説明

色データの処理システム及びその方法

【課題】入力色空間からプロファイルコネクションスペース(PCS)への変換を効率化するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】第一の色空間における文書中の色データは、該色データの一部に対する色空間変換操作が、色空間辞書又は変換マトリックスを用いて特定されるか否かを判定するために調べられる。該色空間変換操作は、色データを、前記第一の色空間から中間の標準色空間に変換する。前記色変換操作に対応する入力プロファイルが生成され、該入力プロファイルは、色データを、前記第一の色空間から前記中間の標準色空間に変換するための情報を含む。色空間変換操作は、色データを、前記第一の色空間から前記中間の標準色空間へ変換するために、生成された入力プロファイルを用いて、前記色データに対して実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像及び色管理の分野に関し、特に、色データの処理のためのシステム及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
色画像を再生する図形出力装置は、典型的には、正確に表示できる色の範囲を有している。これらの色は、表示されるときに当該出力装置に固有の色空間に定められるが、異なる色空間を用いる装置から入力されることもある。あるソース(又は、入力)装置中の一つの色空間で表された色を、ターゲット(又は、出力)装置中の他の色空間に変換するときは、二つの色空間の間で色を正確に変換する何らかの機構を用いる。任意のターゲットに対して、多数のソース色空間が存在し得る。例えば、プリンタは、コンピュータ、デジタルカメラ、及び/又は他の装置又はプログラム上で動作する種々の画像ソフトウェアから入力を受け得る。典型的には、多色処理装置を備えたシステムでは、種々の色空間の間での色変換は、まず、ソース色空間の何れかからの色を、選択した中間の標準色空間に変換し、そして、その標準色空間からターゲット装置の色空間に変換することにより容易に行われる。この中間の標準色空間は、典型的には、装置から独立した色空間である。
【0003】
例えば、国際照明委員会のXYZ(CIEXYZ)色空間等の幾つかの標準色空間を、装置非依存の方法で色を定めるために用いることができる。CIEXYZ色空間においては、人の目で視覚的に知覚し得る色の範囲を、装置非依存モデルを用いて数学的にモデル化でき、このモデルでは、外部の要素を参照せずに、色を明確に定めることができる。従って、このCIEXYZ色空間がしばしば中間の色空間として選択される。
【0004】
幾つかの場合においては、中間の色空間への色変換には、色空間辞書を用いた多数の計算が含まれ、また、色変換マトリックスを用いることもある。他の場合には、CIEXYZ等の中間の色空間へ及び中間の色空間からの色変換が、ソース及びターゲット装置に対する「カラープロファイル」により定義される。従って、中間の色空間は、しばしばプロファイルコネクションスペースとも呼ばれる。このカラープロファイルは、インターナショナル・カラー・コンソーシアム(ICC)により公表された標準によりしばしば定められるデータセットを含む。このカラープロファイルのデータセットは、PCS(プロファイルコネクションスペース)への及びPCSからの色の変換を許容する色入力/出力装置の、装置に固有の、使用者に固有の、又は表示の意図に基づいた特性を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中間の色空間への色変換のために種々の方法が採用されてきたため、異なる入力色空間から中間の標準色空間への変換を処理する別々のコード経路(code pathway)が存在し、それにより、色変換処理が複雑化している。色変換処理が複雑であるため、展開及び維持コストが増加し、バグの可能性が増加し、コードを最適化することがより困難になり得る。従って、一般的に見られる入力色空間からPCSへの変換を効率化するためのシステム及び方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、システム及び方法は、第一の色空間に色データを有する少なくとも一つの文書を処理するための、プロセッサにより実行される方法を提供し、該方法は、色データの一部に対して、第一の色空間から中間の標準色空間に変換する色空間変換操作が、少なくとも一つの色空間辞書又は変換マトリックスを用いて特定されたか否かを判定するために前記色データを調べるステップと、前記色変換操作に対応する、前記第一の色空間から前記中間の標準色空間へ変換するための情報を有する入力プロファイルを生成するステップと、前記色データに対して、前記中間の標準色空間への前記色空間変換操作を前記生成された入力プロファイルを用いて実行するステップと、を有する。
