船舶
【課題】 海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保するとともに、燃費の向上を図ることができる船舶を提供する。
【解決手段】 船体3を推進させる推進力を発生するプロペラ9と、プロペラ9を回転駆動させる駆動機関5と、加勢推進力を発生する補助推進部11と、を備え、駆動機関5およびプロペラ9は、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生し、補助推進部11は、所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生することを特徴とする。
【解決手段】 船体3を推進させる推進力を発生するプロペラ9と、プロペラ9を回転駆動させる駆動機関5と、加勢推進力を発生する補助推進部11と、を備え、駆動機関5およびプロペラ9は、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生し、補助推進部11は、所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関し、特にシーマージンを大きく取る必要のある船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の推進装置においては、駆動機関によりプロペラを回転駆動させるものが知られている。この駆動機関は、定期的なメンテナンスを行っていれば、ほとんど故障することはなく、プロペラを補助的に駆動する補助駆動機関や補助推進装置を設ける必要性はなかった。
しかしながら、近年における船舶の低燃費化、エネルギ効率の向上の要求の高まりを受けて、プロペラを主駆動機関だけでなく、電動機を補助的に用いて回転駆動させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された技術は、気象・海象条件の厳しい状態においてのみ必要な余裕出力を補助電動機などに受け持たせることにより、主駆動機関の効率向上を狙ったものと考えられる。
【特許文献1】特開2004−359112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
船舶の駆動機関として良く使われるディーゼル機関の出力の定義には、以下の3つの出力がある。つまり、最大出力(Maximum Rating、以下MRと表記する。)と、最大連続出力(Maximum Continuous Rating、以下MCRと表記する。)と、常用出力(Normal Rating、以下NRと表記する。)と、である。ここで、MRはディーゼル機関において使用できる最大出力(ただし、短時間に限定される。)、MCRは継続的に使用できる最大出力、NRは通常使用される出力と定義される。なお、MCRとNRは同じである場合が多いので、以下ではMRとNRを使って説明する。NR出力は、一般的にMR出力の85%程度に設定されるため、NR出力がMR出力の85%程度に設定されているとして以下の説明を行う。
【0004】
一般に、船舶の推進装置において主駆動機関の選定は、荒天時における推進性能の悪化を考慮した上で行われている。つまり、平水中を所定速力で航行するために必要な推進馬力に、荒天などの海象悪化によって増加する推進馬力をシーマージン(余裕馬力)として上積みした値が、主駆動機関の常用出力(NR)となるように主駆動機関は選定または設計される。
特に定時運航性が強く求められる船舶や外洋を航行する船舶、例えばフェリーやコンテナ船などにおいては、シーマージンが高く設定される傾向にある。太平洋航路に就航するコンテナ船などを例に挙げると、平水中における所要推進馬力に対して40%以上のシーマージンを積んでいる場合さえある。このようなコンテナ船が、穏やかな海象時に定められたスケジュールに沿って航海する場合には、主駆動機関に求められる出力は、最大出力(MR)の60%程度になる。
主駆動機関は、著しい低出力領域で運転されると、主駆動機関の燃費が最も良くなる設計点(Normal Output Rating:以下、NORと表記する。)における運転と比較して、燃費が悪化する。
一方、主プロペラは、船の設計点において最も推進効率が高くなるように設計されるのが一般的であるが、主駆動機関の最大出力(MR)での運転に耐えるように強度設計がなされなければならないので、最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離が大きくなると、主プロペラの推進効率は低下することとなる。
そのため、上述のようにシーマージンが大きく設定された場合には、主駆動機関の燃費低下と主プロペラの推進効率低下とにより、効率の大幅な悪化が避けられない。
【0005】
一方、シーマージンを過小評価した場合には、海象が荒れてくると船舶が所定速力を出すために必要な推進馬力が、主駆動機関の常用出力(NR)を超えることがある。更には、必要な推進馬力が最大出力(MR)さえ超えることがある。主駆動機関においては、常用出力(NR)以上の出力を継続的に使用することはできないため、船舶は所定速力を確保できず、運航スケジュールが守れなくなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、特に、運航の性格上シーマージンを大きくする必要のある船舶について、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保するとともに、燃費の向上を図ることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の船舶は、船体を推進させる推進力を発生するプロペラと、該プロペラを回転駆動させる駆動機関と、加勢推進力を発生する補助推進部と、を備えた船舶において、前記駆動機関および前記プロペラは、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生させ、前記補助推進部は、上記所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、補助推進部を備えることにより、駆動機関の燃費向上を図ることができるとともに、プロペラによる推進効率の向上を図ることができ、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
補助推進部を備えることにより、駆動機関に求められる常用主力(NR)に含まれていたシーマージンの大部分を補助推進部に分担させることができるので、補助推進部を備えていない場合と比較して、駆動機関の常用出力(NR)を低く抑えることができる。そのため、船舶において使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、駆動機関の燃費が最も良くなる状態(NRに近いのが普通である)に近づけることができる。一方、プロペラは、上述のように補助推進部を備えていない場合と比較して、駆動機関の最大出力(MR)が低く抑えられているため、作動範囲が狭くなって過度の強度要求を満たす必要がなくなる。そのため、所定速力を維持する際に、推進効率が高いプロペラとすることができる。つまり、プロペラにおける最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離を小さくできるため、所定速力を維持する際に、プロペラの推進効率が低下することがなく、高い推進効率を得ることができる。
補助推進部を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持するために適切なシーマージンを確保することができる。そのため、船舶として使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、駆動機関の燃費が最も良くなる状態に近づけることができ、燃費の向上が図られる。
【0009】
本発明において、前記駆動機関の常用出力は、該駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して60%以上80%以下となるよう設定され、前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して20%以上40%以下となるよう設定されていることが望ましい。
さらに好ましくは、前記駆動機関の常用出力は、該駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して65%以上75%以下となるよう設定され、前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して25%以上35%以下となるよう設定されていることが望ましい。また、前記駆動機関の出力が、前記駆動機関の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できる場合は、前記補助推進部を事実上使用しない状態に置き、前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、前記補助推進部を加勢推進力として使用することが望ましい。
【0010】
上述のように、駆動機関の常用出力を低く抑えるとともに当該常用出力付近で最大効率を得るプロペラを用いることにより、補助推進部を用いない場合と比較して、駆動機関、プロペラともに効率の良い状態で作動させることができるので、燃費の向上を図ることができる。また、不足する推進力を補助推進部が発生する加勢推進力で補うことにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
【0011】
上記発明においては、前記補助推進部は、断面が翼形状であるストラットと、該ストラットに設けられ、内部に駆動部を有するポッドと、該ポッドに設けられ、前記駆動部により回転駆動されるポッドプロペラを備えているポッド型推進器であることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、 ポッド型推進器が、ポッド内に設けられた駆動部によりポッドプロペラを回転駆動するため、ポッドプロペラにより加勢推進力を発生させることができる。一方、ポッド型推進器に備えられたストラットは、舵としての機能を有するため、ポッド型推進器を舵として用いることができる。
なお、ポッド型推進器に代えて、アジマス型推進器を用いてもよい。アジマス型推進器は、船体内に駆動部を設けることがポッド型推進器と主に異なり、船体内の駆動部とポッドプロペラとは駆動軸を介して出力が伝達される構成となっている。以下、補助推進器がポッド型推進器の場合について説明するが、補助推進器がアジマス型推進器であってもよい。
【0013】
上記発明においては、前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置されていることが望ましい。
【0014】
本発明によれば、ポッド型推進器がプロペラに対して船尾側に配置されているため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させる場合に、ポッドプロペラの回転方向を前記プロペラの回転方向と逆にすることで、プロペラが発生する回転流を最小化できる。そのため、回転流により低下していたプロペラによる推進効率を向上させて船舶の燃費向上を図ることができる。
【0015】
上記発明においては、前記ポッド型推進器が、前記船体中または前記船体上に格納可能に設けられていることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、ポッド型推進器が、船体中または船体上に格納可能に設けられているため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させない場合には、ポッド型推進器を船体中または船体上に引き上げて格納することにより、ポッド型推進器に働く抵抗を減らすことができる。抵抗を減らすことにより、船舶が所定速力を維持するのに必要な推進力を減らすことができる。
一方、加勢推進力を発生させる場合には、ポッド型推進器を船体中または船体上から降ろし、ポッドプロペラを回転駆動することで加勢推進力を発生させることができる。
【0017】
上記発明においては、前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、前記ポッドプロペラは、ピッチ角を変更できる可変ピッチプロペラであることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、ポッドプロペラが可変ピッチプロペラであるため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させていない場合に、ポッドプロペラのピッチ角を変更してフェザリング状態とすることにより、ポッドプロペラによる抵抗を最小化することができる。そのため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶の燃費悪化を低減することができる。
【0019】
上記発明においては、前記ポッド型推進器が前記プロペラの船尾側に配置され、前記駆動部内に電動機が備えられていることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、ポッド型推進器がプロペラの船尾側に配置され、駆動部内に電動機を備えられているため、ポッド型推進器推進器により加勢推進力を発生させていない場合に、プロペラが発生する回転流によりポッドプロペラを介して電動機を回転駆動させることにより、上記回転流の有するエネルギを電気として回収することができる。つまり、船舶の推進に寄与することなく捨てられていた回転流のエネルギを回収することにより、船舶全体として燃費向上を図ることができる。
【0021】
上記発明においては、前記補助推進部が前記船体の外板に設けられた水の吸込み口と、吸込んだ水を加圧するポンプと、前記船体に設けられ、加圧された水を所定方向へ噴出させる噴出し口と、を備えるジェット推進器であることが望ましい。
【0022】
本発明によれば、ジェット推進器が、吸込み口から吸込んだ水をポンプで加圧し、加圧された水を噴出し口から船体後方へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ジェット推進器は船体内に配置されるため、抵抗が少なく船舶の燃費低下を防止することができる。
なお、吸込み口は、船体の水面から露出しない外板に設けられていればよく、吸込み効率や吸込んだ水の流れる配管等を考慮して好適な場所に設置される。
また、噴出し口の水の噴出し方向を所定方向へ変更できる形式のものを用いることができる。例えば、ジェット推進器を船体の船首側に設けた場合にはバウスラスタとしても用いることができ、船尾側に設けた場合にはスターンスラスタとしても用いることができる。
また、本発明においては、前記補助推進部としてのジェット推進装置が噴き出す水の少なくとも一部を、船内から排出される水でまかなってもよい。船内から排出される水としては、例えば、駆動機関などの冷却水など、通常の運航において船内から排出される水を例示できる。これにより、ジェット推進装置を作動させる際に船外から取り入れられる水の量を減少できるので、水の吸込みに伴う船体抵抗の削減を図るとともに、吸込み口および配管などの設備削減が図れる。その結果、船舶全体として経済性の向上が期待できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の船舶によれば、シーマージンが大きい船舶に補助推進部を備えることにより、主駆動機関とプロペラの作動出力範囲を限定して効率低下の目立たない範囲で使用できるので、主駆動機関の燃費向上を図ることができるとともに、プロペラによる推進効率の向上を図ることができる。これにより、船舶全体としての燃費向上を図ることができるという効果を奏する。
