハッチカバー2上に設置された固定器具に固縛できるように構成する。このワイヤステイ34は、必要に応じて、デッキクレーンを備えた船舶1の前後方向と横方向(左右舷方向)に設けて、船体動揺のピッチング(縦揺れ)とローリング(横揺れ)に対抗できるようにする。また、ワイヤステイ34の中間にターンバックル(図示しない)を設けて締め付けや締め付けの解除を容易にする。なお、ワイヤステイ34の替わりに、パイプ構造のステイを用いてもよい。なお、支柱30の高さが低く、ワイヤステイ34やパイプステイによる甲板5上への固着が不要な場合には、ワイヤステイ34やパイプステイによる支持構造を省くことができる。
【0030】
また、下側部材32に関しては、下側部材31の高さがハッチコーミング4の高さ以下の場合には、そのままでも荷役の邪魔にならないので、下側部材32のパイプ又はパイプに取り付けたフランジを甲板5上に直接溶接して固着したり、下側部材31のパイプに取り付けたフランジを甲板5上に固着して設けた固定用基台33にボルト締め等で固着したりする。
【0031】
また、下側部材31の高さがハッチコーミング4の高さよりも高い場合には、そのままでは荷役の邪魔になるので、この下側部材31を、この下側部材31を固定するために甲板5上に設けた固定用基台33から取り外し可能に設けたり、固定用基台33に対して起倒可能に形成したりする。
【0032】
取り外し式の場合は、下側部材32の下部のフランジ32bと固定用基台33との間をボルト結合として、ボルトの取り外しにより、下側部材32を固定用基台33から取り外せるように構成したり、図3に示すように、固定用基台33に案内板33aを設けて、この案内板33aに横方向(水平方向:矢印方向)から下側部材32のフランジ32bをスライドさせることで、着脱可能に構成したりする。
【0033】
起倒式の場合は、下側部材32の下部と固定用基台33とをヒンジを用いて接合して下側部材32が固定用基台33に対して転倒可能な構造にしたり、図4に示すように、下側部材32の下部32cにピン32d回りに回転する部分を設けて折れ曲がるように構成し、更に、ヒンジ部に倒れ止めストッパーを設けたりする。これらにより、荷役時に、下側部材32を倒して、下側部材32がハッチコーミング4の高さよりも低くなるようにして、下側部材32が荷役の邪魔になるのを防止する。また、上側部材31の組み付け時には、下側部材32を起こして鉛直にして、この下側部材32に上側部材31を差し込む。
【0034】
次に、上記のデッキクレーンを備えた船舶1における荷役方法について説明する。この荷役方法では、航海中は、デッキクレーン10のブーム13を、ハッチカバー3の横の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレスト21に載置して支持する。
【0035】
また、荷役開始時には、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10で吊って置き、この状態で、支柱30の上側部材31を固定支持しているワイヤステイ34を中間に設けたターンバックルを緩めて外すと共に、上側部材31と下側部材32を接続している固定ピン32aを引き抜いて固着を解除する。
【0036】
次に、デッキクレーン10で、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を吊り上げて、上側部材31を下側部材32から引き抜いて、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を、下側部材3から取り外してハッチ2の横の甲板5上や開口しないハッチカバー2上等の荷役の邪魔にならない船内又は陸上の仮置き場所に移動する。また、必要に応じて、下側部材32を取り外したり、倒したりして、荷役の邪魔にならない状態にする。これらの作用後に、でデッキクレーン10による荷役作業を行う。これにより、ブームレスト21と支柱30の上側部材31が荷役の邪魔にならない状態で、荷役を効率よく行うことができるようになる。
【0037】
荷役終了後は、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10で吊り上げて、仮置き場所から下側部材32の場所に移送した後、甲板上の船側側の固定ピン用穴32h支柱配置部位の下側部材32に差し込む等して組み込む。この状態、固定ピン32aを固定ピン用穴32hに挿入して固定し、また、ワイヤステイ34を中間に設けたターンバックルを締めつけて張って上側部材31を固定支持する。その後、ブームレスト21と支柱30の上側部材31をデッキクレーン10から切り離し、デッキクレーン10のブーム13の先端を組み立てられたブームレスト21に載せてブーム固定具22で固定する。
【0038】
このブーム13のブームレスト21への載置に際しては、図示していないが、吊りフックのフック固定具への固定も行う。この固定は、吊りフックの真下にあるアイ部材などで形成されるフック固定具に吊りフックをワイヤで固縛し、ワイヤの中間に設けたターンバックルを締めつけて固定する。この固定により、ブーム13が単にブームレスト21に載置されて固定されていない場合でも、この張力によりブーム13が船体動揺等により跳ね上がるのを防止できる。ブーム13と吊りフックの支持又は固定が終了すると、デッキクレーン10の航海のための固定は終了する。
【0039】
なお、上記の説明では、ブームレスト21と支柱30の一部である上側部材31のみを支柱配置部位から取り外すことができるように構成しているが、ブームレスト21と支柱30の全部を支柱配置部位から取り外すことができるように構成してもよい。この場合は、例えば、図2において、支柱30の上側部材31と下側部材32を固着して一体の構成とし、下側部材32の下部に設けたフランジ32aを固定用基台33から取り外せるように構成する等する。
【0040】
また、ブームレスト21を支柱30から取り外し可能に形成し、支柱30を一体の構成とし、固定用基台33に対して、起倒可能に構成してもよい。この場合は、幅広のブームレスト21を取り外した支柱30は、比較的容易に起倒でき、また、甲板5上の荷役の邪魔にならない場所に置いておくことができる。そのため、支柱30を上側部材31と下側部材32に分離可能に形成する必要がなくなり、構成も単純化できる。
【0041】
上記の構成のデッキクレーンを備えた船舶1及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法によれば、従来技術においては、ブームレスト22の配置上の制約からデッキクレーン10のブーム13の長さとハッチ2の船長方向の長さとが関係付けられていたが、デッキクレーン10のブーム13の先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレスト21に載置して固定できるので、その関係付けが不要になり、デッキクレーン10のブーム13の長さとハッチ2の長さの設計上の自由度が増加する。
