説明

色彩可変インキ組成物

【課題】
色彩可変インキの色彩変化は、かならず「ブルーシフト」となり、同様の色彩変化をするものが一般に容易に入手可能となったことから、もはやセキュリティ対象物の真正性確認には不十分となった。このため、あらたな色彩変化をする色彩可変インキを提供する。
【解決手段】
反射する光の波長が500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とを混合することにより、観察した際にいわゆる「レッドシフト」する色彩可変インキ組成物としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品券、証券、株券などの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、IDカードなどの各種カード、切符、紙幣、パスポート、身分証明書、公共競技投票券、ビデオソフト、パソコン用ソフトなど(以下、セキュリティ対象物という。)に使用されている真偽判定シールなどの種々の偽造防止体等を構成する偽造防止効果の優れた色彩可変インキ組成物に関する。
一般に電磁波は、紫外線、可視光線、赤外線と分類することができるが、本発明においては、可視光線の領域すなわち可視領域を、360nm〜830nm(JIS Z8120)とし、この可視光線より短波長の光を紫外線、その領域を紫外領域とする。また、この可視光線よりも長波長の光を赤外線、その領域を赤外領域とする。
一般に可視領域は、「紫」:380nm〜450nm、「青」:450nm〜495nm、「緑」:495nm〜570nm、「黄色」:570nm〜590nm、「橙色」:590nm〜620nm、「赤色」:620nm〜750nmと分けられているがその変化は連続的であり、この分類は一例とされる。
また、本発明における紫外領域とは、本発明の顔料の特性からその範囲が定まる領域のことをさすが、一般的な近紫外領域:380nm〜200nmの中の一領域をさす。さらに本発明における赤外領域とは、やはり、本発明の顔料の特性からその範囲が定まる領域のことをさすが、一般的な近赤外領域:830nm〜2500nmの中の一領域をさす。
本発明は、「観察する光の入射角度」、すなわち「色彩可変インキ組成物を用いて形成した色彩可変インキ層(以下、色彩可変インキ層とする。)面に対して垂直な方向を基準方向として、その基準方向に対する角度」が「0度から70度である観察する光」でその色彩可変インキ層面を観察したとき、その入射角に応じて、「選択的に反射する光の波長」(正反射方向へ出て行く光が、入射した光の波長成分の中の選択された一部の波長成分のみとなるという意味。)が変化する性質を有する顔料、すなわち、パール顔料、エフェクト顔料や液晶顔料等を含有した色彩可変インキ組成物に関するものである。
【0002】
パール顔料は、天然雲母薄片(マイカフレークともいう。)に透明な金属酸化物を被覆したものであり、エフェクト顔料は、天然のアルミナフレークや、人工的に合成したアルミナフレーク、酸化珪素フレーク(シリカフレーク)、ホウ珪酸ガラスフレーク等に透明な金属酸化物を被覆したものである。
通常、その色彩可変インキ層を観察し目視判定する際には、その基準方向に対して0度から70度の角度で行う。80度〜90度での観察は特に指定しない限り行われることはない。
また、液晶顔料としては、キラル相を有する液晶構造を持つ三次元架橋物質を用いることができる。特に、波長選択的反射光を有するコレステリック液晶顔料が好適である。
コレステリック液晶は、ネマチック液晶に少量の光学活性化物資(キラル剤)を添加することで誘起され、基準方向に対して一定周期のらせん構造を持つことで液晶層内に一定の屈折率変化を示す層を、幾層も重ねたものとなっている。この屈折率分布を持つ多層構造が、観察するために入射してくる光を波長選択した上で、所定の角度に反射させる性質を現出している。 この選択的反射光の波長は、コレステリック液晶の屈折率値(分布)と、屈折率変化層の厚さ、すなわち多層構造の層間の間隔により定まる。
このコレステリック液晶をフレーク状とし(この状態を、コレステリック液晶顔料という。)、パール顔料と同様の手法により色彩可変インキ組成物とする。
色彩可変インキ層は、色彩可変インキ組成物を用いて、プラスチックフィルム等の表面上に形成して偽造防止体としたもの、若しくは、セキュリティ対象物表面上に直接、各種印刷方法等の適宜な方法により形成したものである。
本発明の色彩可変インキ組成物は、色彩可変インキ層となってその機能を発揮する。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)
本発明の色彩可変インキ組成物の主なる用途としては、偽造防止分野、具体的には、クレジットカード等の、偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や各種電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報や、本人識別等の情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれるが、その中でも、その確認方法が目視であって、その目視判定の真正性を証明する機能を有することが特に望まれるものに適用される。
また、上記した用途以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
これらのものに、目視判定可能な偽造防止体等を貼付等の形で付加し、その目視判定によって、そのセキュリティ対象物の真正性を証明する。
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【0004】
(背景技術)
従来より、この種の金券類等の偽造防止を図るために、見る角度によって色彩が変化する色彩可変印刷層を設ける偽造防止技術が行われている。このような色彩可変印刷層は、例えばパールインキなどのように、見る角度によって色が変化する色彩可変インキであって、印刷等により形成されている。色彩が変化するインキは、光を多重反射する顔料を含んでおり、その顔料で反射した光の干渉によって、色が変化して見える。そのため、色変化効果は、顔料で反射する光が多いほどその効果が大きくなる。そこで、光を多重反射する顔料の数が多くなるように、色彩可変印刷層は、その厚みが厚くなるようにスクリーン印刷などの孔版印刷や、グラビア印刷などの凹版印刷で印刷されることが多い。
具体的には、商品券、株券等の印刷媒体へパール印刷等の色彩可変印刷層を設け、その色彩可変印刷層の一部をパターン状に目視不能に隠蔽し、特定情報を形成した偽造防止印刷媒体が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
この印刷媒体では媒体基材の色調と特定情報の色調が同調して見える特徴がある。しかし、一般的なパールインキ自体は、その光学的性能を指定しなければ、入手可能であり、通常の印刷メーカーであれば、パールインキを入手して、マット調のインキをその上に印刷することで、類似の印刷物を作ることは可能である。
【0005】
そこで、さらに偽造防止性を高めるため、見る角度によって色彩が変化する色彩可変印刷層と、色彩可変印刷層の上に紫外線または赤外線の照射により蛍光発光する光反応印刷層をパターン状に設けた構成の偽造防止印刷媒体(例えば、特許文献2参照)、ないしは、少なくともパール顔料と紫外線照射または赤外線照射により色調が変化する蛍光顔料を含む偽造防止用インキ組成物を使用して、印刷箇所の少なくとも一部分が、単独あるいは複数色以上印刷されている構成の偽造防止印刷物(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
また、上記したような観察する角度に依存する多色性を有する他の顔料として、例えば、コレステリック液晶、三次元架橋性樹脂、および光開始剤等からなる組成物を、プラスチックフィルム上にドクター塗布の際の剪断勾配により配向させ形成した後、プラスチックフィルム上から剥離して粉砕することにより得られる液晶顔料等を用いる方法がある。(例えば、特許文献4参照)。