【0007】
本発明の実施形態はまた、コンピュータ読取可能な媒体又はコンピュータ読取可能なメモリを用いた処理装置により、生成され、記憶され、アクセスされ、又は修正されるソフトウェア、ファームウェア、及びプログラム命令に関する。開示される方法は、種々の計算装置、及び印刷装置を含む周辺装置上で実行され得る。
【0008】
更なる目的と利点の一部は以下の説明で述べられ、他の一部は以下の説明から自明であり、あるいは実施することにより知り得る。これらの目的と利点とは、添付の特許請求の範囲で特に指摘した要素と組み合わせにより実現され達成される。前述した一般的説明と、以下に述べる詳細な説明とは、例示的なものであり、説明のためだけのものであって、特許請求の範囲に述べられた本発明を限定するものではないことを理解すべきである。これらの実施形態と他の実施形態とは、以下の図を参照しながら以下に更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】色データのソース装置となり得、例示的プリンタとして示されたターゲット出力装置に接続される、計算装置を用いたシステムの例示的ブロック図を示す。
【0010】
【図2】従来のシステムにおける色変換のための例示的データフローを示すブロック図を示す。
【0011】
【図3】開示した実施形態に一致するシステムにおける色変換の例示的データフローを示すブロック図を示す。
【0012】
【図4】開示した実施形態に一致する方法でICCプロファイルを用いた例示的なCalGray及びCalRGBの色空間の処理を許容する例示的方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面中に示される種々の実施形態をここで詳細に説明する。同一又は類似の部分を参照する場合、全ての図面を通して可能な限り同一の参照番号を用いる。
【0014】
図1は、計算装置110を用いたシステム100の例示的ブロック図を示す。計算装置110は、例示的プリンタ170として示されるターゲット出力装置に接続された、色データのためのソース装置であり得る。開示された方法は、一般に、色変換操作を実行できるどんな画像処理装置上でも実行又は実施できることに留意すべきである。このような図形処理装置には、計算装置110、例示的プリンタ170、及び/又は色空間変換、色管理、及び/又は色変換を行う他の装置が含まれる。
【0015】
幾つかの実施形態においては、これらの装置は、第一の色空間で入力を受け、第二の色空間で出力を生成できる。この第二の色空間は、場合によっては第一の色空間と異なり得る。この文書で説明する方法と装置は、適当な改良をして上記装置の型の物にも適用でき、また当業者には明らかなように、ここに開示した実施形態と一致する方法でも適用できる。幾つかの実施形態においては、第一の色空間のデータを一つのソフトウェアアプリケーションにより出力し、もう一つの下流のソフトウェアアプリケーションに入力できる。この下流のソフトウェアプリケーションは、異なる色空間でデータを処理でき、その入力データに対して色変換を行うことができる。しかし、説明を簡略化し容易にするために、ソースとしての例示的計算装置110と、ターゲット装置としての例示的プリンタ170とを参照してその方法を説明する。
【0016】
一般に、プリンタ170は、電子データから物理的文書を生成するように構成できればどのような装置でもよく、このような装置には、レーザプリンタやLEDプリンタ等の電子写真プリンタ、インクジェットプリンタ、感熱式プリンタ、レーザイメージャ、及びオフセットプリンタが含まれるが、これらに限定されるものではない。プリンタ170は、ファクシミリ装置及びデジタル複写機に搭載されたとき、画像送受信機能、画像走査機能、及び/又は複写機能を有し得る。この文書で説明する方法及び装置は、適当に改良を加え、かつここに開示する実施形態に一致する方法で、これらの種々のプリンタ装置の型の物にも適用できる。
【0017】
幾つかの実施形態においては、プリンタ170は、一つ以上の入出力ポート175を有し得、またプリンタ170は、I/Oポート175及び接続120を用いて計算装置110と通信し、計算装置110上の資料にアクセスできる。プリンタ170は、計算装置110から、色と他の印刷データを含む入力印刷データを受信し得る。例えば、計算装置110は、場合によってはプリンタ170に印刷のために送信されるデータを表示する表示装置を含み得る汎用コンピュータであり得る。
【0018】