補助推進部を備え、補助推進部が加勢推進力を発生することにより、適切なシーマージンを確保できるので、海象が変化しても所定速力を維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る船舶について図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
船舶1は、図1に示すように、船体3と、主駆動機関(駆動機関)5と、シャフト7と、主プロペラ(プロペラ)9と、ポッド型推進器(補助推進部)11とを備えている。
船体3には、内部に主駆動機関5が配置され、船尾に主プロペラ9およびポッド型推進器11が配置されている。主駆動機関5は、シャフト7を介して主プロペラ9を回転駆動させるものである。主駆動機関5としては、例えばディーゼルエンジンなどを用いることができる。主プロペラ9は、推進力を発生させて船舶1を前後進させるものである。主プロペラ9は、シャフト7を介して主駆動機関5と回転駆動力が伝達されるように接続されている。
ポッド型推進器11は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器11は、ケーシングであるポッド13と、ポッドプロペラ15と、ストラット17とを備えている。ポッド13内部には、ポッドプロペラ15を回転駆動する電動機(駆動部)19と、電動機19の回転駆動力をポッドプロペラ15に伝達するポッドシャフト(図示せず)が備えられている。ポッドプロペラ15は、ポッド13の電動機19により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものである。ポッドプロペラ15は、ポッド13の船首側(図1の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ15は、ポッド13の船尾側(図1の右側)に配置されていてもよいし、ポッド13の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。ストラット17は、ポッド13と船体3との間に配置され、ポッド13を支持するものである。また、ストラット17は、断面が翼形断面に形成されているとともに、船体3に対して回動可能に設けられている。船体3には、ポッド型推進器11全体を回動させる駆動機構(図示せず)が備えられている。したがって、ポッド型推進器11は、船舶1の舵としての機能を果たすこともできる。
【0025】
主駆動機関5の常用出力(NR1)は、主駆動機関5および電動機19の常用出力(NR(連続最大出力))の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の出力となるよう設定されている。一方、電動機19の常用出力(NR2)は、上記全体常用出力(連続最大出力)に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%となるよう設定されている。ここで、常用出力とは通常使用される出力であり、連続最大出力とは駆動機関などが継続的に使用できる最大出力である。なお、常用出力と連続最大出力は同じである場合が多く、駆動機関の常用出力は、最大出力の約80%から約90%まで(85%程度)に設定されていることが多い。また、ディーゼルエンジンなどの駆動機関においては、常用出力(連続最大出力)付近での運転時が最も効率よく運転されるように設計され、燃費が最も良くなる。なお、上記全体連続最大出力は、荒天などの外乱による速力低下を防止するため、通常航行時(平水中または穏やかな海象時に所定速力で航行する時)に対して、例えば、約40%程度の推進馬力をシーマージンとして上積みしたものとされる。なお、シーマージンは、船主の仕様によって約40%から約15%で変更される。
【0026】
次に、上記の構成からなる船舶1における作用について、図1および図2を用いて説明する。
通常航行時(平水中または穏やかな海象時に所定速力で航行する時)には、図1に示すように、船舶1は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器11は停止され、加勢推進力を発生していない。つまり、主駆動機関5により発生された回転駆動力は、シャフト7を介して、主プロペラ9に伝達される。主プロペラ9は回転駆動されることにより推進力を発生し、船舶1は主プロペラ9により発生された推進力により航行する。ここで、所定速力とは、船舶1の運航スケジュール等に基づいて定められるものであって、船舶1の用途などにより異なるものである。
この場合、主駆動機関5は、最大出力に対して最も効率の高いNR付近の出力で運転される。同時に、主プロペラ9も、最も推進効率の高い領域で使用することができる。
【0027】
図2は、図1の船舶における荒天時の状態を説明する模式図である。
荒天などの海象悪化時には、図2に示すように、船舶1は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器11を用いて航行する。つまり、主プロペラ9は主駆動機関5により回転され推進力を発生し、ポッド型推進器11は駆動装置19によりポッドプロペラ15を回転させて加勢推進力を発生させる。船舶1は、主プロペラ9による推進力とポッドプロペラ15による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
この場合、主駆動機関5は、通常航行時と同様にNR付近の出力で運転され、主プロペラ9も通常航行時と同様に、最も推進効率の高い領域で使用することができる。一方、ポッド型推進器11の駆動機関19とポッドプロペラ15は所要の推進力を発生させる出力レベルで使用されている。
【0028】
なお、主駆動機関5の出力が、主駆動機関5の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、主駆動機関5のみを用いて上記所定速力で航行できる場合は、ポッド型推進器11を停止(事実上使用しない状態に)させ、主駆動機関5のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、ポッド型推進器11を加勢推進力として使用することが望ましい。
【0029】
上記の構成によれば、ポッド型推進器11を備えることにより、主駆動機関5の燃費向上を図ることができるとともに、主プロペラ9による推進効率の向上を図ることができ、船舶1全体としての燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器11を備えることにより、主駆動機関5に求められる常用主力(NR)に含まれていたシーマージンの大部分をポッド型推進器11に分担させることができるので、ポッド型推進器11を備えていない場合と比較して、主駆動機関5の常用出力(NR)を低く抑えることができる。そのため、使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、主駆動機関5の燃費が最も良くなる状態(常用出力(NR)付近)に近づけることができる。一方、主プロペラ9は、上述のようにポッド型推進器11を備えていない場合と比較して、主駆動機関5の最大出力(MR)が低く抑えられているため、作動範囲が狭くなって過度の強度要求を満たす必要がなくなる。そのため、所定速力を維持する際に、推進効率が高い主プロペラ9とすることができる。つまり、主プロペラ9における最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離を小さくできるため、所定速力を維持する際に、推進効率が高い主プロペラ9を用いることができる。
ポッド型推進器11を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持するために適切なシーマージンを確保することができる。そのため、船舶1として使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、主駆動機関5の燃費が最も良くなる状態に近づけることができ、燃費の向上が図られる。
【0030】
ここで、具体的に、主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶と、本実施形態の船舶と、を比較して本実施形態における船舶の効果を説明する。
主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶の場合、主駆動機関は、通常航行時に必要な連続出力に対して、約40%のシーマージンを上積みされた出力を連続最大出力として出力できるように選定または設計される。一方、主プロペラは、上記主駆動機関の最大出力に対して最も推進効率が高くなるように選定または設計される。
この場合において、主駆動機関は、通常航行時には、最大出力に対して約60%の出力で運転され、本実施形態と比較して燃費の悪い領域で運転される。一方、主プロペラにおいても、最も推進効率が高い領域から離れた領域で使用されるため、本実施形態と比較して推進効率が悪い領域で使用されている。
つまり、本実施形態における船舶によれば、主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶と比較して、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
【0031】
さらに、上記特許文献1に記載された主駆動機関と主プロペラとを繋ぐシャフトに軸駆動発電機を備え、主プロペラのみで推進する船舶と、本実施形態の船舶とを比較して、本実施形態における船舶の効果を説明する。
主駆動機関と主プロペラとを繋ぐシャフトに軸駆動発電機を備えた船舶の場合、本実施形態と同様に、通常航行時に、主駆動機関は最大出力に対して最も効率の高い約80%から約90%の出力で運転される。つまり、主駆動機関と軸駆動発電機との連続最大出力の比率を70%対30%とすることにより、主駆動機関は、通常航行時に最大出力に対して約80%から約90%の出力で運転される。一方、主プロペラは、主駆動機関と軸駆動発電機との最大出力の合計最大出力で駆動した場合にも十分な強度を保持するように設計する必要がある。したがって、本実施形態における船舶のプロペラと比較して推進効率が悪いプロペラしか設計することができない。
つまり、本実施形態における船舶によれば、上記特許文献1に記載された船舶と比較しても、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
【0032】
ポッド型推進器11を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
上述のように、主駆動機関5の最大出力を低く抑えるとともに当該最大出力に合わせた主プロペラ9を用いたことにより、ポッド型推進器11を用いない場合と比較して、低下した推進力をポッド型推進器11が発生する加勢推進力で補うことができる。そのため、ポッド型推進器11が加勢推進力を発生することにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
【0033】
ポッド型推進器11を補助推進部として用いることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポッド型推進器11は、ポッド13内に設けられた電動機19によりポッドプロペラ15を回転駆動するため、ポッドプロペラ15により加勢推進力を発生させることができる。一方、ポッド型推進器11に備えられたストラットは、舵としての機能を有するため、ポッド型推進器11を舵として用いることができる。
【0034】
ポッド型推進器11はプロペラに対して船尾側に配置されているため、主プロペラ9による推進効率を向上させて船舶の燃費向上を図ることができる。
つまり、ポッド型推進器11により加勢推進力を発生させる場合に、ポッドプロペラ15の回転方向を主プロペラ9の回転方向と逆にすることで、主プロペラ9が発生する回転流を最小化できる。そのため、回転流により低下していた主プロペラ9による推進効率を向上させて船舶1の燃費向上を図ることができる。
【0035】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図3を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図3は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
船舶101は、図3に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)111とを備えている。
ポッド型推進器111は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものであって、加勢推進力を発生させない場合には船体3中または船体3上に格納されるものである。
船体3には、ポッド型推進器111全体を回動させる駆動機構(図示せず)が備えられているとともに、ポッド型推進器111を昇降させる昇降機構(図示せず)が備えられている。
【0037】
上記の構成からなる船舶101における作用について説明する。
通常航行時には、船舶101は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器111は、昇降機構により船体3中または船体3上に引き上げられ格納されている。
荒天などの海象悪化時には、図3に示すように、船舶101は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器111を用いて航行する。つまり、ポッド型推進器111は、昇降機構により船体3から吊り降ろされ、加勢推進力を発生させる。
【0038】
上記の構成によれば、ポッド型推進器111が、船体3中または船体3上に格納可能に設けられているため、船体3の燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器111により加勢推進力を発生させない場合には、ポッド型推進器111を船体3中または船体3上に引き上げて格納することにより、ポッド型推進器111に働く抵抗を減らすことができる。抵抗を減らすことにより、船体3が所定速力を維持するのに必要な推進力を減らすことができ、船体3の燃費向上を図ることができる。一方、加勢推進力を発生させる場合には、ポッド型推進器111を船体3中または船体3上から降ろし、ポッドプロペラ15を回転駆動することで加勢推進力を発生させることができる。
【0039】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図4から図6を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図4から図6を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図4は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
船舶201は、図4に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)211とを備えている。