上記の顔料は、見る角度によって色相が異なって見える上、反射光が円偏光となる特徴を有している。通常の複写手段によっては、複製物にこのような光学的特性を備えさせることができないため、液晶顔料を有価証券やクレジットカードの偽造防止対策に用いると、非常に有効である。また、観察する角度により色相が変化するので、意匠的にも優れたものが得られる特徴もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−006564号
【特許文献2】特開2002−274000号
【特許文献3】特開2002−285061号
【特許文献4】特開1994−220350号
【0007】
しかしながら、これらの色彩可変性を示す顔料において色彩可変性を有するその基本原理は、パール顔料、エフェクト顔料においては、透明な素材である天然雲母薄片(マイカフレーク)や、アルミナフレーク、シリカフレーク、ホウ珪酸ガラスフレークの表面に、可視光波長よりも小さい厚さで、かつ、屈折率がこれらの透明基材より大きい透明金属酸化物薄膜を形成し、この顔料に入射した光をこの薄膜内で多重反射させ、その干渉現象によって、反射する光の波長を選択的なものとしているというものである。
すなわち、光が多重反射するとその多重反射光同士が干渉現象を生じ、反射する光の波長を一つに集約するとともにその強度を増すという光の基本的性質から、反射する光の波長は、透明金属酸化物薄膜の屈折率値や厚さに依存して自動的に決定され、「色彩が変化する」その「変化のパターン」(変化する度合い、変化する範囲等)も一義的に決まる。
この多重反射の効果により、その「変化のパターン」は次のようになる。すなわち、その薄膜に垂直に入射して(基準方向に対しては「角度0°」となる。)、垂直に反射する光の場合と、例えば45度の角度で入射し、反対方向にやはり45度で反射する光の場合とでは、選択反射される光の波長が大きく異なり、「(垂直入射後の)垂直反射光」に対し、「(45度入射後の)45度反射光」は、理論上、その波長の値が0.71倍(cos45°/cos0°≒0.71より。)となる。
すなわち、ある顔料において、(垂直入射後の)垂直反射光が700nm(赤色)であると、(45度入射後の)45度反射光は490nm(青色)となる。いわゆる「ブルーシフト」が起こる。
これは、「透明薄膜」(パール顔料における透明金属酸化物薄膜)の基本的性質であり、色彩変化はこの理論に従って画一的に単調に長波長から短波長へと変化(「ブルーシフト」)する。
すなわち、透明金属酸化物薄膜層の厚さや、その屈折率値等により、垂直反射光の色と45度や70度反射光の色が一義的に定まるということであり、この変化の流れが常に同じであるということである。従って、上記した種々の色彩可変インキを用いても、その色彩変化の状況は全て同様であり、これらの顔料が普及した結果、同様の色彩変化を確認したときに、そのものが真正なものであると断定できず、もはや偽造防止性を有しているとは言えない状況となっている。
また、液晶顔料は、液晶そのものの中に屈折率の分布を持ち、この屈折率分布が、上記した薄膜と同様の機能を持つことから、同様の選択的反射性を示すもの。従って、反射光の波長変化は、薄膜と同様に「ブルーシフト」となる。
以上のように、「色彩可変インキ」とされているものは、全て同様の変化割合で「ブルーシフト」するため、セキュリティ対象物に種々の色彩可変インキを適用しても、目視にて観察する以上、見え方がほぼ同様であり、目視判定による偽造防止効果という面ではややセキュリティ性に劣っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、
これまでの色彩可変インキにない色彩変化を示す色彩可変インキを提供することにある。
すなわち、透明薄膜の基本的な原理である「ブルーシフト」をせず、例えば、垂直反射光として「青色」を呈し、70度付近の反射光として「赤色」を呈する、いわゆる「レッドシフト」を呈する色彩可変インキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、
本発明の第1の態様は、
観察する光の入射角度に応じて、選択的に反射する光の波長が変化する顔料を含む色彩可変インキ組成物において、前記入射角度が0度から70度へと変化する際に、前記顔料の前記選択的に反射する光の波長が、500nm以下の可視領域から、紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とからなることを特徴とする。
本発明の第1の態様によれば、
観察する光の入射角度に応じて、選択的に反射する光の波長が変化する顔料を含む色彩可変インキ組成物において、前記入射角度が0度から70度へと変化する際に、前記顔料の前記選択的に反射する光の波長が、500nm以下の可視領域から、紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とからなることを特徴とする色彩可変インキ組成物が提供される。
パール顔料、エフェクト顔料等は、微細なフレーク状であり、色彩可変インキ層となったときに、そのフレークの平坦面がその色彩可変インキ層の形成する面と平行であるとき、理論的に算出される波長を有する反射光を呈することになるが、そのフレークが様々な他の方向を向いていると、そのフレーク上に形成されている透明酸化物薄膜への光の入射角及び反射角がまちまちとなり、その結果所定の反射角度以外の方向に様々な色の反射光(以下、散乱光という。)が生まれる。
さらに、入射した光が、複数のフレークを通過して最終的に反射光となってでてくる場合もある。また、フレークそのものの形状や、フレーク表面の性質、屈折率やその分布もそのフレーク面での反射や、透過光の減衰に影響する。
但し、複数のフレークを通過した光等は、その減衰が大きく、目視観察への影響は小さいものであり、且つ、所定の入射角での光の入射に対して、その光が正反射する角度へ出てくる反射光については、所定の経路を経た光のみが到達するため、波長選択される過程が限られてくる結果、所定の波長の光のみが反射されてくることになる。
この所定の波長の光の強度を確保し、不要な散乱光を低減するために、フレーク形状は扁平、フレーク表面は平滑、透明酸化物薄膜の厚さが均一であって、色彩可変インキ層となったときに、そのインキ層形成面と平行となるフレークの割合が多く、且つ、そのインキ層へ入射した光が、1つ乃至は2つ程度のフレークによってのみ反射され、反射光としてそのインキ層から出てくるよう設計する。
【0010】
目視観察においては、この散乱光は判定の阻害要因となるため、色彩可変インキ層形成時は、このフレークが色彩可変インキ層の形成する面と平行となるよう、その形成方法を工夫する。例えば、扁平な顔料(扁平率が2〜5の円盤状。扁平率とは、楕円体にあって、長軸長さを短軸長さで割った値。扁平率が2以下では、散乱光が多くなり、扁平率が5以上ではインキ化過程で顔料が変形を受け、やはり散乱光が多くなる。)とした上で、その顔料の大きさ(平均粒径)が例えば10μmである場合、色彩可変インキ層の乾燥後の厚さを1/2以下とすると、傾斜した状態の顔料の割合が少なくなり、多くは色彩可変インキ層と平行になる。さらには、この色彩可変インキ層形成方法として、ブレードコーティングのように、コーティング方向に印圧を掛ける等、また、コーティング時、低粘度で色彩可変インキ層を形成し、フレークが自重で重なる時間を確保した後、乾燥時の溶剤蒸発をゆるやかなものとして、その蒸発の際のフレークの押し上げを抑制する等、種々の工夫を施すことにより、その散乱光を低減させることができる。
