説明

色変更媒体を備えるOLED

チューニングされたOLEDデバイスは、光を発生させる発光層と、その発光層を挟んで互いに向かい合った位置にある半透明反射体および反射層とを含んでいて、その発光層から出る軸方向の光を少なくとも1つの特定の波長で増幅することにより軸方向から見て望む色になるようにする一方で、その軸方向の光の他の波長は実質的に増幅しないマイクロキャビティ構造と;上記特定の波長よりも短い波長に応答してその短い波長の光を吸収し、上記特定の波長に対応する色の光を出す色変更媒体を含む層とを備えることにより、このOLEDデバイスから発生する光を軸を外れた方向から見たときの色が改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。より詳細には、本発明は、効率、色純度、視野角が改善された発光ELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フル・カラー有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイス(有機発光デバイス(OLED)としても知られる)は、最近、新しいタイプのフラット・パネル・ディスプレイであることが明らかになってきた。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視野角が広く、フル・カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて電荷の再結合をサポートし、光を発生させる有機EL媒体とで構成されている。有機ELデバイスの一例が、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されている。他の具体例は、Tangらによってアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載されている。例えばテレビ、コンピュータのモニタ、携帯電話のディスプレイ、ディジタル・カメラのディスプレイとして有用な画素化されたディスプレイ装置を構成するには、個々の有機EL素子をマトリックス状の画素アレイとして配置するとよい。このマトリックス状の画素は、単純なパッシブ・マトリックス駆動方式、またはアクティブ・マトリックス駆動方式のいずれかを利用して電気的に駆動することができる。パッシブ・マトリックスでは、有機EL層が、行と列に直交配置された2組の電極の間に挟まれている。パッシブ・マトリックス駆動の有機ELデバイスの一例は、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第5,276,380号に開示されている。アクティブ・マトリックスの構成では、各画素は、多数の回路素子(例えばトランジスタ、キャパシタ、信号線)によって駆動される。このようなアクティブ・マトリックス式有機ELデバイスの具体例は、アメリカ合衆国特許第5,550,066号(譲受人に譲渡)、第6,281,634号、第6,456,013号に記載されている。
【0003】
OLEDデバイスの効率を改善する1つの方法は、マイクロキャビティ構造を用いることである。反射体と半透明反射体が間にいろいろな層を挟んだ状態で機能し、マイクロキャビティを形成する。このマイクロキャビティは、望む波長で共鳴するように厚さと屈折率を調節することができる。マイクロキャビティ構造の具体例は、アメリカ合衆国特許第6,406,801号、アメリカ合衆国特許出願公開第5,780,174号、日本国特開11-288786に示してある。
【0004】
破壊性の光干渉がOLEDデバイス内部のマイクロキャビティ効果から生じる可能性があるため、OLEDを斜めの方向から見るときに色収差が生じる可能性がある。マイクロキャビティ・デバイスは方向性を持つため、発光強度は見る角度が変わると急激に低下する。例えば、N. Takada、T. Tsutsui、S. Saito、Appl. Phys. Lett.、第63巻(15)、2032ページ、1993年、「有機薄膜発光ダイオードにおいて光学的マイクロキャビティ構造を利用した発光特性の制御」を参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の1つの目的は、軸を外れた方向から見たときの色収差を小さくしたOLEDデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、
a)光を発生させる発光層と、その発光層を挟んで互いに向かい合った位置にある半透明反射体および反射層とを含んでいて、その発光層から出る軸方向の光を少なくとも1つの特定の波長で増幅することにより軸方向から見て望む色になるようにする一方で、その軸方向の光の他の波長は実質的に増幅しないマイクロキャビティ構造と;
b)上記特定の波長よりも短い波長に応答してその短い波長の光を吸収し、上記特定の波長に対応する色の光を出す色変更媒体を含む層とを備えることにより、発生する光を軸を外れた方向から見たときの色が改善されている、チューニングされたOLEDデバイスによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの利点は、軸を外れた角度から見たときの色収差が小さくなった効率的なOLEDデバイスが提供されることである。本発明のさらに別の利点は、いくつかの実施態様において、特に軸を外れた角度から見たときに向上した輝度を提供できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
デバイスの特徴的なサイズ(例えば層の厚さ)はミクロン未満の範囲であることがしばしばあるため、図面は、サイズを正確にというよりは、見やすくなるように描いてある。
【0009】