ポッド型推進器211は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器211は、ケーシングであるポッド213と、ポッドプロペラ215とを備え、舵(ストラット)217に配置されている。ポッド213には、内部にポッドプロペラ215を回転駆動する電動機19と、電動機19の回転駆動力をポッドプロペラ215に伝達するポッドシャフト(図示せず)が備えられている。ポッドプロペラ215は、ポッド13の電動機19により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものであって、ピッチ角を変更することができる可変ピッチプロペラである。ポッドプロペラ215は、ポッド213の船首側(図4の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ215は、ポッド213の船尾側(図4の右側)に配置されていてもよいし、ポッド213の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。舵217は、主プロペラ9の船尾側に、船体3の船底から下方に向かって延びるように配置されている。また、舵217は、断面が翼形断面に形成されているとともに、船体3に対して回動可能に設けられている。船体3には発電機219が配置され、舵217を介してポッド型推進器211の電動機19に電力が供給されている。
【0041】
上記の構成からなる船舶1における作用について、図4から図6を用いて説明する。
図5は、図4のポッド型推進器における通常航行時の状態を説明する模式図である。
通常航行時には、図4に示すように、船舶201は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器211は停止され、加勢推進力を発生していない。具体的には、ポッド型推進器211のポッドプロペラ215は、図5に示すように、ピッチ角が変更されてフェザリング状態となっている。フェザリングの角度範囲としては、約85°から約95°の範囲を例示することができる。ピッチ角を90°とした場合、推進力の発生が完全になくなる。したがって、ピッチ角を約85°から約95°の角度範囲とすることにより、ポッドプロペラの抵抗を低減することができる。
【0042】
図6は、図4のポッド型推進器における荒天時の状態を説明する模式図である。
荒天などの海象悪化時には、船舶201は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器211を用いて航行する。このときポッド型推進器211のポッドプロペラ215は、図6に示すように、ピッチ角が変更されて加勢推進力を発生できるようにされている。
【0043】
上記の構成によれば、ポッドプロペラ215が可変ピッチプロペラであるため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶201の燃費悪化を防止することができる。
ポッド型推進器211により加勢推進力を発生させていない場合に、ポッドプロペラ215のピッチ角を変更してフェザリング状態とすることにより、ポッドプロペラ215による抵抗を最小化することができる。そのため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶201の燃費悪化を防止することができる。
【0044】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図7は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
船舶401は、図9に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)411とを備えている。
ポッド型推進器411は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器411は、ケーシングであるポッド213と、ポッドプロペラ415とを備え、舵217に配置されている。ポッドプロペラ415は、ポッド13の電動機(駆動部)419により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものである。ポッドプロペラ415は、ポッド213の船首側(図9の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ415は、ポッド213の船尾側(図9の右側)に配置されていてもよいし、ポッド213の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。電動機419は、電力が供給されることにより、ポッドプロペラ415を回転駆動するとともに、ポッドプロペラ415に回転駆動されることにより発電を行うものである。
【0046】
上記の構成からなる船舶401における作用について説明する。
通常航行時には、船舶401は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器411は加勢推進力を発生せずに発電を行っている。具体的には、ポッド型推進器411のポッドプロペラ415は、主プロペラ9により形成された回転流により回転される。電動機419はポッドプロペラ415により回転駆動されることにより発電を行う。
【0047】
荒天などの海象悪化時には、船舶401は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器411を用いて航行する。このときポッド型推進器411の電動機419には電力が供給され、ポッドプロペラ415は電動機419により回転駆動される。
【0048】
上記の構成によれば、ポッド型推進器411が主プロペラ9の船尾側に配置され、電動機419によりポッドプロペラ415を回転駆動するため、船舶401の燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器411により加勢推進力を発生させていない場合に、主プロペラ9の回転流によりポッドプロペラ415を介して電動機419を回転駆動させることにより、上記回転流の有するエネルギを電気として回収することができる。つまり、船舶401の推進に寄与することなく捨てられていた上記回転流のエネルギを回収することにより、船舶401全体として燃費向上を図ることができる。
【0049】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図8から図12を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、加勢推進力を発生させる構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8から図12を用いて加勢推進力を発生させる構成周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図8は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
船舶501は、図8に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)511とを備えている。
【0050】
図9および図10は、図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
ポンプジェットスラスタ511は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ511は、船体3の底面における船首側に配置されている。船舶501が痩せ型船の場合には、図9に示すように、ポンプジェットスラスタ511は船体3のセンターラインC上に配置される。また、船舶501が肥大船の場合には、図10に示すように、ポンプジェットスラスタ511はセンターラインCに対して左右対称に2ヶ所に配置される。このときポンプジェットスラスタ511の間隔は船体3の幅に対して3分の2以内であることが望ましい。
【0051】
図11は、図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。図12は、図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
ポンプジェットスラスタ511は、図11に示すように、吸込み口513と、ポンプ515と、噴出し口517とを備えている。
吸込み口513は、船体3の底面に配置され、水がポンプジェットスラスタ511内に流入する流入口である。ポンプ515は、船体3の内部に配置され、吸込み口513から流入した水を加圧するものであり、例えば遠心式のポンプを例示することができる。噴出し口517は、船体3の底面に配置され、加圧された水を所定方向に噴出させる流出口である。
吸込み口513は、図12に示すように、ポンプジェットスラスタ511の略中央に円形の開口部として設けられている。噴出し口517は、水の噴出し方向に向かって延びる一対の噴出し口517A,517Aと、噴出し方向に対して交差する方向に延びる噴出し口517Bとの3つから構成されている。
ポンプジェットスラスタ511は、吸込み口513が配置された中央部を回転中心として回転可能に配置され、全方位に対して推力を発生させることができる。
【0052】
第1の実施形態と同様に、主駆動機関5の常用出力(NR1)は、主駆動機関5およびポンプ515の常用出力(NR(連続最大出力))の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の出力となるよう設定されている。一方、ポンプ515の常用出力(NR2)は、上記全体常用出力(連続最大出力)に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%となるよう設定されている。
主プロペラ9は、主プロペラ9およびポンプジェットスラスタ511により発生される常用出力(NR)に係る推力の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に係る推力に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の推力を発生するように設定されている。一方、ポンプジェットスラスタ511は、上記全体常用出力(連続最大出力)に係る推力に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%の推力を発生するように設定されている。
【0053】
次に、上記の構成からなる船舶501における作用について説明する。
通常航行時には、船舶501は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ511は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0054】
荒天などの海象悪化時には、図8に示すように、船舶501は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ511を用いて航行する。つまり、ポンプジェットスラスタ511は、ポンプ515により吸込み口513から吸込んだ水を加圧し、噴出し口517から船尾方向に水を噴出して加勢推進力を発生させている。船舶501は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ511による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
ここで、ポンプジェットスラスタ511は、船舶501が痩せ型船の場合には、図9に示すように、船底境界層が厚いセンターラインC上に配置され、船舶501が肥大船の場合には、図10に示すように、船底境界層が厚くなるセンターラインCより幅方向にやや離れた位置に配置されている。そのため、吸込み口513における水の流速が、他の領域と比較して遅く、水の吸込み効率が良くなる。さらに、ポンプジェットスラスタ511は、流速が遅い水を吸込み、加圧して加速した状態で噴出すため推進効率を向上させることができる。
【0055】
また、ポンプジェットスラスタ511は、回転させることにより、所定の方位に推進力を発生させることができるため、船舶501が入港する際には、バウスラスタとして活用することができる。
なお、上述のように、ポンプジェットスラスタ511を船首側の船底に配置してもよいし、船尾側の船底に配置してもよく、特に限定するものではない。ポンプジェットスラスタ511を船尾側の船底に配置した場合には、ポンプジェットスラスタ511をスターンスラスタとして活用することができる。
【0056】
上記の構成によれば、補助推進部としてポンプジェットスラスタ511を備えることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポンプジェットスラスタ511は、吸込み口513から吸込んだ水をポンプ515で加圧し、加圧された水を噴出し口517から船尾方向へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ポンプジェットスラスタ511は船体3内に配置されるため、抵抗が少なく船舶501の燃費低下を防止することができる。
【0057】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図13および図14を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図13および図14を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図13は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。図14は、図13のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
船舶601は、図13に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)611とを備えている。
ポンプジェットスラスタ611は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ611は、図14に示すように、吸込み口613と、ポンプ515と、噴出し口617とを備えている。
吸込み口613は、船体3の底面に配置され、水がポンプジェットスラスタ611内に流入する流入口である。噴出し口617は、船体3の底面に配置され、加圧された水を所定方向に噴出させる流出口である。吸込み口613および噴出し口617が設けられた面は、船首方向に向かって上方へ傾いた傾斜面となっている。
【0059】
次に、上記の構成からなる船舶601における作用について説明する。
通常航行時には、船舶601は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ611は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0060】
荒天などの海象悪化時には、船舶601は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ611を用いて航行する。つまり、船舶601は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ611による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0061】
上記の構成によれば、吸込み口613および噴出し口617を構成する面が、船体3の船首方向に向かって上方へ傾いているため、ポンプジェットスラスタ611における水の吸込み効率が向上する。
吸込み口613および噴出し口617を構成する面が、船体3の船首方向に向かって上方へ傾いているため、船舶601が航行することにより水が吸込み口613に流入する。そのため、ポンプ515の吸込み作用のみで水を吸込む場合と比較して、水の吸込み効率が向上してポンプジェットスラスタ611が発生する加勢推進力が大きくなる。
