説明

船舶の推進装置とそれを備えた船舶

【課題】フィン付きのプロペラボスキャップを使用したスクリュープロペラで形成される船舶の推進装置において、従来技術のフィン形状のフィン付きのプロペラボスキャップを使用した船舶の推進装置よりも、工作性を高め、しかも、軽量化された船舶の推進装置とそれを備えた船舶を提供する。
【解決手段】プロペラボスキャップの前端部直径Dcfを基準直径Dsとして、フィン6Aの後半部分の形状を、前記フィン6Aの根部の前端6fと後端6aの中央位置Xmにおいてフィン6Aの直径を前記基準直径Dsの2.0倍とし、前記フィン6Aの最後端位置Xeにおいて直径を前記基準直径Dsの1.5倍として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープロペラを使用する船舶の推進装置とそれを備えた船舶に関し、更に詳細には、スクリュープロペラのボスに取り付けるボスキャップにフィンを設けて、スクリュープロペラの推進性能を向上させる船舶の推進装置とそれを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の多くはその推進器としてスクリュープロペラを使用しており、その推進器効率等のプロペラ特性を向上することは、燃費の向上に大きく貢献することになる。そのため、プロペラの翼数、翼の形状、展開面積、ピッチ角、スキュー角等、プロペラの翼に関する研究がなされてきており、様々な翼形状が開発されてきている。
【0003】
このプロペラ特性の向上のために、図15〜図18に示すような、プロペラボス2の近傍において、プロペラボスキャップ5の後流におけるハブ渦を減少させることによって推進器効率を高める整流フィン付ボスキャップ5が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この整流フィン付ボスキャップ5では、ボスキャップ5に取り付けるフィン6の個数(図15では4個)を各プロペラブレード(プロペラ翼)3の個数(図15では4個)と等しくする。また、図18に示すように、フィン6の角度αに関しては、プロペラブレード3の根部の幾何学的ピッチ角εに対して、(−20°≦α−ε≦+30°)の関係を有している。フィン6の長さ方向に関しては、フィン6の前縁はプロペラブレード3の根部の後縁とプロペラ前後方向に等しいか又はこの後縁よりも後方とする(b≧0)。また、隣接するプロペラブレード3の根部の隙間の位置に設ける(a>0)。更に、図16及び図17に示すように、フィン6のキャップ5本体の軸線からの最大直径(2r)はボス2のキャップ取付け端部2aの直径Dbaより大で、かつ、プロペラ直径(2R)の33%以下としている。
【0005】
この整流フィン付きボスキャップ5の作用効果としては、整流フィンはそれ自体では推力を発生せず、ボスキャップの後流におけるハブ渦の発生を減少する整流板の作用をし、この整流作用により、ボスキャップ後流のハブ渦が拡散されてプロペラ翼面上の渦による誘導抗力が減少し、その結果、トルクを増大させることなく、プロペラ特性(推進器効率)の大幅な向上がもたれされるとされている。
【0006】
また、この整流フィン等の、プロペラハブからの渦を消去するハブ渦消去装置を有する船舶のプロペラにおいて、ハブ渦消却装置がその機能を十分に出し切るようにしてプロペラのトータル的な効率を高め、併せて強度面でも有利性を得ることを目的として、プロペラにおける翼根部のピッチ若しくはキャンバーを、プロペラの中間部のピッチ若しくはキャンバーに比べて大きくしたハブ渦消去装置を有する船舶のプロペラが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、フィンをボスキャップに設けずに、プロペラボスのスクリュープロペラのブレードの下流で、ボスキャップを除くボス部の側周面に、ブレードと同数の複数枚の整流フィンを設けたフィン付きプロペラボスが提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0008】
一方、整流フィン付ボスキャップ5を用いる船舶の推進装置のフィンの形状によっては更に推進器効率の向上を図ることができるのではないかと、本発明者らは考えて、様々な発想を基に工夫したフィンの形状を使用した水槽実験を行い、推進器効率を更に向上できる、次のようなスクリュープロペラを使用する船舶の推進装置とそれを備えた船舶に到達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7−121716号公報
【特許文献2】特許第3491890号公報
【特許文献3】実開平5−7599号公報