従って、インキ組成物を組成する際、採用する印刷等の方式によるが、溶剤比率を50%から90%とし、固形分(色彩可変インキ層形成成分。顔料、樹脂及び添加材とからなる。)のうち、顔料比率を10%〜50%とする。所定の反射光の強度を得るために10%以上の混合が必要であるが、50%を超えると顔料間の凝集等、顔料間の相互作用が強く働くようになり、色彩可変インキ層形成面と平行となり難くなる。
色彩可変インキ層形成方法が、紫外線硬化方式や、電子線硬化方式である場合は、溶剤をほとんど使用しなくとも、色彩可変インキを低粘度とすることができ、且つ、色彩可変インキ層を硬化させるまでの時間を確保できるため、自重で重なっていく時間を確保する、もしくはカレンダー処理をする等、フレークを揃える処理をすることが容易となる。
本発明に使用するフレークは透明であるため、これらの電離放射線による形成方法に特に好適である。
【0011】
もちろん、顔料と樹脂との親和性は重要であり、その接着性が良好なほど、顔料と樹脂界面での反射・透過(屈折)が単純となり、散乱光が少なくなる。顔料の際表面が平滑な面で無い場合には、その界面で複雑な反射や透過(屈折)が生じ、様々な方向へ光が進む。この界面での反射は、本発明の透明金属薄膜層内での多重反射による波長選択性には寄与しない部分であることから、この面は単純に透過することが望ましい。すなわち、平滑であって、反射光が少なく、ほぼ全ての入射光がこの面を単純に透過することが望ましい。
このためには、樹脂と透明金属薄膜との屈折率差が小さいことが望ましく、例えば1.80以上の屈折率を有する透明金属薄膜に対して、樹脂の屈折率は、1.40以上、好ましくは1.60以上あることが好適。
しかし、1.80近傍の屈折率を有する透明な樹脂は存在しないため、逆に、低い屈折率を有する透明金属薄膜、例えば屈折率1.50とし、この屈折率と同一の樹脂を採用することにより樹脂と透明金属薄膜との界面での不要な反射をほぼ無くすことができる。
樹脂としては、ポリメチルアクリレート(n=1.47)、ポリ酢酸ビニル(n=1.47)、ポリ塩化ビニル・酢酸ビニル(n=1.54)、メラミン樹脂(n=1.56)、エポキシ樹脂(n=1.61)、フェノール樹脂(n=1.60)等もしくは、この混合体等を適宜用いることができる。
溶剤は、色彩可変インキ層形成方法によって、それぞれ最適なものを選択する。
溶剤としては、エステル類、エーテル類、脂環炭化水素類、脂肪族炭化水素類、芳香族類、アルコール類等及びこれらの混合を用いる。
これらを沸点により、低沸点溶剤(沸点100度以下)、中沸点溶剤(沸点100度〜150度)、高沸点溶剤(沸点150度以上)に分類し、乾燥条件に合わせ、低沸点溶剤と高沸点溶剤を混合して、急激な溶剤揮発を抑え徐々に乾燥するよう工夫する等、フレークが色彩可変インキ層形成面に平行になるよう調整する。
さらに、透明性を配慮した上で、各種添加物、分散剤、レベリング剤、滑剤、可塑剤、カップリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、各種硬化促進剤等を使用する。
色彩可変インキ形成方法は、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、ノズル印刷、カーテンコート印刷、シルクスクリーン印刷、凹版印刷、インクジェット印刷等の種々の方法において、本発明の機能を十分発揮させるために、溶剤組成、インキ粘度の調整や乾燥・硬化方法を工夫して用いることができる。
もちろん、環境に配慮して、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を使用し、水系インキ組成物とすることも好適である。
【0012】
パール顔料、エフェクト顔料としては、
天然雲母薄片(マイカフレーク)等に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートした顔料、合成アルミナフレーク(粒径1〜30μm、厚さ0.5μm〜5μm、)、合成シリカフレーク(粒径5〜30μm、厚さ0.5μm〜5μm)、ホウ珪酸ガラスフレークに酸化チタン被覆(粒径10〜30μm、厚さ0.5μm〜5μm)、合成マイカフレーク(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、フッ素化合物等)等に、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコート(50nm〜400nm被覆)した顔料が使用できる。
人工的に合成したものは、粒径のバラツキが少ないシャープな粒度分布を有し、平滑な表面、均一な形状を持つため、好適である。
また、フレーク表面上に形成されている明金属薄膜の厚さが所定の厚さでないと、所定の反射角度へ反射する光の波長がずれることになる。このため、フレーク上の透明金属薄膜の厚さのばらつきは、±20%以内、さらには、±10%以内である必要がある。20%で、波長ばらつきは、ほぼ17%。10%では、ほぼ10%程度となる。
もちろん、透明金属薄膜の屈折率のばらつきにより、この波長は変化するが、液相法やCVD法(化合物気相蒸着法)等で形成する精度は非常に高く、本発明の色彩変化に影響するほどのばらつきはない。
この透明金属薄膜を二酸化チタン(酸化度によりその屈折率は変化する。)とし、その厚さを、90nm〜100nmとすると、垂直反射光は赤外領域となり、垂直方向から観察しても色彩を認識することができないが、60度〜70度の反射光では、赤色の反射光(「赤色」:620nm〜750nm)を呈するため、斜めからの観察において、赤色を認識することができる。
【0013】
この厚さを300nm〜330nmとすると、垂直反射光は青色(「青」:450nm〜495nm)となるが、観察角度を大きくしていくと、反射光が紫外領域に入るため、もはや色彩を認識することができなくなる。
従って、フレーク表面上に形成されている透明金属薄膜に酸化チタンの厚さ100nmのものと、300nmを混合したインキとし、そのインキを用いてインキ層を形成すると、
垂直反射光として「青色」を呈し、70度での観察において「赤色」を呈する、言わば「レッドシフト」を示す色彩可変インキを作成することができる。
色彩可変インキ層を形成したとき、それぞれの顔料が均一に分布していると、その切り替わり性能が鮮明になるため、そのフレークの大きさを異なるものとすることで、大きなフレークの隙間に小さなフレークが分布して、敷き詰めるように形成させ、且つ、その垂直断面積(観察側から見た反射する部分の面積)がほぼ同一となるようにその粒径を調整することが望ましい。
もちろん、「レッドシフト」の色彩変化を「青色」を強調しておき、観察角度を大きくしていったとき、わずかに「赤色」を呈する等の種々のバリエーションにあわせ、その混合比等を調整する。
また、「青色」〜「赤色」への変化を、補間してその変化を滑らかなものとする等、その変化を特徴あるものとするため、「青色」用の顔料からの反射光の量と、「赤色」用の顔料からの反射光の量の調節(反射する面積の調節、すなわち扁平な顔料の扁平面の面積の和の調節)の他に、反射する波長域が比較的狭く、「青色」と「赤色」の間の色を呈する顔料を加えることも好適である。例えば「緑色」とするが、この場合は、反射角度30度〜40度でのみブラッグ反射を生じる顔料を加える。これは、後述するように選択波長性の強い液晶顔料により得られる。また、パール顔料、エフェクト顔料の透明金属薄膜を多層とすることによっても得られる。
さらに、「青色」、「赤色」等の特定反射角度に反射する反射光強度を、色彩可変顔料の形状や添加量により制御できるため、「ブルーシフト」の仕方を真正なインキ製造者のみが知りうる複雑なものとすることで、高い偽造防止効果を得ることができる。
以上のごとく、 前記入射角度が0度から70度へと変化する際に、前記顔料の前記選択的に反射する光の波長が、
500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とを混合し、適宜な樹脂、溶剤及び、添加剤を加えて、顔料の凝集を解くための分散処理を施して、本発明の色彩可変インキを得る。
