説明

船舶

【課題】貨物収容部が大型化した場合であっても製造コスト及び重量の増加を抑制することができる船舶を提供する。
【解決手段】船体の一部に貨物を収容可能な貨物収容部1を有する船舶であって、貨物収容部1は、内殻11aと外殻11bとを有するダブルハル構造の船殻11と、船殻11の上部に接続され方形タンク2を覆うシングルハル構造のカバー部材12と、を有し、船殻11は、船体の甲板と略同じ高さに形成されている。前記貨物は、例えばLNGやLPG等の液化ガスであり、貨物収容部1は、これらを収容した方形タンク2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関し、特に、船体の一部に荷役を収容可能な荷役収容部を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役収容部を有する船舶には、例えば、ばら積船、コンテナ船、タンカー等の種類がある。これらの船舶の中には、荷役が外部に流出しないように船体を二重に形成したダブルハル構造(二重船殻構造)を有しているものがある。例えば、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)等の液化ガスは、一般に、これらの液化ガスを収容するタンクを備えた船舶(いわゆるタンカー)により運搬されている。かかるタンカーには、球形独立タンク方式、方形独立タンク方式、メンブレン方式等の収容方式が採用されている(例えば、特許文献1図5〜図7参照)。
【0003】
球形独立タンク方式は、船体と球形タンクとが独立の構造をなしており、船体内に球形タンクが自立して配置されている(特許文献1図5参照)。かかる球形独立タンク方式では、一般に、船体がダブルハル構造(二重船殻構造)を有し、球形タンクそのものが断熱構造を有している。したがって、球形独立タンク方式輸送船は、荷役が漏洩し難くかつタンクの温度や変形が船体に伝達され難い構造を有している。
【0004】
また、方形独立タンク方式は、球形独立タンク方式と基本的に同じ構造を有し、タンク形状を船体に収容し易い方形形状に構成したものである(特許文献1図6参照)。したがって、方形独立タンク方式は、球形独立タンク方式と同様に、荷役が漏洩し難くかつタンクの温度や変形が船体に伝達され難い構造を有している。また、方形独立タンク方式の船舶では、方形タンクの全体をダブルハル構造(二重船殻構造)で覆ったもの(特許文献2図1参照)や方形タンクの上面部以外の船側及び船底をダブルハル構造(二重船殻構造)で覆ったもの(特許文献3図2参照)が既に提案されている。
【0005】
また、メンブレン方式は、船体とタンクを一体に構成した構造をなしており、船体内部に断熱材を配置してメンブレン(金属薄膜)で被覆した構造を有している(特許文献1図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−241906号公報、図5〜図7
【特許文献2】特開昭60−82495号公報、図1
【特許文献3】特開平8−91286号公報、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、LNG等の液化ガスの海上輸送量は年々増加しており、タンカーも大型化する傾向にある。しかしながら、上述した球形独立タンク方式では、タンクが球形をなしていることから船体への収容効率が悪く、船体が必要以上に大型化してしまい、製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題があった。また、上述したメンブレン方式では、タンクと船体が一体に構成されていることから、タンクの大型化によりダブルハル構造の部分も大型化してしまい、製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題があった。
【0008】
さらに、上述した特許文献2及び特許文献3に記載された方形独立タンク方式では、球形独立タンク方式よりも収容効率が高いものの、船体全体又は船側や船底をダブルハル構造(二重船殻構造)に構成しなければならず、ダブルハル構造(二重船殻構造)の部分が必要以上に喫水よりも高くなってしまい、製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題があった。
【0009】
また、これらの問題は、上述したタンカーに限定されるものではなく、ばら積船やコンテナ船等の船舶においても、荷役収容部が大型化することにより、ダブルハル構造(二重船殻構造)の部分も大型化し、製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、荷役収容部が大型化した場合であっても製造コスト及び重量の増加を抑制することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、船体の一部に荷役を収容可能な荷役収容部を有する船舶において、前記荷役収容部は、内殻と外殻とを有するダブルハル構造の船殻と、該船殻の上部に接続され前記荷役を覆うシングルハル構造のカバー部材と、を有し、前記船殻は、前記船体の甲板と略同じ高さに形成されている、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0012】