【0062】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図15から図17を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図15から図17を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図15は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。図16は、図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。図17は、図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
船舶701は、図15に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)711とを備えている。
ポンプジェットスラスタ711は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ711は、図16に示すように、吸込み口513と、ポンプ515と、噴出し口517と、遮蔽体(凸部)719と、を備えている。
遮蔽体719は、図17に示すように、吸込み口513と噴出し口517Bとの間に配置され、船体3の船底から下方に延びるように配置されている。
【0064】
次に、上記の構成からなる船舶701における作用について説明する。
通常航行時には、船舶701は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ711は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0065】
荒天などの海象悪化時には、船舶701は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ711を用いて航行する。つまり、船舶701は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ711による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。ポンプジェットスラスタ711により加勢推進力を発生させる場合には、遮蔽体719は、吸込み口513に対して船尾方向、噴出し口517Bに対して船首方向に配置されている。
【0066】
上記の構成によれば、吸込み口513に対する船尾方向に遮蔽体719が配置されたことにより、ポンプジェットスラスタ711における水の吸込み効率を向上させることができる。
遮蔽体719は、吸込み口513に対する船尾方向に、船底から下方に向かって延びるように設けられているため、船舶701が航行すると船底に沿って流れる水が遮蔽体719に遮られ、吸込み口513に流入する。そのため、遮蔽体719が設けられていない場合と比較して、ポンプジェットスラスタ711における水の吸込み効率、特に高速航行時における吸い込み効率を向上させることができる。
【0067】
噴出し口517Bに対する船首方向に遮蔽体719が配置されたたことにより、遮蔽体719による抵抗増加を抑えることができる。
噴出し口517Bは船底に設けられているため、水は船底から斜め下方に向かって噴出し口517Bから噴出される。船舶701が航行すると水は船底に沿って流れるが、噴出し口517Bの近傍においては、噴出された水により船底から離れる方向の流れが発生する。すると、遮蔽体719により遮られる船底に沿った水の流れが弱くなり、遮蔽体719による抵抗増加を抑えることができる。
【0068】
〔第8の実施形態〕
次に、本発明の第8の実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、
図18を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図18は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
船舶801は、図18に示すように、船体3と、主駆動機関(図示せず)と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)811とを備えている。
【0070】
ポンプジェットスラスタ811は、主駆動機関および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ811は、吸込み口813と、ポンプ815と、噴出し口817と、配管819と、を備えている。
吸込み口813は、船体3の外板であって船底に設けられている。吸込み口813は、船体3外から水が吸込まれる開口部である。
ポンプ815は、船体3の内部であって、配管819に設けられている。ポンプ815は、吸込み口813から吸込まれた水を加圧して、噴出し口817から噴出させるものである。
噴出し口817は、船体3の船尾側に設けられ、船舶801の進行方向に対して後方に向かって開口する開口部である。噴出し口817からは、ポンプ815により加圧された水が噴出される。
配管819は、船体3内に配置され、吸込み口813と噴出し口817とを連通させるものである。また、配管819には、ポンプ815が配置されている。配管819内には、吸込み口813から流入した水が流れる。
【0071】
次に、上記の構成からなる船舶801における作用について説明する。
通常航行時には、船舶801は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ811は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0072】
荒天などの海象悪化時には、船舶801は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ811を用いて航行する。つまり、船舶801は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ811による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0073】
上記の構成によれば、補助推進部としてポンプジェットスラスタ811を備えることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポンプジェットスラスタ811は、吸込み口813から吸込んだ水をポンプ815で加圧し、加圧された水を噴出し口817から船尾方向へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ポンプジェットスラスタ811は船体3内に配置されるため、抵抗が少なく船舶801の燃費低下を防止することができる。
【0074】
〔第9の実施形態〕
次に、本発明の第9の実施形態について図19を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第8の実施形態と同様であるが、第8の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、
図19を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図19は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第8の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
船舶901は、図19に示すように、船体3と、主駆動機関(図示せず)と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)911とを備えている。
【0076】
ポンプジェットスラスタ911は、主駆動機関および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ911は、吸込み口813と、ポンプ815と、噴出し口817と、配管919と、排水管921とを備えている。
吸込み口813は、船体3の外板であって船底に設けられている。吸込み口813は、船体3外から水が吸込まれる開口部である。
ポンプ815は、船体3の内部であって、配管919に設けられている。ポンプ815は、吸込み口813から吸込まれた水および排水管921から排出された排水を加圧して、噴出し口817から噴出させるものである。
噴出し口817は、船体3の船尾側に設けられ、船舶801の進行方向に対して後方に向かって開口する開口部である。噴出し口817からは、ポンプ815により加圧された水が噴出される。
配管919は、船体3内に配置され、吸込み口813と噴出し口817とを連通させるものである。また、配管919には、ポンプ815が配置されている。配管919内には、吸込み口813から流入した水および排水管921から流入した排水が流れる。
排水管921は、主駆動機関の冷却水を配管919に排出する配管である。排水管921は、配管919における吸込み口813とポンプ815との間に接続されている。なお、排水管921は、上述のように主駆動機関の冷却水を配管919に排出するものでもよいし、通常航行時において船舶901から排出される他の水を配管919に排出するものであってもよく、特に限定するものではない。
【0077】
次に、上記の構成からなる船舶901における作用について説明する。
通常航行時には、船舶901は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ911は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0078】
荒天などの海象悪化時には、船舶901は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ911を用いて航行する。つまり、船舶901は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ911による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0079】
上記の構成によれば、ポンプジェットスラスタ911が噴き出す水の少なくとも一部に、船舶901内から排出された水が含まれているため、船舶901の全体として経済性の向上を図ることができる。つまり、ポンプジェットスラスタ911の作動時に、船体3外から吸込まれる水の量を減少できるため、水の吸込みに伴う船体3の抵抗削減を図ることができる。同時に、ポンプジェットスラスタ911における吸込み口813および配管919などの設備削減が図れる。その結果、船舶901の全体として経済性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図2】図1の船舶における荒天時の状態を説明する模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図5】図4のポッド型推進器における通常航行時の状態を説明する模式図である。
【図6】図4のポッド型推進器における荒天時の状態を説明する模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図9】図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
【図10】図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
【図11】図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図12】図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図14】図13のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図16】図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図17】図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
【図18】本発明の第8の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図19】本発明の第9の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1,101,201,301,401,501,601,701,801,901 船舶
3 船体
5 主駆動機関(駆動機関)
9 主プロペラ(プロペラ)
11,111,211,311,411 ポッド型推進器(補助推進部)
13,213 ポッド
15,215,315,415 ポッドプロペラ
17 ストラット
19,419 電動機(駆動部)
217 舵(ストラット)
511,611,711,811,911 ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)
513,613,813 吸込み口
515,815 ポンプ
517,517A,517B,617,817 噴出し口
719 遮蔽体(凸部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関し、特にシーマージンを大きく取る必要のある船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の推進装置においては、駆動機関によりプロペラを回転駆動させるものが知られている。この駆動機関は、定期的なメンテナンスを行っていれば、ほとんど故障することはなく、プロペラを補助的に駆動する補助駆動機関や補助推進装置を設ける必要性はなかった。
しかしながら、近年における船舶の低燃費化、エネルギ効率の向上の要求の高まりを受けて、プロペラを主駆動機関だけでなく、電動機を補助的に用いて回転駆動させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された技術は、気象・海象条件の厳しい状態においてのみ必要な余裕出力を補助電動機などに受け持たせることにより、主駆動機関の効率向上を狙ったものと考えられる。
【特許文献1】特開2004−359112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
船舶の駆動機関として良く使われるディーゼル機関の出力の定義には、以下の3つの出力がある。つまり、最大出力(Maximum Rating、以下MRと表記する。)と、最大連続出力(Maximum Continuous Rating、以下MCRと表記する。)と、常用出力(Normal Rating、以下NRと表記する。)と、である。ここで、MRはディーゼル機関において使用できる最大出力(ただし、短時間に限定される。)、MCRは継続的に使用できる最大出力、NRは通常使用される出力と定義される。なお、MCRとNRは同じである場合が多いので、以下ではMRとNRを使って説明する。NR出力は、一般的にMR出力の85%程度に設定されるため、NR出力がMR出力の85%程度に設定されているとして以下の説明を行う。
【0004】
一般に、船舶の推進装置において主駆動機関の選定は、荒天時における推進性能の悪化を考慮した上で行われている。つまり、平水中を所定速力で航行するために必要な推進馬力に、荒天などの海象悪化によって増加する推進馬力をシーマージン(余裕馬力)として上積みした値が、主駆動機関の常用出力(NR)となるように主駆動機関は選定または設計される。
