説明

良品・不良品判断装置

【課題】
金属製異物が混入している不良品と、金属製異物が混入していない良品とを即座に判別できるようにした金属製異物検知装置を提供する。
【解決手段】
被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置する場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していないと判断し、前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置しない場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していると判断することによって、被検知用の製品を、異物が混入している不良品と、当該異物が混入していない良品とに判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知製品を、異物が混入している不良品と、異物が混入していない良品とに即座に判別できるようにした良品・不良品判断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知物中に、例えば、金属製の異物が混入している場合、当該異物が混入している衣類、繊維、カーペット、織物等の不良品を製品中から検知して除外する必要がある。
【0003】
特許文献1には、被検知物中に混入している金属製の異物を検知する異物検知装置が開示されている
【0004】
【特許文献1】特開平11−118766号公報
【0005】
図4乃至図8は、特許文献1に記載されている異物検知装置の概略を示す図である。図中、103は送信コイルを示し、201は受信コイルを示す。被検知物Hはこれら送信コイル103と受信コイル201との間を搬送されて、該被検知物H中に混入している金属製の異物が磁気的に検知されるようになっている。前記送信コイル103からは、図5に示す電磁波Iが前記被検知物Hへ向けて照射されるように構成されている。図6は前記電磁波Iが被検知物Hに照射されることで、該被検知物Hに誘起された誘起電圧Fを示す。
【0006】
ここで、前記電磁波Iは被検知物Hに照射されることで、位相変調、及び振幅変調されるものであって、図6に示す誘起電圧Fは位相変調、及び振幅変調されている。又、被検知物H中に異物が混入している場合、異物の種類によって、誘起電圧Fの形態が異なるものである。
【0007】
つまり、例えば、鉄を高周波中に置いた場合、鉄は直接磁化されて、高周波の交番磁界を乱す。一方、ステンレスを高周波中に置いた場合、ステンレスは磁化されにくく、ステンレスの内部で発生したうず電流によって二次的に磁界が発生して高周波の交番磁界を乱す。このように、二次的に発生した磁界は前述の鉄のように直接磁化される場合と比較して位相が約90度遅れる。又、二次的に発生した磁界の振幅も鉄の場合とは異なる。
【0008】
つまり、被検知物H中に混入している異物の種類の違いに応じて、誘起される誘起電圧Fの位相及び振幅が異なるために、誘起電圧Fの位相及び振幅に基づいて、被検知物H中に混入している異物の種類を検知する構成である。
【0009】
次に、前記受信コイル201の後段には受信アンプ202を介して同期検波器105が設けられて、図6に示す前記誘起電圧Fは該同期検波器105に入力される。図7に示すように、前記誘起電圧Fは同期検波器105においてX軸とY軸の直交座標上に、X軸に対して位相角φを傾けて配置されるように設定されている。そして、同期検波器105は、前記誘起電圧FをX成分とY成分とに分解して出力する構成になっている。
【0010】
図4に示すように、前記同期検波器105の後段には、ノイズを除去するための信号フィルタ204を介してXY位相検出演算装置108が設けられて、前記誘起電圧FのX成分、及びY成分が該XY位相検出演算装置108に入力される構成になっている。XY位相検出演算装置108においては、前記誘起電圧FのX成分とY成分を合成することで、図8に示すリサージュ図形を求める構成になっている。リサージュ図形は、図7における誘起電圧Fの基点Pを直交座標の原点に移し、時間要素を取り除くことで得られた図形である。又、同図8において、各点P1,P22,P3,・・・Pn は前記X成分とY成分とを合成した誘起電圧Fのベクトルを示している。
【0011】
図8に示すリサージュ図形は、被検知物H中に混入している異物の種類に応じて異なっているために、リサージュ図形の形態によって被検知物H中に混入している異物の種類を検知することができるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前記リサージュ図形は金属の種類によって異なるために、リサージュ波形によって金属性異物を検出しようとすると、製品中に混入されることが予想される金属の種類だけのリサージュ図形を予め求めて用意しておき、実際に検出された金属性異物のリサージュ波形と、予め用意しておいたリサージュ図形とを照合しなければならないが、製品中に混入されることが予想される金属性異物の種類が多い場合には、実際に検出された金属性異物のリサージュ図形と、予め用意しておいたリサージュ図形とを照合が繁雑、面倒であるだけでなく、そのための装置が複雑になって実用的でないという問題があった。
【0013】
このため、特許文献1に記載の発明は、例えば、製造ライン上を搬送され多量の商品中から金属製異物が混入している不良品のみを即座に検知して除去する作業に用いることは好ましいものではなかった。
【0014】
このために、従来から、多量の商品中から金属製異物が混入している不良品のみを即座に検知できるようにした良品・不良品判断装置が望まれていた。
【0015】
本発明は前記背景技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、金属製異物が混入している不良品と、金属製異物が混入していない良品とを即座に判別できるようにした良品・不良品判断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に電磁波を照射することで該被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相又は振幅を求め、当該誘起電圧の位相又は振幅に基づいて、前記被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに判別できる良品・不良品判別装置であって、
異物が混入していないサンプル良品に電磁波を照射することで該サンプル良品に誘起した誘起電圧の位相又は振幅によって特定される良品エリアを記憶する良品エリア記憶手段と、