前記カバー部材と前記船殻との接続位置は、例えば、前記カバー部材に配置される補強部材の大きさにより、前記内殻から前記外殻までの幅内で設定される。また、前記荷役収容部は、前記カバー部材の前記船殻との接続位置の上部又は前記船殻の前記カバー部材との接続位置の外側に通路を有していてもよい。
【0013】
また、前記荷役収容部は前記船体の長手方向に沿って複数配置され、前記カバー部材は前記荷役収容部の全てを被覆可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、前記荷役は、例えば、気体、液体、固体又はこれらを収容したコンテナ若しくは方形タンクのいずれかである。ここで、「気体、液体、固体」とは、穀物、食物、鉱物、鋼材、材木、原油、石油、石油製品、液化ガス、化学薬品、化学製品、雑貨、機械製品、機械部品等の船舶により運搬され得る全ての物を意味する。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る船舶によれば、荷役収容部をダブルハル構造の船殻とシングルハル構造のカバー部材とに分離したことにより、荷役収容部が大型化した場合であっても、ダブルハル構造の船殻を船体の甲板と略同じ高さに形成することができ、製造コスト及び重量の増加を抑制することができる。特に、LNGやLPG等の比較的比重の軽い液化ガスを輸送する船舶では、喫水が浅くなる傾向にあり、不必要なダブルハル構造部分を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る船舶の第一実施形態を示す図であり、(A)は短手方向断面図、(B)は図1(A)の部分拡大図、である。
【図2】図1に示した船舶の長手方向部分断面図である。
【図3】図1に示した船舶の全体概略外観図である。
【図4】図1に示した船舶の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
【図5】図1に示した船舶の変形例を示す図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、を示している。
【図6】本発明に係る船舶の他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係る船舶の第一実施形態を示す図であり、(A)は短手方向断面図、(B)は図1(A)の部分拡大図、である。また、図2は、図1に示した船舶の長手方向部分断面図であり、図3は、図1に示した船舶の全体概略外観図である。
【0018】
図1に示した本発明に係る船舶の第一実施形態は、船体の一部に荷役を収容可能な荷役収容部1を有する船舶であって、荷役収容部1は、内殻11aと外殻11bとを有するダブルハル構造の船殻11と、船殻11の上部に接続され方形タンク2を覆うシングルハル構造のカバー部材12と、を有し、船殻11は、船体の甲板3と略同じ高さに形成されている。かかる第一実施形態における荷役は、LNGやLPG等の液化ガスを収容した方形タンク2であり、船舶として、いわゆるタンカーを想定している。
【0019】
前記荷役収容部1は、図2に示すように、例えば、船首4と船尾5との間に配置される。また、荷役収容部1は、船体の長手方向に沿って複数(例えば、3〜4個)の方形タンク2を配置可能な空間を有する。また、図1に示すように、荷役収容部1は、ダブルハル構造(二重船殻構造)の船殻11とシングルハル構造(一重船殻構造)のカバー部材12とにより、方形タンク2を収容する空間を形成している。このように、荷役収容部1をダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とに分離したことにより、ダブルハル構造の船殻11の高さを任意に設定することができる。
【0020】
前記方形タンク2は、LNGやLPG等の液化ガスを封入した荷役である。かかる方形タンク2は、図1及び図2に示すように、例えば、八角柱形状をなしており、船体の長手方向に横倒しされた状態で荷役収容部1内に配置されている。このとき、方形タンク2は、荷役収容部1の船底部に配置された複数の支持ブロック21上に配置される。また、方形タンク2は、上部に収容物の出し入れを行う倉口部22を有する。倉口部22は、方形タンク2の収容状態において、カバー部材12から突出した状態となるように形成されており、その上部に蓋部材23が着脱可能に接続されている。
【0021】
なお、方形タンク2の形状、構造、支持方法、配置方法等は、船舶の条件等により種々変更できるものであり、上述の内容に限定されるものではない。
【0022】
前記船殻11は、図1(A)に示したように、内殻11aと外殻11bとを有するダブルハル構造(二重船殻構造)により構成されており、荷役収容部1の船体強度を担保できるように構成されている。また、船殻11の船底部中央には、ダクトキール11cが配置されており、船殻11の両側部上面にはアンダーデッキパッセージ11dが配置されている。ダクトキール11c及びアンダーデッキパッセージ11dは、船殻11内の保守・点検に作業者が利用する通路を構成している。また、船殻11の内殻11a、外殻11b、ダクトキール11c及びアンダーデッキパッセージ11dにより囲まれた空間は、バラストタンク11eとしての機能を有し、図示しない注排水機構により、内部に海水を注水又は排水できるように構成されている。なお、船殻11内には、図1(B)示したように、補強部材として大骨(トランス)や縦通部材(ロンジ)等が配置されている。