“OLEDデバイス”または“有機発光ディスプレイ”という用語は、画素として有機発光ダイオードを備えるディスプレイ装置というこの分野で知られている意味で用いる。カラーOLEDデバイスは、少なくとも1つの色の光を出す。“マルチカラー”という用語は、異なる領域では異なる色相の光を出すことのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。この用語は、特に、いろいろな色からなる画像を表示することのできるディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。領域は、必ずしも互いに連続している必要はない。“フル・カラー”という用語は、一般に、可視スペクトルの赤色領域と緑色領域と青色領域で光を出すことができて、任意の色相の画像、または色相の組み合わせの画像を表示できるマルチカラー・ディスプレイ・パネルを記述するのに用いる。赤、緑、青は三原色を構成し、その三原色を適切に混合することによって他のあらゆる色を作り出すことができる。しかし追加のいろいろな色を使用してデバイスの色の範囲を広げることも可能である。“色相”という用語は、可視スペクトルの範囲での発光の強度プロファイルを意味する。色相が異なると、目で見て色の違いを識別することができる。“画素”という用語は、この分野で知られている意味で用いられ、ディスプレイ・パネル内で刺激を与えることによって他の領域とは独立に光を出させることのできる領域を指す。しかしフル・カラー・システムでは、色が異なるいくつかの画素を合わせて使用して広い範囲の色を作り出すことが知られていて、見る人はそのような一群の画素を単一の画素と呼ぶことができる。本発明では、このような論理的グループ化を一群の画素または画素群と呼ぶことにする。フル・カラー・ディスプレイでは、一群の画素は、一般に、三原色の画素、すなわち青、緑、赤(RGB)の画素を備えていて、これらが色の範囲を規定する画素となっている。マイクロキャビティ構造によって比較的狭い範囲の波長群の光を増幅しうることがよく知られている。“特定の波長”という表現は、このように増幅されたある範囲の波長群を記述するのに用いる。
【0010】
図1は従来のチューニングされたOLEDデバイス10の断面図であり、マイクロキャビティにおける発光効果を示している。マイクロキャビティOLEDデバイスでは、色度と発光効率が向上することが報告されている。チューニングされたOLEDデバイス10は底部から光を出す(すなわちボトム・エミッション型デバイスである)ように図示してあるが、トップ・エミッション型デバイスであってもよい。
【0011】
チューニングされたOLEDデバイス10はマイクロキャビティ構造70と反射層90を備えている。反射層90は、チューニングされたOLEDデバイス10が光を出す波長での反射が大きい材料である。反射層90のための反射率の大きな好ましい材料としては、Ag、Al、Au、またはこれらの材料を1種類以上含む合金が挙げられる。チューニングされたOLEDデバイス10は、半透明反射体30も備えている。この半透明反射体30は、光の一部を反射し、一部を透過させる。半透明反射体30に適した材料としては、Ag、Au、またはこれらの材料の一方または両方を含む合金が挙げられ、厚さはこれらの材料が半透明になるように、すなわち光の一部を反射し、一部を透過させるように選択される。この厚さは、例えば5nm〜50nmの範囲が可能であり、15nm〜30nmであることがより好ましい。屈折率が大きな透明な材料と屈折率が小さな透明な材料が交互になった1/4波長積層体(QWS)からなる半透明な交代式反射構造も知られており、当業者であれば本発明に適用することができる。反射層90と半透明反射体30は、光を出す発光層50を挟んで向かい合って配置されている。図示したように光を基板20を通して見るボトム・エミッション型デバイスでは、半透明反射体30は発光層50と基板20の間に位置し、反射層90は、基板20、半透明反射体30、発光層50の上方に位置する。逆に、光を基板20とは反対側の方向で見るトップ・エミッション型デバイスでは、反射層90は発光層50と基板20の間に位置し、半透明反射体30は、基板20、反射層90、発光層50の上方に位置する。
【0012】
反射層90と半透明反射体30は、両者に挟まれた層と合わさって機能してマイクロキャビティ構造70を形成する。マイクロキャビティ構造70の厚さと屈折率を調節し、望む波長で共鳴するようにできる。マイクロキャビティ構造の具体例は、アメリカ合衆国特許第6,406,801号、アメリカ合衆国特許出願公開第5,780,174A1号、日本国特開11-288786に示してある。透明なキャビティ-スペーサ層35を追加手段として使用し、マイクロキャビティ構造の共鳴波長を調節することができる。図では、正孔輸送層45と発光層50の界面から光が出るように描いてある。光115は、発光層50から出て半透明反射体30の方向に向かう軸方向の光であり、一部が部分的反射光120として反射され、一部が軸方向部分的透過光125として透過する。軸方向部分的透過光125には、1つ以上の狭い波長帯域の光が含まれる。すなわちマイクロキャビティ構造70は、発光層50から出る軸方向の光を少なくも1つの特定の波長で増幅して軸方向から見たときに望む色が出るようにする一方で、その光の他の波長は実質的に増幅しない。光105は、反射層90の方向に放射される軸方向の光を表わしており、反射光110として反射される。この反射光は、半透明反射体30において一部が反射され、一部が透過する。
【0013】
透明なキャビティ-スペーサ層35(存在している場合)を含めたマイクロキャビティ構造70の厚さは、マイクロキャビティOLEDデバイス10をチューニングして所定の波長で共鳴する光がデバイスから出てくるように選択する。この厚さは、以下の式を満たす。
2ΣniLi + 2nsLs + (Qm1 + Qm2)λ/2π mλ 式1
ただし、niはマイクロキャビティ構造70のn番目のサブ層の屈折率であり、Liはマイクロキャビティ構造70のn番目のサブ層の厚さであり;
nsは透明なキャビティ-スペーサ層35の屈折率であり、Lsは透明なキャビティ-スペーサ層35の厚さであり(ゼロの可能性がある);
Qm1とQm2は、それぞれ、有機EL素子-反射層の間にある2つの界面における位相のシフト(単位はラジアン)であり;
λは、マイクロキャビティ構造70によって増幅する軸方向の光の所定の波長であり、mは負でない整数である。
【0014】
例えばマイクロキャビティ効果を選択し、軸方向から見る望ましい色のために(軸方向部分的透過光125として)軸方向で緑色の光を増幅することができる。
【0015】
光135は、軸を外れた方向に向かって発生する光を表わす。この光は一部が部分的反射光130として半透明反射体30によって反射され、一部が軸を外れた部分的透過光140として透過する。マイクロキャビティ構造によって生み出されて軸を外れた方向に向かう光(例えば軸を外れた部分的透過光140)は、軸方向に向かう光(例えば軸方向部分的透過光125)とは波長と輝度が異なるであろう。言い換えるならば、マイクロキャビティ構造70は、軸方向から見る色の単一の波長を増幅するようにチューニングされていたとしても、幅広いスペクトルを持つ光を発生させるであろう。そしてその光がいろいろな角度から見られることになる。一般に、マイクロキャビティから出る軸を外れた光は、軸方向の光よりも波長が短くなる。