特に、2種の顔料を同一製造方法にて作成した場合は、透明酸化物薄膜の厚さのみが異なり、フレークの大きさ、形状等が同一(すなわち、インキ化する際の顔料としての物理的性質が同一)であるため、色彩可変インキ組成物作成の際、さらには、色彩可変インキ層形成時に、その組成物や、そのインキ層の中の顔料分布を均一に維持することができる。
【0014】
液晶顔料は、キラル相を有する液晶構造を持つ三次元架橋物質を用いることができる。キラル相を有する液晶物質としては、種々のコレステリック液晶を使用することが出来、ネマチック、スメクチック、もしくはディスコチック構造にキラル物質を加えることによって製造することが出来る。
三次元架橋性樹脂としては、重合性基、重縮合性基、もしくは重付加の可能な基を有するもので、これらの基の一部は、2官能以上の多官能基であることが望ましく、例えば、メタクリルオキシ基、もしくはアクリルオキシ基である。より好ましい三次元架橋性樹脂としては、ポリオルガノシロキサンを挙げることができる。
上記の両者は、混合後、加熱還流して反応させ、生成物を単離する。得られた生成物に、さらに光重合開始剤を溶融混合して塗布用組成物とし、この塗布用組成物を、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上にホットメルトコーティングし、ドクターにより配向を行なってから、紫外線を照射して塗膜を架橋させ、架橋した塗膜をフィルム上より分離し、最後に、粉砕機にかけて粉末化して液晶顔料とする。
液晶顔料には、インキ組成物中での分散性を向上させる目的で、液晶顔料の表面に、有機高分子、オリゴマー、もしくは低分子の分散剤を0.01mg/m2程度以上有していてもよい。
コレステリック液晶は、ネマチック液晶に少量の光学活性化物資(キラル剤)を添加することで誘起され、基準方向に対して一定周期のらせん構造を持つことで、液晶層内に屈折率変化を示す層を幾層も重ねたものとなっている。この屈折率分布を持つ多層構造が、観察するために入射してくる光を所定の角度に波長選択した上で、反射させる性質を持たせている。
この選択的反射光の波長は、コレステリック液晶の屈折率(分布)と、屈折率変化層の間隔により定まる。この間隔は、三次元架橋性樹脂の分子長、官能基の位置及び、キラル物質の添加量等で調整する。
従って、液晶そのものの中に屈折率の分布を持ち、この屈折率分布が、上記した薄膜を多層に積層(コレステリック液晶の捩れが一周する部分が1層となり、この層が繰り返し存在する。)したものと同様の効果を醸し出すことにより、選択的反射性を示すものであって、反射光の波長は、薄膜と同様に「ブルーシフト」する。
【0015】
但し、この層の数が多くなると、「ブラッグ反射」を生じて単一の波長のみ(反射する波長の幅が狭まるという意味。)所定の角度へ反射するようになる。従って、液晶顔料の中の屈折率分布が、この層の数を3層以上20層以下(1層は200nm〜1000nm)になるよう液晶顔料の厚さを設定し、入射角度0度〜70度において必要な反射光を有するものとする。その層の数が3層未満では、波長選択性が不十分であり、20層を越えると反射波長の幅が50nm以下となり、反射角度も制限される。好ましくは、5層以上、10層以下とすると、波長選択性と反射角度の幅が所望のものとなる。
すなわち観察する光の入射角度が0度から70度へと変化する際に、その選択的に反射する光の波長が、500nm以下の可視領域から、紫外領域へとシフトする状況とするためにブラッグ反射条件の緩和が必要であり、同様の手法により、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする状況とすることができる。もちろん、定めた角度の全域で強い反射光を発する必要はなく、色彩変化の連続性を真偽判定する際に、その連続性が認識できるよう設定する。
このコレステリック液晶(硬化等により樹脂状となっている。)をフレーク状とし、パール顔料と同様に、観察する光の入射角度が0度から70度へと変化する際に、前記顔料の前記選択的に反射する光の波長が、500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料を、混合して色彩可変インキ組成物とする。
液晶顔料をインキ化する際の樹脂として、種々のインキ用樹脂が使用できるが、特に電離放射線硬化性樹脂がその硬化性、物理特性の高さより好適である。電離放射線硬化性樹脂には、脂肪族系アクリレート、環状脂肪族系アクリレート、やこれらのメタクリレートのようなアクリル系のものが使用できる。さらには、ビニル系光重合性モノマーもしくはオリゴマーを使用することができる。
また、液晶顔料をインキ化する際の樹脂として、ロジン等の天然樹脂や大豆油変性アルキド樹脂等の酸化重合性樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等もしくは、これらの混合体や、共重合体等を適宜用いることができる。
その他の添加剤は、パール顔料等を用いた色彩可変インキ組成物と同様のものを用いることができる。
これらの色彩可変インキ組成物を用いて、適宜な印刷方法により色彩可変インキ層を形成すると、観察する光の入射角度が0度から70度へと変化する際に、反射する光の波長が、あたかも「レッドーシフト」するかのごとく観察される。
【0016】
本発明の第2の態様は、
前記500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、前記赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料との混合比が、9/1〜5/5であることを特徴とする。
本発明第2の態様によれば、
前記500nm以下の可視領域から、紫外領域へとシフトする顔料と、前記赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料との混合比が、9/1〜5/5であることを特徴とする色彩可変インキ組成物を提供することができる。
通常は、色彩可変インキ層を観察する際、まずは垂直方向から観察することが多い。従って、色彩可変インキ層は、まずは赤色を呈し、観察角度を変えると青色へと変化していくことになる。すなわち、「ブルーシフト」を観察する。
従って、垂直方向での観察時に、最初から青色を呈し、少し角度を変えて、不可視領域(紫外領域)に入り、色彩が消失すると、その時点で観察を終え、さらに観察角度を大きく取って、60度〜70度になって、再び別の色彩である「赤色」を呈するとは、なかなか気づかない。
すなわち、「赤色」を呈する顔料を「青色」を呈する顔料より少なくし、同量以下さらには、1/9まで少なくすることで、この意外性を高めることができる。
ただし、1/9未満となると、「赤色」呈色そのものが不安定となり、真偽判定には不向きとなる。
【0017】
上記したごとく、「青色」を呈した後、観察角度を変化させた時に、ある程度大きな角度すなわち50度〜70度程度までを不可視領域(紫外領域部分と、赤外領域部分が重なり、色彩が消失したように見える領域。)とし、さらに大きく傾けた時に突然「赤色」を呈するように設計することも好適である。その意外性、すなわち、色彩の消失度合いが強い程(散乱光による色彩がなく、無色の状態が続く程)、偽造防止性が高まることになる。
混合する顔料の形状を同一もしくは同様とし、色彩可変インキ層の全域にわたりこの混合比が均一なものとすることができる。すなわち、光学的特性は異なるが、物理的形状を同様のものとすることで、インキ内の分散性を同一とし、その混合比をインキ層形成過程やインキ層形成後も変化しないものとする。
また、その500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料の大きさに対してその赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料の大きさを粒径でみて1/3から1/10とすると(体積比はこの3乗となる。)、一つの平面内において、大きい顔料が接する隙間に小さい顔料が入りこむことができ、いわゆる「最密充填」とすることができるため、ムラの少ない安定した色彩変化を得ることができる。