【0023】
なお、船殻11の内部構造は、船舶の条件等により種々変更できるものであり、例えば、ダクトキール11cやアンダーデッキパッセージ11dを省略してもよい、バラストタンク11eに相当する箇所を空所、倉庫、通路、燃料タンク、清水タンク等に利用してもよい等、上述の内容に限定されるものではない。
【0024】
また、船殻11のアンダーデッキパッセージ11dの上部には平面部11fが形成されており、この平面部11f上にカバー部材12が溶接等により接続される。図1(B)に示したように、カバー部材12と船殻11との接続位置は、例えば、平面部11fの略中間部に設定される。このとき、カバー部材12と外殻11bとの間には幅Wの隙間が形成される。したがって、外殻11bに添って手摺13aを配置することにより、平面部11f上の幅Wの隙間を通路13として利用することができる。このように、船殻11のカバー部材12との接続位置の外側に通路13を形成することにより、カバー部材12の接続作業、カバー部材12の保守・点検、船首4・船尾5間の移動等を容易に行うことができる。
【0025】
前記カバー部材12は、シングルハル構造(一重船殻構造)を有し、内側に補強部材として大骨12aや縦通部材12bが配置されている。大骨12aは、船体の幅方向に配置された鋼板であり、トランスとも呼ばれている補強部材である。縦通部材12bは、船体の長手方向に複数の大骨12aを貫通して配置された鋼板であり、ロンジとも呼ばれている補強部材である。カバー部材12は、荷役収容部1の船体強度を担保する部材ではないが、図2及び図3に示したように、船体の長手方向に延びた平面部材であるため、一定の強度が必要となる。そこで、カバー部材12には、大骨12aや縦通部材12b等の補強部材が配置される。
【0026】
なお、カバー部材12の形状、構造、補強方法等は、船舶の条件等により種々変更できるものであり、上述の内容に限定されるものではない。
【0027】
図1(B)に示したように、方形タンク2とカバー部材12との間には距離Dの隙間が形成されており、この隙間に補強部材の一つである大骨12aが収まるように設計しなければならない。したがって、カバー部材12と船殻11との接続位置は、カバー部材12に配置される補強部材(例えば、大骨12a)の大きさにより、内殻11aから外殻11bまでの幅内で設定される。このように、カバー部材12の接続位置を補強部材との関係を考慮して、例えば、カバー部材12の垂直部分に配置された補強部材が内殻11aよりも内側に配置されないように設定することにより、荷役収容部1内の空間を効果的に利用することができる。
【0028】
図2及び図3に示すように、方形タンク2は船体の長手方向に沿って複数(図では、三個の場合を示している)配置され、カバー部材12は方形タンク2の全てを被覆可能な形状に構成されている。このとき、カバー部材12は、船体の長手方向に複数に分割されたブロックごとに形成され、船殻11上にブロックを順次配置して溶接することにより船殻11の上部にカバー部材12を接続する。なお、カバー部材12の上部には、方形タンク2の倉口部22を挿通する複数の開口部が形成されている。
【0029】
上述したように、荷役収容部1をダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とに分離したことにより、ダブルハル構造の船殻11の高さを任意に設定することができる。したがって、図2及び図3に示したように、船殻11は、船体の甲板3と略同じ高さに形成することができる。一般に、甲板3の高さは、最大積載時における船体重量と喫水との関係により設計される。
【0030】
従来の方形独立タンク方式のタンカーでは、荷役収容部の全体又は船側や船底をダブルハル構造に構成しなければならず、荷役収容部では甲板3よりも高い位置までダブルハル構造に建造しなければならず、喫水に対して必要以上にダブルハル構造部分が高くなってしまい、製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題があった。さらに、LNGやLPG等の液化ガスを輸送する船舶では、船体の大きさに比して喫水が浅くなること、輸送量が増加した場合にはタンクが高さ方向に大型化し易いこと等の観点から、上述の問題点がより顕著になるという問題があった。
【0031】
そこで、本発明では、荷役収容部1をダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とに分離し、船殻11で船体強度を担保し、船殻11から突出した方形タンク2をカバー部材12で覆うこととした。かかる構成により、ダブルハル構造の高さを甲板3と略同じ高さに設定することができ、必要最小限の部分のみダブルハル構造に設計することができ、製造コスト及び重量の増加を抑制することができる。なお、「略同じ高さ」とは、面一の状態のみならず若干の段差(例えば、1〜2m程度まで)を有する場合を含む趣旨である。
【0032】
図1(A)に示したように、船殻11の喫水からの高さをHd、カバー部材12の高さをHsとすれば、カバー部材12の喫水からの高さHはHd+Hsと表現できる。そして、例えば、船殻11の喫水からの高さHdは、カバー部材12の喫水からの高さHの略半分以下、例えば、(1/3)・H≦Hd≦(1/2)・Hの関係を満たすように設定される。従来の方形独立タンク方式ではカバー部材12の高さHsの部分もダブルハル構造となっていたが、本発明ではシングルハル構造に変更することができ、製造コスト及び重量の増加を抑制することができる。