【特許文献4】実公平7−34795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フィン付きのプロペラボスキャップを使用したスクリュープロペラで形成される船舶の推進装置及びそれを備えた船舶において、従来技術のフィン形状のフィン付きのプロペラボスキャップを使用した船舶の推進装置とそれを備えた船舶よりも、工作性を高め、しかも、軽量化された船舶の推進装置とそれを備えた船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための船舶の推進装置は、スクリュープロペラのプロペラボスの後側に取り付けるプロペラボスキャップに、フィンを設けると共に、このフィンをプロペラ翼の間の後方に配置した船舶の推進装置において、前記プロペラボスキャップの前端部直径を基準直径として、前記フィンの後半部分の形状を、前記フィンの根部の前端と後端の中央位置において直径を前記基準直径の2.0倍とし、より好ましくは1.8倍とし、プロペラ回転中心を中心とする円と、前記フィンの最後端位置において直径を前記基準直径の1.5倍とし、より好ましくは1.3倍とし、プロペラ回転中心を中心とする円とを底部とする円錐台の内部に納まるように形成される。
【0012】
なお、この中央位置においてとは、この中央位置を含み、かつ、フィンの根部の前端と根部の後端を結ぶ線分に垂直なフィンの平面内においてという意味である。また、最後端位置においてとは、この最後端位置を含み、かつ、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと根部の後端6aを結ぶ線分に垂直なフィンの平面内においてという意味である。
【0013】
あるいは、上記の目的を達成するための船舶の推進装置は、上記の船舶の推進装置において、前記プロペラボスキャップに前記フィンを設ける替りに、スクリュープロペラのプロペラボスのプロペラ翼の後方部分に前記フィンを設けると共に、前記基準直径を前記プロペラボスにおけるプロペラ翼の後端の根部の直径として形成される。
【0014】
また、上記の船舶の推進装置において、前記フィンの前半部分の形状を、前記フィンの根部の前端から最前端までの根部の前端と後端を結ぶ方向の距離を前記基準直径の0.0倍〜0.3倍とし、前記フィンの最も外側部分を通過する円の直径を前記基準直径の1.0倍〜2.5倍とし、より好ましくは1.0倍〜2.3倍とし、前記フィンの前記中央位置で、前記フィンの最も外側部分を通過する円の直径を前記基準直径の1.0倍〜2.0倍として、より好ましくは1.0倍〜1.8倍として形成される。
【0015】
従来技術のフィンはその前半部分と後半部分とは中央に対して略対称な形状で形成されているが、プロペラ翼より後方では流れは急速に縮流しているため、上記のような、フィンの後半部分においては、フィンの後縁側をカットした形状の方が、プロペラ後方の縮流に対するフィン効果を維持しながら、フィンの抵抗が少なくなるので、従来技術のフィン形状よりも、工作が容易で製造コストが低減でき、また、軽量化できると共に、推進器効率の向上に効果があることが水槽実験などから分かったので、この形状とする。更に、数値流体力学計算(CFD(Computational Fluid Dynamics)計算)により、フィン表面の流れを解析した結果、フィンの外周後縁側は抵抗になっており、この部分をカットすると推進器効率が向上することが分かった。
【0016】
また、上記の目的を達成するための船舶は、上記の船舶の推進装置を備えて構成される。これにより、従来技術のフィン付きのフィン形状を使用した船舶推進装置を備えた船舶よりも、工作性を高め、しかも、軽量化した船舶の推進装置を備えた船舶を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の船舶の推進装置によれば、フィン付きプロペラボスキャップを使用したスクリュープロペラで形成される推進装置において、フィンの形状を、後半部において後縁側をカットした形状とすることにより、プロペラ後方の縮流に対するフィン効果を維持しながら、フィンの抵抗を少なくして、推進器効率を増加すると共に、従来技術のフィンに比べて小さくなるので、フィンの工作が容易となり、また、小さくなった分軽量化できる。
【0018】
また、本発明の船舶の推進装置を備えた船舶によれば、推進器効率の高い船舶の推進装置を使用するので推進効率の向上を図ることができる。この推進効率が少しでも向上すると、運航の期間が十数年以上にも及び、多量の燃料を消費する船舶においては、非常に大きな燃料の節約となる。また、推進装置が僅かであるが軽量化されるので、その分推進軸及び推進軸の支持構造を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における船舶の推進装置の構成を示す船舶の後方から見た図である。
【図2】図1の船舶の推進装置の側面図である。