これらの「色彩変化」の安定性により真偽判定における真正性証明の信頼性が向上する。
インキ組成物とする方法は、上記した方法を適宜用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、
観察する光の入射角度に応じて、選択的に反射する光の波長が変化する顔料を含む色彩可変インキ組成物において、その入射角度が0度から70度へと変化する際に、顔料の選択的に反射する光の波長が、
「青色」から変化して、「赤色」を呈する。言わば「レッドシフト」を呈する新規な色彩可変インキを提供することができる。
その新規性により、種々のセキュリティ製品へ適用して、その真正性を証明することが可能となる。
また、顔料の混合比を調整することにより、色彩変化を調節することができ、意外な色彩変化等を醸し出して、さらに偽造防止性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1実施例を示す色彩可変インキ層の断面図であって、観察する光が色彩可変インキ層形成面に垂直(基準方向)に入射し、反射する光が垂直に反射している図である。
【図2】本発明の1実施例を示す色彩可変インキ層の断面図であって、観察する光が色彩可変インキ層形成面の基準方向に対して大きな角度で入射し、反射する光が入射角と同じ大きさで反対方向に反射している図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(色彩可変インキ組成物)
本発明の色彩可変インキ組成物は、その光学的特性が異なる2種類の顔料を含む。この2種類の顔料は、それぞれ観察する光の入射角度に応じて、選択的に反射する光の波長が変化する顔料であって、適宜な樹脂及び溶剤等に分散され、色彩可変インキ組成物としてプラスチックフィルム等の表面上に形成して偽造防止体とするか、若しくは、セキュリティ対象物表面上に直接、各種印刷方法等の適宜な方法により形成することにより、色彩可変インキ層となって、種々の場面での目視観察による真偽判定や、真正性証明に用いられる。
(色彩可変顔料)
本発明に用いられる色彩可変顔料は、
色彩可変インキ層への観察する光の入射角度が0度から70度へと変化する際に、それぞれの顔料において、そして最終的には色彩可変インキ層から出て行く光として、選択的に反射する光の波長が、500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とからなる。
その顔料としては、パール顔料、エフェクト顔料等及び、液晶顔料が用いられる。
パール顔料としては、
メルク社製イリオジン100シルバーパール、103ルチルスターリングシルバー、111ルチルファインサティン、120ラスターサティン、123ブライトラスター、151ルチルパール、153フラッシュパール、163、シンマーパール、183スーパーノバホワイト、201ルチルファインゴールド、211ルチルファインレッド、221ルチルファインブルー、223ルチルファインライラック、231ルチルファイングリーン、205ルチルプラチナム、215ルチルレッドパール、217ルチルカパーパール、219ルチルライラックパール、225ルチルブルーパール、235ルチルグリーンパール、249フラッシュゴールド、259フラッシュレッド、289フラッシュブルー、299フラッシュグリーン、300ゴールドパール、302ゴールドサティン、303ロイヤルゴールド、306オリンピックゴールド、309メダリオンゴールド、320ブライトゴールド、323ロイヤルゴールド、351サニーゴールド、355グリターゴールド、500ブロンズ、502レッドブラウン、504レッド、505レッドバイオレット、507シーラブレッド、520ブロンズサティン、522レッドブラウン、524レッドサティン、530グリターブロンズ、532グリターレッドブラウン、534グリターレッド等が使用される。
【0021】
さらに、佐野塗料社製パールグレーズMM−100R、MF−100、MF−100RN、ME−100、MS−100R、MY−100RF、MRB−100RF、MV−100RF、MB−100RF、MG−100RF、MC−302、MC−323R、MC−326R、MC−520、MC−522、MC−524等、
BASF社製DESERT REFLECTIONS CANYON SUNSET、DESERT REFLECTIONSPAINTED DESERT PLUM、TIMICA SILK WHITE、TIMICA NU−ANTIQUE SILVER、FLAMENCO SATIN BLUE、FLAMENCO SATIN PEARL 3500、CLOISONNE RED、CLOISONNE VIOLET、CLOISONNE BLUE、CLOISONNE SATIN BRONZE、SATAIN BLUE、DUOCROME RO、DUOCROME RO、DUOCROME VB、GEMTONE GARNET、GEMTONE MAUVE QUARTZ、CELLINI RED、CELLINI BLUE、REFLECKS RAYS OF RED、REFLECKS BEAMS OF BLUE、CHROMA−LITE DARK BLUE、CHROMA−LITE MAGENTA、COSMICA BLUE、RED、ORANGE等が用いられる。
エフェクト顔料として、
メルク社製シラリックF60−50SW FIRESAIDE COPPER,F60−51SW RADIANT RED,T60−10SW CRYSTAL SILVER,T60−20 SW SUNBEAME GOLD,T60−21 SW SOLARIS RED,T60−23 SW GALAXY BLUE,T60−24 SW STELLAR GREEN,T60−22 WNT AMETHYST DREAM,T60−25 SW COSMIC TURQUOISE等。
また、メルク社製カラーストリーム F20−00WNT AUTAMN MYSTERY,F20−01WNT VIOLA FANTASY,F20−02 ARCTIC FIRE,F20−03 TROPIC SUNRISE,F20−03 LAPIS SUNLIGHT,MIRAVAL 5411 MAGIC WHITE,5311 SENIC WHITE
メルク社製バイフレアー49、83、84、L200、ミナテック 230A−IR、ピリズマT40−20SW YELLOW,T40−21SWRED,T40−22 SW VIOLET,T40−23 BLUE,T40−24 GREEN,T40−25 TURQUOISE,T40−27 INDIGO等。
さらに、メルク社製ミラバルSCENIC WHITE,SCENIC GOLD,SCENIC COPPER,SCENIC TURQOISE,MAGIC WHITE,MAGIC GOLD,MAGIC COPPER,MAGIC RED,MAGIC LILAC,MAGIC BLUE,MAGIC TURQUOISE,MAGIC GREEN等を使用することができる。
【0022】
(コレステリック液晶顔料)
コレステリック液晶顔料のもととなるコレステリック液晶としては、コレステロールのハロゲン化物、モノカルボン酸コレステロールエステル、モノカルボン酸シトステロールエステル、安息香酸誘導体のコレスタノールエステル、二塩基酸ジコレステリルエステル、主鎖型液晶高分子化合物、側鎖型液晶高分子化合物、剛直主鎖型液晶高分子化合物などが挙げられる。