【0033】
次に、図1に示した船舶の変形例について説明する。ここで、図4は、図1に示した船舶の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。また、図5は、図1に示した船舶の変形例を示す図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、を示している。なお、図1に示した船舶と同じ構成部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0034】
図4に示した変形例は、カバー部材12の接続位置を変更したものである。図4(A)に示した第一変形例は、カバー部材12を船殻11の外殻11bに添って接続したものである。かかる第一変形例では、方形タンク2とカバー部材12との間に十分な距離Dの隙間が形成されるため、大骨12a等の補強部材の設計及び据付を容易に行うことができる。また、補強部材のために船殻11の深さ(内殻11aと外殻11bとの間隔)を大きくする必要がなく、製造コスト及び重量の増加を効果的に抑制することができる。
【0035】
一方で、船殻11の平面部11f上の幅Wの隙間がなくなってしまうことから、船殻11上に通路を形成することができない。そこで、カバー部材12の船殻11との接続位置の上部に平面部を形成し、その平面部を通路13とすることが好ましい。また、通路13の外側には手摺13aが配置することが好ましい。
【0036】
図4(B)に示した第二変形例は、カバー部材12を船殻11の内殻11aに添って接続したものである。かかる第二変形例では、方形タンク2とカバー部材12との間に十分な距離Dの隙間を形成することができないため、大骨12aや縦通部材12b等の補強部材は、例えば、カバー部材12の外面に配置される。一方で、船殻11の平面部11f上の幅Wの隙間を十分に取ることができるため、船殻11上に通路13を形成することができる。なお、大骨12aが幅Wの隙間を占拠する場合には、大骨12aに貫通孔を形成して通路13を確保するようにすればよい。
【0037】
図5に示した変形例は、船殻11の喫水からの高さHdを変更したものである。図5(A)に示した第三変形例は、船殻11の喫水からの高さHdをカバー部材12の喫水からの高さHの略2/3以下、例えば、(1/2)・H≦Hd≦(2/3)・Hの関係を満たすように設定したものである。かかる第三変形例は、比重の重い液化ガスや液体を方形タンク2に収容する場合等のように喫水が深くなり易い船舶に適用される。第三変形例では、図1に示した実施形態の船舶よりもダブルハル構造部分が高くなるが、カバー部材12の喫水からの高さHの1/3程度の部分をシングルハル構造に変更することができ、従来の方形独立タンク方式の船舶と比較すれば十分に本発明の効果を奏する。
【0038】
図5(B)に示した第四変形例は、船殻11の喫水からの高さHdをカバー部材12の喫水からの高さHの略1/3以下、例えば、Hd≦(1/3)・Hの関係を満たすように設定したものである。かかる第四変形例は、比重の軽い液化ガスを方形タンク2に収容する場合等のように喫水が浅くなり易い船舶に適用される。第四変形例では、図1に示した実施形態の船舶よりもダブルハル構造部分を低くすることができ、本発明の効果をより効果的に発揮させることができる。
【0039】
次に、本発明に係る船舶の他の実施形態について説明する。ここで、図6は、本発明に係る船舶の他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、を示している。なお、図1に示した第一実施形態と同じ部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0040】
図6(A)に記載した第二実施形態は、本発明をコンテナ船に適用したものである。図示したように、荷役収容部1は、ダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とから構成されている。そして、船殻11とカバー部材12とにより囲まれた空間内には、複数のコンテナ6が積載されている。コンテナ6の積載方法は、従来と同様の積載方法を使用することができ、固縛装置や固縛部材の図は省略してある。カバー部材12は、天井部に配置されたハッチカバー12cと、船殻11の上部に配置されたハッチコーミング12dと、により構成されている。かかる第二実施形態では、ハッチコーミング12dの高さが、コンテナ1段又は2段以上の高さに設定されている。また、図示したように、カバー部材12(ハッチカバー12c)の上部に複数のコンテナ6を積載するようにしてもよい。なお、ハッチコーミング12dには、大骨や縦通部材等の補強部材を配置するようにしてもよい。
【0041】