特に定時運航性が強く求められる船舶や外洋を航行する船舶、例えばフェリーやコンテナ船などにおいては、シーマージンが高く設定される傾向にある。太平洋航路に就航するコンテナ船などを例に挙げると、平水中における所要推進馬力に対して40%以上のシーマージンを積んでいる場合さえある。このようなコンテナ船が、穏やかな海象時に定められたスケジュールに沿って航海する場合には、主駆動機関に求められる出力は、最大出力(MR)の60%程度になる。
主駆動機関は、著しい低出力領域で運転されると、主駆動機関の燃費が最も良くなる設計点(Normal Output Rating:以下、NORと表記する。)における運転と比較して、燃費が悪化する。
一方、主プロペラは、船の設計点において最も推進効率が高くなるように設計されるのが一般的であるが、主駆動機関の最大出力(MR)での運転に耐えるように強度設計がなされなければならないので、最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離が大きくなると、主プロペラの推進効率は低下することとなる。
そのため、上述のようにシーマージンが大きく設定された場合には、主駆動機関の燃費低下と主プロペラの推進効率低下とにより、効率の大幅な悪化が避けられない。
【0005】
一方、シーマージンを過小評価した場合には、海象が荒れてくると船舶が所定速力を出すために必要な推進馬力が、主駆動機関の常用出力(NR)を超えることがある。更には、必要な推進馬力が最大出力(MR)さえ超えることがある。主駆動機関においては、常用出力(NR)以上の出力を継続的に使用することはできないため、船舶は所定速力を確保できず、運航スケジュールが守れなくなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、特に、運航の性格上シーマージンを大きくする必要のある船舶について、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保するとともに、燃費の向上を図ることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の船舶は、船体を推進させる推進力を発生するプロペラと、該プロペラを回転駆動させる駆動機関と、加勢推進力を発生する補助推進部と、を備えた船舶において、前記駆動機関および前記プロペラは、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生させ、前記補助推進部は、上記所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、補助推進部を備えることにより、駆動機関の燃費向上を図ることができるとともに、プロペラによる推進効率の向上を図ることができ、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
補助推進部を備えることにより、駆動機関に求められる常用主力(NR)に含まれていたシーマージンの大部分を補助推進部に分担させることができるので、補助推進部を備えていない場合と比較して、駆動機関の常用出力(NR)を低く抑えることができる。そのため、船舶において使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、駆動機関の燃費が最も良くなる状態(NRに近いのが普通である)に近づけることができる。一方、プロペラは、上述のように補助推進部を備えていない場合と比較して、駆動機関の最大出力(MR)が低く抑えられているため、作動範囲が狭くなって過度の強度要求を満たす必要がなくなる。そのため、所定速力を維持する際に、推進効率が高いプロペラとすることができる。つまり、プロペラにおける最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離を小さくできるため、所定速力を維持する際に、プロペラの推進効率が低下することがなく、高い推進効率を得ることができる。
補助推進部を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持するために適切なシーマージンを確保することができる。そのため、船舶として使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、駆動機関の燃費が最も良くなる状態に近づけることができ、燃費の向上が図られる。
【0009】
本発明において、前記駆動機関の常用出力は、該駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して60%以上80%以下となるよう設定され、前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して20%以上40%以下となるよう設定されていることが望ましい。
さらに好ましくは、前記駆動機関の常用出力は、該駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して65%以上75%以下となるよう設定され、前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して25%以上35%以下となるよう設定されていることが望ましい。また、前記駆動機関の出力が、前記駆動機関の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できる場合は、前記補助推進部を事実上使用しない状態に置き、前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、前記補助推進部を加勢推進力として使用することが望ましい。
【0010】
上述のように、駆動機関の常用出力を低く抑えるとともに当該常用出力付近で最大効率を得るプロペラを用いることにより、補助推進部を用いない場合と比較して、駆動機関、プロペラともに効率の良い状態で作動させることができるので、燃費の向上を図ることができる。また、不足する推進力を補助推進部が発生する加勢推進力で補うことにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
【0011】
上記発明においては、前記補助推進部は、断面が翼形状であるストラットと、該ストラットに設けられ、内部に駆動部を有するポッドと、該ポッドに設けられ、前記駆動部により回転駆動されるポッドプロペラを備えているポッド型推進器であることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、 ポッド型推進器が、ポッド内に設けられた駆動部によりポッドプロペラを回転駆動するため、ポッドプロペラにより加勢推進力を発生させることができる。一方、ポッド型推進器に備えられたストラットは、舵としての機能を有するため、ポッド型推進器を舵として用いることができる。
なお、ポッド型推進器に代えて、アジマス型推進器を用いてもよい。アジマス型推進器は、船体内に駆動部を設けることがポッド型推進器と主に異なり、船体内の駆動部とポッドプロペラとは駆動軸を介して出力が伝達される構成となっている。以下、補助推進器がポッド型推進器の場合について説明するが、補助推進器がアジマス型推進器であってもよい。
【0013】
上記発明においては、前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置されていることが望ましい。
【0014】
本発明によれば、ポッド型推進器がプロペラに対して船尾側に配置されているため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させる場合に、ポッドプロペラの回転方向を前記プロペラの回転方向と逆にすることで、プロペラが発生する回転流を最小化できる。そのため、回転流により低下していたプロペラによる推進効率を向上させて船舶の燃費向上を図ることができる。
【0015】
上記発明においては、前記ポッド型推進器が、前記船体中または前記船体上に格納可能に設けられていることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、ポッド型推進器が、船体中または船体上に格納可能に設けられているため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させない場合には、ポッド型推進器を船体中または船体上に引き上げて格納することにより、ポッド型推進器に働く抵抗を減らすことができる。抵抗を減らすことにより、船舶が所定速力を維持するのに必要な推進力を減らすことができる。
一方、加勢推進力を発生させる場合には、ポッド型推進器を船体中または船体上から降ろし、ポッドプロペラを回転駆動することで加勢推進力を発生させることができる。
【0017】
上記発明においては、前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、前記ポッドプロペラは、ピッチ角を変更できる可変ピッチプロペラであることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、ポッドプロペラが可変ピッチプロペラであるため、ポッド型推進器により加勢推進力を発生させていない場合に、ポッドプロペラのピッチ角を変更してフェザリング状態とすることにより、ポッドプロペラによる抵抗を最小化することができる。そのため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶の燃費悪化を低減することができる。
【0019】
上記発明においては、前記ポッド型推進器が前記プロペラの船尾側に配置され、前記駆動部内に電動機が備えられていることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、ポッド型推進器がプロペラの船尾側に配置され、駆動部内に電動機を備えられているため、ポッド型推進器推進器により加勢推進力を発生させていない場合に、プロペラが発生する回転流によりポッドプロペラを介して電動機を回転駆動させることにより、上記回転流の有するエネルギを電気として回収することができる。つまり、船舶の推進に寄与することなく捨てられていた回転流のエネルギを回収することにより、船舶全体として燃費向上を図ることができる。
【0021】
上記発明においては、前記補助推進部が前記船体の外板に設けられた水の吸込み口と、吸込んだ水を加圧するポンプと、前記船体に設けられ、加圧された水を所定方向へ噴出させる噴出し口と、を備えるジェット推進器であることが望ましい。
【0022】
本発明によれば、ジェット推進器が、吸込み口から吸込んだ水をポンプで加圧し、加圧された水を噴出し口から船体後方へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ジェット推進器は船体内に配置されるため、抵抗が少なく船舶の燃費低下を防止することができる。
なお、吸込み口は、船体の水面から露出しない外板に設けられていればよく、吸込み効率や吸込んだ水の流れる配管等を考慮して好適な場所に設置される。
また、噴出し口の水の噴出し方向を所定方向へ変更できる形式のものを用いることができる。例えば、ジェット推進器を船体の船首側に設けた場合にはバウスラスタとしても用いることができ、船尾側に設けた場合にはスターンスラスタとしても用いることができる。
また、本発明においては、前記補助推進部としてのジェット推進装置が噴き出す水の少なくとも一部を、船内から排出される水でまかなってもよい。船内から排出される水としては、例えば、駆動機関などの冷却水など、通常の運航において船内から排出される水を例示できる。これにより、ジェット推進装置を作動させる際に船外から取り入れられる水の量を減少できるので、水の吸込みに伴う船体抵抗の削減を図るとともに、吸込み口および配管などの設備削減が図れる。その結果、船舶全体として経済性の向上が期待できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の船舶によれば、シーマージンが大きい船舶に補助推進部を備えることにより、主駆動機関とプロペラの作動出力範囲を限定して効率低下の目立たない範囲で使用できるので、主駆動機関の燃費向上を図ることができるとともに、プロペラによる推進効率の向上を図ることができる。これにより、船舶全体としての燃費向上を図ることができるという効果を奏する。
補助推進部を備え、補助推進部が加勢推進力を発生することにより、適切なシーマージンを確保できるので、海象が変化しても所定速力を維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る船舶について図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
船舶1は、図1に示すように、船体3と、主駆動機関(駆動機関)5と、シャフト7と、主プロペラ(プロペラ)9と、ポッド型推進器(補助推進部)11とを備えている。
船体3には、内部に主駆動機関5が配置され、船尾に主プロペラ9およびポッド型推進器11が配置されている。主駆動機関5は、シャフト7を介して主プロペラ9を回転駆動させるものである。主駆動機関5としては、例えばディーゼルエンジンなどを用いることができる。主プロペラ9は、推進力を発生させて船舶1を前後進させるものである。主プロペラ9は、シャフト7を介して主駆動機関5と回転駆動力が伝達されるように接続されている。
ポッド型推進器11は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器11は、ケーシングであるポッド13と、ポッドプロペラ15と、ストラット17とを備えている。ポッド13内部には、ポッドプロペラ15を回転駆動する電動機(駆動部)19と、電動機19の回転駆動力をポッドプロペラ15に伝達するポッドシャフト(図示せず)が備えられている。ポッドプロペラ15は、ポッド13の電動機19により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものである。ポッドプロペラ15は、ポッド13の船首側(図1の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ15は、ポッド13の船尾側(図1の右側)に配置されていてもよいし、ポッド13の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。ストラット17は、ポッド13と船体3との間に配置され、ポッド13を支持するものである。また、ストラット17は、断面が翼形断面に形成されているとともに、船体3に対して回動可能に設けられている。船体3には、ポッド型推進器11全体を回動させる駆動機構(図示せず)が備えられている。したがって、ポッド型推進器11は、船舶1の舵としての機能を果たすこともできる。
【0025】
主駆動機関5の常用出力(NR1)は、主駆動機関5および電動機19の常用出力(NR(連続最大出力))の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の出力となるよう設定されている。一方、電動機19の常用出力(NR2)は、上記全体常用出力(連続最大出力)に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%となるよう設定されている。ここで、常用出力とは通常使用される出力であり、連続最大出力とは駆動機関などが継続的に使用できる最大出力である。なお、常用出力と連続最大出力は同じである場合が多く、駆動機関の常用出力は、最大出力の約80%から約90%まで(85%程度)に設定されていることが多い。また、ディーゼルエンジンなどの駆動機関においては、常用出力(連続最大出力)付近での運転時が最も効率よく運転されるように設計され、燃費が最も良くなる。なお、上記全体連続最大出力は、荒天などの外乱による速力低下を防止するため、通常航行時(平水中または穏やかな海象時に所定速力で航行する時)に対して、例えば、約40%程度の推進馬力をシーマージンとして上積みしたものとされる。なお、シーマージンは、船主の仕様によって約40%から約15%で変更される。