【図3】プロペラボスキャップの側面図である。
【図4】フィンの外形の範囲を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における船舶の推進装置のフィンの第1の形状を示す図である。
【図6】図5のプロペラボスキャップとフィンをプロペラ回転軸周りに回転させた場合のフィンの形状を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における船舶の推進装置のフィンの第2の形状を示す図である。
【図8】図7のプロペラボスキャップとフィンをプロペラ回転軸周りに回転させた場合のフィンの形状を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における船舶の推進装置のフィンの第3の形状を示す図である。
【図10】図9のプロペラボスキャップとフィンをプロペラ回転軸周りに回転させた場合のフィンの形状を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における船舶の推進装置のフィンの第4の形状を示す図である。
【図12】図11のプロペラボスキャップとフィンをプロペラ回転軸周りに回転させた場合のフィンの形状を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における船舶の推進装置のフィンの第5の形状を示す図である。
【図14】図13のプロペラボスキャップとフィンをプロペラ回転軸周りに回転させた場合のフィンの形状を示す図である。
【図15】従来技術における船舶の推進装置の構成を示す船舶に後方から見た図である。
【図16】図15の船舶の推進装置の側面図である。
【図17】従来技術におけるプロペラボスキャップの形状を示す側面図である。
【図18】従来技術におけるプロペラ翼とフィンの位置関係を示す側面図である。
【図19】フィンの取り付け角度を示す側面図である。
【図20】フィンのレーキ角度を示す後方から見た図19のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る船舶の推進装置とそれを備えた船舶の実施の形態について説明する。ここでは、プロペラ翼の後方に配置するフィンをプロペラボスキャップに配置した例で説明しているが、本発明は、フィンをプロペラボスのプロペラ翼の後方部分に設ける場合にも適用できる。このプロペラ翼の後方部分に設ける場合には、基準直径をプロペラボスにおけるプロペラ翼の後端の根部の直径とする。
【0021】
なお、図1〜図20は分かり易いように、プロペラボス、プロペラ翼、プロペラボスキャップ、フィン等の形状や寸法を変えて示しており、これらの形状や寸法は実際のものとは異なる。また、図3〜図14、図15〜図20では、見易くするためと、作図や説明の都合上で、見えて当然のプロペラ翼やフィンを省いて示してある。
【0022】
図1〜図14に示すように、本発明の実施の形態の船舶の推進装置1A、1B、1C、1D、1E(以下、1A〜1E)は、プロペラボス(プロペラハブ)2とこのプロペラボス2に装着されたプロペラ翼3と、プロペラボス2の後端に接続されたプロペラボスキャップ(プロペラハブキャップ)5Aと、このプロペラボスキャップ5Aに設けたフィン6A、6B、6C、6D、6E(以下、6A〜6E)とからなるスクリュープロペラで構成される。
【0023】
プロペラボスキャップ5Aはプロペラ回転軸Pcを回転軸とする回転体で形成し、このプロペラボスキャップ5Aの後端部5aを端面で形成する。この回転体は、回転の母線を滑らかな曲線又は直線で形成すると共に、後方に向かって先細りする形状で形成される。
【0024】
ここで、プロペラボスキャップ5Aの前端部直径Dcfを基準直径Dsとして、それと共に、このプロペラボスキャップ5Aの全長Lcを、好ましくは基準直径Dsの0.28倍〜0.76倍とし、このプロペラボスキャップ5Aの後端部5aの直径Dcaを、好ましくは基準直径Dsの0.35倍〜0.95倍とする。なお、この前端部5fの直径Dcfは、プロペラボスキャップ5Aのフランジ径に相当する。
【0025】
図3に示すように、プロペラボスキャップ5Aの外周面5bを形成する回転体の母線を直線とする場合には、プロペラボスキャップ5Aの形状は円錐台となり、非常に製造し易くなる。また、図示しないが、母線を滑らかな曲線とする場合でも、前方から後方に向かって滑らかに先細りする形状とし、好ましくは、プロペラボスキャップ5Aの後端部5aの形状をプロペラ回転軸Pcに垂直な断面において、円錐台の形状からの偏差をプロペラボスキャップ5Aの全長Lcの20%以内とする。
【0026】