【0042】
また、荷役時においては、ブームレスト21、又は、ブームレスト21とその支柱30、又は、ブームレスト21と支柱30の上側部材31を、船上若しくは陸上の荷役の邪魔にならない場所に移動して荷役することができるので、荷役効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法は、デッキクレーンのブームの先端を甲板上の船側側の支柱配置部位に設けたブームレストに載置して固定できるので、デッキクレーンのブームの長さと、ハッチの長さの設計上の自由度が増加し、荷役時においては、ブームレスト又はブームレストとその支柱の又はブームレストとその支柱の上側部材を荷役の邪魔にならない場所に移動して荷役することができ、荷役効率を向上させることができるので、バラ積み貨物やコンテナを運搬するためのデッキクレーンを備えた船舶及びデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法として利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 デッキクレーンを備えた船舶
2 ハッチ(倉口)
3 ハッチカバー
4 ハッチコーミング
5 甲板
10 デッキクレーン
13 ブーム
21 ブームレスト
30 支柱
31 上側部材
32 下側部材
32a 固定ピン
32b フランジ
32c 下側部材の下部
32d ピン
32h 固定ピン用穴
33 固定用基台
34 ワイヤステイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレストとを備えた船舶において、前記ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部に設けると共に、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成したことを特徴とするデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項2】
前記支柱を上側部材と下側部材とで形成し、前記ブームレストと前記支柱の上側部材を前記支柱の下側部材から取り外し可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項3】
前記上側部材と前記下側部材とを、一方が他方に差し込まれる構成としたことを特徴とする請求項2に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項4】
前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台から取り外し可能に設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項5】
前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項6】
前記ブームレストを前記支柱から取り外し可能に構成すると共に、前記支柱を、該支柱を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したことを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項7】
船舶の航海中は、デッキクレーンのブームを、甲板の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部のブームレストに載置して固定すると共に、荷役時は、前記デッキクレーンを用いて、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外して他の場所に移動して、前記デッキクレーンで荷役作業を行うことを特徴とするデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法。
【請求項1】
デッキクレーンと、航海中に前記デッキクレーンの先端を載置するブームレストとを備えた船舶において、前記ブームレストを甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部に設けると共に、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外し可能に構成したことを特徴とするデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項2】
前記支柱を上側部材と下側部材とで形成し、前記ブームレストと前記支柱の上側部材を前記支柱の下側部材から取り外し可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項3】
前記上側部材と前記下側部材とを、一方が他方に差し込まれる構成としたことを特徴とする請求項2に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項4】
前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台から取り外し可能に設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項5】
前記下側部材を、該下側部材を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項6】
前記ブームレストを前記支柱から取り外し可能に構成すると共に、前記支柱を、該支柱を固定するために甲板上に設けた支柱固定台に対して起倒可能に形成したことを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーンを備えた船舶。
【請求項7】
船舶の航海中は、デッキクレーンのブームを、甲板の甲板上の船側側の支柱配置部位に設けた支柱の上部のブームレストに載置して固定すると共に、荷役時は、前記デッキクレーンを用いて、前記ブームレスト、又は、前記ブームレストと前記支柱の一部若しくは全部を前記支柱配置部位から取り外して他の場所に移動して、前記デッキクレーンで荷役作業を行うことを特徴とするデッキクレーンを備えた船舶の荷役方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−251608(P2011−251608A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125829(P2010−125829)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
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