【0016】
ここで図2を参照すると、マルチモード・マイクロキャビティ増幅がなされた後の白色発光OLEDデバイスと、増幅がなされていない白色発光OLEDデバイスでの軸方向の発光スペクトルを示してある。スペクトル170は、マイクロキャビティによる軸方向の増幅がない白色発光OLEDデバイスの発光スペクトルである。Xuらがアメリカ合衆国特許第6,133,692号に記載しているようなマルチモード・マイクロキャビティを利用すると、軸方向にマイクロキャビティを見たときにスペクトルのいくつかの波長(例えば、特定の波長175、180、185)が増幅される。マイクロキャビティ構造70の厚さを選択することにより、軸方向で光の単一の狭い波長帯域を増幅するマイクロキャビティ構造を形成することができる。
【0017】
ここで図3を参照すると、本発明によるOLEDデバイスの一実施態様に関する断面図が示してある。チューニングされたOLEDデバイス15は、パッシブ・マトリックス・デバイスまたはアクティブ・マトリックス・デバイスの一部にすることができる。チューニングされたOLEDデバイス15は、基礎構造として、チューニングされたOLEDデバイス10からのマイクロキャビティ構造70を有する。チューニングされたOLEDデバイス15は、上に説明したように、反射層90と半透明反射体30を備えている。反射層90と半透明反射体30は電極として機能するが、反射層と電極が別々になった他の実施態様も可能である。底部電極、すなわち基板20に最も近い電極は、アノードにされることが最も一般的であるが、本発明がその構成のデバイスに限定されることはない。チューニングされたOLEDデバイス15はさらに、色変更媒体25を含む層を備えている。色変更媒体層は、半透明反射体30の下方に配置される。色変更媒体25は、軸方向の光の特定の波長よりも短い波長に応答する。色変更媒体25はこのような短い波長(例えば軸を外れた部分透過光140)を吸収し、軸方向部分的透過光125の特定の波長に対応する色の光(例えば変換された光150)を出す。対応する色とは、可視スペクトルの同じ領域にあって、見る人が似た色または同じ色と認識することを意味する。例えばチューニングされたOLEDデバイス15の軸方向の光の特定の波長をスペクトルの緑色の部分にすることができる。軸方向部分的透過光125には、見る人が緑色と認識するであろう狭い波長分布が含まれる。軸を外れた部分透過光140は、軸方向部分的透過光125よりも青が強いであろうが、色変更媒体25によって吸収され、変換された光150として再放出される。変換された光150には、軸方向部分的透過光125よりも広く分布した波長が含まれる可能性があるが、軸方向部分的透過光125と可視スペクトルの同じ部分にあるため、見る人にやはり緑色の光と認識されるであろう。このようにすると、OLEDデバイスが出す光を軸を外れた方向から見たときの色が改善される。同様に、チューニングされたOLEDデバイス15の軸方向の光の特定の波長は、スペクトルの青色部分または赤色部分にあってもよい。色変更媒体25の特性は、チューニングされたOLEDデバイス15の色に依存することになろう。
【0018】
色変更媒体層は、例えばアメリカ合衆国特許第6,084,347号とアメリカ合衆国特許出願公開2003/0127968 A1に記載されており、例えば、色変更媒体が含まれた蛍光染料と結合用樹脂を含むこと、または色変更媒体が含まれた蛍光染料だけを含むことができる。蛍光染料は、スペクトルの1つの領域の光を吸収し、より長い波長の光を出す。近紫外〜紫の領域の光を吸収して青色の光を出す蛍光染料の具体例としては、スチルベンをベースとした染料(例えば1,4-ビス(2-メチルスチリル)ベンゼン、トランス-4,4'-ジフェニルスチルベン)、クマリンをベースとした染料(例えば7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン)、またはこれらの組み合わせがある。青〜青緑の領域の光を吸収して緑色の光を出す蛍光染料の具体例としては、クマリン染料(例えば2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチル-キノリジノ(9,9a,1-gh)クマリン、3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2'-ベンゾイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン)、ナフタルイミド染料(例えばベーシック・イエロー51、ソルベント・イエロー11、ソルベント・イエロー116)、またはこれらの組み合わせがある。青〜緑の領域の光を吸収してオレンジ〜赤の光を出す蛍光染料の具体例としては、シアニンをベースとした染料(例えば4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン)、ピリジンをベースとした染料(例えば1-エチル-2-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-ピリジニウム過塩素酸塩)、ローダミンをベースとした染料(例えばローダミンB、ローダミン6G)、オキサジンをベースとした染料、またはこれらの組み合わせがある。蛍光を出すことが条件だが、さまざまな染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料)を使用することができる。色変更媒体層を形成しやすくするため、蛍光染料を顔料樹脂(例えばポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル・コポリマー、アルキド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)に混入することができる。
【0019】
色変更媒体25は、あらゆる方向に光を出す。チューニングされたOLEDデバイス15に戻る光もある。それを避けるため、場合によっては誘電性積層体75を色変更媒体25層と半透明反射体30の間に配置する。誘電性積層体75は光を反射するため、色変更媒体25から出る変換された光150の多くの割合が見る人に向かう。誘電性積層体75(1/4波長積層体としても知られる)では、屈折率が大きな材料からなる層と屈折率が小さな材料からなる層(例えばSiO2とTiO2)が交互になっている。誘電性積層体75は、変換された光150に含まれる波長のかなりの割合が反射されるように構成されているが、軸方向部分的透過光125の特定の波長はかなり透過させる必要がある。望む性質を持つ誘電性積層体の構成法はよく知られており、例えばBornとWolf、『光学の原理』、第6版、パーガモン出版、1980年に記載されている。
