説明

色ビーズ判別装置

【課題】容易に判別できる基準ビーズを用いることによって、振動検出時間を短縮して高速に解析を行うことを目的とする。
【解決手段】表面に塗布する異なる色を発光する半導体ナノ粒子の混合比を変えて複数種類の色ビーズを作成し、前記色ビーズの蛍光画像から前記色ビーズに塗布された半導体ナノ粒子の混合割合を特定し、前記色ビーズの種類を判別する色ビーズ判別装置において、前記ビーズと光の透過率の異なるビーズを用いて基準ビーズを作り、前記色ビーズと混ぜ合わせたサンプルに励起光を照射して得られた蛍光画像において、前記基準ビーズの蛍光画像から振動を検出することにより、振動検出時間を短縮して高速に解析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現解析等のための色ビーズ判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遺伝子の解析では、蛍光色素を用いて検査対象物を染色し、フローサイトメータ等を用いていた。しかし、蛍光色素の蛍光強度は光依存性が有り、太陽光が当たっても減衰するので、測定するためにレーザー光を照射すると蛍光強度が減衰するという課題をもっていた。
【0003】
この課題を解決するために、光を照射しても蛍光強度が減衰しない半導体ナノ粒子を用いて遺伝子の解析を行う技術が知られている。半導体ナノ粒子から発生する蛍光を、光学フィルタを介して複数のCCDカメラで撮影することにより、一度に複数の検査対象物を測定する為、検査速度の高速化をはかるとともに、光に対して蛍光強度が減衰しないので、信頼性の高い測定ができる(例えば、特許文献1。)。
【0004】
また半導体ナノ粒子は、励起光を照射すると粒の大きさに応じて異なる色の蛍光を発する為、大きさの違う半導体ナノ粒子の配合割合を変えてビーズの表面に塗ることによって色々な色に発光する複数種類のビーズを作成することができる。それぞれのビーズに異なる遺伝子を結合させて、遺伝子の検出及びビーズの種類を判断することによって、遺伝子の解析を行うことが出来る(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
以上の技術を用いて、大きさの異なる半導体ナノ粒子の配合割合を変えてビーズの表面に塗って作成した複数種類のビーズに、異なる遺伝子を結合させて、それぞれのビーズに塗布された半導体ナノ粒子が発する蛍光を複数のCCDカメラで撮影することにより、より多くの種類の遺伝子を高速に解析する装置が可能となった。
【特許文献1】特開2003−28797公報(第4−6頁、第2図)
【特許文献2】特開2002−311027公報(第3−4頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では高価なCCDカメラを複数個用いているため、装置コストが高価になる。そこで、1個のCCDカメラでの装置構成が考えられる。この構成では、特定の波長の光のみを通過するように作成された光学フィルタを複数個用いて、それぞれ切り替えながら、検査対象ビーズの画像を順番に1個のCCDカメラで撮影することになる。この複数個の光学フィルタのうち、特定の光学フィルタによる撮影持に、外部からの振動があると、その光学フィルタでの撮影画像にのみ振動の影響を受けてしまう。この振動を検出するには、光学フィルタの通過帯域内で発光するビーズが少なくとも1個は必要である。
【0007】
例えば、特定の波長でのみ発光するビーズを選び振動検出を行うと、その波長以外の通過帯域を持つ光学フィルタでは、振動を検出することが出来ない。そこで、正確に振動を検出するためには、光学フィルタ毎に撮影した全ての検査対象ビーズの画像を調べなければならない。一般に検査対象のビーズの数は数百個程度あるので、全ての撮影条件(光学フィルタの種類)における検査対象ビーズの振動検出を行うと、その処理に膨大な時間が必要となる。