図6(B)に記載した第三実施形態も、本発明をコンテナ船に適用したものである。図示したように、荷役収容部1は、ダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とから構成されている。そして、船殻11とカバー部材12とにより囲まれた空間内には、複数のコンテナ6が積載されている。コンテナ6の積載方法は、従来と同様の積載方法を使用することができ、固縛装置や固縛部材の図は省略してある。カバー部材12は、天井部に配置されたハッチカバー12cと、船殻11の上部に配置されたハッチコーミング12dと、により構成されている。かかる第三実施形態では、ハッチカバー12cの脚部の長さが、コンテナ1段又は2段以上の長さに設定されている。このようにハッチカバー12cから脚部を延出することにより、荷役収容部1の高さを容易に嵩上げすることができ、荷役収容部1の大型化を容易に図ることができる。また、図示したように、カバー部材12(ハッチカバー12c)の上部に複数のコンテナ6を積載するようにしてもよい。なお、ハッチコーミング12dには、大骨や縦通部材等の補強部材を配置するようにしてもよい。
【0042】
図6(C)に記載した第四実施形態は、本発明をばら積船に適用したものである。図示したように、荷役収容部1は、ダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とから構成されている。そして、船殻11とカバー部材12とにより囲まれた空間が貯蔵庫7を構成している。貯蔵庫7は、例えば、仕切部材71により、船体の短手方向に分割されていてもよい。また、カバー部材12の天井部にはハッチカバー72が配置されている。かかるハッチカバー12を開閉することにより、貯蔵庫7に荷役を収容したり排出したりすることができる。なお、貯蔵庫7及びハッチカバー72には、従来から使用されている種々の構造のものを使用することができ、図示した構造に限定されるものではない。
【0043】
上述した第二実施形態〜第四実施形態に示したように、ばら積船やコンテナ船に本発明を適用した場合であっても、荷役収容部1をダブルハル構造の船殻11とシングルハル構造のカバー部材12とに分離することができ、荷役収容部1が大型化した場合であっても、ダブルハル構造の船殻11を船体の甲板3と略同じ高さに形成することができ、製造コスト及び重量の増加を抑制することができる。
【0044】
また、本発明をばら積船やコンテナ船に適用することにより、荷役収容部1に、気体、液体、固体、これらを収容したコンテナ等の荷役を収容することができ、荷役収容部1に収容する荷役の対象を拡大することができる。ここで、「気体、液体、固体」とは、穀物、食物、鉱物、鋼材、材木、原油、石油、石油製品、化学薬品、化学製品、雑貨、機械製品、機械部品等の船舶(例えば、ばら積船やコンテナ船)により運搬され得る全ての物を意味する。
【0045】
上述した実施形態において、「船舶」として、タンカー、コンテナ船及びばら積船を想定して説明したが、本発明において「船舶」とは、上述した運搬船に限定されるものではなく、広く自走式又は曳航式の浮体構造物を含む趣旨である。また、荷役収容部1は、船首4と船尾5との間に配置されている必要はなく、船首4側又は船尾5側の一方に寄った位置に配置されていてもよい。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されず、第一変形例〜第四変形例を適宜組み合わせてもよい、第二実施形態〜第四実施形態に第一変形例〜第四変形例を適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1…荷役収容部
2…方形タンク
3…甲板
4…船首
5…船尾
6…コンテナ
7…貯蔵庫
11…船殻
11a…内殻
11b…外殻
11c…ダクトキール
11d…アンダーデッキパッセージ
11e…バラストタンク
11f…平面部
12…カバー部材
12a…大骨
12b…縦通部材
12c…ハッチカバー
12d…ハッチコーミング
13…通路
13a…手摺
21…支持ブロック
22…倉口部
23…蓋部材
71…仕切部材
72…ハッチカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の一部に荷役を収容可能な荷役収容部を有する船舶において、
前記荷役収容部は、内殻と外殻とを有するダブルハル構造の船殻と、該船殻の上部に接続され前記荷役を覆うシングルハル構造のカバー部材と、を有し、前記船殻は、前記船体の甲板と略同じ高さに形成されている、ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記カバー部材と前記船殻との接続位置は、前記カバー部材に配置される補強部材の大きさにより、前記内殻から前記外殻までの幅内で設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記荷役収容部は、前記カバー部材の前記船殻との接続位置の上部又は前記船殻の前記カバー部材との接続位置の外側に通路を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記荷役収容部は前記船体の長手方向に沿って複数配置され、前記カバー部材は前記荷役収容部の全てを被覆可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記荷役は、気体、液体、固体又はこれらを収容したコンテナ若しくは方形タンクのいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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