【0020】
必ずしも必要なわけではないが、チューニングされたOLEDデバイス15は、カラー・フィルタ85をさらに備えることができる。カラー・フィルタ85は、よく知られているフィルタのどれでもよく、色変更媒体25によって吸収されなかった軸方向の特定の波長よりも短い波長のあらゆる光、または軸方向の特定の波長よりも長いあらゆる光を除去するように設計されている。
【0021】
本発明のチューニングされたOLEDデバイス15とその中に含まれるあらゆる画素は、一般に、図示したように支持用基板20の上に配置される。基板20は、どの方向に光を出したいかに応じて透光性か不透明にすることができる。透光性は、基板20を通してEL光を見る場合、すなわち図示したボトム・エミッション型デバイスの場合に望ましい。その場合には透明なガラスまたはプラスチックが一般に使用される。トップ・エミッション型デバイスとしての用途では、基板20の透光特性は重要ではないため、基板20は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、ケイ素、セラミック、回路板材料などがある。
【0022】
マイクロキャビティ構造70は、透明なキャビティ-スペーサ層35を備えることができる。この透明なキャビティ-スペーサ層35は、反射層の1つと発光層50の間に配置することができる。透明なキャビティ-スペーサ層35は、発生する光に対して透明でなければならず、図示したように、電極(反射層)と発光層50の間で電荷を輸送するために導電性を持っている必要もある。膜貫通コンダクタンスだけが重要であるため、バルクの抵抗率は約108Ωcm未満で十分である。多くの金属酸化物(例えば、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物(SnOx)、インジウム酸化物(InOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、テルル酸化物(TeOx)、アンチモン酸化物(SbOx)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnOx)などを使用することができる。透明なキャビティ-スペーサ層35が導電性でない場合には、透明な電極を透明なキャビティ-スペーサ層35の上に形成し、その透明な電極を回路と電気的に接触させることができる。透明な電極は、上記のような金属酸化物で構成することができる。透明なキャビティ-スペーサ層35の厚さと屈折率の一方または両方は、マイクロキャビティ構造70が望む色にチューニングしているようにするため、チューニングされたOLEDデバイス15の各層の厚さと屈折率を考慮して調節する。
【0023】
チューニングされたOLEDデバイス15はさらに、いろいろな有機層を備えている。公知の有機層には多数の構成があり、本発明ではその構成をうまく実現することができる。有機層としては、正孔注入層40、正孔輸送層45、発光層50、電子輸送層55、電子注入層60などがある。
【0024】
必ずしも必要なわけではないが、正孔注入層40を設けると有用であることがしばしばある。正孔注入層40は、その後に形成する有機層の膜形成特性を改善することと、正孔輸送層45への正孔の注入を容易にすることに役立つ。正孔注入層40で用いるのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,127,004号、第6,208,075号、第6,208,077号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許出願公開EP0,891,121 A1とEP1,029,909 A1に記載されている。
【0025】
正孔輸送層45は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、重合アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらが、アメリカ合衆国特許第3,180,730号に示している。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0026】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されている少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。正孔輸送層45は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例として以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0027】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1,009,041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(例えばオリゴマー材料)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0028】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、発光層50は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じて光が出る。発光層50は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物をドープしたホスト材料を含んでいる。後者の場合、光は主としてドーパントから発生し、任意の色が可能である。発光層50内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。ドーパントは、通常は、強い蛍光を出す染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。ポリマー材料(ポリフルオレンやポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV)など)もホスト材料として使用することができる。この場合に小分子ドーパントをポリマーからなるホストに分子として分散させること、または発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。