本発明は、前記課題を解決するもので、検査対象ビーズ撮影時の振動検出の処理時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の色ビーズ判別装置は、粒径に応じて異なる波長の蛍光を発する半導体ナノ粒子を略球状のビーズ粒子の表面に付着させた複数のビーズ粒子から成る色ビーズと、前記色ビーズのビーズ粒子の光透過率を変えて作成した基準ビーズと、前記色ビーズと前記基準ビーズと測定すべき試料を混合した被測定物に対して透過光を照射し透過画像を得るための透過光照射手段と、前記被測定物に励起光を照射し蛍光画像を得るための励起光照射手段と、特定の波長域の光を通す複数のフィルタ手段と、前記被測定物の透過画像及び蛍光画像を撮影する撮影手段と、撮影した透過画像及び蛍光画像を記憶する記憶手段と、前記透過画像における前記ビーズ粒子の中心点及び階調を検出する透過画像検出手段と、前記蛍光画像から前記色ビーズ毎の蛍光波長別の階調を検出する蛍光画像検出手段と、前記色ビーズと前記基準ビーズとを区別するビーズ区別手段と、前記色ビーズの種類を判別する色ビーズ判別手段と、前記基準ビーズを用いて前記被測定物の振動を検出する振動検出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の色ビーズ判別装置によれば、光の透過率の異なるビーズを用いて基準ビーズを作成し、その基準ビーズの蛍光画像から振動を検出することにより振動検出に要する時間を短縮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の色ビーズ判別装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の第1の実施例における色ビーズ判別装置のブロック図、図2は書き込み手段のブロック図、図3は振動検出手段のブロック図、図4は本発明の実施例におけるビーズに半導体ナノ粒子を塗布した色ビーズ及び基準ビーズの模式図を示す。表1は、赤色、緑色、青色に発光する3種類の半導体ナノ粒子の配合割合を色ごとに3段階に分けた場合に製造可能な色ビーズの種類を示す。
【0012】
図4において201,301は青色に発光する半導体ナノ粒子、202,302は緑色に発光する半導体ナノ粒子、203,303は赤色に発光する半導体ナノ粒子である。図4aには、色ビーズ200を示す。この色ビーズは、mRNAを補足でき、かつ透明な(660nmの波長の光の透過率が70%以上)粒径10μmのビーズで作られる。この透明なビーズに、赤色、緑色、青色に発光する半導体ナノ粒子を所定の割合で塗布し、色ビーズ200が出来る。図4bには、基準ビーズ300を示す。この基準ビーズ300は、黒い(660nmの波長の光の透過率が0%)粒径10μmのビーズをもとに作られる。この黒いビーズに青色、緑色、赤色の半導体ナノ粒子を(1:1:1)の配合割合で塗布し、基準ビーズ300が出来る。
【0013】
次に半導体ナノ粒子の配合割合を説明する。半導体ナノ粒子は、3色あり、おのおのの色ごとに混ぜる割合は3段階あるので、合計27とおりの組み合わせがある。しかし青色:緑色:赤色の輝度比が(0:0:1)と(0:0:2)の場合は、どちらも赤色の半導体ナノ粒子のみを塗布することになるので、両者は同一のビーズとなる。同様に、青色:緑色:赤色の輝度比が(1:1:1)と(2:2:2)の時も、どちらも青色、緑色、赤色の半導体ナノ粒子を(1:1:1)で塗布することになるので、両者は同一のビーズとなる。従って、この同一のビーズとなる組み合わせを取り除くと20種類のビーズを作成できる。表1にビーズの種類を示す。
【0014】
【表1】

【0015】
ここで、表1に示す配合割合で半導体ナノ粒子を配合しビーズ表面に塗布することにより、色ビーズ200を作成する。また、色ビーズ200と基準ビーズ300はビーズ自体の光の透過率が異なるので、光の透過率の違いから容易に判別できる。
【0016】
図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7を用いて、色ビーズ読み取り装置が基準ビーズ300の蛍光をもとに、振動を検出する際の動作について説明する。図1において、ウエルプレート101は、観察対象(図示せず。mRNAやタンパク質を、半導体ナノ粒子やビーズと結合させたもの)を注入する複数個のウエル102から構成され、ウエルプレート駆動手段103により2次元平面XY方向に移動できるものとする。CPU104は装置全体を制御する。まずCPU104は、ウエルプレート駆動手段103を制御して、観察対象が注入されたウエル102が対物レンズ105の真上に位置するように、ウエルプレート101を移動させるとともに、光学フィルタ108が実装されていない箇所が、対物レンズ105の真上に位置するように、フィルタホイール駆動手段115を制御してフィルタホイール114を回転させる。
【0017】