より具体的には、例えばコレステリルクロライド、コレステリルアセテート、コレステリルノナノエート、炭酸メチルコレステロール、炭酸エチルコレステロール、コレステリルp−メトキシベンゾエート、シトステロイルベンゾエート、シトステロイルp−メチルベンゾエート、コレスタニルベンゾエート、10、12−ドコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、8、12−エイコサジカルボン酸ジコレステリルエステル、10、12−ペンタコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、ドデカジカルボン酸ジコレステリルエステル、12、14−ヘキサコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)フェノキシオクタン酸コレステリルエステル、L−グルタミン酸−γ−ベンジル/L−グルタミン酸−γ−ドデシル共重合体などがある。
さらに、コレステリルホルメート、コレステリルアセテート、コレステリルプロピオネート、コレステリルブチレート、コレステリルペンタネート、コレステリルヘキサネート、コレステリルヘプタネート、コレステリルオクタネート、コレステリルノナノエート、コレステリルデカネート、コレステリルドデカネート(コレステリルラウレート)、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、コレステリルステアレート、コレステリルオレエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルリノレート、コレステリル12−ヒドロキシステアレート、コレステリルメルカプタン、コレステロールクロライド、コレステリルフルオライド、コレステリルブロマイド、コレステリルアイオダイド等を挙げることができる。
好ましくは、アルキルコレステロール(例えばコレステロールナノエート)およびコレステリルハライド(例えばコレステロールクロライド)コレステリルオレイルカーボネート3種の混合物が挙げられ、これらの3つのタイプの液晶は常温で使用できるように混合して用いられるのが一般的である。
尚、ここに示す化合物に限定されるものではなく、またこれらのコレステリック液晶化合物は、1種または2種以上混合して用いることができる。
ネマチック液晶化合物にカイラル化合物を加えてコレステリック液晶とするものとしては、液晶化合物として、4−置換安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換ビフェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換シクロヘキシルエステル、4−置換4’−置換ビフェニル、4−置換フェニル4’−置換シクロヘキサン、4’−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリジン等、が用いられる。
【0023】
さらに、少なくとも分子の一方の末端にシアノ基又はフッ素原子を有する液晶化合物を用い、これらの液晶化合物にそれぞれ好適な各種のカイラル剤を加えたものが用いられる。カイラル化合物としては、「CB−15」、「C−15」(以上、BDH社製)、「CM−21」、「CM−22」、「CM−19」、「CM−20」、「CM」(以上、チッソ社製)、「S1082」、「S−811」、「R−811」(以上、メルク社製)、等を挙げることができる。
さらに、三次元架橋可能な液晶性の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子を用いることができる。所定の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に任意のカイラル剤を添加することにより、コレステリック型液晶分子を含む層を得ることができる。
三次元架橋可能なモノマー分子としては、例えば特開平7−258638号公報や特表
平10−508882号公報で開示されているような、液晶性モノマーおよびキラル化合
物の混合物がある。より具体的な例を示すと、例えば下記一般化学式(1)〜(11)に
示されるような液晶性モノマーを用いることができる。尚、一般化学式(11)で示され
る液晶性モノマーの場合、Xは2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
また、カイラル剤としては、例えば下記一般化学式(12)〜(14)に示されるよう
なカイラル剤を用いることができる。尚、一般化学式(12)、(13)で示されるカイ
ラル剤の場合、Xは2〜12の範囲の整数であることが望ましく、また、一般化学式(1
4)で示されるカイラル剤の場合、Xが2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
また、オリゴマー分子を用いる場合は、例えば特開昭57−165480号公報で開示
されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物を用いる
ことができる。例えば、重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に、カイラル剤
を数%〜10%程度添加することによりコレステリック液晶層を得ることができる。
また、有機合成によって得られるネマチック液晶の末端基に不斉炭素を有する基を導入したコレステロール基を持たないコレステリック液晶や、コレステロール誘導体にシッフ系ネマチック液晶を加えた混合液晶も用いられる。さらには、天然コレステロールのハロゲン置換物、エステル化物(コレステリルベンゾエート、コレステリルクロライド、コレステリルオリエート、コレステリルノナノエート等も好適である。
特に好適には、ネマチック、スメクチック、もしくはディスコチック構造にキラル物質を加えて作成されるキラル相を有する液晶構造を有し、重合性基、重縮合性基、もしくは重付加の可能な基を有する、例えば、メタクリルオキシ基、もしくはアクリルオキシ基等の2官能以上の多官能基を持つ配向三次元架橋物質を用いることができる。三次元架橋性樹脂として、ポリオルガノシロキサンは、その性能安定性、作業性等より最も好適である。
上記の両者を、混合後、加熱還流して反応させ、生成物を単離する。得られた生成物に、さらに光重合開始剤を溶融混合して塗布用組成物とし、この塗布用組成物を、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上にホットメルトコーティングし、ドクターにより配向を行なってから、紫外線を照射して塗膜を架橋させ、架橋した塗膜をフィルム上より分離し、最後に、粉砕機にかけて粉末化して液晶顔料とする。
いずれにしても、一度膜状(樹脂状)に形成した後、破砕、裁断等の小片化工程を経てフレーク状とする。
インキ組成物中での分散性を向上させる目的で、液晶顔料の表面に、有機高分子、オリゴマー、もしくは低分子の分散剤を0.01mg/m2程度以上有するものも好適である。
【0040】
(パール顔料等インキ)
パール顔料等インキに使用される樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(屈折率n=1.49)、ポリメチルアクリレート(n=1.47)、ポリベンジルメタクリレート(n=1.57)、ポリブチルアクリレート(n=1.44)、ポリイソブチルアクリレート(n=1.48)、硝酸セルロース(n=1.54)、メチルセルロース(n=1.50)、セルロース・アセテートプロピオネート(n=1.47)、ポリスチレン(n=1.60)、ポリエチレンテレフタレート(n=1.64)、ポリ酢酸ビニル(n=1.47)、ポリ塩化ビニル・酢酸ビニル(n=1.54)、メラミン樹脂(n=1.56)、エポキシ樹脂(n=1.61)、フェノール樹脂(n=1.60)等もしくは、この混合体等を適宜用いることができる。
溶剤は、色彩可変インキ層形成方法によって、それぞれ最適なものを選択する。