【0026】
次に、上記の構成からなる船舶1における作用について、図1および図2を用いて説明する。
通常航行時(平水中または穏やかな海象時に所定速力で航行する時)には、図1に示すように、船舶1は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器11は停止され、加勢推進力を発生していない。つまり、主駆動機関5により発生された回転駆動力は、シャフト7を介して、主プロペラ9に伝達される。主プロペラ9は回転駆動されることにより推進力を発生し、船舶1は主プロペラ9により発生された推進力により航行する。ここで、所定速力とは、船舶1の運航スケジュール等に基づいて定められるものであって、船舶1の用途などにより異なるものである。
この場合、主駆動機関5は、最大出力に対して最も効率の高いNR付近の出力で運転される。同時に、主プロペラ9も、最も推進効率の高い領域で使用することができる。
【0027】
図2は、図1の船舶における荒天時の状態を説明する模式図である。
荒天などの海象悪化時には、図2に示すように、船舶1は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器11を用いて航行する。つまり、主プロペラ9は主駆動機関5により回転され推進力を発生し、ポッド型推進器11は駆動装置19によりポッドプロペラ15を回転させて加勢推進力を発生させる。船舶1は、主プロペラ9による推進力とポッドプロペラ15による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
この場合、主駆動機関5は、通常航行時と同様にNR付近の出力で運転され、主プロペラ9も通常航行時と同様に、最も推進効率の高い領域で使用することができる。一方、ポッド型推進器11の駆動機関19とポッドプロペラ15は所要の推進力を発生させる出力レベルで使用されている。
【0028】
なお、主駆動機関5の出力が、主駆動機関5の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、主駆動機関5のみを用いて上記所定速力で航行できる場合は、ポッド型推進器11を停止(事実上使用しない状態に)させ、主駆動機関5のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、ポッド型推進器11を加勢推進力として使用することが望ましい。
【0029】
上記の構成によれば、ポッド型推進器11を備えることにより、主駆動機関5の燃費向上を図ることができるとともに、主プロペラ9による推進効率の向上を図ることができ、船舶1全体としての燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器11を備えることにより、主駆動機関5に求められる常用主力(NR)に含まれていたシーマージンの大部分をポッド型推進器11に分担させることができるので、ポッド型推進器11を備えていない場合と比較して、主駆動機関5の常用出力(NR)を低く抑えることができる。そのため、使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、主駆動機関5の燃費が最も良くなる状態(常用出力(NR)付近)に近づけることができる。一方、主プロペラ9は、上述のようにポッド型推進器11を備えていない場合と比較して、主駆動機関5の最大出力(MR)が低く抑えられているため、作動範囲が狭くなって過度の強度要求を満たす必要がなくなる。そのため、所定速力を維持する際に、推進効率が高い主プロペラ9とすることができる。つまり、主プロペラ9における最大出力(MR)と設計点(NOR)との乖離を小さくできるため、所定速力を維持する際に、推進効率が高い主プロペラ9を用いることができる。
ポッド型推進器11を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持するために適切なシーマージンを確保することができる。そのため、船舶1として使用頻度の高い平水中で所定速力を維持する出力状態を、主駆動機関5の燃費が最も良くなる状態に近づけることができ、燃費の向上が図られる。
【0030】
ここで、具体的に、主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶と、本実施形態の船舶と、を比較して本実施形態における船舶の効果を説明する。
主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶の場合、主駆動機関は、通常航行時に必要な連続出力に対して、約40%のシーマージンを上積みされた出力を連続最大出力として出力できるように選定または設計される。一方、主プロペラは、上記主駆動機関の最大出力に対して最も推進効率が高くなるように選定または設計される。
この場合において、主駆動機関は、通常航行時には、最大出力に対して約60%の出力で運転され、本実施形態と比較して燃費の悪い領域で運転される。一方、主プロペラにおいても、最も推進効率が高い領域から離れた領域で使用されるため、本実施形態と比較して推進効率が悪い領域で使用されている。
つまり、本実施形態における船舶によれば、主駆動機関と主プロペラのみを備えた船舶と比較して、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
【0031】
さらに、上記特許文献1に記載された主駆動機関と主プロペラとを繋ぐシャフトに軸駆動発電機を備え、主プロペラのみで推進する船舶と、本実施形態の船舶とを比較して、本実施形態における船舶の効果を説明する。
主駆動機関と主プロペラとを繋ぐシャフトに軸駆動発電機を備えた船舶の場合、本実施形態と同様に、通常航行時に、主駆動機関は最大出力に対して最も効率の高い約80%から約90%の出力で運転される。つまり、主駆動機関と軸駆動発電機との連続最大出力の比率を70%対30%とすることにより、主駆動機関は、通常航行時に最大出力に対して約80%から約90%の出力で運転される。一方、主プロペラは、主駆動機関と軸駆動発電機との最大出力の合計最大出力で駆動した場合にも十分な強度を保持するように設計する必要がある。したがって、本実施形態における船舶のプロペラと比較して推進効率が悪いプロペラしか設計することができない。
つまり、本実施形態における船舶によれば、上記特許文献1に記載された船舶と比較しても、船舶全体としての燃費向上を図ることができる。
【0032】
ポッド型推進器11を備えることにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
上述のように、主駆動機関5の最大出力を低く抑えるとともに当該最大出力に合わせた主プロペラ9を用いたことにより、ポッド型推進器11を用いない場合と比較して、低下した推進力をポッド型推進器11が発生する加勢推進力で補うことができる。そのため、ポッド型推進器11が加勢推進力を発生することにより、海象が変化しても所定速力を維持できる適切なシーマージンを確保することができる。
【0033】
ポッド型推進器11を補助推進部として用いることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポッド型推進器11は、ポッド13内に設けられた電動機19によりポッドプロペラ15を回転駆動するため、ポッドプロペラ15により加勢推進力を発生させることができる。一方、ポッド型推進器11に備えられたストラットは、舵としての機能を有するため、ポッド型推進器11を舵として用いることができる。
【0034】
ポッド型推進器11はプロペラに対して船尾側に配置されているため、主プロペラ9による推進効率を向上させて船舶の燃費向上を図ることができる。
つまり、ポッド型推進器11により加勢推進力を発生させる場合に、ポッドプロペラ15の回転方向を主プロペラ9の回転方向と逆にすることで、主プロペラ9が発生する回転流を最小化できる。そのため、回転流により低下していた主プロペラ9による推進効率を向上させて船舶1の燃費向上を図ることができる。
【0035】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図3を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図3は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
船舶101は、図3に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)111とを備えている。
ポッド型推進器111は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものであって、加勢推進力を発生させない場合には船体3中または船体3上に格納されるものである。
船体3には、ポッド型推進器111全体を回動させる駆動機構(図示せず)が備えられているとともに、ポッド型推進器111を昇降させる昇降機構(図示せず)が備えられている。
【0037】
上記の構成からなる船舶101における作用について説明する。
通常航行時には、船舶101は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器111は、昇降機構により船体3中または船体3上に引き上げられ格納されている。
荒天などの海象悪化時には、図3に示すように、船舶101は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器111を用いて航行する。つまり、ポッド型推進器111は、昇降機構により船体3から吊り降ろされ、加勢推進力を発生させる。
【0038】
上記の構成によれば、ポッド型推進器111が、船体3中または船体3上に格納可能に設けられているため、船体3の燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器111により加勢推進力を発生させない場合には、ポッド型推進器111を船体3中または船体3上に引き上げて格納することにより、ポッド型推進器111に働く抵抗を減らすことができる。抵抗を減らすことにより、船体3が所定速力を維持するのに必要な推進力を減らすことができ、船体3の燃費向上を図ることができる。一方、加勢推進力を発生させる場合には、ポッド型推進器111を船体3中または船体3上から降ろし、ポッドプロペラ15を回転駆動することで加勢推進力を発生させることができる。
【0039】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図4から図6を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図4から図6を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図4は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
船舶201は、図4に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)211とを備えている。
ポッド型推進器211は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器211は、ケーシングであるポッド213と、ポッドプロペラ215とを備え、舵(ストラット)217に配置されている。ポッド213には、内部にポッドプロペラ215を回転駆動する電動機19と、電動機19の回転駆動力をポッドプロペラ215に伝達するポッドシャフト(図示せず)が備えられている。ポッドプロペラ215は、ポッド13の電動機19により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものであって、ピッチ角を変更することができる可変ピッチプロペラである。ポッドプロペラ215は、ポッド213の船首側(図4の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ215は、ポッド213の船尾側(図4の右側)に配置されていてもよいし、ポッド213の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。舵217は、主プロペラ9の船尾側に、船体3の船底から下方に向かって延びるように配置されている。また、舵217は、断面が翼形断面に形成されているとともに、船体3に対して回動可能に設けられている。船体3には発電機219が配置され、舵217を介してポッド型推進器211の電動機19に電力が供給されている。
【0041】
上記の構成からなる船舶1における作用について、図4から図6を用いて説明する。
図5は、図4のポッド型推進器における通常航行時の状態を説明する模式図である。
通常航行時には、図4に示すように、船舶201は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器211は停止され、加勢推進力を発生していない。具体的には、ポッド型推進器211のポッドプロペラ215は、図5に示すように、ピッチ角が変更されてフェザリング状態となっている。フェザリングの角度範囲としては、約85°から約95°の範囲を例示することができる。ピッチ角を90°とした場合、推進力の発生が完全になくなる。したがって、ピッチ角を約85°から約95°の角度範囲とすることにより、ポッドプロペラの抵抗を低減することができる。
【0042】
図6は、図4のポッド型推進器における荒天時の状態を説明する模式図である。
荒天などの海象悪化時には、船舶201は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器211を用いて航行する。このときポッド型推進器211のポッドプロペラ215は、図6に示すように、ピッチ角が変更されて加勢推進力を発生できるようにされている。
【0043】
上記の構成によれば、ポッドプロペラ215が可変ピッチプロペラであるため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶201の燃費悪化を防止することができる。
ポッド型推進器211により加勢推進力を発生させていない場合に、ポッドプロペラ215のピッチ角を変更してフェザリング状態とすることにより、ポッドプロペラ215による抵抗を最小化することができる。そのため、加勢推進力を発生させていない場合における船舶201の燃費悪化を防止することができる。
【0044】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、ポッド型推進器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いてポッド型推進器周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図7は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
船舶401は、図9に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポッド型推進器(補助推進部)411とを備えている。