次にCPU104は、LED106を点灯し、ウエル102にLED光を照射する。LED光による、ウエル102内の観察対象の透過画像は、対物レンズ105により拡大され、ダイクロイックミラー107及びフィルタホイール114の光学フィルタ108未実装部分を通過し、さらに、結像レンズ109によって集光されて、CCDカメラ110に到達する。対物レンズ105は、ウエル102内の観察対象の画像を拡大するためのレンズであり、ダイクロイックミラー107は、所定の波長未満の光を反射し、所定の波長以上の光を通過するミラーである。
【0018】
光学フィルタ108は、所定の波長域のみを通過するバンドパスフィルタである。本実施例では、青色、緑色、赤色用のバンドパスフィルタを装着し、透過画像撮影時には、光学フィルタ108は使用しないものとする。結像レンズ109は、光を集光するためのレンズである。CCDカメラ110は、結像レンズ109によって集光された光を二次元画像データに変換して出力する画像検出手段である。CPU104は、CCDカメラ制御手段111に指令を与え、CCDカメラ110によって観察対象の透過画像を撮影する。
【0019】
CPU104の自動焦点調整プログラム(図示せず)は、前記透過画像から画像のコントラスト値を計算し、このコントラスト値が最大になる位置を見つけ出すことによって、対物レンズ105の焦点を合わせる。CPU104の自動焦点調整プログラムは、対物レンズ105を、2次元平面XYと垂直となる方向(Z軸方向)へ、Z軸駆動手段112によって移動させながら、前記コントラスト値が最大となる対物レンズ105の位置を見つけ出す。CPU104は、対物レンズ105の焦点が合った状態で撮影した観察対象の透過画像を、BFI(Bright Field Image)として、データ転送手段126を通して記憶手段130へ格納する。
【0020】
透過画像検出手段150は、読み出し手段140を通して記憶手段130よりBFIを読み出し、全画素に対して2値化処理を行ない、2値化後のデータを記憶手段130に格納する。ゴミによる誤検出を防ぐために、透過画像検出手段150は、2値化後の画像から対象物の輪郭を抽出し、対象物の面積及び縦横比を求め、一定の大きさの範囲に入っていないものは検査対象から除外する。また、観察対象物の測定結果が周辺の観察対象物の影響を受けないように、一定の距離以上離れていないものの除外を行い、最終的に検査対象となる色ビーズ200と基準ビーズ300の位置情報をビーズ区別手段170に転送する。
【0021】
ビーズ区別手段170は、透過画像検出手段150から転送された色ビーズ200と基準ビーズ300の位置情報に基づいて記憶手段130に格納されている2値化後のBFIイメージから、各ビーズのデータを読み出す。2値化後のBFIイメージを図5に示す。色ビーズ200は、ビーズ自体がレンズの役目を果し、集光する為、中心部が明るく周辺部が暗くなる。また、基準ビーズ300は光を通さないため、全体が暗くなる。ビーズ区別手段170は、ビーズの中心部の画素データが明るければ色ビーズ200と判断し、ビーズの中心部の画素データが暗ければ基準ビーズ300と判断して、それぞれのビーズを区別した新たな位置情報xを作成し、ビーズ種別記憶手段180に格納する。
【0022】
次に、CPU104は、光学フィルタ108が実装されている箇所が、対物レンズ105の真上に位置するように、フィルタホイール駆動手段115を制御してフィルタホイール114を回転させるとともに、LED106を消灯し、励起光源113から励起光を照射する。励起光は、青色レーザー光のような短波長の光であり、ダイクロイックミラー107に当たると、ダイクロイックミラー107が所定の波長以下の光を反射するという性質によって、対物レンズ105の方向へ励起光を反射する。
【0023】
対物レンズ105はダイクロイックミラー107からの光をウエル102内の観察対象に集光させる。ウエル102内の観察対象に付着した半導体ナノ粒子は、対物レンズ105から照射された光によって励起され、ダイクロイックミラー107を通過できる所定の波長以上の光を発光する。観察対象に付着した半導体ナノ粒子が発光した光は、前記観察対象の透過光と同様に、対物レンズ105、ダイクロイックミラー107、光学フィルタ108を通過し、さらに、結像レンズ109によって集光されて、CCDカメラ110に到達する。
【0024】
このとき、光学フィルタ108は、特定の波長域のみを通過させる性質を持つため、観察対象に付着した半導体ナノ粒子が発光した光の特定の波長域のみが、CCDカメラ110に到達する。この状態で、CPU104は、CCDカメラ制御手段111に指令を与え、CCDカメラ110によって観察対象に付着した半導体ナノ粒子が発光した光のうち、光学フィルタ108を通過した特定の波長域のみの光の二次元画像データをCCDカメラ制御手段111及び書き込み手段120を通して記憶手段130へ格納する。