計算装置110は、種々の色空間の色やグレースケールのデータを有する文書を生成できる、文書処理ソフトウェアを含む種々のアプリケーションを実行できる。計算装置110及び/又は計算装置110上で動作するアプリケーションは、入力色データを表す一つの色空間を使用し得る。例えば、プリンタ170に出力のために送信され得る、アドビのポータブルドキュメントフォーマット(PDF)(登録商標)及び/又はポストスクリプト(登録商標)ページ記述言語により指定されるフォーマットを用いて色空間を特定し得る。幾つかの実施形態においては、これらの色空間は、ポストスクリプト(登録商標)におけるCIEBasedDEFGのCIEBasedA、CIEBasedABC、CIEBasedDEF(以下、総称してCIEBasedと称する)、又はCalGray、CalRGB、バージョン1.2以前のPDFにおけるLab、及びバージョン1.3以後のPDFにおけるICCBased等の、装置から独立したCIEに基づいた色空間も含み得る。PDFにおいては、例えば、個々の色空間は、辞書及び/又は変換マトリックスにより特定可能であり、辞書及び/又は変換マトリックスは、空間を特定するために必要なパラメータ値を含む。幾つかの実施形態においては、計算装置110は、デジタルカメラ等の画像生成装置の形態を取ってもよい。
【0019】
プリンタ170は、一方では、印刷前に色データを表すために、CMY色空間、CMYK色空間等のプリンタ170に固有の色空間や、または、他の色空間を用いることができる。幾つかの実施形態においては、プリンタ170の固有の色空間は、計算装置110の入力色空間に合わないかもしれない。
【0020】
従来の(既成の)システムにおいては、印刷の前に、入力色空間中のデータをプリンタ170の固有の色空間に変換するための一連の工程がしばしば実行される。例えば、従来のシステムにおいては、色空間辞書及び/又は変換マトリックスを使用できる変換が、色を、ソース色空間(例えばCalGray、CalRGB、又はCIEBased)から、装置非依存の色空間であり得る選択された中間の標準色空間(例えばCIE−XYZ)に写像できる。そして、この中間の色空間は、プリンタ170の固有の色空間に順次変換される。
【0021】
従来のシステムにおいては、ソース色空間がICCBasedとして特定されると、別のコード経路が呼び出される。ICCBased色空間は、ICCにより定められるクロスプラットフォームのカラープロファイルに基づいている。色空間辞書中の項目により特徴付けられるCalGray、CalRGB、及びCIEBasedの色空間とは異なり、ICCBased色空間は標準プロファイルフォーマット中のバイトの列により特徴付けられる。従って、従来のシステムにおいては、ICCBasedプロファイルがPCSに対応する場合に、ICCBasedプロファイルを用いた色空間データを処理して入力データを中間の選択された標準色空間に変換するときに、別のコードが通常呼び出される。例えば、従来のシステムにおいて、入力色空間のICCBasedデータは、入力プロファイルを用いてPCSに変換できる。
【0022】
ここに開示された実施形態に従い、システム100は、CalGray、CalRGB、CIEBased、Lab、及びICCBasedの色空間に共通のコード経路を用いて入力色空間データを処理し得る。共通のコード経路を用いて種々の色空間を、選択した標準色空間に変換することにより、コードの維持管理を簡素化し、コードの展開を加速でき、コードのより大きな活用を可能にして、性能を最適化できる。
【0023】
計算装置110は、従来の通信プロトコル及び/又はデータポートインターフェイスを用い、有線又は無線の接続120を介してプリンタ170に接続できる。一般に、接続120は、装置間でデータの送信を許容するどの様な通信チャンネルであってもよい。ある実施形態においては、例えば、この装置は、並列ポート、直列ポート、イーサネット、USB(登録商標)、SCSI、FIREWIRE(登録商標)、及び/又は同軸ケーブルポート等の従来のデータポートを、適当な接続を介してデータを送信するために備えることができる。このデータポートは、有線ポート又は無線ポートであり得る。
【0024】
プリンタ170は、CPU176、ファームウェア171、メモリ172、印刷エンジン177、及び二次記憶装置173を接続するバス174を更に有することができる。プリンタ170は、アプリケーションの一部を実行し、色空間変換、ガモットマッピング、色変換、及び他の色管理ルーチンを開示された実施の形態と合致する方法で行う、他の特定用途向け集積回路(ASICs)、及び/又は現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGASs)178を有してもよい。幾つかの実施形態においては、プリンタ170は、プリンタ操作システムと、色管理機能を実行するソフトウェアを含む他の適当なアプリケーションソフトウェアとを、含むソフトウェアを実行することもできる。
【0025】