前記被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相又は振幅が前記良品エリア記憶手段に記憶された良品エリア内に位置するか否かを判断する判断手段とを備え、
前記判断手段は前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相又は振幅が、前記良品エリア内に位置する場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していないと判断し、前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相又は振幅が、前記良品エリア内に位置しない場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していると判断することによって、被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに判別することを特徴とする良品・不良品判断装置である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に電磁波を照射することで該被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相、及び振幅を求め、当該誘起電圧の位相及び振幅に基づいて、被検知用の製品を、金属異物が混入している不良品と当該金属異物が混入していない良品とに判別できる良品・不良品判別装置であって、
金属異物が混入していないサンプル良品に電磁波を照射することで該サンプル良品に誘起した誘起電圧の位相、及び振幅によって特定される良品エリアを記憶する良品エリア記憶手段と、
前記被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相、及び振幅が前記良品エリア記憶手段に記憶された良品エリア内に位置するか否かを判断する判断手段とを備え、
前記判断手段は前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置する場合には前記被検知用の製品中に金属異物が混入していないと判断し、前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置しない場合には前記被検知用の製品中に金属異物が混入していると判断することによって、被検知用の製品を、金属異物が混入している不良品と当該金属異物が混入していない良品とに判別することを特徴とする良品・不良品判断装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相又は振幅が、良品エリア内に位置する場合には被検知用の製品中に異物が混入していないと判断し、被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相又は振幅が、良品エリア内に位置しない場合には被検知用の製品中に異物が混入していると判断することによって、前記被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに即座に判別することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相及び振幅が、良品エリア内に位置する場合には被検知用の製品中に異物が混入していないと判断し、被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相及び振幅が、良品エリア内に位置しない場合には被検知用の製品中に異物が混入していると判断することによって、前記被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに即座に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1乃至図3は実施形態を示す図である。図1は全体のブロック構成図である。図2及び図3は作用を説明する図である。
【0021】
図4に示す背景技術と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。良品・不良品判断装置1は、良品エリア演算手段2と良品エリア記憶手段3と判断手段4とを備え、被検知用製品のリサージュ図形のデータDは、切換手段5によって、良品エリア演算手段2又は判断手段4に選択されて入力される構成になっている。良品・不良品判断装置1は、CPU,及び所定のプログラムソフトを内蔵したコンピュータで構成することができる。又、本発明は、被検知用の製品として衣類、繊維、カーペット、織物等に適用できるものである。又、被検知用の製品中に混入される異物とは、製品の成分とは異なる成分のものであって、多種のものが予想されるが、以下の説明では、金属製の異物を例にとって説明する。
【0022】
前記良品エリア演算手段2の入力端子には、図2に示すように、金属製の異物が混入していないことが予め分かっている製品、即ち、サンプル良品のリサージュ図形のデータDが極座標の形態で入力されるものである。
【0023】
次に、前記良品エリア演算手段2の機能について説明する。先ず、金属製の異物が混入していないことが予め分かっている製品、即ち、サンプル良品に電磁波を照射し、該サンプル良品に誘起する誘起電圧を求めることで図2に示すように、サンプル良品のリサージュ図形を求める。リサージュ図形の各点は、原点Oから各点までの距離rと原点Oと各点とを結ぶ直線Aと基線Kとの成す角によって特定される。次に、原点Oから全ての点までの距離rを求め、その距離rが最大の点Mまでの距離をR1とし、当該点Mと原点Oとを結ぶ直線Aと基線Kとの成す角αとする。次に、当該直線Aと直交する直線B、即ち、基線Kとα+90を成す直線B上の点であって、原点Oとの
距離が最大と成る点Nまでの距離R2を求める。即ち、前記良品エリア演算手段2は、基線Kに対して角αの方向への距離がR1であって、基線Kに対してα+90度の方向への距離がR2の長方形(図中、一点鎖線で示す)によって囲まれたエリアを良品エリアQと決定するものである。尚、図2に示す状態から、前記サンプル良品のリサージュ図形を時計方向へ角αだけ回転させることで、図3に示すように、前記良品エリアQを直交座標に変換した状態で、後述の良品エリア記憶手段3に記憶させることも可能である。
【0024】
次に、前記良品エリア記憶手段3は前記良品エリア演算手段2によって特定された良品エリアQを記憶するものである。該良品エリア記憶手段3は書換可能なメモリによって構成される。
【0025】