【0025】
光学フィルタ108は、通過波長域の異なるものが複数あり、フィルタホイール114に取り付けられている。フィルタホイール114は、フィルタホイール駆動手段115によって回転し、光学フィルタ108を切り替えることができる。CPU104は、光学フィルタ108を切り替えながら、上記の方法によって観察対象に付着した半導体ナノ粒子が発光した光の種々の波長域の画像を撮影し、同様の処理を繰り返す。
【0026】
書き込み手段120に入力されたデータは、平均輝度算出手段122によって全ての画素の平均値が計算されて、平均輝度が平均輝度保持手段123に記憶される。CPU104が書き込み手段CPUインタフェース121に設定した値をもとに、低輝度判断基準保持手段124は、取得した画像から背景を選別する為の判断基準となる輝度を算出し、振動検出手段190に出力する。
【0027】
CPU104は、書き込み手段CPUインタフェース121に対して、平均輝度保持手段123の出力をそのまま低輝度判断基準保持手段124に保持するモード、平均輝度保持手段123の出力に対して書き込み手段CPUインタフェース121に設定した比率で増幅/減衰した値を低輝度判断基準保持手段124に保持するモード及び書き込み手段CPUインタフェース121に設定した輝度を低輝度判断基準保持手段124に保持するモードのうち一つのモードを選択して設定することができる。
【0028】
同様に、高輝度判断基準保持手段125は、CPU104から書き込み手段CPUインタフェース121に設定された値から、取得した画像から色ビーズ200及び基準ビーズ300を選別する為の判断基準となる輝度を算出し、振動検出手段190に出力する。
【0029】
CPU104は、書き込み手段CPUインタフェース121に対して、平均輝度保持手段123の出力をそのまま高輝度判断基準保持手段125に保持するモード、平均輝度保持手段123の出力に対して書き込み手段CPUインタフェース121に設定した比率で増幅/減衰した値を高輝度判断基準保持手段125に保持するモード、書き込み手段CPUインタフェース121に設定した輝度を高輝度判断基準保持手段125に保持するモードを選択して設定することができる。
【0030】
図6は、BFIより求めた検査対象となる色ビーズ200及び基準ビーズ300の位置を示すイメージ図である。斜線でハッチングされた場所が測定対象となる色ビーズ200の位置であり、黒く塗られた場所が基準ビーズ300の位置である。
【0031】
図7a〜7cに本発明の振動検出内円及び振動検出外円の構成図を示す。図7aにおいて、300は基準ビーズ、310は基準ビーズ300と同一の中心点を持ち、基準ビーズ300よりも半径が2画素分短い振動検出内円、320は基準ビーズ300と同一の中心点を持ち、基準ビーズ300よりも半径が2画素分長い振動検出外円である。
【0032】
振動検出円算出手段193は、CPU104から振動検出CPUインタフェース191に設定された振動検出内円310の半径と、透過画像検出手段150からの基準ビーズ300の中心点の位置情報から、それぞれの基準ビーズ300に対する振動検出内円310上の点(以下、振動検出点とする)を算出し、二次元蛍光画像における振動検出点の輝度情報を記憶手段130から読み出し手段140を介して読み出す。振動発生検出手段192は読み出された輝度情報と、低輝度判断基準保持手段124から出力される輝度情報を比較し、低輝度判断基準保持手段124から出力される輝度の方が高ければ、振動を検出したとして、CPU104に通知する。
【0033】
同様に振動検出円算出手段193は、CPU104から振動検出CPUインタフェース191に設定された振動検出外円320の半径と、透過画像検出手段150からの基準ビーズ300の中心点の位置情報から、それぞれの基準ビーズ300に対する振動検出外円320上の振動検出点を算出し、二次元蛍光画像における振動検出点の輝度情報を記憶手段130から読み出し手段140を介して読み出す。振動発生検出手段192は読み出された輝度情報と、高輝度判断基準保持手段125から出力される輝度情報を比較し、高輝度判断基準保持手段125から出力される輝度の方が低ければ、振動を検出したとして、CPU104に通知する。
【0034】
図7bは振動が発生した場合の二次元蛍光画像における基準ビーズ300と振動検出内円310及び振動検出外円320の関係を示し、図7cは振動がない場合の二次元蛍光画像における基準ビーズ300と振動検出内円310及び振動検出外円320の関係を示す。振動の検出は振動検出内円310上の例えば4点の振動検出点(図7においては星印で表される)と振動検出外円320上の例えば4点の振動検出点(図7においては三角印で表される)において行われる。