幾つかの実施形態においては、CPU176は、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、又は組み込みプロセッサであり得る。CPU176は、制御情報及び命令を含むデータをメモリ172及び/又はファームウェア171と交換できる。メモリ172は、SDRAM又はRDRAM等の、どのような型のダイナミックランダムアクセスメモリ(「DRAM」)でもあり得る、ただしこれらに限定されるものではない。ファームウェア171は、起動シーケンス、既定義ルーチン、色空間変換を含む色管理を実行するためのルーチン、輝度計算、ルックアップテーブル、及び他のコードを含む、命令とデータとを保持できるが、命令とデータとはこれらに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、ファームウェア171中のコード及びデータは、CPU176により実行される前に、メモリ172にコピーされ得る。幾つかの実施形態においては、ファームウェア171中のデータ及び命令は、アップグレードできる。
【0026】
幾つかの実施形態においては、ファームウェア171は、色空間変換に関係する計算を行って、その値をメモリ172に格納するルーチンも有し得る。色空間変換が行われると、色は、入力色空間から出力色空間に変換され得る。幾つかの実施形態においては、色空間変換処理は、出力色空間への変換に先立って、入力色空間から一つ以上の中間の色空間への変換を含み得る。幾つかの実施形態においては、これらのルーチンは、CPU176及び/又は計算装置110により実行され、印刷データの前処理色空間情報に関する計算の一部を実行することができるコードを含み得る。例えば、CalGray、CalRGB、又はCIEBasedの色空間データがコンピュータ110により前処理され得る。ファームウェア171のルーチンも、入力色データ及び計算装置110から受信した関連する色空間情報を処理するコードを含み得る。
【0027】
一つ以上の色管理に関する計算を実行するルーチンの一部を、ハードドライブ、コンピュータディスク、CD−ROM、DVD−ROM、CD±RW、又DVD±RW、USBフラッシュドライブ、メモリスティック、又は任意の他の適当な媒体等の着脱自在なコンピュータ読取可能な媒体上に格納しうる事も企図し得、上記ルーチンの一部は、プリンタ170の任意の適当なサブシステム上で実行され得る。例えば、色空間処理に関する計算を実行するアプリケーションの一部は、着脱自在なコンピュータ読取可能な媒体上に存在し得、メモリ172にコピーされたファームウェア171中のルーチンを用いてCPU176により読み出され、動作し得る。
【0028】
幾つかの実施形態においては、CPU176は、命令とデータとに基づいて動作でき、ASICs/FPGAs178及び印刷エンジン177に対して制御及びデータを提供して、印刷文書を生成できる。幾つかの実施形態においては、ASICs/FPGAs178は、制御及びデータを印刷エンジン177に対して提供することもできる。FPGAs/ASICs178は、また、変換、圧縮、及び色変換アルゴリズムのうち一つ以上を実施できる。
【0029】
幾つかの実施形態においては、入力色データ、色空間辞書、変換マトリックス、入力カラープロファイル、固有のカラープロファイル、計算されたルックアップテーブル、及び変換された色データをメモリ172又は二次記憶装置173に格納可能である。入力カラープロファイルは、データを中間の標準色空間に変換する目的で入力色データ215(図2)を記述できる。一方、固有のカラープロファイルは、データを中間の標準色空間からプリンタ170の固有の色空間に変換するときの印刷エンジン177の色行動を記述できる。例示的な二次記憶装置173は、内部ハードディスク、外部ハードディスク、メモリスティック(登録商標)、フラッシュドライブ、SDHCカード、又はプリンタ170中で用いられるか及び/又はプリンタ170に接続できる任意の他の記憶装置であり得る。計算値とルックアップテーブルとを格納するメモリは、専用メモリであるか、汎用メモリの一部を形成するか、又は本発明の幾つかの実施形態に従ったそれらの任意の組み合わせであり得る。幾つかの実施形態においては、メモリは、データ構造とメモリ対象とを保持しまた開放するとき、動的に割り振られ、また割り振り解除される。
【0030】
図2は、従来のシステムにおける色変換に対する例示的なデータフローを示すブロック図200を示す。従来のシステムにおいては、ステップ220から240までの機能は、マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)カラーシステム(WCS)等の色管理システムの一部であり得る、プリンタのカラーマネジメントモジュール(「CMM」)により、通常実施され、実行される。
【0031】