ポッド型推進器411は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポッド型推進器411は、ケーシングであるポッド213と、ポッドプロペラ415とを備え、舵217に配置されている。ポッドプロペラ415は、ポッド13の電動機(駆動部)419により回転駆動され、加勢推進力を発生させるものである。ポッドプロペラ415は、ポッド213の船首側(図9の左側)に配置されている。なお、ポッドプロペラ415は、ポッド213の船尾側(図9の右側)に配置されていてもよいし、ポッド213の船首側および船尾側にそれぞれ配置されていてもよい。電動機419は、電力が供給されることにより、ポッドプロペラ415を回転駆動するとともに、ポッドプロペラ415に回転駆動されることにより発電を行うものである。
【0046】
上記の構成からなる船舶401における作用について説明する。
通常航行時には、船舶401は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポッド型推進器411は加勢推進力を発生せずに発電を行っている。具体的には、ポッド型推進器411のポッドプロペラ415は、主プロペラ9により形成された回転流により回転される。電動機419はポッドプロペラ415により回転駆動されることにより発電を行う。
【0047】
荒天などの海象悪化時には、船舶401は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポッド型推進器411を用いて航行する。このときポッド型推進器411の電動機419には電力が供給され、ポッドプロペラ415は電動機419により回転駆動される。
【0048】
上記の構成によれば、ポッド型推進器411が主プロペラ9の船尾側に配置され、電動機419によりポッドプロペラ415を回転駆動するため、船舶401の燃費向上を図ることができる。
ポッド型推進器411により加勢推進力を発生させていない場合に、主プロペラ9の回転流によりポッドプロペラ415を介して電動機419を回転駆動させることにより、上記回転流の有するエネルギを電気として回収することができる。つまり、船舶401の推進に寄与することなく捨てられていた上記回転流のエネルギを回収することにより、船舶401全体として燃費向上を図ることができる。
【0049】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図8から図12を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、加勢推進力を発生させる構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8から図12を用いて加勢推進力を発生させる構成周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図8は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
船舶501は、図8に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)511とを備えている。
【0050】
図9および図10は、図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
ポンプジェットスラスタ511は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ511は、船体3の底面における船首側に配置されている。船舶501が痩せ型船の場合には、図9に示すように、ポンプジェットスラスタ511は船体3のセンターラインC上に配置される。また、船舶501が肥大船の場合には、図10に示すように、ポンプジェットスラスタ511はセンターラインCに対して左右対称に2ヶ所に配置される。このときポンプジェットスラスタ511の間隔は船体3の幅に対して3分の2以内であることが望ましい。
【0051】
図11は、図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。図12は、図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
ポンプジェットスラスタ511は、図11に示すように、吸込み口513と、ポンプ515と、噴出し口517とを備えている。
吸込み口513は、船体3の底面に配置され、水がポンプジェットスラスタ511内に流入する流入口である。ポンプ515は、船体3の内部に配置され、吸込み口513から流入した水を加圧するものであり、例えば遠心式のポンプを例示することができる。噴出し口517は、船体3の底面に配置され、加圧された水を所定方向に噴出させる流出口である。
吸込み口513は、図12に示すように、ポンプジェットスラスタ511の略中央に円形の開口部として設けられている。噴出し口517は、水の噴出し方向に向かって延びる一対の噴出し口517A,517Aと、噴出し方向に対して交差する方向に延びる噴出し口517Bとの3つから構成されている。
ポンプジェットスラスタ511は、吸込み口513が配置された中央部を回転中心として回転可能に配置され、全方位に対して推力を発生させることができる。
【0052】
第1の実施形態と同様に、主駆動機関5の常用出力(NR1)は、主駆動機関5およびポンプ515の常用出力(NR(連続最大出力))の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の出力となるよう設定されている。一方、ポンプ515の常用出力(NR2)は、上記全体常用出力(連続最大出力)に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%となるよう設定されている。
主プロペラ9は、主プロペラ9およびポンプジェットスラスタ511により発生される常用出力(NR)に係る推力の合計である全体常用出力(全体連続最大出力)に係る推力に対して約60%から約80%まで、好ましくは65%から75%まで、さらに好ましくは70%の推力を発生するように設定されている。一方、ポンプジェットスラスタ511は、上記全体常用出力(連続最大出力)に係る推力に対して約20%から約40%まで、好ましくは25%から35%まで、さらに好ましくは30%の推力を発生するように設定されている。
【0053】
次に、上記の構成からなる船舶501における作用について説明する。
通常航行時には、船舶501は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ511は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0054】
荒天などの海象悪化時には、図8に示すように、船舶501は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ511を用いて航行する。つまり、ポンプジェットスラスタ511は、ポンプ515により吸込み口513から吸込んだ水を加圧し、噴出し口517から船尾方向に水を噴出して加勢推進力を発生させている。船舶501は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ511による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
ここで、ポンプジェットスラスタ511は、船舶501が痩せ型船の場合には、図9に示すように、船底境界層が厚いセンターラインC上に配置され、船舶501が肥大船の場合には、図10に示すように、船底境界層が厚くなるセンターラインCより幅方向にやや離れた位置に配置されている。そのため、吸込み口513における水の流速が、他の領域と比較して遅く、水の吸込み効率が良くなる。さらに、ポンプジェットスラスタ511は、流速が遅い水を吸込み、加圧して加速した状態で噴出すため推進効率を向上させることができる。
【0055】
また、ポンプジェットスラスタ511は、回転させることにより、所定の方位に推進力を発生させることができるため、船舶501が入港する際には、バウスラスタとして活用することができる。
なお、上述のように、ポンプジェットスラスタ511を船首側の船底に配置してもよいし、船尾側の船底に配置してもよく、特に限定するものではない。ポンプジェットスラスタ511を船尾側の船底に配置した場合には、ポンプジェットスラスタ511をスターンスラスタとして活用することができる。
【0056】
上記の構成によれば、補助推進部としてポンプジェットスラスタ511を備えることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポンプジェットスラスタ511は、吸込み口513から吸込んだ水をポンプ515で加圧し、加圧された水を噴出し口517から船尾方向へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ポンプジェットスラスタ511は船体3内に配置されるため、抵抗が少なく船舶501の燃費低下を防止することができる。
【0057】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図13および図14を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図13および図14を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図13は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。図14は、図13のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
船舶601は、図13に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)611とを備えている。
ポンプジェットスラスタ611は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ611は、図14に示すように、吸込み口613と、ポンプ515と、噴出し口617とを備えている。
吸込み口613は、船体3の底面に配置され、水がポンプジェットスラスタ611内に流入する流入口である。噴出し口617は、船体3の底面に配置され、加圧された水を所定方向に噴出させる流出口である。吸込み口613および噴出し口617が設けられた面は、船首方向に向かって上方へ傾いた傾斜面となっている。
【0059】
次に、上記の構成からなる船舶601における作用について説明する。
通常航行時には、船舶601は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ611は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0060】
荒天などの海象悪化時には、船舶601は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ611を用いて航行する。つまり、船舶601は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ611による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0061】
上記の構成によれば、吸込み口613および噴出し口617を構成する面が、船体3の船首方向に向かって上方へ傾いているため、ポンプジェットスラスタ611における水の吸込み効率が向上する。
吸込み口613および噴出し口617を構成する面が、船体3の船首方向に向かって上方へ傾いているため、船舶601が航行することにより水が吸込み口613に流入する。そのため、ポンプ515の吸込み作用のみで水を吸込む場合と比較して、水の吸込み効率が向上してポンプジェットスラスタ611が発生する加勢推進力が大きくなる。
【0062】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図15から図17を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図15から図17を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図15は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。図16は、図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。図17は、図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
船舶701は、図15に示すように、船体3と、主駆動機関5と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)711とを備えている。
ポンプジェットスラスタ711は、主駆動機関5および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ711は、図16に示すように、吸込み口513と、ポンプ515と、噴出し口517と、遮蔽体(凸部)719と、を備えている。
遮蔽体719は、図17に示すように、吸込み口513と噴出し口517Bとの間に配置され、船体3の船底から下方に延びるように配置されている。
【0064】
次に、上記の構成からなる船舶701における作用について説明する。
通常航行時には、船舶701は、主駆動機関5および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ711は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0065】
荒天などの海象悪化時には、船舶701は、主駆動機関5および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ711を用いて航行する。つまり、船舶701は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ711による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。ポンプジェットスラスタ711により加勢推進力を発生させる場合には、遮蔽体719は、吸込み口513に対して船尾方向、噴出し口517Bに対して船首方向に配置されている。
【0066】
上記の構成によれば、吸込み口513に対する船尾方向に遮蔽体719が配置されたことにより、ポンプジェットスラスタ711における水の吸込み効率を向上させることができる。
遮蔽体719は、吸込み口513に対する船尾方向に、船底から下方に向かって延びるように設けられているため、船舶701が航行すると船底に沿って流れる水が遮蔽体719に遮られ、吸込み口513に流入する。そのため、遮蔽体719が設けられていない場合と比較して、ポンプジェットスラスタ711における水の吸込み効率、特に高速航行時における吸い込み効率を向上させることができる。
【0067】
噴出し口517Bに対する船首方向に遮蔽体719が配置されたたことにより、遮蔽体719による抵抗増加を抑えることができる。
噴出し口517Bは船底に設けられているため、水は船底から斜め下方に向かって噴出し口517Bから噴出される。船舶701が航行すると水は船底に沿って流れるが、噴出し口517Bの近傍においては、噴出された水により船底から離れる方向の流れが発生する。すると、遮蔽体719により遮られる船底に沿った水の流れが弱くなり、遮蔽体719による抵抗増加を抑えることができる。
【0068】
〔第8の実施形態〕
次に、本発明の第8の実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、