【0035】
図7bにおいては、低輝度判断基準保持手段124から出力される輝度情報よりも輝度の低い振動検出点315が振動検出内円310上に存在するとともに高輝度判断基準保持手段125から出力される輝度情報より輝度の高い振動検出点325が振動検出外円320上に存在するので、装置が振動していると判断できる。図7cにおいては、低輝度判断基準保持手段124から出力される輝度情報よりも輝度の低い振動検出点が振動検出内円310上に存在しないこと、高輝度判断基準保持手段125から出力される輝度情報より輝度の高い振動検出点が振動検出外円320上に存在しないことから装置が振動していないと判断できる。
【0036】
図8に振動が検出された際の処理の流れを示す。緑色の光学フィルタ108を使用して蛍光画像を撮影している際に振動が検出された場合を考える。振動検出手段190によって、振動が検出されると、振動の情報はCPU104に転送される。CPU104は、振動が検出されたので、フィルタホイール114を回転させずに、緑色の光学フィルタ108が光軸上にある状態で再び蛍光画像を撮影する。緑色の光学フィルタ108を用いて再度撮影を行った時に振動が発生しなければ、フィルタホイール駆動手段115を制御して、青色の光学フィルタ108が光軸上にくるようにフィルタホイール114を回転させる。青色の光学フィルタ108を用いて蛍光画像の撮影を行ない、振動が検出しなければ現在のウエル102に対する撮影は完了したものとして、次のウエル102の撮影にうつる。このように画像の再取得を行うことにより、振動があった場合でも画像の再取得に要する時間の短縮を行うことができる。
【0037】
蛍光画像検出手段160は、ビーズ種別記憶手段180から色ビーズ200の位置情報xを読み出す。蛍光画像検出手段160は、記憶手段130から赤色の光学フィルタ108を用いて撮影した蛍光画像を読み出して、先に読みだした位置情報xから得られる色ビーズ200の中心点を中心とする半径10画素分の円に含まれる各画素の輝度の合計(以下、赤色輝度値とする)をそれぞれの色ビーズ200に対して求める。
【0038】
次に、記憶手段130から緑色の光学フィルタ108を用いて撮影した蛍光画像を読み出して、位置情報xから得られる色ビーズ200の中心点を中心とする半径10画素分の円に含まれる各画素の輝度の合計(以下、緑色輝度値とする)をそれぞれの色ビーズ200に対して求める。
【0039】
同様に、記憶手段130から青色の光学フィルタ108を用いて撮影した蛍光画像を読み出して、位置情報xから得られる色ビーズ200の中心点を中心とする半径10画素分の円に含まれる各画素の輝度の合計(以下、青色輝度値とする)をそれぞれの色ビーズ200に対して求める。
【0040】
蛍光画像検出手段160は、赤色輝度値が0近辺でない場合、それぞれの色ビーズ200の緑色輝度値を赤色輝度値で除算する。
【0041】
除算結果が0〜0.1の時、 緑色輝度値:赤色輝度値 = 0:1
除算結果が0.49〜0.51の時、緑色輝度値:赤色輝度値 = 1:2
除算結果が0.98〜1.02の時、緑色輝度値:赤色輝度値 = 1:1
除算結果が1.96〜2.04の時、緑色輝度値:赤色輝度値 = 2:1
とする。
【0042】
除算結果が上記の範囲内に入らない場合は、異常ビーズとして、検査対象から除外する。同様に青色輝度値を赤色輝度値で除算することにより青色輝度値と赤色輝度値の比率を求めることができる。これらの(緑色輝度値:赤色輝度値)及び(青色輝度値:赤色輝度値)の比率から(赤色輝度値:緑色輝度値:青色輝度値)を求める。次に、赤色輝度値が0近辺の場合、緑色輝度値が0近辺でなければ、それぞれの色ビーズ200の青色輝度値を緑色輝度値で除算する。
【0043】
除算結果が0〜0.1の時、 青色輝度値:緑色輝度値 = 0:1
除算結果が0.49〜0.51の時、青色輝度値:緑色輝度値 = 1:2
除算結果が0.98〜1.02の時、青色輝度値:緑色輝度値 = 1:1
除算結果が1.96〜2.04の時、青色輝度値:緑色輝度値 = 2:1
となる。
【0044】