【0029】
ドーパントとして染料を選択する際の重要な関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ電位の比較である。ホスト材料からドーパント分子へエネルギーを効率的に移動させるための必要条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光材料にとっては、ホストの三重項のエネルギー・レベルが、ホストからドーパントへとエネルギーを移動させるのに十分な高さであることも重要である。
【0030】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0031】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。キレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0032】
有用なホスト材料の他のクラスとしては、アメリカ合衆国特許第5,935,721号に記載されているようなアントラセンの誘導体(例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンとその誘導体)、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているようなジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。カルバゾール誘導体は、リン光発光体にとって特に有用なホストである。
【0033】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0034】
電子輸送層55を形成する際に用いる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。オキシノイド化合物の具体例はすでに示してある。
【0035】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。ベンズアゾールとトリアジンも有用な電子輸送材料である。
【0036】
カソードと電子輸送層の間に電子注入層60も存在していてよい。電子注入材料の具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化アルカリ塩(例えば前出のLiF)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした有機層などがある。
【0037】
発光層50と電子輸送層55を単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。発光性ドーパントを正孔輸送層45に添加することにより、正孔輸送層45をホストとして機能させうることが従来技術で知られている。多数のドーパントを1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを作ることができる。例えば青色発光材料と黄色発光材料の組み合わせ、シアン色発光材料と赤色発光材料の組み合わせ、赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料の組み合わせがある。白色発光デバイスが記載されているのは、例えばヨーロッパ特許第1,187,235号、第1,182,244号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419A1、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号である。譲受人に譲渡されたヨーロッパ特許第1,187,235A2号に記載されているように、以下の層を含めることによって白色発光デバイスを実現することができる。その層とは、正孔注入層40;正孔注入層40の上に配置されていて、スペクトルの黄色領域の光を発生させるためのルブレン化合物をドープされた正孔輸送層45;正孔輸送層45の上に配置されていて、青色発光化合物をドープされた発光層50;発光層50の上に配置された電子輸送層55である。異なる画素のために異なる1種類以上の材料を有機層で使用する別のいろいろな実施態様を本発明に適用することもできる。これらの方法をチューニングされたOLEDデバイス15に適用し、発光層50が白色光(波長帯域の広い光とも呼ばれる)を出すようにすることができる。
【0038】
従来技術で知られているように、追加の層(例えば電子阻止層または正孔阻止層)を本発明のデバイスで使用することができる。例えばアメリカ合衆国特許出願公開2002/0015859A1に記載されているように、リン光発光体デバイスの効率を向上させるのに正孔阻止層が一般に使用される。
【0039】
上記の有機材料は、気相法(例えば昇華)で堆積させることが好ましいが、流体(例えば溶媒)から堆積させることもできる。溶媒は、場合によっては結合剤と合わせて使用し、膜の形成を改善する。材料がポリマーである場合には溶媒堆積が好ましいが、他の方法(例えばスパッタリングや、ドナー・シートからの熱転写)を利用することもできる。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0040】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。
【0041】
本発明のOLEDデバイスでは、望むのであればその特性を向上させるため、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。
【0042】