入力色空間中の入力データ210は、ステップ220で中間の標準色空間に変換され得る。例えば、入力データがPDF又はポストスクリプトのCalGray、CalRGB、又はCIEBasedの色空間212中にある場合は、CalGray、CalRGB、又はCIEBasedの色空間データ212は、色空間辞書及び/又は変換マトリックス227中の情報を用いて変換モジュール222により中間の標準色空間230に変換される。一方では、入力データの色空間がICCBased又はLab214である場合は、そのICCBased又はLabデータ214は、色空間変換モジュール220及び入力プロファイル225を用いて、ここではプロファイル接続空間である、中間の標準色空間230に変換される。
【0032】
入力プロファイル225は、通常、色データを中間の標準色空間、即ちPCS、230に変換するためのICC規格及び追加の関連情報を含む。ICCプロファイルフォーマットは、例えば、CIEXYZに基づいた色空間、RGBに基づいた色空間、及びCMYKに基づいた色空間を含む、種々の装置に依存した及び装置から独立した色空間をサポートする。入力プロファイル225は、プリンタ170のメモリ172又は二次記憶装置173及び/又は計算装置110に格納してもよい。幾つかの実施形態においては、入力カラープロファイル225は、入力色空間の詳細なICC規格を含み得る。入力プロファイル225は、ステップ220の一般的な色空間変換ルーチンの微調整を許容する装置固有の色空間の定義を提供し得、それにより入力データ210の、より色に正確なPCS変換を容易にする。
【0033】
入力プロファイル225は、ルックアップテーブル、マトリックス、及び/又はパラメトリック曲線等のプロファイル中の情報を用いてPCSへの色変換を容易にするために使用できる。入力プロファイル225は、デジタル画像中のコード化されたデータから期待される色のオープン規格を構成する。これにより、入力プロファイル225は、装置に依存する入力色規格を中間の標準装置に依存しないPCS230、例えば、CIE−XYZ等、に変換することを許容する。
【0034】
標準色空間230は、色変換モジュール240及び出力プロファイル235を用いて出力装置色空間218に変換され得る。例えば、データは、CIE‐XYZであり得る中間の標準色空間230から、プリンタ用のCMYKであり得る出力装置色空間218に変換され得る。そして、目標色空間における出力データ245が出力され得る。
【0035】
図3は、開示された実施形態に一致するシステムにおける、色変換のための例示的データフローを示すブロック図300を示す。幾つかの実施形態においては、種々のブロックは、システム100上で実行され得る。幾つかの実施形態においては、一つ以上のブロックがコンピュータ110及び/又はプリンタ100上で実行され得る。例えば、ポストスクリプト(登録商標)又はPDF(登録商標)文書の一部であり得る、入力データ210は、コンピュータ110上で動作するプリンタ170用のプリンタドライバの一部であり得る前処理モジュール315に送信され得る。モジュール220〜240は、プリンタ中で実行され得る。もう一つの例として、入力データ210は、コンピュータ110により生成されることができ、前処理モジュール315は、プリンタ170用の印刷制御装置(不図示)上で実行され得る。一方、モジュール220〜240は、プリンタ170上で実行されてもよい。一般に、機能ブロック(及びブロック内の機能)はコンピュータ110、プリンタ170、及び/又は印刷制御装置間で分配され得る。
【0036】
図3に示すように、PDF又はポストスクリプト文書の形態であり得る入力データ210は、前処理モジュール315により受信され得る。幾つかの実施形態においては、入力データ210は、コンピュータ110からプリンタ170又はプリンタ170に接続された印刷制御装置(不図示)に送信され得る。幾つかの実施形態においては、前処理モジュール315は、プリンタドライバの一部を形成し得、あるいは該プリンタドライバによって呼び出されるアドオン又は拡張であり得る。入力データ210は、種々の色空間にあり得る。例えば、入力データ210は、CalGray、CalRGB、若しくはCIEBasedの色データ212、又はICCBased又はLabカラーデータ214として特定されうる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、 前処理モジュール315は、入力データ210の色空間に基づいて入力データ210を処理し得る。例えば、前処理モジュール315は、(PDF又はポストスクリプト中の)CalGray、CalRGB、又はCIEBasedの入力データ212をICCGray又はICCRGB等のICCBased色空間へ変換し得、適当なICCBasedデータ214-1を生成し得る。
【0038】