色ビーズ判別手段195は、それぞれの色ビーズ200に対して、赤色輝度値が0近辺でない場合、蛍光画像検出手段160が算出した(赤色輝度値:緑色輝度値:青色輝度値)の比率から表1に示す塗布済みビーズの種類6から19を判別する。色ビーズ判別手段195は、それぞれの色ビーズ200に対して、赤色輝度値が0近辺の場合、緑色輝度値が0近辺でなければ、蛍光画像検出手段160が算出した(緑色輝度値:青色輝度値)の比率から表1に示す塗布済みビーズの種類2から5を判別する。色ビーズ判別手段195は、それぞれの色ビーズ200に対して、赤色輝度値及び緑色輝度値及び青色輝度値が0近辺であれば、表1に示す塗布済みビーズの種類0であると判断し、青色輝度値が0近辺でなければ、塗布済みビーズの種類1であると判断する。
【0045】
なお、本実施例では、青色、緑色、赤色の半導体ナノ粒子を(1:1:1)の割合で塗布したものを基準ビーズとしているが、各色に発光する半導体ナノ粒子がビーズに塗布されていれば青色、緑色、赤色の波長の光を透過する光学フィルタ108を用いて、基準ビーズを撮影できるので、各半導体ナノ粒子の塗布する比率は問題ではない。
【0046】
また本実施例では、半導体ナノ粒子を三種類、光学フィルタ108を三種類の構成の実施例を示しているが、半導体ナノ粒子及び光学フィルタ108の種類は三種類よりも多くても、少なくてもよい。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2は振動発生時の動作のみが、本発明の実施例1と異なる。図9を用いて、振動発生時の動作のみ説明する。
【0048】
緑色の光学フィルタ108を使用して蛍光画像を撮影している際に振動が検出された場合を考えると、振動検出手段190によって、振動が検出されると、振動の情報はCPU104に転送される。CPU104は、振動が検出されたので、フィルタホイール駆動手段115を制御して、青色の光学フィルタ108が実装されていない箇所が光軸上にくるようにフィルタホイール114を回転させる。そして、BFI画像、赤色の蛍光画像、緑色の蛍光画像、青色の蛍光画像の順で、最初と同じように振動を検出しながらもう一度最初から、画像の撮影を開始する。このように画像の再取得を行うことにより、どの過程で振動が発生しても、画像再取得の為の処理が同じになるので、制御を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかる色ビーズ判別装置は、装置の振動検出に要する時間を短縮でき、より高速に遺伝子解析を行う、遺伝子解析装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1及び2における色ビーズ判別装置のブロック図
【図2】本発明の実施例1及び2における書き込み手段のブロック図
【図3】本発明の実施例1及び2における振動検出手段のブロック図
【図4】本発明の実施例1及び2における色ビーズ及び基準ビーズの模式図
【図5】本発明の実施例1における透過画像のイメージ図
【図6】本発明の実施例1及び2における色ビーズ及び基準ビーズの位置を示すイメージ図
【図7】本発明の実施例1及び2における振動検出内円及び振動検出外円の構成図
【図8】本発明の実施例1における振動発生時の処理図
【図9】本発明の実施例2における振動発生時の処理図
【符号の説明】
【0051】
101 ウエルプレート
102 ウエル
103 ウエルプレート駆動手段
104 CPU
105 対物レンズ
106 LED
107 ダイクロイックミラー
108 光学フィルタ
109 結像レンズ
110 CCDカメラ
111 CCDカメラ制御手段
112 Z軸駆動手段
113 励起光源
114 フィルタホイール
115 フィルタホイール駆動手段
120 書き込み手段
121 書き込み手段CPUインタフェース
122 平均輝度算出手段
123 平均輝度保持手段
124 低輝度判断基準保持手段
125 高輝度判断基準保持手段
126 データ転送手段
130 記憶手段
140 読み出し手段
150 透過画像検出手段
160 蛍光画像検出手段
170 ビーズ区別手段
180 ビーズ種別記憶手段
190 振動検出手段
191 振動検出CPUインタフェース
192 振動発生検出手段
193 振動検出円算出手段
195 色ビーズ判別手段
200 色ビーズ
201、301 青色に発光する半導体ナノ粒子
202、302 緑色に発光する半導体ナノ粒子
203、303 赤色に発光する半導体ナノ粒子
300 基準ビーズ
310 振動検出内円
315 画素全体の平均輝度よりも輝度の低い振動検出内円上の点
320 振動検出外円
