説明

船舶用インバータシステム

【課題】推進装置用電動機及び大容量の非推進装置用電動機を駆動する際に、インバータのトータル容量増加を抑制して小型船舶用インバータシステムを提供する。
【解決手段】容量が(A/n)kWの複数台のインバータ12及びBkW以上の複数インバータ13と、複数のインバータで駆動される多巻線構成の推進装置用電動機2と、BkW以上のインバータにより駆動される単巻構成の非推進装置用電動機3と、切換信号を出力する切換装置31と、BkW以上のインバータは切換信号に基づきインバータの定格設定を切換えることができる構成であって、定格航行する場合、BkW以上のインバータの定格設定をA/nkWに切換えて複数のインバータにより推進装置用電動機を駆動し、電動機を同時使用する非定格航行の場合、BkW以上のインバータを非推進装置用電動機に接続し、インバータの定格設定をBkWへ切換えて容量の異なる電動機を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の推進装置及び搭載機器用電動機の駆動用インバータに用いる船舶用インバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶において、インバータにより駆動される電動機には推進装置用電動機、あるいはバウスラスタ用やスタンスラスタ用電動機などのスラスタ用電動機、およびカーゴポンプ用電動機等がある(特許文献1,特許文献2参照)。推進装置用電動機やスラスタ用電動機は、一般的に数百kW以上の容量のものが用いられているため1台のインバータで駆動すると、容量が大きく、従って外形寸法の大きなインバータが必要となる。特に、船舶においてはインバータを収納するキュービクルの高さに制限がある場合が多く、インバータの高さ寸法が大きいとインバータシステムの設置の妨げとなる。また、電動機の容量がインバータ1台当りの容量を超える場合には、インバータシステムを構築することができない、という問題がある。
【0003】
そこで、大容量の電動機を駆動するインバータシステムでは、固定子巻線が分割されたいわゆる多巻線構成の1台の電動機と、複数台のインバータとから構成されるインバータシステムが採用されている。このようなインバータシステムによりインバータ1台当りの容量を抑制するようにしている。しかし、複数の電動機が用いられている場合は専用のインバータが必要とされてきた。
【0004】
このような要求に応えるために、従来の船舶では推進装置用電動機と非推進装置用電動機を駆動するインバータの出力を適宜切換える方法が用いられてきた。しかしながら、インバータの出力を切換えて種々の電動機に用いる方法では、インバータの容量は切換駆動する電動機中最大容量のもの以上でなければならず、かつ多巻線構成の電動機を駆動する複数台のインバータは等しい容量のものでなければならないので、例えばn巻線の推進装置用電動機(AkW)を駆動するインバータと非推進装置用電動機(BkW)を兼用する場合(但し、B>A/n)には、インバータ1台当りの容量はBkW以上の容量でなければならないこととなる。
【0005】
図3は特許文献1に示す従来の船舶用インバータシステムの概略構成図である。このシステムでは電源となる船内母線201と、遮断器301と、多巻線構成(n巻線)の推進装置用電動機2(AkW)を駆動するn台(図では2台)のインバータ11(BkW)と、インバータの出力先を切換えて駆動する非推進装置用電動機3(BkW)とから構成されている。非推進装置用電動機3(BkW)の容量は推進装置用電動機2(AkW)の容量をその巻線で除した容量(A/n)よりも大きく、切換スイッチ21,22によりインバータ11の出力先を切換えることで推進装置用電動機2及び非推進装置用電動機3を切換える構成としている。しかし、このような船舶用インバータシステムの構成では、BkW>A/nkWであるので、インバータ1台当りの容量はBkW以上でなければならない。このため、インバータのトータル容量が大きくなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3524592号
【特許文献2】特開平6−344992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に対処するためになされたもので、その目的は推進装置用電動機及び非推進装置用電動機を駆動する際にインバータの定格設定を切換えると同時に接続される電動機を切換えて、駆動するインバータを兼用することで、インバータのトータル容量を抑制した船舶用インバータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明は、船舶航行推進装置をインバータ駆動用電動機により駆動する船舶用インバータシステムにおいて、容量が(A/n)kW(nは推進装置用電動機の巻線数)の複数台の第1のインバータ群とBkW以上の第2のインバータとからなる複数のインバータと、前記第1及び第2のインバータで駆動される多巻線構成の推進装置用電動機(AkW)と、前記第2のインバータにより駆動される単巻構成の非推進装置用電動機(BkW)と、切換信号を出力する切換装置と、第2のインバータの出力は前記切換装置の切換信号に基づいて切換えることのできる切換スイッチを介して各々独立して推進装置用電動機と非推進装置用電動機に接続され、前記第2のインバータは切換信号に基づきインバータの定格設定を切換えることができ、定格航行する場合、前記第2のインバータの接続先を推進装置用電動機へ切換えると共にインバータの定格設定をA/nkWに切換えて複数のインバータにより出力をA/nkW毎負担させることで推進装置用電動機を駆動し、航行中に多巻線構成の推進装置用電動機と非推進装置用電動機を同時使用する非定格航行の場合、前記切換スイッチを切換えて前記第2のインバータを非推進装置用電動機に接続すると共にインバータの定格設定をBkW(B>A/n)へ切換えて、容量の異なる電動機を駆動する際にインバータを兼用することで、インバータのトータル容量を抑制できることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の船舶用インバータシステムにおいて、航行中に多巻線構成の推進装置用電動機(AkW)と多巻線構成の非推進装置用電動機(CkW)を同時に使用する場合(但し、A/n<c/m mは非推進装置用電動機の巻線数)、請求項1記載の第2のインバータを複数台として、容量の異なる電動機を駆動する際に複数台のインバータを兼用することで、インバータのトータル容量を抑制できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の船舶用インバータシステムによれば、推進電動機駆動用インバータを切換えて大容量のスラスタ用電動機やカーゴポンプ用電動機等の非推進装置用電動機を駆動することができると共にインバータのトータル容量の増加を抑制し、かつ収納するキュービクルの外形寸法を小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態である船舶用インバータシステムの構成図である。