図4は、本発明の別の実施態様によるチューニングされたマルチカラーOLEDデバイスの断面図であり、このデバイスは、さまざまな色の光を出す画素アレイを有する。チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65はトップ・エミッション型であり、光(125a、125b、125c)が基板20から外に向かって放出されるが、ボトム・エミッション型をこのようにして製造することもできる。色の異なる少なくとも2つの画素(例えば画素80a、80b)が、マイクロキャビティ構造と、色変更媒体(例えば色変更媒体25a、25b)を含む層とを備えている。マイクロキャビティ構造を備える各画素は、基板20上に反射層(例えば画素80a内の反射層90a)を備えており、この反射層は、マイクロキャビティ構造の底部を形成する機能を持つ。すべての画素にとって、半透明反射体30がマイクロキャビティ構造の頂部を形成する。こうすることにより、チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65の頂部から光の一部が出て行くことができる。反射層90aと半透明反射体30は、電極としても機能する(反射層90aは画素80a用、半透明反射体30は画素80a、80b、80c用)が、他の構成も可能であり、反射層がすべての画素に共通する1つの電極になり、それぞれの画素に別々の半透明反射体が存在しているようにすることもできる。反射層と電極が別になったさらに別の実施態様も考えられる。
【0043】
色の異なる画素にはさまざまな実施態様が可能である。有用な1つの組み合わせは、チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65がフル・カラー・デバイスであり、軸方向の光125aの特定の波長がスペクトルの赤色部分であり、軸方向の光125bの特定の波長がスペクトルの緑色部分であり、軸方向の光125cの特定の波長がスペクトルの青色部分であるものである。図示したように、色の異なるそれぞれの画素はマイクロキャビティ構造を1つ備えていて、チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65は、その各画素のマイクロキャビティ構造のために共通する1つの発光層50を備えている。これは有機層のパターニングを必要としないため、製造する上で有利である。発光層50は、場合によっては上に説明した他の層と合わさって、このような構造において白色光すなわち広帯域の波長の光を出す構成にされる可能性が最も大きく、画素の色の違いは、マイクロキャビティとカラー・フィルタの一方または両方による効果の結果として生じることになろう。1つ以上の画素80a、80b、80cについて1つ以上のOLED層(例えば発光層50)を別々にパターニングするという別の実施態様がよく知られている。このような構造では、各画素は、特定の波長のための発光層(例えば赤色発光層、緑色発光層、青色発光層)を備えることができる。
【0044】
チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65は、上に説明した色変更媒体25a、25bを半透明反射体30の上方に備えている。色変更媒体25aと25bはあらゆる方向に光を出す。その中には、画素80aと80bに戻る光も含まれる。これを阻止するため、場合によっては上記の誘電性積層体75aを色変更媒体25aと半透明反射体30の間に配置し、上記の誘電性積層体75bを色変更媒体25bと半透明反射体30の間に配置することができる。誘電性積層体75aと75bは、マイクロキャビティ構造によって増幅された軸方向の特定の波長に対してかなり透明でなくてはならない。したがって誘電性積層体の性質は、画素の特定の波長が何であるかに依存することになる。
【0045】
必ずしも必要ではないが、上に説明したカラー・フィルタ85a、85bも備えることができる。チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65の1つ以上の画素は、異なるカラー・フィルタを備えることができる。そのカラー・フィルタの性質は、軸方向から見る画素の望ましい色が何であるかに依存することになる。従来技術で知られているブラック・マトリックス(図示せず)を画素またはカラー・フィルタの間または周囲に配置し、コントラストを向上させることができる。
【0046】
チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65の色が異なる少なくとも2つの画素(例えば画素80aと80b)が、マイクロキャビティ構造と色変更媒体を備えている。色が異なる他の画素(例えば画素80c)はさまざまな構造にすることができる。構造としては、例えば、色変更媒体を有するマイクロキャビティ構造、(図4に示したような)色変更媒体のないマイクロキャビティ構造、非マイクロキャビティ構造がある。これらのうちのどれも、場合によってはカラー・フィルタと誘電性積層体の一方または両方を備えることができる。
【0047】
チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65は、アクティブ・マトリックス回路210を備えたアクティブ・マトリックス・デバイスである。アクティブ・マトリックス回路210は、基板20の上に形成される。アクティブ・マトリックス回路210は、半導体アクティブ層211と、ゲート誘電体212と、ゲート導電体213と、第1の絶縁層214と、第2の絶縁層217とからなる第1の薄膜トランジスタ(TFT)を備えている。アクティブ・マトリックス回路210はさらに、輝度信号を伝達する1本の信号線216と、電力をトランジスタに供給する1本の電力線215を備えている。TFT回路の製造法は従来技術において周知である。各画素についてトランジスタ、信号線、電力線を1つだけ示してあるが、それぞれの画素は、一般に、第2のトランジスタ(図示せず)やキャパシタ(図示せず)のほか、別の選択線(図示せず)も備えている。回路素子の数と構成が異なる多くのタイプの回路が従来技術で知られており、本発明ではそうした多彩な回路を利用できると考えられる。アクティブ・マトリックス構造の具体例は、アメリカ合衆国特許第5,550,066号、第6,281,634号、第6,501,466号に記載されている。図示したTFTは薄膜半導体アクティブ層211を利用して製造してあるが、半導体基板を用いると、基板20が実際にこの機能を果たすことができる。図4には、頂部にゲートがある構造が示してある。すなわちゲート導電体213とゲート誘電体212が半導体アクティブ層211の上に存在している。しかし底部ゲートとして知られる逆転構造のTFTを用いて有機ELデバイスを駆動できることも従来技術で知られている。
【0048】
アメリカ合衆国特許第6,246,179号に記載されているような画素間誘電体層160を用いて透明な電極または半透明な電極(例えば反射層90c)の縁部を覆い、この領域における短絡や強電場を避けることができる。画素間誘電体層160は、図示したように導電性である場合の透明なキャビティ-スペーサ層(例えば35a)を覆うことや、電極の一部を形成することもできる。画素間誘電体層160を利用することが好ましいとはいえ、本発明をうまく実現する上で画素間誘電体層160が必ず必要なわけではない。