また、プロペラボスキャップ5Aの前端部5fの端面は、プロペラボス2の後端面2aに接合する関係から平面形状に形成される。一方、プロペラボスキャップ5Aの後端部5aの端面は、図3に示すように、工作上の観点からが平面で形成することが好ましいが、平面に近い円錐又は回転体等で形成してもよい。この場合でも、後端部5aの形状を周縁部と中心部との前後方向の距離を、プロペラボスキャップ5Aの全長Lcの20%の範囲内に収めるように構成する。
【0027】
フィン6A〜6Eは、スクリュープロペラ1A〜1Eのプロペラボス2の後側に取り付けるプロペラボスキャップ5Aに設けられると共に、このフィン6A〜6Eはプロペラ翼3の間の後方に配置される。つまり、プロペラ軸Pcの後方向に見たときに、フィン6A〜6Eの根部の前端6fは、プロペラ翼3の根部の後端同士の間に配置される。また、側面から見たときには、フィン6A〜6Eの根部の前端6fは、プロペラ翼3の根部の後端より後方に配置される。このフィン6A〜6Eは、正負のキャンバーを有して形成してもよいが、工作上の簡便性と製作コストの削減の面からは、平板形状が適している。また、このフィン6A〜6Eは、正負のレーキ角をもって取り付けられても良い。
【0028】
そして、本発明においては、船体の側面から見た図4と図5、及び、プロペラボスキャップ5Aとフィン6A〜6Eをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の図6に示すように、このフィン6A〜6Eの形状を、以下のようにする。なお、図4中に、実施の形態のフィン6A〜6Eとの比較のために従来技術のフィン6の略前後対称の形状を細線で示してある。極大雑把に言えば、図4に示すフィン6A等のように、従来技術のフィン6の後半分のフィン面積(斜線部分)を減少している。
【0029】
フィン6A〜6Eの前半部分の形状に関しては、図6〜図14に示すように、フィン6A〜6Eの長さ方向、即ち、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと後端6aを結ぶ線分の方向に関しては、フィン6A〜6Eの根部の前端6fからフィン6A〜6Eの最前端までの距離Lfを基準直径Ds(=Dcf)の0.0倍〜0.3倍とする。つまり、この距離Lfの最大値Lfmaxを0.3×Dsとする。
【0030】
また、フィン6A〜6Eの高さ方向(プロペラ回転軸Pcに垂直な方向)に関しては、図6に示すように、フィン6A〜6Eの最も外側部分を通過する第1円C1の直径D1を基準直径Dsの1.0倍〜2.5倍とし、より好ましくは1.0倍〜2.3倍とし、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと後端6aの中央位置Xmにおいて、フィン6A〜6Eの最も外側部分を通過する第2円C2の直径D2を基準直径Dsの1.0倍〜2.0倍、より好ましくは1.0倍〜1.8倍とする。
【0031】
また、フィン6A〜6Eの後半部分の形状に関しては、図5及び図6に示すように、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと根部の後端6aの中央位置Xmにおいて、直径D3を基準直径Dsの2.0倍、より好ましくは1.8倍とする第3円C3と、フィン6A〜6Eの最後端位置Xeにおいて、直径D4を基準直径Dsの1.5倍、より好ましくは1.3倍とする第4円C4と、これらの第3円C3と第4円C4を底部とする円錐台の内部に納まるように形成する。
【0032】
なお、この中央位置Xmにおいてとは、この中央位置Xmを含み、かつ、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと根部の後端6aを結ぶ線分に垂直なフィンの平面内においてという意味である。また、最後端位置Xeにおいてとは、この最後端位置Xeを含み、かつ、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと根部の後端6aを結ぶ線分に垂直なフィンの平面内においてという意味である。
【0033】
フィン6A〜6Eの長さに関しては、フィン6A〜6Eの根部の前端6fと後端6aがプロペラボスキャップ5Aに配置される必要があるので、プロペラボスキャップ5Aの回転中心線に対するフィン6A〜6Eの取り付け角度との関係から、おのずと制限を受ける。例えば、フィン6A〜6Eの前縁はプロペラ翼3の根部の後縁とプロペラ2の前後方向に等しいか又はこの後縁よりも後方とする。
【0034】
また、図18に示すように、フィン6A〜6Eの取り付けの角度αに関しては、従来技術と同様に、プロペラ翼3の根部の幾何学的ピッチ角εに対して、(−20°≦α−ε≦+30°)の関係を有して取り付ける。また、隣接するプロペラ翼3の根部の隙間の位置に設ける。フィンの取り付け角度として、従来技術のフィン付きのプロペラボスキャップ5と同様に、図19と図20に示すようなレーキ角γを付けても良い。図20は、フィン6A〜6Eのレーキ角γが0で取り付けられた場合と正の角度(+γ)あるいは負のレーキ角(−γ)で取り付けられた場合を示したものである。