図1に示すように、本実施形態の船舶用インバータシステムが図3の従来の船舶用インバータシステムと相違する構成は、一方のインバータ12の容量を(A/nkW,nは巻線数),他方のインバータ13の容量を(BkW)とし、切換スイッチ21,22およびインバータ13の設定を切換える切換装置31を設けた点であり、その他の構成は同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0011】
図1において、推進装置用電動機2(AkW)を駆動する場合は、切換装置31から出力される切換信号に基づき切換スイッチ21をON、切換スイッチ22をOFFに切換え、それと同時にインバータ13の定格設定をA/nkWに設定する。これにより、A/nkWであるインバータ12とA/nkWに設定されたインバータ13でA/nkW毎に出力を分担する。非推進装置用電動機3(BkW)を駆動する場合は、切換装置31から出力される切換信号に基づき切換スイッチ21をOFF、切換スイッチ22をONに切換え、それと同時にインバータ13の定格設定をBkWに設定する。これにより、推進装置用電動機2はA/nkWのインバータ12で駆動し、非推進装置用電動機3はBkWに設定されたインバータ13により駆動する。したがって、インバータ13を推進装置用電動機2と非推進装置用電動機3の駆動用として兼用することができ、兼用するインバータ3のみをBkWとすることでシステム構築ができるため、インバータのトータル容量を抑制することができる。
【0012】
以上説明したように、本実施形態によると、切換信号に基づき接続を切換えると同時にインバータの定格設定を切換えてインバータを兼用することで推進装置用電動機及び非推進装置用電動機を駆動することができるので、異なる容量の電動機を駆動する場合であっても兼用するインバータのみを駆動する電動機の最大容量とすることで構成できるため、インバータの容量を抑制したシステム構築が可能となる。
【0013】
図2は本発明の第2実施形態である船舶用インバータシステムの構成図である。
図2に示すように、本実施形態の船舶用インバータシステムが図1の第1実施形態の船舶用インバータシステムと相違する構成は、多巻線構成(mは巻線数)の非推進装置用電動機(CkW)4と、第1のインバータ14の容量を(A/nkW,nは巻線数),第2,第3のインバータ15,16の容量を(C/mkW)とし、切換スイッチ21,22、23,24およびインバータ15,16を切換える切換装置31を設けた点であり、その他の構成は同一であるので、同一構成部分には同一符号を付して説明する。
【0014】
図2において、多巻線構成の推進装置用電動機2(AkW)と多巻線構成の非推進装置用電動機4(CkW)を同時に駆動する場合は、切換スイッチ21,23をOFFに、22,24をONに切換え、それと同時にインバータ15及び16の定格設定をそれぞれC/mkWへ設定する。これにより、A/nkWのインバータ14で推進装置用電動機2を駆動しながら、C/mkWのインバータ15及び16で非推進装置用電動機4を駆動することができ、兼用するインバータ15及び16のみをC/mkWとすることでシステム構築できるため複数台のインバータを兼用でき、インバータのトータル容量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の船舶用インバータシステムの構成図。
【図2】本発明の第2実施形態の船舶用インバータシステムの構成図。
【図3】従来の船舶用インバータシステムの概略構成図。
【符号の説明】
【0016】
2…推進装置用電動機[多巻線構成](AkW;n巻線)、3…非推進装置用電動機[単巻線構成](BkW)、4…非推進装置用電動機[多巻線構成](CkW;m巻線)、11,12,13,14,15,16…インバータ、21,22,23,24…切換スイッチ、31…切換装置、201…船内母線、301…遮断器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶航行推進装置をインバータ駆動用電動機により駆動する船舶用インバータシステムにおいて、容量が(A/n)kW(nは推進装置用電動機の巻線数)の複数台の第1のインバータ群とBkW以上の第2のインバータとからなる複数のインバータと、前記第1及び第2のインバータで駆動される多巻線構成の推進装置用電動機(AkW)と、前記第2のインバータにより駆動される単巻構成の非推進装置用電動機(BkW)と、切換信号を出力する切換装置と、第2のインバータの出力は前記切換装置の切換信号に基づいて切換えることのできる切換スイッチを介して各々独立して推進装置用電動機と非推進装置用電動機に接続され、前記第2のインバータは切換信号に基づきインバータの定格設定を切換えることができ、定格航行する場合、前記第2のインバータの接続先を推進装置用電動機へ切換えると共にインバータの定格設定をA/nkWに切換えて複数のインバータにより出力をA/nkW毎負担させることで推進装置用電動機を駆動し、航行中に多巻線構成の推進装置用電動機と非推進装置用電動機を同時使用する非定格航行の場合、前記切換スイッチを切換えて前記第2のインバータを非推進装置用電動機に接続すると共にインバータの定格設定をBkW(B>A/n)へ切換えて、容量の異なる電動機を駆動する際にインバータを兼用することで、インバータのトータル容量を抑制できることを特徴とする船舶用インバータシステム。
【請求項2】
請求項1記載の船舶用インバータシステムにおいて、航行中に多巻線構成の推進装置用電動機(AkW)と多巻線構成の非推進装置用電動機(CkW)を同時に使用する場合(但し、A/n<c/m mは非推進装置用電動機の巻線数)、請求項1記載の第2のインバータを複数台として、容量の異なる電動機を駆動する際に複数台のインバータを兼用することで、インバータのトータル容量を抑制できることを特徴とする船舶用インバータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−5493(P2009−5493A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163873(P2007−163873)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】