溶剤としては、エステル類:酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル等、エーテル類:エチルエーテル等、ケトン類:メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等、グリコールエーテル(セルソルブ)類:エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等、脂環炭化水素類:シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノール等、脂肪族炭化水素類:ノルマルへキサン等、芳香族類:トルエン、キシレン等、アルコール類:エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、ノルマルアミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブタノール等及びこれらの混合を用いる。
これらを沸点により、低沸点溶剤(沸点100度以下)、中沸点溶剤(沸点100度〜150度)、高沸点溶剤(沸点150度以上)に分類し、乾燥条件に合わせ、低沸点溶剤と高沸点溶剤を混合して、急激な溶剤揮発を抑え徐々に乾燥するよう工夫する等、フレークが色彩可変インキ層形成面に平行になるよう調整する。
さらに、透明性を配慮した上で、各種添加物、分散剤、レベリング剤、滑剤、可塑剤、カップリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、各種硬化促進剤等を使用する。
色彩可変インキ形成方法は、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、ノズル印刷、カーテンコート印刷、シルクスクリーン印刷、凹版印刷、インクジェット印刷等の種々の方法において、本発明の機能を十分発揮させるために、溶剤組成、インキ粘度の調整や乾燥・硬化方法を工夫して用いることができる。
もちろん、環境に配慮して、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を使用し、水系インキ組成物とすることも好適である。
【0041】
(コレステリック液晶顔料インキ)
液晶顔料をインキ化する際の樹脂としての電離放射線硬化性樹脂には、次のようなアクリル系のものが使用できる。即ち、アクリル酸、脂肪族系アクリレート、アリルアクリレート、アリル化シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エピクロルヒドリン変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジアクリレート、エチレングリコール系アクリレート、プロピレングリコール系アクリレート、ブチレングリコール系アクリレート、ネオペンチルグリコール系アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エピクロルヒドリン変性脂肪族アクリレート、環状脂肪族系アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジエチルアミノエチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビスフェノール系エポキシアクリレート、グリセロール系アクリレート、グリシジルアクリレート、オリゴエステル系アクリレート、ポリエステル系アクリレート、リン酸エステル系アクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸アクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸系アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸系アクリレート、もしくはウレタン系アクリレート等が使用できる。
また、次のようなメタクリル系のものも使用でき、具体的には、アクリル系として上に掲げたものの対応メタクリル酸、対応メタクリル酸エステルを使用することができる。このほか、電離放射線硬化性樹脂としては、N−ビニルピロリドン等のビニル系光重合性モノマーもしくはオリゴマーを使用することができる。電離放射線硬化性樹脂としては、上記したような物質のモノマーもしくはオリゴマーの1種類もしくは2種類以上を用いることが出来る。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂を樹脂として使用する場合であって、電離放射線として紫外線を使用する場合には、公知の光重合開始剤を配合する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系、安息香酸系、チオキサンソン系、フェニルケトン系、オキシム系等の有機低分子化合物、オリゴマー、もしくは高分子化合物を使用することができる。光重合開始剤は、配合比が過大であると、重合度が減少し、配合比が過小であると、重合速度および重合率が減少し、いずれにしても、乾燥特性および印刷後の皮膜強度等に悪影響があるため、好ましくは、樹脂である電離放射線硬化性樹脂100部に対し、0.3〜20部の質量比で使用することが好ましい。
液晶顔料の粒径は、一般的な平版用インキや凸版用インキに使用されている顔料粒子の粒径にくらべて大きいので、過大に配合すると、インキの流動性が乏しくなる恐れ、もしくは硬化性が低下する恐れがあり、また、過小であると、顔料としての演色効果が薄れるため、好ましくは、樹脂である電離放射線硬化性樹脂100部に対し、5〜100部の
質量比で使用することが好ましい。
液晶顔料をインキ化する際の樹脂としての酸化重合性樹脂には、次のようなものが使用できる。
即ち、ロジン等の天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、ロジン由来マレイン酸樹脂、もしくはロジン由来フマル酸樹脂等の天然樹脂誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性キシレン樹脂、脂肪酸変性キシレン樹脂、あまに油変性アルキド樹脂、もしくは大豆油変性アルキド樹脂等の合成樹脂を使用することが出来る。
上記の酸化重合性樹脂には、粘度の調整、乾燥速度の調整の目的で、通常、油分を配合する。具体的な油分としては、亜麻仁油、しなきり油、オイチシカ油、麻実油、サフラワー油、大豆油、やし油、トール油、ひまし油、もしくは綿実油等の植物油、もしくは植物油を加工して得られる重合油、マレイン酸等の加工油、またはマシン油もしくはスピンドル油等の鉱物油を使用することが出来る。
酸化重合性樹脂を使用する際には、油分の他に、種々の溶剤もしくは添加剤を配合することができる。溶剤としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、グリコール系、エステル系、もしくはケトン系等の溶剤を使用することが出来る。この他、添加剤として、可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル、もしくはセバシン酸エステル等)、ワックス(カルナバワックス、木ろう、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、もしくはポリテトラフロロエチレン等)、ドライヤー(コバルト系、もしくはマンガン系金属石けん等)、分散剤(高分子もしくは低分子の界面活性剤等)、増粘剤(アルミニウムキレート等)、消泡剤(シリコーン等)、酸化防止剤(フェノール系、もしくはオキシム系等)、レベリング剤(シリコーン等)、または紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、もしくはトリアゾール系等)を使用することが出来る。
【0043】
樹脂として酸化重合性樹脂を使用する際には、酸化重合性樹脂、油分、および溶剤分が主成分となるビヒクル成分は、電離放射線硬化性樹脂にくらべると一般的に酸価が高く、ビヒクル成分自身が分散剤的な効果を示すため、液晶顔料の配合比を高くすることが可能である。しかし、液晶顔料の粒径が大きいため、過大に配合すると、インキの流動性が乏しくなる恐れ、もしくは硬化性が低下する恐れがあり、また、過小であると、顔料としての演色効果が薄れる恐れがあり、好ましくは、樹脂である酸化重合性樹脂、および油分の合計量100部に対し、5〜150部の質量比で使用することが好ましい。