【0049】
チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス65がパッシブ・マトリックス・デバイスであってアクティブ・マトリックス回路を備えていない別の実施態様を本発明に適用することができる。
【0050】
画素80aはマイクロキャビティ構造として機能し、発光層50から出た光が反射層90aによって反射され、光の一部(一般に25〜75%)が半透明反射体30によって反射される。そのため軸方向の光125aは、画素80aから出て半透明反射体30を通過するとき、所定の波長が上に説明したように増幅される。発光用に最適化された有機層100の厚さが望ましい波長の光125aを発生させるのに適したサイズになっているとは限らないため、望むサイズにするのに透明なキャビティ-スペーサ層35aをさらに備えることが望ましい。透明なキャビティ-スペーサ層35aは反射層90aの上に形成される。透明なキャビティ-スペーサ層35aの厚さと屈折率の一方または両方は、画素80aにとって望ましい色の光の波長で共鳴するようにマイクロキャビティ構造をチューニングするため、チューニングされたOLEDデバイス65の有機層100の厚さと屈折率を考慮して調節する。2つ以上の画素が透明なキャビティ-スペーサ層を備えている場合には、その透明なキャビティ-スペーサ層が画素ごとに異なっていてもよいようにするため(例えば画素80aの透明なキャビティ-スペーサ層35aと画素80bの透明なキャビティ-スペーサ層35b)、または画素によっては透明なキャビティ-スペーサ層を持たないようにするため(例えば画素80cは、反射層90cの上に透明なキャビティ-スペーサ層を持たない)、透明なキャビティ-スペーサ層の厚さと屈折率の一方または両方を色の異なるそれぞれの画素に関して別々に調節することができる。
【0051】
透明なキャビティ-スペーサ層35aが反射層90aと有機層100の間に存在し、透明なキャビティ-スペーサ層35bが反射層90bと有機層100の間に存在している図が示してあるが、別の実施態様では、透明キャビティ-スペーサ層35aと35を有機層100と半透明反射体30の間に形成することもできる。
【0052】
1つ以上の有機層100がすべての画素に共通ではなくて少なくとも1つの画素に対して別にパターニングされている別の一実施態様では、透明キャビティ-スペーサ層を制限することができ、色の範囲を規定する画素のマイクロキャビティ構造は、各画素について1つ以上の有機層100の厚さと屈折率の一方または両方を別々に調節することによってチューニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来のマイクロキャビティOLEDデバイスの断面図であり、マイクロキャビティにおける発光効果を示している。
【図2】マイクロキャビティによる増幅がなされた後の白色発光OLEDデバイスとマイクロキャビティによる増幅がなされていない白色発光OLEDデバイスにおける従来の発光スペクトルである。
【図3】本発明によるOLEDデバイスの一実施態様の断面図である。
【図4】本発明によるOLEDデバイスの別の一実施態様の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 チューニングされたOLEDデバイス
15 チューニングされたOLEDデバイス
20 基板
25 色変更媒体
25a 色変更媒体
25b 色変更媒体
30 半透明反射体/電極
35 透明なキャビティ-スペーサ層
35a 透明なキャビティ-スペーサ層
35b 透明なキャビティ-スペーサ層
40 正孔注入層
45 正孔輸送層
50 発光層
55 電子輸送層
60 電子注入層
65 チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス
70 マイクロキャビティ構造
75 誘電性積層体
75a 誘電性積層体
75b 誘電性積層体
80a 画素
80b 画素
80c 画素
85 カラー・フィルタ
85a カラー・フィルタ
85b カラー・フィルタ
90 反射層/電極
90a 反射層
90b 反射層
90c 反射層
100 有機層
105 光
110 反射光
115 光
120 部分的反射光
125 軸方向部分的透過光
125a 軸方向の光
125b 軸方向の光
125c 軸方向の光
130 部分的反射光
135 光
140 軸を外れた部分的透過光
150 変換された光
160 画素間誘電層
170 スペクトル
175 特定の波長
180 特定の波長
185 特定の波長
210 アクティブ・マトリックス回路
211 半導体アクティブ層
212 ゲート誘電体
213 ゲート導電体
214 第1の絶縁層
215 電力線
216 信号線
217 第2の絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)光を発生させる発光層と、その発光層を挟んで互いに向かい合った位置にある半透明反射体および反射層とを含んでいて、その発光層から出る軸方向の光を少なくとも1つの特定の波長で増幅することにより軸方向から見て望む色になるようにする一方で、その軸方向の光の他の波長は実質的に増幅しないマイクロキャビティ構造と;
b)上記特定の波長よりも短い波長に応答してその短い波長の光を吸収し、上記特定の波長に対応する色の光を出す色変更媒体を含む層とを備えることにより、発生する光を軸を外れた方向から見たときの色が改善されている、チューニングされたOLEDデバイス。
【請求項2】
上記発光層が広帯域の波長の光を発生させる、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項3】
軸方向の光の上記特定の波長が、スペクトルの赤、緑、青いずれかの部分にある、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項4】
上記色変更媒体層が上記半透明反射体の上に配置されている、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項5】
上記色変更媒体層と上記半透明反射体の間に位置する誘電性積層体をさらに備える、請求項4に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項6】