幾つかの実施形態においては、入力色空間が既にICCBasedである場合は、前処理モジュール315は、追加の処理をせずにICCBasedデータ214-1を色変換モジュール220に送信できる。CalGray、CalRGB及び他の色空間をICCBased又はLabデータ214-1へ前処理モジュール315によって変換することにより、色変換モジュール220が入力データ210を、格納された入力プロファイルを用いてPCS230へ変換することが許容される。
【0039】
このようにして、モジュール220〜240がプリンタ170で実行される実施形態においては、共通の処理経路が、より多様な色空間の処理に用いられ得る。したがって、コードの最適化を色空間の全域で共有することができ、単一のコードのアップグレードパスをコードのアップグレードのために実行でき、また、維持が簡素化できる。幾つかの実施形態においては、入力プロファイル225は、プリンタ170のメモリ172又は二次記憶装置173及び/又は計算装置110中に格納できる。幾つかの実施形態においては、入力カラープロファイル225は入力色空間の詳細なICC規格を含む事が出来る。
【0040】
そして、PCS230中のデータが、色変換モジュール240及び出力プロファイル235を用いて出力装置色空間218に変換され得る。例えば、データは、PCS230として機能するCIE‐XYZから、プリンタ用CMYKで有り得る出力装置色空間218に変換され得る。そして、目標色空間中の出力データ245が出力され得る。
【0041】
図4は、開示された実施形態と一致する方法で、ICCプロファイルを用いて、例示的なCalGray及びCalRGBの色空間の処理を許容する例示的な方法400を示すフローチャートを示す。幾つかの実施形態においては、例示的な方法400は、前処理モジュール315中で実行でき、あるいはアドオン又はプラグインとして供給され、既存の、生産者提供の、及び/又は基準線アルゴリズムを置き換え、変更し、及び/又は 増大させ得る。図3のプロセスフローに関する例示的な方法400の説明は、例示的であり説明の目的の為のものであり、当業者には明らかなように、方法400は適当な改良の上で他のプロセスに適用できることに留意すべきである。
【0042】
ステップ410において、PDF色空間データが入力され得、そしてステップ420において白色点アレイ(Wht_pt)がPDF色空間データから読み取られ得る。白色点(又は標準白又はターゲット白)は、色「白」を定義するために機能する一組の三刺激値又は色座標である。人の目は、短波長、中間波長、および長波長の受容体を有している。したがって、人の知覚の観点から、三つのパラメータが色感覚を説明するために使用できる。三要素加色モデルにおいて、色の為の三刺激値は、幾つかの特定の標準採光条件下で「標準的観察者」により認識されるときに、その色が人の視覚に調和するようになる三原色の量である。CIE1931色空間において、三刺激値は、しばしばX、Y、Zのパラメータにより表わされる。
【0043】
次に、ステップ430において、補正された白色点配列(Wht_correct)が、D50白点XYZ値をPDF「Cal」色空間WhitePoint値により割ることにより計算できる。D50白点は、異なる採光条件下で記録された画像又は色を比較することを可能にする(可視光のスペクトルに対応する)公知のプロファイルであるICC標準光源である。このD系列の光源は、数学的に特徴づける事ができ、自然照明をモデル化するように構成されている。ある特定の標準光源に対して、白点が一意的に定義される。
【0044】
ステップ450において、補正された黒点アレイ(Blkpt*)が、ステップ440で読み出されたPDFCal色空間BlackPoint(Blk_pt)アレイを用いて計算できる。この黒点は、画像の最も暗い部分を定義する参照点である。補正された黒点アレイは、予め計算された補正された白点アレイ値により調整できる。
【0045】
ステップ460において、アルゴリズムは、 データがCalGray又はCalRGBの色空間中で特定されているか否か判定する。ステップ470で、色空間がPDFCalGray(ステップ460で「CalGray」)である場合は、ガンマ値が読み込まれ得る(もし存在すれば)。ガンマ又はガンマ補正は、輝度又は三刺激値の符号化及び復号化のために用いられる非線形動作を参照する。
【0046】
ステップ470において、黒オフセット(Blk_offset)が、現在の調整された黒点(Blkpt*)の平均値として計算され、そして、白オフセット(Wht_offset)が、補正された黒点(Blkpt*)値を調節された白点(Wht_correct)値の平均値から減算することにより計算される。
【0047】
次に、ステップ490において、ICCGray入力プロファイルが生成される。このICCGray入力プロファイルは、特定されたWhitePointデータ及びBlackPointデータを含む。更に、「Type2parametricCurve」型のデータタグが、Gray(K)色調再現曲線(「TRC」)、即ちKTRCデータに対して、gamma=Gamma、a=Wht_offset、b=0及びc=Blk_offsetとして書き込まれる。