【0035】
上記の限定を受けたこのフィン6A〜6Eの形状範囲は、フィン6A〜6Eの後半部分が、図5〜図14に示すような斜線部に収まる形状となる。
【0036】
図5及び図6に示すフィン6Aは、最前端の突出量Lfがゼロよりも大きく、前端の位置Xsが根部の前端6fよりも少し前に出ており、また、最後端の位置Xeが根部の後端6aと同じであるという特徴を有している。図5はフィン6Aを船体の側面方向から見た模式的な図であり、図6はプロペラボスキャップ5Aとフィン6Aをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の模式的な横投影図を示す。線Lxmはフィン6Aの根部の前端6fと後端6aの中央位置Xmで、根部の線に垂直なフィンの平面内の線を示す。
【0037】
図7及び図8に示すフィン6Bは、最外側部分が根部の前端6fよりも相当前に出ており、また、最後端の位置Xeが根部の後端6aと同じになっているという特徴を有している。図7はフィン6Bを船体の側面方向から見た模式的な図であり、図8はプロペラボスキャップ5Aとフィン6Bをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の模式的な横投影図を示す。
【0038】
図9及び図10に示すフィン6Cは、最外側部分が根部の前端6fよりも少し前に出ており、また、最後端の位置Xeが根部の後端6aよりも後ろ側になっているという特徴を有している。図9はフィン6Cを船体の側面方向から見た模式的な図であり、図10はプロペラボスキャップ5Aとフィン6Cをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の模式的な横投影図を示す。
【0039】
図11及び図12に示すフィン6Dは、最前端の突出量Lfがゼロで、前端の位置Xsが根部の前端6fと同じ位置になっており、また、最後端の位置Xeが根部の後端6aよりも後ろ側になっているという特徴を有している。図11はフィン6Dを船体の側面方向から見た模式的な図であり、図12はプロペラボスキャップ5Aとフィン6Dをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の模式的な横投影図を示す。
【0040】
図13及び図14に示すフィン6Eは、最前端の突出量Lfがゼロで、前端の位置Xsが根部の前端6fと同じ位置になっており、また、最後端の突出量Leがゼロで、後端の位置Xeが根部の後端6aと同じになっているという特徴を有している。図13はフィン6Eを船体の側面方向から見た模式的な図であり、図14はプロペラボスキャップ5Aとフィン6Eをプロペラ回転軸周りに回転させた場合の模式的な横投影図を示す。
【0041】
また、フィン6A〜6Eの厚み方向に関しては、平板で均一厚みとする方が工作上容易となるが、少しでも性能向上を目指す場合には、翼形状にする。また、平板を曲げてキャンバーを設けたり、翼形状でキャンバーを設けたりすることもでき、このキャンバーを設ける場合には、プロペラボスキャップ5の形状との関係を考慮してフィン6A〜6Eの根部において、プロペラ翼3のキャンバーと異なる方向にキャンバーを設けて、プロペラ翼3が発生するトルクQpと逆方向のトルクQfが発生するようにすることが好ましい。
【0042】
上記の船舶の推進装置1A〜1Eによれば、フィン6A〜6Eの形状を、後半部において後縁側をカットした形状とすることにより、プロペラ後方の縮流に対するフィン効果を維持しながら、フィン6A〜6Eの抵抗を少なくして、推進器効率を増加すると共に、従来技術のフィンに比べて小さくなるので、フィン6A〜6Eの工作が容易となり、また、小さくなった分軽量化できる。
【0043】
また、本発明は、フィンをプロペラボスのプロペラ翼の後方部分に設ける場合にも適用できる。このプロペラ翼の後方部分に設ける場合には、基準直径をプロペラボスにおけるプロペラ翼の後端の根部の直径とする。フィン6A〜6Eをボスキャップ5に取り付ける場合は、キャップはプロペラの後方に設置されるという物理的制限から、フィン6の前縁はプロペラブレード3の根部の後縁とプロペラ前後方向に等しいか又はこの後縁より後方とされる(b≧0)が、フィン6をプロペラボス2のプロペラ翼3の後方に設ける場合は、フィン6の前端はプロペラ翼間に配置されても良い。この場合は、bはマイナスでも良く、好ましくは−0.5×Dcf<b<0であれば良い。このようにすることにより、プロペラボスの長さを少しでも短くして軽量化を図ることができる。
【0044】