上記反射層が電極として機能する、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項7】
上記半透明反射体が電極としても機能する、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項8】
パッシブ・マトリックス・デバイスである、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項9】
アクティブ・マトリックス・デバイスである、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項10】
上記マイクロキャビティ構造が透明なキャビティ-スペーサ層をさらに備える、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のチューニングされたOLEDデバイスにおいて、透明な上記キャビティ-スペーサ層の厚さと屈折率の一方または両方が、上記マイクロキャビティ構造を望む色にチューニングするため、このチューニングされたOLEDデバイスの各層の厚さと屈折率を考慮して調節されている、チューニングされたOLEDデバイス。
【請求項12】
ボトム・エミッション型である、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項13】
トップ・エミッション型である、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項14】
カラー・フィルタをさらに備える、請求項1に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項15】
色の異なる画素からなるアレイを備えるチューニングされたマルチカラーOLEDデバイスであって、色の異なるそのような画素のうちの少なくとも2つが、
a)光を発生させる発光層と、その発光層を挟んで互いに向かい合った位置にある半透明反射体および反射層とを含んでいて、その発光層から出る軸方向の光を少なくとも1つの特定の波長で増幅することにより軸方向から見て望む色になるようにする一方で、その軸方向の光の他の波長は実質的に増幅しないマイクロキャビティ構造と;
b)上記特定の波長よりも短い波長に応答してその短い波長の光を吸収し、上記特定の波長に対応する色の光を出す色変更媒体を含む層とを備えることにより、発生する光を軸を外れた方向から見たときの色が改善されている、チューニングされたマルチカラーOLEDデバイス。
【請求項16】
色の異なる上記少なくとも2つの画素それぞれに対するマイクロキャビティ構造のために共通する1つの発光層が存在している、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項17】
上記発光層が広帯域の波長の光を発生させる、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項18】
軸方向の上記特定の波長が、スペクトルの赤、緑、青いずれかの部分にある、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項19】
上記色変更媒体層が上記半透明反射体の上に配置されている、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項20】
上記色変更媒体層と上記半透明反射体の間に位置する誘電性積層体をさらに備える、請求項19に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項21】
上記反射層が少なくとも1つの画素のための電極としても機能する、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項22】
上記半透明反射体が1つ以上の画素のための電極としても機能する、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項23】
パッシブ・マトリックス・デバイスである、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項24】
アクティブ・マトリックス・デバイスである、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項25】
少なくとも1つの画素が透明なキャビティ-スペーサ層をさらに備える、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のチューニングされたOLEDデバイスにおいて、透明な上記キャビティ-スペーサ層の厚さと屈折率の一方または両方が、上記マイクロキャビティ構造を望む色にチューニングするため、このチューニングされたOLEDデバイスの各層の厚さと屈折率を考慮して、異なる色の画素それぞれについて別々に調節されている、チューニングされたOLEDデバイス。
【請求項27】
1つ以上のOLED層が、1つ以上の画素に関して別々にパターニングされている、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項28】
ボトム・エミッション型である、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項29】
トップ・エミッション型である、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項30】
1つ以上の画素が異なるカラー・フィルタをさらに備える、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。
【請求項31】
フル・カラー・デバイスである、請求項15に記載のチューニングされたOLEDデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−533076(P2007−533076A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507368(P2007−507368)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010702
【国際公開番号】WO2005/098987
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】