【0048】
ステップ492において、色空間がPDFのCalRGB(ステップ460で「CalRGB」)である場合には、変換マトリックスにおける値を読み出し得る。マトリックス値は、ステップ494において、Wht_correctアレイ中の対応する補正された白点値を用いてマトリックスの乗算により調整できる。ステップ496において、ガンマアレイを読み出すことができる。
【0049】
ステップ498において、ICCRGB入力プロファイルが生成される。このICCRGB入力プロファイルは、特定されたWhitePointデータ及びBlackPointデータを有する。更に、「Type2parametricCurve型」のデータタグが、赤(R)の色調再現曲線(「TRC」)、即ち、RedTRCデータに対して、gamma=Gamma[0]、a=1−Blk_pt[0]、b=0及びc=Blk_pt[0]を用いて書き込まれ、一方、「Type2parametricCurve」型のデータタグが、GreenTRCデータに対して、gamma=Gamma[1]、a=1−Blk_pt[1]、b=0及びc=Blk_pt[1]を用いて書き込まれ、及び「Type2parametricCurve」型のデータタグが、BlueTRCデータに対して、gamma=Gamma[2]、a=1−Blk_pt[2]、b=0及びc=Blk_pt[2]を用いて書き込まれ、{Matrix[0]、Matrix[1]及びMatrix[2]}のRedMatrixColumnデータ、{Matrix[3]、Matrix[4]及びMatrix[5]}のGreenMatrixColumnデータ、及び{Matrix[6]、Matrix[7]及びMatrix[8]}のBlueMatrixColumnデータが書き込まれる。
【0050】
同様に、ポストスクリプトCIEBased色空間辞書情報を、特定のICCBased色空間変換を生成するためのICCプロファイルを生成するために操作できる。幾つかの実施形態においては、生成されたICCプロファイルを、文書及び画像中に埋め込むことができる。プロファイルを文書中に埋め込むことにより、ユーザは、異なるコンピュータ、ネットワーク、及びオペレイティングシステム間で色データを透明に移動できる。プリンタ170は、埋め込まれたプロファイルを使って色空間変換を実行できる。
【0051】
幾つかの実施形態においては、アルゴリズム320は、入力文書を前処理できまた該文書をプリンタ170に送信する前に適当な入力プロファイルを生成できるプリンタに接続された印刷制御装置上で実行され得る。幾つかの実施形態においては、アルゴリズム320は、計算装置110上で実行され得る。幾つかの実施形態においては、アルゴリズム320は、入力色データを調べることができ、生成されたプロファイルを用いてデータを処理する前に、入力プロファイを生成できるように、プリンタ170上の前処理フロントエンドとして実行され得る。
【0052】
本発明の他の実施形態は、仕様を考慮しここに開示された本発明を実施することにより、当業者には明らかであろう。これらの仕様と例は、例示としてのみ考えられるように意図されている。本発明の真の範囲と精神とは、以下の特許請求の範囲で示唆されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の色空間に色データを有する少なくとも一つの文書を処理するための、プロセッサにより実行される方法であって、
色データの一部に対して、第一の色空間から中間の標準色空間に変換する色空間変換操作が、少なくとも一つの色空間辞書又は変換マトリックスを用いて特定されたか否かを判定するために前記色データを調べるステップと、
前記色変換操作に対応する、前記第一の色空間から前記中間の標準色空間へ変換するための情報を有する入力プロファイルを生成するステップと、
前記色データに対して、前記中間の標準色空間への前記色空間変換操作を前記生成された入力プロファイルを用いて実行するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
プロセッサにより実行される請求項1に記載の方法であって、
該方法が、プリンタに接続された印刷制御装置上で実行されることを特徴とする方法。
【請求項3】
プロセッサにより実行される請求項1に記載の方法であって、
該方法が、コンピュータ上で実行されることを特徴とする方法。
【請求項4】
プロセッサにより実行される請求項3に記載の方法であって、
該方法が、前記コンピュータ上で動作するプリンタドライバにより実行されることを特徴とする方法。
【請求項5】
プロセッサにより実行される請求項1に記載の方法であって、
前記生成された入力プロファイルは文書中に埋め込まれることを特徴とする方法。