図18を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図18は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第6の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
船舶801は、図18に示すように、船体3と、主駆動機関(図示せず)と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)811とを備えている。
【0070】
ポンプジェットスラスタ811は、主駆動機関および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ811は、吸込み口813と、ポンプ815と、噴出し口817と、配管819と、を備えている。
吸込み口813は、船体3の外板であって船底に設けられている。吸込み口813は、船体3外から水が吸込まれる開口部である。
ポンプ815は、船体3の内部であって、配管819に設けられている。ポンプ815は、吸込み口813から吸込まれた水を加圧して、噴出し口817から噴出させるものである。
噴出し口817は、船体3の船尾側に設けられ、船舶801の進行方向に対して後方に向かって開口する開口部である。噴出し口817からは、ポンプ815により加圧された水が噴出される。
配管819は、船体3内に配置され、吸込み口813と噴出し口817とを連通させるものである。また、配管819には、ポンプ815が配置されている。配管819内には、吸込み口813から流入した水が流れる。
【0071】
次に、上記の構成からなる船舶801における作用について説明する。
通常航行時には、船舶801は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ811は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0072】
荒天などの海象悪化時には、船舶801は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ811を用いて航行する。つまり、船舶801は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ811による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0073】
上記の構成によれば、補助推進部としてポンプジェットスラスタ811を備えることにより、加勢推進力を発生させることができる。
ポンプジェットスラスタ811は、吸込み口813から吸込んだ水をポンプ815で加圧し、加圧された水を噴出し口817から船尾方向へ噴出させることで加勢推進力を発生させることができる。補助推進部としてポッド型推進器を用いた場合と比較して、ポンプジェットスラスタ811は船体3内に配置されるため、抵抗が少なく船舶801の燃費低下を防止することができる。
【0074】
〔第9の実施形態〕
次に、本発明の第9の実施形態について図19を参照して説明する。
本実施形態の船舶の基本構成は、第8の実施形態と同様であるが、第8の実施形態とは、ポンプジェットスラスタの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、
図19を用いてポンプジェットスラスタ周辺のみを説明し、主駆動機関等の説明を省略する。
図19は、本実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
なお、第8の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
船舶901は、図19に示すように、船体3と、主駆動機関(図示せず)と、シャフト7と、主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)911とを備えている。
【0076】
ポンプジェットスラスタ911は、主駆動機関および主プロペラ9により発生される推進力を補う加勢推進力を発生させるものである。ポンプジェットスラスタ911は、吸込み口813と、ポンプ815と、噴出し口817と、配管919と、排水管921とを備えている。
吸込み口813は、船体3の外板であって船底に設けられている。吸込み口813は、船体3外から水が吸込まれる開口部である。
ポンプ815は、船体3の内部であって、配管919に設けられている。ポンプ815は、吸込み口813から吸込まれた水および排水管921から排出された排水を加圧して、噴出し口817から噴出させるものである。
噴出し口817は、船体3の船尾側に設けられ、船舶801の進行方向に対して後方に向かって開口する開口部である。噴出し口817からは、ポンプ815により加圧された水が噴出される。
配管919は、船体3内に配置され、吸込み口813と噴出し口817とを連通させるものである。また、配管919には、ポンプ815が配置されている。配管919内には、吸込み口813から流入した水および排水管921から流入した排水が流れる。
排水管921は、主駆動機関の冷却水を配管919に排出する配管である。排水管921は、配管919における吸込み口813とポンプ815との間に接続されている。なお、排水管921は、上述のように主駆動機関の冷却水を配管919に排出するものでもよいし、通常航行時において船舶901から排出される他の水を配管919に排出するものであってもよく、特に限定するものではない。
【0077】
次に、上記の構成からなる船舶901における作用について説明する。
通常航行時には、船舶901は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9のみを用いて航行する。このときポンプジェットスラスタ911は停止され、加勢推進力を発生していない。
【0078】
荒天などの海象悪化時には、船舶901は、主駆動機関(図示せず)および主プロペラ9と、ポンプジェットスラスタ911を用いて航行する。つまり、船舶901は、主プロペラ9による推進力とポンプジェットスラスタ911による加勢推進力とにより、海象悪化時においても所定速力で航行できる。
【0079】
上記の構成によれば、ポンプジェットスラスタ911が噴き出す水の少なくとも一部に、船舶901内から排出された水が含まれているため、船舶901の全体として経済性の向上を図ることができる。つまり、ポンプジェットスラスタ911の作動時に、船体3外から吸込まれる水の量を減少できるため、水の吸込みに伴う船体3の抵抗削減を図ることができる。同時に、ポンプジェットスラスタ911における吸込み口813および配管919などの設備削減が図れる。その結果、船舶901の全体として経済性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図2】図1の船舶における荒天時の状態を説明する模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図5】図4のポッド型推進器における通常航行時の状態を説明する模式図である。
【図6】図4のポッド型推進器における荒天時の状態を説明する模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図9】図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
【図10】図8のポンプジェットスラスタの配置位置を説明する断面図である。
【図11】図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図12】図8のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図14】図13のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図16】図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する断面図である。
【図17】図15のポンプジェットスラスタの構成を説明する平面図である。
【図18】本発明の第8の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【図19】本発明の第9の実施形態における船舶の構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1,101,201,301,401,501,601,701,801,901 船舶
3 船体
5 主駆動機関(駆動機関)
9 主プロペラ(プロペラ)
11,111,211,311,411 ポッド型推進器(補助推進部)
13,213 ポッド
15,215,315,415 ポッドプロペラ
17 ストラット
19,419 電動機(駆動部)
217 舵(ストラット)
511,611,711,811,911 ポンプジェットスラスタ(補助推進部、ジェット推進装置)
513,613,813 吸込み口
515,815 ポンプ
517,517A,517B,617,817 噴出し口
719 遮蔽体(凸部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体を推進させる推進力を発生するプロペラと、該プロペラを回転駆動させる駆動機関と、加勢推進力を発生する補助推進部と、を備えた船舶において、
前記駆動機関および前記プロペラは、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生させ、
前記補助推進部は、上記所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生させることを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記駆動機関の常用出力は、前記駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して60%以上80%以下となるよう設定され、
前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して20%以上40%以下となるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記駆動機関の出力が、前記駆動機関の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、
前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できる場合は、前記補助推進部を停止させ、
前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、前記補助推進部を加勢推進力として使用することを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記補助推進部は、
断面が翼形状であるストラットと、
該ストラットに設けられ、内部に駆動部を有するポッドと、
該ポッドに設けられ、前記駆動部により回転駆動されるポッドプロペラを備えているポッド型推進器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項5】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記ポッド型推進器が、前記船体中または前記船体上に格納可能に設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の船舶。
【請求項7】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、
前記ポッドプロペラは、ピッチ角を変更できる可変ピッチプロペラであることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項8】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、
前記駆動部内に電動機が設けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項9】
前記補助推進部が、前記船体の外板に設けられた水の吸込み口と、
吸込んだ水を加圧するポンプと、
前記船体に設けられ、加圧された水を所定方向へ噴出せる噴出し口を備えるジェット推進器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項1】
船体を推進させる推進力を発生するプロペラと、該プロペラを回転駆動させる駆動機関と、加勢推進力を発生する補助推進部と、を備えた船舶において、
前記駆動機関および前記プロペラは、少なくとも平水中で所定速力を維持する推進力を発生させ、
前記補助推進部は、上記所定速力を維持できない場合に、加勢推進力を発生させることを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記駆動機関の常用出力は、前記駆動機関および前記補助推進部により発生される全体常用出力に対して60%以上80%以下となるよう設定され、
前記補助推進部の常用出力は、前記全体常用出力に対して20%以上40%以下となるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記駆動機関の出力が、前記駆動機関の常用出力に対して90%以上100%以下の出力で運転される場合において、
前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できる場合は、前記補助推進部を停止させ、
前記駆動機関のみを用いて前記所定速力で航行できない場合は、前記補助推進部を加勢推進力として使用することを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記補助推進部は、
断面が翼形状であるストラットと、
該ストラットに設けられ、内部に駆動部を有するポッドと、
該ポッドに設けられ、前記駆動部により回転駆動されるポッドプロペラを備えているポッド型推進器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項5】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記ポッド型推進器が、前記船体中または前記船体上に格納可能に設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の船舶。
【請求項7】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、
前記ポッドプロペラは、ピッチ角を変更できる可変ピッチプロペラであることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項8】
前記ポッド型推進器は、前記プロペラに対して船尾側に配置され、
前記駆動部内に電動機が設けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項9】
前記補助推進部が、前記船体の外板に設けられた水の吸込み口と、
吸込んだ水を加圧するポンプと、
前記船体に設けられ、加圧された水を所定方向へ噴出せる噴出し口を備えるジェット推進器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−313938(P2007−313938A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142901(P2006−142901)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
[ Back to top ]