本発明の船舶の推進装置を備えた船舶は、上記の船舶の推進装置1A〜1Eを備えて構成される。この船舶によれば、上記の船舶の推進装置1A〜1Eを使用するので推進効率の向上を図ることができる。また、推進装置1A〜1Eが僅かであるが軽量化されるので、その分推進軸及び推進軸の支持構造を軽量化できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の船舶の推進装置は、フィンの形状を、後半部において後縁側をカットした形状とすることにより、プロペラ後方の縮流に対するフィン効果を維持しながら、フィンの抵抗を少なくして、推進器効率を増加すると共に、従来技術のフィンに比べて小さくなるので、フィンの工作が容易となり、また、小さくなった分軽量化できるため、船舶の推進装置として利用できる。
【0046】
また、本発明の船舶の推進装置を備えた船舶は、推進効率の向上を図ることができて燃費の節約ができると共に、推進装置の軽量化による推進軸及び推進軸の支持構造の軽量化ができるので、数多くの船舶として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1、1A、1B、1C、1D、1E 船舶の推進器
2 プロペラボス
2a プロペラボスの後端面
3 プロペラ翼
4 プロペラ回転軸
5、5A プロペラボスキャップ
5a プロペラボスキャップの後端部
5b プロペラボスキャップの外周面
5f プロペラボスキャップの前端部
6、6A、6B、6C、6D、6E フィン
6a フィンの根部の後端
6f フィンの根部の前端
a フィン前端のプロペラブレードとの回転方向距離
b プロペラブレード後端とフィン前端のプロペラ前後方向距離
C1 第1円
C2 第2円
C3 第3円
C4 第4円
Dca プロペラボスキャップの後端部の直径
Dcf プロペラボスキャップの前端部の直径
Dp プロペラ直径
Ds 基準直径
D1 第1円の直径
D2 第2円の直径
D3 第3円の直径
D4 第4円の直径
Lc プロペラボスキャップの長さ
Le フィンの外形におけるフィンの根部の後端から最後端までの水平距離
Lf フィンの外形におけるフィンの根部の前端から最前端までの水平距離
Lfmax Lfの最大値
Lxm フィン根部の前端と後端の中央位置で根部の線に垂直なフィンの平面内の線
Xs フィンの最前端の位置
Xm フィンの根部の前端と後端の中央位置
Xe フィンの最後端の位置
α フィンの取り付け角度
ε プロペラブレードの根部の幾何学的ピッチ角
γ フィンの取り付けレーキ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュープロペラのプロペラボスの後側に取り付けるプロペラボスキャップに、フィンを設けると共に、このフィンをプロペラ翼の間の後方に配置した船舶の推進装置において、前記プロペラボスキャップの前端部直径を基準直径として、
前記フィンの後半部分の形状を、前記フィンの根部の前端と後端の中央位置において直径を前記基準直径の2.0倍とし、プロペラ回転中心を中心とする円と、前記フィンの最後端位置において直径を前記基準直径の1.5倍とし、プロペラ回転中心を中心とする円とを底部とする円錐台の内部に納まるように形成したことを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項2】
前記プロペラボスキャップに前記フィンを設ける替りに、スクリュープロペラのプロペラボスのプロペラ翼の後方部分に前記フィンを設けると共に、前記基準直径を前記プロペラボスにおけるプロペラ翼の後端の根部の直径としたことを特徴とする請求項1記載の船舶の推進装置。
【請求項3】
前記フィンの前半部分の形状を、
前記フィンの根部の前端から最前端までの根部の前端と後端を結ぶ方向の距離を前記基準直径の0.0倍〜0.3倍とし、
前記フィンの最も外側部分を通過する円の直径を前記基準直径の1.0倍〜2.5倍とし、
前記フィンの前記中央位置で、前記フィンの最も外側部分を通過する円の直径を前記基準直径の1.0倍〜2.0倍とすることを特徴とする請求項1記載の船舶の推進装置。
【請求項4】
請求項1、2、又は、3記載の船舶の推進装置を備えたことを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−234861(P2010−234861A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82713(P2009−82713)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000144049)株式会社三井造船昭島研究所 (27)
【出願人】(000205535)株式会社 商船三井 (21)
【出願人】(502055377)商船三井テクノトレード株式会社 (5)