325 画素全体の平均輝度よりも輝度の高い振動検出外円上の点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径に応じて異なる波長の蛍光を発する半導体ナノ粒子を略球状のビーズ粒子の表面に付着させた複数のビーズ粒子から成る色ビーズと、
前記色ビーズのビーズ粒子の光透過率を変えて作成した基準ビーズと、
前記色ビーズと前記基準ビーズと測定すべき試料を混合した被測定物に対して透過光を照射し透過画像を得るための透過光照射手段と、
前記被測定物に励起光を照射し蛍光画像を得るための励起光照射手段と、
特定の波長域の光を通す複数のフィルタ手段と、
前記被測定物の透過画像及び蛍光画像を撮影する撮影手段と、
撮影した透過画像及び蛍光画像を記憶する記憶手段と、
前記透過画像における前記ビーズ粒子の中心点及び階調を検出する透過画像検出手段と、
前記蛍光画像から前記色ビーズ毎の蛍光波長別の階調を検出する蛍光画像検出手段と、
前記色ビーズと前記基準ビーズとを区別するビーズ区別手段と、
前記色ビーズの種類を判別する色ビーズ判別手段と、
前記基準ビーズを用いて前記被測定物の振動を検出する振動検出手段と、
を備えることを特徴とする色ビーズ判別装置。
【請求項2】
前記ビーズ区別手段は、前記透過画像検出手段で検出した前記色ビーズ及び前記基準ビーズ毎の階調を検出し、予め定めた階調値と比較することにより前記色ビーズと前記基準ビーズを区別することを特徴とする請求項1に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項3】
前記色ビーズ判別手段は、前記蛍光画像検出手段で検出された前記色ビーズ毎の蛍光波長別の階調の比率と、予め定めたビーズの蛍光波長別の階調の比率とを比較することにより、前記色ビーズを区別することを特徴とする請求項1に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項4】
前記振動検出手段は、前記透過画像検出手段によって算出された前記中心点と同じ中心を持ち半径が前記基準ビーズより短い振動検出内円と、前記中心点と同じ中心を持ち半径が前記基準ビーズよりも長い振動検出外円とを求める振動検出円算出手段とを備え、
前記基準ビーズの蛍光画像の前記振動検出内円上の少なくとも1点の輝度が、予め定めた低輝度判断基準よりも低い場合、または振動検出外円上の少なくとも1点の輝度が予め定めた高輝度判断基準よりも高い場合に振動が発生したと判断する振動発生検出手段を有することを特徴とする請求項1に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項5】
前記低輝度判断基準は前記フィルタ手段ごとに撮影した前記蛍光画像それぞれの輝度の平均値であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項6】
前記低輝度判断基準は外部より設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項7】
前記高輝度判断基準は前記フィルタ手段ごとに撮影した前記蛍光画像それぞれの輝度の平均値であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項8】
前記高輝度判断基準は外部より設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項9】
前記振動検出内円の半径の値が外部より設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項10】
前記振動検出外円の半径の値が外部より設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項11】
前記振動検出手段により、前記基準ビーズの蛍光画像から振動が検出された場合、振動の検出された蛍光画像のみを再取得することを特徴とする請求項1に記載の色ビーズ判別装置。
【請求項12】
前記振動検出手段により、前記基準ビーズの蛍光画像から振動が検出された場合、振動の検出された前記基準ビーズを含む透過画像及び全ての蛍光画像を再取得することを特徴とする請求項1に記載の色ビーズ判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−112993(P2006−112993A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302604(P2004−302604)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】