さらに液晶顔料をインキ化する際の樹脂として、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等もしくは、これらの混合体や、共重合体等を適宜用いることができる。
その他の添加剤は、パール顔料等を用いた色彩可変インキ組成物と同様のものが使用できる。
使用される溶剤もパール顔料等を用いた色彩可変インキ組成物と同様のものが使用できる。
これらの色彩可変インキ組成物を用いて、適宜な印刷方法により色彩可変インキ層を形成すると、観察する光の入射角度が0度から70度へと変化する際に、反射する光の波長が、あたかも「レッドシフト」するかのごとく観察される。
この「レッドシフト」はあらかじめ設計されたものであるから、この変化を目視にて確認することにより、その真正性を簡易ながらも確実な方法で確認することができる。
もちろん、この「レッドシフト」としての変化の中に、得意な反射光を挿入したり、途中で反射光が途切れる等の得意な変化を盛り込んだ場合は、もはや、本発明のインキ組成物から形成した色彩可変インキ層の反射光の挙動を詳細に分析しても、同様の挙動をしめる色彩可変インキ組成物を作り出すことは困難と思われる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶剤を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
(実施例1)
色彩可変顔料1として、パール顔料を使用し色彩可変インキ組成物を作成した。
色彩可変顔料1として、メルク社製イリオジンタイプ顔料B(天然雲母薄片上に酸化チタン100nm被覆、粒径5〜25μm、厚さ2〜5μm:0度反射1500nm、70度反射700nm)と同社製イリオジンタイプ顔料C(天然雲母薄片上に酸化チタン300nm被覆、粒径5〜25μm、厚さ2〜5μm:0度反射450nm、70度反射200nm)を同量混合し、下記インキ組成物とした。顔料の凝集防止と、均一分散のため2mm径ガラズビーズをいれたボールミルにて30分処理し、色彩可変インキ組成物とした。
<インキ組成物>
顔料B 10質量部
顔料C 10質量部
ウレタン系アクリレート(屈折率n=1.49) 30質量部
酢酸エチル 20質量部
酢酸イソブチル 10質量部
メチルイソブチルケトン 10質量部
ベンゾフェノン系光開始剤 0.1質量部
この色彩可変インキ組成物を厚さ25μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さ5μmとなるようブレードコート(ブレードのシェアを掛けながらコーティング)し、紫外線を照射して硬化し、色彩可変インキ層Aを得た。
この色彩可変インキ層Aに観察する光2をインキ層面に垂直な方向であて、反射光3をほぼ同じ方向で観察したところ、紫色から青色を観察することができた。
さらに、観察する光2をインキ層面に垂直な方向から70度傾けて入射し、同様の角度で反対方向にでてくる反射光3を観察したところ、赤色を観察することができた。これによりいわゆる「レッドシフト」を確認できた。
この色彩可変インキ層形成物を、20mm×20mmの小片として、粘着剤を塗布してセキュリティ対象物であるクレジットカード上に貼付したところ、観察角度による見え方が通常の「ブルーシフト」でなく、いわゆる「レッドシフト」して見えたため、その真正性を目視にて極めて容易に確認することができた。
【0045】
(実施例2)
エフェクト顔料として、シリラックタイプ顔料B(アルミナフレーク上に酸化チタン40〜60nm被覆、粒径15〜30μm、厚さ3〜5μm)と同社製シリラックタイプ顔料C(アルミナフレーク上に酸化チタン140〜160nm被覆、粒径5〜10μm、厚さ1〜3μm)を同量混合し、色彩可変インキ層厚さを10μmとした以外は実施例1と同様にして実施例2を得た。
効果は実施例1と同様であったが、セキュリティ対象物上に貼付した後の観察において、実施例1より赤色が鮮明に観察された。
(実施例3)
顔料Bと顔料Cの混合比を9/1とした以外は、実施例2と同様として、実施例3を得た。
効果は実施例2と同様であったが、赤色の反射光が弱く、僅かしか確認できなかったが、しかし確実にその存在を確認することができ、セキュリティ対象物に貼付したラベルとしてその意外性を醸し出すことができた。
(実施例4)
色彩可変顔料1として、下記液晶顔料を使用した色彩可変インキ組成物を用いた。
<色彩可変顔料B>
独ワッカー社製ヘリコーンHCサファイヤXS 20質量部
独ワッカー社製ヘリコーンHCメイプルXS 20重量部
ポリエステル系アクリレート 20質量部
酢酸エチル 30質量部
酢酸イソブチ 10質量部
ベンゾフェノン系光開始剤 0.1質量部
とした以外は実施例1と同様にして、実施例4を得た。
実施例1と同様の観察において、いわゆる「レッドシフト」を確認でき、容易に真正性を確認することができた。
【0046】
(比較例1)
パール顔料として、メルク社製パール顔料カラーストリーム スタンダードモデルF10−01ヴィオラファンタジーを用いた以外は実施例1と同様にして比較例1を得た。
実施例1と同様に観察したところ、赤色から緑色そして青色と一般的に観察される「ブルーシフト」を確認した。
この変化はありふれており、真正性確認には不十分と思われた。
(評価試験)観察光は、通常の白色光源を用い、観察物を水平な台上において、図1のように垂直方向から光をあて、同方向に逆に反射してくる光を目視にて観察。さらに、図2のように、垂直方向から70度傾いた方向から光をあて、逆方向に反射してくる光を目視にて観察した。
(評価結果)
実施例1〜4は、いわゆる「レッドシフト」を観察することができた。
実施例1に比較し、実施例2は、各色が少し鮮明に観察された。実施例3は、赤色が僅かとなったが、しかし確実に「赤色」を確認でき、意外性を醸し出していた。実施例4は、実施例1〜3とは、異なった風合いを持っていたが、いわゆる「レッドシフト」を十分確認できた。このことから、十分な真正性を確認できると判断された。
比較例1は、上記した通り、一般的に観察される「ブルーシフト」を確認した。この色彩変化では、真正性確認には不十分と思われた。
【符号の説明】
【0047】
A :本発明の1実施例を示す色彩可変インキ層
1 :選択的に反射する光の波長が変化する顔料
(パール顔料、液晶顔料等)
2 :観察する光
3 :反射する光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察する光の入射角度に応じて、選択的に反射する光の波長が変化する顔料を含む色彩可変インキ組成物において、
前記入射角度が0度から70度へと変化する際に、前記顔料の前記選択的に反射する光の波長が500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、
赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料とからなることを特徴とする色彩可変インキ組成物。
【請求項2】
前記500nm以下の可視領域から紫外領域へとシフトする顔料と、
前記赤外領域から500nm以上の可視領域へシフトする顔料との混合比が、9/1〜5/5であることを特徴とする請求項1に記載の色彩可変インキ組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196005(P2010−196005A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45437(P2009−45437)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】