【請求項6】
プロセッサにより実行される請求項1に記載の方法であって、
前記文書は、PDF又はポストスクリプト文書であることを特徴とする方法。
【請求項7】
プロセッサにより実行される請求項6に記載の方法であって、
前記色データは、CalGray又はCalRGBの何れか一方に定められていることを特徴とする方法。
【請求項8】
プロセッサにより実行される請求項6に記載の方法であって、
前記中間の標準色空間はCIE−XYZであることを特徴とする方法。
【請求項9】
プロセッサにより実施される請求項1に記載の方法であって、
該方法は、プリンタ上の前処理フロントエンドを用いて実行されることを特徴とする方法。
【請求項10】
プロセッサにより実施される請求項9に記載の方法であって、
前記中間の標準色空間は、前記プリンタにより使用されるプロファイル接続空間に対応することを特徴とする方法。
【請求項11】
プロセッサにより実施される請求項1に記載の方法であって、
前記生成されたプロファイルは、ICCプロファイルであることを特徴とする方法。
【請求項12】
プロセッサにより実行されるときに、第一の色空間中に色データを有する少なくとも一つの文書を処理するための方法のステップを実行する命令を含むコンピュータ読取可能な媒体であって、前記方法は、
色データの一部に対して、第一の色空間から中間の標準色空間に変換する色空間変換操作が、少なくとも一つの色空間辞書又は変換マトリックスを用いて特定されたか否かを判定するために前記色データを調べるステップと、
前記色変換操作に対応する、前記第一の色空間から前記中間の標準色空間へ変換するための情報を有する入力プロファイルを生成するステップと、
前記色データに対して、前記中間の標準色空間への前記色空間変換操作を前記生成された入力プロファイルを用いて実行するステップと、
を有することを特徴とする媒体。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
該方法が、プリンタに接続された印刷制御装置上で実行されることを特徴とする媒体。
【請求項14】
請求項12に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
該方法が、コンピュータ上で実行されることを特徴とする媒体。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
該方法が、前記コンピュータ上で動作するプリンタドライバにより実行されることを特徴とする媒体。
【請求項16】
請求項12に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記生成された入力プロファイルは文書中に埋め込まれることを特徴とする媒体。
【請求項17】
請求項12に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記文書は、PDF又はポストスクリプト文書であることを特徴とする媒体。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記色データはCalGray、CalRGB、又はCIEBasedの何れか一つに定められていることを特徴とする媒体。
【請求項19】
請求項17に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記中間の標準色空間はCIE−XYZであることを特徴とする媒体。
【請求項20】
請求項12に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記方法は、プリンタ上の前処理フロントエンドを用いて実行されることを特徴とする媒体。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータ読取可能な媒体であって、
前記中間の標準色空間は、前記プリンタにより使用されるプロファイル接続空間に対応することを特徴とする媒体。
【請求項22】
請求項12に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記生成されたプロファイルは、ICCプロファイルであることを特徴とする媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−233221(P2010−233221A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−71682(P2010−71682)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ システムズ ラボラトリー, インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】