次に、前記判断手段4は、実際に、被検知用製品に電磁波を照射することで該被検知用製品に誘起された誘起電圧の位相、及び振幅によって特定される点Xが前記良品エリアQ内に位置するか否かを判断することによって、被検知用製品が良品か否かを判断する機能を有している。即ち、該判断手段4は、被検知用製品に誘起された誘起電圧の位相、及び振幅によって特定される点Xが前記良品エリアQ内に位置する場合には、該被検知用製品を良品と判断し、一方、当該点Xが前記良品エリアQ内に位置しない場合には、該被検知用製品を不良品と判断するものである。尚、図3に示すように、良品エリア記憶手段3に記憶されている良品エリアQが直交座標に変換された状態で記憶されている場合には、前記被検知用製品に誘起された誘起電圧の位相、及び振幅によって特定される点Xの座標を時計方向へ角度αだけ回転させた後に、当該点Xの座標が良品エリアQ内に位置するか否かによって、当該被検知用製品が良品か不良品かが判断されるようにしても良い。
【0026】
そして、前記判断手段4によって、被検知用製品に金属製異物が混入している場合には、例えば、被検知用製品に金属製異物が混入している旨を表示や音声によって警告したり、或いは、被検知用製品の製造ラインを停止させるようにすることも可能である。
【0027】
以上説明したように、本実施形態においては、金属製の異物が混入していないことが予め分かっている製品、即ち、サンプル良品に電磁波を照射することで、該サンプル良品に誘起した誘起電圧の振幅、及び位相によって特定される良品エリアQを予め求め、一方、被検知製品に電磁波を照射することで、該被検知製品に誘起した誘起電圧の振幅、及び位相が当該良品エリアQ内に存在するか否かを判断するようにしたので、製品中に混入することが予想される金属製異物の種類が不明確な場合や当該金属製異物の種類が多い場合であっても、金属製異物の混入している不良品を容易に且つ即座に検知して、不良品を製品中から確実に除外することができる。
【0028】
又、以上の説明では、衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に電磁波を照射することで該被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相、及び振幅を求め、当該誘起電圧の位相及び振幅に基づいて、被検知用の製品を、金属異物が混入している不良品と当該金属異物が混入していない良品とに判別する場合について説明したが、被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相又は振幅に基づいて良品・不良品を判別するようにしても良い。ここで、位相を無視した場合には、良品エリアは、振幅のみで特定される円形をなすことになる。又、前記被検知用の製品に誘起した誘起電圧をパソコンに取り込むことで、良品エリアは、マウスなどのポインティングデバイスを使用したエリア設定によって特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本実施形態全体のブロック構成図である。
【図2】図2は作用を説明する図である。
【図3】図3は作用を説明する図である。
【図4】図4は背景技術の金属製異物検知装置のブロック構成図である。
【図5】図5は被検知製品に照射される電磁波を示す図である。
【図6】図6は図5に示す電磁波が被検知製品で振幅変調、位相変調された状態を示す図である。
【図7】図7は同期検波器の機能を示す図である。
【図8】図8はリサージュ図形である。
【符号の説明】
【0030】
1 良品・不良品判断手段
2 良品エリア演算手段
3 良品エリア記憶手段
4 判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に電磁波を照射することで該被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相又は振幅を求め、当該誘起電圧の位相又は振幅に基づいて、前記被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに判別できる良品・不良品判別装置であって、
異物が混入していないサンプル良品に電磁波を照射することで該サンプル良品に誘起した誘起電圧の位相又は振幅によって特定される良品エリアを記憶する良品エリア記憶手段と、
前記被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相又は振幅が前記良品エリア記憶手段に記憶された良品エリア内に位置するか否かを判断する判断手段とを備え、
前記判断手段は前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相又は振幅が、前記良品エリア内に位置する場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していないと判断し、前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相又は振幅が、前記良品エリア内に位置しない場合には前記被検知用の製品中に異物が混入していると判断することによって、被検知用の製品を、異物が混入している不良品と異物が混入していない良品とに判別することを特徴とする良品・不良品判断装置。
【請求項2】
衣類、繊維、カーペット、織物等の被検知用の製品に電磁波を照射することで該被検知用の製品に誘起した誘起電圧の位相、及び振幅を求め、当該誘起電圧の位相及び振幅に基づいて、被検知用の製品を、金属異物が混入している不良品と当該金属異物が混入していない良品とに判別できる良品・不良品判別装置であって、
金属異物が混入していないサンプル良品に電磁波を照射することで該サンプル良品に誘起した誘起電圧の位相、及び振幅によって特定される良品エリアを記憶する良品エリア記憶手段と、
前記被検知用の製品に誘起する誘起電圧の位相、及び振幅が前記良品エリア記憶手段に記憶された良品エリア内に位置するか否かを判断する判断手段とを備え、
前記判断手段は前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置する場合には前記被検知用の製品中に金属異物が混入していないと判断し、前記被検知用の製品に誘起する前記誘起電圧の位相、及び振幅が、前記良品エリア内に位置しない場合には前記被検知用の製品中に金属異物が混入していると判断することによって、被検知用の製品を、金属異物が混入している不良品と当該金属異物が混入していない良品とに判別することを特徴とする良品・不良品判断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−271027(P2009−271027A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124227(P2008−124227)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000140096)株式会社ハシマ (10)
【Fターム(参考)】